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Hirosaki University Repository for Academic Resources
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ヴァイオリン奏法の確立と展開 : 18世紀のヴァイオ
リン指導者と現代音楽(20世紀音楽)に関して
今井, 民子, 笹森, 建英
弘前大学教育学部紀要. 66, 1991, p.29-53
1991-10-31
http://hdl.handle.net/10129/573
Rights
Text version
publisher
http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/
第6
6
号 :2
9
-5
3(
1
9
9
1
年1
0
月)
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(
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,
1
9
9
1
)
弘前大学教育学部紀要
ヴ ァイオ リン奏法 の確立 と展開
-
1
8
世紀のヴァイオリン指導書と現代音楽 (
2
0
世紀音楽)に関してEs
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建
英 **
Takef
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aSASAMORI
論
文
要
旨
ヴァイオ リン音楽の発展 を可能 に した背景 には,1
7
世紀か ら1
8
世紀の楽器製作の改良,演奏
技術 の確立があった。 この論文で は,先ず楽器製作 の変遷 を概観 する。 この時代 の演奏技術 の
確立 を把握する上で重要なのは,器楽形式の発展 と,一連の技法書の出版,技巧 を駆使 して葵
す カブ リスの類 の作 品の出現 であ る。 レオ ボル ト・モー ツ ァル トMozar
t
, Johann Geor
g
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ani
,Fr
ances
co Sver
i
oの奏法 に関す る著書, ロカテ ッ リ
Leopol
dや ジェ ミニ ア一 二 Gemi
Locat
el
l
i
,Pi
et
r
oAnt
oni
oのカブ リスは重要な役割 をはた した。 この論文では,彼 らによって
掲示 された技法 を具体的に考察する。
2
0
世紀,特 に1
9
4
5
年以降 は,音楽様式,演奏法が画期的な変貌 を遂 げた。 その技法上の特質
を明 らかにする. これ らを踏 まえて,音楽文化が新芽 し,形成 され, さらに発展,変遷 してい
く過程 に教育書が どのような役割 を果たすのかについて も検証 する。
は じめに
近代のヴァイオ リン奏法が確立 したのは1
8
世紀であった。楽器の完成 と,演奏技術 の確立が
ヴァイオ リン音楽の目ざましい発展 をもた らした。特 に,L.
モーツァル トとジェミニア一二の技
法書が秦法の基礎 を提示 し, ロカチ ッリの作品が名人芸的な演奏技巧 を開発 し,パガニーニな
どの超絶技巧への道 を拓 いていった。L.
モーツァル ト等が開発 した技巧 を具体的 に上 げれば,左
手の技法,すなわちポジション,指の伸張, ヴィプラ- ト,半音の運指法 を指摘で きる。右手
の技法 としては運弓のニュアンス, スタッカー ト,重音奏法, アルペ ッジ ョ,特殊奏法 を指摘
で きる。 これ らの技法,その学習法 を示 した L.
モーツァル ト,ジェ ミニア一二の指導書の意義
は高 い。
2
0
世紀 は音楽思想が コペルニ クス的転回を示 し,奏法に於 いて も画期的な変化 をもた らした。
その個々のヴァイオ リン技法 を明示 し, それに伴 って記譜法が問題 を投 げかけ,作曲家 ・演奏
家 ・聴衆 の新たな関係等 も新 たな様相 を呈 した。
* 弘前大学教育学部音楽科教室
**弘前大学教育学部音楽科教室
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3
0
Ⅰ.背
今井民子 ・笹森建 英
景
演奏技法 を論ず る前 に, ヴァイオ リン音楽 の高度 な発展 を可能 に した背景 として,楽器製作
の飛躍的進歩 と器楽形式-特 にコンチェル トーの確立 の 2つについて述べてみ よう。
l
)
1. 楽器製作
ヴ ィオール族 の リラ ・ダ ・プラッテ ョを直接 の先祖 とす るヴ ァイオ リンが,楽器 として完成
7
世紀 に入 ってか らである。特 に世紀 の後半 は, ヴ ァイオ リン製作史上の黄金期で,
す るの は1
N.Amat
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e
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,A.St
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a
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iの 3大製作者が輩 出 した。 ヴ ィオールに比べて はるかに
表現力 の大 きなヴ ァイオ リンは,作 曲家 の創作欲 を大 いにか きたて ることになった。
3人 の楽器 で は,アマーテ ィ,シュタイナーの もの と, ス トラデ ィヴァ リの もの とは決定的相
音量 よ りも音色 の明 るさや可憐 さを尊重 しているのに対 し,ス トラデ ィ
違 がある。前者 2つが,
2
)
ヴ ァリはオーボェの ような突 き通 る音色 を持 ち, また表板,裏板 が凸面 に湾曲 したぶ厚 いアマ
ーティ,シュタイナー型 に対 し,ス トラデ ィヴ ァリ型 は薄 くて平 たい (
図 1)
。即 ち,アマーティや
シュタイナーの繊細 さは小規模 なバ ロックの室 内楽 を,一方ス トラデ ィヴァ リの音量 の豊 か さ
と華貰 さは,来 た るべ き古典派,ロマ ン派の独奏 コンチ ェル トを志 向す るものであった といえる。
3
)
8
0
0
年以降であ り,
ス トラデ ィヴァ リが アマーテ ィ, シュタイナー に完全 に とって代わ るの は1
8
世紀半 ば は,と りわ けシュタイナーの全盛期 で,実
モーツ ァル トや ジェ ミニア一二の活躍 した1
4
)
際モーツ アル トの指導書 に描かれている楽器 もシュタイナーで はないか と推定 され る(
図 6)0
次 に当時 の楽器 と現在 の楽器 の構造上 の相違 を簡単 に述べ る と,(
ヨネ ックが現在 よ り短 く傾
斜がなか った こと,(
多指盤が現在 よ りもずっ と短 く, また指盤 に傾斜 をつ けるために撰形 の木
版 が差 し込 まれた こと,③駒 の高 さが現在 よ りも低 く, また駒上端 のカ ッ トが浅 いため, 4弦
の傾斜が少 なかった ことな どが,古楽器の特徴 としてあげ られ る,張力が弱 く, 4弦 の傾斜 の
少ない状態 は,重音やアルペ ッジ ョの奏法 に有利 であった と思われ る (
図 2)0
図2
バ ロックの駒
近代の駒
ヴ ァイオ リン奏方 の確立 と展 開
31
弓の形態 も,1
7
世紀初頭か ら1
8
世紀末期 に至 るまで変遷 を続 けて きたが (
図 3),近代的な弓
To
ur
t
eによって築 かれた。バ ロックの弓 と近代的な トウルテの弓 との相違 は,弓
の基礎 は F.
先 と棒 の湾 曲にある。即 ち, トウルテの弓先が斧形で棒 が内側 に湾 曲 しているのに対 し,バ ロ
ックの もの は鋳型 の弓先 と湾曲のない真直 ぐの棒 をもっている。モーツアル トや ジェ ミニア一
。旧型 のバ ロック弓 は現
二の指導書 には, この古いバ ロック弓が描かれている(
図 4, 5, 6)
在の もの よ り短 くて軽 く,均衡が とり易いため,微妙 な弓の動 きや長弓の連続 スタッカー トな
どの難 しい技巧 によ り適 していた といえよう。
2. 器楽形式の発展
バ ロックの器楽 の諸形式 とヴ ァイオ リンの様々な語法 は,相互 に関連 しなが ら発展 して きた。
ソナタやオペ ラは,1
7
世紀初 めの誕生 当初 よ りヴ ァイオ リンを活用 したが (
モンテヴェルデ ィ
Mont
e
ve
r
di
,
Cl
audi
oの≪ Or
f
eo≫ (
1
6
0
7
)はそのす ぐれた例),特 にソナタで は独奏楽器 とし
ての高度 な技法が開発 され, それ は無伴奏 ソナタのジャンルで頂点 に達 した。
しか し, ヴ ァイオ リンが決定的地位 を確立す る契機 となったの は, コンチ ェル トの分野であ
ろう。バ ロック音楽 の本質的原理である対比 の概念 を最 も顕著 にあ らわす この楽 曲形式 は, コ
ンチ ェル ト・グロツソか らソロ ・コンチェル トへの発展の過程で,独奏者 とオーケス トラの対
5
)
立 をよ り先鋭化 させた。量的なハ ンデ ィを もつ独奏者がオーケス トラに対時す るために, ソロ
部分 はオーケス トラ と異なる書法 を もつ必要が生 じて くる。 ソロ部分 のモチーフには,① トゥ
ッテ ィのテーマ と関連 をもたない装飾音形,② トウツテ ィのテーマの敷術,③ トウツティとは
別個 の独立 した ものの 3つのタイプがあるが,第 3の場合 は少 な く,大部分 は第 1,第 2のタ
Vi
val
diな どの ソロ ・コンチ ェル トの独奏部分 には,急速 な音階のパ ッセージ
イプを とる。A.
や広い音程跳躍 な ど,難度 の高い名人技巧が多 く見 られ, ここにヴ ァイオ リン音楽 はあ らゆる
技法 を駆使 して,飛躍的にその語法 を拡大 させ ることになった。 そ して この華麗 な独奏部分 と
トウツテ ィとの対立 は, リ トルネッロ形式 とい うす ぐれた循環形式 を得 て,全体 の統一へ と吸
収 されてゆ くのである。
Ⅰ
Ⅰ.演奏技法の実際
8
世紀 の半 ばにはす ぐれた演奏 の指
あ らゆる知識 の体系化 を目ざす啓蒙 の世紀 を反映 して,1
導書が相次 いであ らわれたO本稿で とりあげるモーツァル トとジェ ミニア一二の指導書 は,J.
Quant
zの 『フルー ト奏法 』 (
1
7
5
2
)
,C.P.E.Bac
hの 『クラヴ イーア奏法』 (
第 1部 は1
7
5
3
,
6
)
第 2部 は1
7
6
2
) と並ぶ古典的名著である ヴ ァイオ リン奏法 に関す るものには, この他 にフラ
。
ef
i
l
sの 『ヴ ァイオ リンの原理』 (
1
7
61),イタ リアの J.Tar
t
i
niの 『ロンパル
ンスの L'Abbel
デ ィーニ夫人への書簡 』 (
1
7
6
0
)な どがあ り, また先 さのクヴァンツの教本 の中で も,主 にオー
ケス トラのヴァイオ リン奏者 に対 し示唆 に富 む言及がなされている。
モーツァル トは基礎的なヴァイオ リン奏法 の他 に, ヴ ァイオ リン学習者 の基礎知識 として,
弦楽器 の発達史や音楽史, 当時の記譜法の習慣,様々な装飾音 な どに もふれてお り,演奏者 に
幅広い視野 を求 める彼 の教育方針が窺 える。一方, ジェ ミニア一二の指導書 は,内容,構成 と
4の短 い練習例が
もに極 めて体系化 され, まず基礎篇 として,装飾 を含 む様々な技法 に関す る2
2の楽 曲が続 く。
簡潔 な解説 とともに示 され,次 にいわば応用篇 にあたる1
1. 楽器 の構 え方, 弓の持 ち方
(
1) 楽器 の構 え方
3
2
今井民子 ・笹森建英
ヴ ァイオ リンは胸 の高 さでルーズに持つのが伝統的な構 え方であったが,1
8
世紀 には新 しい
7
)
方法があ らわれた。 それ は,鎖骨 または首 に楽器 をあてが うもので, これには顎で支 えない場
合 と支 える場合 の 2つがあったが,特 に後者 は,難 しい技巧 の演奏 に不可欠な楽器 の固定が得
られ る点で大 きな意義 をもつ もの といえよう。
8
)
ジェ ミニア一二 は,楽器 を鎖骨 より下 に (
即 ち胸 の高 さ)構 える旧式の持 ち方 を説 く一方,
翌年出版 されたフランス語版 の表紙 の人物 は,楽器 を鎖骨上 に構 え,緒止 め板 の中心か らやや
,彼が新 しい方式 を採用 していた ことは明 らか
右寄 りの部分 を顎で押 えていることか ら(
図 4)
であろう。
モーツァル トも新 旧両方の構 え方 にふれ,伝統的な胸 の高 さで持つ方法 は,観客の眼 には自
然で 快いが,左手 の巧 みな支 えに習熟 しない限 り,高いポジションの手 のすばやい動 きは困難
9
)
である とし(
図 5),第 2の快的な顎 による構 え方 は, ポジシ ョン移動の際の大 きな左手 の動 き
1
0
)
に も安全である と高 く評価 している (
図 6)。
彼 らはいずれ も,伝統的な胸 の構 えの もつ視覚的な優雅 さに愛着 を感 じつつ, ヴァイオ リン
技巧 の高度化 の中で, よ り固定度 の高い新 しい構 えを支持 していた といえる。更 に楽器の高 さ
l
l
)
1
2
)
E弦側) に傾 くのが良い とされたが, これ は右腕 の上 げ過 ぎを禁
は水平 に保 ち,左右 は右側 (
1
3
)
じたため,腕 を下 げて G弦や重音が容易 に演奏で きるよう考 えだされた工夫である。
(
2) 弓の持 ち方
弓の持 ち方 も楽器 の構 え方 と同様 に,1
8
世紀半 ばに古いフランス式か ら新 しいイタ リア式へ
1
4
)
と移行 した。両者 の主な相違 は親指 の位置で, フランス式 は弓の毛の下,イタ リア式 は弓の棒
と毛 の間 に置かれ る。 また弓を持 つ位置 も, フランス式 は弓の毛止 めの部分,イタ リア式 は毛
止 めよ りも 5- 6インチ上方 と異 なる。伝統的なフランス式 は,長 く舞踏伴奏 に用い られた素
朴 な持 ち方だが, ヴ ァイオ リン音楽の発展 に伴 い,次第 に安定度 の高いイタ リア式が求め られ
るようになった。
1
5
)
ジェ ミニア一二 は,表紙 か らも窺 えるように, イタ リア式 を勧 めている(
図 4)。モーツァル
トは,イタ リア式 を基本 にしたよ り近代的な方法 を示 し, これ は現在 の もの と驚 く程 よ く似 て
いる。 まず弓を持 つ位置 はジェ ミニア一二 と異 な り, より安定 した根元 の毛止 め付近 とし, ま
た弓のコン トロールのため,小指 は常 に棒上 に添 えるよう指示 している。更 に力強い 「
正直で
男性的な声色」 を得 るために,人差指 を第 1間節 まで深 め弓に圧力 を加 えることを勧 め,但 し
1
6
)
。音量 を増すために,
人差指 の伸 し過 ぎは,運 弓が ぎこちな くなるので堅 く戒 めている (
図 7)
人差指 を用 いて弓圧 を加 える方法 は,極 めて近代 的な もの として注 目され る。
2. 演奏技法
(
1) 左手の技法
(
a) ポジシ ョン
モーツアル トは, ポジションの存在理 由 として次の 3つをあげている。即 ち,①高音域 の演
秦,②極 めて広い音程 の演奏,③ カンター ビレの旋律 を同一 の弦で演奏す ることによ り,音色
1
7
)
の統一 と音楽 の一貫 した流れ を得 るための 3点である。1
8
世紀前半 は,一般 に第 7ポジション
1
8
)
が限界 であったが,モーツ ァル トも, 7つのポジシ ョンをすべ ての弦 にわ たって用 い るよう
1
9
)
勧 め, ジェ ミニア一二 も 7つのポジシ ョンで,音階練習及 び同度か らオ クターブに至 る重音 の
2
0
)
練習 を試みている。
ヴァイオ リン奏方の確立 と展開
図4
区1
3
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,
・
1.
1
7
脚
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云 云二
三
′転
三
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二
二
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托叩,17t
7
1
1.
ヾトも_一 丁長TL
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叫
ト▲7
.-
日 脚
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JAI
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er.t7'(・.
図6
3
3
今井民子 ・笹森建英
高いポジションの使用 と並んで, ポジションの移
動 も重要な技巧である。モーツアル トは,で きるだ
け不必要な左手の移動 を避 け,同一のポジシ ョンに
コ
】
1
とどまるべ きであるとし,移動の際にも,聴 き手 に
2
2
)
気付かれない自然な方法 を説 いている。 これ は,①
開放弦 (
譜 1)
,②類似 のパ ッセー ジ (
譜 2),③同
一音の反復 (
譜 3),④付点音符 による弓の跳躍 (
譜
4)な どを利用 した ものである。一方ジェ ミニアこ は,様々なポジションと運指 を用い, あ らゆるポ
ジシ ョン移動 の可能性 を試 みてい る点 で興 味深 い
2
3
)
(
譜 5, 6)
0
†
′T字
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f
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一
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〟 f J.
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-!
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ノ
1
ヽ1
■
■
_
l
譜
上
/
4
3
号」
3
1
34
E3之3
(
b) 指の伸長
音程 の拡大 を得 るために,同一 のポジ
ションで指の伸長が行われ るが,特 に小
指 と人差指 によるもの は最 も効果が大 き
い。 これ は,異 なる弦 を奏 した り,重音
やアルペ ッジ ョの奏法 には欠かせない技
法である。
奏 法 で最
モーツ ァル トで は,異 なる弦 と二重昔
2
4
)
さ れ て い るが (
譜 7, 8)
,指の伸長 は,オクターブか ら次第 に小
高
1
0
度
の
広
が
り
が
示
し
て
伸
ば
0
る。一方ジェミニア一二は,小
指
を
し
て
得ら
2
5
)
れ た 同 度 の 2重 昔奏法 を, す べ て の 弦 と ポ ジ シ
ョンにわたって試 ている (
譜9
)
描 , 人 差 指 を伸 ば
語7
n
享.
? .i.i,喜原
五
諸J
g
い く方 法 が 多 く と られ
4'之′
タ/
≠/
阜 /i/
才
み
ヴ ァイオ リン奏方の確立 と展開
3
5
(
C) ヴ ィブラ- ト
1
8
世紀 当時, ヴ ィブラ- トは現代 ほ ど発達 した もので はな く, ご く控 え目に用 い られていた。
2
6
)
ジェ ミニア一二, モーツ ァル トはいずれ も, ヴィブラ- トを装飾 の 1種 として扱 い, モー ツ ァ
ル トは,持続音 と楽 曲やパ ッセー ジの終止音 だけにその使用 を認 めている。技法 に関 して も,
2
7
)
モー ツ ァル トが,指 をしっか り押 え,手全体 による小 さな動 きを指示 してい る以外 に,具体 的
記述 はない。 しか しこのヴ ィプラ- トは,後述す る運 弓の微妙 なニ ュアンスの表現 と密接 に関
連 す る もの と考 えられ る。 ジェ ミニア一二が,持続音 の クレツシェン ドのヴ ィブラ- トで威厳
を,短 い音 の弱 く,柔 らかいヴ ィブラ- トで苦悩 や恐怖 を表現 しようとしてい るの は, ヴイブ
2
8
)
ラー トが感情表現 の手段 としていか に重要であったか を物語 っている0
(
d) 半音 の運指 について
モー ツ ァル トの半音 の運指 は,現在一般 に行 われてい るように同一 の指 を用 いてい るが, シ
2
9
)
ャープ とフラ ッ トの運指 を区別 している(
漕l
o, l
l)
。 ジェ ミニア一二 は, 同一 の運指 は特 に速
い演奏 で は難 しい として,すべての半音 に異 なる指 を指示 してい るが, これ は当時で は特異 な
3
0
)
もの として注 目され る (
譜1
2)
0
譜1
0
譜1
1
(
2
) 右手 の技法
(
a) 運 弓のニ ュア ンス
モー ツ ァル トは,美 しい音 を得 るために,運 弓 における強弱,緊張 と弛緩 の必要性 を強調 し,
3
1
)
ニ ュア ンスの異 なる 4種類 の運 弓を示 している。即 ち,(
彰タレツシェン ドののちデ ィ ミヌエ ン
ドす る もの (<>),(
卦強 く始 まりデ ィ ミメ エ ン ドす る もの (
>)
,(
参柔 らか く始 ま りクレツシ
ェン ドす る もの (<),④ 1回の運 弓 にクレツシェン ド, デ ィ ミヌエ ン ドの交代 が 2度 あ らわれ
彰は緩徐部分 の長 い音符 に,② は速 い部分 の短 い音符 にふ
る もの (<> <>) の 4つであ り,(
we
l
l
i
ngクレツシェン ド弓 を重視 し,揺
さわ しい とす る。ジェ ミニア一二 は,音 を増大 させ る s
徐部分 の 2分, 8分, 4分音符 ばか りでな く,急速部分 の 2分, 4分音符 に もクレツシェン ド
3
2
)
弓が もっ とも良 い としてい る。 モーツ ァル トが,楽 し くお どけたパ ッセー ジは軽 く短 い弓です
3
3
)
ばや く弾 き, ゆっ くりした悲 しい作 品 は長 い弓で単純 に優 し く弾 くべ Lと述べてい るように,
8
世紀 の感情美学か らの要請 に答 えた もの といえよう。
細 やかな運 弓のニ ュア ンス は,1
(
b) スタ ッカー ト
1
8
世紀 の当時, スタ ッカー トを表示す る記号 は点 ・,線 上 模 ▼の 3種 があったが, その区
3
4
)
別 はあ ま り明確 で はない。 モーツ ァル トは主 に線型,部分 的 に点型 を, ジェ ミニ ア一二 は線型
のみ を用 いている。 モー ツ ァル トは,短 い運 弓で弓 を打 ちつ けて,各音 を分離 す るよう指示 し
3
5
)
てい る。 モーツ ァル ト, ジェ ミニア一二で はいずれ も, 弓 を弦 か ら離す a
uf
he
be
n,t
akeof
fと
3
6
)
い う表現 が見 られ るが,現在 の完全 な弓の跳躍 とは異 なる もの と思われ る。 当時 のスタッカー
3
6
今井民子 ・笹森建英
トは,単 なる音 の分離 を意味するだけで,現在 のスタッカー トの一種 である,弓が弦か ら離れ
3
丁
)
て跳躍す る奏法 (
s
pi
c
cat
o,s
aut
i
l
1
6) は含 まれていなかった。
ジェ ミニア一二 は,スタ ッカー ト奏法 をあま り評価せず,速 い部分 の 8分音符 だけに認 めた
3
8
)
のに対 し,モーツァル トは, スラー とスタ ッカー トを組 み合わせ た連続 スタッカー トを多数試
3
9
)
みている。特 に初心者 には難 しい とされ る- 弓に多 くの音符 の連 なる例 で は,右手 の弛緩 と弓
の遅延が必要であ り,均等のテンポ,強 さを保 ち,急がず, のみ こまれ るように奏す るのが良
i
O
)
い としている (
譜1
3)
。 また 3拍子 の例 で も,
.
■
■
■
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■F 一
■
1
■
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譜n
1
3
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■
\ヽ
/
r 一丁一一
E5
:
J
l
一
一
-
■ ■■■
1
4
通 りの運弓の可能性 を示 し, スタ ッカ
実 に3
ー ト奏法へのモーツァル トの強 い関心が窺わ
れ る。
(
3
) 重音奏法
重音奏法 は,右手 の運 弓 と左手 の運指両方の高度 な技術 を伴 う。 まず 2重音で は,先述 のよ
0
度 の 2重音 を得 ている。 またモーツアル トで注 目され
うに,モーツァル トが指の伸長 によ り1
4
1
)
るのは,重音 の トリルである。彼 は重音 の上声部 だけに トリルを施 した伴奏 トリルの他,主 に
4
二
!
)
カデンツの終 りで,両声部 とも トリルで奏す る 3度, 6度の 2重 トリルを試みている (
譜1
4)
0
ジェ ミニア一二 は,同度か らオ クターブに至 るすべての音程 の 2重音 に対 し, あ らゆるポジシ
4
3
)
ョンでの運指 を試み (
譜1
5
,1
6
)
, またポジシ ョンの移動 を含 む高度 な重音奏法 も行 ってい る
4
4
)
(
譜1
7)。
3つ以上 の音 を奏する多重音奏法 に関 して, モーツァル トは,-弓で同時 に とらえることと
4
5
)
ご く簡略 に述べているにす ぎない。当時の音価 は実際の楽譜 よ りも短 く演奏 され るので,低 い
i
6
)
音か ら順 に分散和音 として奏 し,最上音 を保持 す るのが一般 に認 め られている重音奏法である。
なお,1
7
世紀末か ら1
8
世紀 の ドイツで特 に発展 し,J
.S.
バ ッハの無伴奏 ソナタで頂点 に達す る
対位法的な重音奏法 は, モーツァル トで は全 く見 られず, ジェ ミニア一二で も最後 の曲例 にわ
4
7
)
ずかに認 め られ るにす ぎない (
譜1
8)。
諸1
5
3
諸
1
6
H
3
7
ヴ ァイオ リン奏 方の確立 と展 開
(
4
) アルペ ッジ ョ
4
8
る
。
モー ツ アル トは, アルペ ッジ ョを分散和 音 と定義 し, その音型 は無 限 に存在 す るが, これ を
)
モー ツ ァル ト
決定 す るの は 1つ は作 曲家 で あ り, もう 1つ は演奏家 の良 い趣 味 で あ る とす
は次 の 7つの実施例 を示 して い るが, 当時 はアルペ ッジ ョの表 示 は冒頭 の部 分 だ けで,残 りは
9)
。一 方 ジ ェ ミニ ア一二 は,基本 の コー ド進行
重音 の まま記譜 され るのが一般 的で あ った (
譜1
8の アルペ ツジ ョを実施 して い るが
に対 し,重音 との組 み合 わ せ や様 々な リズ ム型 を用 い た1
1
9
)
0
)
, これ らは当時 のアルペ ツジ ョの即興 的性格 を強 く反映 す る もの とい え よ う。
(
譜2
今井民子 ・笹森建英
表/
.
庁
門
守
召
■
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一
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行頭
辞■
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1
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〆招 雪
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I
I
L
■
-
特殊奏法 として, ジェ ミニア一二 はブ リス-ル b
r
i
s
ur
e(
裂 け目の意味)を試みている
。
これ
は,隣接 しない離れた弦 を用いて,極 めて広い音程跳躍 を得 るもので,高度の運 弓技巧 を必要
5)
またモーツァル トは,音楽用語 の 1つ として ビッツイカー トをとりあげ,弦 は
とす る(
譜2
0
1)。
下か らで はな く脇方向へ,親指 を指盤の端 にあてて人差指で はじ くのが良 く,用いる指 は,親
指 は肉厚で弦 の振動 を損 うため,和音全体 を同時 に鳴 らす以外 は,人差 指が望 ましい として
5
1
)
いる。
譜2
1
その他,特 に1
8
世紀 フランスで発達 したハーモニ ックスについては,両者 とも全 くふれてお
5
2
)
らず, また1
7
世紀以来 の特殊 奏法 で あ る コル ・レ一二 ョ c
oll
e
g
no (弓の木 の部分 で弦 を打
つ),スル・ボ ンテ ィチェッロ s
ulpo
nt
i
c
e
l
l
o(
駒上で弾 く),スラ・タステイエ ツラ s
ul
l
at
a
s
t
i
e
r
a
(
指盤上で弾 く) について も全 く言及がない。基礎的なヴァイオ リン技法 の指導 に主眼 をお く
彼 らに とって,特殊効果 を目的 とした これ らの技法 は,主たる関心事で はなかった といえる。
3. モーツアル トとジェ ミニア一二の指導書 の意味
モーツ アル トは序文で,彼 の著書の目的 は,「
聡明な独奏者 の良い趣味 の育成 と良いスタイル
5
3
)
の確立 にある」 と述べている。 またジェ ミニア一二 は序文で 「
音楽 の目的 は耳 を楽 しませ るだ
5
4
)
けで はな く,感情 を表現 し,想像力 を刺激 し,人間精神 に働 きか け,激情 を抑制す ることにあ
る」 とし, また装飾音 の箇所で も良い趣味の演奏 の必要性 を といている。彼 らの指導書 には,
趣味 Ge
s
c
hmac
k,t
a
s
t
eや感情 Af
f
e
kt
,s
e
nt
i
me
ntについて言及 した箇所が数多 く見 られ るが,
これ らが 1
8
世紀感情美学の反映であることは明 らかであろう
。
ジェ ミニア一二 は演奏 について,楽器 の音色 は人 間の声 に匹敵す るように,「
正確 に,適切
に,繊細 な表現で奏 し」,急激 なポジションの移動 や これ に類 す る もの は単 なる早 わ ざにす ぎ
5
5
)
ず,音楽の技法で はない と強 く批判 している。 この ことは,モーツアル トやジェ ミニア一二の
指導書が名技性 v
i
r
t
uos
i
t
yを排 し,基礎的なヴァイオ リン技法 の指導 を目的 とした ことを意味
ヴ ァイオ リン葵方 の確立 と展 開
3
9
モーツアル トとジェ ミニア一二の指導書 はやや性格 を異 に し, モー ツァル トの技法が極 めて
実践的で実現可能 な ものであ るの に対 し, ジェ ミニ ア-この もの は,演奏 の可能性 を限 りな く
追求 した, いわば理論的色彩 の強 い もの といえる。 とりわ けそれ は,異 なる指 を用 いる半音 の
運指, あ らゆるポジシ ョンで実施 した 2重音 の奏法,様々 な リズムを施 したアルペ ツジ ョな ど
に顕著 にあ らわれている。
1
1
1
.日カテ ッ リの カブ リスについて
2
4曲か らなるロカテ ツリのカブ リス は,作 品 3のヴァイオ リンの ソロ ・コンチ ェル ト≪ ヴァ
r
t
ed
e
lVi
ol
i
n
o> (
1
7
3
3
)の1
2曲の 1,3楽章 の末尾 に付与 され た作品で
イオ リン技法 L'a
56)
ある。作品のタイ トルに 「
任意 に a
dLi
bi
t
u
m」 とあ り,演奏 を奏者 の選択 に任せていること,
コンチ ェル トとのテーマ上 の関連 がほ とん ど見 られない こと,様 々なヴァイオ リンの難技巧が
即興 的に展開 されていることな どか ら,名人技巧 の披露 を目的 にコンチェル トか らは独立 して
9
世紀で 古
事パガニーニ をはじめ,P.
Ro
d
e
,
R.
書かれた作品 といえるo この ようなカブ リスは,1
Kr
e
u
z
e
rな どが手が けて一般的 となったが,1
8
世紀 の前半 で は他 に例 をみない ものである。
基礎的なヴ ァイオ リンの技法 を とくモー ツァル トや ジェ ミニア一二 とほぼ同時代 に,超絶 的
なヴ ァイオ リンの技巧 を追及 した ロカテッ リのカ ブ リスがあ らわれた ことは興味深 く, ここに
は新 しいヴ ァイオ リン語法の雨芽 が認 め られ るo次 にその中の特徴 的な ものを検討 してみよう。
1. カブ リスの演奏技 法
(
1) 左手 の技法
(
a) ポジシ ョン
モー ツアル ト, ジェ ミニア一二の最高ポジシ ョンは第 7ポジシ ョンであ るが, ロカチ ッ リは
0ポジシ ョン (
1
7
番 カプ リス)や,部分的で はあるが第 1
6ポジシ ョン (
2
2
これ を大幅 に越 え,第 1
番カプ リス)まで用 いている (
譜2
2
,2
3
)
。現在 よ りも短 い当時の指盤で は,極端 に高いポジシ
ョンの手
5
7
) の位置 は,指盤か らかな り離れ ることにな り, これ は当時 の演奏記録か らも裏づ けら
れ る。音楽 の内的要求か らポジシ ョンの必要性 を とくモーツ ァル トとは異 な り, ロカテッ リの
高 いポジシ ョンは,楽器 の音色 よ りも視覚的効果 を目的 とした名人芸 の誇示 とはいえないだ ろ
うか。
これ は, ポジシ ョンの移動 について もあてはまり, モーツ ァル トが不必要な手 の移動 を禁 じ
たのに対 し, ロカテ ッリは急激 なポジシ ョンの移動 を連続 させて,聴覚 ばか りでな く視覚的効
5
8
)
果 も意図 した もの と考 え られ る (
2
4
番 カブ リス,譜24)0
(
b) 指 の伸長
0
度 を越 え,1
3
度 に及
ロカチ ッリの場合,左指の伸長 か ら得 られ る音程 は, モー ツァル トの1
んでいる (
1
6
番 カブ リス,譜 2
5
)
0
今井民子 ・笹森建英
(
2) 右手 の技法
(
a) スタ ッカー ト
6
ー弓 に多 くの音符が連 なる連続 スタ ッカー トは, ロカチ ッリに顕著 な技法の 1つである01
もの音符 を含む もの (2番 カブ リス,譜2
6
)
,重音 を加 えた もの (
1
4
番 カブ リス,譜2
7
)
, アル
8
)な ど技巧 の高度化が図 られ,特 にアルペ
ペ ッジ ョと組 み合わせた もの (7番 カブ リス,譜 2
ツジ ョで は上 げ弓ばか りでな く,下 げ弓 に も連続 スタッカー トが用 い られている。
(
b) 重音奏法
1
2番 カ
ロカテ ッリの 2重音 は,特 に 3度が著 し く, しか も連続 して用 い られ ることが多 い (
:
)
9
)
9
,2
0
番 カブ リス,譜3
0
)
。 また多重音 の連続使用 も多い (
1
0
番 カブ リス,譜 3
1
)。
ブ リス,譜2
(
C) アルペ ッジ ョ
モー ツ ァル ト, ジェ ミニア一二が強 い関心 を寄せたアルペ ッジ ョは, ロカテ ッリによって t
)
ILa
bi
r
i
nt
oAr
mon
i
c
o) と
愛用 され, カブ リスのすべてにあ らわれ る。中で も≪和声の迷宮 I
3
番 カブ リスは,全曲アルペ ッジ ョだけで書かれた作品だが,普通 冒頭 に
い うタイ トルを もつ2
ある運 弓の表示が全 くな く,様 々なアルペ ッジ ョの可能性 が奏者 の即興 に任 されている。 また
a
t
t
e
r
i
e(
打撃 の意味)ち
アルペ ッジ ョの一種 で, スラー をとり除 いて 1音 づつ奏 す るバ トウリb
6
∩
)
1
3番 カブ リス,譜 3
2
)
0
多 くみ られ る (
(
d) プ リス-ル b
r
i
s
L
I
r
e
ヴ ァイオ リン奏方の確立 と展開
4
1
ジェ ミニア一二 もとり上 げた この技法 を, ロカテ ッリは第 7ポジシ ョンの D, E弦で試 みて
6
1
)
いる (4番 カブ リス,譜 33)0
譜3
2
(
e) バ リオラージュ b
ar
i
ol
age
特殊奏法の 1つに,隣接す る 2つの弦 を用いて,同一 の音 を異 なる音色で交互 に演奏す るバ
リオラージュ ba
r
i
ol
age(
色彩 の混合 の意味)が ある。 これ には開放弦 を含 む場合 と含 まない場
合 とがあるが,反復 され る同度音 は保続音 の効果 をあげる。 ロカテ ッリには,開放弦 を含む も
の と (2番 カブ リス,譜 34)
,反復 す る同音 の間 にオ クターブ音 を混 えた変種 (
21
番 カブ リス,譜
35)も見 られ る。
譜3
4
以上検討 したように, ロカテ ッリのカブ リスには, モーツァル トやジェ ミニア一二の基礎的
なヴァイオ リン技法 をはるかに上 回る高 い技巧が追求 されている。 ロカテ ッリ自身 によるカブ
6
2
)
リスの演奏 は, その道 弓の烈 しさと速 さで当時の人々 を驚嘆 させた と伝 えられ るが,す ぐれた
W.
Mar
pur
gは「
彼 は楽器 を とて もよ く響かせて演奏 したが,余 りに荒々 しか
批評家である F.
6
3
)
ったので,繊細 な耳 には耐 え難か った」 と述べている。 また同時代 のヴィヴァルデ ィの極 めて
高 いポ ジシ ョンの演奏 も,「あ ま りに人工 的で演奏 を楽 しむに は至 らなか った」 と評 され て
6
4
)
いる。確かにロカテ ッリの技巧 は,時 にヴァイオ リン本来の美 しさを損 うこともあっただろう
9
世紀 のパガニーニの先が け として注 目され る。
が,聴衆 を意識 した彼 の名技性 は,1
Ⅰ
Ⅴ.2
0世紀のヴ ァイオ リン音楽の特徴
2
0
世紀音楽 は戦後 に大 きく変貌 した。 この論文で は特に1
94
5
年以降 を問題 とす るが, そ こに
0
世 紀 に於 けるヴ ァイオ リン奏 法 の特徴 をポイ デ ン Bo
yde
n,
至 る過程 を概 観 して み よ う。2
Davi
dは次 の ように要約 している。
bus
s
yやラヴェル Ravelの作品に弱普,トレモロ,ハーモニ ックスが印
「
既 に ドビュッシー De
91
8
年以降,独特の開発が以下 のよう
象主義特有 の響 きを出すべ く用い られていた。 さらに,1
r
avi
ns
ky,バル トー ク Bar
t
ok,ヒンデ ミッ
な作 曲家 によってなされた。ス トラヴィンスキー St
トHi
nde
mi
t
h, シェー ンベ ル ク Sc
hGe
nbe
r
g,ベ ル ク Be
r
g, ヴューベ ル ン We
be
r
n。 と りわ
け,ス トラビンスキー はヴァイオ リンを打楽器の ように用 い,バル トー クは新 しい ビッツイカ
pi
z
z
i
cat
os
ulpont
i
c
el
l
o,pi
z
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z
i
c
at
oc
hor
ds
,
ート (
t
r
e
mol
ipi
z
z
i
cat
i
)や伝統的な奏法で はあるが新 しい取 り扱い方でグ リッサ ン ド,ホワイ ト・ト
6
5
)
ー ン whi
t
et
oneな どを用 いた」。
1
9
世紀のロマ ンテ ィシズムへの反発 もあ り,過去 には避 けられた音楽理論や奏法が積極的 に
取 り上 げ られ,表現手段 となっていった。た とえば,先 に考察 した L.モーツ ァル トが避 けるべ
きだ と指摘 した奏法が,上記 のようにバル トー クによって積極的 に取 り上 げ られ, その後 の作
4
2
今井民子 ・笹森建英
曲家 たちの好 んで用いる手法の一つ となっているのである。因みにモーツァル トの教示 した ビ
ッツイカー ト奏法 は先述 のように人差 し指の先で弦の横 か ら弾 くものに限 られていた。 さもな
t
he
r
wi
s
et
he
ywi
l
ls
t
r
i
ket
hef
i
nge
r
boar
d
ければ音 を損 な うと以下 の ように述べている。:O
6
6
)
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nt
her
e
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at
t
l
e,ands
oatonc
el
os
et
hei
rt
one.
」
1
9
4
5
年以降で は, ヴァイオ リンの音 に対す る大 きな変化 は作 曲家の要請 として もた らされた。
r
as
at
e,
Pabl
odeな どのようにヴァイオ リニス トが演
ロカテ ツリやパガニーニ,サ ラサーテ Sa
奏技巧 を開発 して行 った経緯 とは異 な り,作 曲家 の新 たな音楽思考が導 き出だ して行 った面が
大 きい。柴 田純子 も同 じ指摘 をす る。すなわち 「
作 曲家が 自己の語法 にヴァイオ リンを従わせ
る傾 向 は増大 し, (
中略)それぞれの語法が必要 とす る新 しい技巧上 の問題 を演奏家 に提起 して
いる。」そ して 「
一方,演奏家の側 では作 曲家 の要求 に対処す るために運指,運 弓のメカニ ック
6
7
)
な訓練方法が とられた。」
ペ ンデレッキ Pe
nde
r
e
cki
, Kr
z
ys
z
t
ofの≪広島の犠牲者 に捧 げる哀歌 Thr
e
nody f
or t
he
0
世紀 の音楽では他 の楽器 と同 じ く種々の
Vi
c
t
i
m ofHi
r
os
hi
ma≫ (
1
9
6
0
) に見 られ るように2
新 しい奏法が開発 され,用い られた。
t
hBr
i
ndl
e,Re
gi
nal
dは 『
TheNe
w Mus
i
c』 (
1
9
7
5
)で以下 の よう
ス ミス-プ リン ドル Smi
に述べ る。「
楽器 の新 たな可能性 の追求 は第一 に色彩 の対比 をさせ るためであった。また,これ
は我々の時代 に典型的で,我々の音楽 に支配的 になって きているのであるが,鋭 く,殆 ど金属
ornoveli
ns
t
r
ume
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alpos
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bi
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shasbe
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的な音が必要であったか らである。f
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6
8
)
ofs
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c
hi
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i
veofoura
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odomi
nat
eourmus
i
c.
世紀音楽 の一つの特色 は音源 に遡 って音楽 を思考す る ところにある その よい例が具体音
2
0
。
s
i
queconc
r
e
t
e,プ リペ ア ド・ピアノ pr
epar
e
dpi
ano,
ピアノ内部奏法等である。 ヴ ァイオ
楽 mu
リンもその傾 向か ら免れ る もので はなかった。 しか しなが ら,弦楽器 には新 たな技法が他の楽
器 に比 して多 く考案 されていない。バル トー クやヴェ-ベル ン等 に依 って殆 ど開発 して しまっ
たかの様相 を呈す る。 しか しなが ら, そのなかで も特 に新 しい奏法 としてス ミス-プ リンデル
ai
l
pi
e
c
eの間 を弓で奏す」,「メカニカルなノイズを出す方法,
が指摘す るのは 「
駒 と緒止 め板 t
6
9
)
楽器 を手や他 の素材で叩 くな ど」 の 2つの技法である。
既存 の奏法であって も, ボーイングの位置,種々の ビッツイカー ト,ハーモニ ックス, トレ
モロ, コル ・レ一二 ョ等の用い方が多様 な変化 を示 し,例 えばバル トー クが用いた重音奏法の
使 い方 ももっ とシステマテ ィックになった。
コープ Co
pe,Da
bi
dは 『
Ne
w Mus
i
cCompos
i
t
i
on』 (
1
97
7
)の第 1
4
章 [
Ne
w"
t
r
adi
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i
onal
"
I
ns
t
r
ume
ntRe
s
our
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e
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]で,伝統的な楽器 による新 しい音響 の素材 を示 している。 その可能性
e
r
c
us
s
i
vee
f
f
e
c
t
s
,②音響 の多重性 mul
t
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phoni
c
s
,③ ミューテ ィン
として,①打楽器的な効果 p
t
i
nge
f
f
e
c
t
s
,④伝統的な技法 の拡張 e
xt
e
ns
i
onsoft
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adi
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hni
que
s
,⑤劇的
グ効果 mu
7
0
)
な効果 d
r
amat
i
ce
f
f
e
c
t
s
,以上 の 5つが指摘 されている。
弦楽器 に関 してコープは以下 の様 に述べ る。
St
r
i
ngi
ns
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r
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shaveani
mme
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evocabul
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7
1
)
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.
ヴァイオ リン奏方の確立 と展開
4
3
指 の爪や指 の腹,手 のひ らで コツコツ叩 き,軽 く叩 く,ぴ しゃ りと打つ,等の他 に楽器其れ
自体の色々 な部分 によってその効果 は明瞭に異 なる。
この種 の効果 についてであるが,実際に作品 に用いて演奏 してみるとチェロが特 に多様 な可
能性 を持 っているのが分かる。 ヴ ァイオ リンで は,同 じ技法 を試みて も余 り豊かな音響,音量
が期待 で きない。 コープ も 「
wi
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hs
mal
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n,
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hee
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f
e
c
t
sar
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7
2
)
notne
ar
l
ys
or
e
s
onantorl
oud.」 と指摘 している。
弓の使 い方 に於 いて もコル ・レ一二 ヨ自体 は以前か らある奏法であるが,駒 の上,緒止 め板,
緒止 めボタン,駒 と緒止 め板 の間の弦 な どに用いることが出来 る。 なお, この奏法 は楽器や弓
を損 な うもうのでないが,高価 な弓の代わ りに鉛筆 な どを使 うことをコープは助言 している。
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Ⅴ.記譜法 not
a
t
i
on
新 しい奏法 には必然的に新 しい記譜法が要請 され る。2
0
世紀の音楽 にあって は,記譜が其れ
自体大 きな問題 であった。
文字 によるの 2種がある。 それ
音 の現象 を視覚 に置 き換 える方法 としては1.
記号 による,2.
を以下 に考察す る。
1
)
既存 の記号 をその債 に用いる。(
2
)
意味 を変 えて用いる。(
3
)
変化 を加 えて用いる。
1. 記号 。(
(
4)
新 たな記号 を作 る。(
5)
グラフ,絵画図形 を用いる。
2. 語 ・数字 ・文。(
1
)
既存 の音楽用語 (
pi
z
z
i
c
at
o) その略記 (
pi
z
z
.
)(
2
)
新 たな意味 を付加,
3)
新 たな用語 を用いる。(
3)
記号 に対す る説明文 。(
4)
文章。
または別 な意味 に変化 させ る。(
それぞれ に長所短所がある。 コープは以下のように指摘す る。記号 は,新 しい音響が考案 さ
れ る度 に新 たな記号が作 られ,無限に増加 してい く。誰かが新 しい記号 を明 日に作 り,それ ま
での記号 は流行遅れ になる。絵画的な表記 は便利 であるが, あ ま り多 く用いる と演奏者 を混乱
させ るばか りでな く楽譜 を解読不能 に して しまう。言語表現 は如何 なる表現 を採 るかが問題 で
ある。長所 として,視覚的な記号で はそれ以上 の説明が不要である。言語表記で は音符 の市場
not
at
i
onmar
ke
t
pl
ac
eに洪水 の ように溢れ る多様 な記号 を暗記す る必要がない。両者 とも其れ
7
4
)
自体 として成立 し難 い。 どちらかに固定す る と言 うの も無意味である。
記号 について具体例 を示せば,c
ons
or
dとスペ リングで表記せず 「「 「 」 と描 くが如 きで
ある (
Cope1
9
7
6p.9
7
)
。 こうす ることによ り,演奏者 に的確 な奏法 を視覚的 に容易 に,瞬間
ulpont
i
c
el
l
oは [/\ ],s
ult
as
t
oは [/ヽ ]の様
的に把握 させ ることが出来 る。同 じ くs
ent
sによって明記す ることがで きる[
譜
に表記す る。微分音 の音高指示 は矢印,またはセ ン トc
3
6]
。
絵画 を用いるのは,図形化 して記号性 を希薄 にし,象徴化 してい く作業である。
音高 ・音形 p
i
t
c
h・f
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gur
e,リズム r
hyt
hm,ダイナ ミックス dynami
c
s
, アーテ ィキュレーシ
ョン a
r
t
i
c
ul
at
i
on,これ らに対す る新 しい表記法 はヴ ァイオ リンに限 らず他 の楽器,声楽で も考
案 され,すでに標準化 しているもの も多い。 その使用例 を知 る上で参考 になる著書 は, コープ
著 『
Ne
w Mus
i
cNot
at
i
on』 (
1
9
7
6)
, コープ著 『
TheNe
w Mus
i
cCompos
i
t
i
o
n』 (
1
9
7
7
), ス
ミス-プ リン ドル著 『
TheNe
w Mus
i
c』 (
1
9
7
5
)
, リー ド Re
ad,Gar
dne
r『
Mus
i
cNo
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i
on』
4
4
今井民子 ・笹森建英
7
5
)
(
1
96
9) である。 その中で も優れているの はコープの 『
Ne
w Mus
i
cNot
at
i
on』 であ り,記号
の種類,意味,誰が何 の曲で用 いているか, さらに他 の類似,類義記号 を表 に して示 している。
0
世紀の弦楽器 の技法が如何 なるものであるかを示すために, コープ
ヴ ァイオ リンを含 めて,2
笹森)が作品で用 いた もの として は
の説明文 を翻訳 し [
図 8] として示 した。 このほか筆者 (
7
]で示 した奏法,記号がある。 [箪 塾 ≡
≡] は駒 の横 を弓奏す るものであ り,「
[
譜3
は三味線 の擬 を用 いての ビッツイカー ト,「亭 喜 ≡書 」 は擬で ビッツイカー ト奏法 をした後,
弦 の振動 に擬で軽 く触 り,三味線 のサ ワ ・
)の効果 を出す ものである。「…蒜 書
芸 ∈ 警 」は糸巻
を締 めた り緩 めた りしなが ら音高 を下 げて行 く奏法である。
ここで演奏家 (
聴衆)の悪意 にまかせ る音楽 について述べ る。 この種 の音楽や思想,技法 を
eat
or
y,不確 定性 i
ndet
er
mi
nacy,偶 然性
表現 す る語 として は以下 の ものがあ る。偶発性 al
c
hanceope
r
at
i
on,イヴェン トe
vent
,ハ プニ ング happni
ng等。 こうした音楽で は,演奏す る
内容 の自由さか ら,演奏 しない ことの自由さ,楽器 を潰 した り投 げた り,楽器 を演技 の採 り物
にす ることまで を含 んでいる。 また,聴衆が演奏家 に何 を演奏 させ,何 を聞 き,何 を聞かず,
いつ演奏行為 を中止 させ るかの自由 まで含 んでいる。 これ らの記譜,奏法,演技 について は稿
を改 めて論 じたい。
奏法其れ 自体 よ り,記譜法の考案 (
如何 に的確 に作 曲者,記譜者の意図が伝達で きるか), そ
してその統一,一般化が問題 となる。個々人 によって同 じ奏法が異 なった記号で示 され百人百
様 である。記号が個人 の表現様式の一部分 とまでなったかの様態 を示 しているが,客観的な伝
達以外 の何か をそれ は含 んでいる。 曲に対す る,記号 に対す る自己の刻印であ り,音楽思考 を
過去 の,他人 の記号や枠 に閉 じ込めない作業 にす るためであろう。記号や絵画 を配列 した り,
文章 のみで作 曲行為 をす ることもで きるのである。
おわ りに
2
0
世紀 には1
9
世紀的な音響 に対す る積極的なアンテ ィテーゼ として音響 その ものの根源か ら
思考 し直す ことが行われた。過去 にはして はな らない と言われた奏法が積極的 に使用 されたの
もその一つの現れであった。
1
7
世紀か ら1
8
世紀 にか けて は, よ りよい音響, よ り機能的な奏法 を求めて楽器 の完成 を目指
0
世紀 には楽器 その ものの改良 よりは,奏法の開発が主であった。一方,新 しい音
した。然 し2
響素材 は,新 しい楽器 を作 ることやエ レク トロニ ックな音響,欧米以外 の民族音楽か らの楽器
8世紀 と大 き く異 なる所であ
借用,楽器以外 の器物 の転用な どを求 めたのである。 この ことが1
る。
演奏家兼作 曲家 とい う音楽家 の在 り方が変化 し,演奏家 と作 曲家がそれぞれ専門家 し分離 し
0
世紀 の演奏技巧 は作曲家 の新 たな要請 として求め られ,開発 された
た ことも理 由であ ろう。2
のは先 に指摘 した通 りである。 しか し,作 曲家が主導 した とは言 え,演奏家 の協力 な くして は
目的 を達成す ることはで きなかった。新 たな記号,特 に絵画的な指示 は作曲家 と演奏家 の密接
な意思伝達 を必要 とした。御抱 えの演奏家 の特技 を利用 し,共 に技巧 を開発す る作業が種 々行
われた。
9
5
0年代後半か ら1
9
60
今, その世代 は過 ぎようとしている。特 に,戦後 の新 しい試 みの内,1
年代 に行われた様式 は,すでに過去 の もの となって しまったかの感がある。作品が作曲者 の手
か ら離れ,楽譜 にのみ残 され, コンビを組 んだ演奏家が居な くなった時, その作品群 は危機 を
ヴ ァイオ リン奏方 の確立 と展開
4
5
迎 えるのである。図形楽譜,偶然性 を意図 した記譜がかえって或 る面で は内容 の規範性 を強 く
もっているの は大方が指摘す るところである。 また個性 の象徴 としてあった百人百様 であ りえ
た記譜 も,時代 を過 ぎて は統一 し標準化す る必要 に迫 られ る。
遠 く隔たったが故 に客観的に検討 し,それ らが何であったか を時代的な変遷 の中で位置付 け
ることが可能 になっている。特定 の作 曲者 と特定 の演奏家 による個人的な約束 ごとであった事
柄 を普遍化す ることも出来 る。 そ して, さらにはその様式 を学 び演奏 し鑑賞す るための指導書
8
世紀 の発展 の歴史 を学 び直す必要があるだ ろう。
も求め られ よう。 その意味で, もう一度,1
1
8
世紀 の画期的な局面 を展開 した過程 には,単 なる過去 の集大成 としての教育書があったばか
りでな く, それ を越 えた新 たな展開があった。超絶技巧 を展開 した名人 の功績 に負 うところが
あった。
教則本,練習曲の果 たす役割 について ここで考 えてみる。
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6
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keys
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これ はファーガ ソン Fe
r
gus
on,Howar
dによる 「
練習 曲 s
t
udy」の説明の冒頭 の文 で あ
る。一般 には 「
器楽曲で,演奏技術 の難 しい部分 を掃出 し, その技術 を開発 し完全 にす るため
t
udyも e
xe
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eも同意義 に用い られていた。 しか し,e
xe
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eの方
の もの」を指 し,かつて は s
i
gur
eや楽 曲の一部分 pas
s
ageを何 回 も繰 り返 す練習。音 階上 の異 な った音 高
が 「
短 い音形 f
で, または異 なった調で繰 り返 し練習す ること」 を指す ようである。
ファーガ ソンが指摘す るまで もな く,意図的 に練習曲 として作 られた もの以外で も練習曲 と
s
z
tや シ ョパ ン Chopi
nの作 品 にみ られ る演奏会用練習 曲
しての機能 をはたす楽 曲, リス トLi
nual
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な ど種類 は多い。日本語で は両者 とも「
練習曲」と訳 し,そのための ma
を 「
教則本」 と呼んでいる。
知識 を伝達 し,問題解決 に資 し,練習のため,鑑賞 のために,便利 な形態, 内容,性格が指
0
世紀音楽 の徹底,普遍化 をはか るための教育的な施策 として は以下 の事
導書 には問われ る。2
1)L.モーツァル トと同 じ く,機械的な練習の教則本 (ピアノ学習 に於 けるハ
が考 えられ よう。(
2)
技巧 を専 らとす るカブ リ
ノン的な練習曲) を作 り基礎的な技術 の個々の奏法 を練習 に資す。(
ス的な曲集 を作 る。
この時代 に開発 された種々な技巧 を用いて未来 の音楽 を拓 いてい く可能性 は末だ大 き く残 さ
れている。 この論文 の末尾 に掲載 したコープが まとめた奏法のマニ ュアル はその手掛か りとな
るものであろう。 当然,楽譜 (
記号 ・文字)のみによる伝達 には種々の限界がある。 ビデオな
どの視覚的な伝達方法,テープ,CD な ど音 としての伝達方法 も併せ もたなければな らない。そ
れ よ り何 よ りも,生 きた演奏 の継続,発展 こそが肝要である。
8
世紀 については今井民子が執筆 し,後半の2
0
世紀 は笹森建英が執筆 した)
(
前半 の1
今井民子 ・笹森建英
奏法 ・意味
弱音
同 時 に 奏 され、 又 は 持 続 され る の か
2、 3重 把 弦 :此 の 場 合 ど の 2舷 が
明 塀 に 分 か る よ うに 記 譜 され な けれ
ば な ら な い○
ノ ー マ ル 奏 法 :m
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弓 の 背 を 軽 く 叩 く)
緒 止 め 板 とブ リ ッ ジ の 間 を奏 す o
望 ましい記号
用 いた作 曲家
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ヴ ァイオ リン奏 方 の確 立 と展 開
奏法 ・意味
望 ましい記号
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運
る○
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弓必
の、
要
速半
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あ
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弓先
ば
の、
以
長毛
下
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説明
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にけ
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ビ ッ ツ イカ ー トPI
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ビ ッ ツ イカ ー ト:指 瀬 を 打
O
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つ ほ ど の 強 い ビ ッ ツイカ ー ト
初 音 ビ ッ ツ イカ ー ト:初 音 の み ビ ッ ツ
イ
さカえーる.
トを部.き 残 りの 許 は 指 で強 く押
ビ ッ ツイカ ー ト、 ヴ イ プ ラ - ト:
倍 音 ビ ッ ツ イカ ー ト:左 手 を 高 音 域 に
置 き、 倍 音 を 微 か に 出 し ビ ッ ツ イカ トを か す か に 奏 す る○
ビ ッ ツ イカ ー ト
ダ リ ツサ ン ド: 長 さ
を 示 す 音 符 で 指 示 す る こ と○
普 通 の 指 場 外 で 妻 す る ビ ッ ツ イカ ー ト
:括 弧 の 中 に 用 い る も の を 記 す
樟畔
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8
今井民子 ・笹森建英
奏法 ・意味
ビ ッ ツ イカ ー ト
望 ましい記号
ト レモ ロ : 右 手 の 那
用いた作 曲家
他 の記号
標準
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1、 第 2指 で 奏 す る○
ビ ッ ツ イカ ー トと ア ル コ の 同 時 奏 :
^同 音L B異 な っ た 昔 : (左 手 Pi
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ー 左 手 の ビ ッ ツ イカ ー ト:
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奏法 ・意味
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望 ましい記号
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収
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用 いた作 曲家
他の記号
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普
く触
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通れ
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の
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1指 で
を強
指示
く弦
され
を押
たさ
昔に
え、
軽
ト リル、 ト レモ ロ T R IL L, T R EM O T
JO
可 能 な 滞 り高 い ト リル .
'
左 手 の ト リル 、 弓 を 用 い ず :
左 手 の み で (文 字 に よ り種 々 な 指 示
を 行 う、 例 え ば 譜 面 台 を叩 け 等 )
南 を 直 角 に 弓 で秦 す る :
右 手 で戒 を 叩 く:
色 や 青 苗 が 異 な る の で 叩 く場 所 を 必
ボ デ ィを 叩 く : 叩 く場 所 に よ っ て 昔
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,
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P
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Salz
edo式 爪 を 用 い る
P
e
nd
e
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e
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ki
:
5
0
今井民子 ・笹森建英
奏法 ・意味
望 ましい記号
用 いた作 曲家
略 語 に よ っ て 場 所 を 示 す :図 を 用 い ず
指
木板
ヽ
Vo
F
o
i
d
nge
r
boa
r
d
F
W.
B.
に 品 物 や 場 所 を 指 示 す る○ 略 語 は 判 読
こ ぶ LFi
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Fs
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.
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,
Lや す い も の を 選 ぶ.
後
前
弓F
手
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一
J
一
w)
一一-
指 で 弓 を返 す :
摩 滅 昔 を 出す ため に 毛
J
r
.
笛 を 強 く押
.
E
G
c
.
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C
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m
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A
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し付 け る○
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g
L
T
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c
r
umb.
Ka
g
e
L
:ヤ
Co
p
e
.
奏 し な が ら歌 う
〔
譜 3
7〕
」一柳
他 の記号
r
F
n
Peckと Crunbは
辞 去 を 2つ 用 い る
ヴ ァイオ リン奏方 の確立 と展開
5
1
註
1)楽器製作 に関 して は,D.Boyde
n,TheHi
s
t
or
yofVi
ol
i
nPl
ayi
ngf
r
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t
sOr
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nst
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7
61
,
London,oxf
or
dUni
v.Pr
e
s
s
,1
9
6
5の他, Mパ ンシェルル,大久保訳, ヴ ァイオ リン, 白水社,
1
9
67
, Mノヾンシェルル, 山本,小松訳, ヴ ァイオ リン属 の楽器, 白水社 ,1
9
8
3を参照 した。
2)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.1
9
6
n,
前掲書 ,P.1
9
8
3)D.Boyde
4)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.9
5
5)M,Bukof
z
e
r
,Mus
i
ci
nt
heBar
ockEr
a,Chap.1
0
,Ne
w Yor
k,Nor
t
on& Company,1
9
4
7
6)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.3
5
8,1
7
世紀後半 か ら1
8
世紀 にか けてのイギ リスで はヴ ァイオ リン愛好家
の層が広 ま り, アマチ ュア向 けの独学用教則本 が約 3
0
種 出版 され た。
7)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.3
6
8
8)F.Ge
mi
ni
ani
,TheAr
tofPl
ayi
ngont
heVi
ol
i
n,Fac
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i
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7
51
e
d.byD.Boyde
n,P.
2
,oxf
or
dUni
v.Pr
e
s
s
,London,
9)L Moz
ar
t
,Ver
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6,
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.byE.Knocker
,
お英訳版 A Tr
Londo
n,oxf
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e
s
s
,I
s
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d.1
9
4
8
,2
nde
d.
1
9
51も適宜参照 した。
1
0)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,2
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,par
a.3
,
前掲書 ,2
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,par
a.6
l
l
)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,P.2
F.Ge
mi
ni
ani
1
2)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書 ,P.1
1
3
)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,2
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,par
a.3
1
4)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.
3
71
,
前掲書 ,P.2
1
5)F.Ge
mi
ni
ani
1
6)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,2
t
eHaupt
s
t
t
i
c
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a.5
,
前掲書 ,8
t
eHaupt
s
t
t
i
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t
e
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c
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t
t
,par
a.2
1
7
)L Moz
ar
t
1
8)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.3
3
8
1
9)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,8
t
eHaupt
s
t
t
i
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t
e
rAbs
c
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t
t
,par
a.6
,
前掲書 ,Ex.
Ⅰ,Ex.
XXI
I
2
0)F.Ge
mi
ni
ani
21
)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,8
t
eHaupt
s
t
t
i
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t
e
rAbs
c
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t
t
,par
a.1
4
,1
6
2
2)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,8
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,1
t
erAbs
c
hni
t
t
,par
a.1
6
-1
9
,
前掲書 ,Ex,V,1
,4
2
3)F.Ge
mi
ni
ani
2
4)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,8
t
eHaupt
s
t
t
i
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t
e
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c
hni
t
t
,par
a.6,1
0
,
前掲書 ,Ex.
XXI
I
2
5)F.Ge
mi
ni
ani
2
,
6
)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,l
l
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,par
a.3
,
前掲書 ,P.
8
,Ex.
XⅧ,
F.Ge
mi
ni
ani
2
7
)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,l
l
t
eHaupt
s
t
t
i
c
k,par
a.2
,
前掲書 ,P.8
2
8)F.Ge
mi
ni
ani
2
9)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,3
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,par
a.6
,
前掲書 ,P.4,Ex.
Ⅰ
Ⅰ なおパ ガニーニ のカブ リス には,- 弓 に1
8の半音 の連 な る
3
0)F.
Ge
mi
ni
ani
) ) ) ) ) )
1 3
2 3
3 3
4 3
5 3
6
3
パ ッセー ジが ある。
L Moz
ar
t
,
前掲書 ,5
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,par
a.3,par
a.
5- 8
,
前掲書 ,P.8
,Ex.
XX
F.Ge
mi
ni
ani
2
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,par
a.1
8
,
前掲書 ,1
L Moz
ar
t
41
0
D.Boyde
n,
前掲書 ,P.
,
前掲書, 1
L Moz
ar
t
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,3
t
e
rAbs
c
hni
t
t
,par
a.2
0
L Moz
ar
t
,
前掲書, 1
t
t
,par
a.1
0,1
7他 ,F.Gemi
ni
ani
,
前掲書 ,p.
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,3
t
e
rAbs
c
hni
8
0
8
3
7)D.Boyde
n,
前掲書 ,p.4
5
2
今井民子 ・笹森建英
3
8)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書,Ex.
XX
ar
t
,
前掲書,7
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,1
t
e
rAbs
c
hni
t
t
,par
a,7
,par
a.1
4
-1
8
3
9)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,7
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,1
t
c
rAbs
c
hni
t
t
.par
a.1
7
4
0)L.Moz
ar
t
.
前掲書 ,1
0
t
eHaupt
s
t
t
j
ck,par
a.3
2
41
)L.Moz
ar
t
,
前掲書 ,1
0
t
eHaupt
s
t
i
i
ck,par
a.3
0,31
4
2)L Moz
なおパガニーニのカブ リスで は, オ クターブの 2重 トリル, 2重音 の トレモ ロ も見 られ る。
4
3
)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書 ,Ex.
XXI
I
4
4)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書 ,Ex.
XXI
I
I
4
5)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,8
t
eHaupt
s
t
t
i
c
k,3
t
e
rAbs
c
hni
t
t
,par
a.1
6
4
6)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.4
2
9
,4
3
6
,かつて,記譜通 りの重苦 の演奏 を可能 にす るバ ッハ 弓が想定 さ
れたが,現在 で は否定 されてい る。
4
7
)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書 ,Co
mpos
.
XI
I
4
8)L Moz
ar
t
,
前掲書 ,8
t
eHaupt
s
t
t
i
ck,3
t
erAbs
c
hni
t
t
,par
a,1
8,1
9
,
前掲書 ,Ex.
XX I
4
9
)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書 ,Ex.
Ⅴ
Ⅰ
Ⅰ
5
0)F.Ge
mi
ni
ani
ar
t
,
前掲書, 1
t
eHaupt
s
t
t
i
c
k,3
t
e
rAbs
c
hni
t
t
,
なお ピッイカー トはパガニーニ により発展
51
)L Moz
し,左手 の ピチカー トも試み られ る。
5
2
)D.Boyde
n,
前掲書 ,P,3
8
45,Mondonvi
l
l
e,L'
Abbel
ef
i
l
sらによ り,nat
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alhar
moni
c
sに加 え
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f
i
c
i
alhar
moni
c
sも考案 された。
て ar
5
3
)L Moz
ar
t
,
前掲書,序文
5
4)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書,序文 ,P.6
5
5)F.Ge
mi
ni
ani
,
前掲書,序文
5
6
)Op.3≪ L'
ar
t
edelVi
ol
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no≫ は,Ams
t
e
r
dam M.c
h.
LeCe
ne出版 の初版楽譜 を使用 した. なお
e
s
hの校訂 による もの を用 いた。
パガニーニのカブ リス は C.Fr
5
7
)D,Boyde
n,
前掲書 ,P.3
7
7,
Uf
f
e
ndac
hはヴ ィヴ ァルデ ィの演奏 を評 して,「左指が駒 にかか り,
弓の場所 がほ とん どなか った」 と述べた。
5
8
)パガニーニのカブ リスで は,最高第 1
7ポジシ ョンに達 し, ポジシ ョンの移動 もロカテ ッリよ りも
更 に大 きい。
5
9)なおパガニーニのカブ リスで は,連続 1
0
度 のパ ッセー ジが あ らわれ る。
6
0)パガニーニの bat
t
e
r
i
eは, ロカテ ッ リよ りも広音域 で長大化 してい る。
61
)パガニーニ は,br
i
s
ur
eと連続 スタ ッカー トを組 み合わせ た ものを試 みてい る0
6
2
)∫.Cal
maye
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hi
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pi
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l
s
,vol
.1
,P.2
03に
所収)
6
4
)D.Boyde
n,
前掲書 ,P.3
7
7に所収。
6
5
)Boyde
n,Davi
d,& Sc
hwar
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i
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t
t
6
6)L Moz
音楽大事典 』vol
.1
,pp,1
3
4
-1
3
7 平凡社 1
9
81
67
)柴 田純子 「ヴ ァイオ リンー音楽」平凡社 『
6
8
)Smi
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4
5 P,1
5
3London:
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5
6
9)前掲書 P.1
5
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5
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9
7
7
7
1
)前掲書 P.1
51
51
7
2
)前掲書 P.1
7
3
)前掲書 P.1
51
ヴ ァイオ リン奏方の確立 と展開
5
3
7
4
)Cope,Davi
d,Ne
w Mus
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i
on pp.5
-6Dubuque,I
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