...

海外LNG 事業へ進出するアジア国営石油ガス企業

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

海外LNG 事業へ進出するアジア国営石油ガス企業
JPEC レポート
2013 年度
第6回
平成 25 年 5 月 31 日
海外 LNG 事業へ進出するアジア国営石油ガス企業
今年 3 月、中国石油天然ガス総公司(CNPC)は巨大
LNG プラントが計画されているモザンビーク Rovuma 盆
地 Area 4 の権益 20%を買収することに合意した。CNPC
は豪州での LNG 計画に続いてカナダでも LNG 計画に参
加しており、海外 LNG プロジェクトに参画することで輸
入ソースの確保を進めようとしている。中国の LNG 輸入
1. 韓国
P.1
2. マレーシア
P.5
3. 中国
P.8
4. 台湾
P.14
5. タイ
P.16
事業で先行する中国海洋石油総公司(CNOOC)は今年 2
月、151 億ドルという巨費を投じてカナダ Nexen の買収に成功した。中国石油化工集団公
司(Sinopec)は昨年 7 月、豪州 Australia Pacific LNG(APLNG)への参加権益を 25%
に引き上げた。また、今年 1 月、世界最大の LNG 輸入企業である韓国ガス公社(Kogas)
はモザンビークに続いて新たな LNG 供給源となる可能性の高い東地中海、キプロスの海
洋鉱区に参加した。
すでに多くの海外 LNG 事業に参画しているマレーシア Petronas は昨
年 12 月、カナダでのシェールガス LNG 計画のパートナーである Progress Energy を買
収、今年 3 月には石油資源開発(JAPEX)の参加を得て、LNG 計画を本格的に進めるこ
とになった。2011 年から LNG 輸入を開始したタイ石油公社(PTT)は昨年 8 月、モザン
ビーク LNG 計画の主力ガス田権益を保有する英国 Cove Energy の買収に成功した。
マレーシアを除けば、いずれも LNG 輸入国で、LNG の安定受給をめざして、海外の
LNG プロジェクトに参加したものとみられる。また、LNG 輸出国であるマレーシアは、
Petronas がグローバルな事業展開の一環として海外 LNG 事業を推進、最近ではマレー半
島部でのガス需要拡大に対応すべく LNG 輸入計画も進めている。
アジア主要国営石油ガス会社の海外 LNG プロジェクトへの参加状況を紹介する。
1.韓国
1-1.韓国の天然ガス需給と LNG 輸入
韓国は 2004 年より東海-1 ガス田で商業生産を行っているが、東海-1 の生産量は、国内
需要の1%程度しかなく、天然ガス需要のほぼ全量を LNG 輸入で賄っている。
韓国は、日本に次ぐ世界第 2 位の LNG 輸入国であり、国営ガス公社である Kogas は世
界最大の LNG 輸入業者である。長期売買契約に基づく LNG 輸入は、1986 年にインドネ
シア産からスタートし、1991 年よりマレーシア、1999 年よりカタール、2000 年よりオマ
ーン、2009 年よりロシアとイエメンが加わった。(図-1 参照)
1
JPEC レポート
輸入量は年々拡大、2001 年に 200 億 m3、2005 年に 300 億 m3、2010 年に 400 億 m3
を突破し、2011 年は 493 億 m3 に達した。内訳はカタールが最大で 111 億 m3、インドネ
シア 108 億 m3、マレーシア 56 億 m3、オマーン 50 億 m3、ロシア 39 億 m3、イエメン
37 億 m3 と続いている。ほかに、ブルネイや豪州、アルジェリア、ナイジェリア、赤道ギ
ニア、エジプト、トリニダード・トバゴなどからも輸入している。(表-1 参照)
2
JPEC レポート
Kogas は、平沢(1986 年稼動 296 万 m3)、仁川(1996 年稼動 288 万 m3)、統営
(2002 年稼動 248 万 m3)に LNG ターミナルを保有しているが、需要拡大に対応する
ため、2020 年までに 26.4 億ドルを投下して、タンク容量を 1,430 万 m3 とする計画で、
第 4 ターミナルを江原道三陟に建設する。20 万 m3×9 基、27 万 m3×3 基を計画してお
り、1–4 号タンクは大林産業/GS 建設/慶南企業/東亜建設、5–7 号は斗山重工/三星物産/大
宇建設/SK 建設、8–9 号は、現代建設/Posco 建設/Seohee、10–12 号は漢陽/ハンファ建設/
三扶土建/桃園 E&C が受注した。10–12 号には、韓国技術で開発した世界最大級のタンク
を導入する。仁川でも 2016 年まで同地区に 20 万 m3×2 基のタンクを建設し、2018 年
までにさらに 1 基を増設する。Kogas では長期計画として、2020 年以降に第 5 ターミナ
ル建設を考えている。
民間では LNG 輸入が認可された POSCO が光陽近郊に輸入ターミナルを保有している。
年間受入量は 170 万トン、10 万 m3 のタンク 2 基を有する。さらに GS Energy は忠清南
道保寧に 20 万 m3×5 基の LNG タンクを建設する計画を進めており、これに SK E&S
が参加し、2016 年 9 月竣工を目指して年間受入量 300 万トンのターミナルを建設する。
1-2.韓国の海外 LNG プロジェクト
Kogas に加え SK など民間企業も世界各地の LNG 事業に参加している。
1)カナダ LNG Canada
Shell が 40%、Kogas、三菱商事、CNPC、が各 20%の企業連合が British Columbia
(BC)州 Kitimat で LNG プロジェクトを進めており、BC 州のシェールガスを開発して
韓国、日本、中国などアジア市場に供給する。当初の年産能力は 600 万トン×2 トレイン
の合計 1,200 万トンで、2020 年頃の生産開始を見込んでいる。2013 年 2 月に LNG 輸出
ライセンスを取得、期間は 25 年間で、年間最大 2,400 万トンの LNG 輸出が認められた。
2)モザンビーク Rovuma Area4 開発-LNG 計画
Eni が 70%(うち 20%を CNPC が買収)、Kogas とスペイン Galp Energia、モザン
ビーク ENH が各 10%で参加するコンソーシアムは 2013 年 2 月までに 72 兆 cf 以上のガ
ス埋蔵量を発見。隣接する Area1 の Anadarko 連合も巨大ガス資源を発見して LNG 事業
を計画し、Eni 連合と共同で LNG 計画を進めることになった。LNG プラントは、2018
年までに Cabo Delgado 州で建設され、液化能力は年間 2,000 万トン。当初は年産 500 万
トン×2 トレインとし、その後 2 トレインを追加する。プラントの基本設計(FEED:Front
End Engineering Design)は、1)日揮/Fluor、2)CB&I/千代田化工建設、3)Bechtel
が進めており、このなかから設計・調達・建設(EPC:Engineering , Procurement and
Construction)コントラクターを決定する。
3)豪州 Prelude 浮体式 LNG(Prelude FLNG)
Kogas は、Shell が進めている Prelude ガス田開発–FLNG プロジェクトから LNG の
全量を購入するとともに 10%のシェアで参加することに合意した。Browse Basin の
3
JPEC レポート
Prelude ガス田を開発して液化するもので、年産 360 万トン。生産開始は 2017 年の予定
で、Technip と韓国の三星重工業にプラントの EPC 業務が発注された。
4)豪州 Gladstone LNG(GLNG)
Kogas が 15%の権益で参加している。Queensland 州 Bowen/Surat Basins の炭層ガス
(CSG)を 420km のパイプラインで Gladstone 沖 Curtis 島に送り、LNG として輸出す
る。液化能力は年間約 780 万トン(2 トレイン)
、建設費は 180 億ドルで、稼働開始は 2015
年の予定。Fluor が上流、Saipem がパイプライン、Bechtel が LNG プラントを受注して
いる。Kogas 以外の権益は、Santos が 30%、Petronas と Total が各 27.5%。LNG は、
Kogas と Petronas が年間各 350 万トン、Total が 150 万トンを引き取る。
5)インドネシア Donggi-Senoro LNG(DSLNG)
三菱商事は2011 年1 月、
最終投資決定
(FID)
を宣言するとともに、
特定目的会社
(SPC)
である Sulawesi LNG Development の出資へ変更し、Medco の資金拠出分の一部を SPC
が引き受けることで、DSLNG への SPC 出資比率を 59.9%に引き上げ、SPC に Kogas
が25%出資することに合意した。
残りは、
PESから株式移管を受けたPertaminaが29%、
Medco が 11.1%。2014 年後半より年間 200 万トンの LNG と 2,500BPD のコンデンセー
トの生産を開始する予定で、天然ガスは Senoro-Toili/Matindok ガス田から供給される。
三菱商事は、Senoro-Toili 鉱区の権益を 20%保有する子会社の Tomori E&P の株式 49%
を Kogas に譲渡した。
Luwuk に建設される年産 200 万トンの LNG プラントと関連設備の EPC 業務は、日揮
および現地子会社の JGC Indonesia が約 17 億ドルで受注、
2014 年下期までに完成する。
6)カタール Ras Laffan LNG
Rasgas 1 に韓国連合の Korea RasGas LNG(Koras)が 5%を出資している。Koras
には、Kogas、三星、現代、SK、LG、Daesung、Hanwha が参加。パートナーは、Qatar
Petroleum が 63%、ExxonMobil が 25%、伊藤忠商事が 4%、LNG Japan が 3%で、液
化能力は年 660 万トン。Kogas は 1995 年 10 月に年間 240 万トンの長期契約で合意し、
1997 年 6 月の 25 年契約で 490 万トンに引き上げた。その後、2007 年 3 月に年間 210 万
トンを追加購入する 20 年契約に合意した。
7)オマーン Oman LNG(OLNG)
Korea LNG が権益 5%のうちを取得しており、内訳は Kogas が 1.2%、三星、現代、大
宇が各1%、
SKが0.8%である。
他は、
オマーン政府が51%、
Shellが30%、
Totalが5.54%、
三菱商事と三井物産が各 2.77%、Partex が 2%、伊藤忠商事が 0.92%。能力は年産 330
万トン×2 トレインで、Kogas は 2000 年から 25 年契約で年 410 万トンを輸入。
8)イエメン Yemen LNG(YLNG)
同国中部 Marib の天然ガスを 320km のパイプラインで南部沿岸の Balhaf まで運び、
年産 680 万トンの LNG プラントで液化する。LNG は、Kogas が年間 200 万トン、Suez
が 250 万トン、Total が 200 万トンを 20 年にわたって購入する。プラントは日揮
4
JPEC レポート
/KBR/Technip が建設した。韓国は Kogas が 6%、SK が 9.55%、現代が 5.88%の権益で
参画している。
他の権益は、
Total が 39.62%、
Yemen Gas が 16.73%、
Hunt Oil が 17.22%、
イエメン年金基金が 5%。
9)キプロス LNG 構想
Kogas は 2013 年 1 月、第 2 次鉱区入札の海洋 3 鉱区について、イタリア Eni と共同で
探鉱・生産分与契約(EPSC)に調印、ブロック 2、ブロック 3 およびブロック 9 を Eni
が 80%、Kogas が 20%のシェアで獲得した。ブロック 9 は、米国 Noble Energy が天然
ガス探査を進めてきたブロック 12 に接しており、ブロック 2 とブロック 3 はその北東に
位置、いずれも天然ガス資源のポテンシャルが大きいとされる Levantine 堆積盆地に属し
ている。イスラエル側では 2010 年に、Noble Energy によって Leviathan ガス田が発見
されており、両国が共同で LNG プロジェクトを進める可能性もある。
10)ペルーPeru LNG
韓国勢は民間の SK Energy が参加している。太平洋岸の Pampa Melchorita に CB&I
が EPC 業務を担当して年産 445 万トンの LNG プラントを建設、2010 年 6 月から操業を
開始した。原料ガスは内陸の Camisea ガス田(ブロック 88)から Camisea–Lima パイ
プラインで輸送され、LNG は全量が Repsol に供給される。SK は 2007 年 8 月、LNG 事
業の権益 30%のうち 10%を丸紅に売却し、権益は、Hunt Oil が 50%、SK および Repsol
が各 20%、丸紅が 10%。Camisea ガス田は、Pluspetrol と Hunt Oil が各 36%、SK が
18%、Tecpetrol が 10%、パイプラインは、Technit が 23.4%、Pluspetrol と Hunt Oil
が各 22.2%、SK と Sonatrach が各 11.1%、Tractbel が 8%、Grana y Montero が 2%。
11)その他
Kogas は、ロシア Gazprom と年産 500 万トン規模の LNG プラント、Nenets 自治管区
の Pechora LNG への参加や極東での LNG 事業参加を検討している。
カナダ北極圏で Kogas は MGM Energy から Mackenzie Delta の Umiak SDL 131 の
権益 20%を買収、
2020 年頃の生産開始を目指すが、
LNG 計画も視野に入れているという。
豪州Wheatstone LNG では年間150 万トンのLNG 購入とともに権益5%を取得するこ
とに基本合意し、権益分を含め計 195 万トンの LNG を確保した。
SK E&S は、Santos と ConocoPhillips が探査を進めている豪州北西沖合ティモール海
NT/P61 鉱区(Caldita ガス田)および NT/P69 鉱区 (Barossa ガス田)に参加、Darwin
の既存プラントを利用するのか、独自に FLNG プラントを建設するのか開発手法の検討
を進める。
2.マレーシア
2-1.天然ガス需給と LNG 輸入
天然ガス生産は、Bintulu で LNG プラントが完成し、日本向け輸出が開始された 1983
5
JPEC レポート
年以降急速に拡大、1996 年に 300 億 m3、1999 年に 400 億 m3、2003 年に 500 億 m3、
2005 年に 600 億 m3 を突破し、2008 年は 647 億 m3 に達したが、最近は減少に転じてい
る。
(図−2 参照)
1983 年に Central Luconia ガス田からの天然ガス供給を受けて生産開始した Bintulu
の LNG コンプレックスも、すでに 8 トレインが建設され、液化能力は年間合計約 2,570
万トンに達している。Petronas は、Bintulu 第 9 トレイン建設を計画、EPC 業務を日揮
に発注しており、2015 年末には完成して液化能力が年間合計 2,930 万トンに達する。
また、サラワク州やサバ州の海洋で浮体式 LNG(FLNG)プラント建設を計画、Bintulu
沖合の Kanowit ガス田に設置される年産 120 万トンの Petronas Floating LNG Project 1
(PFLNG 1)
は、
2015 年後半に稼働予定で、
EPC 業務は Technip/大宇造船海洋
(DSME)
に発注されている。
Murphy Oil が大水深鉱区のブロックH で発見したRotan およびBiris
のガス資源を液化する年産 150 万トンの Rotan FLNG プロジェクトは、三井海洋開発
(Modec)/IHI/東洋エンジニアリング(Toyo)/CB&I と日揮/三星重工(SHI)が FEED
を担当した。生産開始は 2016 年の予定。
一方、天然ガス生産の頭打ちとマレー半島のガス需要拡大に対応するため、Petronas
は LNG 輸入を決定した。第 1 計画として、Melaka の Sungai Udang に浮体式ターミナ
ルを建設している。Technip と WorleyParsons が FEED を実施し、WorleyParsons が
EPCI 業務を担当した。輸入規模は年間 380 万トンで、第三者によるフリーアクセスが可
能とされる。
続いて、Sabah 州で Lahad Datu LNG ターミナルを計画している。Sabah 州では発電
燃料の確保に不安があり、LNG を導入して環境負荷の低い発電事業を進める。Petronas
と国営電力会社である TNB との共同事業で、LNG 受入量は年間 100 万トン規模。
6
JPEC レポート
さらに Johor 州 Pengerang の石油・ガス・化学コンプレックス(RAPID)に LNG ター
ミナルを設置することを計画しており、Dialog Group が 51%、Royal Vopak が 49%を出
資する。
2-2.マレーシアの海外 LNG プロジェクト
Petronas は積極的な海外戦略を進めており、世界屈指の LNG 供給者としての実績を背
景に多くの海外 LNG 事業に参画している。
1)カナダ Pacific Northwest LNG
ブリティッシュコロンビア(BC)州北東部の Altares、Lily、Kahta シェールガス鉱区
を開発して、
生産したガスを太平洋岸のLelu島のLNGプラントで液化して輸出する計画。
最終投資決定(FID)は 2014 年後半、操業開始は 2018 年後半を予定しており、投資金額
は 90–110 億ドルになる見込み。
2012 年 6 月、
Petronas は、
パートナーの Progress Energy
を総額約 55 億カナダドルで買収することに合意したが、カナダ政府側の懸念もあって、
同年 12 月にようやく承認された。2013 年 2 月、石油資源開発(JAPEX)が同プロジェ
クトに 10%の権益で参画することに基本合意した。
2013 年 5 月には、1)KBR/日揮、2)Technip/韓国三星エンジニアリング/中国寰球工程
公司(HQCEC)、3)Bechtel の 3 グループに FEED 業務が発注された。2014 年末には、
このなかから EPC コントラクターが選定されることになっており、これまで日米欧企業
が独占してきた大型 LNG プラント分野に韓国と中国が参入するのかどうか注目される。
2)豪州 Gladstone LNG(GLNG)
Petronas が 27.5%の権益で参加している。計画概要は韓国 Kogas の項参照。
3)豪州 Evans Shoal LNG
2007 年 9 月に Shell から豪州 Timor 海 Bonaparte Basin のNT/P48 鉱区
(Evans Shoal
ガス田)の権益 25%を買収、Evans Shoal LNG プロジェクトに参加した。他に Shell が
25%、Eni が 40%、大阪ガスが 10%の権益を保有する。埋蔵量 20 兆 cf 以上とされる巨
大ガス田だが、経済性の確保が課題といわれる。
4)エジプト Egyptian LNG(ELNG)
Petronas は 2001 年 12 月、Shell Egypt Deepwater(SEDW)との間で Mediterranean
Deep Water(NEMED)鉱区の権益 12%の譲渡契約に調印して以来、エジプト天然ガス
事業への戦略的な取り組みを開始し、
2003 年4 月に Edison からWDDM 鉱区とEgyptian
LNG の権益を 17.5 億ドルで買収した。Petronas は、同事業の第 1 トレインに権益 35.5%
(他に British Gas(BG)が 35.5%、フランスガス公社(Gaz de France :GdF)が 5%、
Egyptian Gas Holding と Egyptian General Petroleum Corporation が各 12%)と第 2
トレインに38%で参加している
(BGが38%、
Egyptian Gas HoldingとEgyptian General
Petroleum Corporation が各 12%)
。Idku の LNG プラントは各年産 360 万トンで、
ConocoPhillips 法により EPC は Bechtel が担当した。
7
JPEC レポート
5)その他
Petronas はイラン Pars Liquefied Natural Gas(Pars LNG)プロジェクトに 20%の
権益で参加している。2005 年 5 月に同プロジェクトからの撤退を示唆したが、撤退はし
ておらず、2008 年 7 月に Total が、米国の制裁を理由に撤退することが明らかになった後
も、Petronas はプロジェクト推進の意向とされていた。Petronas とイランとの関係は
South Pars の開発が大きく、South Pars のフェーズ 2 および 3(SP2&3)には Total、
Gazprom とともに参加した。原料ガスは、Total が 60%、Petronas が 40%のシェアで開
発する SP11 から供給するとされているが、LNG 計画の早期実現は困難とされる。
モザンビークでは大水深の Rovuma 堆積盆地エリア 3 および 6 を保有しており、2012
年 9 月に Total へ権益 40%を譲渡した。合計 1 万 5,250m2、水深最大 2,500m の大水深鉱
区で、近隣では巨大ガス田開発・LNG 計画が進められており、有望鉱区と目されている。
エジプトでは Spanish Egyptian Gas Company(SEGAS)が建設した Damietta LNG
へのガス供給と LNG 引取りに参加した。
英国では Wales 西端、Milford Haven に LNG ターミナルを建設した Dragon LNG に
資本参加している。同ターミナルの権益は、BG が 50%、Petronas が 30%、4Gas が 20%
で、Petronas と BG が同ターミナルの能力のうちそれぞれ半分の年間最大 30 億 m3(220
万トン)分を利用する。ターミナルの容量は 16 万 m3×2 基、取り扱い能力は年間 60 億
m3(440 万トン)
。
また、英国では BG から独立した Centrica の株式 4%を獲得している。
3.中国
3-1.中国の天然ガス需給と LNG 輸入
中国の天然ガス消費は、西気東輸や陝京パイプラインなど国内幹線パイプラインの建設、中
央アジアからの国際パイプライン建設、LNG 輸入基地の相次ぐ完成で急速に拡大しており、
2008 年にドイツを、2009 年に日本や英国、2010 年にカナダを上回り、2011 年は前年比
21.5%増の 1,307 億 m3 となった。これは、世界の 4.0%を占めるに過ぎないが、中国のガ
ス消費は、今後も大幅な上昇が続き、2010 年代中期にはイランを抜き、米国、ロシアに次
いで世界第 3 位の消費国になるものとみられる。
中国は、1980 年代まで四川盆地など一部の地域を除いて天然ガスを積極的に開発するこ
とはなく、資金、輸送インフラの不足、高い探査コストがその発展を妨げていた。その後、
中国は天然ガスの開発に力を入れ始め、ガス生産量は 1990 年の 153 億 m3 から、2000 年
に 272 億 m3、そして 2010 年には 948 億 m3、2011 年は 1025 億 m3 にまで拡大した。(図
-3 参照)
8
JPEC レポート
企業集団別では、CNPC が中国全体の約 80%を占め、ガス田別では、かつては四川が約
80%を占めていたが、西気東輸や陝京パイプラインでタリムと長慶が大きく伸びている。
天然ガスの第 12 次 5 か年計画(12・5 計画)は、2015 年の天然ガス消費を 2,300 億 m3、うち
輸入天然ガスを約 800 億 m3 としている。また、エネルギー発展 12・5 計画でも、1 次エネ
ルギー消費に占める天然ガスの比率を2015 年までに7.3%に引き上げるよう提起している。
ただ、計画通りに進んだとしても、世界平均の 25%に比べ中国の天然ガス消費の比率はか
なり低い。また、現状では、LNG など輸入ガスの価格と国内販売価格は逆ざや状況とな
っており、中国の天然ガス拡大には価格形成メカニズムの改革が必要とされる。
LNG 輸入は、CNOOC の広東省深圳市大鵬 LNG ターミナルが 2006 年 6 月に操業を開
始してその歴史が始まり、豪州、カタール、インドネシア、マレーシアを中心に 2011 年
で 166 億 m3 まで拡大している。
(表-2 参照)
広東省深圳市大鵬 LNG ターミナルに続き、2 番目の CNOOC 福建省莆田ターミナルは
2008 年 4 月、3 番目の CNOOC 上海ターミナルは 2009 年 10 月に操業を開始し、CNPC
も2011年5月に江蘇省如東ターミナルが、
11月に遼寧省大連ターミナルの操業を開始し、
2012 年 9 月には CNOOC の浙江省寧波ターミナルにカタールから LNG が到着した。
Sinopec も山東省青島で計画を進めており、LNG の調達にもメドをつけた。
続いて、CNOOC は、広東省深圳市迭福、広東省珠海、広東省粤東、福建省漳州市龍海、
海南省洋浦、天津港南疆港区(浮体式を採用)
、江蘇省塩城濱海、広東省汕頭市、遼寧省営
口、河北省秦皇島で、CNPC は、河北省唐山曹妃甸、広東省深圳、広東省江門、広西自治
区欽州、Sinopec は広西自治区北海市鉄山港、広東省珠海黄芽島、広東省茂名、中油潔能
集団有限公司
(SinoGas)
は広東省汕頭市沖南澳島、
新奧能源控股有限公司
(ENN Energy)
は浙江省温州、
第一能源有限公司はマカオ洋上ターミナルといった計画を打ち出している。
9
JPEC レポート
3-2.中国の海外 LNG プロジェクト
(1)CNOOC
1)カナダ Nexen 買収
2012 年 7 月、Nexen を 151 億ドルで買収する契約に調印した。同社の SEC 基準によ
る 2011 年末の確認埋蔵量は 9 億 boe で、推定埋蔵量は 11.22 億 boe。カナダ政府基準に
よる 2011 年末のカナダにおける潜在的資源量は 56 億 boe。カナダ投資法では 3.3 億カナ
ダドルを超える外国投資案件については、産業省の審査が必要で、中国国営企業による大
型資源企業の買収を懸念する声も強く、審査期間は 2 度にわたって延長されたが、12 月 7
日にカナダ政府の認可を取得し、買収に成功した。
カナダ西海岸では複数のシェールガス–LNG プロジェクトが計画されており、具体的に
はなっていないが Nexen も LNG 事業を追求している。同社は Horn River、Cordova、
Liard のシェールガスに関して国際石油開発帝石(Inpex)/日揮に 40%の権益を譲渡し、
生産したガスを LNG としてアジア市場に供給することも視野に入れながら共同開発して
いく計画。
2)米国 Chesapeake Energy の Eagle Ford シェールガス開発
2010 年11 月にChesapeake Energy がテキサス州南部に保有するEagle Ford シェール
ガス鉱区の権益 33.3%を 10.8 億ドルと調整金 4,000 万ドルを追加して買収した。主要資
産は、Webb、Dimmit、LaSalle、Zavala、Frio、McMullen で、10 年後には日量 40-50
万 boe 規模の生産に達するとみられる。
3)インドネシア Tangguh LNG プロジェクト
福建LNG 輸入プロジェクトのLNG をインドネシアのTangguh 液化プラントから輸入
するのに伴い、CNOOC は BP から権益 12.5%を 2.75 億ドルで取得した。また、CNOOC
10
JPEC レポート
と LNG ジャパン(双日/住友商事)は、BG の保有していた Tangguh LNG プロジェクト
の権益 10.7%を買収した。天然ガスを供給する 3 鉱区のうち、Muturi 鉱区の PS 契約に
関するBG の保有権益 50%の売却に伴うもの。
CNOOC がBG から権益20.767%を、
LNG
ジャパンが 29.233%を買い取った。
4)豪州 Queensland Curtis LNG(QCLNG)
英国BGグループとCNOOCは2009年5月、
BGが進めているQueensland Curtis LNG
(QCLNG)プロジェクトの第 1 フェーズ(第 1 トレイン)に 10%の権益で CNOOC が
参加するとともに、 CNOOC が 20 年間にわたり年間 360 万トンの LNG を購入すること
に合意、2010 年 3 月に正式契約した。同プロジェクトは、Queensland で計画されている
炭層ガス(Coal seam gas:CSG)液化計画の 1 つで、Surat Basin の Walloon CSG を開
発して、 Gladstone 近郊の Curtis 島に輸送し、液化してアジア太平洋圏に輸出しようと
いうもの。液化能力は年間 740 万トンあり、かなりの規模になる。
5)豪州 North West Shelf LNG(NWS LNG)
広東 LNG 輸入プロジェクトに必要な LNG を豪州 North West Shelf(NWS)LNG コ
ンソーシアムから購入することになったのに伴い、CNOOC は NWS プロジェクトの上流
権益の一部を取得するとともに供給事業へも参加することになった。これに基づき 2004
年 12 月、広東大鵬液化天然気有限公司(GDLNG)と NWS LNG は年間 330 万トンの
LNG 長期売買契約に正式調印し、CNOOC に同プロジェクトのガス生産ライセンスおよ
び探査の権益 5.3%を譲渡する契約に調印した。
NWS LNG は、オペレーターの Woodside、BHP Billiton、BP、ChevronTexaco、Shell、
Japan Australia LNG(三菱商事/三井物産)が各 6 分の 1 の権益を保有しており、広東に
LNG を供給する China LNG Joint Venture(CLNG JV)は、NWS LNG の既存パート
ナー6 社が各 12.5%、CNOOC Ltd が 25%を保有する。
6)その他
CNOOC は東地中海LNG 事業に関心を持っているといわれる。
また、
豪州Gorgon LNG
の権益 12.5%取得と 300 億豪ドルの LNG 購入は、価格交渉が難航し、撤退した。
(2)CNPC
1)モザンビーク Rovuma 盆地 Area 4
CNPC は 2013 年 3 月、Eni の子会社である Eni East Africa の株式 28.57%を 42.1 億
ドルで取得することに合意した。Eni East Africa はモザンビーク Rovuma 盆地 Area 4 の
権益 70%を保有しており、CNPC は同鉱区の権益 20%を間接的に買収する。アフリカ東
海岸は、アジア市場へのアクセスが比較的容易であることからアジア各国の主要プレイヤ
ーが早くから注目、唯一出遅れていたのが中国企業であったが、関係者が口を揃えるよう
に「中国企業が現れるのは時間の問題」であった。
(計画の概要は Kogas の項参照)
11
JPEC レポート
2)豪州 Arrow Energy 買収と Arrow LNG
2010 年 8 月 CNPC 傘下の中石油国際投資有限公司と Shell は共同で、Arrow Energy
の株式 100%を 35 億豪ドルで買収した。Arrow は豪州有数の CSG 開発事業者で、CNPC
にとって初の豪州 CSG 投資。Arrow Energy は、Queensland 州 Surat と Bowen の CSG
を開発して、Gladstone 市沖合の Curtis 島に建設する LNG プラントに送り、アジア市場
に供給する計画を進めている。プラント規模は、年産 800 万トン(年産 400 万トン×2 ト
レイン)だが、最終的に年産 1,800 万トンとする計画。FEED は、千代田化工建設
/CB&I/Saipem のコンソーシアムが実施した。LNG プラントの EPC 商談には、千代田
/CB&I/Saipem のほか、Fluor/日揮/Clough、KBR/中国寰球工程公司(HQCEC)/John
Holland が参加する。
ただ、Arrow LNG は同州 4 番目の CSG 液化計画で、先行する 3 計画に比してかなり
遅れをとっており、人材不足や建設コスト高騰の影響を諸に受けることになる。このため
Shell は、最終投資決定(FID)を急がないとしており、CSG 開発を先行して、Santos な
どの LNG 計画とタイアップすることなども考えている。
また、Arrow Energy は 2011 年 9 月、豪州 Bow Energy の全株式を総額 5.35 億豪ドル
で買収することに合意した。Bow の CSG 資源を獲得し、Arrow LNG プロジェクトの増
産計画に反映させるものとみられている。
3)豪州LNG Ltdへの資本参加とFisherman's Landing LNG
2011年5月、CNPC傘下の中国寰球工程公司(HQCEC)がLiquefied Natural Gas
Limited(LNG Ltd.)の株式19.9%を2,014万豪ドルで取得して筆頭株主となった。LNG
Ltdは、Queensland州Gladstoneで年産300 万トン(150 万トン×2 トレイン)の
Fisherman's Landing LNGプロジェクトを計画しており、
株式譲渡はその資金に充当され
る。LNG Ltdは、傘下のLNG Technology(LNGTech)が天然ガス液化技術として
Optimised Single Mixed Refrigerant(OSMR)プロセスを保有しており、HQCECは全
世界で同プロセスの優先的な使用権を獲得し、
Fisherman's Landing LNGのプラント建設
のEPCコントラクターに指名された。フェーズ1で、設計液化能力が年間190万トン(保証
能力は同150万トン)のプラントを建設する。OSMRプロセスは、年産100–300万トンの
中規模LNGに適するとされる。
また、CNPC は Molopo Energy が Queensland 州 Bowen Basin に保有する炭鉱の権益
100%を買収、Fisherman's Landing LNG に CSG を供給する。
4)豪州 Browse LNG
CNPC は 2012 年 12 月、
BHP Billiton から East Browse の権益 8.33%と West Browse
の権益 20%を 16.3 億ドルで買収することに合意した。これにより Browse ガス田開発–
LNG プロジェクトは、Woodside をオペレーターに、Shell、BP、Japan Australia LNG
(三井物産/三菱商事)、CNPC が進めることになった。しかし、Woodside は 2013 年 4
月、同プロジェクトに関して、最終投資決定(FID)を下すためには Woodside の規定す
12
JPEC レポート
る商業的必要条件を満たしていないとして棚上を決定、今後、FLNG や小規模プラント、
Pilbara の既存 LNG プラント利用などのオプションを検討していくことになった。
同計画は、East BrowseとWest Browseの天然ガス田(Brecknock/Calliance/Torosa)
を開発して、海底パイプラインでKimberley地区James Price Pointに建設する液化プラン
トに送ってLNG生産・輸出事業を進めるというもので、液化能力はフェーズ1で年間1,200
万トン(400万トン×3トレイン)。すでに各セクションのFEEDは完了し、LNGプラン
ト は デ ュ ア ル FEED と し て 千 代 田 化 工 建 設 /CB&I/Saipem と KBR/Leighton
Contractors/John Hollandが担当した。しかし、もともとBrowseでは30年以上前からガ
ス田が発見されていたが開発計画がまとまらず、Woodside以外のパートナーは投資リスク
の面から新規プラント建設には消極的とされていた。西豪州政府の圧力もあって、立地を
James Price Pointに決定して準備を進めてきたが、LNG計画が目白押しの豪州ではエン
ジニアが不足して人件費が高騰、炭素税導入や為替レート変動などが追い打ちをかけた。
5)カナダ LNG Canada
CNPC は、Shell、三菱商事、Kogas と共同で、Kitimat LNG 輸出プロジェクトを計画
している。
(概要は Kogas の項参照)
カナダでのガス資産に関して、
CNPC は2011 年2 月、
EnCana との間でCutbank Ridge
ガスプロジェクトの権益 50%を 54 億ドルで買収することに合意したが、条件面で折り合
いがつかず、
断念した。
その後、
2012 年 12 月に傘下の Phoenix Duvernay Gas が、
Encana
の保有する未開発エリア Duvernay の権益 49.9%を 21.8 億カナダドルで買収した。
また、Shell との間では 2012 年 2 月、
非在来型資源開発の協力協定を結び、Groundbirch
シェールの権益 20%を取得した。
(3)Sinopec
1)豪州 Australia Pacific LNG(APLNG)
Sinopec は2011 年3 月、
ConocoPhillips とOrigin Energy が推進するCSG からのLNG
生産事業、APLNG から LNG を年間 430 万トン引き取るとともに、15%の権益で参加し
た。その後、2012 年 2 月に、権益を 25%に引き上げ、LNG 引取量も年間 760 万トンと
した。
同計画は、ConocoPhillips と豪州 Origin Energy が各 37.5%の権益を保有しており、
Surat/Bowen Basins の CSG を開発し、Curtis 島 Laird Point の LNG プラントで液化し
て輸出する。第 1、第 2 トレインの液化能力は各 450 万トンで、稼働開始は第 1 トレイン
が 2015 年央、第 2 トレインが 2016 年初頭を予定している。LNG プラントは、
ConocoPhillips のカスケードプロセスに基づいて Bechtel が EPC 業務を担当する。
2)その他
Sinopec はカナダ Daylight Energy の全株式を 22 億カナダドルで買収した。中心的な
資産は、アルバータ州北西とブリティッシュコロンビア州北東における 69 の油ガス田。
13
JPEC レポート
同社はシェールガスをカナダ西海岸で計画されている LNG 輸出プロジェクト向けに供給
することが期待されている。
また、2012 年 1 月、Devon Energy が保有する米国のシェールオイル・ガス資源の権益
の3 分の1 を24.4 億ドルで買収した。
対象は、
Niobrara、
Mississippian、
Utica、
Michigan、
Tuscaloosa Marine Shale(TMS)
。
さらに、
2013 年2 月日は米国第2 の天然ガス開発会社であるChesapeake Energy から、
Oklahoma 州北部の Mississippi Lime 油層の石油・天然ガス権益の 50%を、10.2 億ドル
で買収する契約に署名している。
4.台湾
4-1.台湾の天然ガス需給と LNG 輸入
石油ガス資源は西岸の大陸棚に広がる堆積層に存在し、出礦坑、青草湖、錦水、鐵砧山、
官田、永和山、新營、八掌溪、白沙屯などが主要なもの。生産量は極めて限られた量しか
なく、鐵砧山、青草湖、錦水、出礦坑、官田で、計 48 坑のガス生産井が操業しており、
台湾中油股份有限公司(CPC)の 2011 年の生産実績は、天然ガスが 42,400 万m3(1987
年は 122,270 万 m3)とコンデンセートが 11,300KL(1987 年は 148,400KL)で、かつて
の勢いはない。
天然ガス需要は 1998 年まで一貫して上昇を続けて、1999 年は若干減となったが 2000
年の 67 億 m3 から再び上昇に転じ、2004 年で 100 億 m3 を突破した。2009 年は世界不況
の影響もあり前年の 121 億 m3 から若干減少して 118 億 m3 となったが、景気回復ととも
に増加し、2011 年は 163 億 m3 にまで増加した。
(図-4 参照)
14
JPEC レポート
台湾は第 2 次オイルショックを機に、石油依存率の高いエネルギー構造から脱し、原子
力発電とともにクリーンエネルギーである天然ガスへのシフトを推進、日本、韓国に続い
て 1990 年から LNG の輸入を開始した。LNG 輸入関税の引き下げ、ガス火力発電所の新
設で大口需要が開拓され、輸入ターミナルも増強され、LNG 輸入が拡大するのは確実で、
2020 年までに年率 7%の伸び率を示すと予測されている。
これまでに CPC が受け入れている LNG 長期契約分は、インドネシアの Badak-Ⅲから
年間158 万トン
(契約期間 1990–2009 年)
、
同 Badak-Ⅵから 184 万トン
(2001–2017 年)
、
マレーシアの MLNG-Ⅱから 225 万トン
(1995–2015 年)
、
カタール RasGas-II からの 300
万トン(2008–2033 年)
。加えて、オマーンやナイジェリア、エジプト、赤道ギニア、豪
州などからもスポットで入っている(表-3 参照)
。
今後は、RasGas-Ⅲからの 150 万トン(2013–2033 年)や ExxonMobil と合意したパプ
アニューギニア(PNG)からの 120 万トン(2013–2033 年)
、Shell と合意した 200 万ト
ン(2017–2037 年)
、豪州 Ichthys LNG からの 174 万トン(2017–2032 年)が加わる。
CPC は南部の高雄県永安に台湾初の LNG 輸入ターミナルを保有、2 度にわたる増強工
事を実施している。さらに CPC は 16 万 m3×3 基のタンク増設を計画、2011 年 9 月に経
済建設委員会(CEPD)の認可を取得した。増強工事は 2018 年までに竣工する。
CPC は、中部西海岸の台中県台中港に 16 万 m3×3 基の LNG タンク、気化設備および
関連機器、桟橋などからなる LNG 受入ターミナル「台中液化天然氣廠」を新設した。EPC
業務は IHI と CTCI、東亜建設が担当し、2009 年 7 月に正式稼働した。
また、第 3 ターミナル新設に台塑集団(Formosa Plastic Group:FPG)と台湾電力が
参加の意向を示しており、FPG は雲林県麦寮郷の第 6 ナフサクラッカーの用地に LNG タ
ーミナルを建設する考え。
15
JPEC レポート
4-2.台湾の海外 LNG プロジェクト
1)カタール RasGasⅡ第 5 トレイン
CPC は 2008 年 9 月、RasGasII の第 5 トレインの権益 5%を取得した。RasGasII は、
第3 トレインから第5 トレインまで計3 トレインからなり、
各トレインの生産能力は年470
万トンで、シェアは、Qatar Petroleum が 70%と ExxonMobil が 30%。
なお、CPC は RasGasII から年間 300 万トンの LNG 購入契約を交わしており、台中
の新ターミナルで受入れて、うち 168 万トンを台湾電力(Taipower)が桃園県大潭に建設
した出力 420 万 kW という世界最大のガス複合発電プラント(三菱重工業/三菱電機が建
設)向けに供給している。
5.タイ
5-1.タイの天然ガス需給と LNG 輸入
天然ガスは、約 90%がオフショアからの生産で、Chevron の Erawan、Satun、Funan、
タイ石油開発公社(PTTEP)の Bongkot などがある。天然ガス生産は 1981 年にタイ発
電公社(EGAT)の発電所向けとして Unocal によって開始された。天然ガス生産は順調
に拡大し、1994 年に 100 億 m3 を、2000 年に 200 億 m3 を、209 年に 300 億 m3 を突破
し、2011 年は 370 億 m3 にまで増加した。
(図-5 参照)
Bongkot ガス田が主力であったが、現在では多くの海洋ガス田が操業しており、さらに
タイ最大級のガス田となる Arthit の開発キャンペーン 2 でガス生産はさらに拡大する。ま
た、マレーシアとの共同開発海域は埋蔵量 2,000 億 m3 と推定されており、今後も拡大す
16
JPEC レポート
る。
ただ、ガス確認埋蔵量は 1990 年代中期で 2,000 億 m3 程度から 2002 年末で 4,300 億
m3 にまで増加したが、生産拡大のため減少傾向にあり、2011 年末現在で約 2,800 億 m3
にまで下がっている。
順調な生産増により、かつては全量を国産ガスで賄ってきたが、現在はミャンマーの
Yadana ガス田と Yetagun ガス田からのパイプラインガスで需要の約 30%を補っている。
パイプラインガス輸入に続いて PTT は Rayong 県 Map Ta Phut に LNG 輸入ターミナ
ルを建設、2011 年 9 月より操業を開始した。EPC 業務は、GS E&C や Kogas、漢陽、大
宇エンジニアリングからなる韓国連合が担当した。PTT は、すでに 4 億ドルを投下して年
1,000 万トンへ増強する第 2 フェーズの計画を策定しており、2016 年頃の完成を予定して
いる。これに続いて第 2 ターミナルの建設も検討しており、長期的には年間 2,000 万トン
の LNG 輸入とハブ構想を進める。
5-2.タイの海外 LNG プロジェクト
1)モザンビーク Rovuma Area1 開発-LNG 計画
Area1 の権益 8.5%を保有する英国 Cove Energy を買収した。Shell との激しい争いに
なったが、インド洋を挟んでアクセスが容易な LNG 事業となることから、タイ政府の支
援も得て買収に成功した。同鉱区は、オペレーターの Anadarko が 36.5%、三井物産が
30%、インド Bharat Petroleum が 10%、同 Videocon が 10%、モザンビーク国営 ENH
が 15%、PTT が買収した Cove Energy が 8.5%の権益で探査を続けている。6 社連合は
2012 年 12 月、2018 年の生産開始を目指して、海底天然ガス生産設備および LNG プラン
トの FEED 業務を各 3 グループに発注するとともに、隣接する Area 4 のオペレーターで
ある Eni との間で両鉱区に跨がるガス田を供給源とする LNG 事業を共同で推進する覚書
を締結した。
天然ガス生産設備の FEED は、1)Technip USA、2)Subsea 7(US)/Saipem、3)
McDermott/Allseas USA が、LNG プラントの FEED は、1)日揮/Fluor、2)CB&I/千
代田化工建設、3)Bechtel が進める。海底天然ガス生産設備は、Prosperidade ガス田を
対象としたもので、3 グループより FEED を受領後、このなかから EPC コントラクター
を選定する。LNG プラントの液化能力は年間 2,000 万トンで、当初は年産 500 万トン×2
トレインとし、その後追加 2 トレインを予定する。ガス生産設備と同様に 3 グループのな
かから EPC コントラクターを選定する。
2)豪州 Cash-Maple FLNG
PTT 傘下の PTTEP Australasia および PTT FLNG は 2011 年 7 月、SBM Offshore お
よび Linde との間で、豪州北部沖合ティモール海での浮体式 LNG プラント(FLNG)建
設に向けて協力協定に調印、プレ FEED 作業を進めることになった。Cash-Maple などの
ガス田で生産した天然ガスを液化しようというもので、設置されるのは豪州の Darwin か
17
JPEC レポート
ら西に 680km で、インドネシア沿岸からは南東に 200km、液化能力は年間 200 万トン。
その後、2012 年に PTT は、Hoegh LNG および KBR にもプレ FEED 作業を発注、両グ
ループが競合することになった。さらに、実施段階に入れば、FLNG プラントは韓国の大
宇造船海洋(DSME)が担当することになる。
PTT は 2011 年 3 月から事前調査を開始しており、ガス埋蔵量が期待通りの規模に達し
ていることが判明すれば、2017 年頃には LNG の商業生産開始を開始する。
PTT は海外事業から年間 300 万トン程度の LNG を確保して行きたいとしており、傘下
の PTTEP と PTT International の合弁会社として、FLNG 事業を手がける PTT FLNG
を設立、豪州で FLNG ユニットの開発を計画している。こうした方針に沿って PTTEP
はここ数年、
豪州海域での探査に積極的で、
Coogee Resources の買収
(PTTEP Australasia
と名称変更)や OMV のティモール海鉱区の買収などで攻勢をかけている。
なお。Golar LNG と組んで豪州 FLNG プロジェクトを進めようとしていたが、これに
ついては 2010 年 2 月に提携を解消している。
参 考
Statistical Review of World Energy 各年版(BP)
各社年次報告書
ASEAN 諸国で相次ぐ LNG 輸入プロジェクト 1/2(JPEC レポート 2012 年 3 月/4 月)
中国の石油産業と石油化学工業 2012 年版(東西貿易通信社)
東アジアの石油産業と石油化学工業 2012 年版(東西貿易通信社)
East & West Report 各号(東西貿易通信社)
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析し
たものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは [email protected] まで
お願いします。
Copyright 2013 Japan Petroleum Energy Center all rights reserved
次回の JPEC レポート(2013 年度 第 7 回)は
「IMO 及び欧州における船舶燃料規制に関する最新動向」
を予定しています。
18
Fly UP