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妹が痔になったので座薬を入れてやった件

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妹が痔になったので座薬を入れてやった件
妹が痔になったので座薬を入れてやった件
落花生
!18禁要素を含みます。本作品は18歳未満の方が閲覧してはいけません!
タテ書き小説ネット[R18指定] Byナイトランタン
http://pdfnovels.net/
注意事項
このPDFファイルは﹁ノクターンノベルズ﹂﹁ムーンライトノ
ベルズ﹂﹁ミッドナイトノベルズ﹂で掲載中の小説を﹁タテ書き小
説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。
この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また
は当社に無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範囲を超え
る形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致します。小
説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
妹が痔になったので座薬を入れてやった件
︻Nコード︼
N8819BY
︻作者名︼
落花生
︻あらすじ︼
︻lyricboxからゲーム化︼
﹃妹が痔になったので座薬を入れてやった件﹄がゲーム化!
lyricboxからビジュアルノベルとして発売されます!12
月29日のコミケ91にて初リリース!
ゲーム化関係情報はtwitterにて発信しています。プロフィ
ールをチェック。
または﹁リリックボックス﹂でググって!
1
https://twitter.com/peanuts︳ka
ra
︻フランス書院美少女文庫から書籍化︼
﹃妹が痔になったので座薬を入れてやった件﹄フランス書院美少女
文庫から書籍版絶賛発売中。
書籍関係情報はtwitterにて発信しています。プロフィール
をチェック。
振り仮名は﹁いもじ﹂に公式
https://twitter.com/peanuts︳ka
ra
なお、本作品の略称は﹃妹痔﹄で、
決定しました。
︻作品紹介︼
兄妹の近親相姦ストーリーですが、シリアス展開はありません。
ラノベにエロスをトッピングしたような、後味のよい作品を目指し
ています。
ハードさよりも、羞恥追求!羞恥こそが至高!
作者は女の子が恥ずかしがる姿をなにより愛しています!
︻あらすじ︼
美少女でおしとやかな妹が、なんと切れ痔に!
誰にも相談できず、兄の俺に打ち明けた妹。
俺はさっそく座薬を買ってきたのだが⋮⋮。
妹の友達︵百合友︶ツンデレ香奈ちゃんも巻き込んで、
事態はエスカレートしていく⋮⋮。
2
︻1︼妹の紹介
タイトルが大変気になっていることだと思うが、先ずは俺の妹が
どんなキャラなのか説明しておこう。
妹は高一、早生まれなのでまだ十五歳だ。兄の俺が言うのも何だ
が、美少女である。
俺が妹萌えなわけではない。どこからどう見ても難癖のつけよう
のない美少女なのだ。
髪は肩甲骨の下まであるストレートのロング。﹁風呂上がりです
か?﹂って聞きたくなるくらい艶々している。前髪はパッツン、お
嬢様風である。
顔はというと、眼が大きくて鼻筋が通っててとか、いちいち説明
するのが面倒なほど整っている。
全体の印象はあどけない感じ。印象的なのは桃みたいなしっとり
すべすべな頬と、ぷるんとした唇である。いつかあの唇をどこぞの
馬の骨が奪うのかと思うと、怒りがこみ上げてくる。親父もそう思
っているはずだ。
身長152センチ。同世代の平均より少し小さくて、それがまた
可愛らしさに拍車をかける。
胸やお尻はまだ発展途上だが、高校生になってだんだん丸みがつ
いてきた。ちょっと前までスレンダーで少年のようだったのに、最
近は格段に女らしさが増している。
運動神経は人並みだが動作はテキパキしている。立ち上がるとき
に﹁どっこいしょ﹂とか言ったりしない。背筋がしゃんとしていて、
いつも姿勢がよい。
かように完璧な容姿を持つ妹だが、代わりに中身が小悪魔かとい
うとそんなことはなく、非常に人柄がよい。
性格はおっとりしているが、しっかり者である。家庭的で料理が
3
うまく、部屋はいつも片付いている。
成績優秀で、友達が多く、コンビニで買い物をするときよく募金
箱に小銭を入れている。
まったく、本当に俺と血がつながっているのかと思う︱︱という
のがよくある設定だが、実は俺も容姿なら自信がある。
自惚れるなって言わないでくれ。両親が美男美女なんだよ。
サラリーマンと専業主婦の一般ピープルのくせに、二人並ぶと芸
能人みたいなんだよな。この両親の間にならあのアイドルのような
妹が生まれても何の不思議もない。
俺も両親の身体的特徴を受け継いでいるから、今まで﹁もらわれ
っ子じゃないの?﹂とか言われたことはない。
え? 性格? 俺の?
⋮⋮まあ、悪くはないんじゃねえの?
自分で自分を持ち上げるのは嫌だけど、中学のころからずーっと
野球やってて、キャプテンには﹁来年のキャプテンはお前だ﹂と言
われている。まあ、それくらいの信用を得られる程度には、人間で
きてるんじゃねえの?
昔は妹と仲悪かったんだ。しょっちゅう喧嘩ばかりしていた。
子供って、女の子の方が大人びてるじゃん。その上俺は、人並み
よりもガキだった。
妹と俺は二つ違いなんだけど、俺が四月生まれで妹が三月生まれ
だから、学年は一つしか変わらない。
妹にしてみれば、俺は年上のくせにだらしなく、そのくせ威張っ
てばかりいるどうしようもない奴に映っていただろう。
変わったのは俺が野球を始めてからだ。野球が俺を変えてくれた。
毎日汗だくになって練習して、先輩たちの間でもまれるうちに、
俺は精神的に成長していった。
すると、相対的に妹が幼く見えてきて、今まで生意気だと思って
いたのが、可愛いと思えるようになってきたんだな。
俺は妹に優しく接するようになった。すると妹も俺といがみ合う
4
理由はなくなるわけで、喧嘩なんか全然しなくなった。
今じゃCDや漫画を貸し借りしたり、一緒に買い物に行ったり、
バレンタインデーには俺︵と親父︶にチョコレートケーキなんか焼
いてくれるし、本当になついてくれてる。可愛くてしかたねえよ。
そんな、兄想いの天使のような妹なんだけど、一週間ほど前から、
どうも元気がないような気がしていたんだ︱︱。
☆
5
︻2︼妹の悩み
七月の中旬ごろだった。夕食の後、俺は自室で数学の課題をやっ
ていた︵偉いだろ︶。
みう
ドアをノックする音。控えめなその音で、すぐに妹だと分かる。
﹁未羽? 入れよ﹂
紹介が遅れたが、妹の名前は未羽という。﹁未﹂とか﹁羽﹂とか、
小柄な彼女に似合った名前だと思う。
ドアを開けて入ってきたのはやっぱり未羽だったけど、いつもの
花のような笑顔ではなく、額に縦線が入って、思い詰めたような顔
をしていた。
﹁⋮⋮お兄ちゃん、入るね⋮⋮﹂
未羽は後ろ手にドアを閉じ、とぼとぼと歩いてベッドに腰掛けた。
ベッドに座るのに断りは要らない。そこは彼女が俺の部屋に来た
ときの定位置なのだ。俺の漫画を借りて、ベッドに寝転がって読ん
でいることもある。
もちろん俺は怒ったりしない。未羽が寝た後は、得も言われぬよ
い匂いがするのだ。
しかし今日はそんなのんきな用で来たのではないことは一目瞭然
だった。未羽は深刻な表情を顔に貼り付けていた。
俺はイスを半回転させて未羽に向き直った。
﹁どうした? 元気ないな?﹂
努めて明るく俺は言った。話しやすい雰囲気を作った方がいいと
思ったのだ。
実は俺は、未羽の元気を奪っている原因を、いじめではないかと
疑っていた。
温厚で人に恨まれることなどなさそうな妹だが、昨今のいじめっ
6
てのは誰が標的になるやら分からないらしい。いじめられていた子
を庇って、まとめて標的にされた、なんてこともありうる。
﹁⋮⋮あ、あの、お兄ちゃんに⋮⋮相談したいことが⋮⋮あるんだ
けど⋮⋮﹂
﹁うん、なんだい? 何でも話してごらん﹂
この時点で俺はいじめだと確信した。俺はどんなに辛い話でも真
摯に聞いてやろうと思って身構えた。その上で、未羽をいじめた奴
を半殺しにしてやろうと思っていた。
未羽は自分から相談しに来たくせに、なかなか話そうとはしなか
った。うつむいて、しきりに指先で肘や膝を掻いて、もじもじして
いる。
辛い打ち明け話というものは話しにくいものだ。未羽が自分から
口を開くまで、俺は辛抱強く待った。
しばらくして、意を決したように未羽が顔を上げた。
﹁⋮⋮あ、あのね⋮⋮﹂
﹁うん﹂
俺がまっすぐに未羽の眼を見つめると、彼女はたじろぐように視
線をさまよわせた。⋮⋮ちょっと顔が赤いのは何故なんだろう? 泣きそうなのか?
﹁⋮⋮⋮⋮お⋮⋮お尻が⋮⋮痛いの⋮⋮﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮は?﹂
﹁オシリガイタイノ﹂が﹁お尻が痛いの﹂に変換されるのに十秒
かかり、それでも意味が理解できずに俺は間抜けな声を出した。き
っと鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたはずだ。
﹁⋮⋮お尻が、痛いの⋮⋮。に、二週間くらい前からなんだけど⋮
⋮お、大っきい方するとき、痛くって⋮⋮。
はじめは、ちょっと痛いだけだったんだけど、だんだんひどくな
ってきて⋮⋮一週間くらい前からは、もう本当に、すごく痛くって
⋮⋮。
じ、痔⋮⋮なのかなって思って、か、鏡で見たんだよ。でも、イ
7
ボ? みたいのはなくって⋮⋮。
で、でも痛みはずっと続いてて、最近はもう、何もしてなくても
痛いんだよ! 今も痛いんだよ! で、大っきい方するときは、も
うナイフで切りつけられてるみたいに痛いの!
⋮⋮そ、その上、今朝なんだけど⋮⋮お尻拭いたら紙に血がつい
てて⋮⋮生理じゃないし、お尻から出てるの⋮⋮わ、悪い病気だっ
たらどうしようって、怖くなって⋮⋮﹂
口を開くまでは長かったが、つかえが取れると一気に未羽はしゃ
べりきった。よほど一人で苦しんでいたのだろう。
しも
俺は﹁いじめ﹂という予想が外れたのと、天使のようなうちの妹
がどうも下の悩みを抱えてるらしいという衝撃により、しばらく呆
然としていた。
﹁お、お兄ちゃん!? 何か言ってよ! あたしこんな恥ずかしい
告白してるんだから!﹂
その声で俺はハッと我に返った。
﹁あ⋮⋮ご、ごめん! そ、そうか、いじめじゃなかったんだな、
ははは。そ、そんなことで悩んでいたとは⋮⋮﹂
﹁いじめ? 何それ? もう、お兄ちゃんしっかりしてよ、お兄ち
ゃんだけが頼りなんだから﹂
頬を膨らませて抗議され、俺は気を取り直した。余談だが未羽の
ふくれっ面は待受画面にしたいくらい可愛い。
﹁うん、未羽、一人で悩んで辛かっただろう。どんな悩みでも遠慮
なく相談していいんだぞ。それで、未羽はお兄ちゃんにどうしてほ
しいんだ? 一緒に病院行ってほしいとか?﹂
未羽はビクッとして肩をすくませた。
﹁びょ、病院は嫌⋮⋮男のお医者さんにお尻見られたり弄られたり
するくらいなら⋮⋮死ぬ﹂
死ぬな! 乙女なりの価値観だが、頼むから死ぬな!
﹁病院とかの前に、先ずこの症状が何なのかハッキリさせたいの⋮
⋮お兄ちゃん、インターネットで調べて⋮⋮﹂
8
うむ、一理ある。痔なら市販の薬もあるしな。
﹁分かった。でも、ずいぶん前から苦しんでたんだろ? どうして
自分で調べなかったんだ?﹂
うちのパソコンは書斎︵親父は書斎と呼んでいるが、実際は物置
に近い︶にあって、家族の誰でも使ってよいことになっている。
﹁履歴が残るもん、お父さんにばれちゃう⋮⋮お兄ちゃん履歴の消
し方知ってるでしょ。いつもお兄ちゃんが使ったあと履歴消えてる
もんね。何見てるの?﹂
﹁分かった。すぐに調べてくる﹂
まかせておけ、と俺は未羽の肩をポンと叩き、それ以上話を続け
させないために急いで部屋を出た。
☆
﹁未羽、お前は切れ痔だ。たぶん間違いない﹂
三十分後、俺はパソコンから印刷した数枚のプリントを未羽に差
し出した。
﹁切れ痔⋮⋮?﹂
﹁肛門近くの直腸に傷ができる痔だ。未羽の言っていた症状にピタ
リと当てはまる﹂
未羽はプリントを受け取ると、ふんふんとうなずきながら熱心に
読んだ。
﹁うん⋮⋮うん⋮⋮そうそう、すごい、全部合ってる。あたし、切
れ痔だったんだ⋮⋮﹂
﹁取りあえず重大な病気でないことはハッキリした。切れ痔は軽い
ものなら二週間程度で治るものらしい。痛みは薬でやわらぐってさ﹂
﹁く、薬って、ボラギノール?﹂
﹁おお、さすがにボラギノールは知っていたか。切れ痔には座薬タ
イプがいいらしいぞ。お兄ちゃん今から買いに行ってくる﹂
﹁い、いいの? お兄ちゃん?﹂
9
申し訳なさそうな顔で未羽は言った。頼られ甲斐のある妹だ。
﹁遠慮するな、一刻も早く治したいんだろう? ドラッグストアは
まだ開いてる時間だし、チャリでひとっ走り行ってくる。あ、お金
もいいぞ、お兄ちゃんが出しとく﹂
﹁そ、そのことじゃなくって⋮⋮﹂
首をかしげる俺に、未羽は頬を赤く染めて言った。
﹁は、恥ずかしくない⋮⋮? 痔の薬買うの⋮⋮﹂
︱︱虚を突かれた、とは、こういう感じを言うのだろう。俺は一
瞬ポカンとして︱︱それから、未羽の肩をガシッとつかまえた。
﹁何を言ってるんだ! お兄ちゃん、恥ずかしいとか微塵も考えな
かったぞ! 未羽のためなら、何だってやってやるさ!﹂
俺は財布と自転車の鍵をジャージのポケットに突っ込むと、未羽
に向かってビシッと親指を立て、颯爽と部屋を飛び出した。
部屋を出る間際、未羽が俺に惚れたようなまなざしを向けている
のがチラリと見えた。カッコいい! 俺!
☆
再び三十分後、俺はボラギノールを手に帰宅した。
宣言通り、俺はまったく恥ずかしがることなく、俺が切れ痔だと
いうことにして薬剤師に症状を伝え、数種類あるボラギノールの中
から最適なものを選んでもらった。男だぜ、俺。
ボラギノールを手渡すと、未羽は薔薇の花束でももらったような
顔をした。
﹁ありがとう、お兄ちゃん! 早速使ってみるね﹂
未羽は嬉しそうにそう言うと、部屋を出て行った。パタンとドア
が閉じられる。俺は、ほう、と安堵のため息をついた。
できることはやった。あとは薬がよく効いて、未羽の苦しみが少
しでも軽くなるのを願うばかりだ。
10
それにしても、未羽が切れ痔とはねえ⋮⋮。
どうも俺は、潜在的に未羽はうんこしないものだと思っていたよ
うだ。するとこ実際に見たことないし︵当たり前だ︶。
人間︱︱というか生き物なんだから、やっぱりうんこはするのだ
なあ。未羽も自然の法則には逆らえないのだ。一周して感動すらす
る。
ネットで切れ痔になった人の体験談を読んだが、傷に直接便が当
たるので、相当痛いのだそうだ。未羽もナイフで切りつけられるよ
うな痛みだと言っていた。
思わず便器に座って悶絶する彼女を想像してしまう。激しい痛み
に苦しんでいるのに、恥ずかしくて誰にも相談できない。何て不憫
なのだろう。もっと早く気づいてあげればよかった。
血も出たと言っていたな、初めて見たときはきっと驚いただろう。
苦悶の末になんとか排便を終え、涙目になりながらカラカラとト
イレットペーパーを巻き取る未羽。
便座から尻を浮かせ、紙をさし入れる。柔らかな曲線を描く、真
っ白な尻︱︱太ももはスラリとして、かといって細すぎもせず、最
近になって女らしい肉付きが︱︱
遠くで暴走族のけたたましいエンジン音がして、俺はハッと我に
返った。ぶるぶると頭を振って、妄想を追い払う。
いかんいかん、妹を相手にいやらしい想像をするなんて、変態じ
ゃないか。俺は頼りがいのある優しいお兄ちゃんなのだ。
俺は部屋の壁の方を向いた。壁の向こうは未羽の部屋だ。今ごろ
座薬を入れているのだろうか。
下半身をむき出しにして、人にはとても見せられないポーズを取
りながら、お尻の穴に、つぶっと⋮⋮。
﹁だー! 俺のアホー!﹂
ジュニアがむくむくと頭をもたげてきたのを感じ、俺はまた頭を
振って妄想を追い払った。
ダメだダメだ! 俺は妹をおかずにしたことは⋮⋮ないとは言わ
11
ないが、あんまりないのだ! 煩悩を捨て、優しいお兄ちゃんに戻
るのだ!
深呼吸して気を落ち着かせる。⋮⋮そういや、数学の課題が途中
だった。俺は机に向かい、再び教科書を広げた。
☆
12
︻3︼入れきれないの⋮⋮
三角関数の問題を解いて煩悩を追い払っていると、ノックの音が
した。この音は未羽だ。
座薬を入れ終わって、報告に来たのだろうか。俺が返事をすると、
未羽が入ってきた。
薬が効いて晴れやかな顔をしているかと思いきや、眉が八の字に
なって泣き出しそうな顔をしている。
﹁どうした? 薬は入れたのか?﹂
﹁お兄ちゃん⋮⋮ダメ⋮⋮入れきれないの⋮⋮﹂
未羽は握っていた右手を差し出し、手を開いて中を見せた。手の
ひらの上には、折れたり曲がったりした座薬が数個。
﹁⋮⋮これ、油で固まってるんだよ。体温で溶けるの。入れるとこ
探してるうちにどんどん柔らかくなって、入れようとするときには
もう折れちゃうの⋮⋮やっと入ったと思ったらまた出てきちゃうし
⋮⋮﹂
未羽は逆上がりができずに居残り練習させられている小学生のよ
うな顔をした。
﹁そ、そうか、難しいんだな⋮⋮で、そ、そのまた出てきたってや
つもこん中に入ってるのか?﹂
﹁それなの持ってこないよ! もう捨てた! それ見てどうするの
!﹂
﹁そ、その通り! 見る必要ないよな! 悪かった悪かった﹂
動転して失言してしまった。未羽はふくれっ面︵可愛い︶をした
が、怒る元気もないらしく、すぐにまたしゅんとしてしまった。
﹁し、しかし困ったな⋮⋮自分で入れられないとなると⋮⋮﹂
続きが言えなかった。
13
そりゃ、自分で入れられないんなら、俺が入れればいい、っての
は簡単な話だけど、座薬を入れるには、どうしても未羽は俺にお尻
の穴を晒さなくてならないわけで⋮⋮。
﹁⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮⋮⋮お願い⋮⋮座薬入れて⋮⋮﹂
うわあ、未羽から言い出した。未羽は真っ赤な顔をしてぷるぷる
震えている。
﹁い、いいけど⋮⋮未羽は平気なのか?﹂
﹁へ、平気なわけないよ⋮⋮死ぬほど恥ずかしいけど、自分でやっ
たら、今日買った分全部ダメにしちゃいそうだし⋮⋮お、お兄ちゃ
んごめんね⋮⋮こ、こんな汚いこと⋮⋮﹂
﹁な、何を言ってるんだ! 未羽!﹂
俺は椅子から立ち上がり、力強く言った。
﹁お前の身体に汚いところなどあるものか! お兄ちゃんは未羽の
ためなら何だってできるさ!﹂
☆
というわけで、俺たちは未羽の部屋に移動した。
﹁⋮⋮あ、あたし、どうしたらいいかな⋮⋮?﹂
未羽が手を後ろで組んで、上目づかいに聞いてきた。俺はドキリ
とした。
何だか、初めて彼女の部屋に入ったような気分になってくる。付
き合ったことないけど。
﹁え、えーと、ゆ、床は固いし、ベッドに横になる方がいいんじゃ
ないかな。足をこっちに向けて﹂
﹁こ、こう?﹂
未羽がベッドに上がり、膝を立てて座った。つぶらな瞳がオレを
見つめている。
ううう、何だかこれから初体験するみたいな気になってくる。し
14
たことないけど!
﹁え、えーと、やっぱり、四つん這いの方がいいかな。赤ちゃんに
座薬入れるときとか、だいたいそう⋮⋮だよな?﹂
﹁え!? よ、四つん這いにならなきゃダメ?﹂
﹁う、うん。お尻こっちに向けて﹂
﹁⋮⋮﹂
未羽はちょっと躊躇ってから、ゆっくりと身体をひっくり返した。
夏らしい薄い生地の短パンは、お尻のラインをほとんど隠すこと
なく︱︱って描写する暇もなく、未羽はすぐに身体を返して元の体
勢に戻った。
﹁む、無理無理! 恥ずかしい! お尻むき出しでこんなポーズな
んて、え、AVだよAV! 絶対無理!﹂
顔を真っ赤にして未羽は叫んだ。まだ脱いでもいないのに、なぜ
か股間を両手で押さえている。
﹁恥ずかしいって⋮⋮それじゃ仰向けでやるしかなくなるぞ﹂
四つん這いだろうと仰向けだろうと恥ずかしいことに変わりはな
い。むしろ仰向けの方が、お尻の穴ではなく⋮⋮その、女の子の大
事なところが晒される可能性がある。前門の虎、肛門の︱︱いや、
後門の狼である。
未羽は眉を八の字にして困った顔をしていたが、しばらくして観
念したように口を開いた。
﹁⋮⋮四つん這いは死んでも嫌だから、仰向けでいい⋮⋮お兄ちゃ
ん、お願い﹂
そう言うと未羽は膝立ちになり、短パンの腰の辺りに両手の指を
かけた。
え? もう脱ぐの?
未羽は上目づかいにちらりと俺の表情をうかがうと、割と躊躇い
なく短パンをするりと下げた。薄い水色のパンツが、ズギューンと
俺の目に飛び込んでくる。
未羽はお山座りになって、ひと息に短パンを足から抜き取ってし
15
まった。
俺はというと、それだけですでに鼻血が出そうだった。短パンと
パンツで露出度は大して変わらないのだが、目の前で未羽が脱いで
いるという事実が、俺を興奮させた。
しかし俺は努めて冷静を装い、﹁頼りになるお兄ちゃん﹂を演じ
続けた。
未羽は、電車内で胸に肘が当たったおっさんを、痴漢か偶然か見
定めるような眼で俺を睨んだ。
そうして俺の眼にいやらしい色のないことを確認すると、一つ長
いため息をついて、覚悟を決めるように口を結んだ。
未羽がパンツの腰の辺りに右手をかけた。俺は生つばを飲み込み
そうになるのを必死でこらえた。
そのまま脱ぐかと思いきや、左手をパンツの中に滑り込ませる。
股間の膨らみから、あそこを押さえているのだと分かった。
左手でその部分を隠しながら、右手だけ使って未羽はゆっくりと
パンツを下げた。神々しい滑らかさを備えた下腹部が露わになる。
強力な磁力で吸い寄せられるように、俺の視線は未羽の股間に集
中した。凝視してはいけないとか、そんなこと考える余裕もなかっ
た。相手が強力すぎる。
未羽は斜め座りになって、右手だけでパンツを脱いだ。小さなそ
の布きれは、すらりとした足をなぞるようにすり抜け、小さな塊に
なった。
脱ぎたてのパンツを見られるのは恥ずかしいのか、未羽はそれを
かたわらの布団の下へ押し込んだ。
そこでオレは、未羽が訴えかけるような視線を送っているのに、
やっと気づいた。
ハッ! いかんいかん。未羽はいま、人生で最大の羞恥に耐えて
いるのだ。俺がリードしなくては。
えーと、このまま仰向けになると、未羽は天井を拝みながら座薬
を入れられることになる。
16
それはちょっと、なすがまま過ぎて怖いのではないだろうか。俺
の顔くらいは見られる体勢の方がいいだろう。
部屋を見渡すと床に直径一メートルくらいあるビーズクッション
があったので、俺はそれを未羽の背中と壁の間に置いた。
﹁未羽、クッションもたれるようにして膝を丸めてごらん﹂
﹁う、うん⋮⋮﹂
未羽がぽふっ、とクッションに身体をうずめる。でもすぐに膝を
丸めることはせず、困ったような顔で俺の顔を見て、それから意味
もなく視線をさまよわせた。
俺は急かさずに待った。躊躇うのは当然だ。
未羽は決心を固めるように小さく息を吸って、左手で股間を隠し
ながら、閉じた膝を胸の方に引き寄せた。
︱︱大事な部分を隠す左手の下に、未羽のお尻の穴が露わになっ
た。そのピンク色の襞の集まりは、とても排泄物の出口とは思えな
いほど美しく、マーガレットの花のようだった。
︱︱ああ、俺の大事な妹よ。やっぱりお前の身体に汚いところな
ど一つもないよ。
﹁⋮⋮お、お兄ちゃん、これで、いいかな⋮⋮﹂
妹の肛門に見とれていた俺は、声をかけられてハッと我に返った。
﹁あ、ああ、未羽。きれいだよ﹂
﹁⋮⋮って! そうじゃなくて! は、恥ずかしいんだから、早く
⋮⋮﹂
見ると未羽は火が出そうなほど赤い顔をしていた。
しまった。また我を忘れてしまった。このままでは未羽が自然発
火してしまう。早く事を済まさねば。
しかし、お尻の穴は見えることは見えるのだが、願わくばもう少
し上を向いてくれると、もっと座薬が入れやすいと思うのだが。
うん、そうだ。これは座薬を確実に適切に効率よく挿入するため
に必要な措置なのだ。すでにいっぱいいっぱいな未羽が協力してく
れるかは分からないが、俺はダメ元で言ってみた。
17
﹁⋮⋮未羽、ちょっとお尻の穴が下向いてるから、手で太ももを引
き寄せるようにしてもらえるかな?﹂
﹁え⋮⋮?﹂
要するにM字開脚しろと俺は言ったのだ。未羽はその言葉を知ら
ないだろうが。
﹁⋮⋮ふ、太ももを⋮⋮そんな⋮⋮し、しなきゃダメ⋮⋮?﹂
あせった顔で未羽は言った。八の字になった眉毛がむやみに可愛
かった。
﹁うーん、このままでも入れられないことはないけど、角度が悪い
と痛くなるかもしれないし。でも、未羽が恥ずかしすぎてできない
って言うなら、それでいいんだぞ。無理はしなくていい﹂
痛くなるかも、と言ったところで、未羽はビクッと肩をふるわせ
た。
自然に口から出た言葉だったが、思いがけず未羽の恐怖心をあお
ってしまったようだ。決して計算して言ったのではないですよ、本
当です。
未羽の表情がおびえに変わった。弱みにつけ込んだみたいで自己
嫌悪になりかけたとき、未羽がか細い声で、
﹁⋮⋮い、痛いのはやだ⋮⋮す、するよ⋮⋮﹂
と言った。
あそこを押さえていた左手をすっと外す。とたんに、神聖なスリ
ットが眼を射るように飛び込んできた。さっきまで感じていた罪悪
感は一瞬で吹き飛んだ。
︱︱ああ、未羽︱︱お前、十五歳にもなるっていうのに︱︱ほと
んど生えていないんだな︱︱。
この世で最もひそめるべきその部位が、いっさいの防備を取り払
い、白日の下に︱︱いや、太陽で出てないけど、煌々とした蛍光灯
の明かりの下、俺の前に晒されている︱︱。
お尻の穴と同様、いや、それよりもはるかに、未羽のそこは神々
しく美しかった。
18
未羽は顔を横に向け、頬を赤く染めている。きっと心臓がバクバ
クしていることだろう。俺もそうだ。
続いて未羽は、ゆっくりと両の手を膝の裏側に差し入れたが、そ
こでまた動きが止まった。いちいち恥じらうところがいじらしい。
﹁未羽、恥ずかしかったら、もういいんだぞ⋮⋮﹂
﹁い、痛いの、やだ⋮⋮﹂
未羽は太ももをつかんで、胸の方に引きつけた。
膝の間隔は二十センチほどで、M開脚と呼べるほど大きく開いて
いるわけではない。
しかしその体勢は、ただ仰向けにより転がっているよりも、圧倒
的にいやらしかった。
固く閉じていたスリットがほんの少しだけ開いて、ピンク色に艶
った襞がのぞいている。見ているだけで射精しそうだった。
﹁⋮⋮こ、これでいいの? お兄ちゃん⋮⋮?﹂
激しい羞恥に耐える未羽は、息が荒くなっている。はぁはぁと艶
めかしく漏れる吐息が、さらに俺を興奮させた。
﹁あ、ああ⋮⋮いい感じだ。ちょ、ちょっと待ってろよ、すぐ入れ
てやるからな﹂
俺は急いでボラギノールの箱を開けた。アルミのパッケージを破
って中の薬を取り出そうとするのだが、慌てているのでうまくいか
ない。
俺は膝をついて座っているので、ちょっと視線を横にやるとすぐ
そこに未羽のあそこが見えてしまう。そのたびに俺はドギマギして、
よけいに手元がおかしくなってしまうのだった。
落ち着いて考えれば、座薬がいつでも入れられる状態に準備して
から未羽にポーズを取ってもらえばよかったのだ。
健気な妹は、段取りの悪い兄を責めもせず、恥ずかしいポーズの
ままじっと待っている。
不器用な手つきでどうにか座薬を取り出す。長さは三センチほど。
未羽は油でできていると言っていたが、なるほど、ロウのような手
19
触りだった。
﹁ど、どっから入れるんだ? これ?﹂
﹁太い方が先だよ、お兄ちゃん⋮⋮﹂
﹁そ、そうか。じゃ、じゃあ、入れるぞ﹂
緊張のせいでいちいちどもってしまう。俺は座薬を指でつまみ、
未羽に向き直った。
うおっ⋮⋮!
気をつかって直視しないようにしていたあそこが眼に飛び込んで
きて、俺は少しのけぞった。物理的な作用はないはずなのだが。
ドキドキしながらベッドに近づく。無意識に未羽の足の付け根辺
りに手を触れたら、彼女の身体がビクッと震えた。
﹁ご、ごめん! え、えっと、手をどっかに置いてないと、不安定
で⋮⋮﹂
﹁い、いいよ。触っても⋮⋮﹂
恥ずかしくて死にそうなはずなのに、こんなときでも兄を気遣っ
てくれる。未羽はどこまでも健気だった。
﹁よ、よし、じゃあ、触るぞ⋮⋮﹂
未羽の太ももにそっと手を置く。⋮⋮うわあ、触り心地いい!
しっとりすべすべで、ぷにぷにと柔らかい⋮⋮くそう、未羽、お
前はどこまで完璧なんだ! お兄ちゃん頭がくらくらするじゃない
か!
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮まだ⋮⋮?﹂
おっと、また意識が桃源郷へ行ってしまった。
﹁よ、よし! 準備オーケーだ! い、入れるぞ!﹂
気を取り直して俺は体温でぬめりはじめた座薬を構えた。
未羽の股間に顔を寄せる。あそことお尻の穴がどアップで迫って
くる。俺は深呼吸して気を落ち着けた。
座薬の丸い方を、お尻の穴に当てる。未羽の身体がピクッと震え
た。
そのまま親指で押し込むと、何とも言えない抵抗感とともに、座
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薬は穴の中に沈んだ。
﹁痛っ⋮⋮﹂
未羽がちょっとだけ顔をしかめる。座薬が傷に当たって痛むのだ
ろうか。
一応入ったようなので、俺は指を離した。とたんに座薬がニュル
っと半分ほど飛び出してくる。俺は慌てて親指で押し返した。
なるほど、未羽が﹁出てきちゃう﹂って言ってたのはこれか。俺
は座薬を完全に押し込み、ぐっと肛門に指の腹を押しつけた。
すると、キュッと肛門が閉じるように感じられた。手応えありだ。
手を離しても、座薬は出てこなかった。
﹁は、入ったぞ! 未羽!﹂
俺は中学のとき野球の地区大会で優勝したときのような達成感を
味わっていた。
﹁あぁ⋮⋮うん、あたしもちゃんと入ったの分かった⋮⋮よかった
⋮⋮ありがとう、お兄ちゃん﹂
こんなときでも礼を言うんだなあ、お前は⋮⋮。お兄ちゃん未羽
が将来悪い人に騙されないか心配になってくるよ。
未羽はすでにM字開脚を解いて、脚を折ってベッドに横たわって
いる。無事に事を終えた安堵感からか、あそこを隠すのを忘れてい
た。
故に大事なところがいまだにむき出しになっており、俺の眼はど
うしてもそこへ吸い付けられてしまう。⋮⋮可愛い割れ目だなあ。
俺の視線に気づいた未羽が慌てて布団を引き寄せ、腰を覆うよう
に被せた。気まずくなって、俺はいまさらだが視線をそらした。
いやらしい目で見ていたことを責められるかと思ったが、未羽は
恥ずかしそうに顔を赤らめるだけだった。
﹁お、お兄ちゃん、ありがとうね。入れるときはちょっとだけ痛か
ったけど、いまは平気だよ。もう大丈夫だから、お兄ちゃん手を洗
ってきて﹂
﹁あ、ああ、そうだな﹂
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仕事は済んだ。未羽も服を着なきゃならないし、ここはさっさと
退散しよう。俺は未羽に背を向け、ドアに向かって歩き出した。
﹁お、お兄ちゃん!﹂
ドアノブに手をかけた俺を、未羽が呼び止めた。
﹁ん? 何だい?﹂
振り向く俺。未羽は顔を赤らめながら、
﹁⋮⋮⋮⋮お、おにいちゃん⋮⋮い、嫌じゃなかったらでいいんだ
けど⋮⋮明日の朝も⋮⋮入れてくれる⋮⋮?﹂
と言った。
☆
22
︻4︼猿化する俺
それからどうなったかというと、俺は当然明日の朝の座薬挿入も
快く引き受け、自室に戻った。
そして網膜に焼き付けた未羽のしどけない姿を反芻しながら、速
攻でオナニーした。二回した。
変態とでも何でも言うがいいさ。
でもな、これだけは言っておくけど、未羽のあの姿を見てオナニ
ーしない奴は、インポだぜ!
兄妹だろうが何だろうが関係あるものか! 俺は聖者でも救世主
でもねえ!
男らしく割り切って1000KWHくらい自家発電し、大量の精
液を吸ったティッシュをゴミ箱に放り込む。
ジャージをはいたところでノックの音がして、俺は泥棒のように
ビクッとした。⋮⋮やはり妹をおかずにすることに後ろめたさを感
じているようだ。
鍵を開けドアを開くと、予想通りだけど未羽が立っていた。
︱︱ってアレ? 何か顔が晴れやかなんだけど︱︱と思っていた
ら、いきなりに俺の胸に抱きついてきた。
﹁わ! ど、どうした未羽!?﹂
う∼、こいつ、家では小学生が着るようなワイヤーなしパットな
しのブラなんだよな。ノーブラと変わんねえよ。
むにょん、と柔らかな乳房が腹に押しつけられ、いましがた二回
抜いたばかりだというのに、俺のジュニアがまた鎌首をもたげはじ
めた。
未羽が俺の胸にすりつけていた顔を上げた。にこやかな笑顔が、
天使のように可愛かった。ふくれっ面や困った顔も可愛いけど、や
23
っぱり未羽には笑顔が似合う。
﹁お兄ちゃん! あのね、痛くないの!﹂
俺の首に腕を絡めながら、未羽は言った。⋮⋮顔すげえ近え。
﹁ボラギノールね、こんなに効くと思わなかった! お尻が痛くな
いのなんて久しぶりだよ! お兄ちゃんのおかげだよ! ありがと
!﹂
未羽はそう言って、再び俺にぎゅ∼っと抱きついた。
中学生のころも、感極まるとこうして抱きついてくることがあっ
た。そのころももちろん可愛かったんだけど、あのころの少年のよ
うな体型に比べると、高校生の未羽はふにふにした女らしい丸みが
ついている。
柔らかなその身体に触れていると、思わず押し倒したくなってし
まう。つーか、二回抜いてなかったら押し倒していたかもしれない。
俺の自制心が限界に達する直前、未羽はパッと身体を離した。眩
しいほど晴れやかな笑顔。
﹁お兄ちゃん、明日もお願いね! 大好き!﹂
未羽はくるりときびすを返すと、﹁痔に∼は∼ボラギノ∼ル∼﹂
と歌いながら部屋を出て行った。
部屋は急に静かになった。俺はドアを閉めて鍵をかけ、ジャージ
をするっと下ろし、猿のように三回目のオナニーをはじめた。
☆
24
︻5︼一時は死を覚悟した
︱︱翌朝。俺が一階に降りていくと、風呂場から出てきた未羽に
はち合わせた。
﹁⋮⋮あ、おはよう、お兄ちゃん﹂
﹁おはよう⋮⋮どうだ? 具合は?﹂
昨日のような晴れやかな顔はしていなかったので、俺は聞いた。
﹁うーん、ちょっと痛い。一晩は効かないみたい。⋮⋮いま、きれ
いにしてきたから、お兄ちゃん、いい⋮⋮?﹂
﹁もちろん﹂
そうして俺は未羽の部屋に行き、座薬を入れてやった。
二回目だからパンツを脱ぐことやM字開脚で躊躇ったりはしなか
ったけど、そう簡単に慣れるはずもなく、未羽は昨日と変わらず恥
ずかしそうにしていた。
未羽が恥じらう姿の破壊力はICBM級で、俺は為す術がなかっ
た。
事を済ませると、俺は自室に戻るやいなやベッドにダイブし、ジ
ャージを下げてオナニーをはじめた。昨日三回もしたというのに、
俺のジュニアはギンギンだった。
そのとき、ガチャッとドアが開いた。
﹁お兄ちゃんあのね⋮⋮⋮⋮っ!﹂
未羽と目が合い、時間が止まった。
三十秒前まで一緒にいた兄が部屋に戻るなりオナニーしているな
ど、思いもしなかったのだろう。未羽は欠かしたことないノックを
しなかった。
もちろん隠す暇などない。俺の手に握られたいきり立ったジュニ
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アは、バッチリと未羽に見られてしまった。
未羽は五秒ほど静止したあと、逆再生のような動きで部屋を出て、
静かにドアを閉じた。
俺のジュニアは急速に萎み、息絶えるようにくたっと倒れた。
ノロノロとジャージを上げ、俺は頭を抱えた。動物のようなうめ
き声が出た。
⋮⋮終わった。俺が築き上げてきた全てのものが崩壊した⋮⋮。
未羽は激しく俺を軽蔑するだろう。もう仲むつまじい兄妹には戻
れない。
一瞬にして大事なものを全てを失ってしまった⋮⋮ブラックマン
デーとかこんな感じだったのだろうか。
俺は取りあえず階下に降りることにした。
顔を合わせれば、きっと未羽は蔑んだ目を向けてくるだろう。
俺は何食わぬ顔をして朝食を食い、制服に着替え、鞄を持って家
を出て、学校には行かず、どっか高いところから飛び降りて死のう。
そう決意して俺は部屋を出た。すでに俺は精神的に死んでいたの
で、まさか、ドアの向こうで未羽が待っているとは思わなかった。
﹁み、未羽⋮⋮!﹂
俺は激しく狼狽した。ホームに吐き捨てられた唾を見るような視
線を向けられるかと思いきや、未羽は何故かすまなそうな顔をして
いた。
﹁ご、ごめんね、お兄ちゃん⋮⋮ノックもしないで開けちゃって﹂
俺は耳を疑った。⋮⋮え? 何で俺謝られてるの?
﹁あ、あの⋮⋮あたし、や、やだとか思ってないからね⋮⋮きょ、
兄妹だけど、あんなことしたんだから、ちょっとエッチな気分にな
ったって、当然だと思うし⋮⋮﹂
驚きを通り越して、俺はポカンとした間抜け面をしていたと思う。
﹁⋮⋮ゆ、許してくれるのか⋮⋮俺を⋮⋮﹂
﹁許すも何も、悪いことしてないじゃない﹂
⋮⋮そうなの? 死刑に値すると思うけど。
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﹁健康な男子高校生なんだし⋮⋮変だとか思わないよ。
ど、どっちかっていうと、むしろ安心したっていうか⋮⋮﹂
﹁あ、安心?﹂
﹁⋮⋮お兄ちゃん、平気な顔であたしに座薬入れるんだもん⋮⋮あ
たしは死ぬほど恥ずかしいのに⋮⋮それなのに何も感じてくれない
って⋮⋮。
いくら⋮⋮いくら兄妹だからって、あそこを目の前で見られて、
それでノーリアクションじゃ、あたし高校生になってもまだ子供扱
いなのかなーって、全然魅力ないのかなーって、心配になっちゃう
よ⋮⋮。
でもよかった⋮⋮お兄ちゃん、もうあたしのこと、お子さまって
思ってないんだね⋮⋮﹂
い、妹よ⋮⋮そんな風に思っていたのか⋮⋮。天使過ぎる⋮⋮。
﹁子供扱いしてないし、魅力がないなんてこと絶対ない。お前は世
界一可愛いよ﹂
﹁ふふ、ありがと﹂
未羽は目を三日月にしてにっこりと笑った。膝が砕けそうになる
ほど可愛らしい笑顔だった。
﹁あ、そうだ。お兄ちゃんの部屋に来たのは、お願いがあったんだ
よ﹂
手のひらにこぶしをポンと打ち付ける。こういう仕草も可愛い。
﹁お願い? 何だい?﹂
﹁今日、五限体育があるの。薬が切れて運動すると痛むからさ、お
昼休みに入れてくれないかな? 学校の中でだけど、いい?﹂
鼻血吹きそうだったけど、もちろん俺は了承した。
☆
27
︻6︼香奈ちゃん登場
未羽にあんなことをお願いされたので、午前中悶々としながら授
業を受けていたのだが、三限の休み時間に未羽からメールが来た。
﹃あの件は大丈夫だから、今日の昼休みはいいよ﹄
ちょっと残念なような、ホッとしたような気分だった。
まあ、大丈夫ってことは症状が改善しているんだろう。喜んでお
こう。
昼食を食い終わってから、俺は週直だったので教材を取りに職員
室へ向かった。
すると廊下の向こうから未羽が歩いてきた。友達と一緒だ。
一緒にいる子はよく知っている。名前は香奈ちゃん、未羽の大親
友で、近所に住んでいる。よくうちに遊びに来るし、何度かお泊ま
りしたこともある。
ちなみに、未羽と並んで歩いても遜色ないほどの美少女である。
髪はあごのラインでそろえたボブカット、切れ長の目が利発な印
象を与える。おっとりした未羽とは対象に、クールな感じの子だ。
身長は未羽と同じくらいで、小柄である。二人並んでいるとアイ
ドルユニットのようだ。
あと、これは彼女の容姿を語る上で避けてはとおれないことなの
で述べておくが、巨乳である。
﹁あ、お兄ちゃん﹂
﹁こんにちは﹂
香奈ちゃんがぺこりと頭を下げる。このとおり礼儀正しくてよい
子だ。
﹁こんちは、香奈ちゃん﹂
妹にも声をかけるべきなのだが、あの話題を避けるとネタが見つ
からない。
28
﹁お兄ちゃん、お薬は香奈ちゃんに入れてもらったよ﹂
間近で爆弾がちゅどーんと爆発したような気がした。
﹁い、い、い、入れ、入れてもらったって!?﹂
﹁お話は全部未羽から聞きました。お兄さん、未羽のためにいろい
ろありがとうございます﹂
話したのかよ!? んで座薬入れてもらったって、どんだけ仲い
いんだ!?
﹁も∼、未羽ったら、わたしに一番に相談すべきでしょ、友達なの
に﹂
﹁だって、香奈ちゃんに相談したら病院に引きずって行かれるに決
まってるもん。恥ずかしいからやだ﹂
⋮⋮ああ、なるほど。考えてみたら、この子ら大親友なんだから、
香奈ちゃんに相談するのが普通だよな。
確かに、香奈ちゃんなら未羽のことを心配するあまり、縄で縛っ
てでも病院に連れて行きそうな気がする。先に俺に相談したのは、
そういうわけか。
﹁お兄さん、学校ではわたしに任せてくださいね。お家の方では、
わたしが毎日うかがうわけにもいかないので、これまでどおりお兄
さんにお願いします。嫌がらないであげてくださいね﹂
﹁あ、ああ、ちゃんとやるから、心配しないで﹂
嫌がるどころか、おかずにしてるんだけど⋮⋮。未羽まさか今朝
のオナニー目撃事件まで話していないよな⋮⋮?
﹁こちらこそ、香奈ちゃんにはお世話になるよ。⋮⋮で、今日はど
こで入れたの?﹂
授業中に場所をどこにしようか考えていたのだ。無駄になったけ
ど。
﹁女子トイレ。個室に二人で入って﹂
なるほど、女の子同士だとそのへん楽だな。出入りするときさえ
気をつければいい。
﹁便座の蓋に座って、お兄ちゃんに入れてもらったときみたいなポ
29
ーズで入れてもらったんだけど⋮⋮女の子同士でも恥ずかしいね、
やっぱり﹂
﹁わたしも⋮⋮女の子同士とはいえ、人のあそこをあんな間近で見
るなんて初めてだから⋮⋮ドキドキしました﹂
﹁ゴメンね香奈ちゃん、変なこと頼んじゃって﹂
﹁何言ってんの、全然気にすることないよ。それに⋮⋮恥ずかしが
る未羽、可愛いし﹂
﹁えー!? やだ、もう、恥ずかしい! 今度香奈ちゃんのも見せ
て!﹂
﹁えー!? やだー!﹂
⋮⋮キャッキャウフフが始まった。
女子の世界には入っていけないので、俺は適当に別れの挨拶をし
てその場を去った。
そして男子トイレの個室で、未羽と香奈ちゃんの絡みを想像し、
一発抜いた。
⋮⋮もういい加減チンコが痛えよ⋮⋮。
☆
30
︻7︼⋮⋮ここでしていいよ
夜。お薬の時間である。
未羽が風呂から上がると、いつもどおり俺は未羽の部屋を訪れた。
﹁⋮⋮じゃあ、お兄ちゃん、お願いね⋮⋮﹂
短パンをするりと脱ぎ出す未羽。躊躇いはほとんどなくなったが、
頬を赤らめて恥じらうのは変わりない。
香奈ちゃんも言っていたけど、未羽が恥じらう顔は本当に可愛い
なあ⋮⋮。痔が治ってもやらせてくれないかな? ダメ?
俺は手際よく座薬の挿入を終えた。作業自体は慣れたけど、未羽
のあそこを眺めて興奮するのは変わらない。
昨日から四回抜いてるんだけど、俺のジュニアはギンギンである。
未羽に悟られないように立ち去るのが結構大変だったりする。
﹁よし、入ったぞ﹂
﹁⋮⋮あ、ありがと、お兄ちゃん﹂
一仕事終え、立ち上がろうとしたとき、
﹁⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮今日もお部屋に戻ったら⋮⋮オ、オナニ
ーするの?﹂
清純な未羽の口からあり得ない単語が飛び出し、俺は衝撃を受け
た。つ、つーか、何て答えりゃいいの!? 俺!?
﹁する﹂って言うのもアレだけど、今朝の発言からして﹁しない﹂
って言ったら、﹁やっぱりお子さま扱いなんだ⋮⋮﹂って傷つけそ
うだし⋮⋮。
﹁ど、どうかなあ! あ、あんまりやり過ぎてもいけないし、で、
でも未羽は可愛いから、お兄ちゃんまたやっちゃうかもなあ! あ
は、あははは﹂
しどろもどろになってしまった。
31
未羽は仰向けにベッドに横になったまま、何故かあそこを隠そう
としなかった。握った両手を胸に当て、湯気が出そうなほど赤い顔
をしている。
﹁⋮⋮す、するんだったら、ここでしていいよ⋮⋮未羽、見ながら
⋮⋮﹂
近くで核爆発が起こったような気がした。
﹁え? え!? ええ!? こ、ここでしていいって⋮⋮﹂
﹁お、お兄ちゃんには、いっぱい感謝してるから⋮⋮へ、部屋で思
い出しながらするより、いいでしょ⋮⋮未羽の裸でよかったら、見
せてあげる⋮⋮。
で、でも、お兄ちゃんも、してるとこ見られるの、恥ずかしいよ
ね。や、やだったらいいんだよ⋮⋮﹂
⋮⋮妹の裸、生で見ながらオナニーって⋮⋮。
もう一線越えてる気がするけど、その誘いを断れるほど、俺の自
制心は強くなかった。
﹁い、いいのか、未羽⋮⋮﹂
﹁うん⋮⋮未羽、このくらいしか、お返しできないから⋮⋮﹂
お返しって⋮⋮俺の方が百万倍くらいもらってるんだけど。
﹁じゃ、じゃあ⋮⋮﹂
うわ、妹の前で脱ぐのって、恥ずい!
⋮⋮でも、つーことは兄の前で脱いだ未羽はこの何倍も恥ずかし
かったってことで⋮⋮そう思うとまたジュニアがいきり立ってきた。
堪らなくなって、俺はパンツと一緒にジャージをずり下ろした。
解放されたジュニアが、びよんと揺れた。
﹁きゃっ⋮⋮!﹂
間近で男性器を目にした未羽が小さく叫び、両手で口を覆った。
⋮⋮見せ見せおじさんみたいだ、俺⋮⋮。
﹁⋮⋮お、大っきい⋮⋮すごい⋮⋮﹂
﹁い、いや、平均だと思うけど⋮⋮﹂
﹁これ、ぼっきっていうの? してるんだよね? へー、こんなに
32
なるんだー⋮⋮すごーい⋮⋮﹂
未羽が正直な感想を述べる。しげしげとジュニアを見つめられる
と、背中がぞくぞくしてくる。え? 俺ってMっ気もありなの?
﹁⋮⋮ね、お兄ちゃん、どんなふうにやるの?﹂
普段おしとやかな未羽だが、年頃なので好奇心旺盛のようだ。俺
は右手でジュニアをこすりはじめた。
﹁わあ⋮⋮﹂
﹁み、未羽⋮⋮も、もうちょっと足を開いてくれる⋮⋮?﹂
﹁え? う、うん⋮⋮いいよ⋮⋮お兄ちゃん、見て⋮⋮﹂
俺のジュニアを興味津々に見つめながら、未羽が脚を四十五度く
らいに開いた。
﹁も、もうちょっと⋮⋮﹂
﹁⋮⋮も、もっと? は、恥ずかしいよ⋮⋮﹂
﹁お願い、もうちょっとだけ﹂
﹁⋮⋮あん⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮そんなに見たいの⋮⋮じゃあ、未羽、
がんばる⋮⋮﹂
世界一兄思いの妹は、九十度に脚を開いてくれた。座薬を入れる
ときだってこんなに開いたことはない。
スリットが開いて、ピンク色の美しい襞がのぞいている。未羽も
興奮しているのか、中は艶々とぬめりを帯びていた。
このまま挿入してしまいたい欲求に駆られたが、さすがにそこは
我慢した。自制心強いな、俺。
﹁きれいだよ⋮⋮最高だよ、未羽⋮⋮﹂
﹁⋮⋮嬉しい⋮⋮お兄ちゃんが喜んでくれて⋮⋮⋮ね、ねえ、お兄
ちゃん⋮⋮おっぱいも⋮⋮見たい?﹂
﹁い、いいのか? 見たい! すっげー見たい!﹂
発情した犬みたいに締まりなく、俺はせがんだ。
﹁⋮⋮そんなに? いいよ、お兄ちゃん⋮⋮見て⋮⋮﹂
Tシャツの裾に手をかけ、ゆっくりとたくし上げる。綿の白いブ
ラが露わになる。
33
小学生のファーストブラみたいな色気のないブラだが、それがか
えって幼さを強調して、エロかった。俺は暴発しそうなのを必死で
押さえた。
﹁⋮⋮め、めくるね⋮⋮﹂
未羽はブラのカップの下の方に手をかけると、鎖骨の辺りまでず
り上げた。
小振りながらもしっかりとした丸みを持ったおっぱいが、ぷるん、
と顔を出す。頭にガツンときた。
真っ白な肌︱︱発展途上だが麗しい曲線を描く乳房に、桃色の可
愛らしい乳首が、ちょこんと乗っかっている。
﹁き、きれいだよ⋮⋮未羽⋮⋮なんてきれいなんだ⋮⋮﹂
﹁嬉しい⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮いっぱい見て⋮⋮﹂
﹁み、未羽、バンザイしてごらん﹂
﹁え? ⋮⋮バンザイ? こ、こう⋮⋮?﹂
疑うことを知らない未羽が、従順に両手を挙げる。俺はTシャツ
の裾をつかまえると、上に向かって引き上げた。
﹁あ⋮⋮ぬ、脱ぐの⋮⋮?﹂
恥ずかしがって拒否するかと思ったが、未羽は抵抗しなかった。
俺は顎、頭、腕と順に引き抜いていった。
Tシャツを脱がされた未羽は、何だかボーッとした顔をしていた。
状況が異常すぎて冷静な判断ができていないのかもしれない。
続いて俺はブラに手をかけた。未羽はなすがままだ。
ホックもないので、Tシャツと同じように上に脱がす。腕を抜け
ると、ブラと一緒にたくし上げられていた長い髪が、ふわりと降り
てきた。
全裸キタ︱︱︱︱︱︱︱!!!!!
もはや未羽は、一糸まとわぬ姿である。その身体は、この世のも
のとは思えない美しさだった。
34
神が作りたもうた最高傑作、地上に降りた天使そのものだ。
﹁な、なんか⋮⋮恥ずかしい⋮⋮﹂
さすがに着るものが一枚もないと無防備な感じがするのだろう。
未羽は頬を染め、腕を組むようにして胸を隠した。
﹁隠すなー! 頼む! も、もうちょっとで⋮⋮﹂
﹁イ、イキそうなの!? お兄ちゃん? わ、分かった、み、見て
⋮⋮﹂
何でこんなに優しいのか知らないが、未羽は組んでいた腕をほど
いてくれた。再びおっぱいとご対面。
﹁うう、未羽−! 未羽−!﹂
﹁ああ⋮⋮お兄ちゃん、そんなに未羽のこと⋮⋮いいよ、全部見て
⋮⋮﹂
未羽は後ろに倒れ、ぽふっとビーズクッションに身体を預けた。
そして、俺にあそこが見えるように、ゆっくりと膝を開いた。未
羽のそこは、とろっとろに潤っていた。
﹁⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮見せてあげる⋮⋮未羽の、全部⋮⋮﹂
とろんとした眼で、未羽は言った。普段はごくおしとやかな彼女
だが、雰囲気に酔ってしまっているようだ。
未羽の右手が、腹から下腹部、そしてあそこへと、滑るように移
動する。
そうして人差し指と中指をスリットにあてがうと、そこを、くぱ
ぁ、と広げた。
ピンク色の襞や膣口があらわになる。クリトリスが包皮を押しの
けるようにぷっくりと膨らんでいた。
俺は眼を皿のように開いて、奇跡の光景を見つめていた。
﹁み⋮⋮未羽−! 未羽−!﹂
﹁お兄ちゃん! ⋮⋮イって! 未羽でイってー!﹂
全身を突き抜けるように、波が通り過ぎていった。
俺は昼に一回抜いたとは思えないほど大量に射精し、未羽の腹か
ら胸、首筋にまで精液をばらまいた。
35
賢者タイムが過ぎ去り我に返ると、未羽が呆然とした顔で、頬に
ついた精液を指でぬぐっていた。どわぁ、顔にまで飛ばしたのか、
俺!?
﹁わあああぁ! み、未羽! ごめん!﹂
﹁う、ううん、へ、平気だよ。いっぱい出てきたから、びっくりし
ちゃっただけ⋮⋮こ、これ、せーえきだよね? すごい⋮⋮こんな
に勢いよく出るんだ﹂
未羽は胸についた大量の精液を、指ですくい取った。人差し指と
中指をこすりあわせてから広げると、指の間で糸を引いた。
﹁ぬるぬるしてる⋮⋮変な臭い﹂
未羽は、ちろっと小さな舌を出して、ほんの少しだけ精液を舐め
取った。
﹁わあ! 舐めるな未羽! 妊娠する!﹂
﹁舐めてもしないよ? しょっぱいね﹂
意外と保健体育の知識のある未羽だったが、俺はいたたまれなく
なって、テーブルからティッシュを取り、未羽の身体を拭った。
﹁⋮⋮ごめんな⋮⋮未羽を汚しちゃって⋮⋮﹂
﹁いいよぉ。お兄ちゃん気にしすぎ﹂
ティッシュを通して、間接的に触れる未羽の身体は、ぷにぷにし
て柔らかかった。謝りながら結局楽しんでる俺って⋮⋮。
未羽も自分で拭けばいいのだが、喉をなでられた猫みたいに気持
ちよさそうな顔をして、身を任せている。
腹も喉も顔も拭き終わって、残るは胸だけになってしまった。さ
すがにそこを拭いたら下心がばれてしまう。
﹁み、未羽、胸は⋮⋮﹂
﹁ダメだよ。お兄ちゃんがかけたんだから、全部お兄ちゃんが拭い
て﹂
食い気味にダメ出しされてしまった。
大胆なことを言う割に、未羽はぽーっと赤く頬を染めている。恥
じらえば恥じらうほど俺は興奮するんだけど。
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本人の指示だから、遠慮なく胸も拭かせてもらうことにした。
わざと少なめに、ティッシュを一枚だけ取り、胸についた精液を
拭う。わずかな圧力で乳房が、ふに、と凹んだ。
﹁や、柔らかい⋮⋮﹂
﹁あん⋮⋮きれいに拭いてよ、お兄ちゃん⋮⋮﹂
俺の手の動きに合わせ、乳房はふにふにと形を変えた。
くそぉ⋮⋮楽しすぎる⋮⋮テイクアウトしていつもポケットに入
れていたい⋮⋮。
精液はちょっとだけ乳首にもかかっていた。俺はあえて断らずに、
乳房を支えるようにして左手を当てた。
﹁あ⋮⋮﹂
直に胸を触られたことに驚き、未羽が小さく声を上げる。妹にお
ちょくられてばかりのお兄ちゃんじゃないぜ!
俺は左手で乳房を支えながら、右手のティッシュで乳首についた
精液を拭った。
ティッシュが触れるたびに、未来の身体がピクッと震える。
﹁⋮⋮あっ⋮⋮あん⋮⋮﹂
清純な未羽の口から、押さえきれず艶めかしい声が漏れる。
﹁あん⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮もう、いいよ⋮⋮﹂
﹁まだ残ってるよ。きれいに拭かないと﹂
未羽の反応を楽しみつつ、俺は丁寧に精液を拭き取った。
ミッション・コンプリート。未羽の身体はすっかりきれいになっ
た。しかし、俺のジュニアはまたギンギンになってしまっていた。
﹁お兄ちゃん、また元気になってる⋮⋮どんだけ未羽のこと好きな
の? もう一回する?﹂
﹁い、いやいやいや! これ以上したら煙が出る! ありがたいけ
ど、健康のために今日はこれまで!﹂
﹁何、煙って? じゃ、じゃあさ⋮⋮﹂
未羽は、ベッドの上に﹁の﹂の字を書いてもじもじした。事ここ
に及んでまだ恥ずかしがるのか。
37
そうして、眼を逸らしながら、こう言った。
﹁⋮⋮未羽も、オ⋮⋮オナニーするから⋮⋮お、お兄ちゃん、もう
部屋に戻って⋮⋮﹂
ぶしゅー! と、俺の頭から蒸気が噴き出た。
﹁み、未羽も⋮⋮あ、あの、俺⋮⋮﹂
未羽は、すっと手を伸ばして、人差し指を俺の口に当てた。俺は
言葉が続けられなくなる。
﹁ダーメ⋮⋮未羽のオナニーは、見せてあげない﹂
おしとやかな未羽が、初めて小悪魔の笑みを浮かべていた。
機先を制せられた俺は、すごすごと自室に戻った。そして、壁の
向こうで未羽がオナニーしていると思うとどうしても我慢ができず、
本日三回目のオナニーをしたのだった。
☆
38
︻8︼エッチな女の子は大好物
翌朝。俺はいつもより一時間も早い時間にすっきりと目覚め、階
下に降りた。
今日も未羽に座薬を入れてあげられるのかと思うと、目覚めがよ
い。いっそ治らなければいいのに。いやいや、そんなこと考えては
いけない。
風呂場をのぞいてみたが未羽はいなかった。まだ起きてないのか
なと思いつつ、顔を洗い歯を磨く。
部屋に戻ろうと階段を登りきると、部屋のドアの前に未羽がいた。
﹁おはよう、未羽﹂
声をかけると未羽はビクッとした。え? 何か、顔がおびえてる
みたいな表情なんだけど⋮⋮。
﹁お、おはよう、お兄ちゃん⋮⋮﹂
声が弱々しい。うわわ、やばい? ひょっとして?
﹁ど、どうしたんだ? 廊下に突っ立って⋮⋮﹂
未羽はうつむいてぼそぼそと何か言ったが、その声は小さすぎて
全然聞き取れなかった。
﹁み、未羽、聞こえないよ。もう少し大きく⋮⋮﹂
俺は激しく後悔していた。しまった、昨日やりすぎてしまったか
⋮⋮。
きっと未羽は俺のことを警戒しているに違いない。
昨日は未羽もテンション高かったけど、アレは俺に借りを返すた
めと、あまりにも非日常的な状況で、熱に浮かされていたに過ぎな
い。
一夜明けて冷静になると、妹相手に性的興奮を感じる兄に、身の
危険を感じたのだろう。
﹁⋮⋮お兄ちゃん、き、昨日のことなんだけど⋮⋮﹂
39
﹁は、はい⋮⋮﹂
未羽は腕を組んで、もじもじしながら上目遣いに俺を見た。⋮⋮
腕を組むのは警戒心の表れっていうよな⋮⋮。
﹁⋮⋮未羽のこと⋮⋮いやらしいって、思ってる⋮⋮?﹂
﹁⋮⋮⋮⋮は?﹂
俺は、ここ数日で何度目かの鳩豆顔をした。
﹁⋮⋮き、昨日は⋮⋮あたし、お兄ちゃんが喜んでくれるからって
⋮⋮す、すごいこといっぱいしちゃって⋮⋮
け、今朝、目が覚めてから思い出したら⋮⋮すっごい恥ずかしくな
って⋮⋮。
お、お兄ちゃんに⋮⋮いやらしい子だって思われて、引かれたら
どうしようって⋮⋮﹂
⋮⋮いじらしいなあ! こいつは!
俺は、ガシッと未羽の両肩をつかんだ。未羽がビクッと身をすく
める。
﹁未羽! いやらしいのはお兄ちゃんの方だ! お前が気にするこ
とは何もない!﹂
俺は未羽の未羽の手を取り、俺の股間に導いた。未羽は戸惑って
いたが、ジャージの上からジュニアに触れると、俺の意図を察した
ようだった。
﹁⋮⋮お兄ちゃん、また固くなってる⋮⋮﹂
﹁お兄ちゃん、昨日部屋に戻ってからまたオナニーしたんだぞ。未
羽がオナニーしてるとこ想像して﹂
﹁もう⋮⋮お兄ちゃん、どんだけあたしのこと好きなの⋮⋮でも、
よかった⋮⋮お兄ちゃんも、エッチなんだね⋮⋮﹂
﹁もちろんさ、お兄ちゃんはどスケベでど変態だ。エッチな女の子
は、大好物さ﹂
﹁うふふ、お兄ちゃん、大好き﹂
未羽は笑顔でそう言って、ジャージの上から俺のジュニアをすり
すりした。
40
☆
41
︻9︼未羽、大サービス
てなわけで、俺は未羽の部屋でいつもの仕事を終えた。
﹁お兄ちゃん、今日も、オナニーする⋮⋮?﹂
下半身裸で未羽が聞いた。正直、何度見ても飽きねえ、未羽の裸。
﹁いや、今朝はいい⋮⋮いや、やりたいんけどさ、ぶっちゃけ、や
り過ぎてちょっと先っちょが痛いんだ⋮⋮﹂
﹁そう⋮⋮おっぱい触ってもいいよって言うつもりだったんだけど、
今度にしとく?﹂
﹁触ります触ります触らせてくださいお願いします!﹂
すごい早口で俺は言った。
﹁すごい必死⋮⋮おっぱい好きだね、お兄ちゃん﹂
﹁好きです。つーか男はみんなおっぱい星人です﹂
﹁なんで敬語なの? じゃあ、上脱ぐね⋮⋮﹂
するすると未羽はTシャツを脱いだ。
未羽は髪が長いから、シャツを脱ぐとき髪が巻き上がるんだよな。
それでシャツを引き抜くと、舞い上がっていた髪が、ふぁさーっ
と降りてくる。シャンプーのCMみたいにきれいで、見とれてしま
う。
ちなみに今朝の未羽はノーブラだった。胸の前に垂れた髪の間か
ら、乳首が顔を出している。堪らなく扇情的だ。
未羽は髪をかき上げて、全部背の方へ回した。おっぱいが丸出し
になった胸を張る。
﹁はい、お兄ちゃん、触っていいよ﹂
⋮⋮何でこんなに優しいんだろうなあ、うちの妹は。
﹁じゃ、じゃあ、触らせていただきます⋮⋮﹂
や、優しく触んなきゃダメだよな⋮⋮。
42
俺はおずおずと手を伸ばした。手をお椀型にして、乳房にそっと
当てる。
﹁うおぉ、柔らかいぃぃ⋮⋮何だこのすさまじい心地よさは⋮⋮﹂
﹁あふ⋮⋮お兄ちゃん、気持ちいい?﹂
よく水風船とか言うけど、アレより全然柔らかいじゃん。
それに肌触りがまた何とも⋮⋮極上のベルベットのようだ。極上
のベルベット触ったことないけど。
﹁⋮⋮ん⋮⋮ふわ⋮⋮﹂
優しくおっぱいを揉んでいると、未羽は次第に艶っぽい声を漏ら
すようになった。
乳首にも触れる。未羽がピクンと身体を震わした。
﹁あっ⋮⋮あん⋮⋮﹂
ピンク色の乳首を指でつまんでくりくりすると、未羽の声がより
大きくなる。
頬を赤く染めてあえぎ声をあげる未羽は、死ぬほど可愛かった。
それにしても、乳房に対して乳首は小さなものだけど、おっぱい
って乳首あってのものだよなあ。
例えるならショートケーキのイチゴといったところだろうか。っ
て、イチゴに例えたら急に食べ物に見えてきた。
﹁未羽⋮⋮あの、吸ってもいい?﹂
﹁⋮⋮え? く、口で⋮⋮? や⋮⋮恥ずかしい⋮⋮﹂
﹁そこを何とか! お願い! 吸いたい!﹂
﹁あん⋮⋮もう、エッチなんだから⋮⋮いいよ、お兄ちゃん⋮⋮﹂
﹁ありがとう! じゃあ、いただきます!﹂
兄の威厳も何もあったもんじゃないが、俺は許しを得るなり、速
攻で未羽の乳首に吸い付いた。
⋮⋮おお、手で揉むのとはまた違う喜びがある。
得も言われぬ幸福感︱︱胎内回帰願望が満たされていくのを感じ
る︱︱。
﹁あっ⋮⋮やぁん⋮⋮もう、お兄ちゃんったら、赤ちゃんみたい⋮
43
⋮﹂
﹁⋮⋮未羽⋮⋮未羽のおっぱい、美味しすぎるよ⋮⋮赤ちゃんに戻
れるものなら戻りたい⋮⋮﹂
﹁じゃあ、ばぶーって言ってみて?﹂
﹁ばぶー、ばぶばぶ﹂
プライドも何もなかった。
﹁もう、お兄ちゃんなのにぃ⋮⋮あん⋮⋮ぺろぺろしないでぇ⋮⋮﹂
乳首を舐め回すと、未羽はくすぐったそうに身をよじった。
ん? 何か乳首の感触が固くなってきたような⋮⋮おお! これ
が﹁乳首が立つ﹂というやつか! 何か感動する!
﹁はぁ⋮⋮あっ、あん⋮⋮お兄ちゃん、くすぐったいよぉ⋮⋮﹂
未羽の子猫のような声があまりに可愛くて、俺は強弱をつけたり
唇で挟んだりとバリエーションを増やし、未羽の快感を引きずり出
そうと工夫を凝らした。
﹁あんっ⋮⋮はぁっ⋮⋮あぁん! も、もうらめぇ、お兄ちゃん⋮
⋮﹂
﹁ちょ、待って⋮⋮こっちがまだだから﹂
右のおっぱいばかり攻め続けていた俺は、左のおっぱいに移動し
た。
﹁はぁん⋮⋮やだぁ⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮も、もうおしまい⋮⋮
あんっ⋮⋮﹂
﹁も、もうちょっとだけ⋮⋮﹂
俺はしつこくおっぱいを吸い続け、左右同じくらい堪能したとこ
ろでやっと未羽を解放した。
今朝未羽に部屋の前で会ったとき、﹁昨日はやり過ぎた﹂と後悔
した気がするが、まったく反省が生かされていなかった。
未羽は真っ赤な顔をして、はぁはぁと荒い息をしながらビーズク
ッションに埋もれている。
股間を見ると、あそこがぐっしょりしていた。俺のジュニアがさ
らに硬度を増す。⋮⋮オナニーせずにいられるのか? 俺?
44
﹁⋮⋮も、もう、お兄ちゃんったらぁ⋮⋮エッチぃ⋮⋮﹂
頬を膨らませ、未羽が可愛らしく怒る。
﹁ご、ごめん、調子に乗りました﹂
﹁も、もう、部屋出てってよね⋮⋮あたし⋮⋮オナニーするから⋮
⋮﹂
オナニー宣言キタ︱︱︱︱︱︱!!!!!
毎度のことながら、未羽の口からこの単語が飛び出すと興奮する。
﹁あ、あの、未羽⋮⋮﹂
﹁もー、ダメぇ! 未羽のオナニーは、見せてあげない!﹂
また先回りされてしまった。未羽が舌を出して、べーっ!ってや
る。可愛い。
﹁イクとこまでじゃなくていいから、ちょっとだけ⋮⋮ダメ?﹂
﹁ダメダメダメ! 絶対ダメ! 乙女の秘め事を覗こうなんて、絶
対ダメ!﹂
未羽は腕をクロスさせて大きなバッテンを作った。はあ、こりゃ
無理だな。
﹁分かったよ、未羽。ゴメンな⋮⋮でも、ありがとう、未羽のおっ
ぱい、最高だった﹂
﹁うん、お兄ちゃん⋮⋮あたしこそゴメンね⋮⋮でも恥ずかしすぎ
るから、オナニーは、無理だよ⋮⋮﹂
俺は立ち上がり、すごすごとドアに向かって歩いた。
ガチャリとドアノブを開く。その時だった。
幻聴だろうか︱︱俺に耳に、ある言葉が聞こえた︱︱。
︱︱あきらめたら、そこで試合終了ですよ︱︱
安○先生︱︱︱︱!!!!!
そうだ、あきらめてはいけない。あきらめたら、そこで終わりだ。
45
ジ・エンドだ。
まだ希望はある。そう、俺に足りなかったのは、熱意だ︱︱。
俺は部屋から出ずにドアを閉じた。鍵を掛けるのも忘れない。
振り向くと未羽は変わらず全裸でベッドに腰掛けている。わずか
の間に特攻隊員のように真剣な表情になった俺を、戸惑った顔で見
ていた。
俺はベッドに歩み寄り、未羽の前に膝をついて座った。未羽の手
を取り、両手でぎゅっと握る。
﹁お、お兄ちゃん?﹂
﹁俺、未羽のオナニーが見たいです﹂
率直に俺は言った。
﹁ダ、ダメだってば! つか、なんで敬語?﹂
﹁お兄ちゃんは、北極のオーロラよりも、ナイアガラの滝よりも、
ニューカレドニアの珊瑚礁よりも、未羽のオナニーが見たい。お兄
ちゃんの未羽のオナニー見たさは、東京ドーム五個分だ﹂
未羽が驚きの表情を浮かべる。俺はありったけの眼力を込めて、
未羽を見つめた。
未羽は困った顔をした。できることなら願いを叶えてあげたい、
でも⋮⋮そんな迷いの表情だった。
﹁そんなに見たいんだ⋮⋮お兄ちゃんの気持ち、分かった⋮⋮で、
でも⋮⋮オナニーは⋮⋮恥ずかしすぎる、よ⋮⋮﹂
﹁お兄ちゃんは、未羽の恥ずかしいところが見たいんだ﹂
きっぱりと俺は言った。未羽が、ぐっと息を呑む。
未羽は、じーっと俺の眼を見つめた。俺も瞬きもせずその眼を見
つめ返す。
不意に、未羽の表情が緩んだ。ふう、と小さなため息をつく。
未羽は視線を逸らし、少しだけうつむいた。小さく口をもごもご
させている。
未羽の左手が、すっと持ち上がる。
その手を口元へ持っていき、未羽は舌を出して、指先にねっとり
46
と唾液をつけた。
さっき口をもごもごさせていたのは、唾をためていたのだと分か
った。
赤い頬をした未羽が、恥ずかしそうな顔で、ちらりと俺を見た。
それから、濡れて光る指先で、乳首をつまんだ。
ぬめる唾液を乳首にまとわせると、くりくりと弄りだす。艶めか
しい吐息が漏れた。
﹁⋮⋮あっ⋮⋮﹂
︱︱未羽! 未羽のオナニーは、おっぱいからなのか!
俺は感動していた。
⋮⋮未羽、見せるからには、普段通りのオナニーを、全部見せて
くれる気なんだね⋮⋮最高だよ、最高の妹だよ、お前は⋮⋮。
未羽は右手の指も唾液で湿らせ、両方の乳首を弄りだした。目を
半分閉じて、恍惚とした表情を浮かべている。
﹁⋮⋮あん⋮⋮あ、ふぅ⋮⋮﹂
﹁き、気持ちいいのかい、未羽⋮⋮﹂
未羽が真っ赤な顔をして、横目で俺を見た。
﹁み、未羽ね⋮⋮﹂
乳首を弄る指はそのままに、未羽は話し始めた。
﹁未羽、小学六年生のころからオナニーしてるの⋮⋮
中学生になるとおっぱいが膨らんできたから、乳首も触るように
なって⋮⋮
最初はそんなに気持ちよくなかったんだ⋮⋮
でも、最近になって、すごく感じるようになって⋮⋮あっ⋮⋮あ
ふ⋮⋮﹂
未羽ー! どんだけサービスしてくれるんだお前は−!
﹁⋮⋮はぅ⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮未羽の部屋から、オナニーの声、聞
こえたことある?⋮⋮あっ⋮⋮﹂
とろんとした眼で未羽が聞く。
﹁い、いや、ないよ﹂
47
部屋では音楽聴いてることが多いし、そのせいもあるだろう。
﹁そう⋮⋮よかった⋮⋮あっ⋮⋮声、押さえるの、結構大変⋮⋮な
んだよ⋮⋮﹂
ジュニアが破裂しそうだった。未羽、エロい。堪んねえ⋮⋮。
未羽が後ろに身体を倒す。そのままビーズクッションにぽふっと
埋まった。
﹁⋮⋮お、おっぱい触ってると⋮⋮濡れてくるの⋮⋮そしたら⋮⋮﹂
身体の線に沿って、右手がすうっと下がっていく。
未羽が膝を少し開く、右手の指先が、つやつやと濡れて光るスリ
ットに添えられる。
﹁あっ⋮⋮うん⋮⋮あはっ⋮⋮﹂
しなやかな指先が、スリットの中に浅く潜り込んだ。
慣れた仕草で小刻みに指先を動かし、快感を紡ぎ出してゆく。
﹁あっ、あぁ⋮⋮いい⋮⋮あぅ⋮⋮﹂
う、美しい⋮⋮快感に身をゆだねる未羽⋮⋮なんて美しいんだ⋮
⋮。
﹁きれいだよ⋮⋮未羽⋮⋮ふ、普段もこんなに声出るのかい?﹂
﹁まさか⋮⋮み、見られてると⋮⋮いつもより、感じちゃう⋮⋮ふ
う⋮⋮﹂
ときおり水音を立てながら、未羽はクリトリスを弄り続ける。
見られるの恥ずかしいとか言っておきながら、だんだんと膝が大
きく開いてきて、あそこが丸見えになっている。
俺は脚の間に身を乗り出し、かぶりつきのポジションで未羽のオ
ナニーを眺めていた。
普段のおしとやかさからは想像もできないほど、未羽はみだらに
声を上げ、身をよじっている。それはたまらなく淫靡な様だった。
やっぱり、男と女の快感の度合いって、違うものなんだな⋮⋮。
俺、どんなに気持ちよくオナニーできたとしても、こんなに周り
見えなくなることないもんなあ⋮⋮。
眼を閉じ、切ない声を上げながら快感に浸っていた未羽が、ふと
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薄目を開けて、俺の表情を探るように見た。
すぐに眼を閉じ、オナニーを続ける。視線の意味が分からなくて、
俺は当惑した。
﹁⋮⋮ん⋮⋮はぁっ⋮⋮﹂
﹁あっ、未羽⋮⋮!﹂
思わず声を上げてしまった。
クリトリスを撫でていた未羽の中指が、第二関節のあたりまでぬ
るりとスリットの中へ沈み込んだのだ。
未羽のあえぎ声が、+2くらいキーが上がった。
﹁未羽⋮⋮お前、オナニー指入れるんだね⋮⋮﹂
意外だった。おしとやかな未羽が、こんなにオナテクを磨いてい
るとは思わなかった。
﹁んっ⋮⋮もう⋮⋮そんなこと言わないでぇ⋮⋮だ、だから見せた
くなかったんだよぉ⋮⋮あん⋮⋮﹂
文句を言いながらも指は止まらない。激しく動かすわけではない
が、ゆっくりしたリズムで出し入れを繰り返している。
﹁お⋮⋮奥までは、入れないよ⋮⋮あふ⋮⋮ちょっと入ったとこに、
気持ちいいところがあるの⋮⋮﹂
聞いてるだけで射精しそうになるようなことを未羽はのたまった。
恥ずかしがりながら解説するって、どういう心境なんだろう?
未羽が右手の指をスリットから引き抜いた。入れ違いに左手の中
指が潜り込む。
⋮⋮何で指をスイッチしたんだ?
俺が頭に?を浮かべていると、未羽は愛液に濡れすぼった指をゆ
っくりと自分の口元へ持って行った。
雫が垂れそうなほど濡れた指を恍惚とした表情で眺め、それから、
舌を出して愛液を舐めた。
﹁自分の舐めるの!? お前!?﹂
未羽はアイスキャンデーのように指をしゃぶっている。
﹁⋮⋮これ舐めると、興奮するの⋮⋮﹂
49
⋮⋮あかん、今朝はオナニー控えるって言ったけど、無理だわ。
でも、未羽がイってからにしよう。未羽のオナニー、集中して見
ていよう。
ちょっと舐めるだけかと思ったら、未羽は指がきれいになるまで
愛液を舐め取った。
それから指をあそこへ戻し、今度は右手をスリットに潜り込ませ、
左手でクリトリスを撫ではじめた。
二ヶ所同時攻撃だ⋮⋮どんだけバリエーションあるんだよ、お前
⋮⋮。
﹁⋮⋮美味しいの? それ⋮⋮?﹂
﹁⋮⋮しょっぱいだけ⋮⋮あん⋮⋮でも、舐めるとドキドキするの
⋮⋮﹂
﹁まあ、未羽の愛液だからな。特別な旨味成分とか入ってるのかも
しれない。はは﹂
﹁か、香奈ちゃんのと味変わんないよ⋮⋮﹂
﹁舐めたことあるのかよ!? どんな関係なんだお前たち!?﹂
﹁⋮⋮どんなふうにオナニーしてるかって話になって、香奈ちゃん
自分のは美味しくないっていうから、舐めさせてもらっただけだよ
ぉ⋮⋮
ふぅ⋮⋮も、もうイキそうだから⋮⋮お兄ちゃん、黙ってて⋮⋮
あっ、ああ⋮⋮﹂
指の動きがさっきよりも速くなった。息づかいが荒い。全身がほ
んのりと桜色にほてっている。
﹁あっ、ああ⋮⋮いい⋮⋮うん、もう⋮⋮﹂
声がさらに切なさを帯びる。ううう、可愛いよぉ、未羽。
ふと、指を挿入している右手の動きが、一瞬止まった。
スリットに沈み込んでいた中指をいったん引き抜くと、とろとろ
に濡れた中指に人差し指を添え、今度は二本いっぺんに挿入した。
﹁二本入るのかよ!? お前!?﹂
﹁い、いつもは入れない⋮⋮今日は、とっても柔らかくなってるか
50
ら⋮⋮お兄ちゃん、話しかけないで⋮⋮イク⋮⋮あ、ああっ⋮⋮﹂
指の動きがラストスパートに入り、ぴちゃぴちゃと水音を立てる。
苦しそうなほどに荒い息。あえぎ声がさらに大きくなる。
﹁あっ⋮⋮! あ、はあっ! ⋮⋮あっ、ああああああ!﹂
絞り出すように声を上げて、未羽は絶頂に達した。弓なりに背を
反らせ、ビクビクと身体を震わせる。
顔も身体も幼さが残っているのに、イクときはすごく淫らで、そ
のギャップが堪らなくエロかった。
﹁あ⋮⋮あぁ⋮⋮はぁん⋮⋮﹂
絶頂の波が過ぎ去り、未羽の身体が、くたっと弛緩した。
両脇に腕をだらんと垂らし、はぁ、はぁ、と荒く息をしている。
胸や首筋に、うっすらと汗がにじんでいた。
⋮⋮こ、こいつ、壁一枚隔てた部屋で、こんな激しいオナニーし
てたの?
俺のジュニアは暴発しそうなほどいきり立っていた。
⋮⋮ダメだ⋮⋮とてもオナニー我慢できない。つーか、抜いとか
ないと悶々として何も手につかねえよ⋮⋮。
桃源郷に行っていた意識がやっと戻ってきたらしく、未羽が薄く
眼を開けた。
﹁あ⋮⋮あふ⋮⋮よ、よかったぁ⋮⋮すごい感じちゃった⋮⋮あ、
お兄ちゃん⋮⋮どうだった? 未羽のオナニー⋮⋮?﹂
眼を覚ますなりどエロ発言だよ、俺の妹。
﹁⋮⋮すごかったです⋮⋮人生で一番エロいものを見せていただき
ました。俺もう、生涯エロ本もAVもなくても、おかずには困らね
えよ⋮⋮﹂
﹁そう⋮⋮よかった。未羽も恥ずかしいの我慢した甲斐があるよ⋮
⋮﹂
﹁未羽、お兄ちゃんオナニーするから、もうちょっと裸でいてくれ
る?﹂
﹁⋮⋮先っちょ痛いんじゃなかったの?﹂
51
﹁お前のあの姿を見てオナニー我慢できる男がいるとしたら、そい
つはEDかゲイか宦官だ﹂
﹁そう⋮⋮じゃあ、いいものあげるよ。お兄ちゃん、おちんちん出
して﹂
俺はジャージとトランクスを脱いだ。トランクスには射精したん
じゃないかと思うくらい大量の我慢汁がついていた。
立ち上がり、未羽の顔の前にジュニアを晒す。
﹁うふ⋮⋮大っきくなってるね﹂
未羽はにっこりと微笑むと、右手を自分の股間に滑らせた。人差
し指、中指、薬指と、順にスリットをなぞる。
指にたっぷりと愛液を塗りつけ、その手を俺に向かって伸ばす。
濡れた指が亀頭に触れた。予想外に気持ちよくて、声が出てしま
った。
未羽は俺のジュニアを撫でまわし、愛液をぬりつけた。それだけ
で射精しそうだった。
﹁はい、未羽特製の潤滑油。よく滑るよ﹂
その言葉通り、未羽の潤滑油はとても滑りがよく、俺は痛い思い
をせずに事を済ますことができたのだった。
☆
52
︻10︼香奈ちゃんのポテンシャルとフラグメール
その日の午前中の授業は、未羽の裸ばかり頭に浮かんで集中でき
なかった。成績落ちないかな⋮⋮俺。
昼休み、週番の俺は例のごとく職員室へ向かった。
途中でまた香奈ちゃんと出会った。今日は一人だった。
﹁こんにちは、お兄さん﹂
﹁こんちは。未羽は一緒じゃないの?﹂
香奈ちゃんはころころと笑った。
﹁仲よしだけど、年中一緒じゃないですよ。ノールはさっき入れて
あげましたよ﹂
﹁ノール?﹂
﹁あれ? お兄さんとはその呼び方使ってないんですか? ボラギ
ノールのノールです。学校ではみんなにばれないように、そう呼ぼ
うって﹂
﹁ああ、なるほど。家じゃばれる心配ないからな。香奈ちゃん、い
つも妹のためにありがとう﹂
﹁お兄さん、そのことなんですけど⋮⋮﹂
香奈ちゃんは周りを見渡した。人通りを気にしてのことだと思う
が、幸い俺たち以外ひとけはない。
﹁あの、お兄さんがノール入れてあげるときも、未羽濡れます?﹂
げふっ、と俺は吹き出した。
﹁なっ! 何!? ぬ、濡れる!?﹂
香奈ちゃんはニュートラルな顔をしている。
﹁今日入れてあげたとき、あそこがちょっとヌルってたんですよ。
わたしが﹃未羽、濡れてるの?﹄って聞いたら、﹃ぬ、濡れてな
いよっ!﹄って否定したんですけど、﹃じゃあ、これ何?﹄ってあ
53
そこを指でなぞったら、﹃あんっ!﹄って大っきな声出して﹂
﹁何してんの香奈ちゃん!? 俺の妹に!﹂
天気の話のように香奈ちゃんはしゃべった。さ、さすが俺の妹の
親友だけあって、香奈ちゃんもすごいポテンシャルを秘めているよ
うだ⋮⋮。
﹁幸いトイレに誰もいなかったから何事もなかったですけど、あの
声を聞かれて二人で個室から出てきたらどうなっていたことか。
まあ、あんなポーズであんなことされるんですから、同性とはい
え性的な興奮を覚えても無理はないでしょうけど﹂
﹁香奈ちゃんが触ったりしなければそれこそ何事もなかったんじゃ
ないかな!?﹂
﹁それはともかく、わたしが言いたかったのは、お兄さんがノール
入れるときも濡れてる可能性がありますから、何も気づかないふり
してあげてくださいね、ってことなんです。
わたしと未羽なら冗談ですみますけど、お兄さんに﹃未羽、あそ
こが濡れてるぞ﹄なんて言われたら、羞恥で死ぬかもしれません。
お兄さんもよくご存じでしょうけど、あの子恥ずかしがり屋ですか
ら﹂
﹁言わねえよ! つーかその恥ずかしがり屋に何してんだよ!﹂
﹁あ、もう予鈴が鳴る時間ですよ。それではお兄さん、未羽をよろ
しくお願いします﹂
言いたいことだけ言って、香奈ちゃんはサッときびすを返し、去
って行った。
何なんだ⋮⋮仲良しとかいうレベルか、あの二人⋮⋮。
香奈ちゃんってうちに遊びに来ると、泊まる予定じゃなかったの
にお泊まりしちゃったりするんだよな。
そんなときは未羽が服を貸してあげ︵下着を含む︶、一緒に風呂
に入り、シングルベッドに二人で寝ている。未羽が香奈ちゃん家に
泊まりに行く逆パターンもあり。
未羽は香奈ちゃんの愛液の味知ってるらしいしいが、いったいど
54
ういうシチュエーションで味わったのだろう。
二人の仲は、俺が思っていた以上に百合ん百合んなのかもしれな
い⋮⋮。
☆
午後の授業を受けている間に、母からメールが届いた。
﹃埼玉のおじいちゃんが亡くなりました。
お父さんと通夜に行って来ます。
今夜は向こうに泊まって、明日の夕方帰ります。
未羽、冷蔵庫にアジが入ってるからフライにしなさい﹄
埼玉のじいちゃんってのは祖父ではなく、よく分かんねえ遠い親
戚だ。
メールは俺と未羽両方に送られていた。
つーか、すごいフラグ臭のするメールだ。このタイミングで未羽
と二人きりって⋮⋮。
今夜あたり一線を越えてしまいそうな気がする。頼りにならねえ
からなあ、俺の理性⋮⋮。
☆
55
︻11︼魅惑のスイートワルツ
部活を終え、日が沈みかけたころに俺は帰宅した。
玄関を開けるといい匂いがした。台所へ行くと、未羽がエプロン
を着て晩飯を作っている。
甲斐甲斐しくて可愛いなあ。後ろから抱きつきたくなるよ。
﹁ただいま﹂
﹁あ⋮⋮お帰り、お兄ちゃん⋮⋮﹂
おたまを手に振り向いた未羽だが、何だか朝と同じに表情が暗い。
﹁ご、ご飯作ってるから、先にお風呂入って⋮⋮﹂
﹁あ、ああ⋮⋮﹂
何だろ? 元気がないのは確かなのだが、いきなり詮索するのも
無遠慮なので、とりあえず風呂に入ることにした。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮!﹂
風呂に向かって歩き出した俺を、すぐに未羽が呼び止めた。
振り向くと、未羽は眉を八の字にして思い詰めた顔をしていた。
﹁あ、あたしね⋮⋮きょ、今日からは、じ、自分でお薬、入れよう
かなって⋮⋮﹂
うーむ、これは、朝と同じパターンか。
﹁何でだよ? 朝のこと気にしてるのか?﹂
図星だったらしく、未羽はぐっと息を呑んだ。
﹁あ、あたし⋮⋮朝は、な、何か勢いですごいことしちゃって⋮⋮
学校で冷静になったら恥ずかしくなって⋮⋮お兄ちゃんにいやらし
い子だって思われたらどうしようって⋮⋮﹂
﹁朝も言っただろ、お兄ちゃん、エッチな未羽も大好きだよ﹂
﹁で、でも⋮⋮﹂
﹁はいこれ、お土産﹂
56
俺は白い小箱を未羽に差し出した。
きょとんとしていた未羽だが、箱に書かれた﹁スイートワルツ洋
菓子店﹂の店名に気づくと、眼がキラーンと輝いた。
﹁ケーキ!?﹂
﹁うん、開けてごらん﹂
テーブルに箱を置くと、未羽は猫に鰹節を放ったように飛びつい
た。急いで蓋を開ける。
ちなみにスイートワルツ洋菓子店はちょっと高級なケーキ屋で、
ショートケーキが五百円近くする。
﹁イチゴショートとモンブランとプリン! 美味しそう!﹂
﹁お兄ちゃんケーキとかよく分かんないから、定番のにしたよ﹂
﹁いいよ! 正解だよ! スイートワルツのイチゴショートとモン
ブランとプリンだよ! 黄金比の三角形だよ! デネブとアルタイ
ルとベガだよ!﹂
すごいテンションの上がりようだった。まあ、スイートワルツの
ケーキって滅多に食えないからな。
﹁わーい、今日のデザートだね。あ、お兄ちゃんどれ食べたい?﹂
﹁未羽が好きなの選んでいいよ。全部食べてもいいし﹂
﹁こんなに食べたら太っちゃう⋮⋮でも全部食べてみたい。お兄ち
ゃん、半分こしよ。んーと、イチゴショートとモンブランは今日食
べて、プリンは明日の朝食べようね﹂
未羽はニコニコ顔でケーキの箱を冷蔵庫にしまうと、俺の目の前
に歩み寄った。
顔が近すぎてドキッとする。俺はちょっとのけぞった。
﹁お兄ちゃん、ありがと! 今日もお薬入れてね、大好き!﹂
未羽が俺の頬にチュッとキスをした。出し抜けだったので、膝の
力ががくっと抜けた。
﹁わっ、お兄ちゃん、大丈夫?﹂
﹁だ、大丈夫。お兄ちゃんは、決して膝など地につかぬ⋮⋮﹂
﹁何それ? お兄ちゃん、早くお風呂入って。今日はアジフライだ
57
よ﹂
現金な奴⋮⋮。まあ、こんなこともあろうかと思って買ってきた
ケーキだけど、こうもあっさりご機嫌が取れるとは思わなかった。
だいたい、未羽の悩みとケーキは何のつながりもないじゃん? 何で問題が解決するんだ?
﹁女は子宮で考える﹂って、こういうのを言うんだろうか⋮⋮。
☆
58
︻12︼夕食中の兄妹の会話
夕飯の食卓。俺はテーブルを挟んで未羽と向かい合った。
テーブルにはアジフライときんぴらゴボウ、カブとキュウリの浅
漬けにシジミの味噌汁が並んでいる。
どれも味付けが繊細で、栄養のバランスもよい。食べると血液が
サラサラになっていくような気がする。
﹁美味しいよ、未羽﹂
﹁えへ、いっぱい食べて、お兄ちゃん﹂
⋮⋮結婚してえ。血がつながっていなければいいのに。
﹁昼休みに香奈ちゃんに会ったよ﹂
﹁えっ⋮⋮な、何か言ってた?﹂
﹃濡れてるの?﹄事件を思い出したのか、未羽がちょっと焦る。
﹁いや、挨拶したくらいで⋮⋮未羽さ、香奈ちゃんの⋮⋮その、ア
レを舐めたことあるって言ってたじゃん、それ、どういう状況でな
の?﹂
カブの浅漬けを箸に持ったまま未羽が静止した。頬がちょっと赤
くなる。
﹁聞くの⋮⋮? 言わなきゃよかった⋮⋮﹂
へー。今朝、オナニーしてるときはやらしいことペラペラしゃべ
ってたのに。あれは高揚してたからなのね。
﹁言いたくなきゃ言わないでもいいけど、ぶっちゃけすげー聞きた
い﹂
未羽はカブを口に放り込んだ。コリコリと噛み砕き、飲み下す。
﹁⋮⋮香奈ちゃんがお泊まりに来たとき、エッチな話題で盛り上が
ったんだよ、ベッドの中で。修学旅行の夜状態で、もう、秘密なん
か一切なし﹂
お、話す気になりやがった。
59
﹁オナニーの話になって、あたしが⋮⋮あ、愛液舐めると、興奮す
るって言ったら、香奈ちゃんが﹃わたし舐めたことあるけど不味か
った。未羽のは美味しいんだろうね﹄って言うの。
あたしが﹃味にそんな差があるはずないじゃん﹄って言うと、香
奈ちゃん﹃違う﹄って言い張るから、じゃあ試してみようって⋮⋮﹂
しゃべりながらどんどん顔が赤くなる未羽。
﹁その、試してみようって言ったのは未羽なのか?﹂
﹁⋮⋮あたしです﹂
﹁続けて﹂
﹁⋮⋮お、お布団の中で、一緒にオナニーして⋮⋮あたしの指につ
いた愛液を香奈ちゃんが舐めて、香奈ちゃんの指についたのをあた
しが舐めたの。
結果は、二人とも味は変わらないってことで一致して、結局好み
の違いだってことが分かったの。
それで目的は達せられたんだけど、途中で止めると落ち着かない
し、最後までやろうかってなって、二人ともイクまでオナニーした
んだけど⋮⋮香奈ちゃんのイクときの顔、すっごく可愛かった﹂
﹁最後のは言わなくていいだろ。俺今度香奈ちゃんに会ったときど
んな顔したらいいのか分かんねえよ﹂
恥ずかしがってるくせにサービス過剰な妹だった。
﹁お、お兄ちゃんが聞くから悪いんだよ! エッチ!﹂
真っ赤な顔をして、未羽はアジフライをガブッと囓った。
﹁エッチと言われればそのとおりで、ぶっちゃけお兄ちゃん今ちん
こビンビンだけど。まあ、それは置いといて、お兄ちゃんはお前と
香奈ちゃんの関係がすごく気になるよ。⋮⋮お前たち、レズなの?﹂
﹁レズじゃないよ。スルーせずに突っ込んでおくけど、お兄ちゃん
妹と妹の友達に対して欲情することを隠さないね?﹂
﹁いまさら。そうか、レズではないのか﹂
﹁百合かって聞かれても微妙だね﹂
﹁違いがよく分からねえが﹂
60
シジミの味噌汁を、ずずっとすする未羽。
﹁あたし、香奈ちゃん大好きだよ。香奈ちゃんとスキンシップする
のも大好き。でも恋愛対象は男の子だなあ。香奈ちゃんもそうだし﹂
﹁⋮⋮今の発言に対して、二つ、質問があるんだけど﹂
﹁どうぞ﹂
﹁⋮⋮未羽はいま好きな男いるんですか?﹂
﹁いるよ﹂
﹁⋮⋮どんなやつだ﹂
﹁お兄ちゃん﹂
﹁⋮⋮世渡りがうまくなったな﹂
くそう、顔が緩むのが止められねえ。
﹁中学の時いたけどね、高校で別になっちゃった。今いないよ﹂
﹁そうか⋮⋮﹂
思わず深いため息をついてしまった。きんぴらを口に運ぶ。旨え。
﹁二つ目。香奈ちゃんとのスキンシップってのは、どういう⋮⋮お
前たち、愛液の舐めあい以上のことしてるの?﹂
﹁好きだねえ、お兄ちゃん。ひょっとして百合男子? そんなディ
ープなことしょっちゅうしてないよ。腕組んだり手をつないだり、
ハグしたり、だよ﹂
﹁⋮⋮お前たち一緒にお風呂入るよね﹂
﹁まあ、背中流しっこして、手が滑ったって言っておっぱい揉むの
は、デフォだね﹂
﹁﹃おっぱい触る﹄ではなく、﹃揉む﹄って言ったな﹂
﹁しまった⋮⋮で、でもお兄ちゃん、香奈ちゃんね、巨乳なんだよ。
せっかくの巨乳、揉まないともったいないよ﹂
﹁うむ、巨乳なのは気づいていた。確かに生で目の前にあれば、揉
まずにはいられまい﹂
﹁香奈ちゃんおっぱい持ち上げると乳首が口に届くから、オナニー
するとき自分で舐めれるんだって。うらやましい﹂
﹁友達の極秘情報をぺらぺら喋るな! 香奈ちゃんの顔見れなくな
61
るだろ! ⋮⋮おまえら、めちゃめちゃディープじゃん⋮⋮おっぱ
い触ってるくらいなら⋮⋮キスとかもしてるの⋮⋮?﹂
﹁する。チュッて、フレンチキスだよ﹂
﹁フレンチキスって軽いキスだと思ってる人が多いけど、べろちゅ
ーのことらしいぞ﹂
﹁え、そうなの!? へえ、じゃあ、合ってたんだ⋮⋮﹂
﹁べろちゅーしてるの!? お前たち!?﹂
﹁しまった⋮⋮と、ときどきだよ。お泊まりするときだけで、外で
はしてない﹂
﹁⋮⋮あのさ、未羽、隠そうとしないで、正直に今までしたなかで
一番過激なことを言ってみ⋮⋮﹂
未羽はキャッチボールをしていて窓ガラスを割った少年のような
顔をした。
﹁秘密にするし怒んないから、言ってみ? な?﹂
たぶん、こいつ本当は喋りたいんだよ。秘め事って胸に溜めてる
と苦しくなるからな。
未羽はしばらく口をもごもごさせていたが、俺がじーっと黙って
白状するのを持っていると、彼女はアヒルみたいな口をして話し始
めた。
﹁⋮⋮あ、愛液の舐めっこしたときとは、別の日に⋮⋮﹂
﹃舐めっこ﹄ってすごい言葉だなと思ったが、スルーしておいた。
﹁⋮⋮またオナニーの話で盛り上がって⋮⋮か、香奈ちゃん指入れ
たことないって言うから⋮⋮気持ちいいところを教えてあげた⋮⋮﹂
﹁どうやってよ!?﹂
﹁⋮⋮香奈ちゃんにオナニーしてもらって、ほどよく濡れてきたと
ころで⋮⋮あ、あたしが指入れて、ここだよー、って﹂
﹁お前友達のあそこに指入れたの!?﹂
﹁そ、そのときだけだよ! それ以外はしてない! そ、それに、
お布団被ってたから、あそこ直に見てもいないし⋮⋮﹂
﹁俺もう絶対香奈ちゃんの顔見れないよ⋮⋮つか、指入れさせる香
62
奈ちゃんも香奈ちゃんだけど⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃんのイクときの顔ね、もう超絶可愛かった﹂
﹁お前がイカせたんだ!? もう百合じゃねえよお前たち! ガチ
レズだよ!﹂
﹁あのさ、ご飯も食べ終わったことだし、もうやめようよこの話。
お茶入れるから、ケーキ食べよ﹂
未羽が席を立つ。
あまり描写しなかったが、会話しながら俺たちは飯を口に運び続
けていたわけで、テーブルには空になった皿や椀が並んでいた。旨
かったよ。
流しでは未羽がティーポットに紅茶の茶葉を入れている。
何か、この数日で、未羽の印象がずいぶん変わってしまった気が
する。香奈ちゃんとそこまで深い仲だったとは思いもよらなかった
が⋮⋮。
でも、何度も言っているが、俺はエッチな未羽も大好きだ。
☆
63
︻13︼第1ラウンド
食事を終え、二人で食器を洗い︵偉いだろ︶、未羽は風呂に入っ
た。
ちなみに明日は土曜日で学校は休みだ。
家事は済んだし課題は明日でもいいし、ここからフリータイムで
ある。
⋮⋮何か起こりそうな予感。落ち着かねえなあ。
未羽が風呂から上がったので、俺は妹の部屋へ行った。
内心そわそわしていた俺だったが、そこは表に出さないようにし
て、いつもの仕事を終えた。
未羽のあそこを見て興奮するのは相変わらずだ。百回見たって飽
きることはないと思う。
﹁よし、入ったぞ﹂
﹁あ、ありがと、お兄ちゃん⋮⋮﹂
斜め座りになってあそこが見えないようにする。未羽は何度見ら
れても、頬を染めて恥じらうのを忘れない。
会話が途切れて、居心地の悪い沈黙が訪れた。
朝夜続けてオナニー見せてくれって言うのも何だし、おっぱい吸
っていい?って聞くのも、どうも照れてしまって、言い出せなかっ
た。
せっかくの週末の夜だけど、今日は何もなしかな。兄妹なんだし、
それが普通か。今日は部屋でオナニーして寝よう。
そう思って俺が立ち上がろうとすると、
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮﹂
って未羽から口を開いた。
﹁ん?﹂
64
﹁お兄ちゃん、今日も、オナニー⋮⋮するの?﹂
頬を赤くして未羽が聞く。このかわいらしい唇から﹁オナニー﹂
って言葉が飛び出すと、毎回ドキッとする。
﹁え? ん、う∼ん、まあ、す、するよ。つーか、未羽のあそこ見
たらしなくちゃいられないっていうか⋮⋮﹂
正直に俺は言った。
﹁あ、あのさ、お兄ちゃんには、感謝してるからさ⋮⋮お、お礼っ
ていうか、お兄ちゃんがよければ何だけど⋮⋮未羽が、してあげよ
っか⋮⋮?﹂
してあげよっかキタ︱︱︱︱︱︱︱!!!!!
﹁み、未羽がって、い、いいの?﹂
﹁あ、して欲しいんだ? いいよ。でも上手にできるか分かんない
よ?﹂
﹁いい、いい、上手じゃなくっても。むしろちょっとぎこちないく
らいの方が初々しくて萌えるのです﹂
﹁お兄ちゃん時々敬語になるね。じゃあ、脱いでよ﹂
俺はサッとジャージと我慢汁のついパンツを脱ぎ、ついでにTシ
ャツも脱いで全裸になった。
未羽のベッドに上がり、ビーズクッションを枕の方に置いて、そ
れに背中をあずける。
よし、これで俺のジュニアを慰める未羽がばっちり見られる。い
ろいろ重宝だな、このクッション。
﹁お兄ちゃん脱ぐの早いね。もう大っきくなってるし⋮⋮ねえ、朝
おちんちん痛いって言ってたよね? 大丈夫?﹂
﹁大丈夫。今日一日で完全復活した。あの⋮⋮未羽も、脱いでくれ
ない?﹂
未羽はピクッと肩をすくめた。
﹁あ、あたしがしてあげるんだから、脱ぐ必要、なくない⋮⋮?﹂
65
﹁いやそこは、未羽の神々しい裸を見ながら気持ちよくなりたいと
いうか、肌と肌の触れ合いを期待してるというか﹂
﹁全裸恥ずいんだよ、落ち着かないし。Tシャツ着てちゃダメ⋮⋮
? ていうか下も着るつもりだったんだけど⋮⋮﹂
そう言って手のひらで下腹部を隠す未羽。大胆なこという割には
恥ずかしがるんだよなあ。そこが堪らないんだけど。
﹁未羽にしてもらえるだけでそれは幸運すぎるくらい幸運なことけ
ど、何かこう、事務的な感じしない? 服着てると﹂
はーん、と未羽は言った。
﹁なるほど、事務的ね⋮⋮。確かに、嫌々やってる感じするね。よ
し、お兄ちゃん、未羽、文字通りひと肌脱いであげよう﹂
物わかりのいい未羽は、俺の言に納得すると迷いなくTシャツを
脱いだ。真っ白な上半身が露わになる。
﹁未羽⋮⋮お前の全裸、きれいだよ⋮⋮神が作りたもうた美の結晶
だよ、未羽は⋮⋮﹂
﹁やん、そんなじっーと見ないで。でも、そういう風に言ってもら
えると嬉しいな⋮⋮裸見せ甲斐があるよ、お兄ちゃんは﹂
﹁お兄ちゃん、お前の美しさについて二時間くらい語れるよ﹂
﹁いいよぉ、恥ずいから⋮⋮じゃあ、してあげるね⋮⋮やり方、教
えて﹂
俺の横で斜め座りになった未羽が、ジュニアのそばにそっと手を
添えた。
ううう、期待に胸が高まるぜ。
﹁じゃ、じゃあ、乾いてると痛いから、唾つけてくれる?﹂
﹁うん﹂
未羽は口をもごもごさせて、口の中に唾液をためた。
当然手に唾液を移し、撫でるようにしてつけるのだと思っていた
ら、未羽はすっと身をかがめ、俺のジュニアをれろんと舐めた。突
然の快感に俺はビクッとしてしまった。
﹁ひゃう!﹂
66
﹁わっ、びっくりした。男の人も声出るんだね﹂
未羽は俺をからかうとかそういう意図はなく、天然でやっている
ようだった。兄のちんこ舐めるのに抵抗ないのかよ、俺の妹⋮⋮。
﹁このくらいでいいのかな? お兄ちゃん、もっとつける?﹂
﹁お願いします⋮⋮﹂
棚からぼた餅と思って、俺は手でつけていいんだよ、とか言わな
かった。
未羽が舌の上に唾液をのせて、再び俺のジュニアをれろれろと舐
める。
うっわぁ⋮⋮何これ、すっげえ気持ちいい⋮⋮。
﹁はい、お兄ちゃん、ぬるぬるになったよ。次は、手でするの?﹂
﹁う、うん⋮⋮手で包むように握って、上下に⋮⋮﹂
﹁わかった。こう?﹂
未羽の白魚のような手がやんわりと俺のジュニアを握り、上下に
しごく。
性格が出ているというか、荒々しさが全然なくて、ソフトに包み
込み、優しくしごいてくれる。
﹁どう? お兄ちゃん、痛くない?﹂
﹁い、痛くない⋮⋮気持ちいい﹂
﹁ほんと? 嬉しい﹂
いい妹だなあ⋮⋮。生まれてきてよかったよ、俺。
しっかし、気持ちよすぎ⋮⋮あかん、すぐイキそう⋮⋮。
﹁お兄ちゃん、手でするのと舐めるの、どっちが気持ちいい?﹂
何その二択!? 舐める方選んでもいいの!?
﹁て⋮⋮手でするのも気持ちいいけど⋮⋮どっちかっていうと、舐
める方が⋮⋮﹂
﹁そっかあ⋮⋮確かに手でずっとこすってると、痛くなりそうだよ
ね⋮⋮じゃあ、舌でしてあげるよ﹂
﹁マ、マジ!?﹂
未羽は脚を上げて俺の右足を跨いだ。
67
そうして、うつぶせに俺の脚の上へ身体を横たえる。胸や腹の柔
らかな感触と体温が、驚くほど心地よかった。
未羽は俺のジュニアに手を添え、舌を出して裏すじをなぞるよう
に舐めた。俺は女みたいな声を出してしまった。
﹁あ、やっぱりこっちが気持ちいいんだ?﹂
いやいやいや、どっちが気持ちいいとかじゃなくて、手でしても
らうのも舐められるのも気持ちいいんだけど、お前の大胆さにびび
ってるってのもあるんだよ!
しょ、処女のくせに抵抗ないの?
未羽はアイスクリームを舐めるように、亀頭をぺろぺろと舐めた。
舐めながら上目遣いに俺の反応を伺う。
俺? ⋮⋮AV女優みたいによがりましたよ。だってしょうがな
いじゃん! 未羽が上手すぎるんだもの!
﹁お兄ちゃん、気持ちよさそう⋮⋮可愛い﹂
男に可愛いって言っちゃいけないんだよ、未羽! でも許す!
﹁お兄ちゃん⋮⋮ふぇ、ふぇら? っていうの? してみるね⋮⋮
歯が当たって痛かったら、言って⋮⋮﹂
未羽はそう言うと、俺のジュニアをすっぽりと咥えた。俺は﹁あ
ふん﹂と言ってのけぞってしまった。
歯が当たるとか、とんでもないです。俺のジュニアは柔らかな未
羽の口内に包み込まれ、これ以上ない優しさで刺激された。
⋮⋮うわぁ、イク⋮⋮これはすぐイってしまう⋮⋮。
未羽は頭をゆっくりと上下に動かし、舌と頬の粘膜でねっとりと
ジュニアを愛撫した。長い髪が俺の腹や太ももの上に広がって、頭
の動きに合わせてさわさわと肌をくすぐる。
フェラされるのなんて初めてだから上手い下手とか分からないん
だけど、絶対超絶テクニシャンのランクだと思った。何なのこの生
まれ持った性的な才能?
﹁み、未羽⋮⋮ちょ、ちょっとタイム﹂
暴発寸前だったけど、すぐイってしまうのはもったいなかったの
68
で、俺はストップをかけた。
ちゅぽんと音を立てて未羽が俺のジュニアを解放する。
﹁ん? ごめん、痛かった?﹂
﹁いや、痛くはない、めちゃくちゃ気持ちいいです。あの、シック
スナインとかしてもらえると、すごい嬉しいんだけど⋮⋮﹂
ストップついでにリクエストしてみた。
﹁シックスナイン? 何それ?﹂
﹁頭の方に脚を持ってきて、顔を跨ぐようにしてするんだけど⋮⋮
いい?﹂
未羽はきょとんとした。
﹁顔を跨ぐって⋮⋮えっ!? それ、丸見えじゃない!?﹂
とたんに真っ赤になる未羽。
﹁そうやってお互いのを舐め合うんだけど、恥ずかしいなら舐めな
いから、見るだけ﹂
﹁ダメダメダメ! 恥ずいって! 死んじゃうよ!﹂
手のひらを俺に向けてぶんぶんと振る。
﹁分かった。目、つぶってるから﹂
﹁嘘つけこのどスケベ!﹂
﹁でも、俺お前のあそこもお尻の穴も間近で見てるよ? それにも
っと恥ずかしい姿も⋮⋮いまさら恥ずかしいか?﹂
﹁言っとくけどあたし毎回恥ずかしいんだよ! それに⋮⋮四つん
這いが嫌なの!﹂
はっきりと拒絶する未羽だった。どうも四つん這いにだけはすご
く抵抗があるようだ。
﹁よし、腹を割って話そう。お兄ちゃん実は、シックスナインにす
ごく思い入れがあるんだ﹂
﹁知らないよ!﹂
﹁例えばだ未羽、お前、道を歩いていたら突然見知らぬおっさんが
来て、顔に生尻を押しつけられたどうする?﹂
﹁⋮⋮殺すよ﹂
69
﹁そうだろう。顔に陰部を押しつけるというのは、それほど失礼な
行為なんだ。その生死に関わるほど失礼な行為を、あえて望んでや
ってもらい、なおかつそれを自らの喜びにするというのがシックス
ナインだ。崇高な愛の形だとは思わないか?﹂
﹁⋮⋮⋮⋮ハッ! やばい、一瞬納得しそうになった!﹂
﹁しかもシックスナインには、上になる方の覚悟も必要なんだ。こ
んな失礼なことをしても、自分への愛情はいささかも減じることは
ない。むしろ互いの信頼を高め、より高次の愛に昇華する。そう信
じ合う、固い絆があってこそ成し遂げられる技なんだ。これぞ究極
の愛の形。人にしか為し得ない神聖なる儀式と言えるだろう﹂
熱くシックスナインへの思いを語る俺に、未羽は気圧され、歯噛
みした。
﹁うぬぬ⋮⋮な、何だかそんな気がしてきた⋮⋮﹂
﹁未羽、お前がシックスナインを嫌がるのは、お兄ちゃんの愛を心
から信じていないからなのではないか? お兄ちゃんは、お前のこ
とを世界一愛しているぞ。兄妹で結婚できる国があったら五秒で移
住できるくらいに。さあ、未羽、お兄ちゃんとシックスナインしよ
うじゃないか。二人の愛を確かめ合おう﹂
俺が救世主のように右手を差し出すと、未羽はそれをペシッとと
はたいた。ジト目で俺を睨む。
﹁そんなんで騙されないよ。愛とか何とか言って、お兄ちゃんお尻
を押しつけられて喜ぶ変態なだけじゃん﹂
ぐっ⋮⋮さすが俺の妹、説得されかかっているように見えたのは
演技だったのか。
﹁ぐぬぬ⋮⋮し、しかし未羽、お兄ちゃんがお前を世界一愛してい
るというのは本当だぞ。ちょっとだけでもシックスナインしてはく
れないのか⋮⋮?﹂
未羽は眉間にしわを寄せ、ため息をついた。
﹁⋮⋮まあ、そんなに言うならしてあげてもいいけど⋮⋮舐めたり
しないでよ?﹂
70
﹁本当か! ありがとう!﹂
俺は晴れやかに満面の笑みを浮かべた。
﹁⋮⋮すっごい嬉しそうだね⋮⋮もうちょっと妹に対する性欲を隠
そうよ⋮⋮﹂
﹁未羽、さっきの話だが、異母兄妹で結婚できる国はあっても、両
親が同じ兄妹で結婚できる国って、世界中どこにもないらしいんだ。
だから、一度遺伝子検査をしてみないか? 俺たち顔はよく似てい
るけど、ひょっとしてひょっとしたら血がつながっていないかもし
れない。十万円くらいで兄妹鑑定できるらしいぞ﹂
﹁費用調べたんだ!? 引くよ! 十万円あったら家族で温泉旅行
いけるよ!﹂
﹁十万で俺たちの結婚への道が開けるなら安いものじゃないか﹂
﹁絶対無駄になるって、あたしもお兄ちゃんも親にそっくりじゃな
い⋮⋮お父さんとお母さんが聞いたら泣くよ⋮⋮﹂
﹁まあ、それは急ぐ話ではないから、今はシックスナインをしよう。
お兄ちゃん横になるぞ﹂
俺は気をつけの姿勢でベッドに寝転がった。
﹁⋮⋮血がつながってなくてもお兄ちゃんとは結婚しないよ⋮⋮何
でそんな世間に背を向けて生きていかなきゃならないの⋮⋮﹂
ぶつぶつ言いながらも、未羽はシックスナインの準備を始めた。
頭と脚の向きを逆にして、俺の横で四つん這いになる。膝が俺の頭
のすぐそばだ。
﹁⋮⋮こ、これで、顔を跨ぐの⋮⋮? うわ⋮⋮すっごい恥ずかし
い⋮⋮﹂
﹁大丈夫、未羽の身体は、どこをどこから見てもきれいだよ﹂
﹁だからってあそこを下から眺めることはないと思うなあ⋮⋮お兄
ちゃん⋮⋮さ、触ったり、舐めたりしちゃダメだよ﹂
未羽は少し片方の膝を上げて、でもやっぱり顔を跨ぐ決心がつか
ずに、膝を下ろした。恥ずかしがる未羽も可愛いので、俺は急かさ
ず待っていた。
71
未羽はしばらくもじもじしていたが、ようやく覚悟を決めたらし
く、すうっと息を吸うと、すらりとした太ももを上げて、俺の顔を
跨いだ。
おまんこキタ︱︱︱︱︱︱︱!!!!!
未羽のあそこが、息がかかりそうなほどの距離に迫っていた。
これまで何度も見てきたのだが、この体勢で見るとまた新鮮だ。
上下を逆に見るだけでいやらしさが倍増するんだな。
脚を開いているから、くぱぁって開いて襞が見えちゃってるし、
可愛らしいお尻の穴も丸見えだ。
しかも四つん這いだから、未羽本人はどんなふうに見えてるのか
知ることができない。
無防備きわまりない体勢だ。なるほど、未羽が恥ずかしがるのも
もっともだ。
﹁やぁん⋮⋮は、恥ずかしいよぉ⋮⋮あ、あんまり見ないで⋮⋮っ
ても見るよね、お兄ちゃん⋮⋮﹂
﹁未羽⋮⋮濡れてるね﹂
﹁いやあ! もう! お兄ちゃん、早くイって!﹂
未羽は俺の腹に胸を押しつけると、ぱくっとジュニアに食いつい
た。
性器の快感と、肌と肌を密着させる心地よさに、俺はうめいた。
未羽、お前の身体、女らしくなったね⋮⋮おっぱい柔らけえ。
未羽の重みと体温が、肌を通して伝わってくる。俺はこの上ない
幸福感に包まれた。
﹁んふ⋮⋮はぁ﹂
俺のジュニアを口に含み、未羽が上下に頭を振る。
早くイカせて恥ずかしいポーズから解放されたいと思っているの
か、さっきよりも激しくしゃぶる。
未羽のテクニックは相変わらず絶妙で、舌で唇で巧みに俺のジュ
72
ニアを刺激する。
小休止したにもかかわらず、俺のジュニアはすぐに絶頂近くまで
のぼりつめた。
﹁ぷは⋮⋮お兄ちゃん、気持ちいい⋮⋮?﹂
いったん口を離し、未羽が顔を向けて聞く。
未羽も興奮しているのか、顔が赤い。唾液で口元がぬめっていて、
それが堪らなくエロかった。
﹁き、気持ちいい⋮⋮天国﹂
﹁ちょっとしょっぱいよ? もう出ちゃった?﹂
﹁そ、それは我慢汁です⋮⋮﹂
﹁お兄ちゃんのパンツによくついてるやつ? へえ、愛液みたいだ
ね﹂
パンツ見てたのかよ! って突っ込みたかったけど、未羽がまた
俺のジュニアに食いついたので、うめくだけで言葉が出なかった。
ところで、目の前にあるから見ざるを得ないんだけど、未羽、だ
んだん濡れてきてね?
自分が愛撫されているのではなくても、恥ずかしいところを見つ
められながら兄のジュニアをしゃぶってたら、興奮もするわな。
てらてらと艶っているあそこは生きている貝みたいで、見ている
と無性にしゃぶりつきたくなる。
いかんいかん、触ったり舐めたりしないという約束だった。俺も
武士だ。約束は守る。
そのときだった。未羽の蜜がとうとうあふれて、つう、とひとず
じ、太ももを伝って垂れた。
その光景があまりにエロかったので、俺の中で何かがぷつっと切
れた。俺は未羽の尻を抱いて、あそこにしゃぶりついた。
﹁きゃあっ! あっ⋮⋮だめぇ! お、お兄ちゃん、舐めちゃダメ
って⋮⋮ああん⋮⋮﹂
ごめんなさい、俺、武士じゃなくて農民でした。いや農民を卑下
するわけじゃないけど。
73
俺は舌先でクリトリスを探り出すと、れろれろと舐め回した。
未羽の愛液は高級料亭の吸い物みたいな味がした。椀で飲みてえ、
マジで。
﹁あっ⋮⋮はんっ⋮⋮やん、ダメぇ⋮⋮あっ、あふっ⋮⋮﹂
未羽が逃げてしまわないように、俺はしっかりと尻を抱いて、ハ
イピッチであそこを舐め続けた。
未羽の身体から、力がどんどん抜けていくのが分かる。フェラを
続けることもできなくなって、未羽は俺のジュニアを枕のようにし
て頭を伏せた。
﹁んっ! あん⋮⋮あっ⋮⋮いい⋮⋮あはぁ⋮⋮﹂
未羽はぺったりと肌をつけて俺の上に横たわっている。
あそこを舐めていると、未羽はときどきピクッと身体を震わせた。
一緒に切ないあえぎ声が漏れる。
未羽の反応は死ぬほど可愛かった。もっと声が聞きたくて、俺は
舌をとがらせて膣の中へ潜り込ませる。
﹁あっ⋮⋮そんな、中に⋮⋮ダメぇ⋮⋮あっ、ああん⋮⋮﹂
濡れやすい体質なのか、大量の蜜があふれてきて、俺の口の周り
はぬるぬるになった。
未羽の反応もだんだん大きくなり、クリトリスに吸い付くと背を
反らして甲高い声を上げた。
女の子にこんなことするの初めてだけど、徐々に絶頂に近づいて
いるのが、本能で分かった。
﹁あん⋮⋮はぁっ!⋮⋮あっ、ああん!﹂
うわっ、声大きい⋮⋮親留守でよかったよ。
未羽がイキそうなのは確実だ。ラストスパートをかけようとした
そのとき、
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮待って⋮⋮﹂
未羽のあそこが、すっと浮き上がって、俺の口から離れた。
未羽は力の入らない身体を苦労して持ち上げ、ころん、とベッド
に仰向けに転がった。
74
長い髪が乱れてベッドに広がる。頬が桜色に染まって、荒く息を
している。
しどけない未羽の姿はとても扇情的だったけど、突然お預けされ
た俺は途方に暮れていた。やっぱり嫌だったのだろうか⋮⋮。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮指、入れて﹂
﹁⋮⋮え?﹂
﹁み、未羽の気持ちいいところ、教えてあげるから、指入れて⋮⋮
それで、イキたいの⋮⋮﹂
脚をそっと広げる。とろっとろに濡れたあそこが、俺の指を待ち
受けるようにひくついていた。
エロいなあ! 未羽! お兄ちゃん欲望に忠実な未羽が大好きだ
よ!
﹁わ、分かった! い、入れるよ⋮⋮﹂
未羽の脚の間に膝をつき、俺は中指を未羽のあそこにあてがった。
襞の間から慎重に入口を探り出す。
﹁そ、そこ⋮⋮いいよ、入れて⋮⋮﹂
﹁う、うん﹂
俺はゆっくりと指を潜り込ませた。
﹁あ⋮⋮あふっ⋮⋮﹂
うわぁ⋮⋮何この感触⋮⋮。未羽の膣内が、思ったよりもきつく
指を締め付ける。
とろとろに濡れたそこは、粘膜特有の柔らかさで俺の指を包んだ。
﹁も、もっと奥⋮⋮﹂
﹁い、いいのか? 痛くない⋮⋮よね?﹂
﹁痛くない、早く⋮⋮﹂
俺は初めて一般道に出た教習生みたいに慎重に、指を進めた。怖
えよー⋮⋮傷つけたらどうしよう。
﹁そ、そこっ⋮⋮﹂
第二関節まで入ったところで、未羽がストップをかけた。
未羽は胸に手を当てて、快感を受けとめている。
75
﹁う、上の方⋮⋮指、曲げて⋮⋮﹂
﹁こ、こう?﹂
あそこに深く埋もれた中指を、そっと曲げる。とたんに未羽の身
体がしなり、高い声を上げた。
﹁あっ! あうぅん!﹂
⋮⋮ちょっとびっくりした。こんなに気持ちいいのかここ。オナ
ニーのときも気持ちよさそうだったしなあ⋮⋮。
俺はゆっくりと指を動かし、未羽の反応を確かめながら一番感じ
る部位を探した。
﹁こ、ここだな? よし、分かってきた﹂
中で指を動かしたり、少し出し入れしながら指先でそこをなぞる
ようにすると、未羽の身体は電流が走ったように震えた。 抑えき
れない声が部屋中に響く。
﹁あんっ!! ああっ、ああん! も⋮⋮イク⋮⋮﹂
俺の頭にふと、両手で膣とクリトリスを同時に刺激する未羽のオ
ナテクが思い出された。
よし! 未羽! お兄ちゃんがオナニーでは得られない快感でイ
カせてあげるよ!
俺は指の動きはそのままに、身をかがめてあそこに吸い付いた。
ぷっくりとふくれたクリトリスを、ハイペースで舐め回す。
﹁ひゃうっ! あああん! あっ⋮⋮すご⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮﹂
最後のビッグウェーブが近づいている。俺は無心に指と舌を動か
し続けた。未羽の声がますます高まっていく。
﹁あっ⋮⋮あぁっ⋮⋮あ、あ⋮⋮あああああああん!!﹂
未羽がアーチ状に背を反らして絶叫した。シーツを鷲づかみにし
て、びくびくと身体を震わせる。膣がキュッと収縮して、俺の指を
締め付けた。
﹁⋮⋮あ⋮⋮あ、あぁ⋮⋮﹂
最後の声を絞り出すと、未羽は空気の抜けた風船みたいに、くた
っとして、ベッドに横たわった。
76
胸が上下するのが分かるほど息が荒い。頬が上気して、汗で前髪
がおでこに貼りついている。
オナニーのときもだったけど、未羽って感じてるときもイったあ
とも可愛いなあ⋮⋮。
可愛い妹のしどけない姿を眺めながら、俺は無事にイカすことが
できた達成感を味わっていた。
﹁⋮⋮ふあ⋮⋮あ⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮﹂
桃源郷へ旅に出ていた未羽が、現世に帰ってきた。
﹁気持ちよかったかい? 未羽。大丈夫? あそこ痛くない?﹂
最後はちょっと激しくしてしまったから、あとから痛くなったり
しないか心配だった。何せ処女だし。
﹁だ、大丈夫⋮⋮すごい、よかった⋮⋮﹂
⋮⋮よかった、だって。石碑に刻みてえよ、その言葉。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮最後の、何? どうやったの?﹂
赤い頬のまま、不思議そうな顔で未羽は聞いた。
﹁ん? 指を入れながら、クリトリス舐めた﹂
﹁ああ、そうなんだ⋮⋮あれびっくりするくらい気持ちよかった⋮
⋮そっかあ、香奈ちゃんにも教えてあげたいなあ⋮⋮﹂
﹁ちょっ! 待て! 何で香奈ちゃんが出てくる!? これ以上深
みにはまるんじゃない!﹂
教えてあげるって実地でか!? すでに指入れた前科があるから
な、こいつら!
﹁あ⋮⋮ごめんね、お兄ちゃん。あたしがしてあげるって言ったの
に、あたしだけ気持ちよくなっちゃって﹂
﹁いえ、滅相もございません。大変よい経験をさせていただきまし
た﹂
﹁また敬語。ちゃんとお兄ちゃんもイカせてあげるけど、ちょっと
待ってね⋮⋮いま力入んないから﹂
☆
77
ここでしばしの休憩タイム。
未羽は汗と股間のぬるぬるを落としたいと言って、シャワーを浴
びた。
俺も未羽のあと軽くシャワーを浴びた。
風呂を出ると未羽が旨そうにペットボトルのポカリを飲んでいた。
﹁はい、お兄ちゃんも、喉渇いたでしょ﹂
ペットボトルを差し出す。⋮⋮間接キスですよ。あんなことした
あとだというのに、ドキドキしてしまう。天使だよ、俺の妹。
☆
78
︻14︼第2ラウンド↓本編終了
本日の第二ラウンド。俺たちは全裸で未羽のベッドの上に集結し
た。
﹁さ∼、今度は未羽がお兄ちゃんを気持ちよくしてあげるからね∼、
ニッシッシ﹂
﹁ニッシッシって。棒読みじゃねえか﹂
﹁お兄ちゃん、未羽のおっぱい舐めて﹂
未羽は斜め座りになって胸を張った。⋮⋮くそお、可愛いおっぱ
いだぜ!
﹁⋮⋮お前がしてくれるんじゃなかったの?﹂
﹁いーからいーから、未羽に任せなさい﹂
何か考えがあるようだ。まあいいや、未羽のおっぱいを舐めるこ
とに異存はない。
俺は身をかがめて未羽のおっぱいに口を寄せた。石けんの匂いが
した。
透明感のあるピンク色をした乳首を、はむ、と口に含む。未羽が
軽く声を出した。
﹁ふう⋮⋮﹂
舌全体を使って、大きく乳首を舐め回す。片手はもう片方の乳房
に当てて、優しく揉んだ。
﹁んっ⋮⋮はふ⋮⋮気持ちいい⋮⋮﹂
未羽が俺の頭に手を添える。わ⋮⋮何かいやらしい、これ。
俺は舌先でちろちろしたり、唇で挟んだりと、なるべくバリエー
ションを多くしておっぱいを愛撫した。
さっきイった余韻がまだ身体に残っているのか、未羽は身体を震
わせたり声を出したりして敏感に反応した。
79
﹁あん⋮⋮あっ⋮⋮うん⋮⋮﹂
楽しいなあ! 未羽のリアクション可愛いよ!
俺は左右のおっぱいを公平にぺろぺろした。不平等はよくないか
らね。
﹁⋮⋮はん⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮もう、いいよ⋮⋮﹂
未羽が肩を押して離そうとするので、俺はちゅぽんと音を立てて
おっぱいを解放した。
﹁お兄ちゃん、横になって﹂
うながされるまま横になる俺。まな板の上の鯛だ。
何をするんだろうと思っていたら、寝転がる俺に未羽が抱きつい
てきた。
胸と胸、腹と腹がぴったりとくっついている。うわぁ、気持ちい
い。未羽の身体は柔らかくて温かくて、抱いていると夢心地になる
よ。
俺がうっとりと肌を合わせる心地よさを堪能していると、未羽は
何やら腰をもぞもぞと動かした。
すると未羽があそこにジュニアの先っちょをあてがったので、俺
はびっくりした。
さっきのおっぱい攻めの効果で、未羽のあそこはとろりと濡れて
いて、そのままするっと入ってしまいそうな気がした。
﹁み、未羽! そ、それはまずいって!﹂
﹁入れないよ⋮⋮こうするだけ﹂
未羽は腰を動かして、あそこの襞を俺のジュニアに擦りつけた。
舌よりもさらに柔らかな感触に、背中がぞくっとした。
ジュニアはすぐに愛液まみれになった。未羽は亀頭にクリトリス
を擦りつけて喘いでいる。
﹁ほら、こうすると⋮⋮二人とも気持ちいいでしょ⋮⋮あん⋮⋮﹂
未羽は俺の首に腕を絡めると、頬と頬をぴとっとくっつけた。
はぁ、はぁ、と甘い吐息が耳にかかった。切ないあえぎ声が耳の
すぐそばで囁かれる。
80
五感の全てに同時エロ攻撃され、俺は何も考えられなくなった。
﹁⋮⋮あはぁ⋮⋮お兄ちゃん、どう?⋮⋮気持ちいい?⋮⋮﹂
って、耳元で囁くなって⋮⋮ぞくぞくする。
﹁すげえ気持ちいいです⋮⋮未羽、さっきイったばかりだけど、大
丈夫なの⋮⋮﹂
﹁⋮⋮大丈夫⋮⋮未羽、香奈ちゃんからエッチな本もらって、ひと
晩で三回オナニーしたことあるよ﹂
﹁どんな本よ!? それ!?﹂
﹁漫画⋮⋮んーと、﹃ANGEL﹄だったかな?﹂
﹁遊人キタ︱︱︱︱︱︱︱!!!!! なるほど、ひと晩三回もう
なずける! しかし懐かしいな!﹂
香奈ちゃん、どこで手に入れたんだよ⋮⋮。
しょうもない会話をしながらも、未羽は腰を動かし続けている。
あそこはもうあふれるほど濡れていて、俺のジュニアにぬるぬる
とまとわりついた。
柔らかな粘膜に包まれると、まるで本当に入れてるみたいで⋮⋮
⋮⋮つか、先っぽ入ってね⋮⋮?
﹁み、未羽!? は、入ってない?﹂
﹁ん⋮⋮? ちょ、ちょっとだけだから⋮⋮だいじょぶだよ⋮⋮こ
れ、気持ちいい⋮⋮あん⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
何かすげー気持ちいいなー⋮⋮って思ってたら、先っぽ入ってた
よ!
未羽はカリ首のあたりまで入れて、うにうにと回したり、入れた
り出したりを繰り返している。
挿入しているのと変わらない快感が、身体に流れ込んでくる。挿
入したことないけど!
﹁うおお⋮⋮気持ちいい⋮⋮ちょっ、未羽⋮⋮まずいって、出ちゃ
うよ⋮⋮﹂
未羽は腰の動きはそのままに、手を突いて身体を起こした。
とろんとした眼で、俺と顔を向き合わせる。すげえ近い。
81
ふぅ、ふぅって荒い息を、俺は鼻から吸い込んだ。うわぁ、生温
かい。
﹁あぁん⋮⋮きょ、今日、大丈夫な日だから⋮⋮お兄ちゃん、いい
よ⋮⋮出しても⋮⋮あふぅ⋮⋮﹂
﹁ってそんな避妊法で大丈夫なの!?﹂
﹁あっ⋮⋮前のから三週間過ぎてるからぁ⋮⋮絶対大丈夫⋮⋮未羽
もう⋮⋮イっちゃうかも⋮⋮はふぅ⋮⋮﹂
未羽はそう言って、恍惚とした表情で俺を見つめた。
感じはじめると理性が吹っ飛ぶなあ、こいつ⋮⋮。
さっきシャワーを浴びたばかりなのに、もうおでこが汗ばんでい
た。上気した頬がすごくエロい。
未羽は眼をそらさず、じーっと俺を見つめ続けている。
あまりに長く見つめるので、俺の顔何か付いてる? って聞こう
としたら、未羽が、すうっと顔を寄せてきて︱︱キスされた。
衝撃で思考がぶっ飛ぶ。
え!? 未羽、キスしてんの!?
唇柔らけえ⋮⋮フェラも素股もいいけど、やっぱキスの気持ちよ
さは別格⋮⋮。
って、おい!? 兄妹だよ兄妹! いいのキスして!?
俺は激しく混乱したけど、未羽の唇はあまりに心地よくて、引き
離すことなど到底できなかった。
未羽は眼を閉じていて、何を考えてるやら分からない。
たっぷり三十秒ほどキスしてから、未羽は顔を上げた。とろんと
した顔は変わらない。
﹁み、未羽⋮⋮お、お前、いいの? ファーストキスじゃ⋮⋮?﹂
﹁香奈ちゃんとしてるって言ったでしょ? あれも女同士だから、
ノーカウントだよ。お兄ちゃんも兄妹だから、ノーカン﹂
﹁そ、そんなんでいいの?﹂
﹁んー⋮⋮キスなしエッチって、わびしいじゃない? 身体だけ?
みたいな。 未羽お兄ちゃんのこと好きだから、ちゃんとしとい
82
た方がいいかなって⋮⋮お兄ちゃん、未羽とキスするの、や?﹂
眉を八の字にして未羽は聞いた。
﹁やなわけないやなわけないやなわけない! お兄ちゃんこれファ
ーストキスにするから! ノーカウントにはしないから!﹂
必死で否定すると、未羽は眼を三日月にしてニコッと笑った。何
度も言うが、未羽の笑顔は最高だ。
﹁うふ、そうだよね、お兄ちゃん未羽のこと大好きだもんね∼。ね
え、お兄ちゃん⋮⋮べろちゅーも、したい⋮⋮?﹂
﹁したいしたいしたい! めっちゃしたい! して! お願い!﹂
﹁ふふ、もう、お兄ちゃんたら⋮⋮﹂
未羽が眼を閉じて顔を寄せる。俺たちは再び口づけた。
﹁んふ⋮⋮﹂
未羽は少し口を開いて俺の唇を覆うようにすると、すぐに舌を潜
り込ませてきた。とろりとした舌の感触に、俺は衝撃を受けた。
うっわ⋮⋮舌ってこんなに柔らかいんだ⋮⋮すっげえ気持ちいい
⋮⋮。
未羽はうねうねと舌をうねらせて、俺の舌に絡めてくる。活きの
いいなめくじみたいだった。
うおぉ⋮⋮未羽のやつ、処女のくせにこんな激しいべろちゅーを
⋮⋮。
頭がくらくらした。⋮⋮香奈ちゃんともこんなキスしてんだろう
なあ! ちきしょうめ!
キスしながらも、未羽の腰は休みなく動き続けている。俺はもう
爆発寸前だった。
未羽も息が荒くなってるし、イキそうなんじゃないだろうか?
べろちゅーしながら、はぁはぁ言ってて、その生温かい息を吸い
込むとますます淫靡な気分になってくる。
﹁ぷはぁ⋮⋮﹂
未羽が息をついて口を離した。そのまま、手を突いて少しだけ上
体を起こす。
83
⋮⋮汗と唾液で顔がびしょびしょだよ⋮⋮エロい⋮⋮。
未羽は何かを確かめるような顔で俺を見つめると、口をもごもご
させた。⋮⋮何かこの仕草、見たことあるような⋮⋮。
未羽は、おでこを合わせるように、少し顔をうつむけた。薄く唇
を開き、舌先を覗かせる。
何すんだ? って思ってたら、未羽が、つーっと、唾を垂らした。
驚く間もなく、未羽の唾液は糸を引いて垂れてきて、俺は慌てて
口をタコみたいにして、それを吸った。
うわ⋮⋮唾に体温がある⋮⋮何この甘露な味⋮⋮。
わずかに粘度を備えた唾液を、俺は口の中でたっぷりとこねくり
回してから、飲み込んだ。頭がしびれるようだった。
﹁⋮⋮お兄ちゃん、どう? 未羽の唾⋮⋮?﹂
どう見ても処女とは思えないエロ顔で未羽が聞いた。エロいよー
⋮⋮俺の妹。
﹁美味しいよ⋮⋮ジョッキで飲みたい⋮⋮﹂
﹁うふふ、お兄ちゃん、大好き⋮⋮﹂
未羽がまたべろちゅーしてきた。今度はハリウッド映画みたいに
情熱的だ。
キスに合わせて腰の動きも激しくなる。⋮⋮つーか、さっきより
奥まで入ってない!?
指二本オナニーの成果なのか、未羽のあそこは十五歳にしてはえ
らく開発されているようだった。
﹁み、未羽、やばいって⋮⋮入れすぎ⋮⋮お、俺、もう⋮⋮﹂
﹁あう⋮⋮あっ、はぁ⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮未羽、イキそ⋮⋮は
ぁっ!﹂
俺の言うこと全然耳に入ってなかった。腰の動きがますます激し
くなる。
﹁あふっ!⋮⋮ああっ!⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮もっと⋮⋮﹂
未羽の声が一オクターブ高くなる。
﹁う、うぁ⋮⋮未羽⋮⋮﹂
84
やばいと思いつつも、あまりの快感に抗うことができない。
あ、もうダメ⋮⋮と思った刹那、急に、腰の動きが止まった。
未羽は、呼吸を整えるように大きく息を吐いて、それから、ぐっ
と息を詰めた。
身体全体を下へずらす。俺のジュニアは、ぬるりと奥まで未羽の
中に吸い込まれた。堪らない快感が俺の脳天を突き抜ける。
﹁うわっ⋮⋮おう⋮⋮ちょ、ちょっと! 未羽!﹂
﹁あふっ⋮⋮お兄ちゃんの⋮⋮大っきい⋮⋮あん⋮⋮﹂
耳元で陶然とした声を出す。痛くないのかよ!? この処女!?
未羽がゆっくりと腰を動かしはじめた。これまでで最大級の快感
に、俺は呻き声を上げた。
﹁うあぁ⋮⋮うっ⋮⋮うう⋮⋮み、未羽、い、入れちゃまずいって
⋮⋮お、俺もう、出⋮⋮﹂
未羽よりも俺の方がかろうじて理性が残っていたが⋮⋮ジュニア
を引き抜くことができるほど俺の理性は強くなかった。
未羽は俺の肩をがっちりと抱いて、ときどき小刻みに身体を震わ
せている。
うわ、この震え、さっきと同じだよ⋮⋮イキそうなんだ、未羽⋮
⋮って俺ももう限界!
﹁み、未羽⋮⋮お、俺もう、我慢が⋮⋮﹂
﹁はぁっ!⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮いいよ⋮⋮出して⋮⋮未羽ん中、出
して⋮⋮﹂
許可すんなよー⋮⋮! ああ俺、もう限界⋮⋮。
最後の砦も未羽のひと言であっさり崩壊した。
理性を失った俺は未羽の身体をひしっと抱きしめ、自分から未羽
に突き上げた。未羽が大きな声を上げる。
﹁ああっ! お、お兄ちゃん⋮⋮! い、いいっ⋮⋮あふ⋮⋮イ、
イっちゃうよう⋮⋮ああっ!﹂
未羽が強くしがみついてくる。俺たちは汗ばんだ身体を強く抱き
しめ合った。
85
快感の波が押し寄せてくる。俺は相手が処女だと言うことも忘れ、
激しく腰を動かした。
﹁ううっ⋮⋮お、俺もう、イク⋮⋮ああ! 未羽! 未羽ー!⋮⋮﹂
﹁あっ!⋮⋮お兄ちゃん、一緒に、一緒に! あっ! あっ⋮⋮あ
ああああああぁぁん!﹂
未羽がびくびくと身体を震わせ、大声を上げて絶頂に達する。
俺は未羽を強く抱いて、彼女の中にどくどくと放出した。俺のジ
ュニアは脈打って、驚くほど長い間射精を続けた。
﹁あ⋮⋮あぁ⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮﹂
最後にそうつぶやくと、未羽は痙攣したように身体を震わせ、そ
れから脱力して俺の上に突っ伏した。
真っ赤な顔をして、息も絶え絶えだ。乱れた髪が、俺の身体とベ
ッドの上に広がっている。
い、妹とセックスした上、思いっきり中に出してしまった⋮⋮。
やっちまったなー⋮⋮と思ったが、一周して後悔はなかった。
思えば数年前、ちょうど兄妹の仲が改善したころから、未羽は美
しくなっていった。
幼かった顔立ちがだんだんと女らしくなり、少年のようにスレン
ダーな身体には、めりはりのある丸みが備わってきた。
日増しに美しくなる妹に、俺は恋心に似た思いを抱いた。いや、
恋そのものだったかもしれない。
未羽が露出の多い服で家の中をうろついたり、何かの拍子で身体
が触れたりするたびに、俺の胸は高鳴った。
しかし、兄という立場上、俺はそれを必死で押し殺し、おくびに
も出さないようにしてきたのだ。
この数日で信じられないような幸運が次々と舞い降り、妹とセッ
クスまでしてしまった。しかも中出しで。
きっと俺は、運を使い果たしてしまったことだろう。明日あたり
車に轢かれて死ぬかもしれない。
それでも構わない。本望だ。俺は未羽を抱いた思い出を胸に、天
86
国へと旅立とう︱︱。
俺がそんな思いにふけっていると、未羽がもぞもぞと身体を動か
した。桃源郷から帰ってきたようだ。
﹁⋮⋮あ、お兄ちゃん⋮⋮﹂
まだ、ぼーっとした眼をしている。寝起きみたいにだらしない顔
も可愛らしい。
﹁未羽、大丈夫か?⋮⋮あそこ、痛くないか?﹂
未羽は眼をぱちぱちした。まだ思考が正常に戻っていないようだ。
﹁⋮⋮あー、そっか⋮⋮エッチしたんだよね⋮⋮すっごいよかった
⋮⋮死んじゃうかと思った⋮⋮﹂
﹁⋮⋮男には最大限の賛辞だけど、それよりも身体大丈夫か? ち
ょっと無茶しちゃったから⋮⋮﹂
未羽は﹁んー⋮⋮﹂と言って、股間に手をやった。
﹁まだ何か入ってるような感じするけど⋮⋮痛くないよ? 今日、
とろっとろだったからなあ⋮⋮﹂
相変わらず過激発言の多い妹である。
﹁そうか、よかった⋮⋮ごめんな、中に出しちゃって⋮⋮つか、処
女奪って、ごめん⋮⋮﹂
謝まんないでよぉ、と言って、未羽は俺の額を指先でつついた。
﹁出していいって言ったの未羽なのにぃ。未羽も妊娠したくないか
ら、ちゃんと考えてます。今日は大丈夫だよ。処女ってのもさあ、
兄妹なんだから、ノーカウントだよ﹂
﹁ノーカウントなの!? 何その先進的な解釈!?﹂
﹁女同士と兄妹はノーカウントだよ。ちょっとした好奇心? みた
いな?﹂
﹁好奇心で兄とセックスするの!? お前!?﹂
ぶっ飛んだ性感覚の持ち主だった。俺の妹。
﹁やっちゃったあとであれこれ言ってもしゃーないじゃない。前向
いて生きようよ﹂
⋮⋮こんなにポジティブなやつだとは思わなかった。
87
でも確かに、やるだけやっといてとやかく言うのは男らしくない
し、何も始まらないよな⋮⋮よし、気にしないことに決めた。
﹁未羽ね、すっごく気持ちよかった。自分でするのと全然違うね。
お兄ちゃんどうだった?﹂
﹁俺もオナニーの千倍くらい気持ちよかったよ⋮⋮ていうか、こう
して肌を合わせてるのが、現在進行形で気持ちいい﹂
未羽は猫のように俺の身体の上に寝そべっている。汗で肌がぬる
つくのも、エロくて気持ちいい。
﹁そーだねー。あったかくっていいよね⋮⋮うふふ⋮⋮お兄ちゃん、
大好き﹂
って言うなり、未羽がキスしてきた。舌も入れてくる。さっきみ
たいに激しくではなく、俺たちは軽く舌を絡め合った。
しっかりと兄妹愛を確かめ合ってから、俺たちは唇を離した。
未羽がぎゅっと俺に抱きついてくる。そして、耳元でこう囁いた。
﹁⋮⋮あのね、これ言うとお兄ちゃん、がっかりするかもしれない
けど⋮⋮﹂
ギクッとした。え? 何? 何を言うつもりなの?
やべえ⋮⋮さっきまでの幸せは、逆に絶望へのフラグか!?
こっから坂道を転がるように落ちていくのか!? 俺!?
未羽は、ころんと転がって、俺に並んで身を横たえた。身体から
未羽の重みが消えて、俺はひどく寂しい気持ちになった。
晴れやかではない笑みを、未羽は浮かべていた。去り際に見せる
ような、寂しい笑み。
﹁⋮⋮明日からね、お薬入れなくていいよ﹂
ポカンとした顔をしてたと思う、俺。
﹁昨日くらいからすごくよくなってて⋮⋮今日はね、朝から全然痛
くないの。それでもちゃんと治ってないと怖いから、お兄ちゃんに
も香奈ちゃんにも入れてもらったけど⋮⋮自分で分かるんだ、もう
治ってるって。だから、明日からはいいよ。お兄ちゃん、今まであ
りがとね。すっごい感謝してる﹂
88
ああ、そうか。いつかは来るんだよな、治る日が⋮⋮。
そういえば最近痛いって言ってなかったもんな。そっか、治って
たんだ⋮⋮。
﹁お兄ちゃん⋮⋮?﹂
未羽の声で、ハッと我に返る。未羽が心配そうに顔をのぞき込ん
でいた。
﹁あ、ああ! よ、よかったな、治って⋮⋮お、思ったより早くよ
くなったじゃないか。うん、よかったよかった!﹂
棒読みで俺は言った。
うん、未羽の痔が治ったのは、100%いいことなんだよ。何が
引っかかっているのかと言えば⋮⋮。
﹁うん、もう、お薬入れてもらわなくて大丈夫なの。だから、エッ
チなことも、もうおしまいだよ﹂
俺の中で、岩のような物がガラガラ砕けていく音がした。
﹁兄妹なんだからさー、これが日常になっちゃダメだよね。最後に
エッチできてよかったね、お兄ちゃん﹂
そう言って未羽は、眼を三日月にしてニカッと笑った。屈託がね
えなあ、こいつの笑顔。
﹁あ、ああ⋮⋮そうだな、兄妹なんだしな⋮⋮﹂
﹁お兄ちゃん、正直ちょっとがっかりでしょ?﹂
ニヤニヤしながら、未羽が俺の頬をつつく。
﹁ちくしょう⋮⋮ああ、ぶっちゃけがっかりだよ! お前が魅力的
すぎるからいけないんだよ! ああ、血がつながってなければなあ
⋮⋮遺伝子を入れ替える技術とかねえのかなあ、IPS細胞とか使
って⋮⋮﹂
ふてくされる俺の肩を、未羽は慰めるようにぽんぽん叩いた。
﹁しょーがないよ、兄妹なんだからさあ。でも、ちょっとはサービ
スしてあげるよ﹂
﹁サービスって、どんな!?﹂
食いつく俺。
89
﹁手をつないだり、ハグしたりしてあげる﹂
﹁ぐぐぐ、ハグまでかあ!?﹂
﹁ほっぺにちゅーまではOKだよ﹂
﹁べろちゅーは⋮⋮?﹂
﹁兄妹でべろちゅーしないよ﹂
﹁お前香奈ちゃんとしてるだろうが! じゃ、じゃあ、おっぱい触
るのは⋮⋮?﹂
﹁⋮⋮おっぱいねえ⋮⋮うーん、ブーッ! NG﹂
胸の前で手をクロスさせる。
﹁はあ⋮⋮結構厳しいなあ⋮⋮﹂
﹁でも、仲のいい兄妹でも、なかなかハグしたりほっぺにちゅーし
たりしないよ? もの足りない? 分かった、お兄ちゃんの誕生日
には、キスしてあげる!﹂
﹁年に一回かあ⋮⋮うむ、贅沢は言うまい。こんな可愛い妹を持て
ただけで、俺は幸せだよ。これからも仲よくしような、未羽﹂
﹁うん、あたしもお兄ちゃん大好きだよ。最後にべろちゅーしてあ
げる﹂
俺は未羽を抱き寄せて、熱烈にキスをした。
未羽が逃れようとしても離さずに、五分くらいベロチューした。
最後だからいいだろ?
これでこの物語は終わる。みんなも、エッチ抜きで話の続きは聞
きたくないだろ?
すっきりさっぱりと、潔くこの話は終わるんだ。
短い間だったけど、夢のような体験をすることができた。俺の素
敵な妹の話を聞いてくれて、ありがとう。
それじゃ、アディオス!
90
︻後日談1の1︼香奈ちゃんお泊まり
本編はきれいに終わったんだけど、後日談ができちゃったから、
よかったら聞いてくれ。
後日談、つっても、翌日の話だよ。
今まで曜日は言ってなかったけど、俺と未羽が最後までやっちゃ
ったのが、金曜日の夜だ。
後日談はその翌日、土曜日から始まる。
﹁お兄ちゃん、香奈ちゃん泊まりに来るって。夕方来るよ﹂
﹁⋮⋮そうか﹂
香奈ちゃんは家近いし、月一、二回くらい泊まりに来るので︵未
羽も月一、二回香奈ちゃん家に泊まる︶、それは別にことさら変わ
ったことではないんだけど⋮⋮どうも顔が合わせにくい。
座薬の件だけならまだしも、香奈ちゃんと未羽があんなことやこ
んなことをしていることを知ってしまったし、何より昨日未羽とあ
んなことをしてしまったばかりだし⋮⋮香奈ちゃんの顔がまっすぐ
見られそうにない。
加えて心配なのは、未羽が香奈ちゃんにぺらぺらしゃべってしま
わないかということだ。
こいつらのトークって、いつでも修学旅行の夜状態らしいからな
⋮⋮少しは隠しごとしろよ。
そのあと、おふくろからメールが来た。
﹃法事の準備で忙しいので、今晩まで埼玉に泊まります。明日の夜
帰ります﹄
そういう内容だった。
まあ、香奈ちゃんも泊まりに来ることだし、未羽の﹁エッチはお
しまい﹂宣言もあったから、両親が居ようと居まいと変わりはない。
91
むしろ未羽と香奈ちゃんの方が危険だと思うんだが⋮⋮未羽のや
つ、﹃香奈ちゃんにも教えてあげたい﹄発言を実行したりしやしな
いだろうな?
☆
約束どおり、夕方に香奈ちゃんは泊まりに来た。
未羽と香奈ちゃんが一緒に夕飯を作り、俺と三人で食べた。
メニューなんだと思う? パエリアだよ。香奈ちゃんも料理スキ
ル高いので、彼女が泊まりに来ると二人で手の込んだ料理を作って
くれるのだ。うちに住んでいいよ、香奈ちゃん。
テーブルを挟んだ向かい側に、未羽と香奈ちゃんが隣り合って座
っている。
二人はノンストップでおしゃべりしながら、箸を動かしている。
お行儀がよいとは言えないが、あまりに微笑ましくて、注意する
気も起こらない。
二人はアホなJKみたいに大声でゲラゲラ笑ったりしない。穏や
かな話し声は耳に心地よくて、ずっとBGMにして聞いていたいく
らいだ。
それにしても、香奈ちゃん美少女だなあ。うちの未羽の隣にいて
も、全然遜色ないよ。未羽の方が若干可愛いけど。
⋮⋮この二人、飯食ったら一緒に風呂入るんだよな⋮⋮裸で洗い
っこして、おっぱい触るのはお約束って言ってたな⋮⋮。
泡まみれでじゃれ合う未羽と香奈ちゃん⋮⋮ユートピアだな。あ
あ、いっぺん覗いてみてえ。俺も女に生まれればよかった。
脳内で二人を全裸にしていたら、俺のジュニアがギンギンにおっ
立ってきた。
俺は頭を振って妄想を振り払い、絶妙にパラリと仕上がったパエ
リアをかき込んだ。
92
☆
未羽と香奈ちゃんは一緒に風呂に入ったあと、未羽の部屋に入っ
た。俺もすることがないので自分の部屋に行った。
壁越しに、かすかに話し声が聞こえてくる。
女の子って本当におしゃべり好きだよな。何で話題が尽きないん
だろう?
ルフィみたいに波瀾万丈の人生だったらいくらでもネタがあるだ
ろうけど、普通に十五年生きてきた女の子が、何を数時間にわたっ
てしゃべりつづけるのだろう?
聞き耳を立ててると思われても嫌なので、ミニコンポをつけて音
楽を流した。課題がちょっと残ってるから、それを片付けよう。
うちの野球部の監督は、文武両道がモットーだ。次期キャプテン
として、学業もおろそかにはできない。
定積分の問題を解いていると、すごくすがすがしい気分になって
きた。
うむ、やはり俺はこうして真面目に日々を過ごすのが合っている
な。
昨日までのただれた生活は、ひとときの気の迷いだったのだ。妹
とセックスなんて、どうかしている。
これからは学業と部活に邁進しよう。一度しかない青春を充実し
たものにするのだ。ヨシ! 気分が乗ってきたぞ!
︵あっ⋮⋮あん⋮⋮︶
BGMにかけていたゆずの曲に混じって、かすかに艶めかしい声
が聞こえ、シャーペンを持つ手がピタリと止まった。
︵やん⋮⋮あ、はぁ⋮⋮未羽⋮⋮︶
シャーペンの芯がポキッと折れた。同時に俺の心も折れた。
何ですか!? 今の声!? 香奈ちゃん!?
俺はベッドに飛び乗って壁に耳を付けた。壁の向こうは未羽の部
屋だ。
93
︵あぁ⋮⋮未羽⋮⋮あっ⋮⋮らめぇ⋮⋮︶
何してんの未羽!? 教えてあげちゃってるの!? 香奈ちゃん
に!?
え? え? え? アレを教えてあげてるってことは、クンニし
ながら指入れてるわけ!? ガチレズじゃん! うちの妹!
俺が混乱している間にも、香奈ちゃんの声はだんだん大きくなっ
ていった。
︵はぁっ⋮⋮あん! ああっ! 未羽⋮⋮わたし、もう⋮⋮はぁん
っ!⋮⋮︶
香奈ちゃん叫んでるよ! ゆずかかってもバッチリ聞こえるよ!
壁の向こうで妹が友達にいけないことをしているらしいが、俺に
できることは何もなかった。
まさか未羽の部屋のドアをガッと開けて、﹁お前ら! 何してる
んだ!﹂なんて言えるわけがない。
そんなことをしたら香奈ちゃんが家に来なくなって未羽から兄妹
の縁を切られるに決まっている。
それに止めないといけないような悪いことをしているわけでも⋮
⋮﹁不純同性交友﹂か、これ? そもそも妹とセックスした俺が、
どの面下げて偉そうなことを⋮⋮。
そんなことを考えている間に、香奈ちゃんはどんどんと大人の階
段を登りつめていった。
︵あっ!⋮⋮も⋮イっちゃう⋮⋮はぁっ!⋮⋮あふっ⋮⋮あっ⋮⋮
あ⋮あああああああぁぁん!︶
⋮⋮もう、はっきり聞こえました。ああ⋮⋮イっちゃったよ香奈
ちゃん⋮⋮。
うちの妹、テクニシャンだからなあ⋮⋮同性の身体の方がツボが
分かるだろうし、ひとたまりもねえだろ。
すっかり定積分を解くような気分ではなくなってしまった⋮⋮。
俺は課題をほっぽり出し、オナニーして寝た。
94
☆
95
︻後日談1の2︼香奈ちゃんとトーク
翌朝。香奈ちゃんにフェラされる夢を見て目が覚めた。
⋮⋮俺のエロ脳をどうにかしてくれ。よく眠れたのに変な気分で
目が覚めたじゃないか。
俺は一階に降りて歯を磨き、顔を洗った。ちょっとシャッキリし
た。
しかし、香奈ちゃんまだ家に居るんだよな⋮⋮昨日のアレのせい
で、ますます顔を合わせづらくなってしまった。どうしたものか。
部屋に戻ろうと二階に上がったところで、香奈ちゃんとはち合わ
せた。
見覚えのあるTシャツと短パンを着ている。未羽のものだ。
もう、最近は手ぶらで泊まりに来るんだよな、香奈ちゃん。下着
も未羽のものであることは間違いない。
顔合わせづらいなー、と思ってたとこへはち合わせたので、ちょ
っと焦ったけど⋮⋮香奈ちゃん、何だか顔が怖いよ!?
ほとんど表情がないっていうか、人間を見る目じゃない。電柱を
見るような眼で俺を見つめている。
それでいて妙に圧力のある眼だった。俺は気圧されつつ挨拶した。
﹁や、やあ、おはよう、香奈ちゃん﹂
﹁おはようございます。実の妹の処女を奪った犬畜生のお兄さん﹂
槍で腹を刺された気がした。
﹁なっ! えっ⋮⋮?﹂
﹁話は全部未羽から聞きました。二時間くらいかけて、微に入り細
に入りじっくりと。
お兄さん、あなた動物ですか? 理性ないんですか? 穴さえあ
ればどこにでも突っ込むんですか?
96
世が世なら磔か火炙りですよ。炙り流行ってるから火炙りがいい
んじゃないですか? ははは﹂
香奈ちゃんは無表情で笑った。怖え⋮⋮。
﹁未羽が慕っているお兄さんだから信用しようと思っていたんです
けど、とんだ食わせ者でしたね。
まあ、はじめからちょっと変だなと思ってはいたんです。
初めてわたしが未羽にノール入れてあげたとき、あの子M字開脚
するじゃないですか? 普通に膝を折るだけでお尻の穴見えるのに、
何でこんな格好するんだろうって思いましたよ。
でも未羽は当然のような顔してるし、いまさら﹃こんなポーズし
なくていいよ﹄なんて言ったら恥ずかしくて死んでしまうだろうと
思ったから黙っていましたけど、思えばあの時点でお兄さんの変態
性に気づくべきでした。
未羽の方から誘ったのは確かですが、拒絶しなかったのなら進ん
で近親相姦したも同然です。
十五歳のか弱い女の子ですよ? 野球部の次期キャプテンと目さ
れているお兄さんなら、振り払うのはわけないでしょう。
普段から未羽を性の対象として見ているから、いざというとき理
性が働かないんですよ﹂
うっわー⋮⋮そのとおりすぎて、何ひとつ言葉が出てこねえ。
﹁オナニーを見せてとしつこくせがんだりシックスナインを強要し
たり、妹相手に何してるんですか。
お兄さん、未羽のおっぱいを吸いながら﹃赤ちゃんに戻りたい。
ばぶー、ばぶばぶ﹄って言ったそうですね。幼児プレイ願望まであ
るんですか。ど変態じゃないですか﹂
﹁いっそ殺してくれよ! ひと思いに!﹂
未羽⋮⋮お前そんなことまでしゃべっちゃうの⋮⋮?
﹁未羽は恥ずかしがり屋ですけど性に奔放なところがありますから、
そこはお兄さんに自制していただかないと、歯止めがなくなってし
まうじゃないですか。
97
まあ、わたしも未羽とは少々エッチなこともしていますけど⋮⋮﹂
﹁少々じゃないでしょ? 昨日声聞こえてたよ﹂
香奈ちゃんの顔がボッと赤くなった。
﹁お、お兄さんが未羽に変なことを教えるから、わたしまで巻き込
まれるんですよ!
⋮⋮未羽、わたしのこともいろいろお兄さんに話したそうですね。
ディープキスしてることとか、愛液を舐め合ったこととか、わた
しがベッドにクマのぬいぐるみを置いて、﹃ああ、クマさんが見て
る﹄とか言いながら疑似視姦プレイオナニーをしていることとか、
修学旅行オナニー事件のこととか﹂
﹁ちょっ! ちょっと待って! 視姦プレイオナニーと修学旅行オ
ナニーは初耳だ!﹂
香奈ちゃんは手を指揮者みたいにして驚いた。
﹁なっ⋮⋮! み、未羽ったら、何でそんな嘘を⋮⋮くっ、余計な
ことまで⋮⋮﹂
﹁あいつちょいちょい嘘ついたり隠しごとしたりたりするみたいだ
ぞ⋮⋮たぶん香奈ちゃんのリアクションが面白くて嘘ついたんだろ
う﹂
﹁ぐぬぬ⋮⋮そういう悪い癖があるの知ってたのに⋮⋮油断した⋮
⋮﹂
歯を食いしばって悔しがる香奈ちゃん。未羽、友達大事にしろよ
⋮⋮。
﹁ところで修学旅行オナニー事件ってすっごく気になるんだけど、
もしよければ聞かせてもらえないだろうか?﹂
香奈ちゃんは顔を赤くして、波線みたいな口をした。小池さんみ
たいな。
﹁⋮⋮いいでしょう。いまさらもうひとつ恥ずかしいエピソードを
知られたからってどうってことありません。ちょっといい話も入っ
ているので、聞かせてあげましょう﹂
﹁⋮⋮ありがとう﹂
98
ダメ元で聞いたのに。未羽も香奈ちゃんも告白好きだな。
﹁中学三年の修学旅行でのことです。四泊五日の京都の旅で、わた
しは六人のグループで行動を共にしていました。
宿泊先のホテルでも六人一緒です。四日目の早朝、みんなよりも
早く目が覚めたわたしは、我慢できなくてトイレでオナニーしてし
まったのです﹂
﹁君たちオナニーエピソード多いね!﹂
﹁黙って聞いてください。六人部屋のトイレで、わたしはオナニー
したんです。久しぶりのオナニーだったのでいつもより感じてしま
い、少しだけ声が出てしまいました。
そのとき、わたしより少し遅れて目を覚ました子がいて、その子
に気づかれてしまったんです。
その子は他の子を起こして、みんなでトイレの前で聞き耳を立て
ていました。
それと気づかないわたしは、声を出してイってしまって⋮⋮トイ
レから出るとみんながいて、﹃香奈、オナニーしてたでしょ!﹄っ
て、ニヤニヤ笑うんです。死にたくなりました。
旅行中、みんなわたしのことを﹁香奈ちゃん﹂ではなく﹁オナち
ゃん﹂と呼んでからかいました。楽しいはずの修学旅行が地獄に一
変しました﹂
﹁いじめじゃん⋮⋮ひどい話だ﹂
﹁そして最初にあたしのオナニーに気づいた子が、おもしろがって
未羽に話したんです。未羽はきょとんとした顔でこう言ったそうで
す。
﹃あたしも今朝トイレでオナニーしたよ? みんなもお家でするで
しょ? 何か変?﹄って⋮⋮。
その子はハッと自分の過ちに気づいて、わたしに謝ってきたんで
す。他の子達も、みんなわたしに謝ってきました。
﹃あたしたちもオナニーしてるよ! 香奈ちゃんのことからかって
ごめん!﹄って⋮⋮未羽のおかげで、わたしは救われたんです﹂
99
﹁⋮⋮へえ、さすが未羽。自分を犠牲にして友達をかばうなんて、
いい子だなあ﹂
﹁みんなそう思っていました。いくらなんでも、同じ日の朝に同じ
ようにトイレでオナニーするなんて、有り得ないじゃないですか。
きっと未羽は、とっさに自分もオナニーしたことにして友達をか
ばったんだ。みんなそう思っていました﹂
﹁うんうん、未羽はそういう機転のきく子だ﹂
﹁わたしもそう思ってたんですけど、後で聞いたらその朝トイレで
オナニーしたのは本当で、それどころか修学旅行中毎日どこかしか
でオナニーしていたそうです。﹃旅先って、ムラムラしない?﹄っ
て言うんですよ。ぶれない子だなあって思いました﹂
﹁そこは省略していい話で終わっといたらいいんじゃないかな! っていうか、そこで﹃ぶれない﹄ってどういう意味よ!?﹂
﹁お兄さんも気づいているでしょう? 未羽が天使のような顔して
エロエロ大魔王だということを。
話を元に戻しますけど、お兄さんが脊髄反射で生きている鬼畜野
郎だったことは残念ですが、未羽がエロエロ大魔王であることを鑑
みると、すべての責任をお兄さんに負わすことはできません。
未羽ももうお兄さんとエッチなことはしないと言っていることで
すし、百歩譲って今回のことは不問にしましょう﹂
﹁⋮⋮え? 許してくれるの⋮⋮?﹂
突然の大幅譲歩に俺の方が戸惑ってしまった。
﹁そ、その代わりと言ってはなんですけど⋮⋮頼み、というか⋮⋮
お、お願いが⋮⋮﹂
香奈ちゃんはまた顔を赤く染めた。
﹁いや、まあ、許してくれるんなら、なんなりと。俺にできること
なら﹂
﹁⋮⋮わ、わたしも、未羽と同じに、と、年頃の女の子相当の好奇
心はあるわけで⋮⋮その⋮⋮わ、わたしは⋮⋮だ⋮⋮男性器、と、
とか⋮⋮見たことが、なくて⋮⋮﹂
100
真っ赤になって俯いてしまった。
﹁あの、香奈ちゃん、君よくその流れに持って行けるね⋮⋮﹂
﹁お兄さん! 御免!﹂
香奈ちゃんが顔を上げたところまでは覚えてる。
そのあと香奈ちゃんの姿が一瞬消えたように感じて、何かが目の
前に飛んできた。
あとで聞いた話では、俺は猛スピードで踏み込んだ香奈ちゃんか
ら掌底突きを額に食らい、気を失ったのだそうだ。
☆
101
︻後日談1の3︼香奈ちゃんMなの?
目が覚めて最初に目に入ったのは、見慣れた天井だった。俺の部
屋だ。
あれ? 俺寝てたっけ? 首を横に向けると、未羽と香奈ちゃん
がいた。
状況が呑み込めていない俺は上体を起こそうとしたが、身動きが
取れなかった。腕を見ると、ビニール紐が巻かれている。
﹁へ? あ、あれ?﹂
首を巡らして、ようやく俺は状況を把握した。
俺はトランクス一枚でベッドの上に大の字になり、両手首、両足
首をビニール紐で縛られ、固定されていた。ビニール紐の先は、ベ
ッドの脚に結わえられているらしい。身動きが取れない。
﹁ちょっ! おい! 未羽! 香奈ちゃん! 何だよこれ!?﹂
香奈ちゃんはこれから執刀する外科医師のような眼で俺を見下し
た。
﹁目が覚めましたか? お兄さんにはこれからわたしの性教育教材
になってもらうのですけど、犬並に節操のないお兄さんを野放しに
するのは危険なので、拘束させていただきました﹂
﹁いただきましたじゃねえよ! ちょっ⋮⋮俺、襲ったりしないか
ら、ほどいてくれ⋮⋮ちょっ、未羽! 未羽からも言ってくれよ!﹂
﹁ごめんね、お兄ちゃん。香奈ちゃんどうしても怖いって言うから。
でもほら、血が止まらないようにタオル巻いたよ。優しいでしょ?﹂
ニコッと未羽が笑う。
確かに、手首足首にはタオルが巻かれてあって、その上からビニ
ール紐を巻いているので、皮膚に食い込むようなことはない。
﹁うーん、確かに。これなら鬱血することもないし、親切だね君ら
102
︱︱って思わねえよ! さっさとほどけ! ⋮⋮そういや、俺なん
で気を失ってたの?﹂
﹁香奈ちゃんの掌底突きを食らって倒れたんだよ。香奈ちゃん空手
黒帯なの﹂
﹁そ、そういや、そんな話聞いたことあるな⋮⋮って、有段者の拳
は凶器だよ!﹂
﹁だから掌底を使ってるじゃないですか。掌底は拳を痛めることも
ありませんし、額を狙えば脳震盪を起こさせることができますから、
女性に向いている技なのです﹂
﹁ウンチクはいいから、マジでこれほどいてくれない⋮⋮?﹂
﹁ダメです。さあ、無駄話はこれくらいにして、そろそろ⋮⋮お、
お兄さんの⋮⋮だ、男性器を、見せていただき⋮⋮ましょう﹂
香奈ちゃんは急に頬を染め、恥ずかしそうに言った。変わり身激
しいな、この子!
﹁でも香奈ちゃん、足も縛ってるからパンツ脱げないよ。どうする
? ずり下げる?﹂
香奈ちゃんはハッとした顔をした。意外と抜けてるな。テンパっ
てるのか?
﹁足を広げてるから、ずり下げるのはちょっと⋮⋮未羽、ハサミ貸
して﹂
﹁えっ!? ちょっ!? 切るのかよ!?﹂
未羽は部屋を出て、裁縫用のでかい裁ちバサミを持って戻ってき
た。
香奈ちゃんはハサミを手に取るとベッドに上がり、俺の脚の間に
ひざまずいた。
﹁ちょっ⋮⋮マジで切るの!? や、やめて、怖い!﹂
香奈ちゃんは構わずハサミを開き、トランクスの股の方へ刃を入
れた。
躊躇いなく、ジョキン!と切断する。
﹁ひっ!﹂
103
こ、怖い! ジュニアのそばで刃物を使われるの、すげえ怖い!
いくら手元が狂ってもいちもつを切り落とすなんてことはあるは
ずないが、頭で分かっていても本能的な恐怖まで拭えるものではな
い。俺のジュニアは最小限に縮み上がった。
香奈ちゃんはお構いなしにジャキジャキとハサミを進め、股から
腰の部分まで切り裂いた。もう一方の股の方からもハサミを入れる。
腰の左右の部分ははらりとベッドに落ちて、残るはジュニアを隠
している部分だけ。ふんどしみたいな感じになった。
香奈ちゃんの顔は、さっきよりも上気していた。漫画なら頭から
ぽっぽっと湯気が出ているところだ。
﹁さ、さあ⋮⋮それでは、拝ませていただきましょうか﹂
どうせ抗うこともできないので、俺はじっとしていた。未羽はわ
くわくしながら香奈ちゃんの表情を見ている。
香奈ちゃんが人差し指と親指で、半分残骸と化したトランクスを
つまんだ。⋮⋮その汚いものを触るような手付き、やめてくれない
かな?
そーっとトランクス︵の残骸︶をめくる。すっかり萎縮した俺の
ジュニアが顔を出した。
﹁きゃ⋮⋮へ、へえ⋮⋮こんなんなんだ⋮⋮思ってたより複雑な形
⋮⋮﹂
顔を近づけ、興味深げにしげしげと見つめる香奈ちゃん。⋮⋮ど
うにでもしてくれ、もう。
﹁未羽、こ、これって⋮⋮ぼっきっていうの? してないんだよね
?﹂
﹁うん、未羽も小っちゃくなってるのあんまり見たことないよ﹂
﹁さ、触っても大丈夫?﹂
﹁大丈夫。噛みついたりしないから﹂
香奈ちゃんがおそるおそる俺のジュニアに指を触れた。
とたんに屹立するジュニア。節操がねえなあ! 俺のジュニア!
﹁わっ! わっ、わっ! 大っきくなった! すご⋮⋮こんなに大
104
きくなるの⋮⋮﹂
目を丸くして眺める香奈ちゃん。またそろそろと手を伸ばす。
﹁わぁ、固い⋮⋮さっきはふにゃふにゃしてたのに⋮⋮未羽、こん
な大っきいの、よく入ったね﹂
﹁うん、すっごい濡れてたから、痛くなかったよ。ねえ香奈ちゃん、
我慢汁見てみたくない?﹂
何を言い出すんだ! 俺の妹は!
﹁が、がまんじる? 何それ? せ、せーえき?﹂
﹁精液じゃないよ。男の人もねえ、ムラムラすると愛液みたいなの
が出るんだって。お兄ちゃん百合好きから、あたしたちがいちゃい
ちゃするとこ見せれば出てくるよ﹂
そう言うと未羽はベッドに上がった。三人分の重みでベッドがき
しむ。
未羽は香奈ちゃんの頬に手のひらを当て、顔を寄せた。誰でもキ
スするのだと分かる仕草だった。
﹁ちょっ⋮⋮未羽、お兄さんが見てる⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃん、見せるんだよ﹂
躊躇う香奈ちゃんの身体を引き寄せると、未羽は眼を閉じて唇を
重ねた。んふ⋮⋮と香奈ちゃんが息を漏らした。
香奈ちゃんは最初身体を固くしていたけれど、すぐに力を抜いて、
俺がいることなど忘れたように未羽の唇を吸った。
美少女二人が、欲望のままに唇を吸い合っている。それは、神々
しいほど美しい光景だった。
﹁⋮⋮はふ⋮⋮ふぁ⋮⋮﹂
二人のどちらともつかない吐息が漏れる。未羽はすでに舌を潜り
込ませていた。
香奈ちゃんも舌を伸ばして、未羽の舌を迎え入れる。
唇の間から、艶めかしく濡れた舌がのぞいた。二人は水音を立て
て舌を絡め合った。
俺の眼には、二人の周りがまるでプリクラの写真のようにソフト
105
フォーカスになって、キラキラと星が輝いているように映った。
うわぁ⋮⋮美しすぎる⋮⋮天使が戯れているかのようだ⋮⋮。
長い間舌を絡め合い、二人はようやく唇を離した。唇の間に唾液
が糸を引いている。
息を荒くした香奈ちゃんが、未羽の肩におでこをもたせかける。
未羽は優しくその頭を撫でた。
﹁んもぉ⋮⋮未羽ったらぁ⋮⋮恥ずかしいよ⋮⋮﹂
﹁ふふ、香奈ちゃん、大好きだよ⋮⋮ね、おちんちん見てみよ﹂
もうお前ら付き合っちゃえよ、って言いたくなるようないちゃら
ぶ振りを見せつけたあと、二人は俺のジュニア観察に戻った。
﹁あっ⋮⋮本当だ。ちょっとだけ何か出てる⋮⋮﹂
﹁でしょ。もっとエッチなとこ見せたら、もっと出てくるよ﹂
⋮⋮年下の女の子二人に我慢汁を観察されている俺だった。何この
羞恥プレイ?
未羽が香奈ちゃんの背に回って、もぞもぞと手を動かす。
香奈ちゃんが﹁きゃっ!﹂と言って胸を押さえたので、ブラのホ
ックを外したのだと分かった。
﹁ちょっ、未羽! 何を⋮⋮﹂
顔を赤くして恥じらう香奈ちゃんに構わず、未羽は香奈ちゃんの
Tシャツの袖に両側から手を突っ込み、肩ひもを引き抜いた。
﹁やん! だめぇ!﹂
﹁大丈夫、Tシャツは脱がさないから﹂
未羽は胸を押さえる香奈ちゃんの手を引っ張って、肩ひもを外し
てしまった。続いて腹の方から手を入れ、ブラを引き抜く。スリの
名人のような手際だった。
﹁も、もう! 未羽ぅ!﹂
﹁お兄ちゃんに我慢汁出させるためだよ、おとなしくして﹂
何でそんなことのために協力しなくてはならないのか。香奈ちゃ
んは陶然抵抗したが、未羽は再び腹の方からTシャツに手を入れ、
香奈ちゃんの巨乳を鷲づかみにした。
106
﹁きゃあっ!﹂
風呂でのじゃれ合いでツボを心得ているのか、未羽は慣れた手付
きで乳を揉みしだいた。薄いTシャツの生地越しに、香奈ちゃんの
巨乳がむにょむにょと形を変えるのが分かる。
﹁あんっ⋮⋮未羽、だめぇ⋮⋮!﹂
﹁ほらほら、お兄ちゃんが見てるよ。もっといやらしいとこ見せて
あげて﹂
未羽、お前! 香奈ちゃんに何てことを!⋮⋮いいぞ! 俺、完
全に無罪で鑑賞できるじゃないか! さすが俺の妹だ!
未羽はたっぷりと胸を揉んだあと、乳首攻撃に移った。指先でち
ろちろしたり、人差し指と親指で挟んでくりくりしたり。
Tシャツはめくれ上がり、おっぱいの下から三分の一が見えてい
た。未羽の執拗な攻めに、香奈ちゃんがくねくねと身をよじる。
﹁あんっ⋮⋮だ、だめぇ⋮⋮あっ、あっあぁ⋮⋮﹂
赤く染まった頬をして、唇を噛んで声を出すのをこらえようとす
るが、未羽のテクニックに翻弄されてしまっている。
ときおり俺に視線をやり、俺がじっと見つめているのを確認する
と、恥ずかしそうに眼をそらす。
おっぱいが直接見えなくても、恥じらう香奈ちゃんの表情だけで、
いくらでもおかわりできそうだった。
ああくそ、オナニーしてえなあ。
﹁香奈ちゃん、おっぱい舐めていい?﹂
おお、未羽! いいぞ! ナイスオフェンス!
﹁えっ⋮⋮? だ、だめぇ⋮⋮! 見えちゃう⋮⋮﹂
﹁お口で隠すから大丈夫だよぉ、舐めるね﹂
未羽がTシャツをめくり、ぱくっと乳首を咥えた。
未羽! Tシャツめくるとき一瞬乳首見えたよ! グッジョブ!
香奈ちゃんは巨乳だが、若いだけあって張りがあり、垂れずにま
ん丸い形をしている。
乳首は乳輪が大きくて乳頭が小さく、色は肌色に近いサーモンピ
107
ンクと、俺の好みにジャストミートだった。
﹁はんっ!⋮⋮み、未羽っ⋮⋮や⋮⋮あ、あはぁ!⋮⋮﹂
未羽はぱっくりと乳首を咥えている。きっと口の中では、舌が釣
り上げた小魚みたいに暴れ回っていることだろう。
香奈ちゃんは途切れることなく甘い声を上げた。頬が上気して、
真っ赤になっている。
未羽はたっぷりと乳首を舐めたあと、反対の乳房に口を移した。
って、未羽! 舐めてた方のおっぱい、Tシャツめくれっぱなし
だよ! 唾液に濡れた乳首が見えてるよ! グッッッジョブ!
香奈ちゃんは気づいていないようで、眼を閉じてしきりにあえい
でいる。
未羽はおっぱいをしゃぶりつつ、もう一方を手で揉み出した。⋮
⋮未羽、見えてるの絶対気づいてるよね!?
香奈ちゃんのおっぱいは本当に大きくて柔らかくて、未羽がぎゅ
っとつかむと指が埋もれてしまうほどだった。いいなあ、未羽。俺
も触ったりしゃぶったりしてえ。
未羽がちゅぽんと乳首を離した。素早くTシャツを下げ、おっぱ
いを隠す。
息もたえだえな香奈ちゃんは、おっぱい丸出しだったことに気づ
いた様子はない。
﹁気持ちよかった? 香奈ちゃん? お兄ちゃんのおちんちん見て
みよっか﹂
﹁はぁ、はぁ⋮⋮え? ⋮⋮あ、うん⋮⋮﹂
我慢汁のことなどすっかり忘れていた香奈ちゃんが、ふらふらに
なりながら返事をした。
眉が八の字になってるよ。正直、もっとして欲しいんだろうなあ。
つーか、イキたいだろう。
﹁ほら、いっぱい出てるよ﹂
﹁⋮⋮本当⋮⋮へえ、触ってもいないのに⋮⋮﹂
本体の俺のことは気にせずに、ジュニア観察の感想を述べる二人
108
だった。
﹁ねえ、香奈ちゃん、射精するとこ見たくない?﹂
﹁えっ⋮⋮? う、うん⋮⋮見たい。でも⋮⋮どうやって?﹂
﹁香奈ちゃん、パイずりしてあげてよ﹂
﹁えっ!?⋮⋮パ、パイずりって⋮⋮ダ、ダメよ!﹂
未羽はベッドを降りると、タタッと俺の本棚に駆け寄った。
﹁えーと、あった!﹂
﹁あっ! み、未羽、それは⋮⋮﹂
棚の隅から未羽が取り出したのは、ドラッグストアの紙袋。中か
ら出てきたのは⋮⋮チューブ入りのローションでした。
昨日の朝、未羽のオナニー鑑賞をした俺は、ひょっとして近いう
ちに本番をしてしまうんじゃないか思い、学校帰りにドラッグスト
アへコンドームを買いに行ったのだ。
しかしいざ売り場へ着いてみると、避妊具を手に入れることによ
ってむしろ近親相姦のお膳立てをするような気がして、買うのをや
めたのだ。
その代わり、同じ売り場にあったローションは、何かの役に立つ
ような気がしたので買ってしまった。
結果は見事妹とセックスして中出しし、ローションは出る幕がな
かったという、ぐだぐだな結末だった。
﹁昨日、もう治ってるのにお兄ちゃんまたノール買ってきたのかな
ーって思って中見たら、ローション入ってるじゃん。お兄ちゃんこ
れどうするつもりだったの?﹂
俺は答えずに顔をそむけた。⋮⋮もう解放してくれよ、この羞恥
プレイ。
﹁香奈ちゃん、これ塗って、おっぱいでしてあげるんだよ。巨乳で
よかったね、香奈ちゃん﹂
﹁ダ、ダメよ! おっぱい見えちゃうじゃない!﹂
香奈ちゃんがTシャツの上から胸を押さえて叫ぶ。そりゃそうだ。
﹁大丈夫だよ、目隠しするから﹂
109
未羽はそう言うと、今度は俺のタンスをあさってバンダナを出し
てきた。
洗濯物を畳んだら自由に部屋に入ってタンスに入れていいという
のが我が家のルールなので、未羽はどこに何が入っているかだいた
い把握しているのだ。
未羽はバンダナを五センチくらいの幅に畳むと、俺の頭に結んで
目隠しした。
くそう、これでは何も見えないじゃないか︱︱って、見えるよ!
ゆるゆるだし幅も狭いから、目線を下げれば全然見えるよ! グ
ッッッジョブ! 未羽!
目隠しの隙間から覗いていたら、未羽と眼が合った。一瞬だった
けど、確かに眼が合ったのだが、未羽は素知らぬ振りで眼を逸らし
た。分かっててやってんな! こいつ!
﹁ささ、香奈ちゃん、脱いで﹂
﹁え? ええ!? ほ、ほんとにやるの⋮⋮?﹂
戸惑う香奈ちゃんに構わず、未羽はTシャツの裾に手をかけると、
一気にめくり上げた。
香奈ちゃんは素直にバンザイしてTシャツを脱がされてしまった。
豊かな胸がぷるんと揺れる。
﹁やんっ! ほ、本当に見えてないの⋮⋮?﹂
腕を組んで胸を隠す。
﹁キツく縛ったから大丈夫だよ。ローション塗るよ?﹂
未羽はチューブのフタを取ると、手のひらの上にローションをに
ゅる∼っと絞りした。手のひらを合わせ、両手に広げる。
﹁香奈ちゃん、手どけて。塗ったげるから﹂
﹁⋮⋮ほ、ほんとにしなきゃ、だめ⋮⋮? み、見えてない⋮⋮?﹂
﹁だいじょぶ! 未羽を信じて!﹂
大嘘つきだ、俺の妹⋮⋮。
そもそも友達の兄にパイずりをしなくてはならない謂われなどな
いはずだが、未羽の勢いに乗せられ、香奈ちゃんはおずおずと手を
110
どけた。
⋮⋮ボインって、本当にボイ∼ンって感じするから、ボインって
言うんだなあ⋮⋮。思わずそんな感想を抱いてしまうほど、香奈ち
ゃんは巨乳は見事だった。
その見事な持ち物に、未羽がローションを塗りつける。胸の谷間
は特に入念に。
お約束で乳首にぬりぬりすると、香奈ちゃんはくすぐったそうに
身をよじった。
﹁あ、あん⋮⋮未羽、ダメぇ⋮⋮﹂
﹁さ、塗れたよ、お兄ちゃんにパイずりしてあげて﹂
﹁ど、どうやるの⋮⋮?﹂
未羽は、俺の開いた脚の間に跪いて座るように言った。香奈ちゃ
んが従順にそれに従う。
﹁前屈みになって、おっぱいでおちんちんを挟むんだよ﹂
﹁こ、こう?﹂
香奈ちゃんは身をかがめ、両手でおっぱいを押さえ、俺のジュニ
アを挟み込んだ。
﹁うへぇ﹂
変な声が出てしまった。
ローションたっぷりのおっぱいでジュニアを挟まれるのは、想定
外に気持ちよかった。
それに加え、香奈ちゃんのダイナマイトおっぱいは俺の下腹部に
もべったりと押しつけられていて、その量感は驚嘆するものがあっ
た。
つきたての温かいお餅に餅取り粉をたっぷりと付けて乗っけたみ
たいだ。なんか突起物が当たってるんですけど、これ乳首ですか?
ハァァーーーーーン!
﹁上手だよ、香奈ちゃん。おちんちんをぎゅっと挟んで、上下にご
しごししてあげて﹂
﹁ま、前屈みキツいから、寝そべるね⋮⋮こ、こうかな⋮⋮?﹂
111
香奈ちゃんは俺の脚の間にうつぶせになって、上半身を上下させ
て一生懸命俺のジュニアをこすった。
ローションをたっぷりと塗った彼女の巨乳は、未羽の膣内を思い
出させるほど滑らかで柔らかかった。
﹁うっ⋮⋮うわぁ⋮⋮すっげえ気持ちいい⋮⋮﹂
﹁お兄さん⋮⋮き、気持ちいいです?﹂
言動はキツいが心優しい香奈ちゃんは、俺が感じているのが嬉し
いようだった。
初めてのパイずりなのにさらにペースをアップして、俺のジュニ
アをしごいてくれた。
﹁⋮⋮きゃっ! み、未羽⋮⋮!﹂
香奈ちゃんが叫んで後ろを振り向いた。
見ると、香奈ちゃんの短パンをずり下げていた。パンツも一緒に
だ。
﹁香奈ちゃん、パイずり続けてて。あたしが香奈ちゃんも気持ちよ
くしてあげるから﹂
半眼のいやらしい眼つきで未羽は言った。エロエロ大魔王の本領
発揮だ。
﹁ダ、ダメぇ⋮⋮!﹂
さっきから香奈ちゃんが制止してもガン無視の未羽は、すらりと
したおみ脚から躊躇いなく短パンとパンツを抜き取った。
香奈ちゃん全裸になりました! 俺の方からは下半身がよく見え
ないけど。
﹁あっ!⋮⋮やぁん!﹂
﹁ほら、続けて、香奈ちゃん。おちんちんが寂しがってるよ﹂
未羽が犬を﹁しっ、しっ﹂するみたいに手を振ると、香奈ちゃん
は眉を八の字にして、仕方ないなあ、といった風情でまたうつぶせ
になった。メロンみたいな巨乳で俺のジュニアを挟み、パイずりを
再開する。
⋮⋮何で香奈ちゃん、未羽の命令に従うんだろう?
112
普段はどちらかというと香奈ちゃんの方がお姉さんっぽいのに、
ベッドの上では未羽が主導権を握るようだ。⋮⋮うちの妹、何者だ?
﹁あっ!⋮⋮ふぅ⋮⋮﹂
未羽が香奈ちゃんのお尻に手を伸ばしている。股の間から手を入
れて、性器を触っているようだ。
﹁んっ⋮⋮あふっ⋮⋮あっ、ああん⋮⋮﹂
未羽の指先が巧みに快感を引きずり出し、香奈ちゃんはとめどな
くみだらな声を漏らした。
未羽に翻弄されながらも、香奈ちゃんは懸命に俺のジュニアをこ
すり続ける。
その姿は、理不尽な命令に隷属することで、逆に快感を得ている
ようにも見受けられた。
⋮⋮未羽、香奈ちゃんのことドSだって言ってたけど、ひょっと
してMなんじゃないの? おっとり未羽とクールな香奈ちゃんが、
ベッドの上では立場が逆転か⋮⋮エロ漫画の設定かよ。
﹁⋮⋮香奈ちゃん感じてるね⋮⋮すごい⋮⋮こんなにあふれてる⋮
⋮﹂
﹁やぁっ⋮⋮そんなこと言わないでぇ⋮⋮あふっ⋮⋮ああん⋮⋮﹂
うーむ、やっぱり未羽=S、香奈ちゃん=Mの構図か?
なんて冷静に分析したりしているけど、香奈ちゃんのパイずり気
持ちよすぎて、俺もうイキそうだったりする。
﹁か、香奈ちゃん⋮⋮お、俺⋮⋮もう⋮⋮﹂
﹁ほら、香奈ちゃん⋮⋮お兄ちゃん、気持ちよくてイっちゃうって
⋮⋮香奈ちゃんも、一緒にイカせてあげる⋮⋮﹂
未羽は艶めかしい声でそう言って、空いてる方ので香奈ちゃんの
尻を撫でた。
香奈ちゃんの身体がビクッと震える。慌てて彼女は振り向いた。
﹁み、未羽っ! そ、そこは⋮⋮ちょっ、何を⋮⋮!﹂
﹁だめだよ香奈ちゃん、後ろ向いちゃ。続けて⋮⋮﹂
香奈ちゃんの慌て振りから、何か非常事態が起こっていることが
113
察せられた。
未羽は恍惚とした表情で、焦る香奈ちゃんを見返している。
⋮⋮え? まさか未羽⋮⋮。
﹁だ⋮⋮だめ! 汚いから⋮⋮! み、未羽! やめて!﹂
﹁香奈ちゃん、力抜いて⋮⋮﹂
うわ! 未羽、香奈ちゃんのアナルに指入れる気だ!
さっき尻を撫でてるように見えたのは、手に付いたローションを
アナルに塗り込んでいたんだ。
あそこを弄る手はそのままに、未羽がもう一方の手を股間に差し
入れる。香奈ちゃんが絶叫した。
﹁あっ!⋮⋮ああっ! ああああん! だ、だめっ!⋮⋮未羽ぅ⋮
⋮!﹂
﹁わあ⋮⋮意外とすんなり入っちゃった⋮⋮奥まで入れるね⋮⋮ほ
ら、香奈ちゃん、おっぱいがお留守だよ⋮⋮﹂
エロエロ大魔王キタ−−−−−−!!!!!
何こいつ!? ど変態じゃん、俺の妹!
香奈ちゃんは二穴攻めされて、あふ、あふ、って呼吸も苦しそう
にしながらも、うつぶせになってパイずりを再開しようとする。
何なの香奈ちゃん!? 未羽の奴隷なの!? どんな関係だよお
前ら!?
﹁ああっ⋮⋮はふぅ⋮⋮ああっ、はぁんっ!⋮⋮﹂
気持ちいいんだか苦しいんだか分からないような声であえぎなが
ら、香奈ちゃんは懸命にパイずりを続けた。
顔が真っ赤で、髪が乱れてて、眼は涙で潤んでいる。普段のクー
ルさからは想像できない乱れようだった。
俺フェミニストだからSっ気は絶対ないんだけど⋮⋮香奈ちゃん
の顔、エロすぎ⋮⋮。
﹁はあぁっ⋮⋮あふっ⋮⋮あっ⋮⋮あっ、も⋮⋮もう⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃん、イっちゃう? いいよ、もっと、もっとしてあげる
⋮⋮﹂
114
香奈ちゃんもイキそうだったけど、一足先に俺が絶頂に達してし
まった。
俺は自分の腹の上に盛大に放出した。そのまま昇天しそうな気持
ちよさだった。
俺が射精したのを見届けると香奈ちゃんはホッとした顔をして、
腹の上へ力尽きたように突っ伏した。香奈ちゃんの頬は精液でぬる
ぬるになってしまった。
イク寸前の香奈ちゃんは顔を上げることもできず、頬をどろどろ
にしながら、最後の大波を迎えようとしていた。
未羽が歓喜の表情で、ここぞとばかり指の動きを激しくする。
﹁香奈ちゃん! イって! イってぇ!﹂
﹁ああっ!⋮⋮あああああああああぁぁっ!﹂
ついに大波が押し寄せた。強く身体を強ばらせ、大絶叫して香奈
ちゃんはイった。俺の腹の上で、びくんびくんと身体を震わせる。
﹁⋮⋮あ⋮⋮あぁ⋮⋮あ⋮⋮﹂
肺の空気を残らず絞り出すように、最後の声が漏れた。大波が過
ぎ去ってからも、小刻みに身体が震えている。うわ、これひょっと
してイキっぱなし状態ってやつ?
しばらくして震えがおさまってからも、香奈ちゃんは動かなかっ
た。まだ息が荒いが、眼を覚ます様子はない。
⋮⋮香奈ちゃん、失神してしまった⋮⋮オーガズムで失神するな
んて、マジであるのかよ⋮⋮。
未羽はうっとりした顔で、気を失った親友を見下ろしていた。舌
を出して、指に付いたぬめりを舐めている。
エロエロ大魔王降臨せり、といった威容だった。⋮⋮オーラが黒
いよ⋮⋮。
﹁⋮⋮あんまり聞きたくないんだけど⋮⋮未羽、その指⋮⋮どっち
の方⋮⋮?﹂
﹁⋮⋮おまんこの方だよ⋮⋮さすがのあたしも、うんち舐めないよ
⋮⋮﹂
115
﹁そうか⋮⋮よかった⋮⋮未羽、このひも、ほどいてくれ⋮⋮﹂
☆
これで後日談は終わる。
眼を覚ました香奈ちゃんは未羽のことを怒ったけれど、信じられ
ないことにすぐ仲直りした。俺にはついていけない。
その後未羽は、宣言どおり俺とのエッチを封印している。
でもまだ、後日談から一週間しか経っていないしな。エロエロ大
魔王未羽様のことだから、これから何があるか分からない。
面白い話があれば、また報告するから、いったんここでお別れだ。
それじゃ、アディオス!
☆
116
︻後日談2︼エロエロ大魔王は我慢ができない
さっそく後日談その2ができちまったので、聞いてくれるかな?
未羽からエッチ禁止令から三週間が過ぎた。禁止令の翌日に香奈
ちゃんとあんなことがあったものの、それ以降肉体的な接触は一切
なしだ。香奈ちゃんとのときだって、結局未羽は服を脱いですらい
ないのだ。
このまま健全な兄妹の関係に戻るのかなあって思ってた、ある日
の夜の話。
俺はその日、課題もすませたので部屋で雑誌とか読んでのんびり
してた。
十時を少し過ぎたころ、控えめなノックの音がして、未羽だって
すぐ分かったから入るよう言った。
﹁お兄ちゃん、入るよー﹂
夏なので未羽は涼しげな色のタンクトップに、短距離走の選手が
着るような裾の短い短パンだ。⋮⋮露出が多くて、目の毒だよ。
悪戯っぽい笑みを浮かべている。何か企んでるのか?
﹁何だよ、ニヤニヤして?﹂
いつもはすぐベッドに腰掛けるのだが、今日の未羽は俺の前に立
って、こう言った。
﹁あのさ⋮⋮お兄ちゃん、健全な男子高校生なんだから、エッチな
本持ってるでしょ? てか、持ってない方が珍しいよね⋮⋮見せて
よ﹂
エロエロ大魔王らしい用だった。
﹁⋮⋮見せてって⋮⋮そりゃ持ってることは持ってるけど、見てど
うすんの? おかず?﹂
未羽の顔がボッと赤くなる。
117
﹁ち、違うよっ! と、年頃なんだから、そういう好奇心あるじゃ
ん! でもあたしの友達みんなおとなしいから、そんなの貸し借り
できないし⋮⋮お兄ちゃんなら持ってると思ったから、どんなもの
なのかなーって、ちょっと見るだけよ!﹂
必死でおかずではないことを主張する未羽だった。
﹁でもエロ本の用途ってそれ以外ないぞ。お前香奈ちゃんから﹃A
NGEL﹄もらって一晩で三回オナニーしたって言ってたじゃない
か﹂
﹁なっ、何でお兄ちゃんが知ってんのよ!?﹂
﹁お前言ってたよ、自分で、エッチしたとき⋮⋮お前ああいうとき
って何言ったのかも覚えてないのか﹂
未羽はしゅーしゅーと頭から湯気を出した。⋮⋮いまさら何が恥
ずかしいんだろう、こいつ?
﹁と、とにかく! あたしももう高校生なんだし、エッチな本の一
冊や二冊読んでも普通っていうか、むしろその程度の性知識は持っ
ていた方がいいと思うのよね!﹂
﹁お前の性体験に比べればおとなしいくらいだと思うぞ、俺が持っ
てるエロ本って﹂
﹁そ、そんなわけないでしょ! もう! 持ってるなら見せてよ!
早く!﹂
地団駄踏んで怒る未羽だった。仕方なく俺はイスから立ち上がっ
た。
ベッドの下から段ボール箱を取り出す。フタにはマジックで大き
く﹁月刊ベースボール﹂と書いてある。
﹁隠し場所、割とベタだね、お兄ちゃん﹂
それには答えず、俺は段ボールを未羽の方へ滑らせた。
一度はセックスした仲なんだし、いまさらこれは見せられるけど
これは見せられない、とか選ぶのもめんどくさい。
未羽はわくわくしながらフタを開けた。
﹁わ、ぎっしりだね⋮⋮へえ、﹃コスプレ妹野外露出﹄、﹃妹緊縛
118
調教﹄、﹃リトルシスター☆ラブジュース﹄⋮⋮ってお兄ちゃん!
妹モノ多すぎるよ!!﹂
未羽がちょっと引いていた。
﹁うん、まあ正直に言うけど、俺は妹モノを見るときは脳内でお前
に変換してるよ。つまり俺のおかずの大半はお前であって、もうお
かずと言うより主食だ﹂
﹁ロリコンやSM趣味よりタチ悪いよそれ! つーか隠そうよ当の
妹相手に! あたし身の危険を感じてきたよ!﹂
﹁身の危険って、お前すでに俺に処女奪われてるじゃん。でも俺お
前にエッチ禁止令出されてから、ちゃんと指一本触れてないだろ?
お兄ちゃんを信用しろ﹂
﹁メタ発言するけど、お兄ちゃん地の文で﹃妹をおかずにしたこと
はあんまりない﹄って言ってなかった⋮⋮? あれ嘘?﹂
﹁嘘だ﹂
﹁⋮⋮家で飼ってた猫が実は虎だったって気分だよ⋮⋮。んーと、
じゃあ、これとこれとこれ﹂
未羽はエロ雑誌二冊とエロ漫画一冊を選んだ。俺のベッドの枕元
にどさっと置くと、ごろんと横になる。ここで読んでいく気らしい。
断りもせず人のベッドに横になる妹だが、俺にとっては願っても
ないことなので、何も言わない。たっぷりと残り香をつけていって
ほしいものだ。
うつぶせになってエロ雑誌を広げ、一ページずつめくっていく。
俺はイスに座り直して未羽を眺めていた。
﹁⋮⋮わぁ⋮⋮おお、エロい⋮⋮あ、おちんちんもモザイク入るん
だ⋮⋮﹂
ぶつぶつと感想を述べながらエロ本を読書する未羽。眼が輝いて
るよ。
﹁⋮⋮ねえ、お兄ちゃん、これ何?﹂
﹁それは電マだ。電動マッサージ機。バイブが付いてて、普通にマ
ッサージ用として売られてるやつ﹂
119
﹁へえ⋮⋮うちでも買わないかな⋮⋮ねえ、これは?﹂
﹁それはアナルパールっていって、お尻の穴に入れてからゆっくり
引き抜いて、一個一個出てくる摩訶不思議な感覚を味わうものだ﹂
﹁えーっ? あたしは切れ痔が再発したら嫌だから絶対無理だな⋮
⋮お兄ちゃん、これは?﹂
﹁それは膣内視鏡といって、膣に挿入して中を観察する道具だ。元
は医療器具だよ﹂
﹁すごーい、お兄ちゃん何でも知ってるね。エロエロ博士だ﹂
⋮⋮エロエロ大魔王にエロエロ博士と言われてしまった。ダメだ
この兄妹⋮⋮。
﹁じゃ、この三冊借りてくね﹂
そう言ってベッドを降りた未羽に、俺はビシッと手のひらを突き
つけた。
﹁待て、俺のエロ本は持ち出し禁止だ。読むなら俺の部屋で読め﹂
﹁なっ⋮⋮何でよ!﹂
焦り顔をする未羽。こいつ、感情が丸分かりだなあ。ポーカーと
か弱そう。
﹁何でも何も。その本を持って部屋を出て、母さんとはち合わせた
りしたらどうする。
廊下で出会わなくても、例えばトイレに行った隙に母さんが部屋
に入ったら⋮⋮。
かようにエロ本を持ち出すのは非常に危険だ。よって持ち出しは
厳禁とする。
それとも何か? 持ち出さなくてはならない理由があるのか?﹂
未羽は顔を真っ赤にして、ウ∼∼とうなり声を上げた。
﹁わ、分かったわよ! ここで読めばいいんでしょ! ここで!﹂
ふくれっ面で未羽はエロ本を持ったままベッドにダイブした。
今度はエロ漫画を開く。タイトルは﹃妹は猫舌猫耳猫尻尾﹄だ。
妹に猫耳と尻尾が生えてきて、発情を発散させてやらないと耳と
尻尾が引っ込まないというストーリーだ。
120
萌え萌えの絵が可愛らしくて、俺のお気に入りの漫画だ。
エロ雑誌を読んでるときはページをめくるごとに質問していた未
羽だが、漫画を読み出すと静かになった。
絵もうまいけど、コメディとしても面白いんだよな。この漫画。
そしてこの漫画の最も素晴らしいところは、実用に十分耐えられ
るエロさを備えているところだ。
この作者はじっくりねっとりと女の子を恥ずかしい目に遭わせ、
羞恥心を最大限に引き出していく手腕に定評がある。
未羽は夢中でページをめくっている。そろそろ猫化した妹が発情
して、兄におねだりするシーンだな。
俺は未羽の横顔をじーっと観察している。
微かに喉が動いた。あ、生唾飲んだな、こいつ。ちょっと頬が桜
色になっている。
未羽はそーっと俺に横目を向けて、俺が見つめているのに気づく
と慌てて本に視線を戻した。
﹁ちっ⋮⋮﹂
舌打ちした! 舌打ちしたよ、うちの妹!
未羽は漫画を読み進めながら、わきに除けていた薄手の夏布団を
引っ張った。腰から下にそれを被せる。
俺はものも言わず布団をはぎ取った。
﹁なっ、何するのよ! お兄ちゃん!﹂
ほてった顔をして未羽が抗議する。
﹁俺の部屋では布団禁止だ。えーと、汗吸ったからそろそろ洗おう
と思ってたんだよ、この布団﹂
﹁﹃えーと﹄って言った! 今考えたでしょその理由! 布団貸し
てよ! 脚が冷えるの!﹂
﹁クーラーもつけてないのに冷えることあるか。とにかく俺の部屋
では布団禁止﹂
ぐぬぬぬ、と未羽は悔しそうな顔をした。しかしそれ以上は言い
返さず、再びうつぶせになって読み始めた。
121
シーンは猫耳妹と兄の濡れ場である。未羽は人差し指の第二関節
のとこを口に当て、切なそうな顔で読んでいた。
﹁⋮⋮お兄ちゃん、お兄ちゃんが好きな○○○○が出てるドラマ、
始まってるんじゃない? 小説が原作の﹂
﹁○○○○か。あれ第一話見たけど、主人公の妹が男に変わってい
たからもう見ない﹂
未羽が、はあぁ、とあきらめたようなため息をついた。
﹁そう⋮⋮じゃあ、もういいや⋮⋮﹂
ぼそっとそうつぶやくと、未羽はもぞもぞと動いて身体を上の方
へ移動させた。
ベッドサイドに本を立てかけ、左手で本が閉じてしまわないよう
に押さえる。
うつぶせでその体勢は苦しいので、未羽は俺の枕を引き寄せた。
海で遭難した人が流木を抱くような感じで、身体の下に敷く。
未羽は右手をゆっくりと腹の下へ潜らせた。手のひらの厚みの分、
ほんの少しだけ腰が浮く。
短パンの股の部分が、中に小動物でもいるように、もそもそと動
いた。
﹁⋮⋮んっ⋮⋮﹂
オナニー始めちゃったよ! こいつ! 俺の見てる前で!
未羽は股間をいじりながら、パラリとページをめくった。もう自
分の部屋モードじゃん!
﹁お、おい未羽! ここでするの!?﹂
未羽は俺の方を向いてから、ぷいっと顔をそむけた。
﹁お、お兄ちゃんが、いじわるするからだよ⋮⋮あたしがオナニー
したいの、分かってたくせにぃ⋮⋮あっ⋮⋮﹂
あわわ、ごめん、未羽。こんなつもりでは⋮⋮。﹁もう我慢でき
ない!﹂とか﹁いじわるしないで!﹂とか言ってくれば、笑ってエ
ロ本の持ち出しを許可するつもりだったんだ。
それがまさか、ギブアップする前に目の前でおっぱじめるとは思
122
わなかった︱︱ということを未羽に言えば、未羽は喜々としてエロ
本片手に自室に戻るだろうけど、俺は黙ってオナニーを見ていた。
まあその、棚ぼたっていうか。
﹁はうっ⋮⋮あっ⋮⋮んん⋮⋮﹂
未羽は30度くらいに脚を広げて、ちょっとだけ腰を浮かした。
短パンのお股の中では相変わらず指がうごめいている。
うわ、エロい、このポーズ⋮⋮。なるほど、未羽が頑なに四つん
這いを嫌がるのが分かるな。
腰を浮かしながら背を反らし、顔を上げるという苦しそうな体勢
で、未羽は漫画のページをめくった。
いや、めくったのではなく、ページを戻した⋮⋮こいつ、抜くと
こ決めたな。
それは、猫耳妹のあそこに兄が尻尾を突っ込んでいるシーンだっ
た。⋮⋮未羽、俺もこのシーン好きだよ。
﹁⋮⋮あっ⋮⋮あふぅ⋮⋮はあ⋮⋮﹂
未羽の声がだんだん切なさを増してきた。
⋮⋮あー、もー堪らん。俺もオナニーしていいよね? エッチ禁
止令出てるから、一応お伺いはたてておこうか?
﹁あの、未羽、俺もオナニーしていい?﹂
未羽は枕にあごをうずめた体勢のまま、横目を向けた。ジト目。
﹁⋮⋮人の部屋でオナニーしてるあたしが、部屋の主にオナニーす
るなって、言えると思う?⋮⋮はふ⋮⋮﹂
﹁ですよねー。ごめん、邪魔して﹂
許可が得られたので、俺は遠慮なくジャージとパンツを脱いだ。
ジュニアをギンギンにおっ立ててベッドに上がり、未羽の脚の間
に陣取った。
いつもながらすらりとしたおみ脚だ。ぺろぺろしたくなる。
しかし俺は自制心を発揮し、見るだけで指一本触れようとはしな
かった。ストイックな俺。
﹁⋮⋮あ、ああっ⋮⋮ふぅ⋮⋮あっ、あっ⋮⋮﹂
123
未羽のあえぎ声とおみ脚をおかずに、俺はジュニアをしごきはじ
めた。
あー⋮⋮気持ちいいなあ。セックスなんてしなくても、これで十
分だよ。
うん、兄妹なんだし、相互鑑賞オナニーくらいにとどめておくの
が健全だな。みんなも近親相姦しちゃダメだぜ?
﹁⋮⋮あはぁ⋮⋮あれ? お兄ちゃん、そこにいるの⋮⋮やだ、後
ろから見られるの、恥ずかしい⋮⋮﹂
﹁⋮⋮よく羞恥心残ってるよね、お前⋮⋮感心するよ﹂
﹁⋮⋮はぁっ⋮⋮あん⋮⋮もう⋮⋮うつぶせ、やりにくいなあ⋮⋮﹂
未羽は、俺を蹴らないように片脚を折り曲げると、ころりと仰向
けになった。脚を軽く開き、両脚の間に俺を入れてくれる。
結果として、﹁仰向けに横たわる妹の脚の間で膝立ちになり、ち
んこをこすっている兄﹂という間抜けな絵ができあがった。
﹁⋮⋮お兄ちゃんのおちんちん⋮⋮久しぶりに見る⋮⋮﹂
てなこと言いながら、未羽は短パンに両手を突っ込み、盛んに動
かしている。ときどき短パンの股のとこから指がちらっと見えた。
﹁⋮⋮お兄ちゃん⋮⋮あっ⋮⋮はぁっ、あん⋮⋮﹂
声を上げるだけでなく、未羽はくねくねと身体をよじりはじめた。
俺もさらに激しくジュニアをしごく。
﹁⋮⋮うん⋮⋮うぅ⋮⋮もう⋮⋮うー⋮⋮﹂
未羽のあえぎが、何やら不満げな声に変わってきた。眉を寄せ、
口を結んでいる。
あれ? どうしたんだ? オナニーの最中に不機嫌になるなんて、
らしくないな。
未羽は薄目を開けて、ちらちらと俺の様子をうかがった。何だよ、
いまさら見られてることが気になりだしたのか?
﹁もう! じゃま!﹂
突然未羽がガバッと半身を起こした。短パンの腰の部分に親指を
かけ、お山座りになってパンツも一緒にずり下げる。そのまま脚を
124
上げて、両方とも足首から引き抜いてしまう。
エロエロ大魔王様は、服を着たままの不自由な指使いでは満足で
きなかったらしい。脱ぐまではちょっと躊躇っていだが、そうと決
めたら潔い脱ぎっぷりだった。
未羽は下を全部脱いでしまうと、上半身を後ろに倒し、枕にぼふ
っと頭を据えた。ちょっとだけ脚を開く。
おまんこキタ−−−−−−−!!!!!
ああ、相変わらず、神々しく美しいなあ⋮⋮久し振りに拝めたぜ。
俺が感慨にふけっていると、未羽は両手をあそこに滑らせた。
また、ちらっと俺の方に視線をやる。頬が赤く染まっているとこ
ろを見ると、一応恥ずかしいらしい。こいつの羞恥心、いったいど
うなってるんだ?
右手の中指がスリットの奥へ潜り込み、左手がクリトリスをいじ
り出す。未羽お得意の二ヶ所同時攻撃フォーメーションだ。
﹁あっ! ああっ⋮⋮! んふ⋮⋮いい、いいよぉ⋮⋮﹂
呪縛を解き放たれた指が、激しく性感帯を刺激する。さっきまで
もどかしった分、快感が増しているようだ。
ちゅぶちゅぶといやらしい音を立て、中指があそこを出たり入っ
たりする。処女を失ってから指使いが激しくなってはいないだろう
か?
﹁⋮⋮ああっ! はうっ⋮⋮! あっ、はぁ、も、もう⋮⋮﹂
大波の到来に備え、未羽の身体が強ばっていく。指の動きがさら
にペースアップした。
おお、イキそうなのか、未羽⋮⋮お、俺も、もう⋮⋮。
﹁⋮⋮はぁっ!⋮⋮イ、イっちゃう⋮⋮あっ! あっ⋮⋮ああああ
あああぁぁ!﹂
未羽は弓なりに背を反らし、大声を上げて絶頂に達した。
俺もラストスパートをかけ、どぴゅどぴゅと白いものを放出する。
125
それはぴとぴとと未羽の下腹部や太ももに降りかかった。
未羽はいつもどおり、ベッドの上でくたっとなって賢者タイムを
迎えた。はぁはぁと息が荒い。
俺はジュニアを握ったまま肩で息をして、未羽のイったあとのエ
ロ顔を眺めていた。頬を赤くして汗ばんでいるところが、たまらな
く可愛い。
精液が流れ落ちてしまうと面倒なので、俺はティッシュを取って
未羽の身体を拭いた。
シーツに付くと落ちないんだよな⋮⋮全部未羽が受けとめてくれ
たようで、よかった。
﹁⋮⋮はぁ⋮⋮はふ⋮⋮よかったぁ⋮⋮ん? あ、お兄ちゃん⋮⋮
拭いてくれてるの?⋮⋮ありがと﹂
﹁俺の方こそ、久し振りに未羽の裸が見れて、嬉しかった。いつも
きれいだよ﹂
﹁お兄ちゃん、見るだけで手を出さなかったね。よく我慢できまし
た﹂
俺は苦笑しながら未羽の内股をティッシュで拭いた。こんなふう
にスリットを間近で見られることって、またあるのかなあ⋮⋮。
﹁ちょっとだけ触ってもいい?﹂
﹁だめ。その代わり、おっぱい見せてあげようか? 一瞬だけど﹂
﹁見たい見たい見たいです!﹂
未羽はTシャツをめくって、十秒間だけおっぱいを見せてくれた。
香奈ちゃんに比べれば発展途上な胸だけど、美しい曲線と可愛ら
しいピンク色の乳首は、イったばかりの俺のジュニアを再びギンギ
ンにさせるほど魅力的だった。
☆
後日未羽は、
﹁エッチな本を移動するときは紙袋とか中が見えない入れ物に入れ
126
て移動する。見るときは部屋に鍵をかけて、部屋を出るときは見つ
からない場所に隠す。だから持ち出し禁止を解除してください﹂
と、俺に申し入れてきて、親に見つからないための対策としては
完璧だったので、認めざるを得なかった。
そういうわけで、相互鑑賞オナニーはその後なくなった。順調に
真っ当な兄妹に戻りつつあるな、俺たち。エロ本の貸し借りはする
けど。
後日談その2は、これでおしまい。
本編より過激さがなくなってがっかりしてるだろうけど、勘弁し
てくれ。
エッチ禁止令は相変わらず施行中だけど、エロエロ大魔王未羽様
のことだから、エッチなエピソードがこれで終わりってことはない
だろう。
何かあれば報告するから、気長に待っててくれ。アディオス!
☆
127
︻後日談3︼兄妹の会話その2 正しくないプリクラの撮り方
後日談その3だよ。
全然エッチ封印してないじゃん、って呆れてる?
いやいや、エッチはしていないんだよ。今回は兄妹の会話を聞い
てほしいだけなんだ。
後日談その2から一ヶ月後、土曜日。
両親は用事で出かけていて、俺と未羽は一緒に昼食を摂っていた。
もちろん未羽の手料理。メニューはアサリとほうれん草のボンゴ
レ、水菜とトマトと生ハムのサラダ、素焼きのフランスパン、玉ね
ぎとパセリのコンソメスープと、今日は洋風だ。テーブルに彩り美
しい皿が並ぶ。
﹁未羽、旨いよ。もう店出せよ、絶対繁盛するよ﹂
﹁えへへ、ありがと。お兄ちゃん、美味しそうに食べてくれるから
嬉しい﹂
可愛いなあ、ああ結婚してえ。
﹁今日あたし香奈ちゃんち泊まりに行くね。三時くらいから﹂
﹁仲よろしいことで⋮⋮あのさ⋮⋮﹂
﹁何? 百合好きのお兄ちゃん﹂
﹁⋮⋮あのさ、お前たち⋮⋮エッチするの? 今日?﹂
未羽はパスタをチュルンと吸い込んだ。
﹁うーん、今日香奈ちゃんちご両親いるからなあ。たぶんしないと
思うよ?﹂
﹁あれ、そうなの?﹂
未羽がフォークを俺に向ける。
﹁お兄ちゃんさ、あたしと香奈ちゃんのこと誤解してるよ。ちょっ
128
と前のあたしとお兄ちゃんみたいに、ただれた関係じゃないの。会
うたびにエッチしてるんじゃないんだよ﹂
香奈ちゃんにエロエロ大魔王と呼ばれていた未羽が、意外な発言
をした。
﹁そうなのか⋮⋮正直意外だ﹂
﹁キスしてハグくらいはするよ? でも、それで満足なの。メイン
はおしゃべりしに行くんだから、あたし﹂
﹁へえぇぇ。未羽も女の子なんだなあ﹂
何だと思ってたのよ? と未羽は言って、フランスパンをちぎり、
パスタのソースを浸して食った。これがレストランでやってもマナ
ー違反でないことを教えてもらったのは、未羽だったな。
﹁でも、ご両親がいなかったらエッチするんだ?﹂
﹁そりゃ⋮⋮フラグは回収しないと⋮⋮﹂
﹁親留守=エッチフラグかよ⋮⋮ん?⋮⋮あれ? このサラダ、す
げえ旨いな!﹂
﹁⋮⋮ちゃんと味わってるんだね﹂
﹁このほのかな酸味が生ハムとオリーブオイルの重さを消して⋮⋮
何? この酸っぱくて細かいの?﹂
﹁未羽特製のセロリのピクルスを、細かく刻んで入れてるの。さっ
ぱりするでしょ?﹂
﹁ピクルス? 手作りできるの、それ? 普通キュウリじゃないの
?﹂
﹁ピクルスって要は酢漬けだから、スパイスさえ揃ってれば簡単に
できるんだよ。野菜なら何でもピクルスにできるよ﹂
俺はもうひと口サラダをほおばった。生ハムとドレッシングが強
く主張してくるのをピクルスが和らげ、軽やかに野菜と調和させて
いる。
﹁ボンゴレもすごく旨いけど、サイドメニューのサラダにもこのひ
と手間⋮⋮未羽、お前いいお嫁さんになるよ。嫁に行ってほしくな
いけど﹂
129
﹁それお父さんのセリフだよ。でも嬉しいよ、手間かけたの分かっ
てくれるから﹂
未羽は眼を細めて微笑んだ。⋮⋮胸がキュンとする。
﹁話を元に戻すけど⋮⋮エッチするときは、やっぱすごいことする
の、お前たち?﹂
﹁戻すんだ? すごいことって、どんなのよ?﹂
﹁してたじゃん、アナルに指入れたりとか⋮⋮﹂
未羽は頬を赤くした。あんなことしといて恥じらいが残ってると
ころがすごいと思う。
﹁あ⋮⋮あれは、あのときはちょっとフィーバーしてたじゃん⋮⋮。
いつもはもっと、優しーく、ソフトに⋮⋮です。あんなこともうし
ないよ﹂
﹁お前はちょいちょいフィーバーしそうな気がするんだが⋮⋮香奈
ちゃんお前のことエロエロ大魔王って呼んでたぞ﹂
﹁香奈ちゃんがそんなことを! くっ⋮⋮あ、あたしのイメージが
⋮⋮﹂
﹁イメージって、俺もエロエロ大魔王だと思ってるけど。まあ、あ
んまり香奈ちゃんが引くようなことはしない方がいいと思うよ?﹂
未羽は、ぶすーっとむくれた顔をした。
﹁お兄ちゃん、ちょっと手出して﹂
﹁ん? 何すんの?﹂
俺はフォークを置いて、右手を差し出した。
未羽は両手で俺の手を取り、テーブルの上に身を乗り出した。手
相でも見るのかと思っていたら、未羽は舌を出して俺の指を舐めた。
﹁ひゃっ!﹂
未羽はねっとりと舌を使い、フェラチオでもするように指を舐め
た。
﹁み、未羽⋮⋮! な、何を⋮⋮﹂
舌の感触はとろけるように柔らかくて、まるで性器に指を入れて
いるようだった。
130
何これ!? 指舐められるのってこんなに気持ちいいの!?
指先から微弱な電流でも流されてるみたいだ。くすぐったくて、
背中がぞくぞくする。
未羽は指の間を舐めたり、咥えてしゃぶったりと、変化をつけて
俺の手をねぶった。
指も性感帯のひとつなんだって、俺は初めて知った。
﹁⋮⋮ぷは﹂
俺の手をよだれだらけにして、未羽はようやく口を離した。俺の
ジュニアはもちろんギンギンだ。
﹁ね? 気持ちよかったでしょ?﹂
したり顔で未羽は言った。
﹁あ、ああ⋮⋮ちょっと、びっくりするくらいだった⋮⋮﹂
ちょっとどころじゃねえよ。絶対我慢汁出てるわ、俺。
﹁手だけじゃなくってね、背中とか、膝とか足の指とか。身体には
気持ちいいとこがいっぱいあるんだよ。アナルとか変なとこいじら
なくっても、いくらでも気持ちよくなれるの﹂
未羽は塾の講師みたいに解説した。なるほど、すげえ納得した。
﹁この前は勢いでフィーバーしちゃったけどさ、あたしと香奈ちゃ
んは基本スローセックスだよ。お話ししながら、まったりと時間か
けてエッチするの。
まあ、香奈ちゃんの身体で、あたしの指と舌が触れていないとこ
ろはないわね。えっへん﹂
偉そうに発展途上の胸を反らす未羽だった。
﹁おみそれしました⋮⋮。勉強になったよ、うん。眼からウロコだ﹂
﹁ふふふ、未羽がただの変態じゃないことが分かったでしょ?﹂
変態ではあるのか⋮⋮スルーしよ。
﹁じゃあ、あれっきり香奈ちゃんとアブノーマルなプレイはしてな
いんだ?﹂
﹁してないってば⋮⋮あっ⋮⋮お、お兄ちゃんはあたしのこと変な
目で見すぎなんだよ!﹂
131
﹁いま
あっ
って言っただろ! ﹁いっ⋮⋮言ってないもん!﹂
あっ
って!﹂
ぷるぷると頭を振る未羽。こいつの嘘の下手くそさは絶品だ。
﹁未羽、正直に言ってごらん。何したんだ?﹂
未羽は部屋で暴れて花瓶を割った子供みたいな顔をした。
俺はカップに入ったコンソメスープをずずっとすすり、未羽をじ
ーっと見てた。
未羽はぎこちなくフォークでトマトを刺し、口に運んだ。俺を見
返しながら噛んで、ごくりと飲み下す。
﹁⋮⋮⋮⋮先週の土曜だけど﹂
やっぱりしてた! しかしここは突っ込まず、フリーに話させよ
う。
﹁⋮⋮朝から香奈ちゃんとショッピングセンターに服見に行ったの
ね。
そしたらゲーセンがあって、早い時間だから誰もいなかったの。
服見る前に、すいてるうちにプリクラ撮ろうよって、入ったんだ﹂
﹁お前たちのことだから、ちゅープリとか撮ったんだろ﹂
﹁そりゃデフォだけど⋮⋮最初はね、ちゅっ、ちゅっ、てしてたの。
それから舌入れたんだけど、それだけで香奈ちゃん恥ずかしがる
のね。
画面にキスしてるとこ映るじゃない、そしたら真っ赤になっちゃ
って、すっごく可愛いの。
⋮⋮この話長いよ? 手短に話した方がいい? 詳しく?﹂
﹁詳しく﹂
未羽はパスタに入っていた鷹の爪をフォークですくい取ると、俺
の皿に放った。辛党なんだよ、俺。
﹁⋮⋮先に香奈ちゃんの着てた服を説明するね﹂
⋮⋮服の説明が必用なんだ⋮⋮。
﹁ミニスカートに、上はキャミで、その上からノースリーブのジャ
ケット着てたんだ。
132
香奈ちゃんが恥ずかしがるのがあんまり可愛かったから、ムラム
ラしちゃって、﹃香奈ちゃん、ちょっとスカート上げてみようか?﹄
って言ったの。
香奈ちゃん、最初は﹃えーっ!﹄って言ってたんだけど、顔真っ
赤にしながら、両手でスカートめくり上げるの。⋮⋮写真見たい?﹂
﹁あるの!? 見たい!﹂
俺の食いつきっぷりは猫まっしぐらだった。
未羽は小走りに二階に上がり、プリクラ手帳を取って戻ってきた。
表紙に手書きの大きなハートマークがあって、ハートの中に﹁秘
密﹂って書かれていた。⋮⋮エロプリ専用らしい。
﹁えーと、はい。他のページ見ちゃだめだよ﹂
未羽が手帳を開いて差し出す。鼻血が出そうになった。
名刺よりひとまわり小さいくらいの、プリクラにしちゃずいぶん
でかいサイズ。
香奈ちゃんは脚を内股にして、両手でスカートをめくっている。
パンツは薄いピンク色だった。小学生に悪戯してるような写真だ。
しかしパンツそのものよりも、頬を赤く染めた香奈ちゃんが、上
目遣いにカメラに目線を送っている恥じらいの表情の方が、遙かに
そそるものがあった。
AVのジャケ写じゃないからね、これ。リアル女子高生だからね。
﹁⋮⋮一枚くれ﹂
﹁あげない。でね、﹂
﹁続きがあるんだ!?﹂
﹁もうこのへんからあたしスイッチ入っちゃったんだけど、やっぱ
り香奈ちゃんと言えば巨乳じゃない?
パンツ撮っておっぱい撮らないなんておかしいって思ったの。
だから今度はキャミをめくり上げてもらおうと思ったんだけど、
そしたらパンツ見えなくなるから、先ずはスカートを脱いでもらお
うと﹂
﹁何その演繹から導き出される結論?﹂
133
﹁あたしがスカートのホックとファスナー外したら、香奈ちゃんび
っくりした。
﹃み、未羽! 何するの!?﹄って言うんだけど、あたしは﹃大
丈夫、外からは足下しか見えないから。それに覗く人なんかいない
よ﹄って言って、スカートを下げたの。
香奈ちゃんは焦ってスカートを上げようとするんだけど、あたし
は離さないで、﹃ほら、香奈ちゃん、足上げて。外からスカート見
えちゃうよ﹄って言ったら、観念して足を上げてくれた﹂
﹁そしてスカートを抜き取ったと⋮⋮﹂
﹁そう。そうして、おっぱい撮るからキャミめくってって言ったん
だけど、恥ずかしがってめくろうとしないのね。
だからあたしが香奈ちゃんジャケットの前を大きく開いて、キャ
ミをめくったの。その写真が、これ﹂
俺はもうほとんど飯を食い終わっていて、皿に残ったソースをパ
ンで拭って食っていた。
写真見てパンを吹きそうになった。
下はパンツ一枚の香奈ちゃんが、後ろから未羽にキャミをめくら
れて、はち切れそうな巨乳を包んだブラを丸出しにしている。パン
ツとおそろいの薄いピンクだった。
おっぱいも魅力的だけど、お腹の白さにも目が眩んだ。
香奈ちゃんは顔をそむけて、でも横目でカメラを見つめている。
赤く染まった頬が恥じらいを感じさせて、ご飯何杯でもいけそう
な写真だった。
﹁あの⋮⋮マジでこの写真くれない? 千円でどう?﹂
﹁売らない。おかずにしたければあたしの部屋に来て﹂
﹁あ、それはいいの? ありがとう﹂
﹁⋮⋮妹の部屋へオナニーしに行くのに何のやましさもないんだね、
お兄ちゃん。でね、﹂
﹁まだ続きあるんだ!?﹂
﹁恥ずかしそうにしてる香奈ちゃん見てたら、もうスイッチ入っち
134
ゃって、
後ろに回ってブラのホック外したら、香奈ちゃん﹃きゃあっ!﹄
って叫び声上げた。
あたしが﹃香奈ちゃん、人が来ちゃうよ﹄って耳元で囁くと、ハ
ッとして口を押さえるの。
あのおびえた顔、ずぎゅーんってきちゃった﹂
﹁⋮⋮どSだね、お前⋮⋮﹂
﹁これでもう、ブラめくっちゃえばおっぱいぼよ∼んだよ。でもそ
うすると、パンツが野暮ったく感じてくるじゃない?
お兄ちゃん、香奈ちゃんもほとんど生えてないの、知ってたっけ
?﹂
﹁⋮⋮知ってる。この前、ちょっと見えた⋮⋮﹂
﹁ホック外されたから、香奈ちゃんは必死で胸を押さえてるのね。
その隙に、あたしはしゃがんでパンツを太ももまでずり下ろしたの。
香奈ちゃんは寸でのとこで叫び声をこらえて、﹃はぁっ!﹄って
息だけ漏らしたよ。
パンツ上げようとするのを羽交い締めにして押さえて⋮⋮モニタ
ー見たら、香奈ちゃん生えてないから、縦の線がばっちり映ってる
の。
その映像がすっごくいやらしくって、あたしは香奈ちゃんの耳元
で、﹃ほら、香奈ちゃんの割れ目映ってるよ。ゲーセンで裸んぼだ
よ、やらしいね⋮⋮﹄って囁くの。
香奈ちゃんビクッとして、そろそろと顔を上げてね。モニター見
ると、﹃⋮⋮いやぁ!﹄って言って、顔をそむけて⋮⋮何かあたし
濡れてきちゃった﹂
﹁やっぱりエロエロ大魔王だよ! お前!﹂
﹁お兄ちゃんプリクラ撮ったことある?
筐体が大っきいのでもさ、ビニールのカーテン一枚だけで仕切ら
れてて、それも膝上の高さまで空いてるんだよ。
香奈ちゃんそんなとこであそこ出してるの。あたしもう完全にフ
135
ィーバーしちゃって、いけるとこまでいかなきゃ気がすまなくなっ
ちゃった。
それで、おびえてぷるぷる震えてる香奈ちゃん耳元で言ったの。
﹃⋮⋮香奈ちゃん、全部脱ごうよ⋮⋮全裸になろ﹄
香奈ちゃん、ビクッとした。
﹃⋮⋮なっ⋮⋮? だ、だめ! こんなところで⋮⋮﹄
﹃全部脱いで、一枚撮ったら許してあげる。早く終わった方がいい
? それともしばらくこのままでいたい?﹄
香奈ちゃん顔真っ赤で、眉八の字にしてすごく困った顔した。
迷うくらいなら言うこと聞かせようと思って、あたししゃがんで
パンツを足首まで下げたの。
香奈ちゃん﹃あっ⋮⋮﹄って言ったけど、もうあたしが全裸にな
るまで許さないって分かったんだろうね、外からパンツ見られたら
大変だから、香奈ちゃん急いで足上げてパンツ脱がされたよ。ロー
ファーと靴下履いたままの足からパンツ脱がすってのも、興奮する
ね。
あたしは香奈ちゃんのジャケットとキャミ脱がせて、最後にブラ
もはぎ取ったの。これですっぽんぽん。
プリクラの照明ってすっごく明るいの知ってる? 間接照明みた
いにほわっとしたライトがいくつもあってね、影もできないんだよ。
香奈ちゃんのすっごくきれいな身体がね、煌々とした光をいっぱ
いに浴びているの。
肌真っ白でさ、天使みたいだったよ。胸から腰へ、そしてすらっ
とした脚にいたるラインは、もう天上界の美だよ。
そんなにきれいなのに、香奈ちゃん手で隠そうとするから、あた
し背中に回って腕を押さえたの。香奈ちゃん、羞恥のあまり卒倒し
そうだったよ。
その表情もぜひ残したいな、って思ったから、﹃香奈ちゃん、顔
上げて。一枚撮ったら終わりにしてあげる﹄って言ったら、もう香
奈ちゃん、何でもいいから早くお終いにしたかったんだろうね、お
136
ずおずと顔上げて⋮⋮モニター見たら泣きそうな顔してたよ。その
一枚が、これ﹂
未羽がプリクラ手帳を開いて差し出した。
見ていいものかどうか一瞬迷ったけど、断るにはあまりにも魅惑
的で、俺は手を伸ばした。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
香奈ちゃんの裸、きっれー⋮⋮。
少女らしさの残る肢体が、流麗な曲線を描いている。影もなく照
らされた肌は、雪のように白い。
でもって、おっぱいが、でかい⋮⋮。
よくこんなすらりとした身体にこんな大きな果実が実るものだと
思う。椰子の木かよ。
大きいのに張りがあって、乳首が上を向いている。香奈ちゃん十
六歳だっけ? 若いっていいなあ。
下の方に眼をやると⋮⋮香奈ちゃん高校生なのに全然薄いね⋮⋮
スリットばっちり写ってるよ⋮⋮エロい⋮⋮。
香奈ちゃんは、頬が赤く染まった顔を少し横に逸らしているけど、
それでも潤んだ眼をカメラに向けていた。泣き出しそうなその表情
から、こらえきれないほどの羞恥心が伝わってくる。
見てるだけで我慢汁が滲んでくる写真だけど、何がエロいって香
奈ちゃんの表情が一番エロかった。
﹁⋮⋮奇跡のような写真だね⋮⋮これ﹂
未羽が大きくうなずく。
﹁本当だよね−。身体の美しさといい表情といい、奇跡の一枚だよ。
もっと高級なカメラで撮って、大っきく引き延ばしたかったねー﹂
﹁香奈ちゃんしてみりゃ、そんなことされたらたまったもんじゃな
いけどな。まあ、この写真は世界中で撮られている野外露出写真の
中でも、十本の指に入る傑作だと思う﹂
﹁うんうん、あたしもそう思うよ。でね、﹂
﹁まだ続くの!? もう俺続き聞くのが怖くなってきたよ!﹂
137
﹁最高の一枚も撮れたことだし、もう香奈ちゃん解放してあげても
よかったんだけど、香奈ちゃん濡れてるかなーって、後ろからあそ
こ触ってみたのね。どうだったと思う?﹂
﹁⋮⋮怖くて濡れるどころじゃなかったんじゃねえの?﹂
﹁それがね、とろっとろ⋮⋮香奈ちゃんMなのかな? もう、あそ
この方から指に吸い付いてくるくらい﹂
﹁いやそれはねえよ吸い付いてるのはお前の指だよ﹂
﹁香奈ちゃん﹃あっ!⋮⋮だめっ﹄って言って、前屈みになって逃
れようとするんだけど、﹃香奈ちゃん、しゃがむと外から見えちゃ
うよ﹄って言ったらビクッとして、こう、胸を隠して身体を起すの。
あたし香奈ちゃんの前に回って、香奈ちゃんの背を壁に押しつけ
た。そうすると逃げられないでしょ。
あそこを触りながら、耳元で﹃香奈ちゃんのここ、とろとろだよ
⋮⋮お外で裸になって濡れるなんて、いやらしいんだ⋮⋮﹄って囁
くの。
香奈ちゃん真っ赤になって﹃そ、そんな⋮⋮﹄って顔をそむける
んだけど、それがもう可愛くって。
あたしあんだけ濡れてたら一分でイカせる自信あったから、これ
はもう最後までしてあげようと﹂
﹁プリクラの中でエッチしたの!? お前!?﹂
﹁最初からハイペースでクリトリスを弄ってあげたら、香奈ちゃん
やっぱりすごい感じちゃって、唇を噛んで必死に声をこらえてた。
あたしは香奈ちゃんが可愛くって可愛くって、べろちゅーしなが
らあそこを愛撫したの。
そしたらカーテンがペラって開いて女の子が﹂
﹁見られたの!? お前たち!?﹂
思わず大声を出してしまった。未羽はわざとらしく両手の指を耳
に突っ込んだ。
﹁⋮⋮声大っきいよ、お兄ちゃん。同い年くらいの縁なしメガネか
けた女の子がカーテンをめくったの⋮⋮気になるだろうから教えて
138
あげるけど、可愛かったよ。
その子は連れがいて、後ろ向いて﹃まりちゃん空いてるよー﹄っ
て声かけながらカーテンめくったのね。だから最初中に全裸の女の
子がいるの気づいてなくって、前向いて目が合ったら時間止まった。
あたし素っ裸の香奈ちゃんにキスしながらあそこ弄ってたからね。
ばっちり全部見られた。
その子は﹃ご、ごめんなさい!﹄って謝ってすぐにカーテンを閉
じたの。
香奈ちゃん一瞬放心状態だったけど、﹃⋮⋮み、見られた−!?﹄
ってパニックになったよ﹂
﹁⋮⋮お前たち、マズいって。店員でも呼ばれたら大事だぞ﹂
﹁あたしもそう思ったから、急いで香奈ちゃんが服着るの手伝おう
としたんだけど⋮⋮信じられないことが起きたんだよ、何だと思う
?﹂
﹁⋮⋮⋮⋮考えるのも恐ろしいから、続きを話してくれ﹂
﹁戻ってきたんだよ、その子。信じられないでしょ?
カーテンをちょっとだけめくって片目のぞかして、﹃あ、あの⋮
⋮すいません﹄って言うからあたしと香奈ちゃんビクッとして、﹃
な、何!?﹄って聞いたの。
そしたら﹃あ、あの、露出狂⋮⋮の方なんですか? あの、み、
見ててもいいでしょうかっ!?﹄って言うのよ。
あたしと香奈ちゃん、目が点。
その子続けて、﹃わ、わたし、同人でエッチな漫画描いているん
です! み、見られるのが好きなんでしたら、ぜひ見せてほしいで
す!﹄だって。必死な顔で言うの。
香奈ちゃんパニックになってたけど、あたしこの子は大丈夫だっ
て直感したから、すぐに﹃入って、早く!﹄って言ったの。
連れの子は﹃あ、あたしは⋮⋮﹄って躊躇してたけど、その子が
手を引いて引っ張り込んだ。ちなみにその子もすごく可愛かったで
す。
139
目隠し代わりにその子たちには出入り口側に立ってもらって、あ
たしは香奈ちゃんに向き直った。
続きをやる気だって分かった香奈ちゃんは、胸とあそこを隠して
ぷるぷる首振ってた。
﹃だめ! だめだよぉ、未羽⋮⋮﹄
眉八の字にして、涙目でそう言うの。あたしもう頭がショートし
てたから、そんな表情されるとよけい興奮しちゃって、香奈ちゃん
の手を押さえつけてキスしたの。
舌を入れながら横目で彼女たちの様子見たら、もう眼を皿のよう
にして見てた。
連れの子は気の弱そうな感じだったけど、その子も両手で口を覆
いながら眼を見開いて見てた。生唾飲む音が聞こえたよ。
唇を離すと香奈ちゃんはまだ嫌がって、﹃お願い⋮⋮! 未羽、
やめて⋮⋮﹄って言うんだけど、もうあとに引けないっていうか。
香奈ちゃん耳弱いから、あたし耳舐めながらあそこに手を伸ばし
たの。
クリトリス触ると、香奈ちゃんビクッと震えた。歯を食いしばっ
て、必死で声出すの押さえてた。
あたしは早くイカせてあげようと思って、ちょっと激しくクリト
リスを弄ったの。あの子たち﹃わあ⋮⋮すごい﹄とか言いながらか
ぶりつきで見てた。
香奈ちゃんはあそこを攻めはじめると観念したみたいで、抵抗や
めた。
でも見られてることはすっごい意識してたよ。香奈ちゃん、とき
どき薄目開けて、あの子たちがじーっと見てるのと眼が合うと、﹃
やぁっ⋮⋮﹄って言って顔を逸らすの。
香奈ちゃんがものすごく感じちゃってるの、あたし分かった。も
う、身体がびくんびくんしてたもん。香奈ちゃん恥ずかしいほど感
じちゃうんだよね。
あたしの見立てどおり、香奈ちゃん一分くらいでイキそうになっ
140
たから、指入れてあげたんだ。
香奈ちゃんが好きなとこをうにうにしたら、あたしにぎゅーって
抱きついてくるの。そのまま続けてたら、﹃⋮⋮あっ⋮⋮ああぁん
!﹄って声上げて、香奈ちゃんイっちゃった。
大っきな声だったけど、ゲーセンうるさいから誰にも聞かれなか
ったと思うよ。
香奈ちゃん力抜けちゃってへたり込みそうになるから、あたし慌
てて支えた。
ギャラリーの二人は顔真っ赤にして、ぽーっとしてたよ。
そのあと、二人にはとりあえずプリクラから出てもらって、正気
に戻った香奈ちゃんに服着せたの。香奈ちゃんちょっと怒ってた﹂
﹁そりゃ怒るだろ⋮⋮俺は何でお前たちの友情が続いているのが分
かんねえよ⋮⋮﹂
何で香奈ちゃんは未羽に絶対服従なんだろ? やっぱりドMなん
だろうか?
﹁あの子たちは逃げちゃったかなと思ったけど、プリクラ出たらち
ゃんと待ってたよ。
﹃あ、あの、ありがとうございました!﹄って、漫画描いてる子
が言うの。お礼言われてもね。
しっかり口止めしとかなきゃって思ってたんだけど、向こうから
﹃このことは絶対誰にも話しません! ツ、ツイートしたりはする
かもですけど、絶対にお二人の素性が分かるような情報は漏らしま
せんから!﹄って力説するのね。
この調子なら面倒なことになる恐れはなさそうだったから、すっ
ぱりここでさよならしようと思ったの。
そしたらその子、﹃ちょ、ちょっと待ってください!﹄って呼び
止めて、﹃あ、あの⋮⋮お二人の、その⋮⋮エッチは、とってもき
れいでした! あたし、感動しました!﹄とか言うんだよ。相当変
な子だよね。
それで、﹃も、もしよければ、メアド交換していただけませんか
141
!?﹄なんて言い出して、さすがにそれは遠慮したんだけど、手作
りの名刺渡されちゃった。
ツイッターとかブログとかのURLとか載ってたから見てみたん
だけど、本当にアニメ絵のエッチな漫画描いてた。絵上手だったよ。
ツイッターでは、﹃今日、女の子同士でキスしてるの見てしまっ
た。心が洗われるほどきれいだった﹄とか、顔文字入りでつぶやい
てたけど、エッチのことは触れてなかった。
あたしからはメールも送ってないし、ツイッターのフォローもし
てない。
⋮⋮うん、この話、これでお終い。最後までお付き合いいただき
ありがとうございました﹂
﹁⋮⋮おまえが隠そうとするだけあってすごい話だな⋮⋮でも未羽、
やっぱり人に見られるってのは危ないぞ。下手すりゃ警察沙汰にな
りかねない。
プリクラって女の子同士で撮るのが多いけど、カップルで来るの
もいるじゃん。男に見られたらどうするんだよ。おどされるかもだ
ぞ﹂
笑ってすませられる話ではなかったので、厳重注意しといた。
﹁うん、お兄ちゃんごめんなさい。あたしが軽はずみでした、反省
してます。もう金輪際、外ではしません。やっぱエッチはお家でま
ったりがいいよ﹂
﹁金輪際って、ずいぶん強い言葉使うんだな⋮⋮他にも外でしたこ
とあるのか⋮⋮?﹂
未羽が0.1秒くらい静止した。すぐに作り笑いを浮かべる。
﹁何言ってんのお兄ちゃん、あるわけないじゃん﹂
﹁お前いま一瞬フリーズしたろ!?﹂
そのあと未羽を問い詰めて、満員電車の中で香奈ちゃんを痴漢し
た話を聞いたが、それはイクまではできなかったそうだ。プリクラ
事件に比べるとインパクトが弱い話だったので、ここでは割愛する。
長時間に渡る会話で兄妹の親睦を深めたあと、俺と未羽は食器を
142
洗ってそれぞれの自室の戻った。
兄妹でのエッチ? ないよ。未羽は貞節な子なのだ。エロエロ大
魔王だけど。
番外編その3はこれでお終い。その4があるか分からないけど、
期待しないで待っててくれ。
それじゃ、アディオス!
☆
143
︻後日談4の1︼冬の寒い夜
後日談その4だよ。
ずっと続くんじゃねえかって思っただろうけど、これできっぱり
終わりにする。
惜しんでくれる人もいるかもしれないけど、最後にふさわしいエ
ピソードだから、ぐだぐだになる前にきれいに終わろうと思うんだ。
うちのおふくろは専業主婦で、週二回フラメンコ教室に通ってい
る。
親父は商社に勤めてて、接待や付き合いで飲みに行くことが多い。
要するに、夕時は両親が留守で、俺と未羽二人っきりなことが多
いわけだ。
でも全然エッチなことしてないぜ? この環境で誘惑に打ち勝つ
俺、偉いと思わない?
兄妹なんだから当たり前だろうだって? 俺の妹、アイドル級の
美少女でありながらエロエロ大魔王で、一回だけだけどセックスし
たことあるんだぜ?
そんな誘惑の塊みたいな存在と一つ屋根の下で暮らして、それで
も二度目の過ちを犯さない俺は、神父になれるんじゃないかと思う
よ。
まあ、エッチはしていないけれど、うちの妹はスキンシップが多
い。
ソファでテレビを見ていれば、隣に座って肩にもたれてきたりす
るし、お土産に甘いものでも買ってきてやれば、ハグしてほっぺに
ちゅーしてくれたりする。
それだけで十分満たされるっていうか、エッチな欲望はあるんだ
144
けど、むりやり襲って関係を壊してしまっては本末転倒だから、今
の距離を大事にしてる、ってとこかな。
☆
本題に入ろう。
冬のある日。部活を終えたおれは、スポーツバッグを手に校門を
後にした。
野球部の練習は厳しくて、外がどんなに寒くても汗まみれになる。
冬も深まり、最近は陽が沈むと急激に気温が下がるようになって
きた。乾ききっていない汗が、さらに身体を冷やす。
今日は冷えるなと思っていたら、家に着く前にちらほらと雪が降
ってきた。
風に揺られて舞い落ちる雪は、アスファルトの上ですぐに溶けた。
積もるような量ではない。肩や髪が濡れるだけで、あまりロマンチ
ックではなかった。
寒すぎて人通りもまばらな住宅街を、俺は早足で家へと急いだ。
☆
玄関を開けると、灯りは点いていたけれど中はしんとしていて、
誰もいないようだった。
おふくろと親父が今晩留守なのは聞いていたけど、未羽までいな
いのか。
灯りが点いているということは、いったん家に帰ったのだ。買い
物にでも行っているのか。
メールも来ていないし、すぐ帰るつもりなのだろう。香奈ちゃん
ちは近所なので、そこへ行っているのかも知れない。
気にせず俺は風呂に入ることにした。早く汗を流し、温まりたか
った。
145
☆
146
︻後日談4の2︼最後の、アディオス!
俺の入浴シーンなんか誰も興味ないだろうから割愛するけど、俺
は頭も身体も洗い終わって、シャワーで石けんを流していた。
そしたら突然浴室のドアが開いて、俺が振り返るよりも早く全裸
の未羽がバタバタと入ってきて、かけ湯もせず浴槽に飛び込んだ。
入浴剤を溶かした黄緑色の湯が、大きく揺れる。
﹁うゎ熱っつーい!! ひー!!﹂
勝手に風呂に入って勝手に叫んでいる妹だった。シャワーの音で
脱衣所に入るのも服を脱ぐのも気づかなかった。
うわ、何か顔が白いし、唇が紫色になっている。髪も、まだ湯に
つかっていないのにびしょ濡れだ。
﹁どうしたんだよ未羽? 外行ってたの?﹂
未羽は青ざめた顔で歯をかちかち言わせていた。
﹁あああ、雨! 雪が、雨になった!﹂
﹁そうか。どこ行ってたんだ﹂
﹁ココココ、コンビニ。そそそしたら、行くときは雪だったのに、
雪は夜更けすぎに雨へと変わっちゃって、それも結構降っちゃって
ずぶ濡れで風も強くって、北極点目指してるみたいだったよ! お
兄ちゃん洗面器取って!﹂
そうか、そりゃ災難だったな、といいながら俺は洗面器を渡した。
未羽は洗面器に湯を取ると、勢いよく頭からぶっかけた。はふー、
と大きく息をつく。
平静に話しているけど、俺はこの好機を逃すまいと、じっくり妹
の裸を観察していた。言わずもがなだけど、未羽の裸、きれいだよ。
﹁⋮⋮はあぁ⋮⋮ああ、寒かった⋮⋮お湯がちくちくする﹂
未羽はそう言って腕を撫でた。ようやく人心地ついたらしい。顔
147
にも血の気が戻っている。
﹁お兄ちゃんごめんね、急に入ってきて。でもあたし、凍死寸前だ
ったんだよ。あと一分遅かったら行き倒れてたよ﹂
﹁いいって。こうして久々に未羽の裸拝めたし﹂
﹁かけ湯もしてないし⋮⋮ごめん﹂
﹁いいって。俺未羽が一番風呂に入った後に浸かるのが楽しみなん
だから。むしろかけ湯なんかしない方がいい出汁が出るよ﹂
﹁⋮⋮ちょっと引くよ、お兄ちゃん⋮⋮まさか飲んだりしてないで
しょうね?﹂
﹁一回だけ飲んだけど、未羽の味しなかったからそれ以後飲んでな
い﹂
﹁昆布じゃあるまいし出汁出ないよあたし!﹂
﹁ところで、お兄ちゃんはお前が一番風呂に入った後、いつも陰毛
探しをしていたんだけど、全然見つからないからお前は陰毛が直毛
かパイパンかどちらかだと思っていた。パイパンだったな﹂
﹁⋮⋮ドン引きだよ、お兄ちゃん。でも命拾いしたからお礼言うよ。
お兄ちゃんがお湯湧かしててくれたから、未羽凍死せずにすんだよ﹂
﹁⋮⋮ありがたく思ってるんなら、ちょっとでいいからおっぱい見
せてくれない?﹂
恩を売るようであまりよろしくないなと思いながら、聞いてみた。
﹁見たい? いいよ﹂
意外にあっさりと未羽は言った。首まで湯につかっていた身体を、
ざばぁと水音を立てて起こす。
小さな肩と、初々しい曲線のおっぱいが露わになった。お湯に濡
れた肌が、浴室の明るい光を艶やかに反射する。
﹁⋮⋮未羽、相変わらずきれいだよ⋮⋮ギリシャ彫刻のようだ⋮⋮﹂
惚れ惚れとして俺は言った。
﹁芸術作品のように言うわりにはおちんちんビンビンだね、お兄ち
ゃん﹂
目線を俺の股間に落として未羽が言った。うーむ、正直すぎるぞ、
148
ジュニア。
﹁お前の身体が魅力的すぎるんだから、しょうがない。未羽、もの
はついでに、膝立ちになってくれると嬉しいんだけど⋮⋮﹂
未羽は小悪魔の笑みを浮かべた。
﹁あそこ見たいの? ダーメ。見たいんだったら、潜って見れば?﹂
そう言って、ちゃぷんと身体を湯に沈めた。よけいなことを言っ
たばっかりに、おっぱいまでお預けを食ってしまった。
俺はゆらゆらと揺れる湯面を見つめた。
ちくしょう、今日はゆっくり温まりたかったので入浴剤を入れた
が、失敗だった。湯面の揺れと湯の色で、未羽の身体がよく見えな
い。
⋮⋮入浴剤の入った湯の中で目を開けても大丈夫なんだろうか?
目にしみそうな気がするが、入浴剤で失明したなんて話聞かない
し、温度も体温より数℃高いだけなんだから、大丈夫だろ。
俺はバスタブのふちに手をかけた。
﹁お兄ちゃん?﹂
未羽は、本気で湯に潜るとは考えていなかったみたいで、俺が大
きく息を吸うとびっくりして眼を見開いた。
身を乗り出し、ざぶんと湯の中に頭を突っ込む。
おそるおそる薄目を開けてみた⋮⋮あれ? 意外と平気じゃん。
温度が体温に近いせいか、塩素たっぷりなプールで目を開けるよ
りも、むしろ楽なくらいだった。湯の色もほとんど感じない。
大丈夫と踏んだ俺は、ぱっちりと目を開く。顔を横に向けると、
未羽の可愛らしいおっぱいが目の前にあった。女だらけの水泳大会
のポロリ映像みたいだ。
俺は未羽の股間に向かって、さらに頭を深く潜らせた。
おお、見えた⋮⋮久しぶりにご対面する未羽のスリット。ああ、
いつ見ても神々しいなあ。
息の続く限り眺めてから、俺はざばっと頭を上げた。髪をかき上
げ、顔に付いた水を払う。
149
俺のスケベ根性をなめるなよ、と、ドヤ顔で俺は眼を開いた。そ
こには呆れ顔の未羽が︱︱のはずだった。
一瞬わけが分からなくて、俺は眼をしばたいた。
未羽は眉を寄せて、悲しそうな顔をしていた。突然の感情の変化
についていけず、俺は戸惑った。
⋮⋮え? 何? いつもの未羽だったら、この程度のことは冗談
ですむはず⋮⋮い、嫌だったのか?
俺が混乱しているうちに、未羽はますます悲しそうに顔をうつむ
けて︱︱すん、と鼻をすすった。目尻に浮かんだ涙を、そっと指で
拭う。
うわわわ! な、泣かせてしまった!
﹁み、未羽! ごめん、変なことして! あ、謝るから⋮⋮﹂
未羽は両手で顔を覆うと、くすんくすんと泣き出してしまった。
年齢=彼女いない歴の俺はどうしていいか分からず、天ぷら火事
でも起こったようにあたふたした。
﹁⋮⋮ぐすっ⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮ごめんね⋮⋮﹂
⋮⋮え? 何で俺が謝られるの?
ぽろぽろと涙をこぼしながら、未羽は途切れ途切れに話した。
﹁⋮⋮お、お兄ちゃん、眼、どうにかなっちゃうかもしれないのに、
潜ってまで⋮⋮
お兄ちゃんは⋮⋮こんなに⋮⋮こんなに、あたしのこと好きでい
てくれるのに⋮⋮﹂
どうも、未羽にとって入浴剤入りの湯の中で眼を開けるというの
は、失明の危険を伴う無謀な行為であるらしかった。いや、そんな
大それたことじゃないよ?
﹁あ、あたしから誘ってセックスもしたのに⋮⋮あたしは⋮⋮勝手
に、もうエッチしないとか⋮⋮お兄ちゃん、エッチしたいよね⋮⋮
? きっと⋮⋮。
あたしもしたいよ、本当は⋮⋮で、でも⋮⋮怖くって⋮⋮あ⋮⋮
あたし、エッチだから⋮⋮気持ちよくなっちゃうと、ブレーキ効か
150
なくなっちゃうから⋮⋮に、妊娠とかしちゃったら大変だし⋮⋮だ
から、怖くって⋮⋮。
お兄ちゃんの気持ち、無視して⋮⋮勝手に⋮⋮全部自分勝手で⋮
⋮﹂
ぽろぽろと涙をこぼしながら謝る未羽を、俺は呆然として眺めて
いた。
⋮⋮未羽、そんな風に思ってたのか⋮⋮。
そんなの、何も気にすることじゃないのに⋮⋮いつも冗談交じり
に俺にお預けを食わせていた未羽だが、それは罪悪感をごまかすた
めのポーズだったのだ。
心の中では俺に対するすまない気持ちが鬱積していたのだろう。
そんなの、兄妹なんだから、エッチなんかしなくて当たり前なのに
⋮⋮。
俺は泣き続ける未羽を、ぐっと抱き寄せた。未羽が俺の肩におで
こを押しつける。
﹁未羽⋮⋮バカだな。お前が俺に謝ることなんて、何もないのに⋮
⋮エッチなんかしてもしなくても、お兄ちゃんは未羽が大好きだよ﹂
﹁お兄ちゃん⋮⋮ふえぇ⋮⋮ふえぇぇん﹂
未羽は俺の背に腕を回し、ぎゅっと抱きついて泣いた。
肩に落ちる涙の熱さを感じながら、俺は未羽の頭を撫で続けた。
ひとしきり泣いてから、未羽はゆっくりと顔を上げた。
泣きはらして、まぶたまで赤くなった眼。未羽の泣き顔は、捨て
られた子犬のようにいじらしくて、俺の保護欲をかき立てた。
﹁⋮⋮お兄ちゃん、キスして⋮⋮﹂
未羽が眼を閉じ、顔を少しだけ上向ける。俺は黙って唇を重ねた。
久しぶりのキスだった。俺たちはむさぼるように、激しく舌を絡
め合った。
☆
151
︱︱このあとどうなったかというと、特段どうということはなか
ったんだよ。
激しくべろちゅーしたら、俺も未羽も満足しちゃって、二人で笑
い合った。
そのあと背中の流しっこはしたよ。
あ、手が滑ったって言って、おっぱい触ったりちんこ触られたり。
でもそんだけ。
その後の生活も、大きな変化はなし。
未羽のエッチ禁止令は多少緩和されて、服の上からおっぱい触っ
たり風呂を覗いたりするくらいでは、文句を言わなくなった。機嫌
のいいときはキスしてくれる。ソフトなキスね。
それだけで俺は十分満たされてる。いや本当に、十分すぎるよ。
絶世の美少女がノーブラでハグしてちゅーしてくれるんだよ? 物足りないって言ったら罰が当たるよ。
そういうことで、これ以上物語を続けても、先に話したこと以上
に過激な展開は待っていないから、みんなとはここでお別れするこ
とにするよ。
俺の素敵な妹の話を聞いてくれてありがとう。妹の親友の香奈ち
ゃんのことも。
俺も、未羽も、香奈ちゃんも、みんなも、全ての人が幸せである
ことを願うよ。
それじゃ、お別れだ。
これが本当に最後の、アディオス!
152
︻後日談5の1︼エロエロ大魔王はだいぶ溜まっているようです
︵前書き︶
一度完結宣言したこのシリーズですが、
作者本人のヒロイン愛により再開しました。
また読んでいただければ幸いです。
もう一つくらいエピソードを書く予定にしています。
気長にお待ちください。
153
︻後日談5の1︼エロエロ大魔王はだいぶ溜まっているようです
﹁でね、古着屋行ったんだけどさすがにスク水はなくて、でもそれ
っぽい色の水着あったから買ってきたんだ。今日は香奈ちゃんにそ
れ着せて、おっぱいとかおまんこのとこハサミで切り抜いて遊ぶの。
香奈ちゃんドMだから、きっとびしょびしょになっちゃうよ。ああ、
楽しみ、ふひひ﹂
土曜日の昼。オレは未羽とテーブルを挟んで昼食をとっていた。
未羽はさっきから止めどなくエロトークを繰り広げている。⋮⋮
どういう状況なのかは追って説明する。
昼食はキツネうどんである。油揚げだけでなくほうれん草も乗っ
ていて、一応栄養バランスは考慮しているようだが、料理上手な未
羽にしてはいたって質素なメニューだ。
しかし部活もやっている高校男子の俺にうどんだけではさすがに
足りないだろうと思ったのか、俺には鶏肉そぼろご飯がサイドメニ
ューで添えられている。未羽はうどんだけだ。
これは彼女にとっての戦闘食なのだ。今日は香奈ちゃんがうちに
泊まりに来るのである。
歳を取っても仲の良いうちの両親は、夫婦二人だけで一泊二日の
温泉旅行へ行っている。
エロエロ大魔王未羽様は、今宵大フィーバーする所存である。実
はここひと月あまり、諸々の事情で親友である二人はお泊まりがで
きなかったのだ。
当然エッチもできず、未羽の欲求不満は限界近くまで溜まってい
た。そこへ都合良く両親不在の予定が入り、未羽はすぐさま香奈ち
ゃんとお泊まりの約束を取り付けた。
154
香奈ちゃんももちろんその気である。二人は俺に声を聞かれるこ
とを気にしないので、今日は部屋の壁越しに夜通しあえぎ声を聞か
されることになるだろう。
未羽はこの日のために一週間前からオナ禁している。そのため脳
みそがすっかりピンク色に染まっており、口を開けばオマンコとか
クンニとかアナルとか、十五歳の女の子が発してはいけない単語が
機関銃のように飛び出してくる。
香奈ちゃんは三時頃うちに来る予定だ。まだ陽も高い時刻だが、
未羽がこの様子ではすぐさまベッドになだれ込む展開になるだろう。
久し振りのラブラブタイムに備え、食事はなるべく匂いが残らず、
腹にもたれないものを、ということで前述のキツネうどんである。
赤穂浪士も討ち入りの前にうどんで腹ごしらえしたという。コン
ディションもモチベーションも最高潮の未羽である。鼻息が荒い。
﹁お兄ちゃん、ローションあるでしょ? 貸してね。それともオナ
ニーで全部使っちゃった? あはは、うそうそ、残ってるでしょ?
お風呂でローションプレイしたり、香奈ちゃんのアナルに指入れ
たり、いろいろ使うからさ、よろしくね﹂
⋮⋮眼の焦点が合ってねえよ、こいつ。漫画なんかでよくある、
黒目がぼんやりした眼になってる。早く欲求不満を解消してやらな
いと精神に異常をきたすぞ、こりゃ。
﹁ローションは貸してやるからちょっと落ち着け。脳みそが発酵し
てるぞ、お前﹂
﹁え? あたしはいつもどおりだよ?﹂
﹁それがデフォなら退学になるぞ。お前今週学校で普通にしてたん
だろうな⋮⋮?﹂
マジで不安になってきた。優等生の未羽が放送禁止用語を連発し
はじめたら、学校で騒ぎにならないはずはないが⋮⋮。
﹁大丈夫だよお兄ちゃん。あたしちゃんとTPOをわきまえてるか
ら﹂
﹁そうか⋮⋮ならいいんだが﹂
155
﹁お兄ちゃん! TPOって、﹃乳首が・ピンク色の・おっぱい﹄
だねっ!!﹂
﹁﹃だね﹄って何だよ! ﹃だね﹄って!! 嬉しそうな顔で叫ん
でるんじゃねえ! TPOはTime・Place・Occasi
onの略だ! そんな卑猥な言葉の略じゃない!﹂
﹁おお、よく知ってるねお兄ちゃん。でも、OはOccasion
じゃなくてOpportunityとする場合もあるんだよ、知っ
てた?﹂
﹁う⋮⋮それは知らなかった。さすが、腐っても優等生だな﹂
﹁おぽちゅにてぃーって、何かエッチな響きだね﹂
﹁⋮⋮いや、まったくそんな感じはしないが⋮⋮﹂
﹁おまんこにおちんぽ入れて、出し入れするリズムに合わせておっ
ぱいをちゅーって吸ったりちゅぽんって抜いたりするの、水飲み鳥
みたいな動きで。それがおぽちゅにてぃー﹂
﹁意味を捏造するな! おまえ脳みそただれてるよ!﹂
ダメだこいつ⋮⋮早く何とかしないと⋮⋮。
未羽は俺の言葉など意に介さず、カン○ム・スタイルのメロディ
ーに合わせて﹁♪お・お・お・おぽちゅにてぃー!﹂とか歌いなが
らうどんをすすっている。
と、テーブルに置いていた未羽の携帯が鳴った。未羽が素早く取
り上げ、着信ボタンを押す。
﹁あ、香奈ちゃん? うん、お昼食べてるとこ。え? いいよいい
よ、かけ直さなくて。香奈ちゃん早く来てよー、あたし朝から楽し
みで⋮⋮﹂
嬉しそうに話す未羽。高校生でセフレがいるのはどうかと思うが、
仲が良いのはいいことだ。
﹁え? どうして⋮⋮﹂
満面の笑みだった未羽の顔が急に曇った。声色も重くなる。
﹁うん、うん⋮⋮そう⋮⋮そんな、謝らなくていいよ。そりゃ楽し
みだったけど、仕方ないじゃん。ゆっくり休んで。お見舞い行けな
156
いけど、メールするからね。うんうん、気にしないで。あったかく
して、ビタミンいっぱい取るんだよ。うん、うん、じゃあね、お大
事に﹂
未羽は通話を切って、携帯をコトリとテーブルの上に置いた。
どうやら香奈ちゃんが体調を崩して来られなくなったようだ。香
奈ちゃんを気遣って優しい言葉をかけていた未羽だが、顔が真っ青
になって、額に縦線が浮かんでいる。今にも倒れてしまいそうだっ
た。
﹁み、未羽⋮⋮大丈夫か?﹂
﹁⋮⋮⋮⋮昨日、ユウ君︵香奈ちゃんの弟︶がインフルエンザで陽
性出たんだって⋮⋮香奈ちゃんも朝から熱っぽくて、さっき計った
ら38℃あったって⋮⋮うつったの間違いないと思うから、しばら
く会えないって⋮⋮﹂
力なくつぶやく未羽の口から、煙のようなものが漂い出てきた。
﹁未羽! しっかりしろ!エクトプラズム出てるぞ!﹂
﹁⋮⋮な、何のためにあたし⋮⋮一週間もオナ禁して⋮⋮﹂
未羽はヘナヘナと力なくイスから滑り落ち、床に伸びてしまった。
慌ててそばに駆け寄る俺。お姫様風に抱き起こす。
﹁しっかりしろ! 未羽! こんなことぐらいで死ぬな!﹂
﹁⋮⋮こ、こんなことぐらいって⋮⋮あたし朝からおまんこびしょ
びしょで⋮⋮パンツ替えてたらキリがないから多い日用のナプキン
して⋮⋮そのくらい⋮⋮﹂
﹁仕方ないだろ、久し振りにオナニーしてすっきりしたらいいじゃ
ないか﹂
﹁⋮⋮オナニー⋮⋮一週間オナ禁して、オナニーするの⋮⋮? 意
味ないじゃん⋮⋮あたしって⋮⋮ほんとバカ⋮⋮﹂
﹁うわ、さ○かの名台詞吐きやがった⋮⋮でもしょうがないだろ、
相手がいないんじゃ﹂
﹁⋮⋮オ⋮⋮オナニーごときで、あたしのこのリビドーが解消され
るとでも⋮⋮﹂
157
﹁あきらめろよ⋮⋮まあ、お前さえよければ、俺が解消してやって
もいいんだが⋮⋮﹂
弱みにつけ込むようだが、本当にエッチしてやらなきゃ頭がおか
しくなってしまいそうな気がしたので、俺はそう言った。人助けだ
よ、人助け。
﹁⋮⋮ダ、ダメだって言ってるでしょ⋮⋮こういうことでなし崩し
的にエッチしちゃったら、いつまでたっても近親相姦から抜け出せ
なくなっちゃう⋮⋮﹂
意外に意志の強い妹だった。なら取るべき行動はひとつだ。
﹁分かった。じゃあ、部屋に戻ってオナニーしろ。このままお姫様
抱っこで連れて行ってやるよ。うどんはどうする?﹂
﹁⋮⋮もう要らない⋮⋮お兄ちゃん食べて⋮⋮﹂
未羽はそう言うと、眠るように眼を閉じて、俺の腕に身体を預け
た。俺は約束どおり未羽を抱っこして二階まで運んだ。
部活で鍛えた俺にとって、華奢な未羽の身体は大した重さではな
かったが、さすがに二階へ上がる階段は慎重に登った。未羽は俺を
信じ切って、大人しく抱かれていた。
未羽の部屋のベッドに、彼女の身体を横たえる。これで俺の役目
は終了だ。
﹁じゃあ未羽、いっぱいオナニーして、すっきりするんだぞ。そし
ていつもの未羽に戻ってくれ﹂
俺がそう言うと、未羽は微かに薄目を開いた。
﹁⋮⋮うん⋮⋮ありがとう、お兄ちゃん⋮⋮﹂
⋮⋮礼が言えるくらいは持ち直したようだな。俺は未羽の頭を軽
く撫でてやって、それから部屋を出た。
☆
158
159
︻後日談5の2︼未羽の謀略
俺はキッチンに戻って、飯の残りを食った。未羽のうどんは半分
くらい残っていて、それも全部食った。
一階にまで届くくらいのあえぎ声がすぐに聞こえてくるかと思っ
ていたが、意外にもそんなことはなかった。
自室に戻っても、壁越しに声は聞こえてこない。エロエロ大魔王
が声をひそめてオナニーすることはないと思うが⋮⋮どうなってる
んだろう?
ちょっと様子を見に行くか、とイスから立ち上がろうとしたとこ
ろで、ノックの音がした。
﹁お兄ちゃん、入るよ?﹂
ドアを開けて未羽が入ってくる。何だか変な顔をしていた。何と
いうか、可笑しいのを噛み殺して、無理に真面目な顔を作っている
ような、そんな顔だった。
﹁⋮⋮少しはしゃんとしたようだが、もうオナニーしたのか、お前
? 声もしなかったけど﹂
﹁え? あ、ああ、オナニーね。したわよ、もう。すっきりしたわ﹂
⋮⋮どもってるじゃん。相変わらず嘘が下手だな、こいつ。
﹁あのね、お兄ちゃん。あたし、頭がちょっと痛くって、頭痛薬飲
んだのよ﹂
﹁唐突だな。具合悪そうには見えなかったが﹂
﹁ほんとにちょっと痛かっただけなんだけど、お薬飲めば楽になる
かなーって思って飲んだんだけどさ。飲んだ後で、間違ってお父さ
んの睡眠薬飲んじゃったのに気付いちゃって﹂
俺は、部屋に漂う石けんの匂いに気がついた。シャワー浴びたの
160
か? こいつ。
﹁頭痛薬と睡眠薬なんて、間違うか? 普通?﹂
﹁は、箱が似てたんだよ。それで、あたしもうすぐ眠っちゃうから、
しぱらく起きないからね﹂
﹁それを言いに来たのか? 分かった、起こさないよ﹂
釈然としなかったが、俺がそう言うと未羽は胸を反らし腰に手を
当てて、教師が生徒に注意するような表情を作った。演技くせえ。
﹁い、いいこと? お兄ちゃん。あたしが寝てる間に、変なことし
ないでよ!﹂
ビシッと俺を指差す。︱︱ああ、なるほど。そういうことか。
﹁あ、あたしが睡眠薬で眼を覚まさないからって、いやらしいこと
しちゃダメだよ! 最近の睡眠薬の効き目はすごいからって、何し
ても絶対起きないからって、ふ、服を脱がしたり変なとこ触ったり
しちゃダメなんだからね! 分かった!?﹂
﹁ああ、分かった分かった。そんなに心配なら鍵かけといたらどう
だ?﹂
﹁へ、部屋の鍵は十円玉で開けられるし、お兄ちゃんがその気にな
れば簡単に入れるから、面倒だから開けておくわ! だからって入
ってこないでよ!﹂
﹁分かったってば。お前が寝ている間に、悪戯したりはしない。絶
対だ、約束する﹂
俺が断言すると未羽はちょっと困ったような顔をした。
﹁そ、そう? な、ならいいけど⋮⋮でも、そうは言っても、もし
お兄ちゃんが嘘ついて、あたしに何かエッチなことをしたとしても、
眠っているあたしに気付く術は、全く何もないのよね!
あたしが今日安全日だからって中出しされても、元通りパジャマ
を着せてベッドを整えてしまえば、証拠は何も残らないの! あた
しはお兄ちゃんの言葉を信用するしかないのだわ! だから信じる
わ! お兄ちゃんのこと!﹂
⋮⋮こいつ、今日安全日なのか。自分で言いやがった⋮⋮。
161
﹁ああ⋮⋮もう眠くなってきたわ。お兄ちゃん、あたし部屋に戻っ
て寝るね、おやすみなさい﹂
﹁ああ、おやすみ﹂
未羽は額に手を寄せて眠たそうなポーズを作ると、俺の部屋を出
ていった。
パタンと閉じられたドアに向かって俺が呆れた溜息をつくと、出
し抜けにまたドアが開かれた。血相変えた表情の未羽。
﹁わっ! な、何だよ!﹂
﹁お、お兄ちゃん! お兄ちゃんは約束守る人だから、絶対あたし
にやらしいことしたりしないと信じてるけど! やらしいこと自体
しないんだからこんなこと言う必要もないんだけど⋮⋮ア、アナル
はダメだからねっ!﹂
未羽はひと息にそう言うと、今度はバタンと乱暴にドアを閉じた。
☆
162
︻後日談5の3︼そういうことにしておいて
未羽が部屋を出ていってすぐに、俺は一階に降りてシャワーを浴
びた。身体を拭き、どうせ脱ぐので面倒だから、トランクス一丁で
二階に上がった。
未羽の部屋のドアノブを回す。鍵はかかっていなかった。未羽は
ベッドに横になっている。布団は被っていない。
顔をのぞき込むと、彼女は安らかな寝息をたてて⋮⋮全然安らか
じゃねえ。頬が赤くほてっているし、鼻息が荒い。めちゃめちゃ期
待してるじゃん⋮⋮。
お約束で、頬をつねってみる。反応なし。
鼻をつまんでみる。しばらく頑張って息を止めていたが、耐えき
れなくなって口を薄く開き、ぷはーと息を吐いた。⋮⋮面白れえ。
パジャマの上から乳首をツンとつついてみた。ビクッと反応する
が、眼は覚まさない。うん、薬がよく効いて、熟睡しているようだ。
顔が何だかむずむずしているけど。
俺は未羽の身体の下に両手を差し込み、うつぶせにひっくり返し
た。
﹁ひゃっ﹂
未羽がびっくりしたような声を出したが、うつぶせにされたまま
じっとしてる。当然だ、寝ているのだから、驚いたりするはずがな
い。
俺は未羽の腰を持って、ぐいっと上に引き上げた。四つん這い︱
︱っていうか、AVのジャケ写なんかでよくある、膝を立ててお尻
を高く突き出しているポーズができあがった。未羽が一番恥ずかし
がる格好だ。
163
﹁あ⋮⋮﹂
ちょいちょい声が聞こえるような気がするが、気のせいだろう。
きっと身体を動かしたので、息が漏れたのだ。
俺はパジャマのズボンを太ももまで引き下げた。可愛いパンツ姿
のお尻が露わになる。
﹁どれどれ⋮⋮おー、パンツ湿ってるなあ。割れ目に沿って筋状に
濡れてるぞー。外まで染みてるなあ﹂
わざと明瞭な声で俺は言った。未羽は寝ているのでもちろん反応
なし。でもパンツの湿った部分を指でなぞると、小振りなお尻がビ
クッと揺れた。
未羽はうつぶせでも息ができるように顔を横に向けている。のぞ
き込んでみると、顔を赤くして眉が八の字で、ひどく恥ずかしそう
な顔をしていた。
俺は未羽のパンツも下げた。いったん脚を伸ばさせて、パジャマ
と一緒に脚から引き抜いて脱がす。そうして俺は、もう一度腰を持
ち上げて尻を上げさせた。
﹁おー、お尻の穴もおまんこも丸見えだー。いい眺めだなあ﹂
﹁⋮⋮っ﹂
音にならない声を漏らし、未羽の顔がますます赤くなる。俺はお
まんこに指を添え、くぱあと広げた。ピンク色の襞が、てろてろに
濡れて光っている。
﹁うわあ、びしょびしょだあ。愛液が太ももまで垂れてきてるよ。
いやらしいなあ﹂
﹁やん⋮⋮﹂
おまんこに指を触れ、襞をなぞる。クリトリスや膣を刺激してい
るわけでもないのに、未羽の身体は電流を流したようにびくんびく
んと反応した。オナ禁の効果で相当敏感になっているようだ。
俺はあふれる愛液を指に掬い取り、アナルに触れた。未羽がビク
ッと大きく反応する。
中指で円を描くように、アナルに愛液を塗りつける。恐怖におび
164
えるように、未羽の身体が強ばった。
﹁よく寝ているようだし、アナルに指入れても気付かないんじゃな
いかなあ﹂
﹁⋮⋮や⋮⋮﹂
未羽の尻が逃げようとする。しかし、このポーズでわずかしか動
けない。俺はしつこくアナルを撫で続けた。
顔をのぞき込む。未羽のおびえた表情を見てS魂を満足させた俺
は、ここらで解放してやることにした。
﹁でも、切れ痔が再発したらかわいそうだからな。アナルはやめて
おくとしよう﹂
未羽が深い溜息をついた。すーっと身体から力が抜けていく。分
かりすいな、こいつ。
俺は未羽の尻を横に押して、仰向けに寝転がらせた。四つん這い
のままおまんこを弄ってもよかったのだが、せっかくの機会だし、
未羽の全身を堪能してからにしよう。
添い寝するように、未羽の隣で横になる。顔を俺の方へ向かせて、
間近でじっと眺める。
⋮⋮はあ、この距離で見てもどこにも欠点が見当たらねえなあ。
肌は赤ちゃんにみたいにしっとりすべすべだし、まつげは長くて、
ぴーんとしてるし。唇はリップもつけてないのに潤んでぷるんとし
てるし⋮⋮。
今日一日だけでも、この美しい妹を自由にできる幸せを神に感謝
しながら、俺は未羽に口づけた。
小鳥のように何度もキスして唇の柔らかさを確かめてから、俺は
舌を潜り込ませた。
﹁⋮⋮ん⋮⋮﹂
未羽は軽く息を漏らして、俺の舌を受け入れた。久し振りに味わ
う未羽の口内は、とろけるようだった。
情熱的に舌を絡める。未羽からは舌を絡めてこないが、俺の動き
に合わせて未羽の舌は小さくうねり、応えてくれた。うん、寝てる
165
けど、舌は敏感だからね、反応するよね。
たっぷりと妹とのべろちゅーを堪能して、俺は唇を離した。
﹁はふぅ⋮⋮﹂
未羽が吐息を漏らす。口の周りが唾液で濡れて、堪らなくいやら
しかった。
﹁ううう、未羽、可愛いーよー﹂
俺は未羽のほっぺやおでこにいっぱいキスをした。未羽は寝なが
らもまんざらでもなさそうな顔をしていた。
首筋にキスしたら、未羽が﹁あ⋮⋮﹂と小さく声を漏らした。こ
こは感じるらしい。
舌を出して首筋をつーっと舐めると、それに合わせるように未羽
は﹁⋮⋮はふぅ⋮⋮﹂と艶っぽい息を吐いた。
十五歳のくせに、こいつの身体開発されてるなあ⋮⋮。香奈ちゃ
んと二人でよほど熱心に研究しているんだろう。
俺はパジャマの上着のボタンを外しにかかった。一個一個、下か
ら順に外していく。すでに下半身は裸なんだけど、白い腹や胸の谷
間が顔を出してくると、あらためてドキドキした。
ボタンを外し終わり、俺はひとつ大きく深呼吸してから、パジャ
マをめくった。神々しく光を放つような、美しいおっぱいが姿を現
した。
﹁おお⋮⋮TPO︵乳首がピンク色のおっぱい︶だ⋮⋮﹂
﹁ぷっ⋮⋮﹂
俺が感動してつぶやくと、未羽が小さく吹き出した。気のせいだ
よね? 寝てるんだもんね?
片方ずつ袖を抜き、背中から上着を引き抜く。未羽、全裸になり
ました!
未羽の裸体を眺めながら、俺は感嘆の溜息をついた。何度見ても
見飽きることのない、均整の取れた美しい身体だ。
﹁はあああ⋮⋮未羽、きれいだよ⋮⋮お前の身体は、世界一、いや、
宇宙一だよ⋮⋮﹂
166
寝ているので聞こえるはずないが、俺は素直な感想を述べた。良
いことは口に出してちゃんと言った方がいい。未羽も心なしか喜ん
でるような表情してるし。
俺もトランクスを脱いで全裸になる。もちろん俺のジュニアはギ
ンギンである。
手を伸ばし、おっぱいを触る。未羽の身体がぴくっと反応した。
そのままおっぱいを揉みながら、俺は未羽の身体に覆い被さるよ
うにして、もう一方のおっぱいに口を付けた。
﹁あふ⋮⋮﹂
未羽がわずかに背を反らせる。今日は本当に敏感だ。乳首をレロ
レロと舐め回すと、抑えきれない声が未羽の口から漏れた。
﹁⋮⋮あっ⋮⋮あん⋮⋮んっ⋮⋮⋮⋮﹂
くすぐったそうに身をよじる。俺は手を下に伸ばし、未羽のおま
んこに触れた。
﹁はんっ⋮⋮﹂
電流が走ったように、鋭敏な反応を示す未羽。そこはもう洪水に
なっていた。
﹁⋮⋮あっ⋮⋮はうっ⋮⋮あっ、あっ⋮⋮﹂
粘液にまみれたクリトリスを指で転がすと、未羽はウナギみたい
に身をよじった。あえぎ声に熱がこもる。
そこで、俺はいいことを思いついた。未羽のスリットに指をはわ
せて、たっぷりと愛液をまとわせる。
みたらし団子みたいにとろとろになった指を、未羽の口元に持っ
て行く。
﹁未羽、これ好きだろ?﹂
指先で唇に愛液を塗りつけると、未羽は舌を出してそれを舐め取
った。
味で何だか分かったららしい。未羽は小さく口を開けて俺の指を
せがんだ。
人差し指と中指を、口の中に挿入する。未羽はアイスキャンデー
167
のように俺の指を舐めた。
﹁うわ⋮⋮久し振りの指フェラ、気持ちいい⋮⋮﹂
指をなめくじが這うような独特の感覚に、俺は呻いた。未羽は丁
寧に舌で指をなぞり、自分の愛液をすっかり舐め取った。
眼を閉じたままだが、未羽の表情が恍惚としている。ほんと、愛
液舐めると興奮しやがるな、こいつ。
﹁未羽、美味しかったかい? もっと欲しい?﹂
未羽はちょっと困ったような顔をして、首をちょっとだけ動かし
た。頷いたようにも、ただの寝相のようにも見えた。まあ、寝てい
る人に質問しても答えられるわけないのだが、肯定ということに俺
はした。
﹁もっと欲しいんだな? ちょっと待ってろよ⋮⋮﹂
俺は未羽の足下に移動した。未羽の脚を開かせて、正常位の体勢
になる。
勃起したジュニアを、未羽のおまんこにあてがう。未羽が﹁あ⋮
⋮﹂と小さく声を上げた。
深く挿入はせずに、亀頭だけおまんこに潜り込ませる。未羽の襞
は俺のジュニアを優しく包み込んだ。
﹁うっ⋮⋮未羽、気持ちいい⋮⋮﹂
﹁あっ⋮⋮はう⋮⋮﹂
亀頭だけ入れるつもりだったのだが、あまりに気持ちよすぎてジ
ュニアの半分まで入ってしまった。魔性の心地よさだ。
そのまま本番に流れ込んでしまいそうだったので、俺は慌ててジ
ュニアを引き抜いた。いかんいかん、せっかくの機会だ。もっとい
ろいろやって楽しもう。
狙いどおり、俺のジュニアはたっぷりと愛液をまとっている。俺
は身体を上下逆して、未羽の顔を跨いだ。男が上のシックスナイン
の形だ。
﹁ほら、未羽、おやつだよ−﹂
俺は反り返ったジュニアに手をそえて、未羽の口元に持っていっ
168
た。亀頭が唇に触れると、未羽は状況を認識したらしく、あーんと
口開けた。
腰を沈ませ、口の中へジュニアを挿入する。未羽は俺のモノを咥
えると、指フェラのときよりも激しく舐め回した。
﹁おっ⋮⋮おおお⋮⋮み、未羽、気持ちいい⋮⋮﹂
スーパーテクニシャン未羽のフェラは、声が抑えきれないほど気
持ちよかった。舌が、頬の内側の粘膜が、軟体動物のように俺のジ
ュニアを愛撫する。
してもらってばかりでは悪いので、俺は未羽の股間に顔を埋めた。
濡れたスリットに舌を伸ばす。
﹁⋮⋮もがっ⋮⋮むぐ⋮⋮﹂
クリトリスを探り当てて舐め回すと、未羽は身体を震わせて反応
した。口を俺のジュニアでふさがれているので、くもぐった声を漏
らす。
未羽が激しく感じているのが伝わってくる。一週間もオナ禁して
いたのだ。尋常でない感じ方だった。
未羽が苦しそうだったし、このままフェラを続けられるとあっと
いう間にイってしまいそうだったので、俺は未羽の口からジュニア
を引き抜いた。口を解放された未羽が、すぐに大きな声をあげる。
﹁あっ⋮⋮ああん! あっ、はあっ⋮⋮はんっ⋮⋮!﹂
顔中をぬるぬるにしながら、俺はクリトリスを舐め続けた。同時
に中指を膣内に挿入する。未羽の声がさらに一オクターブ上がった。
﹁ああっ⋮⋮いっ、いいっ⋮⋮あっ、ああん! はうっ⋮⋮あっ、
もう、もう⋮⋮﹂
未羽がシーツを鷲づかみにして引っ張るので、ベッドはめちゃく
ちゃになっていた。すごい力で未羽が身をよじる。
もうイキそうなのが、肌をとおして伝わってきた。うむむ、挿入
はまだだが、流れで一回イカせてやった方が良さそうだ。
俺はそう判断すると、舌と指のピッチを速めた。未羽がガクガク
と身体を震わせる。
169
﹁あっ! ああっ! お、お兄ちゃん⋮⋮イク⋮⋮もうイっちゃう
よおっ⋮⋮あはぁっ!⋮⋮ああっ!﹂
沖の方から、大きな大きな波が迫ってくる。未羽は絶叫して、そ
の波に呑み込まれた。
﹁あっ⋮⋮! ああっ! ⋮⋮あっ、あああああんっ!﹂
俺の身体が持ち上がるほど激しくを背を反らせ、未羽は絶頂を迎
えた。同時に、俺の顔に愛液とは違う粘度の低い液体がふりかかっ
た。
え!? これおしっこじゃないよね? ひょっとして潮ってやつ
? 未羽潮吹くの!?
俺がとまどっている間に、未羽は身体を急速に弛緩させ、空気の
抜けた風船みたいにだらりと横たわっていた。
未羽のおまんこから噴出した液体は、それほど多い量ではなかっ
たのと、上手い具合に脱ぎ散らかしたパジャマやトランクスにかか
っていて、ベッドのマットレスを濡らすには至っていなかった。
俺は未羽の身体の上からどき、ひざまずいて座った。
未羽は頬を赤く染めて、まだ荒い息をしていた。可愛らしいおっ
ぱいが、呼吸に合わせて上下している。汗ばんだ肌が、すさまじく
扇情的だ。
イった後の未羽って、本当にエロいなあ⋮⋮。
ティッシュで自分の顔についた潮を拭いながら、俺は心底そう思
った。未羽の股の辺りも拭いてやる。
未羽が潮を吹くとは知らなかった。香奈ちゃんは知っているのだ
ろうか? それとも今日はいろいろ特別だったから、初めてなのか
もしれない。
未羽は寝たふりを続けているから聞くことができない。急ぐこと
ではないから、日をあらためて聞いてみることにしよう。
そんなことを考えている間に、未羽の様子もだいぶ落ち着いてき
た。呼吸も静かになっているし、表情も緩んでいる。
⋮⋮つーか、ものすご幸せそうな顔してやがんな、こいつ⋮⋮。
170
何か悟り開いたような顔してるよ。久し振りにイケて、ひとまずス
ッキリしたらしい。
でも、エロエロ大魔王が一週間オナ禁してたんだから、この程度
じゃ満足しないよな。俺もまだイってないし、そろそろ第2ラウン
ドを開始してもいいだろう。
俺は再び未羽の足下に陣取って、彼女の両脚を高く上げさせた。
﹁え? ちょ、まだ⋮⋮﹂
未羽が﹁ちょっと待って。まだイったばかりだから﹂的なことを
言いかけたような気がするが、寝ているのだからそんなはずはない。
空耳だろう。ていうか、俺のジュニアももう爆破寸前で、待ってな
どいられないのだ。
俺は未羽の脚を肩にかけて、正常位で挿入の体勢に入った。
﹁⋮⋮あ⋮⋮﹂
未羽が眼を閉じたまま焦り顔をしている。
﹁未羽、ごめん、お兄ちゃんもう我慢の限界だ﹂
俺はジュニアの先端をおまんこにあてがい、ずぷずぷと沈めてい
った。柔らかな粘膜が、俺のジュニアを包み込む。
﹁あっ⋮⋮! だ、だめっ⋮⋮ああんっ!﹂
とろとろに潤った未羽のおまんこは、スムーズに俺のジュニアを
呑み込んだ。堪らない快感がジュニアから流れ込んでくる。
﹁あんっ!⋮⋮だ、だめぇ⋮⋮か、感じすぎじゃう⋮⋮﹂
⋮⋮はっきり喋ったような気がするが、寝言ということにしてお
こう。俺はゆっくりと腰を動かし始めた。未羽のおまんこはとろり
とやわらかく、腰を動かすとあまりの快感に何も考えられなくなっ
てしまう。
﹁あっ⋮⋮あっ、ああっ! はあんっ!﹂
出し入れを始めると、未羽は激しく声を上げた。眉を寄せて苦し
そうな顔をしている。感じすぎて気持ちいいどころじゃないのかも
しれない。
未羽の中は気持ちよすぎて、このままではあっという間にイって
171
しまいそうだった。
うう、こんなに早くイってしまってはもったいない。こういうと
きって、畳の目を数えて気を逸らすんだっけ⋮⋮? でも畳なんか
ないし。
﹁そ、そうだ⋮⋮おぽちゅにてぃーを⋮⋮﹂
俺は上半身をかがめて、未羽のおっぱいに吸い付いた。同時攻撃
を予想していなかった未羽が、﹁ひゃうっ!﹂と声を出した。
乳首をちゅーっと吸いながら、ジュニアを抜ける寸前まで後退さ
せる。
次に口の中を真空状態にしておいて、ちゅぽん、と乳首を離すと
同時に、ジュニアをずにゅっと奥まで挿入する。未羽が﹁はうっ!﹂
と声を上げた。
俺は水飲み鳥の動作でおぽちゅにてぃーした。ジュニアを出し入
れするリズムに合わせ、おっぱいを吸うのとちゅぽんと抜くのを繰
り返す。独自の解釈で左右のおっぱいに交互に吸い付くというアレ
ンジも加えた。
﹁⋮⋮お、おぽちゅにてぃー⋮⋮?﹂
未羽も俺の意図に気付いたようだ。ジュニアを勢いよく挿入する
タイミングで、未羽は大きな声を出した。
﹁あぁっ!⋮⋮⋮あぁっ!⋮⋮⋮あぁっ!⋮⋮⋮あぁっ!⋮⋮⋮﹂
餅つきみたいにリズミカルにおぽちゅにてぃーは続いた。
しかし、身長差がありすぎて、おっぱいめがけてかがむのが辛く、
長時間は続けられないことが判明した。く、首が痛てえ⋮⋮。
﹁み、未羽⋮⋮ダメだ⋮⋮身長差がありすぎて、おぽちゅにてぃー
できない﹂
﹁ぶはっ!﹂
未羽が盛大に吹き出した。口を波線にして笑いをこらえている⋮
⋮ように見えるけど、寝ながら笑うなんてあり得ないよね? 悪い
夢を見てうなされてるのがそう見えるだけかもしれない。きっとそ
うだ。
172
しかし、おぽちゅにてぃーのおかげで小休止を入れることができ
た。もう辛抱も堪らなくなってきたから、フィニッシュに向かおう。
俺は未羽に抱きついて背に手を回し、彼女の身体を起こした。対
面座位の体勢になる。
﹁あっ⋮⋮﹂
体重がかかってジュニアが奥まで入り、未羽が声を上げた。
おお⋮⋮初めての体位だけど、ジュニアが奥まで入って気持ちい
いぞ、これ。
身体を揺するようにして、ジュニアを出し入れする。正常位より
もジュニアへの刺激が強い。うわ、すげえ気持ちいい⋮⋮。
﹁あっ⋮⋮あんっ⋮⋮はあぁん!⋮⋮いい⋮⋮これ⋮⋮あっ、ああ
ぁん!﹂
未羽も感じているようで、きつく俺に強く抱きついてくる。胸か
ら腹までぴったりとくっつくので、肌が触れ合うのも心地よかった。
﹁あっ!⋮⋮あふぅっ⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮も、もう、あたし⋮
⋮﹂
絶頂が近づいているようだ。未羽はイったばかりでの挿入だった
から、ピークに達するのが早いのだろう。
俺ももう、限界が近づいていた。このままなら、二人一緒にイケ
そうだ。
﹁ああ、未羽⋮⋮き、気持ちいいよ、イクよ、イっちゃうよ俺⋮⋮﹂
﹁あふっ⋮⋮あんっ⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮い、一緒に⋮⋮﹂
何だか会話が成立しているようだが、気にしないようにしよう。
俺は未羽の身体を強く抱いて、ピストンのペースを上げた。股間
のあたりでじゅぽじゅぽといやらしい音がした。
﹁ああっ! あんっ! あ⋮⋮あっ、はあっ⋮⋮い、いい⋮⋮お兄
ちゃん、一緒に、一緒に⋮⋮﹂
﹁うう⋮⋮み、未羽⋮⋮お、俺、もう⋮⋮イ、イクよ!﹂
俺は全身で未羽を感じながら、彼女の中に大量に放出した。俺の
ジュニアはどくどくとポンプのように脈動して、精液を吐き出した。
173
﹁あっ⋮⋮ああっ! ああああああぁぁ!﹂
同時に未羽も絶頂に達した。未羽は爪を立ててしがみつき、俺の
背に五線譜のような爪痕を残した。痛かったが俺は男の意地で叫び
声を呑み込んだ。
﹁ああ⋮⋮はぁ⋮⋮はあぁぁん⋮⋮﹂
未羽の身体が急激に弛緩して、腕がだらりと垂れ下がった。俺は
そっと未羽の身体を後ろに倒して、ベッドに横たえた。
密着して激しい運動をしたために、未羽の肌はひどく汗ばんでい
た。胸の谷間には汗がたまり、おでこに濡れた前髪が貼りついてい
る。
それだけでもかなりエロいのだが、恍惚とした表情で口を半開き
にし、短距離走の後のような荒い息をしているその顔は、輪をかけ
てエロかった。
俺は半立ちのジュニアをにゅるりと未羽のおまんこから引き抜い
た。愛液に濡れててらてらと光っている。
未羽のおまんこもびちょびちょで、スリットからのぞいた襞が、
そこだけ別の生き物のよううねっていた。
﹁ん⋮⋮んん⋮⋮⋮⋮あっ、そうだ⋮⋮ん⋮⋮﹂
薄目を開けて桃源郷から戻ろうとした未羽だが、睡眠薬を飲んで
いることを思い出したのか、再び眼を閉じて寝てしまった。うん、
まだ薬が効いているようだ。
俺はティッシュでジュニアを拭い、未羽の身体も拭いてやった。
しかし、すぐにパジャマを着せてしまうのは惜しいので、俺は未
羽にキスしたりおっぱいを揉んだりしていた。
そんなことをしているうちにジュニアが復活してしまったので、
俺は未羽の嫌がるバックで第2ラウンドに突入した。寝てるときし
かできないからね、この体位。
その後もう一度同じ事を繰り返し、第3ラウンドは女性上位でフ
ィニッシュした。
結局未羽が4回、俺が3回の絶頂を迎えて、久しぶりの兄妹エッ
174
チは終了したのだった。
☆
175
︻後日談5の4︼賢者タイム
俺は未羽とのエッチの後シャワーを浴び、居間でくつろいでいた。
だらしない姿勢でソファに座り、ぼんやりとテレビを眺めている。
頭の中は未羽の裸体を反芻するばかりで、テレビの内容など入って
こない。
そのうちに階段を下りる足音がして、風呂から水音が聞こえてき
た。未羽が眠りから覚めて、シャワーを浴びているらしい。
しばらくしてドライヤーの音も止むと、未羽が居間にやってきた。
⋮⋮何というか、登山家が登頂に成功して下山したような、とて
も満足げな顔をしていた。肌が艶々して、エステ帰りみたいだった。
﹁おはよ、お兄ちゃん。あれ? 昼なのにおはようは変だね、てへ
へ﹂
眼を三日月にして笑う。最高に機嫌いいな、こいつ。
﹁その様子だと、よく眠れたようだな﹂
﹁うん、お兄ちゃんのおかげだよ、ありがとね﹂
未羽は俺の隣に腰掛けた。近い、っていうかゼロ距離である。身
体を傾けて、頭を俺の肩に乗せる。シャンプーのいい匂いがした。
﹁ぜーんぜん覚えてないんだけどね、すっごくいい夢を見た気がす
るの。もやもやがすっきりしちゃった﹂
﹁そりゃようございましたね⋮⋮オナニーは何回したんだ?﹂
﹁やだ、お兄ちゃん、乙女に向かってそんなやらしい言葉使わない
でよ。未羽、恥ずかしい﹂
未羽は頬に手を当てて首を振った。⋮⋮誰? この人?
﹁あ、そうだ、お兄ちゃん、未羽が寝てる間に変なことしなかった
でしょうね?﹂
176
こわい顔を作ってにらみつける。⋮⋮俺、この小芝居に付き合わ
ないといけないの?
﹁してねえよ。しないって言ったろ﹂
﹁ホントにホント? 神様に誓える?﹂
﹁軽々しく神に誓わねえよ。そうだな、冷蔵庫に入ってるガリガリ
君に誓う﹂
﹁あたしの貞操、ガリガリ君の価値しかないの!?﹂
眼を見開いて怒る未羽。しゃーねーな、とっておきを出すか。
﹁じゃあ、ハーゲンダッツのアイスに誓う﹂
﹁あんまり変わってないじゃない! ⋮⋮って、ハーゲンダッツ、
あるの?﹂
未羽が獲物を狙う猫の顔になる。
﹁あるよ。香奈ちゃんも来ると思ったから、バニラとストロベリー
と、抹茶とキャラメルだったかな? 買っておいた﹂
未羽がキスしてきた、口に。今しがたあんな事をしたばかりだと
いうのに、こういうシチュエーションだと新鮮にときめいてしまう。
﹁嬉しい! お兄ちゃん大好き! お風呂上がりで暑いからさ、一
緒に食べよ!﹂
未羽はピュッと走って冷蔵庫からアイスを取ってきた。バニラと
抹茶だった。
⋮⋮まったく、甘いもので簡単に釣れるな、俺の妹⋮⋮悪いヤツ
に騙されないか心配だよ。
二人でテレビ観ながら半分こしてアイスを食べた。未羽はひとく
ち頬張るたびに幸せそうな顔をしていた。確かにハーゲンダッツ旨
えけど。
﹁お兄ちゃん、テレビ変えていい?﹂
﹁ああ、いいよ﹂
つけっぱなしにしていた民放のバラエティ番組がつまらなかった
ので、未羽はリモコンでチャンネルを次々変えた。NHKの報道番
組でチャンネルを止める。
177
スーツを着たアナウンサーと解説者が、今後のTPP交渉の行方
について話し合っている。未羽はスプーンでアイスを口に運びなが
ら真面目な顔でそれを見ていた。
﹁お兄ちゃん、TPPどう思う?﹂
﹁は?﹂
え? 何? ここでTPP?
﹁あたしはね、確かに日本がグローバルに成長するには工業製品の
関税引下げが強みになるのは理解できるんだけど、今は経済成長よ
りも一次産業を充実させるべきだと思うんだよ。先進国で食糧自給
率が40%に満たないっておかしいよ。地球温暖化の影響で農畜産
業は今後不安定になっていく可能性があるし、将来を見据えたら当
面は国内の一次産業を保護して食糧自給の基盤を整備すべきだと思
うの。お兄ちゃんもそう思わない?﹂
﹁性欲が満たされたとたん賢者になってんじゃねえよ!! お前T
POを﹃乳首がピンク色のおっぱい﹄って言ってたろ!﹂
⋮⋮﹃女は子宮で考える﹄っていうけど、うちの妹は子宮に脳み
そがあるんじゃないかと思う⋮⋮。まあ、可愛いからいいんだけど
さ。
おわり
178
︻後日談6の1︼のりちゃん登場︵前書き︶
お待たせいたしました!後日談6です。
ご感想、ご評価いただけるとモチベーション上がります!
よろしくお願いいたします!
179
︻後日談6の1︼のりちゃん登場
土曜日、午後五時。
未羽は念入りに家を掃除している。今日は香奈ちゃんともう一人
の友達が泊まりにくるという。
両親は例によって不在だ。今日は22日で夫婦の日だというので、
二人で飲みに行っている。帰りは深夜になるだろう。
11月22日の﹁いい夫婦の日﹂だけにしてくれないかな⋮⋮毎
月記念日にするなよ⋮⋮。両親が不仲よりはいいけどさ。
﹁せっかく父さんと母さんがいないのに、いいのか? 香奈ちゃん
以外も呼んで? エッチできないぞ?﹂
ひょっとして3Pする気だろうか?
﹁いいのいいの。いい子だからさ、お兄ちゃんにも紹介するね﹂
そう言いながら未羽はレンジ周りをマジックリンで拭いている。
エッチより優先って、どんな子なんだろ?
☆
チャイムが鳴り、未羽は﹁あ、来た!﹂と言って飛んでいった。
かねよしのりこ
どんな子か興味あったので、俺も出迎えに玄関へ向かう。
﹁は、初めまして⋮⋮鐘良納子です。きょ、今日はおじゃまします
⋮⋮﹂
初めて見るその子は緊張気味にあいさつして、深々と頭を下げた。
180
第一印象は、大人しそうな子、だった。
身長は小柄な未羽よりもさらにリンゴ一個分低い。幼児体型で中
学生にしか見えない。
プラスチックフレームのメガネ、肩までの髪は、綿菓子みたいに
ふわっとしている。
顔はっていうと、造作は整っているんだけど、未羽や香奈ちゃん
のような人目を引く華やかさはない。かといって、それが悪いわけ
では決してない。花に例えるなら、タンポポのような雰囲気の子だ。
正直、ちょっと意外だった。リア充の未羽は、香奈ちゃん以外に
も友達を家に呼ぶことは多いのだが、類は友を呼ぶのか、明るく快
活な子が大半なのだ。のりちゃんみたいに大人しくて⋮⋮こう言っ
ては悪いが、地味な印象の子は、珍しい。
﹁こんにちは、おじゃまします、お兄さん﹂
香奈ちゃんも無表情とフラットな音声であいさつする。何つーか、
クールな香奈ちゃんとは真逆なタイプだな。未羽もふところが深い。
﹁のりちゃん、いらっしゃーい。さ、入って入って﹂
﹁あ、あの、これ、お土産⋮⋮﹂
紙袋を未羽に渡す。未羽は礼を言って受け取った。
﹁わぁ、お豆腐に納豆だ。こんなにいっぱい、ありがとう!﹂
未羽が紙袋から弁当箱サイズのタッパーを取り出す。半透明の容
器を透かして、納豆がぎっしりと詰まっているのが見えた。紙袋に
は﹁大豆鐘良﹂の文字が印刷されていた。
☆
未羽が夕飯ができたと部屋へ呼びに来たので、俺は階下に降りて
いった。
俺と未羽が隣同士、向かいにのりちゃんと香奈ちゃんというポジ
181
ションで、テーブルにつく。
食卓には小鉢に入った納豆と、土鍋に湯豆腐。それだけではさす
がにボリュームが足りないと思ったのか、汁は大豆とは関係ない具
だくさんの豚汁だった。
ゲストの土産を尊重したのだろうとは思うが、料理好きな未羽と
香奈ちゃんにしては、シンプルなメニューだった。この前なんかト
ムヤムクン作ったんだよ、この二人。インスタントじゃないよ、ち
ゃんと香辛料使ってだよ。
﹁美味しそう、いっただきまーす!﹂
元気のいい未羽につづいて、各々がいただきますを言う。
納豆の小鉢から手に取る。すでにタレと混ぜられているが、納豆
だけで、ネギも刻み海苔も入っていない。
⋮⋮いつもなら何かしらひと手間かけるのに⋮⋮今日、手、抜い
てね?
訝しく思いながら、先ずは納豆の味を見ようと、ご飯には乗せず
そのまま口に運んだ。
﹁⋮⋮ん、旨い﹂
ひと噛みして、そう思った。香りが良く、舌触りが滑らかだ。
続けて咀嚼する。噛むたびに、豊かな香りが口の中に広がった。
味が深い。大豆の旨味が粒の中にぎゅっと凝縮されているようだ。
大豆の畑が頭に思い浮かぶような、自然の恵みを感じる味だった。
口の中いっぱいに幸せが広がっていく。
﹁⋮⋮って、旨え! めちゃくちゃ旨え! この納豆!﹂
﹁良かったぁ、お兄さんのお口に合って⋮⋮﹂
のりちゃんが安心した表情で微笑む。何だよ、笑顔可愛いじゃね
えかこの子。
﹁美味しいでしょ、お兄ちゃん。のりちゃんのお家で作ってるんだ
よ﹂
﹁いや、旨いなんてもんじゃないよ、これに比べたらスーパーの納
豆は軍用レーションだ⋮⋮。紙袋に﹃大豆鐘良﹄って書いてあった
182
からそうじゃないかと思ってたけど、のりちゃん家で作ってるんだ﹂
なるほど、ネギや海苔を入れていない訳が分かった。そんなの余
計なだけだ。
香奈ちゃんが﹁ほら、お兄さんに解説してあげなさいよ﹂と促し
たが、のりちゃんは﹁え⋮⋮い、いいよ、食べてもらえただけで⋮
⋮﹂と恥ずかしがった。
今どきこんな内気な子も珍しいな。コンビニの前でウンコ座りし
てるJKにこのしとやかさを分けてあげたい。
未羽からも促されて、のりちゃんはやっと自己紹介を兼ねた解説
を始めた。
﹁⋮⋮わ、わたしの家は、﹃大豆鐘良﹄っていう、納豆と豆腐を作
る工場をやってるんです⋮⋮。両親が工場を経営してて、叔父さん
夫婦が埼玉の農場で有機栽培の大豆を育てています⋮⋮うちの製品
は、そこの大豆を原料に作ってるんです⋮⋮﹂
﹁銀座の一流料亭から注文が来るような、超∼高級豆腐と納豆なん
だよ。豆腐は一丁二千円、納豆はさっきのタッパーで三千円分くら
いあるんだから﹂
﹁そ、そんなにするの!? もらっていいのこれ!?﹂
俺も買い物したりするから、食材の相場は分かる。庶民が日常に
買える値段じゃない。
﹁⋮⋮い、いいんです、包装もしてないですし⋮⋮わ、わたし、自
宅兼工場⋮⋮あ、工場に直売店もあるんですけど、その移転で二ヶ
月前に転校してきて⋮⋮あんまりクラスに馴染んでなかったんです
けど、未羽ちゃんと香奈ちゃんが、隣のクラスなのに友達になって
くれて、それで、二人のつながりでクラスにも友達ができて⋮⋮未
羽ちゃんと香奈ちゃんには、とっても感謝してるんです⋮⋮﹂
﹁何で感謝なんかするのー。あたしたちの方がのりちゃんと友達に
なれて嬉しいんだからさ−。ねえ、お兄ちゃん、お豆腐も食べて。
美味しいよ﹂
未羽にすすめられ、俺はレンゲで湯豆腐をすくった。一丁二千円
183
という豆腐をよくよく観察してみるが、若干色が濃いような気がす
るだけで、変わったところはない。
取り皿に移し、ゆずぽんをちょっとだけかける。薬味に刻みネギ
が用意されているが、先ずは豆腐だけで食べてみよう。
熱々の豆腐を箸で半分に裂いて取り、息を吹いて冷ます。気が付
くと、三人の視線が俺に集中していた。⋮⋮食いづれえ。
あむ、とひと口に俺は頬張った。どっしりとした食感。豊かな香
りが鼻を抜ける。
﹁ぐは、旨え⋮⋮﹂
いつも食べている木綿豆腐よりもしっかりした弾力。噛みくずす
と、たちまち口の中が大豆の旨味で満たされていく。植物とは思え
ないほどの濃厚さだった。
畑や工場を見学したわけでもないのに、畑から大豆を収穫し、豆
乳を搾って型で固める工程が眼に浮かんできた。大地の恵みを感じ
る味だ。滋養が身体にしみこんでいく。
﹁う⋮⋮旨え⋮⋮これが豆腐なのか⋮⋮これに比べたら、俺が今ま
で食ってた豆腐は塩味のゼリーだ⋮⋮﹂
﹁わぁ⋮⋮ありがとうございます。そんな風に言ってもらえるなん
て⋮⋮﹂
胸の前で手を合わせ、心底嬉しそうな顔をするのりちゃん。⋮⋮
誰だこの子を﹁地味﹂なんて言ったやつ。すげえ可愛いじゃん。
それから、皆で納豆と豆腐を絶賛しながら箸を進めた。シンプル
なメニューだなんてとんでもない。身体が浄化されるような食事だ
った。
﹁のりちゃんには、夢があるんだよね﹂
湯豆腐を取りながら未羽が言った。のりちゃんが恥ずかしそうな
顔をする。
﹁はい⋮⋮わたし、大豆の素晴らしさを、もっと世の中に広めたい
んです。
大豆って、すごいんですよ。お味噌も醤油も大豆が原料ですし、枝
184
豆って、若い大豆なんです。他にも、きな粉に大豆油に豆乳とか⋮
⋮日本の食卓に欠かせない食材なんです。
わたし、将来は工場とお店を継ぐつもりなんです。叔父さんと協力
して、もっともっと素晴らしい大豆食品を作るんです。味噌造りは
今でも両親と研究中なんですよ。
だからわたし、卒業したら農大に進学して、たっくさん農業と食品
加工のこと、勉強しようと思ってるんです﹂
大豆のこととなると、一転して雄弁になるのりちゃんだった。眼
が輝いている。
俺は心から感動した。のりちゃんの小さな身体には、大きな夢が
いっぱいに詰まっていた。
﹁素晴らしい夢だ⋮⋮のりちゃん、応援するから頑張ってくれ。君
のような若者がいてくれたら、日本は安泰だ⋮⋮﹂
俺は手を差し出した。のりちゃんも手を伸ばし、俺たちは固い握
手を交わした。
﹁﹃君のような若者﹄だって。お兄ちゃん、おっさんみたいだよ、
ひとつしか違わないのに﹂
﹁⋮⋮ほっとけ。でも未羽、お前クラスも違うのによくのりちゃん
と友達になったな。きっかけは何だったんだ?﹂
未羽は口角を上げて得意げな顔をした。
﹁きっかけなんかないよ。クラス隣だから、廊下ですれ違ったりす
るじゃない。顔見てピーンと来たんだ、この子絶対いい子だって。
それであたしの方から話しかけたんだけど、その時は大豆のことな
んか何も知らなかったんだ。仲良くなるうちに、ちょっとずつ大豆
の話聞いて、香奈ちゃんと一緒にお店に連れてってもらって、お豆
腐と納豆食べてびっくりしたの﹂
﹁前情報なしにこの子の真価に気付いたのか⋮⋮何て人を見る眼が
あるんだお前は﹂
﹁えへへ、すごいでしょ﹂
得意げに胸を張る未羽。のりちゃんは照れて恥ずかしそうな顔を
185
している。
﹁わ、わたし⋮⋮家の手伝いしてるから、部活もしてないし、休み
の日もあんまり遊べないんです。前の学校のときも、なかなか友達
ができなくって⋮⋮。
未羽ちゃんと香奈ちゃんが友達になってくれたから、両親もすごく
喜んでくれてるんです。今日も、手伝いはいいから泊まって来てい
いよって⋮⋮わたし、お泊まりとか初めてだから、嬉しくって⋮⋮﹂
顔を赤らめるのりちゃんはとても愛らしかった。うちに住んでい
いよって言いそうになるのを、俺はかろうじて呑み込んだ。
☆
186
︻後日談6の2︼いやらしいことするなよ?
最高の食事の後、三人はキャッキャウフフしながら食器を洗い、
二階の未羽の部屋に上がった。
俺はリビングでテレビを見ていた。何だか身体の調子が良くなっ
た気がする。人間食い物が大事だなあ。
しばらくすると、未羽がリビングに降りてきた。お茶とお菓子の
補充に来たらしい。
未羽を待ち構えていた俺は、冷蔵庫をのぞいている彼女に声をか
けた。
﹁未羽、ちょっと⋮⋮﹂
﹁ん? 何? お兄ちゃん﹂
スイートワルツ洋菓子店の小箱を手に振り返る未羽。
﹁のりちゃんのことだけど﹂
﹁ああ、すごくいい子でしょ?﹂
﹁いい子も何も、日本の宝だよ、あの子は。お前あの子に⋮⋮﹂
﹁﹃いやらしいことするなよ﹄、でしょ?﹂
ちょっと驚いて眉を上げた俺に、未羽はしたり顔を返した。
﹁大丈夫だって。お兄ちゃん、あたしのこと何だと思ってるの?﹂
﹁エロエロ大魔王だと思ってるよ⋮⋮本当だな? あんなピュアな
子に手を出すなよ?﹂
﹁しないって。それについては、香奈ちゃんと協定できてるから。
のりちゃんは、大事に二人で見守っていこうって、そういうことに
なってるの﹂
﹁﹃大事に見守る﹄ってのがいまひとつハッキリしないんだが⋮⋮
それは、お前たちのエロエロレズビアンワールドに引き込まないっ
187
て意味に捉えていいんだな?﹂
﹁エロエロレズビアンワールドって何よ! もう⋮⋮そんなことし
たら、のりちゃん真面目だからものすご悩んじゃうよ。まあ、お嫁
に行くとき困らないように、最低限の性教育はしてあげようと思っ
てるけど﹂
﹁保健体育の授業で充分だろ! お前の性教育は代々木ゼミの東大
受験コース並に濃すぎるんだよ!﹂
﹁のりちゃん、カラオケも行ったことなかったんだよ? ウブ過ぎ
ると悪い男に騙されちゃうからさ、免疫程度にエッチな話するだけ
よ、免疫程度に﹂
最後に、﹁自分は妹の処女奪ったくせに﹂と言われ、俺はぐうの
音も出なかった。未羽はケーキとお茶のおかわりを持って二階に上
がっていった。
うむむ⋮⋮不安ではあるが、俺がどうこう言ったって、あの二人
次第なんだよな。二人とものりちゃんのことは大事に思っているよ
うだし、信用するしかないか⋮⋮。
心配するのは止めようと決め、俺はテレビを消し、二階の自室に
上がった。
☆
壁越しに女の子特有の高い声が漏れ聞こえる。何を言っているの
かは分からないが、のりちゃんの声も結構混ざっている。
大人しいのりちゃんだが、親しい友達とはおしゃべりがはずむら
しい。女の子だなあ。
この様子なら、心配していたエロエロレズビアンワールドになだ
188
れ込むことはなさそうだ。聞き耳を立てるような真似は止めようと
思い、オーディオをつけて音楽を流す。
俺は試験勉強をすることにした。再来週には期末試験が始まる。
うちの野球部の監督は文武両道が信念だから、下手な点数は取れな
い。
特に俺は次期キャプテンと目されているのだから、赤点を取らな
ければいいというものではない。部員の模範となるよう、上の下く
らいの成績はおさめなくてはならない。
ヨシ、勉強だ! 夢に向かって頑張っているのりちゃんを見習っ
て、俺も今やるべきことを精一杯やろう!
何だかすごいやる気が出てきた。俺はノートと参考書を机に広げ、
英語長文の読解に励んだ。
☆
二時間ほど経過した。今日は本当に試験勉強に身が入る。のりち
ゃんのおかげだ。
英熟語を単語帳に書き写していたら、突然勢いよく部屋のドアが
開かれた。
驚いて振り向くと、未羽がハァハァと荒い息をして立っていた。
頬が赤く染まり、さかりのついた犬みたいな顔をしていた。
﹁おい未羽、どうし⋮⋮﹂
質問する間もなく、未羽は俺のベッドにダイブした。一瞬でショ
ートパンツと一緒にパンツを脱ぎ、下半身裸になる。
﹁ちょっ!⋮⋮何だよ未羽!?﹂
﹁お兄ちゃんごめん! オナニーさせて! 三分でイクから!﹂
言うなり未羽は股間に指を這わせた。いつもはおっぱいからオナ
ニーを始める未羽だが、そんな悠長な状況ではないらしい。
189
﹁お、おい未羽! 何なんだよ!? お、お前まさかのりちゃんに
⋮⋮﹂
﹁してない! のりちゃんにはやらしいことしてないよ! だから
オナニーするの! 後で説明するから! ⋮⋮んっ⋮⋮ああっ⋮⋮﹂
未羽は早々と艶っぽい声を漏らしだした。見るとあそこがぐっし
ょりだった。俺の部屋に来る前から濡れていたようだ。
﹁あふ⋮⋮あっ⋮⋮あん⋮⋮﹂
クリトリスを弄りながら、もう一方の手の中指をスリットに潜り
込ませる。未羽得意の、クリと膣の同時攻撃だ。
それにしても、ペースが速い。もうすっかり身体の準備が整って
いたのだろうか、指を奥まで挿入し、激しく出し入れしている。
﹁ああっ⋮⋮いいよぉ⋮⋮あふっ⋮⋮気持ちいい⋮⋮﹂
よほどオナニーを我慢していたのだろうか。未羽は幸せそうな顔
をしてせわしくあそこをいじった。
﹁あっ⋮⋮いい⋮⋮あはぁっ⋮⋮も、もう、イク⋮⋮イっちゃう⋮
⋮﹂
未羽はあっという間に頂上にたどり着こうとしていた。宣言通り
三分以内でイキそうだ。
頂点を目指し、指の動きが加速する。俺はハッとして、隣に声を
聞かれてはならないと、オーディオの音量を上げた。
﹁あっ⋮⋮あぁっ⋮⋮あああぁぁぁん!﹂
弓なりに背を反らし、未羽は絶頂に達した。びくんびくんと身体
が震える。
﹁ふわ⋮⋮あっ⋮⋮あっ⋮⋮﹂
絶頂の波が過ぎ去ると、未羽はくたっと脱力した。真っ赤な顔で、
はぁはぁと荒い息をしている。
﹁お、おい、未羽⋮⋮﹂
とまどう俺が声をかけると、未羽は正気に戻ってカッと眼を開い
た。
ティッシュをまとめて引き抜くと、素早く股間の愛液を拭い、立
190
ち上がってパンツとショーパンをはき直した。
﹁お兄ちゃんごめんね、ありがと!﹂
未羽はそう言い残すと、残像が残る速さで部屋を飛び出した。ド
アを閉めることも忘れている。
俺は開け放たれたドアを見つめたまま、しばらく呆然と立ち尽く
していた。
☆
191
︻後日談6の3︼香奈ちゃんの悩み︵嘘︶︵前書き︶
※キャラの性格を鑑みて、香奈ちゃんが鐘良納子を呼ぶときの呼称
を﹁のりちゃん﹂から﹁のり﹂に変更しました。︵2014/8/
3︶
192
︻後日談6の3︼香奈ちゃんの悩み︵嘘︶
翌日。気持ちよく晴れた朝。
香奈ちゃんとのりちゃんは、朝食を食べてから帰った。香奈ちゃ
んはお泊まり慣れっこだが、のりちゃんは玄関で何度も俺と未羽に
頭を下げて礼を言ってからうちを後にした。いじらしい子だ。
玄関のドアが閉じると、急に静かになった。俺は未羽の肩にポン
と手を置いた。
﹁未羽、話がある。俺の部屋に来い﹂
﹁や、やましいことないからね!﹂
じゃあ何でどもるんだよ、って聞きたかったけど、俺は何も言わ
ず、部屋に向かい先に立って歩いた。
☆
﹁どういうことか聞かせてもらおう。昨日何があったんだ? お前
約束したよな? のりちゃんにやらしいことしないって﹂
未羽は俺のベッドに、俺はイスに座っている。いつものポジショ
ンだ。
未羽は口をとがらせてふてくされた顔をしている。
﹁⋮⋮全部話すわよ、やましいことないんだから。だからその尋問
口調止めて﹂
俺は溜息をついた。
﹁いきなり部屋に飛び込んで兄の前でオナニーおっぱじめた妹を信
193
じろっての⋮⋮分かった、信じてやるから、順を追って話してくれ﹂
未羽は俺の枕を引き寄せて、ぬいぐるみを抱くように抱いた。
﹁⋮⋮前振りがあるんだよ。一週間前の話からするね﹂
何か一気に不安になった。
﹁あたし、時々香奈ちゃんとのりちゃんと一緒にお昼のお弁当食べ
てい
るんだけどさ、ちょっと悪巧みしたの。香奈ちゃんがオナニーでイ
ケない悩みを抱えてることにして、それをあたし達に相談する体で、
のりちゃんのオナニー事情を聞き出そうと思ったのね﹂
﹁うわぁ、あの純真な子になんてことを⋮⋮﹂
﹁ちょうど、休み時間に男子が学校にエロ本持ち込んで回し読みし
てる事件があったから、その話題からの流れで、香奈ちゃんの悩み
相談に持って行ったの。
香奈ちゃんは、
﹃⋮⋮ベッドの中であそこを触るんだけど、突き抜けるような感じ
がなくって、たぶんイケてないんだと思う⋮⋮﹄
そう打ち明けたの。それから、深刻な顔して、
﹃わたし、不感症なのかな⋮⋮﹄
って言ったのね。香奈ちゃんのアドリブだったんだけど、これ効い
たね。のりちゃん優しいからすごく親身になって、そんなことない
よって励ますの。
それで、香奈ちゃんはあたしたちがどんな風にオナニーしてるか聞
いたのね。
あたしは、クリトリス⋮⋮って露骨な言葉は使わなかったけど、あ
そこの上の方を触るのと、指も入れるって話したの。
次はのりちゃんのターン。あたしと香奈ちゃんがじーっと見つめる
と、のりちゃん顔真っ赤にして焦った。
﹃⋮⋮わ、わたしは⋮⋮﹄
って言い淀んで俯いちゃったから、あたし、
﹃のりちゃん、あたしもしてるんだから、恥ずかしくないよ。香奈
ちゃんのためだから、頑張って話して。あ、それとも、したことな
194
い?﹄
って言ったのね。そしたら、俯いたままボソッと、
﹃⋮⋮し、したこと、ある⋮⋮﹄
って言うの。もう、可愛いったら。続けてどんな風にしてるか聞
いたら、
﹃⋮⋮み、未羽ちゃんと一緒⋮⋮あ、あそこの、上の方⋮⋮﹄
って、小っちゃな声で言うの。で、香奈ちゃんが
﹃上の方って、どの辺り?﹄
って聞くと、
﹃⋮⋮ほ、ほら、あるでしょ⋮⋮上の方に、丸い、お豆みたいのが
⋮⋮﹄
のりちゃんが﹁お豆﹂って言うのすっごい可笑しかったんだけど、
突っ込んだら可哀想だからスルーして、指も入れる? って聞いた
の。
﹃⋮⋮い、入れたことある⋮⋮ほ、ほんと、最近からなんだけど⋮
⋮﹄
だって。意外! のりちゃん、指入れオナニーしてました! 号外
出そうかと思ったよ﹂
﹁出すな。のりちゃん羞恥で死んじゃうぞ﹂
﹁で、香奈ちゃんが指入れてどうするのか聞いたのね。すると、
﹃⋮⋮さ、最初は、好奇心で入れてみたんだけど⋮⋮そんな、気持
ちいいことなくて⋮⋮でも、何度かやってるうちに、ちょっとだけ
奥に入れたら、急に気持ちよくなるとこがあったの⋮⋮﹄
のりちゃん、おでこまで真っ赤にしてそう言うの。あたしと香奈ち
ゃん、萌え死にしそうだった。
あたしが、
﹃うんうん、分かる。このくらい入ったとこの、上の方だよね﹄
って指で示したら、
﹃そうそう! 未羽ちゃん、一緒一緒!﹄
って、嬉しそうに言うの! 抱きしめたかったよ。オナニーの話な
195
んてしたことないだろうから、共感できて嬉しかったんだろうね。
そしたら、
﹃香奈ちゃんは、指、入れたことある⋮⋮?﹄
って、のりちゃんから聞くの。本気でカウンセリングモード。
﹃ううん、ない⋮⋮﹄
﹃そう⋮⋮でも、最初はお豆さんからだよね﹄
だって。のりちゃん、すっかりお姉さんになってるの。おまけに﹁
お豆さん﹂だって。あたしと香奈ちゃん、顔がぴくぴくしてたよ。
とっても恥ずかしいのに一生懸命オナニーの仕方教えてあげようと
するんだから、ものすごいいい子だよね。
あたしも香奈ちゃんも、このあたりからさすがに罪悪感感じはじめ
たんだけど、のりちゃんの口からエッチな言葉が飛び出すたび、何
だか新鮮にドキドキしちゃって、やめられなかった。
のりちゃん、あたしたちの様子がおかしいのに全然気づかないで、
カウンセリング続行。
﹃⋮⋮お、お豆さん触るときは、どんな風にしてるの?﹄
﹃え、えっと⋮⋮中指で、こするような感じで⋮⋮﹄
﹃どんな感じ? わたしの手にやってみて⋮⋮﹄
て言って、手を差し出すの。香奈ちゃんは、のりちゃんの手に自分
の手を重ねて、
﹃こ、こんな感じ⋮⋮﹄
って言って、中指で手の甲をすりすりするの。このとき、香奈ちゃ
んも頬赤くしちゃって、恥ずかしそうだったよ。自分のオナニーの
仕方、実演してるんだものね。
でものりちゃんはもっと詳しく聞こうとするの。のりちゃんも顔真
っ赤だよ。
﹃ふうん、わたしと一緒だね⋮⋮速さもこのくらい?﹄
﹃うん⋮⋮﹄
﹃ずーっと? 最後まで?﹄
﹃う、うん⋮⋮﹄
196
﹃そうなんだぁ⋮⋮﹄
するとのりちゃん、香奈ちゃんの手を取ると、逆に香奈ちゃんの手
に自分の手を重ねて、
﹃⋮⋮あ、あのね、はじめはこれくらいでしょ⋮⋮﹄
て言って、香奈ちゃんの手の甲を、中指ですりすりするの。ドキッ
としちゃった。香奈ちゃんも手をこすられながら真っ赤になってた。
﹃で、でね⋮⋮気持ちよくなってきたら、だんだん速くするんだよ
⋮⋮イ、イクときは、これくらい⋮⋮﹄
って、手の甲をしゅりしゅりしゅりってするの! もう、服着てる
のにのりちゃんのオナニーのぞいてるみたいで、あたしも香奈ちゃ
んも鼻血出そうだったよ!﹂
⋮⋮正直、俺のジュニアも破裂しそうなほどギンギンだった。の
りちゃんゴメン⋮⋮。
﹁のりちゃん、もう頭の上でお湯が沸かせそうなくらいポッポッっ
てなってたから、オナニー講座はこれで終了。香奈ちゃんは、
﹃ありがとう、おうちで頑張ってみるね﹄
ってお礼言った。
そのあと別れて午後の授業受けたんだけど、教室移動の時のりちゃ
んのクラスのぞいてみたら、まだぽわんぽわんしてた。友達とオナ
ニーの話したのがよほど衝撃体験だったんだろうね﹂
﹁そりゃそうだろ。あんな純な子なんだから、大事にしろって言っ
てるだろ⋮⋮で、ここまでが先週の話か⋮⋮てことは、昨日はもっ
とひどいことをしたんだよな⋮⋮﹂
俺の眼が鋭くなってきたので、未羽は慌てて弁明した。
﹁い、いやらしいことはしてないってば、のりちゃんには﹂
﹁﹃には﹄ってのが気になる! ﹃には﹄が!﹂
未羽は、口を波線にしてむくれた顔をした。
﹁何だ、その顔は? 昨日何があったか早く話せ﹂
なおも黙り続ける未羽。
﹁お前、やましいことないと言ってたじゃ⋮⋮﹂
197
﹁お兄ちゃん、あたしが何言っても怒らないって約束して﹂
俺の言葉に被せるように未羽は言った。
﹁⋮⋮そんなの、何があったかによるだろ﹂
﹁昨日のこと全部じゃないから。あたしが今から言うひとことにつ
いて、怒らないと約束して。でないと続き、教えられない﹂
腕を組んで、未羽がここは譲らないという眼で俺を見つめる。
強情だなあ⋮⋮ここは譲るか。
﹁⋮⋮分かった、約束する﹂
未羽は溜息をついて、こう言った。
﹁⋮⋮昨日、隠し撮りでビデオ撮ったの⋮⋮一緒に見る?﹂
隠し撮りって⋮⋮約束したから怒らなかったけどさ、俺⋮⋮。
☆
198
︻後日談6の4︼のりちゃん、頑張る︵前書き︶
※キャラの性格を鑑みて、香奈ちゃんが鐘良納子を呼ぶときの呼称
を﹁のりちゃん﹂から﹁のり﹂に変更しました。︵2014/8/
3︶
199
︻後日談6の4︼のりちゃん、頑張る
一階のリビング。俺はビデオカメラとテレビをケーブルで繋げて
いた。
日曜の午前だが、両親は例によって外出している。父がゴルフ、
母が友人とカフェでランチ。家に居着かない両親だ。
﹁⋮⋮よし、できた﹂
接続の作業を終え、俺はソファに座った。ビデオカメラのリモコ
ンを操作して、録画した映像を再生する。
無人の未羽の部屋がテレビに映った。ガクガクと画面が揺れる。
位置を調整しているらしい。位置が決まると未羽の顔のアップが映
った。準備が整ったのを確認すると、テレビの中の未羽は振り返っ
て部屋の外へ出て行った。
﹁⋮⋮これ、位置からしてお前の机の上から撮ってるな⋮⋮どうや
って隠したんだ?﹂
冷蔵庫から100%果汁のグレープフルーツジュースを出してき
た未羽が、テーブルに二つのグラスを置いて、隣に座る。
﹁隠してないよ。普通に机の上に置いてたの。のりちゃんは﹃あれ
何?﹄って聞いてきたけど、﹃ビデオだよ。今度体育祭で使うの﹄
って言ったら、﹃へえ、高そうだね﹄って、それだけ。撮られてる
のは全然気づいてなかった。香奈ちゃんは気づいてるはずだけど、
何も言わなかったよ﹂
﹁⋮⋮AVの騙し撮りみたいなことするね、お前たち⋮⋮﹂
AVだってやらせがほとんどだぞ。リアルJKがやるなよ。
﹁リモコン貸して。オナニー講座の続きまで早送りするから﹂
未羽は俺の手からリモコンを奪い取ると、早送りボタンを長押し
200
した。ドアが開き、ちょこまかした動きで未羽と香奈ちゃんとのり
ちゃんが部屋に入ってくる。
座卓を囲んで楽しそうに談笑する未羽たち︵早送りで︶。えーと、
これ、たぶん夕食の後だな。
それにしても、良く撮れてる。うちのビデオカメラは親バカ︵娘
に対して︶の親父が奮発して買った高級機種だからな。室内なのに
明るく、発色も良い。
未羽が部屋を出ていき、ケーキとお茶のおかわりを持って戻って
きた。早送りで瞬く間にケーキが減っていく。
﹁んーと、このへんかな?﹂
未羽が早送りを止め、通常再生にする。音声が復活し、未羽たち
の声がリビングに流れる。三人とも、昨今のアホJKのように酔っ
払いじみた嬌声を上げたりはしない。至極上品で穏やかな話し声で、
笑い声も鈴を転がすようだ。見習え、アホJK。
﹃そう言えば香奈ちゃん⋮⋮あれ、どうだった?﹄
聞いたのは未羽だ。香奈ちゃんがティーカップに口を付けたまま、
のりちゃんがフォークをくわえたまま、一瞬時間が停止する。
﹃⋮⋮あれって、何?﹄
香奈ちゃんが聞き返すが、察しているのは間違いなく、頬が桃色
に染まっている。のりちゃんはすでに頭から湯気が出そうになって
いる。
﹃何って、分かってるくせに。あれだよ⋮⋮その、オ、オナニー⋮
⋮イケた?﹄
画面の中で恥ずかしそうに言う未羽を、俺はジト眼で眺めていた。
﹁⋮⋮誰だ、この顔がお前によく似た恥ずかしがり屋さんは﹂
﹁あたし。静かにしてよ、いいとこなんだから﹂
未羽は食い入るように画面を見つめている。
﹃あ、ああ⋮⋮そのこと⋮⋮﹄
香奈ちゃんは恥ずかしそうにうつむき、小声で言った。
何つーか⋮⋮未羽とエロエロレズビアンワールドを築きあげてる
201
くせに、香奈ちゃんも演技が達者だよな。
﹃どうなの? イケた?﹄
﹃じ、じつは、まだイケてないの⋮⋮﹄
騙されているとも知らず、のりちゃんが心配そうな顔をする。
﹃⋮⋮そうなんだ⋮⋮ね、ねえ、香奈ちゃん、ほんとはイってるん
だけど、イってないと思ってるってことは、ないのかな?﹄
イっちゃうとか、口に出すのも恥ずかしいに違いないが、のりち
ゃんは顔を真っ赤にして相談にのる。こんな健気な子、騙すなよ⋮
⋮。
﹃うーん⋮⋮そうなのかなあ⋮⋮でもイクってのがどんな感じか分
かんないし⋮⋮ねえ、のりがイクときって、どんな感じ?﹄
﹃えっ⋮⋮?﹄
香奈ちゃんと未羽が、じーっとのりちゃんを見つめる。手で口を
覆い、恥ずかしそうな顔をするのりちゃん。可愛い。
﹃イ⋮⋮イク、とき⋮⋮?﹄
﹃うん、どんな感じなの? 教えて⋮⋮﹄
のりちゃんはもじもじしながら答えた。
﹃⋮⋮え、えっとね⋮⋮イキそうになると、背中がぞくぞくってし
て⋮⋮イ、イクときは、身体全部を何かが通り抜けていくような⋮
⋮それで、脚がぴーんと伸びちゃうの⋮⋮﹄
鼻血出そうだった。恥ずかしがりながら自分のイク様子を話すの
りちゃん⋮⋮超萌える。
画面の中の香奈ちゃんと未羽が鼻の下を伸ばしてアホみたいな顔
をしていた。隣を見るとリアル未羽が同じ顔をしていた。
﹃み、未羽ちゃんも教えてあげてよ! イ、イクときの⋮⋮﹄
﹃あたしも同じような感じかなあ﹄
﹃えー!? そんだけ!?﹄
投げやりな未羽に憤慨するのりちゃん。⋮⋮いじっててあきない
な、この子。
﹃へえ⋮⋮イクときってそんな感じなんだ⋮⋮じゃあ、わたしやっ
202
ぱりイってないんだなあ⋮⋮﹄
膝に顎をうずめ、へこむ香奈ちゃん︵演技︶。のりちゃんが一生
懸命に励ます。
﹃だ、大丈夫だよ、香奈ちゃん、ちゃんとイケるようになるよ!﹄
未羽が何かを思いついたように、手をパンと叩いた。
﹃そうだ! のりちゃん、香奈ちゃんにオナニーしてるとこ見せて
あげたら?﹄
俺、グレープジュース吹いてしまった。
﹃⋮⋮えぇっ!! ダ、ダメだよ! そんな⋮⋮み、見せられない
よ!﹄
手のひらをぶんぶんとワイパーにみたいに振って断るのりちゃん。
そりゃそうだろ。
﹃み、未羽ちゃんが見せてあげたらいいじゃない!﹄
﹃えー⋮⋮あたしと香奈ちゃんって幼なじみだから、そういうのち
ょっと⋮⋮姉妹みたいなものなんだよ﹄
﹁幼なじみって⋮⋮お前と香奈ちゃん、中学からのつきあいだろ?﹂
﹁静かにしてってば﹂
未羽、俺の突っ込みを爽やかにスルー。
﹃見せるのがダメだったら⋮⋮のりちゃんが香奈ちゃんにしてあげ
ればいいんじゃない?﹄
﹃﹃ええっ!﹄﹄
驚きの声が重なった。どうやらここからは香奈ちゃんも想定外ら
しい。未羽の暴走か。
﹃それがいいよ、実際にしてもらうのが一番よく分かるよ﹄
﹃ちょっ、ちょっと未羽! 何を⋮⋮﹄
未羽が香奈ちゃんにウインクを飛ばす。
⋮⋮何だ今のウインク⋮⋮﹁空気読んで﹂みたいな意味に見えた
けど、騙される対象が香奈ちゃんにスイッチしてないか?
でも、KYと思われたくないのか、香奈ちゃんは未羽のウインク
で黙ってしまった。
203
﹃のりちゃん、いいよね?﹄
のりちゃんが激しくうろたえる。
﹃そ、そんな! わ、わたし人のなんて触ったことないし⋮⋮そ、
そうだ! わたしがよくても、香奈ちゃんが無理だよ! そ、そう
でしょ、香奈ちゃん!﹄
切実な顔で、香奈ちゃんに同意を求める。未羽がまた香奈ちゃん
にウインクを飛ばした。﹁☆−﹂↑こんなのが見えるような見事な
ウインクだ。
香奈ちゃんは顔を赤らめて、ひどく困ったような顔をした。しか
し、未羽に逆らえないドMの彼女は、こう言った。
﹃⋮⋮は、恥ずかしいけど⋮⋮のりなら⋮⋮﹄
﹃ええええぇ! か、香奈ちゃん!﹄
頬に手を当てて叫ぶのりちゃん。⋮⋮香奈ちゃん、気付けよ⋮⋮
いま騙されてるのは君の方だよ⋮⋮。
﹃香奈ちゃんはいいって。のりちゃんもいいでしょ? 香奈ちゃん
のためだよ、頑張って﹄
とんとんと話を進める未羽。⋮⋮ホント小悪魔だな、こいつ⋮⋮。
隣のリアル未羽はふんふんと鼻息も荒く画面を見つめている。
﹃お、お布団は被っていていいんでしょ?⋮⋮見られるのは、恥ず
かしい⋮⋮﹄
﹃いいんじゃない? のりちゃん、どう?﹄
﹃か、被ってて⋮⋮友達の、その⋮⋮あそことか⋮⋮直視できない
⋮⋮﹄
顔を真っ赤にして、香奈ちゃんとのりちゃんはうつむいてしまっ
た。と、すぐに香奈ちゃんがガバッと顔を上げた。
﹃わ、わたしシャワー浴びてくる! 未羽、お風呂貸して﹄
言うなり香奈ちゃんは断りもせず未羽のクローゼットからパジャ
マとパンツを引っ張りだし、急いで部屋を出ていった。
﹃⋮⋮わ、わたしも、手、洗ってくる⋮⋮﹄
そう言ってのりちゃんもパタパタと部屋を出た。別に洗わなくて
204
いいと思うが、いじらしい子だ⋮⋮。
部屋にひとり残された未羽は、おもむろに立ち上がると、カメラ
に向かって歩いてきた。画面が左にパンして、ベッドの方を向く。
続いて未羽のアップが映り、ニコーッと満面の笑みを浮かべてピ
ースした。⋮⋮なんて悪党だ、こいつ⋮⋮。それから、未羽も部屋
を出ていった。
﹁⋮⋮お前は何しに部屋を出たんだ?﹂
﹁お風呂に行って、香奈ちゃんに﹃もし恥ずかしくて我慢できなか
ったら、痛いって言って。そしたらやめるから﹄って言ったの﹂
﹁ほう、お前にしては気を遣ったな⋮⋮ところで、カメラのアング
ルが絶妙なんだけど、お前よくファインダーも見ずに向きが合わせ
られるな﹂
﹁あらかじめベストポジションを確認して、机に鉛筆で線を引いて
おいたの﹂
﹁犯行が計画的すぎる! 情状酌量の余地がねえ!﹂
俺が呆れている間に、未羽、のりちゃん、香奈ちゃんの順で彼女
たちは部屋に戻ってきた。
﹃ベッドがいいよね、香奈ちゃん、そこに座って﹄
未羽が大きなビーズクッションを壁よりに置いた。香奈ちゃんは
顔をほんのり赤らめながら、従順にベッドに上がり、クッションに
背をもたせかける。
そして、明らかなカメラ目線を寄こした。じーっ、とカメラを睨
みつけ、ふっ、と小さく溜息をついて目を逸らす。
⋮⋮あの、香奈ちゃん、撮られてるの分かってるよね? 何でい
いなりなの? 弱みでも握られてるの?
﹃のりちゃんも、ベッドに上がって⋮⋮﹄
﹃あ⋮⋮うん⋮⋮﹄
おずおずとベッドに上がり、香奈ちゃんのそばに寄り添うのりち
ゃん。うわー、初々しい。ベッドが軋む微かな音に、妙にドキドキ
してしまう。
205
香奈ちゃんが布団を引き寄せ、腰から下に被せた。のりちゃんは
ごくりと生唾を呑んだが、緊張して自分から動くことはできない。
代わりに未羽がリードする。
﹃最初は、胸からがいい? 香奈ちゃん⋮⋮﹄
胸を触られるとは思っていなかったらしい香奈ちゃんが、﹃えっ
⋮⋮?﹄と声を漏らした。
﹃み、未羽ちゃんは、胸からなの⋮⋮?﹄
と、のりちゃん。
﹃うん。おっぱい触って、ちょっと気持ちよくなってからあそこを
触るの。のりちゃんは、胸、触らない?﹄
﹃⋮⋮触ったことあるけど、気持ち良くないの⋮⋮わたし、胸小っ
ちゃいし⋮⋮﹄
未羽によってどんどんのりちゃんのオナニーライフが暴かれてい
く。⋮⋮俺がこのビデオ見たなんて知ったら死んでしまうだろうな。
﹃香奈ちゃん、パジャマ脱がすよ﹄
未羽がパジャマのボタンに手をかける。
﹃ちょっ⋮⋮未羽! む、胸触るの? 脱ぐの?﹄
香奈ちゃんが、助けを求めるような視線をのりちゃんに向ける。
しかしのりちゃんも急展開について行けず、困り顔だ。
﹃あれ? 香奈ちゃんブラしてるの? つけなくていいのに﹄
香奈ちゃんは抵抗らしい抵抗もせずパジャマを脱がされてしまっ
た。未羽がブラのホックを片手で外す。
﹃きゃっ⋮⋮!﹄
はらりと落ちそうになったブラを、慌てて腕で押さえる。ブラと
腕で隠れていても、豊かな量感を感じさせるおっぱいだった。
﹃ほらぁ、ブラ脱がないと触れないよ﹄
香奈ちゃんの両手を広げさせ、肩ひもを腕からすり抜けさせる。
形の良い巨乳がふたつ、ぷるんと揺れた。
未羽は香奈ちゃんの腕を押さえつけ、隠せないようにしてしまう。
のりちゃんが手で口を押さえ、息を呑む。
206
﹃わ⋮⋮すごい大っきい⋮⋮きれい⋮⋮﹄
俺も香奈ちゃんの美乳に感嘆の溜息をついた。相変わらず素晴ら
しい。
香奈ちゃんのおっぱいは夏みかんサイズで、巨乳で売ってるAV
女優などに比べると、絶対的な体積でそれほど大きいわけではない。
しかしそれがくっ付いているのは、152センチの小柄で華奢な
体躯である。
幼さの残る胴体に、どうみても不釣り合いなおっぱいを備えたそ
の身体は、扇情的を通りこし、背徳感さえ感じさせる。
身体の動きに合わせてそのふくらみはぷよぷよと揺れるが、重力
に逆らってしっかりと上を向いている。若いって素晴らしい。
肌は陽に当たったことがないのかと思うほど白い。乳首は小さく
とがっていて、大きめの乳輪は肌と同じに色素が薄く、淡いピンク
色だ。
俺の好みにジャストミート! まさにおっぱい・オブ・おっぱい・
イン・ザ・ワールド!である。正しいかこの英語?
﹃あ、あん⋮⋮もう、だめぇ、未羽⋮⋮﹄
﹃さ、のりちゃん、触ってあげて﹄
恥じらう香奈ちゃんに構わず、未羽がうながす。
﹃⋮⋮う、うん⋮⋮さ、触っていい? 香奈ちゃん⋮⋮わ、わたし、
本当のこと言うと、香奈ちゃんのおっぱい、触ってみたかったんだ
⋮⋮ずっと前から⋮⋮﹄
密かな願望を告白するのりちゃん。その言葉に、香奈ちゃんの表
情が緩む。
﹃そうなんだ⋮⋮うん、いいよ、のり⋮⋮触って⋮⋮﹄
﹃う、うん⋮⋮それじゃ⋮⋮﹄
のりちゃんがおずおずと片手を伸ばす。下から支えるように、そ
っと手のひらに乗せる。
﹃わっ⋮⋮! すごい柔らかい⋮⋮わっ、わっ、こんなに柔らかい
んだ⋮⋮すごーい、すべすべ⋮⋮気持ちいい⋮⋮﹄
207
ものすごーく素直な感想を述べるのりちゃんだった。
﹃香奈ちゃん、あたしも触るよ﹄
未羽は最初から手をお椀型にして、すっぽりと包むようにして揉
んだ。﹃はふ⋮⋮﹄と香奈ちゃんが吐息を漏らす。
いきなり乳首に触れるのを避け、乳房を下から持ち上げるように
して触っていたのりちゃんは、未羽が大胆におっぱいを揉むのをう
らやましそうに眺めた。
そして、香奈ちゃんが未羽の揉み方をとがめないのに乗じて、手
のひらを徐々に上に移動させていった。手のひらいっぱいにおっぱ
いを包んで、やわやわと揉む。
﹃ふぅ⋮⋮あっ⋮⋮はん⋮⋮﹄
二人に胸を揉まれ、香奈ちゃんの口からこらえきれない吐息が漏
れた。
﹃香奈ちゃん、気持ちいいの⋮⋮? おっぱい感じるんだね⋮⋮?﹄
のりちゃんの声には、幾分疑問形が混じっている。オナニーでイ
ケないのに胸だけでこんなに感じるのを、不思議に思ったのだろう。
﹃む、胸触ったことあるけど⋮⋮自分で触るのと、全然違う⋮⋮﹄
﹃あ、そうなんだ⋮⋮へえ⋮⋮﹄
純真なのりちゃんは、香奈ちゃんの言葉を全面的に信じた。
﹃ほら、のりちゃん⋮⋮香奈ちゃんのおっぱい、乳首が固くなって
きてるよ﹄
未羽が乳首を指で挟んでくりくりする。香奈ちゃんが﹃あんっ⋮
⋮!﹄と声を上げた。
﹃え⋮⋮? わぁ⋮⋮ほんとだ⋮⋮とんがってきてる⋮⋮﹄
のりちゃんも指先で乳首の固さを確かめる。香奈ちゃんがびくっ
と身体を震わせた。
﹃や⋮⋮恥ずかしい⋮⋮だめぇ⋮⋮﹄
﹃気持ちいいんでしょ、香奈ちゃん⋮⋮もっとしてあげる⋮⋮﹄
未羽は指先でくりくりと乳首を愛撫した。香奈ちゃんが声を上げ、
敏感に反応する。
208
未羽に倣って、のりちゃんの仕草もだんだんと大胆になる。おっ
ぱいを揉みながら、ときおり指先でさりげなく乳首に触れる。触れ
るたびに身体が小刻みに反応するのに気づいてからは、はっきりそ
れと分かるように乳首を弄りはじめた。
﹃あっ⋮⋮はぁんっ⋮⋮んっ、だめぇ⋮⋮﹄
二人に胸を弄られ、香奈ちゃんが切なげな声を漏らす。
どう見ても十分開発された身体の反応だが、のりちゃんは﹁自分
でするのと全然違う﹂という言葉を信じ、1ミリも疑いを抱いてい
ない。
﹃香奈ちゃん、気持ちいいんだね⋮⋮ねえ、おっぱい、ちゅーって
してもいい?﹄
﹃え⋮⋮? ちょっ、未羽⋮⋮!﹄
返事を待たずに、未羽は身をかがめて乳首に吸い付いた。
﹃んっ⋮⋮! あうっ⋮⋮!﹄
﹃わっ! 未羽ちゃん⋮⋮く、口で⋮⋮﹄
敏感になった乳首を舐められ、香奈ちゃんはびくんと背を反らし
た。未羽の行動と香奈ちゃんの反応の両方に驚いたのりちゃんは、
胸を揉むのも忘れ、硬直している。
﹃んはっ⋮⋮あ、ああっ!⋮⋮み、未羽、あんっ!⋮⋮﹄
外から見ては分からないが、口の中でれろれろと舌を使っている
のだろう。香奈ちゃんは途切れることなく甘い声を漏らした。のり
ちゃんは赤い顔をして、とまどいながら見つめている。
﹃ぷは⋮⋮﹄
ひと息ついて、未羽が口を離す。濡れた乳首と唇の間に、唾液が
糸を引いた。香奈ちゃんは荒く息をして、胸を上下させている。
﹃み、未羽ちゃん⋮⋮友達のおっぱい、舐めるなんて⋮⋮﹄
﹃のりちゃんも舐めてごらん⋮⋮楽しいよ﹄
手の甲で唇の唾液を拭う。眼がとろんとしていた。エロエロ大魔
王の眼だ。
﹃わ、わたしは⋮⋮﹄
209
﹃赤ちゃんになって、ママのおっぱい吸ってる気分⋮⋮香奈ちゃん
もいっぱい感じてくれるよ。ね、のりちゃんも⋮⋮﹄
俺はジト眼で隣のリアル未羽を見た。
﹁赤ちゃんって、お前絶対そんな純粋な気持ちで舐めてないだろ﹂
﹁うん、お兄ちゃんと一緒だね﹂
ぎゃふん。
﹃ほら、のりちゃん﹄
未羽はのりちゃんの肩を抱いて、彼女の顔をおっぱいの間近に引
き寄せた。
﹃あ⋮⋮﹄
息がかかりそうな距離におっぱいが迫り、ドキリとするのりちゃ
ん。上目遣いに香奈ちゃんの表情をうかがう。
﹃い、いい⋮⋮? 香奈ちゃん⋮⋮﹄
﹃⋮⋮ん⋮⋮﹄
頬を赤く染め、小さくうなずく香奈ちゃん。
のりちゃんが小さく口を開け、おっぱいに顔を近づけていく。唇
が触れる寸前で一瞬躊躇ってから、思い切って、ちゅっと吸い付い
た。
﹃あんっ⋮⋮!﹄
ぴくっと身体が震えた。のりちゃんは乳首をくわえたままじっと
している。
﹃のりちゃん、舌でちろちろ∼ってしてごらん、香奈ちゃん喜ぶか
ら﹄
アドバイスする未羽をチラッと横目で見てから、のりちゃんはお
っぱいに向き直った。
﹃ふあっ⋮⋮! あっ、あんっ!⋮⋮や、ああっ!﹄
とたんにあえぎ声が大きくなる。のりちゃんが舌を使いだしたら
しい。
乳首をくわえながら、のりちゃんは自分の舌が引き出す反応に驚
いている。
210
﹃上手だよ、のりちゃん⋮⋮もっと舐めてあげて﹄
﹃ああっ!⋮⋮はぁっ⋮⋮はん⋮⋮だめ⋮⋮あぁんっ!﹄
香奈ちゃんは、未羽に舐められているときよりも激しく反応した。
テクニックは未羽の方が上のはずだが、清純なのりちゃんに愛撫さ
れているという背徳感が興奮を誘うのだろう。
一分間ほどかけてじっくりと乳首を舐めてから、のりちゃんは口
を離した。友達のおっぱいを舐めるという行為に興奮したのか、顔
が湯気が出るほど真っ赤になっている。
香奈ちゃんは唾液に濡れた乳房を隠そうともせず、クッションに
埋まるようにして荒い息をしている。おっぱいだけですでにレイプ
後みたいだった。
﹃のりちゃん、頑張ったね∼。香奈ちゃんとっても気持ちよさそう
だったよ。のりちゃんはどうだった?﹄
﹃⋮⋮す、すっごい、どきどきした⋮⋮か、香奈ちゃんの反応、す
ごくって⋮⋮お、おっぱい舐めるの、楽しい⋮⋮﹄
衝撃体験で若干もうろうとしているのりちゃんが、律儀に感想を
述べる。
﹃よし、じゃあ、次は下の方いってみよっか。パジャマ脱がしちゃ
うね﹄
言うなり未羽は、香奈ちゃんの腰に布団を被せると、布団の中に
手を突っ込んでパジャマの下を脱がせにかかった。
﹃あっ⋮⋮﹄
﹃香奈ちゃん、腰浮かせて﹄
いいなりの香奈ちゃんは従順に腰を浮かせ、パンツごとパジャマ
を脱がされた。肝心なところは布団で隠れてるけど、これで香奈ち
ゃん全裸です!
﹃さ、のりちゃん、あそこを触ってあげて﹄
﹃う、うん⋮⋮﹄
おっぱいのときは想定外だったので、躊躇いがちだったのりちゃ
んだが、あそこを触るのは当初予定どおりなので、意外にすんなり
211
と布団に手を潜らせた。
﹃あ⋮⋮﹄
下腹部に触れられた香奈ちゃんが、小さく声を漏らす。のりちゃ
んはおそるおそる布団の奥へと手を進めていく。
﹃⋮⋮あ、あの⋮⋮香奈ちゃん﹄
﹃な、何⋮⋮?﹄
﹃あの⋮⋮えっと、こ、こんなこと聞くの、あれなんだけど⋮⋮香
奈ちゃん、生えてないの⋮⋮?﹄
﹃なっ⋮⋮!﹄
香奈ちゃんの顔がぶわっと赤くなった。
﹃わ、わたしもなの! わたし、お子さまだから、全然生えてなく
って⋮⋮い、一緒だよ! 香奈ちゃん﹄
⋮⋮可愛いなあ、のりちゃん。妹にしてえ。
﹃のりちゃん、あたしもだよ。三人ともツルツルだね﹄
﹃未羽ちゃんもなんだ! わたし、悩んでたんだよ∼、一緒で嬉し
い!﹄
⋮⋮何で俺の周りこんなにパイパン率高いんだ? 作者の趣味?
﹃じゃ、じゃあ、香奈ちゃん、触るよ⋮⋮﹄
唇をキュッと結んで宣言するのりちゃんに、香奈ちゃんが無言で
うなずく。布団に隠れた腕が、少しだけ前進する。
﹃⋮⋮わっ⋮⋮す、すごい濡れてる⋮⋮﹄
﹃⋮⋮っ!﹄
香奈ちゃんが羞恥にぐっと息を詰まらせる。
﹃わっ⋮⋮わっ⋮⋮すごいぬるぬるしてる⋮⋮おっぱいだけで、こ
んなに⋮⋮﹄
天然で言葉責めするのりちゃんだった。香奈ちゃんは目を伏せて
頭から湯気を出している。
﹃うひゃぁ⋮⋮じ、自分の触ると全然感じ違うよぉ⋮⋮イソギンチ
ャクみたい⋮⋮えっと、お豆さん、お豆さん⋮⋮﹄
﹃⋮⋮はぁっ!﹄
212
突然、香奈ちゃんが大声を上げて反り返った。のりちゃんもビク
ッとする。
﹃あ⋮⋮お豆さんだ⋮⋮わ、もうぷっくりしてる⋮⋮﹄
﹃や⋮⋮そんなこと、言わないでぇ、恥ずか⋮⋮あっ、ああっ!⋮
⋮﹄
のりちゃんの愛撫に、香奈ちゃんは絶え間なく切ない声を上げ、
身をくねらせた。
﹃⋮⋮か、香奈ちゃん、すごい感じてるね⋮⋮本当にイったことな
いの?﹄
感度が良すぎる友達に、さすがに疑問の念を抱くのりちゃんだっ
た。
﹃⋮⋮じ、自分でするのと、全然違うんだってば⋮⋮あっ⋮⋮こん
なの、初めて⋮⋮はぁっ⋮⋮あぁんっ!⋮⋮﹄
頭が天国へ行っても演技を忘れない。さすがクールビューティー
香奈ちゃんだ。
﹃そ、そうなんだ⋮⋮香奈ちゃんの声、すごいエッチ⋮⋮あ、あだ
るとびでおみたい⋮⋮﹄
﹃もう、いやぁ⋮⋮そんなこと言わないで⋮⋮恥ずかしい、だめ、
もぅ⋮⋮痛っ⋮⋮﹄
﹃えっ!?﹄
のりちゃんが即座に手を引っ込める。指先が愛液にぬめって光っ
ていた。香奈ちゃん、羞恥に耐えきれずギブアップだ。
﹃ご、ごめん! 香奈ちゃん! 痛かった!? 大丈夫!?﹄
香奈ちゃんの肩に手を置き、心配そうに声をかけるのりちゃん。
﹃だ、大丈夫⋮⋮ほんのちょっと痛かっただけ、何ともないから⋮
⋮﹄
﹃ご、ごめんなさい⋮⋮わたし、乱暴だったね⋮⋮﹄
あー、こりゃ続行は無理だな。のりちゃんが萎縮しちゃってる。
﹃香奈ちゃん、大丈夫?﹄
未羽が全然心配じゃなさそうに聞く。まあ、﹃痛い﹄ってのは前
213
もって決めてた合図だしね。
﹃うん、何ともないよ⋮⋮﹄
﹃そう、よかった⋮⋮うーん、やっぱり自分のじゃないから、見な
いでやるのは難しいんだね。香奈ちゃん、お布団とっちゃおうよ﹄
﹃え?⋮⋮ええっ!?﹄
香奈ちゃんが眼を見開いて驚く。うわあ、そういう作戦か、友達
裏切りやがったよ。
﹃見ないでやっちゃうと、また痛くなるよ。ほら、お布団から手離
して﹄
﹃や、やあっ! も、もういいよぉ! あ、あとは自分でするから
⋮⋮﹄
﹃だめ! ちゃんとイクまでするの! 今日は香奈ちゃんの性教育
の日なんだから﹄
超難関校受験コースの性教育ですね、分かります。
力で未羽に敵わないなんてことは絶対無いと思うが、香奈ちゃん
はあっさり布団をはぎ取られた。人魚のように美しい裸が露わにな
り、慌てて股間を手で隠す。
﹃きゃっ! だ、だめぇ、未羽⋮⋮﹄
﹃ほら、脚開いて﹄
股間を隠している手を先ずどけさせ、未羽は膝に手を置いて、脚
を左右に開かせた。
﹃み、未羽、やんっ⋮⋮﹄
﹃きゃっ﹄
たまたまかぶりつきのポジションにいたのりちゃんが、小さな悲
鳴を上げた。手で顔を覆っているが、指の間からしっかりと香奈ち
ゃんのあそこを凝視している。
﹃あっ⋮⋮だ、だめぇ、見ないで⋮⋮﹄
﹃香奈ちゃん、そんなこと言っちゃだめ、これから触ってもらうん
だから﹄
香奈ちゃんのあそこはぐっしょりと濡れている。脚を大きく広げ
214
ているため、スリットが開いて中の襞が覗いていた。
﹃わぁ⋮⋮ひ、人のを、こんな近くで見るの初めて⋮⋮﹄
﹃やんっ⋮⋮!﹄
のりちゃんの視線を感じ、いっそう羞恥心をあおられる香奈ちゃ
ん。
﹃⋮⋮いっぱい濡れてるね⋮⋮ピンク色で、きれい⋮⋮﹄
﹃もう、言わないでぇ⋮⋮恥ずかしいよぉ⋮⋮﹄
身をよじる香奈ちゃん。⋮⋮素朴な疑問だけど、未羽は膝に手を
置いているだけだから、脚を閉じようと思えば閉じられると思うん
だけど、どうしてそうしないの? 香奈ちゃん?
﹃のりちゃん、ほら、触ってあげて﹄
﹃あ、うん⋮⋮﹄
膝立ちで脚の間に歩を進めるのりちゃん。身をかがめ、あそこに
顔を近づける。
﹃あ⋮⋮エッチな匂いがする﹄
﹃⋮⋮っ!!﹄
顔から火が出そうなほど香奈ちゃんの顔が赤くなった。
のりちゃんは手を伸ばし、中指をスリットの上の方へ、浅く潜り
込ませる。
﹃あっ!⋮⋮はぁっ!﹄
ぶるっと香奈ちゃんの身体が震えた。見ながらできる安心感から
か、のりちゃんの指は先ほどよりも大胆になっていた。
﹃はん⋮⋮あっ、ああっ⋮⋮やぁ⋮⋮あぁんっ!⋮⋮﹄
﹃す、すごぉい⋮⋮どんどん溢れてくる⋮⋮とろとろ⋮⋮﹄
のりちゃんの天然羞恥責めは容赦なかった。香奈ちゃんは激しく
身をよじって反応した。
﹃上手だよ、のりちゃん⋮⋮香奈ちゃんすごい感じてる⋮⋮あたし
も⋮⋮﹄
未羽もおっぱいに吸い付いて参戦する。乳首を舌で転がすと、あ
えぎ声がまた少し大きくなった。
215
ふと隣を見ると、リアル未羽が身を乗り出して画面を注視してい
た。
よだれが垂れそうな︱︱いや、マジで垂れてた。リアルによだれ
垂らすやつ初めて見た⋮⋮。
まあ俺も、ジュニアぎんぎんにおっ立ててるけどさ。
﹃やぁん⋮⋮あっ、ふわぁっ!⋮⋮も、もう⋮⋮﹄
お、香奈ちゃん早くもイキそう。
﹃ほら、のりちゃん、香奈ちゃんイキそうだよ⋮⋮指、入れてあげ
て⋮⋮﹄
﹃えっ⋮⋮? い、いいのかな⋮⋮?﹄
﹃こんなに濡れてるんだもの、大丈夫だよ⋮⋮ゆっくり、ね?⋮⋮﹄
﹃う、うん⋮⋮﹄
未羽にうながされ、のりちゃんはお豆さんへの愛撫をやめ、中指
を入り口にあてがった。
﹃ん⋮⋮? あ⋮⋮﹄
頭がヘブンで会話が聞こえていなかった香奈ちゃんが、事態に気
づく。
﹃か、香奈ちゃん、入れるよ⋮⋮﹄
﹃え⋮⋮? あ、やぁっ⋮⋮﹄
香奈ちゃんが拒否だか何だか分からない声を上げたが、のりちゃ
んはそのまま指を進めた。
﹃ふわ⋮⋮あっ⋮⋮ああっ!⋮⋮﹄
﹃わっ⋮⋮わっ、わっ!⋮⋮柔らかい⋮⋮わっ! し、締め付けて
くる⋮⋮﹄
実況しながら指を挿入するのりちゃんだった。
﹃あぁん⋮⋮だ、だめぇ⋮⋮あはっ⋮⋮﹄
﹃す、すごい⋮⋮きゅってなってる、変な感じ⋮⋮じ、自分でする
のと、こんなに違うんだ⋮⋮﹄
﹃のりちゃん、気持ちいいとこ、分かる?﹄
﹃え、えっと、こ、この辺、かな⋮⋮?﹄
216
映像では分からないが、のりちゃんが中で指を動かしているらし
い。再び香奈ちゃんが激しく悶える。
﹃あぁっ!⋮⋮はぅ⋮⋮んっ!ああっ、あんっ!⋮⋮﹄
﹃わっ、わっ⋮⋮ひぅん⋮⋮す、すご⋮⋮身体の中いじってるみた
い⋮⋮﹄
いや、身体の中いじってるんですけどね。
﹃のりちゃん、どう? どんな感じ?﹄
未羽が恍惚とした表情で聞いた。⋮⋮なんてエロ顔してんだよ、
お前⋮⋮。
﹃ゆ、指動かすのに合わせて、香奈ちゃんの身体が震えるの⋮⋮す、
すごい感じてくれてる⋮⋮嬉しい⋮⋮﹄
﹃ふふ⋮⋮のりちゃん上手だよ⋮⋮ほら、香奈ちゃん、もうイっち
ゃいそう⋮⋮﹄
香奈ちゃんはもう羞恥も忘れ、頭を振って快感に浸っていた。あ
えぎ声もひときわ高くなっている。
﹃あぁっ!⋮⋮も、イ、イっちゃう⋮⋮あふぁ⋮⋮あっ、はぁんっ
!⋮⋮﹄
﹃わっ、わっ! か、香奈ちゃん、イケそうなの!? ちょ、ちょ
っと速くするよ!﹄
のりちゃんはペースを上げるだけではなく、中で動かすだけだっ
た指を、小刻みに出し入れし始めた。
⋮⋮のりちゃん、自分でオナニーするとき、そうやってるんだろ
うね⋮⋮あそこをいじられてるのは香奈ちゃんなんだけど、のりち
ゃんのオナニーライフをのぞいているようでもあり、ダブルで興奮
する⋮⋮。
何てことを思っているうちに、香奈ちゃんは快感の渦に呑み込ま
れていった。シーツを鷲づかみにしてベッドを滅茶苦茶にしながら、
弓なりに背を反らす。
﹃イ、イクっ⋮⋮イっちゃう⋮⋮あっ! はぁっ!⋮⋮あっ、はあ
あああああぁぁん!!﹄
217
全身をすごい力で強ばらせながら、大絶叫して香奈ちゃんは絶頂
に達した。
快感の大波が引き切ったのを見定めてから、のりちゃんはそっと
指を引き抜いた。友達をイカせた手を呆然と見つめる。中指に大量
の愛液がまとわりついて、少しふやけていた。
﹃⋮⋮はあ⋮⋮はぁ⋮⋮あふぅ⋮⋮﹄
香奈ちゃんは溶けたアイスのように脱力して、荒い息をしている。
唾液に濡れた巨乳が、呼吸に合わせて上下していた。
﹃よ、よかったぁ⋮⋮香奈ちゃん、イケたね⋮⋮﹄
この期に及んでもまだこれが香奈ちゃんの初絶頂だと思っている、
純真なのりちゃんだった。素直に友達をイカせてあげられたことを
喜んでいる。
﹃あ⋮⋮はふ⋮⋮﹄
香奈ちゃんが薄目を開く。ようやく桃源郷から帰ってきたようだ。
﹃あ、香奈ちゃん、気がついた? 起きれる?﹄
のりちゃんが手を引いてビーズクッションから身を起こさせる。
クールビューティー香奈ちゃんの髪が乱れている。身体は汗ばん
で、ほんのり赤い。⋮⋮イった後の香奈ちゃん、エロい⋮⋮。
﹃香奈ちゃん、イケたよね? どんな感じだった?﹄
無邪気に聞くのりちゃん。香奈ちゃんはやっと﹁初絶頂﹂だとい
うことを思い出したようだった。
﹃あ⋮⋮うん、よ、良かった⋮⋮すっごい気持ちよかった⋮⋮死ん
じゃうかと⋮⋮﹄
﹃わあ、そんなに良かったんだぁ、うんうん、初めてイクときって
気持ちいいよね! これから自分でもできそう?﹄
﹃⋮⋮うん、やり方、分かった⋮⋮のり、ありがとう﹄
﹃良かったね! 香奈ちゃん!﹄
のりちゃんは裸の香奈ちゃんにぎゅっと抱きついた。香奈ちゃん
は眉を八の字にして、嬉しさと申し訳なさが混じったような顔をし
てた。のりちゃんの髪を、優しく撫でる。そうしながら香奈ちゃん
218
は、傍らで正座している未羽を、ちょっと怒った顔で睨みつけた。
未羽は顔の前で手を合わせ、﹁ごめんなさい﹂のポーズを作った。
顔を傾けてウインクする。﹁許して﹂、のジェスチャーだ。
香奈ちゃんは表情を緩め、﹁しょうがないわね⋮⋮﹂という顔で
苦笑いした。
ちょっ、香奈ちゃん! こんだけで許しちゃうの!? もっと怒
ろうよ! 何でそんなに未羽に甘いの!?
☆
219
︻後日談6の5︼兄妹の語らい⋮⋮語らってねえ!
このあと、ビデオには香奈ちゃんの身体をティッシュで拭いたり
服を着るところが映っていて、それも見たのだが、特筆すべきとこ
ろはないので省略する。
ビデオを止め、未羽の第一声。
﹁ね、のりちゃんにいやらしいことしてないでしょ?﹂
﹁確かにのりちゃんにはしてないが⋮⋮ある意味直接わいせつ行為
する以上にいやらしいことしてるような⋮⋮﹂
﹁あのね、エッチなことして、それがいいか悪いかは、傷ついたか
そうでないか、トラウマになるかならないかで判断すればいいんだ
よ。青春のいい思い出だよ、これ﹂
﹁全然爽やかじゃないな、お前の青春⋮⋮まあいい。のりちゃん騙
されたことに気づいてないし、友情にひびが入った様子もないし、
良しとしよう﹂
﹁そうだよ。香奈ちゃんはあの後シャワー浴びながら第2戦したっ
ていうし、のりちゃんも、手を洗うって言ったあとトイレ入って、
10分くらい出てこなかったんだよ。絶対オナニーしてるよ、部屋
に帰ってきたらちょっとキョドってたし﹂
﹁友達のオナニーライフを次々暴露するなよ⋮⋮まあ、お前にして
みればあの状況でのりちゃんに手を出さなかったのが奇跡だ。よく
我慢したな﹂
﹁そうだよ。だから堪らなくなってお兄ちゃんの部屋でオナニーし
たの。でないと狂いそうだったよ⋮⋮ところでお兄ちゃん﹂
未羽は言葉を切って、宮本武蔵みたいなマジ顔で俺を見つめた。
﹁何だ、未羽﹂
220
﹁あたし、おまんこびしょびしょなんだけど﹂
﹁⋮⋮そうか、俺もちんこがびんびんだ﹂
﹁ねえ、お兄ちゃん、近親相姦の定義って、何だろうね?﹂
﹁ふむ﹂
俺は腕組んで考えた。
﹁⋮⋮そもそも何故近親相姦がタブーなのかというと劣性遺伝の継
承が問題なわけで、ということは妊娠につながる行為が近親相姦に
当たるのではないか?﹂
﹁避妊すればオーケーってこと? それ緩すぎない?﹂
﹁いや、どんな避妊法も100%ではない。つまり挿入するかしな
いかが近親相姦かそうでないかの境界と判断していいんじゃないだ
ろうか﹂
﹁なるほど⋮⋮オーラルセックスや手でするのはオーケーってこと
ね?﹂
﹁そういうことだ﹂
未羽はすっとソファから立ち上がった。
﹁さて、お兄ちゃん、ビデオも見終わったことだし、ちょっとあた
しの部屋で兄妹の語らいをしない?﹂
﹁うん、いいね。俺も久しぶりに未羽とゆっくり話がしたいと思っ
ていたんだ﹂
未羽を先頭に、俺たちは並んで階段を上った。途中で未羽が立ち
止まり、振り返る。ニュートラルな表情を作っているが、頬がほん
のり赤い。
﹁⋮⋮お兄ちゃん、コンドーム持ってる?﹂
﹁⋮⋮持ってる﹂
妹と近親相姦する気があるわけではないが、過去二回妹に中出し
した前科があるので、いざというときのために備えておいたのだ。
﹁つ、使わないよ! 使わないけど、今日は危ない日だから万が一
ってことがあるといけないし、一応あった方がいいかなーって。深
い意味はないからね、近親相姦はダメだからね!﹂
221
﹁ああ、分かった。防災グッズみたいなものだよな。持って行く﹂
そのあと、俺たちは未羽の部屋で久しぶりにシックスナインした。
二人とも近親相姦はしないつもりだったが、途中から未羽が暴走し、
結局、ほぼ俺がレイプされる形でセックスしたのだった。
悪魔的な笑みを浮かべながらコンドームを歯で開封する未羽は、
エロエロ大魔王の貫禄十分でした。
コンドームは二つ使いました。ちゃんちゃん。
おわり
222
︻後日談7︼兄貴、入院中。︵前書き︶
後日談も7話まできました。もうすっかりタイトルと関係なくなっ
ておりますw
今回エロ度低めですが、作者は気に入っているエピソードなので、
楽しんでいただければ幸いです。
※キャラの性格を鑑みて、香奈ちゃんが鐘良納子を呼ぶときの呼称
を﹁のりちゃん﹂から﹁のり﹂に変更しました。︵2014/8/
3︶
223
︻後日談7︼兄貴、入院中。
水曜日、午後三時。○○総合病院外科病棟416号室。
俺はベッドでうつぶせに寝転がっていた。することは何もないの
だが、背中の傷がうずいて眠れない。
六人部屋の病室は、隅の四つのベッドが埋まっている。対角に位
置するベッドには見舞客が来ているようで、控えめな声が聞こえて
くる。
ボーッとしてたら、小さな足音が近づいてきた。俺のベッドのカ
ーテンの前で止まる。
﹁⋮⋮お兄さん? こちらですか?﹂
小声で聞いてきたのは香奈ちゃんだった。俺が返事をすると、彼
女はカーテンをめくって入り、パイプイスに座った。
学校から直接来たらしい、制服姿で、学生鞄を持っていた。ちな
みにセーラー服で、上にクリーム色のカーディガンを着ている。
﹁痛てて⋮⋮﹂
客が来たので、俺は身を起こした。香奈ちゃんが手をかざして止
めようとする。
﹁ちょっと、お兄さん、寝ていてください。傷に障りますよ﹂
﹁大丈夫、医者も﹃前屈さえしなければいい﹄って言ってたから⋮
⋮じっとしてれば痛まないんだよ﹂
上半身を起こして座る。うん、大丈夫だ。
﹁痛かったら寝てていいですからね。わたしのせいで悪化したなん
てことになったら未羽に何を言われるか⋮⋮そう言えば一人ですね
? こんな大怪我をしたというのに、付き添いもいないんですか?﹂
﹁⋮⋮見捨てられたみたいに言うなっての。両親も未羽も、仕事と
学校早退して来たよ。ちょっと前までいたんだけど、入院の準備し
224
に一旦帰ったんだ。また後で来る﹂
﹁誰かをかばって工事現場で怪我したと聞きましたけど⋮⋮何があ
ったんですか?﹂
話を始める前に、俺は冷蔵庫にペットボトルのお茶あるから飲ん
でとすすめた。ついでに俺の分も取ってもらう。
﹁今日、風強かったじゃん。朝、通学途中に、前をばーさんが歩い
てたんだ。で、右側に工事現場があって、足場が組まれてたわけ、
高さが7、8メートルくらい。
その足場が突風でぐわーっと倒れてきて、ばーさん足すくんで動け
なかったから、俺が後ろから抱きかかえて走ったんだけど、結局も
うちょっとってとこで間に合わなくて、足場に押し倒されたんだ。
まあ、何もせず真ん中にいたら死んでただろうけど。ばーさんに覆
い被さってたから、背中とか怪我したってわけ﹂
﹁おばあさんを助けたんですか。それは立派なことをしましたね。
お兄さんらしいというか⋮⋮それで、怪我はどの程度なんです?﹂
﹁左の肩甲骨の下の所、少し大きく切っちゃって、そこ九針縫った。
それと地面に手を突いたときに、手首の軽い捻挫と擦り傷﹂
俺は右手にぐるぐる巻きにされた包帯を見せた。
﹁あとは背中青あざだらけだけど、レントゲンの結果は骨や内臓に
何の異常もないって。ほっときゃ治るし、後遺症も残らない。
感染症がないことを確認するために三日入院だって。部活もひと月
以内で復帰できそうだよ。今度の練習試合出れないのは残念だけど
⋮⋮﹂
﹁そんなの気にしないでください。怪我ですんだの不幸中の幸いで
すよ、頭でも打っていたらどうなっていたか⋮⋮﹂
香奈ちゃんはちょっとだけ怒った表情をした。
﹁ごめんな、心配かけて。でもこのとおり、何てことないから、大
丈夫だよ﹂
俺は無傷の左手でガッツポーズを作った。香奈ちゃんは口をへの
字にしている。
225
この子、クールだから顔にはあまり出さないんだけど、きっと相
当心配してくれたんだろうな。安心したから反動でむくれてるんだ
よ。
﹁⋮⋮背中、見てもいいですか?﹂
﹁え、見る? 引くよ?﹂
それでもと言うので、俺は座ったまま背中を向けた。香奈ちゃん
がそっと入院着の後ろをめくる。
﹁うわ⋮⋮痛々しい⋮⋮あざ真っ黒⋮⋮このガーゼ貼ってるとこが
縫ったとこですか?﹂
﹁うん⋮⋮あのさ、写真撮ってくれない? 自分で見れないから﹂
香奈ちゃんはスマホで背中を撮ってくれた。画面を俺に見せる。
﹁おお、ちょっとグロい⋮⋮良かったよ、あのばーさんが下敷きに
ならないで﹂
﹁こんな目に遭っても人のこと心配してるなんて⋮⋮お人好しなん
だから。そう言えばおばあさんの方は怪我なかったんです?﹂
﹁擦り傷程度で、大したことはないって。それよりショックで動転
しちゃってるから、別室で一晩入院って聞いたけど。ばーさんって
もそんなに歳じゃなくて、確か65歳って聞いたよ﹂
﹁そうですか⋮⋮まあご無事なら助けた甲斐があったというもので
すね。ところで、お見舞いは他に誰か来る予定あるんですか? 次
期野球部キャプテンの割には、お寂しいですね﹂
﹁安心したとたん毒吐くんじゃねえよ⋮⋮監督は来てたよ。他の部
員とか友達には、俺が学校を通じて来ないように言ったんだよ。大
勢で押しかけたら他の患者さんに迷惑だろ。見舞いのメールはガン
ガン来てるよ﹂
﹁なるほど、しばらく見舞客が来ることはないと。それで、左手の
方は何ともないんですか?﹂
﹁質問が飛ぶな⋮⋮ほら、何ともないよ﹂
俺は左手を握ったり開いたりしてみせた。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
226
香奈ちゃんは急に黙った。何か言いたそうに口をムズムズさせ、
見ているうちにだんだん頬が赤く染まってきた。
﹁⋮⋮お兄さん⋮⋮﹂
﹁⋮⋮何?﹂
﹁ここ⋮⋮﹂
と言って香奈ちゃんは、カーディガンの上から自分の胸を指差し
た。
﹁触りたいですか?﹂
﹁っ⋮⋮!!﹂
大っきな声を出しそうになったが、何とかこらえた。
﹁あ、あぶねえ⋮⋮危うく大声出すとこだった⋮⋮か、香奈ちゃん、
何を言い出すの、突然⋮⋮﹂
香奈ちゃんはいつものクールな顔を保っているが、頬だけはぽわ
∼っと赤くなっていた。直接的な言葉を使わず胸を指差したのは、
他の入院患者に聞かれることを懸念してのことだろう。
﹁学校から直接来たので、見舞いの品も持ってきてないですし。未
羽もメールで﹃手ぶらでいいよ﹄と言ってたんですけど、そう言わ
れても気が引けるというか⋮⋮
身を挺しておばあさんを助けるなんて、ひょっとしたら新聞にでも
載りそうな善行をしたのですから、このくらいご褒美があってもい
いんじゃないですか?
わたしにできることなんてこれくらいですし、脳内メーカーで診断
したら脳みそが﹃乳﹄で埋め尽くされるお兄さんには、これが一番
かと﹂
﹁そんな診断結果出た覚えねえけど⋮⋮で、でも、香奈さん、本当
によろしいんですか⋮⋮?﹂
﹁煮え切らないですね。触るんですか? 触らないんですか?﹂
﹁触ります触らせてください。いやマジで、触らせてもらえるんな
ら怪我を差し引いてもお釣りが来るよ﹂
﹁生死をかけるほどのものではないでしょう。でも、そう言われる
227
と悪い気はしません。ちょっと待っててください⋮⋮﹂
香奈ちゃんはカーディガンを脱いだ。それからセーラー服の背に
手を入れ、ブラのホックを外す。裾がめくれて、真っ白な脇腹が見
えた。
え? ブラ取ってくれるの? 棚からぼた餅どころじゃない、棚
からクロマグロ︵400kg︶くらいのラッキーだよ。
香奈ちゃんは袖に手を入れ、ブラの肩ひもを引っ張りだして、腕
から抜いた。反対側も同じようにする。
最後にセーラー服の腹に手を入れ、ブラを引き抜く。水色の、超
高校級のカップを備えたそれを、速やかに鞄にしまう。
ど根性ガエルみたいに張り出したセーラー服の、二つのふくらみ
の頂点に、ぽっちりと乳首が浮き出していた。
﹁香奈ちゃん、何カップなの⋮⋮?﹂
﹁聞くんですか?⋮⋮ブラによって、EだったりFだったりです﹂
カーディガンを着ながら香奈ちゃんは答えた。ボタンをひとつだ
け留める。
ふむ、さすがにカーディガンの上に乳首が浮くことはない。これ
なら看護士や見舞客が急に来ても、ノーブラだとばれることはない。
香奈ちゃんは立ち上がり、俺が手を伸ばせばおっぱいに手が届く
位置に近寄った。
﹁⋮⋮言っておきますけど、今日は特別ですからね。ひとかたなら
ないお兄さんの善行を讃えてのことなのですから、いつでも触れる
と思ったら大間違いですからね﹂
ツンな物言いをしつつも、香奈ちゃんの頬はほんのり赤い。⋮⋮
可愛いなあ、いつでもおっぱいが揉める未羽がうらやましいぜ。
﹁承知しました。一生に一度のことと心得て、大切に触らさせてい
ただきます﹂
﹁⋮⋮どうぞ﹂
香奈ちゃんが胸を突き出す。こんもりとした双丘を前に、俺はご
くりと生唾を呑んだ。
228
考えてみると、パイずりされたことはあっても、胸を触るのは初
めてだ。順番がおかしいな、俺たち。
﹁で、では⋮⋮﹂
そーっと左手を伸ばす。すると、香奈ちゃんがすっと身を引いて、
俺の手を避けた。
え? 何で避けるの? やっぱ嫌になった?
﹁ちょっとお兄さん、服の上から触らないでください。しわになる
じゃないですか﹂
﹁え? じゃ、じゃあ⋮⋮﹂
﹁⋮⋮中に、手を入れていいですから⋮⋮﹂
生乳キターーーーー!!!!!
﹁い、いいの?⋮⋮香奈ちゃん⋮⋮﹂
﹁据え膳を差し上げてるのに男らしくないですね。早くしないと、
未羽が戻ってきますよ﹂
そう言って身を寄せる。俺はもう一度生唾を呑んだ。
ゆっくりと手を伸ばし、セーラー服の裾に手を入れる。
腹に指先が触れる。香奈ちゃんがぴくんと反応した。
うわ⋮⋮ドキドキする。隠れていけない遊びをしているような⋮
⋮。
徐々に手を上へ移動させる。裾がめくれて、白さも眩しいお腹が
露わになった。エロいよ⋮⋮。
指先が乳房に触れる。香奈ちゃんが﹁あ⋮⋮﹂と小さく声を漏ら
した。ううう、ドキドキするよー。
俺は手をお椀型にして、乳房を包むように手のひらを置いた。
うわぁ⋮⋮でかい⋮⋮! 手のひらからはみ出すじゃないか⋮⋮
それに何だこの肌触りの心地よさ⋮⋮赤ちゃんのほっぺたみたいだ
⋮⋮すべすべで、柔らかくて、温かい⋮⋮。
でもって、手のひらの中心に、柔らかな突起物の感触⋮⋮これ、
229
乳首大明神⋮⋮ですよね?
﹁か、香奈ちゃん⋮⋮大っきい⋮⋮ものすっげえ触り心地いい⋮⋮﹂
﹁ちょっ⋮⋮お隣に聞こえるから、感想言わないでください⋮⋮揉
んでいいですよ⋮⋮﹂
顔を赤くして、香奈ちゃんはささやいた。ちょっとだけ息が荒い。
彼女もドキドキしているのだろう。
お言葉に甘え、ソフトに指へと、力を加える。
ふにゃりとした感覚とともに、指が乳房に潜り込む。香奈ちゃん
のおっぱいは、わずかな力でも驚くほど柔軟に形を変え、ふよんふ
よんと得も言われぬ弾力を返した。
ぐわぁ⋮⋮何だこの柔らかさは⋮⋮こんなに大きな物体がなぜこ
うもたやすく変形するのだ⋮⋮? 絹ごし豆腐かプリンくらいの柔
らかさじゃないか、どうしてこんなに柔らかくて形を保っていられ
るんだ⋮⋮?
そ、それにしてもこの大きさ⋮⋮未羽の発展途上のおっぱいもと
ても触り心地いいのだが⋮⋮ごめん未羽、香奈ちゃんのおっぱい、
別次元だ⋮⋮。
牛丼の﹁並盛り﹂↓﹁大盛り﹂↓﹁特盛り﹂の差じゃなくて、﹁
牛丼﹂↓﹁牛﹂くらい別次元だよ⋮⋮。
俺は無心におっぱいを揉み続けた。右のおっぱいから左のおっぱ
いへスイッチする。くぅ⋮⋮当たり前だけど、こっちも柔らかいよ
ー。
﹁んっ⋮⋮﹂
絶え間ない刺激に、香奈ちゃんが思わず声を漏らした。しまった、
という顔で、指を唇に当てる。恥じらう表情がものすごく可愛かっ
た。
香奈ちゃんの仕草にそそられて、悪戯心が湧いてきた。俺は手の
ひらを丸く回して、乳首を擦るように刺激してみた。
﹁あっ⋮⋮!﹂
さっきよりもはっきりとした声が漏れて、彼女は慌てて手で口を
230
ふさいだ。
うわ⋮⋮香奈ちゃんの反応、面白すぎる。
俺はさらに悪のりして、指先で乳首をつまんだ。くりくりと転が
すように愛撫する。
﹁⋮⋮っ!﹂
香奈ちゃんは両手で口を覆い、声が漏れないよう力いっぱい押さ
えつけた。
﹁⋮⋮⋮⋮っ!⋮⋮んっ!⋮⋮﹂
必死で口を押さえているので声は出ないが、代わりに鼻から息が
漏れる。
俺はしつこく乳首攻撃を続けた。香奈ちゃんは眼をきつく閉じ、
顔を真っ赤にして快感に耐えた。
ときおり身体が、びくっと震える。にじむ汗で額に貼りついた前
髪が、ひどくいやらしかった。
﹁⋮⋮ふっ⋮⋮っ!⋮⋮くぅっ!⋮⋮﹂
それにしても香奈ちゃん、嫌なら離れればいいのに、そうしない
んだよな⋮⋮未羽に攻められてるときもそうだけど、やっぱ香奈ち
ゃん、ドMなのだろうか?
﹁⋮⋮っ!﹂
って思ってたら、香奈ちゃんがバッと身を引いた。風呂をのぞか
れたしずかちゃんみたいなポーズで、胸をかばう。
全力疾走したあとのような、おでこまで真っ赤な顔に、はぁはぁ
と荒い息。怒って俺のこと睨みつけるんだけど、逆にとてつもなく
萌えた。
﹁⋮⋮こ、声が出ちゃいます⋮⋮も、もうおしまい!⋮⋮﹂
あちゃ、しまった、やり過ぎてしまった。
もっと揉んでいたかったが、仕方ない。元から棚ぼただったのだ
から、彼女の巨乳に触れられただけで満足しよう。
﹁ごめんごめん、あんまり香奈ちゃんの反応が可愛かったから⋮⋮﹂
そう言うと、かなちゃんはまたポッと顔を赤くした。
231
﹁ありがとう香奈ちゃん。君の胸は国宝級だ。俺はこの手に残った
感触を一生忘れないよ﹂
﹁そ、そうですか⋮⋮わたしは大きすぎるのがコンプレックスだっ
たんですけど、やっぱり男の人は大きいのが好きなんですね⋮⋮﹂
そう言いながら、乱れた服を整える。
﹁ところで香奈ちゃん、こんなにいい思いをして追加でお願いする
のは贅沢だと思うけど、その⋮⋮ついでに、見せてもらえないかな
?﹂
カーディガンのボタンを留めていた手がピタッと止まった。じわ
ーっと顔が赤くなる。
﹁ダ、ダメです⋮⋮! こんなところで⋮⋮﹂
おっぱいを直に揉まれるより、公衆で晒す方が恥ずかしいらしい。
⋮⋮乙女の感覚はよく分からん。
﹁一瞬でいいから、アレをやってくれないかな? 香奈ちゃん、先
っちょに舌が届くんでしょ?﹂
香奈ちゃんはぼしゅーっ!と頭から湯気を出した。
﹁なっ! 何でそんなこと知ってるんですか!⋮⋮って、未羽しか
いないですよね⋮⋮あの子、何てことまで⋮⋮﹂
がっくりとうなだれる香奈ちゃん。そうだよね、俺、君たちの友
情が何で続いているのか不思議だよ。
﹁⋮⋮と、とにかくダメです。触るだけで我慢してくだ⋮⋮﹂
その時、小さな足音に俺たちは気付いた。香奈ちゃんが素早くイ
スに座り直し、衣服を確認する。俺は入院着を突き破らんばかりに
おっ立っているジュニアを隠すため、下半身に布団を被せた。
﹁お兄ちゃーん⋮⋮あ、香奈ちゃん、来てたんだ﹂
カーテンから顔をのぞかせたのは未羽だった。香奈ちゃんの隣に
座り、トートバッグに入った荷物を床に降ろす。
﹁早かったね﹂
﹁うん、でもさっき来たばかりよ。背中見せてもらったわ﹂
クールビューティー香奈ちゃんが、一分前までおっぱいを揉まれ
232
てあえいでいたとは思えない落ち着きで答える。
﹁えー、見たんだ? 引いたでしょ? 見た目ひどいけど大したこ
とないからね。オロナイン塗っときゃ治るから﹂
﹁何がオロナインだよ⋮⋮俺が手術室から出てきたとたん﹃お兄ち
ゃーんっ!﹄って号泣して抱きついてきたくせに。ぶっちゃけ、あ
れが一番痛かったよ﹂
﹁なっ⋮⋮言わないでよ、そのこと!﹂
香奈ちゃんがくすくす笑う。⋮⋮ヨシ、未羽、何も気付いてない
な。
﹁香奈ちゃん⋮⋮何か、顔赤くない?﹂
甘くみてた! 超鋭いよエロエロ大魔王!
﹁⋮⋮お兄さんがいやらしいことばかり言うのよ。気の毒に思って
るなら乳揉ませてくれとか﹂
﹁あー、そうなんだ。ごめんね、うちのお兄ちゃん変態で﹂
見事に切り抜ける香奈ちゃんだった。⋮⋮俺を犠牲にして。
未羽は持ってきた荷物︱︱着替えや日用品や飲み物など︱︱を、
てきぱきと物入れや冷蔵庫にしまった。
﹁歯ブラシはここ、携帯の充電器はここに入れとくね。他に必要な
ものある?﹂
﹁いや、俺が気付かなかったものも全部持って来てくれてるよ。な
んて頼りになる妹なんだお前は﹂
﹁ティッシュは枕元に置いておくね。お兄ちゃん、片手は無事だか
らアレできるだろうけど⋮⋮ティッシュどこに捨てるの? ゴミ箱
に捨てると、回収されるとき恥ずかしいよね?﹂
﹁お前は頼りになる妹だが、そんなことまで気を回す必要はない﹂
入院中のオナニーのことまで⋮⋮っていうかティッシュの捨て場
所まで心配するなっつーの。歩けるんだから、どうにでもなるよ。
﹁うーん⋮⋮あたしがいるうちに、すっきりしといた方がいいよね
⋮⋮ねえ、香奈ちゃん⋮⋮いい、かな?﹂
え? すっきり?
233
﹁そうね⋮⋮本当は、兄妹でそういうの良くないと思うんだけど、
事情が事情だし、いいんじゃない? ご褒美も兼ねて﹂
﹁そう? 良かった。お兄ちゃん、香奈ちゃんのお許しが出たよ。
すっきりさせてあげるね﹂
﹁え? ちょ、未羽、すっきりって⋮⋮﹂
俺の質問には答えずに、未羽は身をかがめて布団の中へ頭を突っ
込んだ。
﹁み、未羽!?﹂
この病院の入院着は、甚平みたいに上下に分かれたデザインにな
っている。布団の中で未羽は、ズボンの腰紐をほどいた。
﹁まあ、未羽ったら、手でするんだと思ったら⋮⋮口でなの?﹂
香奈ちゃんが呆れ顔をしている。未羽は早めに済ませようとして
いるのか、さっさと俺のズボンをずり下げた。
布団の中なので見えはしないが、立ちっぱなしだった俺のジュニ
アが、びよんと顔を出したのが分かった。
うわ、さっきおっぱい触ったとき絶対我慢汁出てるよ⋮⋮未羽が
気付きませんように。
つぅー⋮⋮と、未羽の舌が陰茎を這う。ぞくっとして後ろに身体
を倒しそうになり、慌てて左手で支えた。
⋮⋮あ、危ねえ。いま仰向けに寝たら叫び声上げるよ、俺。
なめくじが這うように、舌が陰茎から亀頭へと何度も往復する。
じれったい刺激に身悶えしそうなった。
くっ⋮⋮俺、今週部活がハードで、三日オナニーしてないんだよ
⋮⋮ジュニアが敏感になってて、声出そうなほど感じる⋮⋮。
って思ってたら、未羽が俺のジュニアをぱっくりと咥えた。
﹁うっ⋮⋮!﹂
出そうじゃなくて、出ちゃったよ、声。
アイスクリームのように、亀頭をねっとりと舐めまわす。とろけ
るような舌の感触⋮⋮何で俺の妹、こんなにテクニシャンなの⋮⋮?
﹁くっ⋮⋮くふっ⋮⋮﹂
234
右手は包帯だし、無事な左手はつっかえ棒にしている。香奈ちゃ
んのように手で口を押さえることのできない俺は、声をこらえるの
に必死だった。未羽の舌は容赦なく俺のジュニアを這い回る。
そのうちに、俺の股間の辺りで布団が上下し始めた。未羽がピス
トン運動を始めたのだ。快感が倍増する。
未羽はフェラするとき、絶対に歯を当てたりはしない。舌で、唇
で、頬の粘膜で、とろけるようにジュニアを包み込み、まるで挿入
しているような快感を与えるのだ。
行ったことないけど、きっとソープ嬢よりも上手いと思う⋮⋮十
五歳だよ、うちの妹⋮⋮いろんな才能あり過ぎだろ⋮⋮。
歯を食いしばって声を上げないよう耐えていると、香奈ちゃんと
眼が合った。⋮⋮何だか、むすっとした顔をしていた。
不機嫌の理由が分からずに首をかしげた俺だが、ふと、この間読
んだラノベのシーンが頭によみがえった。
男の主人公が、ヒロインの作った料理を旨そうに食ったあと、幼
なじみが作った料理を同じように食べて、旨いと褒める。すると、
ヒロインが拗ねてしまうのだ。
⋮⋮こういうことですか? 香奈ちゃん、恥ずかしいのを我慢し
ておっぱいを触らせてあげたのに、俺がそんなこと忘れたように未
羽のフェラに悶えているから、面白くないんですか?
え? 何それ? 香奈ちゃん、ツン↓デレへ移行? この小説ハ
ーレム設定だった?
そんなことを思い悩んでいる間も、未羽の超絶技巧フェラは続い
ている。気持ち良すぎて、香奈ちゃんを気遣い平静な振りをするこ
となど、到底できなかった。
彼女はますますジト眼で俺を睨みつける。あの⋮⋮不可抗力です。
ふと、香奈ちゃんが、すっと手を動かした。殴られるんじゃない
かと、俺はビクッとしてしまった。
セーラー服の裾に手をかける。気が付くと、香奈ちゃんはジトー
っと俺を見つめながらも、なぜか頬を赤く染めていた。
235
香奈ちゃんは無言で、カーディガンごとセーラー服をまくり上げ
た。胸に引っかかって一旦停止したが、ぐいっと引っ張って、小高
い丘を乗り越える。
おっぱいキターーーーー!!!!!
香奈ちゃんの素晴らしき美乳が露わになった。圧倒的量感を誇り
ながらも、垂れずに丸みを保ち、ぷるんぷるんと揺れている。
真っ白な肌。少し大きめで、淡いピンク色の乳輪。乳輪に対し小
さめで、ツンと尖った乳首。
俺の好みにジャストミート! 俺得100%のおっぱいだ。
未羽は気づかずにフェラを続けている。極上の愛撫に、俺はもう
イってしまいそうだった。
香奈ちゃんはおっぱいを晒しながら、じっと俺の顔を見つめてい
る。無表情だが、頬だけ赤い。
片手で服が下がらないように押さえながら、もう一方の手を、乳
房の下にあてがう。
香奈ちゃんは力強く、乳房をぐっと持ち上げた。豊かな胸が、む
に、とひしゃげる。
おっぱいに向かって顔をうつむける。瞳は俺の表情を探るように
見つめたままである。
そうして、舌を伸ばす。舌先がかろうじて乳首に届き、香奈ちゃ
んは、自分の乳首を舐め回した。
﹁んっ⋮⋮﹂
微かに吐息がこぼれた。ピンク色の乳首が、唾液にぬめって艶を
帯びる。とろんとした眼で、香奈ちゃんは見せつけるように乳首を
ちろちろと舐めた。
クールな少女が見せる痴態は、幻想ではないかと思うほどエロか
った。頭がくらくらした。
ちょうどピークと重なって、俺は香奈ちゃんのセルフ乳首舐めを
236
凝視しながら、未羽の口の中にどぴゅどぴゅと放出した。
﹁ぐっ⋮⋮ううっ⋮⋮﹂
三日ぶりのこともあり、射精は長く続いた。未羽は全てを口に受
け止めた。
射精が止んでからも、未羽はジュニアを口に含み、ゆっくりと舌
で愛撫する。最後の一滴まで絞り出してくれるつもりなのだ。⋮⋮
マジ天使です、未羽さん⋮⋮。
香奈ちゃんは俺が達したのを見届けると、素早く服を元に戻した。
そっぽを向いて、何食わぬ顔をしている。
精液と唾液をこぼさないように気をつけながら、未羽は俺のジュ
ニアを引き抜いた。
布団から頭を出す。歯磨き粉を口に含んでいるような顔をしてい
た。
呑まないでいいよ、と言おうとしたのだが、未羽はペンギンが魚
を呑み込むような動作で、ごくりと喉を鳴らしながら呑み下してし
まった。
兄の精液呑んじゃったよ、俺の妹⋮⋮。
﹁ふう⋮⋮えへ、呑んじゃった。どうだった? お兄ちゃん?﹂
爽やかな笑顔でにこっと笑う。⋮⋮いま看護士が入ってきたって、
フェラしたばっかだとは思わねえだろうよ。
﹁最高でした⋮⋮ぶっちゃけ溜まってたんで、マジすっきりした⋮
⋮。お兄ちゃん、退院までしなくて大丈夫です﹂
﹁そう? 良かった、へへ﹂
眼を三日月にして微笑む未羽。エロエロ大魔王のくせに、子供み
たいな顔で笑いやがる。
ふと、香奈ちゃんと眼が合った。何だか得意げな顔をしている。
⋮⋮正直、未羽には悪いが、香奈ちゃんのおっぱいをおかずにイ
ったようなものだった。
香奈ちゃん、何で未羽相手に対抗心燃やしてるんだか⋮⋮。お前
らもカップルでしょ?
237
﹁うー、口の中、変⋮⋮。香奈ちゃん、お茶ちょうだい﹂
冷蔵庫の近くに座っていた香奈ちゃんが、お茶をとって未羽に渡
す。
﹁よく呑めるわね、それ⋮⋮どんな味なの?﹂
友人の兄にセルフ乳首舐めを見せつけていた香奈ちゃんが、全く
普段通りの口調で聞いた。
﹁味はしょっぱいだけだけど、匂いが変⋮⋮呑めないことないけど
さ。香奈ちゃん、舐めてみる? まだちょっと残ってるよ﹂
そう言って未羽は、ぺろっと舌を出した。
香奈ちゃんはちょっとだけ迷ってから、すっと顔を寄せた。口を
開けて舌を伸ばし、未羽の舌に絡める。
﹁んふ⋮⋮﹂
唾液にぬめった舌が、軟体動物のように絡み合う。
⋮⋮あの、香奈ちゃん? それ俺の精液だよ? 他にも突っ込み
たいこといっぱいあるけど。
未羽も香奈ちゃんも、怪我人の俺を空気にして、うっとり顔でべ
ろちゅーしている。美少女二人のキスは、いやらしくて、美しかっ
た。
﹁ぷは⋮⋮﹂
味見するだけなら一瞬ですむはずだが、二人は一分間以上舌を絡
め合ってから、ようやく唇を離した。
﹁本当、変な匂い⋮⋮わたし女の子の液の方が好き﹂
﹁へえ、香奈ちゃん、アレ美味しくないって言ってなかった?﹂
﹁⋮⋮未羽のは好き⋮⋮﹂
見舞いに来た俺の前で劇甘エロトークを繰り広げる二人だった。
未羽と香奈ちゃんがお茶で俺の精液を洗い流していると、三人目
の足音が近づいてきた。
俺のベッドのカーテンの前で、足が止まる。小さなスニーカーと
238
細い足首が、カーテンの下からのぞいている。もじもじと足は動く
のだけど、声はかけてこない。
﹁のりちゃん? 入りなよ﹂
未羽の方から声をかけた。足がピタリと止まり、そおっとカーテ
ンが開かれる。
顔をのぞかせたのは、やっぱりのりちゃんだ。相変わらず気が小
さい。一度帰宅したらしく、私服だった。
﹁⋮⋮未羽ちゃん、あ、香奈ちゃんも⋮⋮お、お兄さん、すいませ
ん、お邪魔します⋮⋮﹂
未羽はイスを立って、のりちゃんを香奈ちゃんの隣に座らせた。
畳んでいたパイプイスを出してきて、未羽ものりちゃんの隣に座る。
可愛い女の子が三人並ぶと絵になるなあ。未羽がしっとり艶々の
ロングストレート、香奈ちゃんがさらさらボブカット。のりちゃん
はふわふわ巻き毛のメガネっ子。三人三容、それぞれ個性があって、
魅力的だ。
こんな可愛い女の子たちが、俺を慕ってくれてるんだよなあ⋮⋮
幸せだ、俺。神様ありがとう。
﹁⋮⋮あ、あの、これ、持ってきていいのか迷ったんですけど、お
土産です⋮⋮厚揚げと、納豆巻き⋮⋮﹂
持っていた﹁大豆鐘良﹂の紙袋からタッパーを二つ出す。
﹁おお、ありがとう。昼飯、病院食食ったんだけど、もうマズくっ
て。嬉しいよ﹂
﹁そ、そうですか、良かったです、喜んでもらえて⋮⋮﹂
安堵の混ざった笑みをこぼす。のりちゃんの笑顔は、ほんわかし
ていて癒やされる。
﹁食べてもいいかな?﹂
﹁え? さ、さっそくですか⋮⋮! えと、ど、どうぞ! お箸で
す!﹂
焦って割り箸を俺に渡す。リアクション面白えなあ、この子。
俺は厚揚げのタッパーを開け、一つ箸でつまんだ。豆腐の側面に
239
切れ目があって、中に何か入っていた。
﹁あ、あの、厚揚げ、ネギとお味噌入ってます﹂
﹁へー、旨そう﹂
キツネ色に揚がった豆腐に、がぶっと食らいつく。ここに来る直
前に調理したらしい。まだ人肌に温かかった。
うむ、いつもながら旨い。この間食べたのは湯豆腐だったけど、
これは油で揚げてるからボリュームがあった。味噌が大豆の旨味を
存分に引き出している。精進料理みたいな病院食に物足りなさを感
じていた胃袋には、堪えられない味だった。
﹁旨え! 旨味と塩分が身体に染みるよ。ここの食事、味薄くって﹂
﹁そ、そうですか。お兄さん、美味しそうに食べてくれるから嬉し
いです﹂
俺は続いて納豆巻きもつまんだ。
﹁うわ、これやべえ。いくらでも食えそう。のりちゃんちの納豆、
本当に旨いな。うんうん、ホントご飯に合うよ⋮⋮っていうか、米
も旨いね﹂
﹁わっ! よく分かりましたね! これ、魚沼産のお米で、精米し
たてなんですよ!﹂
﹁へえ、どうりで。そう言えば厚揚げの味噌も旨かったよ﹂
﹁わぁ、お兄さん舌が肥えてますね! 味噌はうちの自家製です!
来年は新製品として出そうと思ってるんですよ! すごーい⋮⋮﹂
毎日のように未羽の作る食事を食べているので、知らないうちに
味覚が発達したようだ。のりちゃんが尊敬のまなざしで俺を見てい
る。俺株急上昇だ。
放っておくと箸が止まらないので、半分くらい食べて、残りは明
日の分として冷蔵庫に入れてもらった。一応病院の夕食も食わねば
ならないのだ。
﹁⋮⋮男の人って、食べっぷりが気持ちいいですね。また未羽ちゃ
んち遊びに行くとき、持って来ます⋮⋮﹂
心から嬉しそうにニコニコしている。飼い主に褒められてしっぽ
240
振ってる子犬みたいだ。思わず頭を撫でてあげたくなるんだけど、
二度目の対面でそれはいくら何でも馴れ馴れしすぎるので、ぐっと
我慢する。
それから、のりちゃんは怪我の具合を聞いた。俺は先ほど香奈ち
ゃんにした話を繰り返して聞かせた。
﹁へええ⋮⋮そんな大きな事故だったんですか。怪我ですんで不幸
中の幸いでしたね⋮⋮。でも、お兄さんすごいです。自分を犠牲に
して人の命を守るなんて、さすがです、素晴らしいです、ヒーロー
みたいです⋮⋮﹂
﹁いやいやいや、のりちゃん、大げさだって。あの状況なら誰でも
そうするよ﹂
﹁そんなことないです、お兄さんだからできたんですよ−﹂
のりちゃんが眼をキラキラさせながら俺を褒めちぎる。非常にこ
そばゆかった。
俺とのりちゃんが話している最中、未羽と香奈ちゃんが一瞬目配
せを交わした。
⋮⋮この二人のアイコンタクトはスラムダンク並みの情報量をや
りとりできるので、たちが悪い。
どうせまた、エッチな話題でのりちゃんを恥ずかしがらせようと
いう魂胆だろう。全く⋮⋮面白そうじゃないか。
案の定、香奈ちゃんが会話に割り込んできた。
﹁それにしても、利き腕を怪我したのは不便ですね﹂
香奈ちゃんのニュートラルな表情は、かえって何か企んでいるよ
うに感じられた。
﹁うん、でもまあ、片手でも日常生活はどうにかなるよ﹂
﹁でもお兄さん、これは右利きですよね?﹂
そう言って香奈ちゃんは、右手を筒状にして上下に振った。言う
までもない、男のオナニーのジェスチャーだ。
﹁っ!⋮⋮ちょっ! か、香奈ちゃん!﹂
のりちゃんが顔を真っ赤にして、慌てて香奈ちゃんの腕をつかみ、
241
その動作をやめさせた。
⋮⋮ってのりちゃん、今のが何だか知ってるんだね⋮⋮。
﹁香奈ちゃん、確かに俺は右利きだけど、そんなこと心配しなくて
いいから﹂
﹁左でするんですか? やりにくいでしょう?﹂
﹁か、香奈ちゃん! お、女の子がそんな話しちゃだめぇ!﹂
手を伸ばして香奈ちゃんの口を押さえようとする。うわ、やっぱ
めっちゃ面白え、のりちゃん弄り。
未羽が身体を乗り出して香奈ちゃんの方を向く。
﹁でも香奈ちゃん、たまに左手ですると、人にされてるみたいで気
持ちいいよね﹂
﹁んひゃっ!﹂
のりちゃんが手を上げてびっくりした。うわー、アニメみたいな
リアクション。
﹁み、未羽ちゃん! い、妹なのに! おおお⋮⋮お兄さんの前で
そんな⋮⋮!﹂
﹁うちオープンだから、こういう話、普通だよ? ねえ香奈ちゃん、
たまの左手って、新鮮だよね?﹂
﹁そうなの? わたし初心者だから、したことないわ﹂
おお、さすが香奈ちゃん。最近のりちゃんにオナニーを教えても
らったばかりっていう設定を忘れていない。
﹁あ、そっか。お兄ちゃん分かるよね?﹂
⋮⋮左手オナニーの話を兄に振るか、妹よ⋮⋮。
﹁あー⋮⋮ぶっちゃけそのとおりだ。久しぶりに左手でしてみるよ﹂
﹁お、お兄さん!⋮⋮﹂
のりちゃんは両手を頬に当て、頭から湯気を出していた。俺がオ
ナニーしてるとこ想像してんだろうな。眼が渦巻きになってるよ⋮
⋮面白え。
休む間を与えず、香奈ちゃんが無表情でのりちゃんを攻撃する。
﹁のりはあるの? 左手でしたこと?﹂
242
﹁ぶひゃあ!﹂
変な汗を垂らしているのりちゃんに、未羽が追撃。
﹁あるよね? のりちゃん中一からだもんね、一回くらいあるよね
?﹂
のりちゃんは茹でダコみたいな赤い顔で口をぱくぱくさせたが、
声が出なかった。
⋮⋮友達の兄貴の前で初オナニー年齢を暴露した上、左手オナニ
ーの経験を聞くなよ⋮⋮。
それはそうと、のりちゃん⋮⋮即座にきっぱり否定しないと、肯
定してるのと一緒だよ⋮⋮。
可哀想だから、ここらで助け船を出すことにした。
﹁こら、未羽。人前でそんなこと聞くもんじゃないだろ﹂
﹁はーい﹂
﹁ねえ未羽、左手でするのって、そんないいものなの? やりにく
いだけでしょう?﹂
まだ引っ張るかよ、香奈ちゃん。
﹁やりにくいからいいんだよ。慣れてない感じが、人にされてるみ
たいで気持ちいいの﹂
﹁ああ⋮⋮人にされると気持ちいいってのは、何となく分かるわ﹂
と言って香奈ちゃんは、のりちゃんの顔をじっと見た。のりちゃ
んの顔がボッと音を立てて赤くなる。電気ヒーターみたいにオレン
ジ色に発光していた。
﹁かかかっ、香奈ちゃん! その話はっ、だっ、だめっ!﹂
のりちゃんがパニクって手をバタバタさせる。
﹁何? その話って?﹂
俺もちょっとつついてみた。
﹁なっ、何でもありません!﹂
﹁あのね、お兄ちゃん﹂
﹁わーっ! み、未羽ちゃんっ! だめぇっ!﹂
右を向いたり左を向いたり、ボヤ火事を消そうとしているような
243
慌てぶりがあまりに可愛らしくて、俺は眼を細めてのりちゃんのリ
アクション芸を眺めていた。
☆
未羽たちは一時間ほど過ごしてから帰った。
暇でしょうがない入院生活だが、少なくとも今夜は香奈ちゃんの
おっぱいと未羽のフェラとのりちゃんのリアクションを反芻して、
退屈せずに過ごせそうだ。
携帯で見舞いのメールに返事を返していると、また足音が聞こえ
てきた。俺のベッドの前で止まる。
﹁あの、︱︱さん、こちらですか?﹂
俺が返事をすると、カーテンがめくられた。身ぎれいな服を着た
中年の女性と、黄色い花柄のワンピースを着た、小さな女の子が入
ってきた。
互いに挨拶を交わす。女の子も﹁こんにちは﹂と行儀良く挨拶し
た。
﹁このたびは、母を助けていただき、本当にありがとうございまし
た︱︱﹂
俺が助けたばーさんの娘さんと、お孫さんだった。女性は、バス
ケットに生けられた花を枕元の棚の上に飾ってくれた。
﹁本来は、母も一緒にお礼に来るべきなのですけど、まだ事故のシ
ョックで参っておりますので⋮⋮申し訳ありませんが、明日には気
持ちも落ち着くと思いますので、改めてお礼に参りたいと思います﹂
﹁そんな、気にしないでください。お礼とかいつでもいいので、ゆ
っくり休ませてあげてください﹂
俺がそう言うと、女性は何度も頭を下げて礼を言った。
﹁︱︱母は、長年夜間保育所の園長をしてきました。夜のお仕事を
244
されているお母さん方の子供たちを預かって︱︱。
いろいろと家庭の事情を抱えた子供たちが多いですから、苦労も多
かったんですけど、母は、そんな子供たちだからこそ、より良い保
育を提供しなくてはならないと︱︱経営も厳しい中、苦労して頑張
ってきた人なんです。
還暦を過ぎても園長を続けていたのですが、去年、やっと信頼で
きる方に経営を引き継ぐことができまして︱︱これからは好きな園
芸や旅行をして、自分の人生を歩もうとしていたところへ、この事
故で︱︱。
あなたに助けていただけなければ、母の人生は苦労ばかりで終わ
ってしまうところでした。
本当に、ありがとうございます︱︱﹂
そう言って、また深々と頭を下げる。真摯な姿に、俺は心を打た
れた。
﹁ほら、はるか。はるかもありがとう言って﹂
女性が女の子の背を押す。はるかと呼ばれた子が、ベッドのそば
に寄った。
﹁お兄さん、はるかのおばあちゃんを助けてくれて、ありがとうご
ざいました﹂
女の子は深くお辞儀をして、手に持っていた折り鶴の束を差し出
した。千羽鶴というにはほど遠い数だが、少々不格好に折られた鶴
が、数羽ずつ糸でつなげられている。
﹁はるか、千個折るのはむりだったけど、がんばって、二十五個、
折りました。これで、けがを早く治してください﹂
小さな手から、俺は二十五羽の鶴を受け取った。
﹁ありがとう⋮⋮はるかちゃんの鶴のおかげで、お兄ちゃんの怪我、
早く治りそうだよ。はるかちゃんは、何歳だい?﹂
﹁七歳です﹂
﹁おばあちゃんのこと、好きかい?﹂
はるかちゃんは、にこっと笑った。
245
﹁うん! はるか、おばあちゃん大好き! おばあちゃんね、とっ
てもやさしいし、折り紙も、お絵かきも、とっても上手なんだよ!﹂
はるかちゃんは、嬉しそうにおばあちゃんを自慢した。陽だまり
のような明るい笑顔に、俺の心はぽかぽかと温かくなった。
☆
午後十時。消灯時間を過ぎ、暗い病室で、俺はうつぶせに寝てい
た。
背中は相変わらず鈍い痛みを放っているが、慣れてきたのか、あ
まり気にならなくなっていた。
事故の直後は、ついてねえなあって思ったけど、俺が助けたのは
いい人だったらしい。なら怪我した甲斐があったってもんだ。
おかげでいろいろラッキーなこともあったしな。ほとんどエロイ
ベントだけど。
もう寝ようと眼を閉じる間際、マナーモードにしていた携帯が光
を放った。未羽からのメールだ。
﹃背中まだ痛い? よく眠れるといいね。おやすみ、お兄ちゃん。
大好き﹄
しばらくニヤニヤして携帯を眺めた後、﹃大丈夫だよ、おやすみ﹄
って返事を返して、俺は眼を閉じた。
おわり
246
247
︻後日談8の1︼のりちゃんと観覧車︵前書き︶
お待たせしました。後日談8、のりちゃん回です。
ご評価、ご感想などいただけるとモチベあがります!
よろしくお願いいたします!
248
︻後日談8の1︼のりちゃんと観覧車
夏の夕暮れ。俺は自宅から電車で二十分ほどのところにあるショ
ッピングモールに来ていた。目当てはここにある大型のスポーツ用
品店だ。
昨日親父から、﹁次期キャプテンなんだから、恥ずかしくないグ
ローブを買え﹂と言われ、金を渡された。
部員の皆が羨むようなちょっといいヤツを購入し、俺は機嫌が良
かった。いい親父だぜ。
買い物を済ませ、建物を出る。休日なので、ショッピングモール
の前の広場は人で溢れていた。ここはデートスポットでもあるので、
カップルが多い。
駅に向かって歩いていると、見覚えのある後ろ姿を見つけた。
小柄でスレンダーな体型、ふわふわの巻き毛。ショートパンツに
パーカーと、カジュアルというより地味と言った方が適切なファッ
ション。
人が行き交う広場で、彼女は空を見上げていた。視線の先には、
大きな観覧車。鉄骨に取り付けられたネオンが、次々と変化する幾
何学模様を、夕暮れの空に描き出している。
後ろから声をかけたらびっくりするだろうと思ったので、俺は彼
女の前に回った。
プラスチックフレームのメガネに、幼い顔立ち。一見地味だが、
造作はとても整っており、メガネを外したら実はかなりの美少女な
かねよしのりこ
のではないかと俺は思っている。
妹の友達、のりちゃんこと鐘良納子は、口を半開きにして輝く観
覧車を見つめていた。初めてTDLに来た小学生みたいだった。
249
﹁⋮⋮⋮⋮ん?⋮⋮わっ!? お、お兄さん!?﹂
ようやく俺に気付いたのりちゃんが、のけぞって驚く。相変わら
ずリアクションが大きい。
﹁やあ、奇遇だね﹂
﹁び、びっくりした⋮⋮! こ、声かけてくださいよ∼!﹂
ボーッと観覧車を眺めていたところを見られたのが恥ずかしいの
か、のりちゃんは顔を赤らめた。⋮⋮可愛いなあ、ポケットに入れ
て歩きたいよ、この子。
﹁ごめんごめん、何か見とれちゃってさ。のりちゃんは何しに? 買い物?﹂
﹁見とれ⋮⋮︵もう、さらっとこういうこと言うんだから︶﹂
﹁ん? 何か言った?﹂
﹁⋮⋮何でもないです。え、えっと。ここで北海道物産展があって、
美瑛で有名なお豆腐屋さんも出店するって聞いたので、父と一緒に
来たんです﹂
﹁へえ、研究熱心だね。それで、お父さんは?﹂
﹁父は先に帰りました。わ、わたしは⋮⋮せっかく来たから、もう
ちょっとあちこち見たいって言って⋮⋮﹂
﹁そう。で、美瑛の豆腐はどうだった?﹂
のりちゃんはちょっと得意そうに、にやっと笑った。
﹁うちのお豆腐の方が、断然美味しいです﹂
自信たっぷりだ。普段は小心者なのに、大豆のこととなると人が
変わる。
﹁そっか、そうだよな。大豆鐘良の豆腐と納豆は、日本一だ﹂
﹁えへへ、ありがとうございます﹂
眼を三日月にして笑う。⋮⋮いかん、ちょっと抱きしめたくなっ
た。
﹁お兄さんは? お買い物ですか?﹂
お、のりちゃんから質問してきた。人見知りの激しい彼女だが、
最近俺への警戒心がだいぶ解けてきたように思う。嬉しいかぎりだ。
250
俺はスポーツ店のレジ袋を掲げた。
﹁うん、グローブ買った。ちょっといいヤツ﹂
﹁へー、いいですね。男の人って感じです﹂
﹁のりちゃん、観覧車じーっと見てたね﹂
またポッと顔を赤くする。
﹁ひ、久し振りにここ来たら観覧車ができてて⋮⋮お昼に来たとき
は、電飾点いてなかったんですよ。日が暮れてから外に出たら、何
かもう、近未来?って感じにピカピカしてて⋮⋮あんまりきれいだ
ったので⋮⋮﹂
のりちゃんは恥ずかしそうにそう言った。確かにきれいだ。光り
輝く観覧車は、人を童心に帰らせる力があるよ。
これ、営業始めてから一年経ってないんだよな。俺の友人にもま
だ乗ったことのないやつが多い。ちなみに俺もない。
﹁のりちゃん、高いとこ平気?﹂
﹁え? んー、特に、高所恐怖症とかいうことはないですよ?﹂
のりちゃんは、﹁どうして聞くんですか?﹂っていう風に首をか
しげた。⋮⋮鈍っ! 気付けよ!
﹁観覧車乗りたい? おごってもいいんけど⋮⋮﹂
のりちゃんは五秒くらい鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
﹁⋮⋮⋮⋮は?⋮⋮えっ? え、ええっ!?﹂
肘を突き出して後じさるのりちゃん。いやいや、自然な流れだよ。
そんな驚くとこじゃないでしょ。
﹁のりちゃんにはいつも豆腐や納豆もらってるし、この間見舞いに
来てくれたお礼もしたいし⋮⋮乗ってみたいでしょ?﹂
﹁わっ、わたしっ⋮⋮ききき、きれいだなって見てただけで⋮⋮そ
の、お、お兄さんと、二人でかかか、観覧車とか⋮⋮﹂
顔を真っ赤にしてパニクるのりちゃん。
まあはっきり言って、二人っきりで観覧車なんて、ぶっちゃけデ
ートだよ。シャイなのりちゃんが動転するのも無理はない。
俺は今まで彼女がいたわけじゃないけど、未羽を相手にデートは
251
慣れているつもりだ。
言っておくが、俺は未羽と買い物したりファーストフード店に行
ったり映画を観たりするとき、これっぽっちも妹だとは思っていな
い。ガチで恋人だと思っている。
そのため、女の子のエスコートには慣れているのだ。⋮⋮誰だ?
残念すぎるなんて言ってるヤツは?
﹁⋮⋮わ、わたし⋮⋮﹂
小さくなって俯いてしまった。俺は頭を掻いた。
まあいい、この子の扱い方は、だいたい分かる。
﹁あのさ、俺も乗ったことないんだよ、この観覧車。前から乗って
みたかったんだけど、男ひとりで乗ったら変な人みたいじゃん。の
りちゃんが一緒に乗ってくれると、とてもありがたいんだけど﹂
のりちゃんはゆっくりと顔を上げた。上目遣いに俺をうかがう。
﹁⋮⋮お、お兄さんも、乗ってみたいんですか⋮⋮?﹂
﹁うん、すげえ乗りたい﹂
のりちゃんの瞳に輝く光を、俺は見逃さなかった。
﹁そ、それなら⋮⋮で、でも、奢ってもらうのは⋮⋮わ、わたしも
お金、出します⋮⋮﹂
俺はのりちゃんの頭にポンと手を置いた。
﹁あのさ、男が女の子に金出させるのって、すげえかっこ悪いんだ
よ。素直に奢られてりゃいいの。﹃男を立てる﹄って言うんだよ、
知ってる?﹂
俺に頭を撫でられながら、のりちゃんは惚れたような眼差しで俺
を見つめた。
⋮⋮のりちゃん、攻略しやす過ぎるよ⋮⋮。悪い男に騙されない
ようにね。
☆
252
券売機でチケットを買い、俺たちは列に並んだ。
休日なので、少し混んでいる。﹁だだいま15分待ち﹂と表示が
出ていた。観覧車は一周20分、最高到達点は70メートルだそう
だ。
﹁70メートルだって。結構高いね﹂
﹁そそ、そうですね⋮⋮﹂
のりちゃんは何だか落ち着きがなく、俺が話しかけると、ひどく
どもったり顔を真っ赤にさせたりした。
理由は分かってる。定番のデートスポットだけあって、並んでる
のカップルばっかなんだよ。
口には出さないけど、俺たちもはたから見たらどう見てもカップ
ルだろう。のりちゃんも意識しているに違いない。
俺は悪い気しないけど、のりちゃんはどう思ってるんだろうな⋮
⋮。ほんのり赤い頬を見ていると、不愉快に思ってはいないだろう
とは思うけど⋮⋮。
☆
253
︻後日談8の2︼アクシデント
順番が来て、俺たちはゴンドラに乗り込んだ。向かい合って腰を
下ろすと、ゴンドラが少し揺れた。
﹁⋮⋮ネオン、中から見ても、きれいですね⋮⋮﹂
車輪状のフレームに取り付けられたネオンが、赤、緑、青、紫と、
次々に色を変える。カラフルな光が、ゴンドラの中にも差し込んで
くる。
﹁そうだね。いい時間に乗れたんじゃないかな﹂
ゴンドラは弧を描いてゆっくりと上昇していく。建物が、自動車
が、道行く人々が、みるみるうちに小さくなっていく。
のりちゃんは窓に顔を寄せてはしゃいでいる。
﹁わあぁ⋮⋮すごーい、こんなに高いんだ⋮⋮車がミニカーみたい
⋮⋮﹂
上昇するにつれ、遠くの景色も見えるようになってきた。時刻は
夕暮れから夜へと移り変わろうとしている。街は深い藍色に沈み、
灯火が星を敷きつめたようにどこまでも続いていた。
﹁⋮⋮きれい⋮⋮星の海みたい⋮⋮すごい、あんなに遠くまで見え
る⋮⋮﹂
のりちゃんは窓に額をつけるようにして、瞬きもせず美しい夜景
を見つめていた。ネオンが彼女の頬を様々な色に染める。
⋮⋮やべえ、観覧車やべえ⋮⋮。
景色に心を奪われているのりちゃん、可愛すぎる⋮⋮。今すぐ抱
きしめてキスしてえ。つーか、降りたくねえ、百周くらいしてえ。
カップルが多いわけだよ、何この強力な吊り橋効果?
じーっと横顔を見つめている俺の視線に気付き、のりちゃんは慌
254
てて正面を向いた。
﹁あっ⋮⋮ご、ごめんなさい、わ、わたし一人ではしゃいじゃって
⋮⋮﹂
﹁いやいや、そんなに喜んでもらえたら、俺も誘った甲斐があった
よ﹂
観覧車は最高点にさしかかろうとしていた。見知ったビルが、ミ
ニチュアのように小さく見える。
﹁⋮⋮お兄さん⋮⋮﹂
﹁ん?﹂
のりちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
﹁きょ、今日は⋮⋮本当に、ありがとうございます⋮⋮こんなに、
素敵な景色が見れるなんて、思わなかった⋮⋮﹂
﹁お礼を言うのは俺の方だよ。付き合ってくれて、ありがとう﹂
﹁⋮⋮お、お兄さん⋮⋮初めての観覧車、一緒に乗るの、わたしな
んかでよかったんですか⋮⋮?﹂
そう言ってのりちゃんはもじもじした。
﹁何言ってんだよ、俺、のりちゃんとデートできて超ラッキーだよ﹂
﹁デっ! デデデっ、デートっ!!﹂
のりちゃんがイスから飛び上がりそうなくらいリアクションして、
ゴンドラが大きく揺れた。しまった、口が滑った。
﹁デデデデ、デートってそんな⋮⋮! つ、付き合ってるわけでも
なくて⋮⋮おお、お兄さんは未羽ちゃんのお兄さんであって⋮⋮そ
の、あの⋮⋮﹂
頭から湯気を出しながら、のりちゃんはしどろもどろにこれがデ
ートでないことを証明しようとする。眼が渦巻きになっていた。
﹁まあ、付き合ってるわけじゃないけど、はたから見たら俺たちど
っから見てもカップルだったと思うよ﹂
﹁⋮⋮そ、それは⋮⋮わ、わたしも、そう思われてるだろうなって、
思ってましたけど⋮⋮﹂
﹁俺、彼女いないからさ。ぶっちゃけ、嬉しかったんだよ。のりち
255
ゃんと一緒に歩けるのが。俺の彼女だぜ、見てくれー、って思って
た﹂
﹁そ、そんな⋮⋮わたし、可愛くないし⋮⋮未羽ちゃんや香奈ちゃ
んみたいに⋮⋮﹂
﹁いや、そんなことない。のりちゃん、未羽と香奈ちゃんと三人並
んでも、全然引けを取らないよ。ジャンルが別なんだよ、家庭的っ
ていうか、癒やし系っていうか。とにかく、のりちゃんは可愛い。
俺が保証する﹂
のりちゃんは眼を大っきく見開いたあと、恥ずかしそうに俯いて
しまった。おでこまで赤くなっている。
褒められ慣れていないであろうのりちゃんを褒めちぎれば、こう
なることは分かっていたが、ここは嘘がつけなかった。うん、のり
ちゃん可愛い、間違いなく。
﹁⋮⋮わ、わたしも⋮⋮﹂
俯いたまま、消え入りそうな声で、のりちゃんはつぶやいた。
﹁⋮⋮わたしも⋮⋮お兄さんのこと⋮⋮きっと、周りの人に、彼氏
だと思われてるって思ってて⋮⋮それが⋮⋮う、嬉しかった⋮⋮で
す⋮⋮﹂
俺の胸にキューピットの矢が突き刺さった︱︱その瞬間、ゴンド
ラが突然闇に包まれた。
﹁きゃっ!﹂
のりちゃんが小さく叫び声を上げた。観覧車のネオンが消えてい
る。いや、観覧車だけじゃない。この辺り一帯が闇に沈んでいる。
﹁停電か⋮⋮﹂
観覧車は俺たちのゴンドラを頂点にして停止していた。遠くの景
色の灯りは点いている。この辺り数キロ四方が停電しているようだ。
﹁て、停電⋮⋮やだ、怖い⋮⋮お、落ちたりしないですよね⋮⋮!﹂
﹁止まっただけだから、絶対落ちたりはしないよ。落ち着いて⋮⋮﹂
怖がるのりちゃんをなだめていると、下の方から拡声器の声が聞
こえてきた。
256
声は、停電により停止したが危険はないこと、電力が復旧すれば
元通り運転できることを伝え、それまで落ち着いてゴンドラ内に待
機して下さいと言い、謝罪を述べた。
﹁だ、大丈夫、なんですよね⋮⋮?﹂
﹁大丈夫、危ないことはないよ。でも、ついてないね﹂
局所的な停電だし、きっとさほど長い時間をかけずに復旧するだ
ろう。心配することはない。
それにしても残念なのは、甘いムードをぶち壊されたことだ。半
分は吊り橋効果だろうけど、キスしてもおかしくない雰囲気だった
んじゃね?
のりちゃんは不安気にそわそわしていて、もう先ほどのムードに
は戻れそうになかった。
﹁のりちゃん、落ち着きなよ。台風で停電しても、たいがい30分
以内には直るでしょ? すぐに復旧するよ﹂
﹁は、はい⋮⋮30分⋮⋮﹂
気を紛らわそうと俺は他愛のない話題を探しては話しかけたが、
のりちゃんは生返事を返すばかりで、話に乗ってこなかった。そっ
としておいた方がいいのかもと思って、俺は話しかけるのをやめた。
そのうちに、のりちゃんの様子が明らかにおかしくなってきた。
身体を強ばらせ、両手で膝を強くつかんでいる。伏せた眼は、異
様にまばたきが多い。具合が悪いのか聞こうとして、俺はハッと気
が付いた。
﹁のりちゃん⋮⋮トイレに行きたいの⋮⋮!?﹂
のりちゃんの肩がビクッと震えた。しかし、質問には答えず身体
を震わせている。
﹁のりちゃん、正直に言って! トイレなんだろ!?﹂
俺が強く言うと、のりちゃんはやっと首をうなずかせた。
﹁⋮⋮ほ、ほんとは、乗る前から、ちょっとだけ行きたかったんだ
けど⋮⋮に、20分なら大丈夫って思って⋮⋮﹂
⋮⋮気遣いが足りなかった。のりちゃんは俺一人を列に残してト
257
イレに行くことさえ、遠慮してしまう子なのだ。
のりちゃんは唇をぎゅっと噛み、キツく眼を閉じて尿意に耐えて
いる。かなり辛そうだ。
⋮⋮ダメだ、やばい。あと10分で停電が復旧したとしても、観
覧車が半周するまでもう10分かかる。のりちゃんのこの様子では、
到底我慢できそうにない。
のりちゃんは太ももに置いたこぶしを強く握りしめ、泣きだしそ
うな顔をして耐えている。
⋮⋮これは、ダメだ⋮⋮。これでは観覧車を無事降りることがで
きたとしても、トイレに走る途中とかで失禁してしまうかもしれな
い。ぶっちゃけ漏らしそうなときって、便器にたどり着いてファス
ナー下ろす瞬間が一番やばいよな。
判断を迷っている間に限界が来たら、取り返しのつかないことに
なる。俺はスポーツ店のレジ袋を取り、中のグローブを取り出した。
レジ袋をのりちゃんに差し出す。
﹁のりちゃん、もう限界だろ⋮⋮俺、後ろ向いてるから、これにし
てくれ⋮⋮﹂
のりちゃんは眼を大きく開いて、それからぷるぷると顔を振った。
﹁む、無理ですぅ⋮⋮で、できません、絶対⋮⋮﹂
﹁⋮⋮恥ずかしいのは分かるよ、でも、これしかないって! 俺、
絶対見ないから! このゴンドラてっぺんだから、他の客からも見
えないって!﹂
﹁い、いやぁ⋮⋮できない⋮⋮できないよぉ⋮⋮﹂
のりちゃんは頑なに首を振った。こぼれた涙が頬を伝い、ショー
トパンツに涙の染みを作った。
くそお、やっぱり、のりちゃんには無理か⋮⋮。
せめてスカートだったらパンツ脱ぐだけですむんだけど、ショー
トパンツなものだから全部脱がなきゃならないし⋮⋮。
それよりも、たとえ俺が後ろを向いていたとしても、男のすぐそ
ばで下半身裸になって、レジ袋に小便するなんて⋮⋮音も臭いもす
258
るだろうし、そんなことのりちゃんにできるわけがない。
このままでは確実に失禁すると分かっていても、彼女は動くこと
ができなかった。肩を振るわせて必死に尿意に耐えているが、それ
も時間の問題だ。
⋮⋮仕方ねえ。たとえ悪者になっても、やるしかない。俺は覚悟
を決めた。
俺はレジ袋を床に放り、のりちゃんの前に膝をついた。手を伸ば
し、のりちゃんのショーパンのベルトを掴む。
﹁⋮⋮っ! お、お兄さん⋮⋮! 何を⋮⋮!﹂
﹁ごめん、のりちゃん、脱がすよ﹂
﹁やっ!⋮⋮やぁっ! やめてっ!﹂
俺がバックルからベルトを引き抜こうとすると、のりちゃんは俺
の手を押さえて必死に抵抗した。
ちっくしょう! ほんのちょっと前までいい雰囲気だったのに⋮
⋮もう二度と口聞いてもらえないだろうなあ⋮⋮。
ええい! 嫌われたって構わねえ! のりちゃんのためだ!
﹁お願い、やめて⋮⋮いやぁ!﹂
のりちゃんは必死で俺の手を引き離そうとする。非力な女の子と
はいえ、本気で抵抗されるとさすがにベルトを外すことができない。
それよりも、こんなに暴れていたら、何かの拍子に腹部が圧迫さ
れて、決壊しかねない⋮⋮くそぉ、ごめん、のりちゃん⋮⋮。
﹁じっとしてろ!!﹂
﹁ひっ!﹂
俺が怒鳴ると、のりちゃんは声を上げて身体をすくませた。
⋮⋮俺、野球部で声出しするから、めっちゃでかい声出せるんだ
よ。俺が本気で怒鳴れば、部の後輩を直立不動にさせることもわけ
ない。
⋮⋮女の子に使いたくなかったぜ⋮⋮一発で嫌われるに決まって
る⋮⋮。
案の定、のりちゃんは豹変した俺におびえ、顔を青くしている。
259
﹁脱がすよ⋮⋮じっとしてて﹂
俺は再びバックルに手をかけた。のりちゃんは抵抗しようとしな
い。
⋮⋮あれだけ嫌がってたのに抵抗しないのって、それだけ俺が怖
いってことだよなあ⋮⋮切ないぜ⋮⋮。
俺は腹部を圧迫しないように気をつけながら、バックルからベル
トを外した。ショートパンツのホックも外す。
続いて、ファスナーに手をかける。⋮⋮ぐっ⋮⋮のりちゃんの小
さな腰、子供みたいだ⋮⋮すっげえ犯罪気分⋮⋮。
躊躇う時間はない。俺はジーッっとファスナーを引き下げた。
﹁あっ⋮⋮やぁっ⋮⋮﹂
のりちゃんが恥じらいを含んだ声を漏らす。ファスナーの間から、
淡いピンクのパンツがのぞいた。
俺の意思とは関係なく、股間に血液が集まってくる。瞬時に俺の
ジュニアはギンギンになった。
こんな状況で興奮するかよ⋮⋮すごい自己嫌悪を俺は感じた。
ファスナーを最後まで下ろす。次はショーパンを脱がせなくては
⋮⋮腰の部分を、俺は両手で掴んだ。
﹁あっ⋮⋮﹂
のりちゃんが俺の腕に手を重ねたが、それだけで、抵抗はしなか
った。のりちゃんが腰を上げてくれないので、俺は力を入れてショ
ーパンを引いた。
﹁あっ⋮⋮いや⋮⋮﹂
小さく拒否をつぶやくが、のりちゃんはなすがままにショーパン
を脱がされた。邪魔なスニーカーも一緒に脱がせてしまう。綿のピ
ンク色のパンツは、シンプルで色気がなかった⋮⋮いや、逆にロリ
っぽくていやらしい⋮⋮。
ぶっちゃけ、これって犯罪だよな⋮⋮俺、のりちゃんに訴えられ
たら少年院行きかも。
ふと顔を上げると、のりちゃんが眉を八の字にして、悲しそうに
260
眼を潤ませていた。心が折れそうになるぜ⋮⋮でももう、後戻りで
きねえ。
パンツに手をかけると、さすがにのりちゃんが抵抗した。
﹁いやっ⋮⋮! だ、だめぇっ! ⋮⋮﹂
パンツを押さえようとする腕をつかまえ、俺はその腕をのりちゃ
んの胸の前に押さえつけた。
﹁のりちゃん! いいか! 手はここ、動かすんじゃない!﹂
﹁ひっ⋮⋮うぇぇん⋮⋮﹂
キツい口調で俺が言うと、のりちゃんはおびえて涙を流した。⋮
⋮俺死にてえ⋮⋮何でこんないたいけな女の子を脅さなくちゃなら
ないの⋮⋮?
再びしゃがんで、パンツに手をかける。のりちゃんは、ひっく、
ひっくとしゃくり上げながら、言われたとおり胸の前で腕を組んで
いる。罪悪感で胸がちくちく痛んだ。
息を大きく吸って、覚悟を決め、俺はのりちゃんのパンツを引き
下げた。
﹁やぁっ⋮⋮!﹂
一気に太ももまでずり下ろし、パンツがよじれてひもみたいにな
る。毛の一本も生えていない幼いスリットが、俺の眼に飛び込んで
くる。
﹁⋮⋮っ!﹂
ぐわ⋮⋮パイパンなのは知ってたけど、未羽も香奈ちゃんも一緒
なんだけど⋮⋮のりちゃんは腰回りとか小っちゃくて、ロリ感がハ
ンパなさ過ぎる⋮⋮!
無修正動画のAV女優とか、パイパンでもちょっと黒ずんでるじ
ゃん? のりちゃんのあそこ、色が周りの肌色と全く一緒で、小学
生みたいだ⋮⋮。
これで指入れオナニーしてるんだよね? エロ過ぎる⋮⋮。ぐわ
ぁ⋮⋮俺、自分のことロリコンではないと思ってたのに⋮⋮。
﹁やぁっ⋮⋮ひっく、ひっく⋮⋮﹂
261
ハッ! しまった、のりちゃんの股間に見入ってしまった。時間
がないのだ、急がなくては⋮⋮。
俺は、するするとパンツを引き下げた。太もも、ひざ、ふくらは
ぎと、順に通していく。布と肌が擦れ合う感触が、異常に艶めかし
い。
こんな状況でも身体は正直で、俺のちんこはビンビンだった⋮⋮
我慢汁出てるだろうな、俺⋮⋮最低だ⋮⋮。
足首からパンツを抜き取り、のりちゃんは下半身裸になった。大
きめのパーカーを着ている上半身との対比が、これまたいやらしか
った。
﹁のりちゃん、ほら、膝立ちになって⋮⋮﹂
俺はのりちゃんの手を取って引き寄せた。のりちゃんはぐすぐす
と鼻をすすりながら、従順に俺に従った。
ゴンドラの固い床の上にひざを突かせ、膝立ちにさせる。うん、
これなら窓より低いから、外からは絶対見えないはずだ。
﹁のりちゃん、ちょっと脚を開いて⋮⋮﹂
﹁えっ⋮⋮そ、そんな⋮⋮やだぁ⋮⋮﹂
のりちゃんが脚を開こうとしないので、俺はぴったりと閉じてい
る太ももの間に手を入れた。ぷにっとした肌の感触にドキリとした。
﹁あっ⋮⋮! やぁっ⋮⋮﹂
嫌がるのりちゃんにかまわず、俺は30センチくらい脚を開かせ
た。上の方しか見えなかったスリットが、お尻につながる線まで露
わになる。
⋮⋮つーか、ちょっとだけ開いて、ピンク色の中身が顔をのぞか
せていた。見ているだけで射精しそうだった。
﹁やだよぉ⋮⋮ひっく、ひっく⋮⋮﹂
俺はレジ袋を拾い上げ、片方の吊り手をお腹の方に、もう片方を
尻の方にして持ち、のりちゃんの股間に当てた。馬の鞍にまたがっ
ているような感じだ。これならこぼれることはないだろう。
﹁うっ⋮⋮あっ⋮⋮やぁっ⋮⋮﹂
262
のりちゃんが俺の肩に手を置く。俺はレジ袋を構えたまま、じっ
としていた。何もしなくても、じきに限界が来るだろう。
﹁やっ、やだ⋮⋮あっ⋮⋮もう⋮⋮やっ、いやぁ⋮⋮﹂
俺の肩に置いた手が、がたがたと震えた。やはり、もう限界のよ
うだ。
﹁あっ⋮⋮もう、だめっ⋮⋮ああっ⋮⋮い、いやああぁぁぁぁ!﹂
決壊が始まった。レジ袋がガサガサいう音と、じゃあぁぁぁ⋮⋮
と続く水音が混じり合う。
﹁あっ⋮⋮はぁ⋮⋮はぁぁ⋮⋮﹂
のりちゃんの身体から強ばりが解けていく。長く耐えていた尿意
から解放され、彼女は恍惚とした表情を浮かべていた。未羽がイっ
た後に浮かべるような表情だった。
レジ袋が重みを増していく。半透明のレジ袋を透かして、水位が
上がっていくのが分かる。
ゴンドラ内に臭いが広がっていく。のりちゃんのおしっこの臭い
は、不思議に健康的で、全然不快ではなかった。
のりちゃんの小さな身体からは信じられないほど、水音は長く続
いた。レジ袋にはたっぷりと尿が溜まっている。こんなに出るなん
て⋮⋮よほど苦しかったろうなあ。
30秒くらいに感じたが、それで合ってるのかさっぱり分からな
い時間が過ぎて、ようやくのりちゃんのおしっこが勢いを弱めた。
ちょろちょろとした音が途切れ途切れになり、水滴が落ちる音を
最後に、水音は止んだ。俺は長く、深い溜息をついた。
のりちゃんの顔を見ると、頬を赤くして、もうろうとした表情を
していた。はぁ、はぁ⋮⋮と、息が少し荒い。
おしっこが出きったのを確認すると、俺はレジ袋をのりちゃんの
股間からそっと取り出した。
おしっこは驚くべき量だったが、袋がでかいので底のほう四分の
一くらいに収まっている。俺は吊り手を結わえて、臭いが漏れない
ようにした。
263
ジーンズのポケットからハンカチを出し、俺はボーッとしている
のりちゃんに渡した。
﹁のりちゃん、これで拭いて、服着て⋮⋮﹂
俺は後ろを向いた。しばらくすると、背中の向こうからのりちゃ
んがのろのろと服を着る音が聞こえた。
☆
停電が復旧したのは、それから20分後だった。
ゆっくりと回転を始める観覧車。降りるまであと10分か、絶対
間に合わなかったな⋮⋮判断は正しかったようだ。
俺とのりちゃんは、最初と同じように向かい合って座っている。
違うのは、俺の手にぶら下がった、おしっこ入りのレジ袋と、何と
も気まずい空気だ。窓を開けているので空気は入れ換わり、臭いは
なくなっている。
のりちゃんは服を着た後、ベンチ状のイスに腰掛け、口を開かな
かった。うつむいて、じっと静かに座っている。
俺もかける言葉がない。彼女のためとはいえ、ほとんど犯罪まが
いのことをしてしまったのだ。のりちゃんは深く傷ついていること
だろう。
あんな恥ずかしい目に遭ったのだ。俺を恨んで当然だ。関係の修
復は望むべくもない。
観覧車は、時計でいうと三時の位置を過ぎた。あと五分くらいか。
⋮⋮罪滅ぼしじゃないけど、話をしておくか。のりちゃんとは、
これで最後になるかもしれないし。
﹁あのさ⋮⋮﹂
俺が話しかけると、のりちゃんはビクッと肩を振るわせた。警戒
心丸出しだよ⋮⋮。
264
﹁俺⋮⋮小学五年生の時、臨海学校のバスの中で、小便漏らしたこ
とがあるんだ﹂
のりちゃんはじっとして、相づちも打たない。俺は勝手に話を続
けた。
﹁凸凹道の、トイレなんか絶対ないとこを走ってて⋮⋮女子も多か
ったから、バスを止めて立ちションするなんて、絶対いやだったん
だ。
もうちょっと、もうっちょっとって我慢したんだけど、結局バスが
大きく揺れたショックで漏らしちゃって⋮⋮。
バスのシート、布張りだったからびっちょびちょになっちゃって、
バスの中臭いが充満するしさ。びしょ濡れのズボンとパンツをみん
なの前で脱がされて着替えさせられて⋮⋮すっげえ恥ずかしかった
んだよ﹂
のりちゃんが、少しだけ顔を上げた。
﹁⋮⋮そんな思い、させたくなかったんだ。でものりちゃん、怖か
ったし、恥ずかしかったよな⋮⋮脅すようなことして、本当にごめ
ん⋮⋮﹂
のりちゃんはノーリアクションだ。再び沈黙が訪れる。
観覧車が、五時の位置を過ぎる。あとちょっとで、終点だ。
﹁わたし⋮⋮﹂
窓の外を見ていた俺は、のりちゃんから話しかけてきたことに驚
きながら、前を向いた。
のりちゃんは、困ったような顔で、俺を見つめていた。
﹁わたし⋮⋮分かってます、お兄さんが、わたしのためを思って、
してくれたこと⋮⋮お兄さん、ありがとう⋮⋮﹂
言葉が終わると同時に、係員が扉を開いた。
﹁大変、申し訳ございませんでした!﹂
係員が並んで、出てきた客に頭を下げている。一番前に、スーツ
を着た小太りのおっさんがいる。責任者っぽかった。
俺は、半透明のためどうにも隠しようのない小便入りのレジ袋を
265
持って、そのおっさんの前に進み出た。
ずいっ、と、鼻先に袋を突きつける。おっさんは目を丸くした。
﹁こいつは、俺の小便だ!﹂
周りに聞こえるように、俺は大声で言った。言っとくけど、俺の
声響くよ。
﹁どういうことか分かんだろ! 彼女の前で恥じかかせやがって!
こいつをここでぶちまけたいところだが、勘弁してやる! お前、
こいつを処分しろ!﹂
おっさんにレジ袋を手渡す。袋がたぷんと揺れた。
﹁はっ、はいっ!! 大変ご迷惑をおかけいたしました!!!﹂
恐縮して頭を下げるおっさんを放って、俺は出口に向かった。の
りちゃんがあたふたしながらついてくる。
建物を後にし、俺たちは今日最初に出会った広場に出た。すっか
り日が暮れて、人通りも昼より少なくなっている。
並んで夜風を受ける俺たち。⋮⋮さて、どうしたものか。
観覧車を降りる間際ののりちゃんの発言からすると、関係修復の
余地はありそうだが、これ以上どう会話をすればいいのか分からな
い。
今日はここで別れよう⋮⋮のりちゃんの気持ちが落ち着いてから、
また学校ででもフォローすればいいさ。
﹁のりちゃ⋮⋮﹂﹁お兄さ⋮⋮﹂
別れの挨拶をしようと思った思った俺と、のりちゃんの言葉が重
なった。
﹁あ⋮⋮どうぞ、お兄さんから⋮⋮﹂
﹁いいよ、のりちゃんから﹂
のりちゃんは頬を染めて、しばらくもじもじしていた。
﹁お、お兄さん⋮⋮﹂
﹁ん⋮⋮何?﹂
266
﹁⋮⋮⋮⋮ご、ごはん、奢って下さい⋮⋮﹂
今度は俺が鳩豆顔をした。
﹁わ、わたしの⋮⋮裸、見たから⋮⋮お返しに、晩ご飯、奢って下
さい⋮⋮お、美味しいもの⋮⋮お、男を立てて、あげますから⋮⋮﹂
晩ご飯一食で、全てを水に流そうと言ってくれているのだ。のり
ちゃんの気遣いに、俺は心から感謝した。
慣れないおねだりをするのりちゃんは、顔が真っ赤である。死ぬ
ほど萌えた。
﹁そんなんでいいの? いくらでも奢ってやるよ﹂
﹁⋮⋮イ、イタリアンがいいです⋮⋮﹂
﹁そっか、未羽が教えてくれた、いい店知ってるよ。あ、これ、デ
ート?﹂
﹁デデデデッ、デートじゃないですっ!!!﹂
SLみたいに頭から蒸気を噴き出すのりちゃん。今日一番のリア
クションだった。
おわり
267
︻後日談8∼おまけ︼ほんとにおまけ的な。
観覧車事件から数日が過ぎたある日。俺が部活を終えて帰宅する
と、先に帰っていた未羽が抱きついてきた。
﹁おっ、に、い、ちゃーん! おっかえりなさーい!﹂
玄関先で思いっきりハグする。未羽はもう部屋着に着替えていて、
パットなしブラのおっぱいが、俺の腹にむぎゅっと押しつけられる。
﹁わっ、おいおい、未羽、何だよ⋮⋮くっつくなよ、俺汗臭いから
⋮⋮﹂
ホントはくっついていてほしいけど。
﹁あのね、今日お昼時間に、のりちゃんから聞いたよ、観覧車のこ
と﹂
俺はぐっと声を詰まらせた。
﹁のりちゃんが自分から話したのか? 意外だな⋮⋮﹂
﹁黙ってると、あたしたちに隠しごとしてるみたいで変な気持ちに
なるからって。香奈ちゃんも一緒に聞いたよ﹂
﹁⋮⋮で、何て⋮⋮? 俺のことどう言ってた⋮⋮?﹂
一応、その日は楽しく食事して帰ったのだが、その後会ってない
し、一晩経って落ち着いたらやっぱり俺が恨めしいとか⋮⋮ありそ
うだよな、清純な乙女なんだし。
﹁恥ずかしかったし、怒鳴られたときは怖かったけど、お兄ちゃん
が無理やりでもしてくれなかったら確実にお漏らししてたから、す
ごく感謝してるって。
あたしもお兄ちゃん偉いと思うよ。漏らすまで黙って見てることも
できたし、普通そうするよね。のりちゃんのことを思えばこそだよ﹂
俺は安堵の溜息をついた。
﹁そうか⋮⋮のりちゃん優しいなあ、あんなひどいことしたのに⋮
⋮﹂
268
﹁逆にのりちゃんが気にしてたよ。お兄ちゃんに嫌われてないかっ
て﹂
﹁なっ⋮⋮そんなことあるわけないじゃん! お前なんて答えたん
だ?﹂
﹁お兄ちゃんは少女のおしっこ大好きだから、むしろ好感度上昇だ
よって﹂
﹁ドン引きするだろ! 台無しだよ!﹂
全力で突っ込む俺。
﹁冗談だよ。お兄ちゃんに限って嫌ったりすること絶対ないって言
っておいたから﹂
﹁⋮⋮ならいいが⋮⋮そうか、気にしていないんなら、また家に遊
びに来いって言ってやってくれ。それでこの件は終了だ﹂
俺がそう言うと、未羽はニヤニヤと小悪魔笑いを浮かべた。
﹁ところでお兄ちゃん、五年生のときバスでお漏らししたんだって
? そんな過去あったかな∼?﹂
﹁んだよ⋮⋮のりちゃんそれも話したのか? 子供のころの話だよ﹂
﹁あたしの知ってる話は、バスでお漏らししたのはお兄ちゃんの友
達の公人さんで、お兄ちゃんは臨海学校で公人さんをからかった男
子たちと大げんかしたんじゃなかったっけ∼?﹂
﹁⋮⋮﹂
眼をそらす俺。
﹁今、公人さんは野球部でセカンドを守ってて、お兄ちゃんの親友
なんだよね∼。友達のエピソードを自分のことにして、のりちゃん
に話したの∼? カッコいいね∼﹂
﹁からかうなよ⋮⋮﹂
んったく⋮⋮何でこの話知ってるんだ、こいつ?
﹁のりちゃんにそのこと話したら、すっごい感動してたよ。﹃自分
がお漏らしたことにするなんて⋮⋮わたしを慰めるために⋮⋮﹄っ
て﹂
﹁それも話しちゃったのかよ⋮⋮口が軽いよ、お前﹂
269
﹁のりちゃんの好感度、急上昇だね∼、お兄ちゃん﹂
﹁別にこんなんで上昇しても嬉しくねえよ⋮⋮香奈ちゃんは、どう
いう反応だったの? この話?﹂
﹁香奈ちゃんドMだから、はぁはぁ言いながらのりちゃんの話聞い
てたよ。午後の授業始まる前に、トイレでオナニーしたっていって
た﹂
﹁友達の極秘情報をバラすなっていつも言ってるだろ!﹂
香奈ちゃん、クールなイメージが台無しだよ⋮⋮。
﹁で、お兄ちゃんはどうだったの∼?﹂
にたにた笑いの未羽。
﹁⋮⋮どうって、何が?﹂
﹁とぼけちゃって∼、切羽詰まった状況だったとはいえ、のりちゃ
んの恥ずかしい姿見たら、興奮するよね∼? 正直に言いなよ∼﹂
肘で俺の腹を突く。⋮⋮まったく、エロエロ大魔王め。ちょっと
お灸を据えてやろう。
﹁うん、まあそうだな。羞恥プレイって言うの? すっごく興奮し
たよ。だから、未羽、お前もやってくれないか?﹂
﹁⋮⋮⋮ふぇっ!?﹂
驚いた猫みたいな顔をして、未羽が変な声を上げた。
﹁だから、観覧車事件を再現するんだよ。今からお前の部屋で、レ
ジ袋におしっこをしてもらいたいんだ。近親相姦じゃないし、いい
だろ?﹂
未羽は唇を震わせて、みるみるうちに顔を真っ赤にした。くちが
ぱくぱく動くが、なかなか声が出ない。
﹁そっ⋮⋮そそそ⋮⋮そんなことできるわけないでしょ! おっ⋮
⋮お兄ちゃんのバカバカバカ! 変態! 変態変態へんたーーーい
!!!﹂
未羽は身を翻し、廊下を走り階段を駆け上って逃げていった。
エロエロ大魔王もスカトロプレイは苦手らしい。可愛いものだ。
270
おわり
271
︻後日談9の1︼文武両道、早乙女香奈[SIDE−A]︵前書
き︶
たいへんお待たせいたしました。約2ヶ月ぶりの更新です。
お待ちかねの香奈ちゃん回です。ブレない香奈ちゃんを愛でてやっ
てください。
272
︻後日談9の1︼文武両道、早乙女香奈[SIDE−A]
俺が通う高校は、二年になると体育で空手を習う。今日はその初
めての授業である。
体育館に慣れない空手着を着た男子が集合する。こういう特別な
科目は校外から指導者を呼ぶこともあるが、うちは体育教師の西沢
が有段者なので、彼が教えている。
西沢は俺たちを四角く並ばせた。
﹁今日から君たちは約四ヶ月間空手を学ぶわけだが、空手の経験も
なく、見たことすらないという者がほとんどだろう。そこで今日は、
まず型と組み手の模範演武を見てもらい、空手の神髄に触れること
で理解を深めてもらおうと思う。早乙女君、こちらへ﹂
聞き覚えのある姓だなと思っていると、空手着を着た美少女が体
育館に入ってきた。
小柄な体躯、切れ長の眼にクールな表情。そして、あまり胸が目
立たないはずの空手着を着ていても、隠しきれない巨乳。俺の妹の
親友、香奈ちゃんである。
聞き覚えがあるはずだ。早乙女香奈、それが彼女のフルネームで
ある。
そう言えば空手習ってるって聞いたことあったな。⋮⋮っていう
か俺、掌底喰らって気絶させられたことあるよ。
香奈ちゃんは西沢の隣に並んだ。俺たちは全員白帯だが、西沢と
香奈ちゃんの腰には黒い帯が締まっていて、すげえ格好良かった。
︵お、おい、誰だよアレ? 一年か? すげえ可愛いじゃん︶
︵乳でけえ⋮⋮Eカップくらいあんじゃね?︶
︵胸はあるけどちっちゃくて細いな⋮⋮空手なんてできんのか?︶
香奈ちゃんの登場に、男子たちはざわついた。隣にいた同じ野球
273
部の公人が、俺の脇腹を肘でつつく。
︵おい、あの子すげえ巨乳じゃん。ちくしょう、中にTシャツ着な
きゃいいのにな。あ∼、揉んでみてえ︶
︵ああ、そうだな⋮⋮︶
︵何だよ? ノリ悪いな? お前もおっぱい星人だろ?︶
公人、すまん⋮⋮俺、あの子のおっぱい触ったことあるし、パイ
ずりしてもらったこともあるよ⋮⋮。
俺の心の声が聞こえるはずもなく、公人はひそひそ話を続けた。
︵一年だろうなあ⋮⋮あんな可愛い子いたんだ。でも、ちょっと冷
たそうな感じだな。男なんか興味ありません、って感じ︶
妹のセフレで、ドMなんだよ⋮⋮。香奈ちゃん、こうして振り返
ってみると、キャラ盛りすぎじゃね⋮⋮?
しそーちん
﹁こらこら、みんな静かにしろ。えー、早乙女君は一年生で、幼少
のころからお父さんに空手を習っている。今日は四向戦という型の
演武と、私と一対一の約束組み手をやってもらう。早乙女君は小中
学生のころから何度も空手の大会で優勝している実力者なので、み
んな心して見るように﹂
言われなくてもみんな興味津々である。よそ見をする者などいな
い。
西沢は﹁では、早乙女君、よろしく頼む﹂とひとこと言って、脇
に下がった。
香奈ちゃんは数歩移動して、位置についた。気をつけの姿勢。数
十人の上級生男子の視線を一身に受けとめているが、臆したところ
など微塵もない。
しそーちん
胸の前でこぶしに手を当てて一礼し、また顔を上げる。
﹁四向戦!!﹂
体育館に響き渡る声に、男子全員がびびる。小柄な身体からは信
じられないほどの声量だった。腹式呼吸による発声だ。
香奈ちゃんは足を肩幅に開き、手を手刀の形にして、胸の前で大
きなボールを持っているような格好に構えた。スッと弧を描いて左
274
足を滑らせ、半歩前に出す。そうして、わずかに腰を落とした。
もうそこにいるのは、小柄な女子高生ではかった。まるで足から
根が生えたようだ。巨木のように揺るぎなく屹立している。これが
体幹というものだろうか。
﹁ふぅぅぅ⋮⋮﹂
うなるような吐息とともに、右手を引く。油圧式の機械のようだ。
シュバッ!
微かな予備動作も無しに手刀を突き、一瞬のうちに寸分違わず元
の姿勢に戻る。バネ仕掛けのような速さだった。
いや、速いだけではない。力強さがある。もしあの手刀の前に立
っていたら、胸から背中まで貫かれてしまいそうだ。
手刀ひと突きで、俺たちは完全に呑まれていた。もう誰も巨乳を
気にする者などいなかった。
もう半歩前に進み、手刀を繰り出す。香奈ちゃんはそれを三回繰
り返した。空気を裂くような突きだった。
続いて、受けと手刀が連続した動作。手刀と同時に股を開いて、
ぐっと腰を落とす。身体が50センチくらい沈んだ。
後で聞いたのだが、相手の攻撃を捌いてその腕をつかみ、手刀で
肘をへし折る動きなのだそうだ。型というのは動きの解釈が大事で、
本当に戦っているつもりで演武するのだという。確かに鬼気迫る迫
力である。
﹁エイッ!!﹂
香奈ちゃんは自分の身長よりも高く蹴りを上げると、同時に気合
いの大声を出した。心の準備ができていなかったので、俺たちはま
た驚いた猫のようにビクッとした。上級生の威厳もへったくれもな
かった。
香奈ちゃんは武神のように演武を続けた。体重はせいぜい40キ
ロ台のはずだが、1トンもあるのではないかと思うほどどっしりと
床に足をついている。
目にもとまらぬ速さで攻撃を繰り出しかと思うと、石像のように
275
ピタリと静止する。動きのキレが人間離れしていた。
最後に、猫足立ちからスッと身を起こし、気をつけの姿勢をとる
と、香奈ちゃんはぺこりと頭を下げた。
演舞が終わったのだ。俺たちは感嘆の溜息をつき、少しの沈黙の
後、誰ともなく手を叩きはじめた。
パチパチとまばらな音は、あっという間に大拍手に変わった。み
んな惜しみなく手を叩き、香奈ちゃんの演武を賞賛した。香奈ちゃ
んはまっすぐに立ったまま、相変わらずクールな顔をしている。
西沢が香奈ちゃんのそばに歩いてきて、隣に立った。
﹁早乙女君、ご苦労だった。みんな、空手のことはよく知らなくて
も、早乙女君の演武から何かを感じ取ってくれたと思う。それでは、
次に約束組み手を見てもらう﹂
二人は向かい合って立った。力まず自然に構える。
﹁早乙女君から﹂
﹁分かりました⋮⋮⋮⋮はいっ!﹂
合図とともに香奈ちゃんが踏み出し、みぞおちを狙って正拳突き
を放つ。西沢がそれを払って受け、すかさず首を狙って手刀を放つ。
香奈ちゃんがそれを手で受け、下段突きを返す。
悠長に書いているが、これが約一秒間である。カンフー映画の格
闘シーンのように、攻防は一定のリズムで繰り返された。
あらかじめ決まった順序があるようで、攻撃と防御には一定の周
期がある。だから確実に攻撃を受けることができるわけだ。
しかし、そうは言っても繰り出す技は本気である。突きも手刀も、
受け損じれば確実に当たる間合いだ。西沢も女子高生相手に全く手
加減しない。
西沢が太い腕で鳩尾を狙い中段突きを繰り出すと、香奈ちゃんの
細腕が力強くそれを払いのける。腕がぶつかり合ってバシバシとす
ごい音がした。
西沢の下段突きを香奈ちゃんが止めたところで、二人は静止した。
構えを解いて向かい合い、礼をする。約束組み手が終わったようだ。
276
再び拍手が沸き起こる。
西沢が香奈ちゃんの肩をポンポンと叩いてねぎらった。
﹁早乙女君は、このとおり空手の実力も優れているが、この前の中
間試験で学年4位の成績をおさめている、文武両道の生徒だ。
つまりは、空手の神髄は身体を鍛えることにあるのではなく、精神
の鍛錬にこそあるということだ。みんなも早乙女君を見習い、精進
するように。
それでは、素晴らしい演武を披露してくれた早乙女君に、感謝の拍
手を送ろう﹂
俺たちは尊敬を込めて、盛大な拍手を送った。香奈ちゃんは落ち
着いて、静かに礼を返した。
さんちん
眉一つ動かさないクールな表情。香奈さん、めっちゃ格好いいで
す⋮⋮。
☆
それから俺たちは、剛柔琉の基礎となる﹁三戦﹂という型を習っ
た。
香奈ちゃんは特別に一年の授業︵現国の時間だったらしい︶を抜
けてきていたので、西沢にもう教室に戻っていいと言われていたが、
﹁見学していていいですか?﹂と許可を得て、まだ体育館に残って
いた。
三戦は足腰の鍛錬と呼吸に重点を置いた型で、さっき香奈ちゃん
が演じた型のような素早い動きはない。俺たちは地味に足の運び方
を練習した。
すると、パイプイスに腰掛けて俺たちの練習を眺めていた香奈ち
ゃんが、歩いて俺の前にやってきた。腰に手を当て、じーっと俺の
足運びを見つめている。何事かと、男子の視線が俺たちに集中した。
277
﹁⋮⋮野球で鍛えているだけあって、ある程度体幹はできてますね。
でも、もっと内股にした方がいいです﹂
﹁あ、そう? こんな感じ?﹂
何気に会話をはじめた俺たちに、公人が眼を丸くして驚く。
﹁な、何!? お、お前、早乙女さんと知り合いなの!?﹂
一年の女子相手に﹁さん﹂付けの公人だった。
﹁妹の友達なんだよ。中学のころから知ってる﹂
﹁なっ⋮⋮ええっ!? そうなの⋮⋮︵おい、紹介しろよ︶﹂
最後は口パクだったので、読唇術で俺はそう読み取ったが、無視
した。
﹁両足をハの字にして、お尻にギュッと力を入れてください。お尻
にえくぼができるように﹂
﹁こ、こう?﹂
﹁そうです。そのままお尻を引き締めた状態を維持して、型を続け
てください﹂
そう言って香奈ちゃんは俺の背後に回った。今度は後ろから見て
指導するつもりなのだろう。
しかし、有段者だけあってアドバイスがうまい。確かに内股にし
た方が、地面を踏ん張れる気がする︱︱
ドスッ!
太ももに衝撃を感じたが、一瞬何が起きたか分からなかった。後
ろを振り返って、やっと香奈ちゃんが背後から金的蹴りを放ったの
だと分かった。
﹁か、香奈ちゃん!? 何すんの!?﹂
周りの男子も唖然としていた。そりゃそうだ。太ももを締めてた
から金玉に当たらなかったけど、背後から不意打ちはひどいんじゃ
ないの?
﹁脚を引き締めるのは、金的攻撃を防ぐ意味もあるんです。実際、
太ももで止まって当たらなかったでしょう?﹂
﹁た、確かに⋮⋮そうだけど﹂
278
口で言って説明してくれよ、女の子なんだから⋮⋮。周りを見渡
すと、みんな俺の視線を避け、そっぽを向いてしまった。金玉を蹴
られては堪らないと思ったのだろう。
その後も香奈ちゃんは俺だけをマンツーマンで指導してくれた。
脚に力が入っているか確かめるために太ももをバンバン叩いたり、
隙を見ては金的蹴りを見舞ったり⋮⋮。
意地悪でやっているのかと思ったら、西沢も男子生徒の間を回っ
て同じことをやっていた。どうやら正当な三戦の指導方法らしい。
終業時刻の10分前になって、やっと香奈ちゃんは俺を解放した。
彼女が女子更衣室へと去った後、俺は男子どもにさんざんからかわ
れたのだった。
☆
﹁うわ⋮⋮太もも真っ赤⋮⋮﹂
空手の授業が終わり、酸っぱい汗の臭いが充満する男子更衣室で
空手着を脱ぐと、香奈ちゃんに叩かれたところが真っ赤になってい
た。
﹁はは、お前、集中攻撃だったもんな。お前、あの子に嫌われてん
の?﹂
公人がおれをからかう。
﹁そんなんじゃねえよ⋮⋮気を遣ったんだろ、たぶん﹂
﹁何だよ? 気を遣ったって?﹂
﹁俺らのへなちょこな型なんて、きっと香奈ちゃんにしてみりゃい
くらでも物申したいことがあるはずなんだよ。でも、下級生の女子
からああでもないこうでもないって指導されるのって、バツが悪い
だろ?
だから、わざと周りに聞こえるような声で俺を指導したんだよ。み
279
んな聞き耳立ててただろ? 俺を道化に仕立てて、他の男子には恥
かかさないようにしたってわけ﹂
﹁へー、確かに、俺もお前が指導されてるの聞いて、真似してたけ
ど⋮⋮あの子、ちょっと冷たそうな感じだったけど、そんな気遣い
できる子なんだ?﹂
﹁ああいう顔なんだよ。すげえいい子だよ、香奈ちゃん﹂
公人は﹁ほー﹂と言って感心した。
﹁さすが未羽ちゃんの友達だけあって、スペック高えな。つーか、
お前そんな風に香奈ちゃんのこと語れるくらい仲いいわけ?﹂
﹁うちによく泊まりに来るしな⋮⋮一緒に飯食いながら話したりす
るよ﹂
﹁あの子が泊まりに来るの!? そりゃうらやましいことで⋮⋮風
呂のぞいたりしねえの?﹂
﹁しねえよ⋮⋮うん、してない⋮⋮﹂
風呂はのぞいていないが⋮⋮裸のプリクラや、生乳は見たことが
ある⋮⋮とは言えなかった。
﹁お前さ、香奈ちゃんと付き合いたいとか思わねえの? 付き合え
ばあの乳揉み放題だぜ? さっきの指導のときもさ、すげえ仲いい
ように見えたぜ。スキンシップしまくりじゃん﹂
俺は腕を組んで、ふむ、と考えた。
﹁あれがスキンシップかどうかはともかく⋮⋮なるほど、付き合う、
か⋮⋮あんま意識したことなかったな。確かに俺にはもったいない
くらいの才色兼備だが、何しろ未羽の大親友だからなあ、妹の友達
を奪うのも兄として⋮⋮﹂
﹁あー、それ分かるな。喧嘩とかしたら未羽ちゃんから叱られそう
だ。エッチの内容も筒抜けだろうな﹂
﹁ぎえぇ、それ勘弁﹂
制服に着替え、俺たちは更衣室を出た。歩いて教室へ戻る。
香奈ちゃんは、最初つっけんどんで苦手だった。何で未羽はこの
子が好きなんだろうと思ったけど、何度か会ううちに、感情をあま
280
り表に出さず、物言いがはっきりしているというだけで、とても優
しくていい子なのだということが分かった。
別に付き合わなかくても、妹を介してしょっちゅう会う機会はあ
るわけだし、俺は今の関係のままでよいのだが⋮⋮。
☆
281
︻後日談9の2︼ブレない香奈ちゃん前編[SIDE−B]
その日、部活を終えて家に帰ると、玄関に小さなローファーが二
つ並んでいた。一つは未羽のもの、もう一つは香奈ちゃんのだろう。
学校から直接来たのだろうか。
二階に上がり未羽の部屋の前を通ると、話し声が聞こえた。やっ
ぱり香奈ちゃんが来ているようだ。邪魔はせず、俺は一階に降りて
風呂に入り、部活の汗を流した。
風呂上がりにリビングでくつろいでいると、俺の携帯が鳴った。
未羽からだった。ボタンを押し、電話を受ける。
﹁未羽? 何だよ?﹂
﹁お兄ちゃん家にいるよね!? あたしの部屋来て! 急いでね!﹂
それだけ言って、電話はプツッと切れた。何なんだよ、いきなり
⋮⋮。
何にせよ、愛する妹が来てと言っているんだから、行かねばなる
まい。俺はソファを立って二階に向かった。
階段を登り、未羽の部屋の前に立つ。微かに声が漏れ聞こえてく
る。
やっぱり香奈ちゃんも部屋にいるんだよな。何の用だか。俺はコ
ツコツとドアをノックした。
﹁未羽、入るぞ﹂
すぐ来いと言ったのだから、返事を待つ必要はないだろう。俺は
静かにドアを開けた。
﹁い、いやぁっ! お、お兄さん、見ないでっ!﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
ドアノブを握ったまま、俺は時間が止まったように静止した。目
282
の前の光景がすぐには理解できず、俺の頭の中でカリカリとパソコ
ンがHDDにアクセスするときの音がした。
長い時間をかけて脳内データ処理が完了し、俺は一つの結論を導
き出した︱︱香奈ちゃんが、全裸で亀甲縛りされている。
﹁どう、お兄ちゃん!? 上手でしょ!? あたし初めてなのにこ
の完成度だよ! すごいんじゃない!?﹂
香奈ちゃんに寄り添うように座っている未羽が、得意そうに自慢
する。うん、そのひと言で、概ね状況が呑み込めたよ⋮⋮。
香奈ちゃんは、赤いロープで亀甲縛りされていた。SMに詳しい
わけではないが、確かに見事な縛り方だった。
本格的なSMみたいに、肌に食い込むほどきつく縛ってはいない。
雰囲気を味わいたかっただけなのだろう。
しかし、ロープはだらなしなく緩むことなく、香奈ちゃんの白い
肌にぴたりと貼りついて、その名の通り亀の甲羅のような模様を描
いている。
完璧にシンメトリックで、素人が初めて挑戦したとは思えない出
来映えだった。未羽は何事につけ器用なのだが、緊縛プレイの才能
もあるようだ。
さて、亀甲縛りというのは通常腕を背中に回して縛るわけだが、
未羽はそうしていない。どうなっているかというと︱︱脚をM字開
脚にして、手首と足首を結んでいる。
要するに、ドアを開けたとたん香奈ちゃんのつるつるパイパンお
まんこが俺の眼に飛び込んできたわけだ。時間が停止するのも無理
ないだろう。
﹁見て見て! お兄ちゃん! 香奈ちゃんやらしいんだよ! 縛っ
てる間にどんどん濡れてくるの! ほら、もうこんなにとろっとろ
だよ!﹂
﹁あっ! いやぁっ! だっ、だめっ! 未羽⋮⋮﹂
未羽が両手で香奈ちゃんのおまんこをくぱぁと広げた。クリトリ
スや膣口まで露わになる。未羽の言うとおり、ローションでも塗っ
283
たみたいに潤っていた。⋮⋮頭にガツンとくるほどエロいよ⋮⋮。
﹁ああ⋮⋮いやぁ、お兄さん、見ないで⋮⋮﹂
顔を赤くしてふるふると頭を振る香奈ちゃん。⋮⋮この人、今日
の体育で空手の演武した人と同一人物⋮⋮だよね?
数時間前に鬼気迫る演武で上級生男子の度肝を抜いた天才空手少
女が、えらくあられもないことになっていた。あの凜々しさ、どこ
行ったんだよ⋮⋮。
あまりのギャップに呆然としていた俺だが、俺のジュニアは至極
正直で、いつもどおりジャージを突き破らんばかりに屹立していた。
それにしても香奈ちゃん、縄が似合うな⋮⋮。スレンダーな身体
と豊満なおっぱいの対比が何とも言えない。
吸い付きそうな肌をした巨大な双丘が、上下を縄に挟まれて、む
に、とひしゃげている様は、堪らなく淫靡だった。
﹁も∼、香奈ちゃんったら、こんなに縄が似合うなんて⋮⋮あたし
頑張った甲斐があったよ∼﹂
未羽が額の汗を手の甲で拭う。傍らにインターネットを印刷した
らしいプリントが落ちていた。亀甲縛りのやり方を解説したサイト
である。
こんな二、三枚の解説だけで、よくこれだけ立派に縛れるもんだ
よ⋮⋮才能の無駄使いだ⋮⋮。
﹁み、未羽⋮⋮お願い、もう許してぇ⋮⋮﹂
﹁な∼に言ってるの、せっかくきれいに縛れたんだから、お兄ちゃ
んにじっくり見てもらうんだよ﹂
未羽は香奈ちゃんの耳元で囁きながら、片手で彼女の巨乳を揉ん
だ。むにむにと形を変えるおっぱいを見て、俺は小学校の餅つき大
会を思い出した。
﹁あっ⋮⋮だ、だめぇ⋮⋮お兄さんが、見てるのにぃ⋮⋮﹂
﹁ふ∼ん? 嫌なの⋮⋮? じゃあ、ここ、どうしてこんなになっ
ちゃってるのかな⋮⋮?﹂
未羽の手が、胸から腹へ、下腹部へと下降していく。
284
﹁⋮⋮あっ! やっ⋮⋮あぁんっ!﹂
敏感な部分に触れられて、香奈ちゃんは声を上げた。きつく眼を
閉じ、眉を八の字にしている。
俺はアホみたいに突っ立ってその光景を眺めていた。⋮⋮俺、ど
うするべきなんだろ?
普通に考えれば縛られた女の子の裸を眺めてれば犯罪行為なんだ
が⋮⋮縛ったのはその子の親友=俺の妹であり、見に来てって誘わ
れたんだけど⋮⋮。
﹁あんっ⋮⋮だめっ⋮⋮あぁ、お、お兄さん、見ないでぇ⋮⋮!﹂
切なげに首を振る香奈ちゃんが、涙目で訴える。俺のジュニアが
さらに硬度を増したが、俺は大事なことに気付いた。
そうだ! 妹公認とかそういう問題じゃないんだ! 香奈ちゃん
が嫌がってるじゃないか! 本人の意思が一番大事なのだ。!
つーかこれ、兄妹で猥褻行為したことにならないか!? やばい
だろ色々と!?
﹁お、おい、未羽⋮⋮﹂
﹁あ、ごめんねお兄ちゃん、放置プレイして。香奈ちゃんのおっぱ
い揉む?﹂
罪悪感の欠片もない妹だった。
﹁い、いや、そうじゃなくって⋮⋮﹂
﹁せっかくの機会だから触っときなよ。ほら、香奈ちゃんも触って
ほしいって﹂
未羽が背中から手を回し、両手で香奈ちゃんのおっぱいを持ち上
げる。
﹁あっ⋮⋮やっ⋮⋮やあっ、そんなの⋮⋮お、お兄さん、だめです
ぅ⋮⋮﹂
チワワみたいうるうるした瞳で、香奈ちゃんがやめてくれと俺に
訴える。八の字になった眉、汗ばんだ額。あまりにもエロすぎる表
情だった。
﹁あっ! ⋮⋮やぁん⋮⋮お兄さん、だめってばぁ⋮⋮!﹂
285
ハッと気が付くと、俺は座り込んで香奈ちゃんのおっぱいを揉ん
でいた。香奈ちゃんが恥ずかしそうに顔を振っている。
ぬあぁぁ!? 何で俺おっぱい揉んでんだ!? くっ⋮⋮香奈ち
ゃんのエロ顔が強力すぎて、意識がコントロールできなくなったの
か⋮⋮!?
現状を認識しても、俺はおっぱいから手を離すことができなかっ
た。しっとりすべすべな肌、ぐっと握ると指の間からはみ出す柔ら
かさ⋮⋮ぐおお⋮⋮手が、手が言うことを聞かない⋮⋮!
﹁いやぁ⋮⋮お、おにい⋮⋮あふっ⋮⋮だ、だめぇ⋮⋮あっ、あっ
⋮⋮﹂
香奈ちゃんは真っ赤な顔でしきりに拒否の言葉をつぶやきながら、
明らかに感じてしまっていた。⋮⋮この状況で胸触られて感じるっ
て、本当にドMだな、この子⋮⋮。
でも俺、前に入院したとき、見舞いに来た香奈ちゃんに胸触らせ
てもらったことあるし、おっぱいモミモミまでは香奈ちゃん公認と
言えないだろうか?
﹁わあ⋮⋮香奈ちゃんったら、お兄ちゃんにおっぱい触られて、す
ごい感じちゃってる⋮⋮どう? 気持ちいいの⋮⋮?﹂
﹁あっ⋮⋮やぁっ、そ、そんなこと⋮⋮あはぁっ! あっ、いやぁ
っ⋮⋮﹂
どう見ても感じている香奈ちゃんが、ぷるぷると首を振る。拒絶
しているつもりなのかもしれないが、逆に嗜虐心をあおられてしま
う。
﹁香奈ちゃん、おまんこ舐めてあげるね⋮⋮お兄ちゃんにもっとい
い声、聞かせてあげて⋮⋮﹂
そう言うと未羽は、匍匐前進するような姿勢で床に伏せた。香奈
ちゃんの股間に頭をもぐらせ、舌を伸ばす。
﹁⋮⋮あっ!⋮⋮はうっ! み、未羽っ、そんな⋮⋮やっ⋮⋮ああ
んっ!﹂
香奈ちゃんのあえぎ声が急に大きくなる。わあ⋮⋮女の子のおま
286
んこ舐めてるよ、うちの妹⋮⋮。
未羽の舌は、それ自体が別の生き物のようにうねうねと動き、香
奈ちゃんのクリトリスや膣口を探り当て、うごめいた。
考えてみると未羽と香奈ちゃんのエッチって、話は何度も聞いて
るけど実際生で見るのって初めてだ。
恍惚とした表情で無心にクンニする未羽⋮⋮美少女が美少女のお
まんこに吸い付いている絵は美しく、そしてエロかった。
﹁はうぅっ! あっ、あぁんっ! だ、だめぇっ、未羽⋮⋮! お、
お兄さんがいるのにぃ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんが一瞬チラッと俺の方を見て、恥ずかしそうに顔をそ
むけた。真っ赤な顔をして快感に耐えようとしているが、どうして
も声を抑えることができない。
⋮⋮何て言うか、未羽がSで香奈ちゃんがMなんじゃなくて、香
奈ちゃんのM性が未羽のSっ気を引き出しているんじゃないだろう
か?
香奈ちゃんって抗えば抗うほど、逆にいじめたくなるんだよな⋮
⋮。潤んだ瞳で﹃お願い、もう許して⋮⋮﹄って顔されると、もっ
といやらしい目に遭わせたくなる。
﹁⋮⋮はんっ! おっ⋮⋮お兄さ⋮⋮そんな、だめぇ⋮⋮!﹂
再び我に返ると、俺はいつの間にか香奈ちゃんの乳首に吸い付い
ていた。
ぬわぁぁ!? い、いつの間に!? く、くそう⋮⋮香奈ちゃん
の身体と反応、魅惑的過ぎる⋮⋮! 俺の理性では太刀打ちできな
い⋮⋮!
頼りない理性を置き去りにして、俺は香奈ちゃんのおっぱいを舐
め続けた。巨大なプリンを舐めてるみたいだ。胎内回帰願望が充足
されていく⋮⋮。
舌先で乳首をちろちろすると、香奈ちゃんはびくんびくんと反応
した。可愛すぎる。
﹁あっ、ひやぁん⋮⋮はぁあっ、だめっ⋮⋮も、もう⋮⋮い、いっ
287
ちゃ⋮⋮﹂
﹁んふふ、香奈ちゃん、シチュが新鮮だから感度いいね⋮⋮。もう
イキたい? 待ってて、二本入れてあげるね⋮⋮﹂
おっぱいを舐めながら下を見ると、未羽が中指と薬指を揃えて香
奈ちゃんのおまんこにあてがっているところだった。指に愛液をま
とわせ、ゆっくりと挿入する。
﹁あっ! はっ、はぁんっ! あっ、未羽、未羽⋮⋮んっ、はぁっ
⋮⋮!﹂
未羽の指が、少しずつ香奈ちゃんの中へ吸い込まれていく。香奈
ちゃんは痛がることもなく、二本の指を根元まで呑み込んだ。
﹁ふわぁ⋮⋮あぁっ、未羽⋮⋮わ、わたし、もう⋮⋮﹂
﹁我慢できない⋮⋮? もうちょっと焦らそうかと思ったけど、限
界っぽいね⋮⋮イカせてあげる⋮⋮﹂
エロエロ大魔王はSっ気たっぷりにそう言うと、ゆっくりと指を
動かしはじめた。顔を股間にうずめ、クンニも再開する。濡れた襞
がいやらしい水音を立てた。
堪らなくなって、俺も乳首舐めを再開した。ハイスピードで乳首
を転がす。二人がかりの攻撃に、香奈ちゃんは激しく身をよじって
反応した。
﹁ああっ! い、いいっ⋮⋮すご⋮⋮あぁっ、お、おかしくなっち
ゃう⋮⋮やっ、はぁっ! もう、イっ、イクっ⋮⋮!﹂
﹁香奈ちゃん可愛い⋮⋮いいよ、イって! イってぇ!﹂
香奈ちゃんの身体が、ぐっと強ばった。あ、もうイクなと感じ取
って、俺はラストスパートをかけた。未羽の指も激しさを増す。
﹁はぁっ⋮⋮! あっ、やぁっ! もぉ、イ、イクっ⋮⋮はぁっ、
あぁ⋮⋮あっ、ああああああぁぁぁぁぁん!!﹂
香奈ちゃんは激しく絶叫して絶頂に達した。快感の波が彼女の身
体を通り抜けていく。びくん、びくん、と、身体が感電したみたい
に大きく震えた。
﹁ああ、はぁ⋮⋮あふ、はふ、はふぅ⋮⋮﹂
288
波が過ぎ去ってからも、香奈ちゃんは乱れた荒い息をして、ぴく
ぴくと身体を震わせていた。全身が赤くほてり、汗ばんでいる。赤
いロープに拘束されたその姿は、エロすぎてジュニアが破裂しそう
だった。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮香奈ちゃん、可愛かったよ⋮⋮大好き⋮⋮﹂
愛液で口の周りをぬるぬるにした未羽が、顔を拭いもせずに香奈
ちゃんに口づけた。
﹁あ⋮⋮はぁ、未羽、未羽⋮⋮﹂
まだ息苦しそうな香奈ちゃんが、懸命に舌を絡める。美少女同士
のべろちゅーは何度見ても心が洗われるほど美しい。⋮⋮それはそ
うと香奈ちゃん、未羽を怒る気はさらさらないんですね⋮⋮。
未羽は香奈ちゃんが落ち着くまで、何度もあたまを撫でたり、お
でこや頬にキスしたりした。母犬が子犬をあやしているみたいだっ
た。
うーむ、エッチは激しいがフォローが手厚いな、未羽は。香奈ち
ゃんとの友情が崩壊しない秘訣はここにあるのか。
289
︻後日談9の3︼ブレない香奈ちゃん後編[SIDE−B]
しばらくして、ようやく香奈ちゃんの眼の焦点が合ってきた。ま
だ表情がとろんとしてるけど。
﹁⋮⋮も、もう⋮⋮未羽⋮⋮だめって言ったのにぃ⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃんが可愛すぎるからいけないんだよぉ。どうだった? 気持ち良かったでしょ?﹂
﹁よ、良かったけど⋮⋮お、お兄さんが⋮⋮﹂
と言って香奈ちゃんは恨めしげに俺を見た。思わず身構えてしま
う。
まあ、睨まれるぐらいで済めば御の字だよな。女の子縛って猥褻
行為したら⋮⋮懲役何年だ?
﹁あ、お兄ちゃんごめんね、また放っぽっちゃって﹂
⋮⋮俺に気をつかわなくてもいいよ、妹よ。香奈ちゃんケアしろ。
﹁お兄ちゃんも出したいよね⋮⋮香奈ちゃんに入れてみる?﹂
再び俺の脳がフリーズした。
﹁ちょっ⋮⋮! み、未羽! あ、あなた何を! い、入れるって
⋮⋮﹂
﹁大丈夫だよ、香奈ちゃん。こんだけ濡れてれば痛くないよ﹂
﹁い、痛いとかじゃなくって! わ、わたし処女なのよ! お、お
兄さんになんて、そんな⋮⋮!﹂
﹁あたしも初めてはお兄ちゃんだったよ。大丈夫、予行演習だと思
って﹂
﹁よ、予行演習でもなんでもない文字通りの本番じゃない! だ、
だめっ!﹂
わめく香奈ちゃんに構わず、未羽は立ち上がって机の中から小さ
290
な紙箱を出してきた。中から正方形の包みを取り出す。⋮⋮コンド
ームだった。
﹁未羽⋮⋮おまえ、何でこんなの持ってるの⋮⋮?﹂
未羽はエロエロ大魔王だけど、俺の知るかぎり彼氏などいないは
ずだが⋮⋮。
﹁香奈ちゃんのアナル開発とかに使うんだよ。薬局で買うの恥ずか
しいから、Amasanで買ったの﹂
香奈ちゃんアナル開発されてるのか⋮⋮。よそ様のお嬢さんを著
しくアブノーマルな道に引き込んでいるが、いいのだろうか。
ところでAmasanとは、元々は海女さんをメインターゲット
にした素潜りグッズの専門店で、例の朝ドラのヒットを機に急成長
し、現在はあらゆる商品を扱っている巨大通販サイトのことである。
﹁さ、お兄ちゃんも脱いで﹂
未羽が俺のジャージを脱がせにかかる。
﹁わっ! ちょ、未羽⋮⋮﹂
バナナの皮をむくよりもたやすく、俺はあっさりとジャージとパ
ンツを脱がされてしまった。いきり立ったジュニアが、びよんと顔
を出す。
﹁ほらあ、お兄ちゃんビンビンじゃん。ゴム着けてあげるね﹂
未羽はコンドームの包みを歯でピッと開封すると、素早く俺のジ
ュニアにそれを装着した。手際よすぎるよ⋮⋮風俗嬢か⋮⋮。
﹁よし、準備オッケ﹂
未羽はついでに俺のTシャツも脱がせて全裸にした。
それからタタッと香奈ちゃんの後ろに回り込み、両手で太ももを
引きつけて、デフォでM字開脚な脚をさらに大きく開かせた。イっ
たばかりでとろとろに濡れたおまんこが、あられもなくさらけ出さ
れる。
﹁いやぁ! だ、だめぇ、未羽! わ、わたし処女なんだから⋮⋮﹂
﹁こうやってみんな大人になるんだよ、香奈ちゃん﹂
﹁やあぁ! お、お兄さん! お願い⋮⋮やめてぇ⋮⋮﹂
291
香奈ちゃんは眼に涙を溜め、口を∞みたいな形にして俺に訴えた。
おびえた表情で、俺をじっと見つめる。
いつもはクールな香奈ちゃんが見せる、か弱い少女の顔︱︱うう、
可愛すぎる⋮⋮俺の胸にドスドスと何本もキューピットの矢が刺さ
った。
﹁⋮⋮きゃ、きゃあっ! お、お兄さん、だめぇ!﹂
香奈ちゃんの悲鳴で、俺は今日三度目に我に返った。俺は香奈ち
ゃんに覆い被さり、今まさに挿入しようとしているところだった。
﹁のわぁっ! か、香奈ちゃん! ご、ごめ⋮⋮こんなつもりでは
⋮⋮﹂
あ、危ねえ⋮⋮。レイプだよこれ、レイプ! 女の子縛って動けなくして、嫌がってるのに無理やりチンコ入れ
たらレイプじゃん! 情状酌量の余地ねえよ、冷静になれ俺!
﹁⋮⋮お、お兄さん⋮⋮﹂
覆い被さっているので、香奈ちゃんの顔がすげえ至近距離にあっ
た。おびえた顔で俺を見つめている。潤んだ瞳が吸い込まれそうな
ほど美しかった。
﹁⋮⋮お⋮⋮お兄さん⋮⋮お願い、許して⋮⋮おちんちん、入れな
いで⋮⋮﹂
俺の頭の中で、何かがプチッと切れる音がした。
﹁⋮⋮あっ! あぁっ! ほ、ホントに入れ⋮⋮だ、だめぇっ! うぅっ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんのおまんこに、ゆっくりと俺のジュニアを挿入する。
香奈ちゃんの最後のお願いは、全く逆効果だった。美少女に泣き
ながら﹃おちんちん、入れないで⋮⋮﹄って言われたら、大概の男
はちんちん入れると思う。
﹁や、やぁん⋮⋮お、大っきいよぉ⋮⋮痛っ⋮⋮あぁ、無理だよぉ
⋮⋮﹂
﹁あっ、ご、ごめん⋮⋮! 痛い⋮⋮?﹂
香奈ちゃんが痛がったので、俺はジュニアが半分ほど入ったとこ
292
ろで一時停止した︵抜こうとはしなかった︶。
﹁香奈ちゃん、力抜いて。深呼吸しよ、はい、息吸って、す∼∼﹂
未羽に合わせて、香奈ちゃんは従順に大きく息を吸った。未羽が
﹁は∼∼﹂と言うと、それに合わせて息を吐く。
二回深呼吸すると、香奈ちゃんの身体から強張りが消えた。
﹁どう、香奈ちゃん、まだ痛い?﹂
﹁⋮⋮う、うん⋮⋮もう、大丈夫みたい⋮⋮ありがと、未羽⋮⋮﹂
ここで礼言うかな!? 香奈ちゃん!?
﹁香奈ちゃんOKだって。お兄ちゃん、全部入れてみよ、ゆっくり
だよ?﹂
﹁う、うん⋮⋮﹂
姿勢を正し、俺は改めて香奈ちゃんの開通式を再開した。
﹁⋮⋮あっ! だ、大丈夫って、入れていいって意味じゃ⋮⋮うっ
! あうぅ!⋮⋮そ、そんな、奥まで⋮⋮﹂
俺はゆっくりと前進していった。力を抜こうとしても、つい緊張
してしまうのか、ときおりおまんこがきゅっと締め付けてくる。
さっきイったばかりで充分に潤っているそこは、ほどなくして俺
の全てを呑み込んだ。香奈ちゃんの中は、柔らかくて温かくて︱︱
最高に心地良かった。
﹁はあぁ⋮⋮う、あうぅ⋮⋮あ、あそこがいっぱいになってるぅ⋮
⋮﹂
未羽は香奈ちゃんにまた深呼吸をさせた。緊張が解けていくのが
わかる。
﹁ほら、香奈ちゃん、全部入ったよ⋮⋮見てごらん﹂
未羽が少しだけ香奈ちゃんの上体を起こしてやる。香奈ちゃんは
おそるおそる自分の股間をのぞき見て、眼を見開いた。
﹁す、すご⋮⋮あんな大っきいの、入ってる⋮⋮わたしの中に⋮⋮﹂
﹁大丈夫だよ、入るようになってるんだからね⋮⋮お兄ちゃん、ゆ
っくり動いてみようか⋮⋮﹂
﹁えっ⋮⋮!? だ、だめ⋮⋮壊れちゃう⋮⋮!﹂
293
どうしてこう⋮⋮男の嗜虐心を刺激する言葉をチョイスするかな
⋮⋮。﹃壊れちゃう⋮⋮﹄なんて言われたら⋮⋮滅茶苦茶にしたく
なっちゃうだろ!
俺はそーっとジュニアを半分ほど後退させて、また奥まで前進し
た。濡れたおまんこがいやらしい音を立てる。
﹁あっ⋮⋮はうっ、う、動いちゃ、だめぇ⋮⋮﹂
うお⋮⋮香奈ちゃんのおまんこ、すっげえ気持ちいい⋮⋮。
あまりの気持ち良さにぱこぱこと腰を振りたくなってしまうが、
何とか欲求を抑えて、俺はゆっくりと腰を動かした。克己心強いな、
俺。
﹁ああん⋮⋮あふっ、あぁっ⋮⋮ふ、太いぃ⋮⋮んっ⋮⋮﹂
腰を動かすたびに、香奈ちゃんの口から喘ぎ声が漏れた。痛がる
様子はないので、少し動作を大きくする。
スローペースではあるが、もう俺のジュニアは根元から先端まで
の出入りを繰り返している。
香奈ちゃんも感じているのか蜜があふれ出していて、俺はスムー
ズに動くことができた。
﹁うう⋮⋮香奈ちゃん、香奈ちゃんのおまんこ、とろっとろで気持
ちいいよ、最高だ⋮⋮﹂
﹁そ、そうですか、良かった⋮⋮って何感想言ってんですか! だ、
だめだって言って⋮⋮あっ⋮⋮ああっ!﹂
言葉とは裏腹に、香奈ちゃんはもう完全に感じちゃってるモード
に入ってた。やっぱ未羽とエッチを重ねているだけあって、順応が
早い。
痛がる心配はなさそうだと判断して、ちょっとペースアップしよ
うとすると、未羽が俺の肩をちょいちょいとつついた。
﹁お兄ちゃん、お兄ちゃん﹂
﹁な、何⋮⋮? 未羽?﹂
腰振りを一時停止して、俺は返事した。
﹁盛り上がってるとこ悪いけどさ、香奈ちゃん力んじゃって痕つき
294
そうだから、手首と足首のロープほどくよ﹂
﹁えっ⋮⋮!? ほ、ほどくの?﹂
俺、ただ今レイプ真っ最中なんですけど⋮⋮縄ほどいたら、命無
くね?
俺の脳裏に、香奈ちゃんの演武がよみがえった。鋭い手刀が俺の
胸を貫いている映像がまざまざと思い浮かぶ。
﹁み、未羽! そ、その、ほ、ほどくのは⋮⋮﹂
無理やり処女を奪っといていまさらだが、縄の痕がつくのは可愛
そうだ。かといって香奈ちゃんを解放すれば命が危ない⋮⋮俺は言
い淀んだ。
下を見ると、香奈ちゃんが眉を寄せて俺をじっと見ていた。たや
すく感情が読み取れない複雑な表情だった。
﹁大丈夫だよ。香奈ちゃんもう、﹃身体に力入んないから﹄﹂
﹃身体に力入んないから﹄のところを強調して未羽は言った。
それは、俺に伝えるためというより、香奈ちゃんに﹃分かってる
よね、身体に力入んないんだからね?﹄と言い聞かせているようだ
った。
﹁お兄ちゃん、続けてて﹂
未羽が香奈ちゃんの背後から抜け出す。続けて、と言われたので、
俺は素直に腰の運動を再開した。
﹁あっ⋮⋮あうっ⋮⋮はぁ、あんっ⋮⋮﹂
破瓜の痛みはもうすっかり解消したようで、香奈ちゃんは明らか
な快感のあえぎ声を発している。
止めどなくあふれ出す蜜に濡れたおまんこは、イソギンチャクを
思わせるほど柔らかく滑らかで、俺は天国の心地よさを感じていた。
横に来た未羽がシュルシュルと手首と足首を結んでいた縄をほど
く。
はらりと縄が床に落ちる。俺は一瞬緊張したが、香奈ちゃんは眼
を閉じてあえぐばかりで、抵抗しようとはしなかった。
反対側に回ってもう片方の縄もほどく。普通に正常位で挿入して
295
いる状態になったんだけど、香奈ちゃん無抵抗。
いやいや⋮⋮エロ漫画じゃないんだから、レイプされて気持ち良
すぎて抵抗できないって、無いでしょ?
香奈ちゃん未羽には絶対服従だからな⋮⋮﹃力入んない﹄って言
われたら、その通りにするんだろう。
でも、もし本当に嫌な相手だったら、未羽の命令だろうがなんだ
ろうが抵抗するよね? 手足を縛られていようが、おとなしくレイ
プされるような玉ではない。
てことは、俺とのセックスはそんなに嫌じゃないって思っていい
⋮⋮のかな? まあ、亀甲縛りで処女を失いたくはなかっただろう
が。
﹁はぁん⋮⋮あっ、あっ⋮⋮くぅっ⋮⋮﹂
何て、実際はあれこれ考える余裕なんてなくて、俺は欲望のまま
に腰を振っていた。
﹁お兄ちゃん、香奈ちゃん上にしてくれる?﹂
未羽が体位の変更を申し出てきた。
﹁う、上にって、どうやって⋮⋮?﹂
﹁入れたままで香奈ちゃんの身体持ち上げて、そのままお兄ちゃん
後ろに倒れるの﹂
﹁え、えっと、こうか⋮⋮?﹂
未羽の指示どおり、俺は香奈ちゃんの脇に手を入れて、上体を持
ち上げた。
対面座位になり、それから香奈ちゃんの身体を抱いたまま後ろに
倒れる。さっきとは逆に、香奈ちゃんが俺に覆い被さっている体位
ができあがった。
﹁お、おお⋮⋮これ、いい⋮⋮﹂
香奈ちゃんは力を抜いて俺に覆い被さっているから、密着度がす
ごい。
ふくよかなおっぱいが俺の胸の上でぺったりとつぶれている。香
奈ちゃんの体温とすべすべの肌⋮⋮ここは天国か!?
296
下から突き上げるようにして、腰の動きも再開する。
﹁あふっ⋮⋮! あっ、い、いいっ⋮⋮あぁんっ!﹂
わっ、とうとう﹃いい﹄って言っちゃったよ。すごい感じてるじ
ゃん。
調子に乗って、俺は処女だということも忘れ腰の動きを加速する。
俺の脳みそは確実に猿以下に退化していた。
香奈ちゃんは頬を赤くして額に汗の粒をまとわせ、はふはふと喘
いでいる。普段のクールさとのギャップもあり、ものすごくエロか
った。
おでこが触れ合いそうなほど顔が近いので、さっきから生温かい
吐息が俺の顔にかかっている。かぐわしいその息を、俺は鼻の穴を
大きくして肺の奥まで吸い込んだ。
⋮⋮キスしちゃダメだろうか⋮⋮?
処女を奪ったんだから今さらキスくらい⋮⋮とは思うが、キスは
キスで別物だという気もする。しかし、目の前で桜色のきれいな唇
が揺れているのを見ると、思わず吸い付きたくなってしまう。
どうしようかと悩んでいると、きゅっと眼を閉じてよがっていた
香奈ちゃんが、薄く眼を開いた。
すごい至近距離で眼が合う。その瞳はとろんとして、理性が飛ん
でしまっていた。
﹁⋮⋮あふっ⋮⋮もう⋮⋮イ⋮⋮イキ、そう⋮⋮﹂
俺の理性も吹っ飛んだ。俺はぎゅっと香奈ちゃんを抱きしめ、夢
中でキスしていた。
﹁んっ! むぐ⋮⋮﹂
香奈ちゃんは顔をしかめて呻いたが、俺は構わず唇を吸った。わ
あ、ぷるんとしてて、柔らけえ⋮⋮。
唇を離すと、香奈ちゃんは﹁ぷはあっ!﹂と苦しそうに息を吐い
た。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮お、お兄さんっ! しょ、処女を奪っただけでは
飽き足らず、ファ、ファーストキスまで⋮⋮き、鬼畜ですかっ!﹂
297
口を押さえ、一層顔を真っ赤にして怒る香奈ちゃん。怒った顔も
可愛かった。
それにしても、未羽とあれだけキスしてて、まだファーストキス
と言い張るんだな⋮⋮男とは初めてなんだろうけど。
﹁すまない! 香奈ちゃんが可愛すぎて、どうにも我慢できなかっ
たんだっ!﹂
俺は率直に言った。
﹁かっ、可愛いって⋮⋮! そ、そんなこと言ってもごまかされ⋮
⋮﹂
さらに顔を赤くして恥じらう香奈ちゃん。ぐわぁ、可愛い⋮⋮!
俺は香奈ちゃんを抱きしめ、もう一度キスした。
﹁むぐぅ⋮⋮! ま、また⋮⋮だめぇ⋮⋮﹂
舌を伸ばすと香奈ちゃんは意外にあっさり口を開いて、俺の舌を
迎え入れた。
逃げ惑う香奈ちゃんの舌を追いかけて、俺は夢中で舌を絡めた。
口の中で鬼ごっこしているみたいだった。
香奈ちゃんは下を向いているので、ずっと舌を絡めていると彼女
の唾液が垂れてきた。温かい唾液を、俺は喉を鳴らして呑み込んだ。
﹁⋮⋮ぷはあっ!﹂
唇と舌の感触を堪能して口を離すと、息ができなかった香奈ちゃ
んは苦しそうに喘いだ。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮し、舌まで⋮⋮お、お兄さんの変態っ!﹂
うーん、何故だろう⋮⋮香奈ちゃんに罵られると、心の奥から喜
びが湧いてくるような⋮⋮。俺もM? いや、Sか?
﹁きゃっ! な、何? み、未羽!?﹂
香奈ちゃんが急に驚いて後ろを向いた。香奈ちゃんのお尻のあた
りで、未羽がごそごそやっていた。
﹁ん∼? 香奈ちゃんのお尻が可愛いからさ∼、いいことしてあげ
るね﹂
未羽は中指にコンドームをはめ、自分の指と香奈ちゃんのお尻に
298
ローションをまとわせていた。そう言えば、香奈ちゃんのお尻開発
してるって言ってたっけ⋮⋮。
﹁だっ、だめっ! 今は⋮⋮﹂
﹁今だからいいんだよぉ。お尻とおまんこで、きっとすごく気持ち
いいよ⋮⋮﹂
エロエロ大魔王が邪悪な笑みを浮かべ、香奈ちゃんのアナルに指
をあてがう。躊躇うことなく、中指をにゅるっと挿入する。
﹁ふわっ! はうっ⋮⋮あぁ⋮⋮﹂
アナルに指を入れられ、香奈ちゃんは眉を寄せて切ない声を上げ
た。
キスの間一休みしていたジュニアが、破裂しそうなほど硬度を増
す。俺は激しく腰を突き上げた。
﹁はあっ! あんっ、あんっ! はうぅ⋮⋮い、いいよぉ⋮⋮﹂
﹁うふふ⋮⋮香奈ちゃん、可愛い⋮⋮気持ちいいんだね、いっぱい
してあげる⋮⋮﹂
香奈ちゃん、マジでアナルも感じるらしい。さっきよりもあえぎ
声が1オクターブ高い。親友とその兄に二穴責めされて、彼女は大
声であえいだ。
﹁はぁんっ!⋮⋮あぁっ! あっ、もう⋮⋮イ、イクっ⋮⋮﹂
香奈ちゃんは顔を上げていることもできなくなって、吸血鬼が噛
みつくような感じで、俺の首筋に顔を埋めている。
耳元で﹁イク、イク﹂と連呼され、俺は興奮してラストスパート
をかけた。
﹁うおぉ⋮⋮か、香奈ちゃん、お、俺も、イキそう⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃん、お兄ちゃんもイクって! ほら、一緒に、一緒にだ
よ!﹂
俺のラストスパートに合わせ、未羽も激しくアナルを攻める。香
奈ちゃんの身体が、電気を流したようにぶるぶると震えた。
﹁あっ!⋮⋮あっ、も、もう⋮⋮!﹂
釣り上げた魚みたいにびくびくと震える身体を、俺はぎゅっと抱
299
いた。機関車のように激しくジュニアを突き上げる。
﹁あっ、あっ、あぁっ⋮⋮! し、死んじゃう⋮⋮はぁっ、あっ、
あああああああぁぁぁぁぁぁん!!﹂
絞り出すような絶叫を上げて、香奈ちゃんはイった。全身に力が
入って、驚くほど硬直している。
俺もどぴゅどぴゅと放出した。俺のジュニアは何度も脈打って、
多量の精液をほとばしらせた。
﹁⋮⋮はう⋮⋮ああ⋮⋮はふ、はふぅ⋮⋮﹂
快感の波は長い時間をかけて彼女の身体を通りすぎた。
全身から強ばりが解けていく。香奈ちゃんは俺の胸の上でぐった
りして、はぁはぁと荒い息をしていた。口の端からだらしなくよだ
れを垂らしている。
﹁⋮⋮香奈ちゃん⋮⋮? 気失っちゃったかな⋮⋮?﹂
未羽が、俺の上で伏せっている親友の髪を、愛おしそうに撫でる。
⋮⋮マリア様みたいな顔してるけど、いろいろひどいことしてるよ
ね? 俺の妹。
﹁⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮あ⋮⋮未羽⋮⋮﹂
ようやく意識を取り戻した香奈ちゃんが、のろのろと上体を起こ
す。イったばかりの火照った身体と、その身体を這う赤いロープが、
猛烈にいやらしかった。
﹁香奈ちゃん、頑張ったね。大好きだよ﹂
未羽が香奈ちゃんを抱きしめる。香奈ちゃんも未羽の背に腕を回
した。
﹁もう、未羽ぅ⋮⋮ひどいよぉ⋮⋮わたし、お兄さんに処女もファ
ーストキスも奪われちゃった⋮⋮﹂
未羽の胸に顔をうずめながら、香奈ちゃんが横目で恨めしげな視
線を俺に送る。
あの⋮⋮いまさら恨まれても⋮⋮。かなり和姦に近い強姦だと思
うけど。
未羽は子供をあやすように香奈ちゃんの頭を撫でながら言った。
300
﹁あたしも、初めてはお兄ちゃんだったよ⋮⋮香奈ちゃん、あたし
ね、あたしの知ってることは、全部、香奈ちゃんにも知っていてほ
しいの⋮⋮香奈ちゃんとは何でも、共有していたいの⋮⋮﹂
香奈ちゃんはハッとして、感動した眼で未羽を見上げた。
﹁未羽⋮⋮そうだったの⋮⋮そんなにわたしのこと⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃん、愛してるよ⋮⋮﹂
﹁未羽、わたしも、愛してる⋮⋮﹂
二人は抱き合い、熱い口づけを交わした。むさぼるように舌を絡
める。
俺がそばにいることを気にするどころか、完全に二人の世界に入
ってしまっている。結界でもはられているみたいに、割り込む術は
全くなかった。
﹁⋮⋮ぷはぁ⋮⋮﹂
カップラーメンができそうなほど長い時間べろちゅーを交わし、
二人はようやく唇を離した。
香奈ちゃんがうっとりとした顔で、未羽を抱きしめる。美少女二
人の抱擁は、一幅の絵のように美しかった。
さすが未羽。香奈ちゃんの扱いはお手の物だ︱︱と思ってたら、
香奈ちゃんが急に俺の方を向いて、キッと怖い顔で睨みつけた。
﹁お兄さんっ!﹂
﹁は、はいっ!﹂
全裸で正座して、背筋をピンと伸ばす俺。
﹁未羽に免じて今回は許してあげますけど、今度こんなことしたら、
許しませんからねっ!!﹂
﹁今回は許すのかよっ!!﹂
あまりロマンチックでないシチュエーションで処女を失った香奈
ちゃんは、あっさり俺を無罪放免した。
香奈ちゃん、もうちょっと怒ってもいいと思うよ⋮⋮。
301
☆
302
︻後日談9の4︼憧れのあの娘
﹁おい、聞いたか?﹂
香奈ちゃん亀甲縛り事件の翌朝、登校中に校門前で公人に会った。
俺の顔を見るなり、挨拶も無しにこの質問だ。
﹁オハヨーぐらい言えよ。聞いたかって、何を?﹂
﹁香奈ちゃんだよ。D組の権藤をのしたって話﹂
﹁⋮⋮聞いてねえ。権藤を?﹂
D組の権藤は、まあ分かりやすく言えば不良だ。ガタイがでかく、
相当喧嘩が強いと聞いたことがある。
﹁昨日の午後にD組の空手の授業があってさ、香奈ちゃんがまた模
範演武で呼ばれたんだって。
で、演武が終わった後で、権藤が香奈ちゃんと自由組手やってみた
いって言いだしたんだよ。権藤、極真空手やってんだって? どお
りで喧嘩強いわけだよ﹂
﹁へえ⋮⋮でも、防具も無しにできないだろ、自由組手なんて﹂
﹁そこは権藤が﹃寸止めで﹄って言ってさ、西沢渋ってたけど、権
藤がどうしてもって言うから、﹃絶対当てるなよ﹄っつってやらせ
たらしいんだ。
それで、組手させたはいいんだけど、香奈ちゃんは真剣に相手して
るのに、権藤はヘラヘラして、明らかに手抜きでさ。そんで、攻撃
する振りして胸触ったらしいんだよ﹂
﹁マジか⋮⋮それ香奈ちゃん怒るだろ﹂
胸を触るだけでも悪ふざけが過ぎると思うが、真剣な空手の最中
にって⋮⋮神経を逆なでするような真似を⋮⋮。
﹁もちろん香奈ちゃんブチ切れてさ、瞬間移動みたいな速さで踏み
303
込んだかと思ったら、太ももへのミドルキック↓腹パンチ↓額に掌
底の眼にも止まらぬ三連コンボ。格ゲーみたいだったらしいぜ。
権藤は仰向けにひっくり返ってあえなく失神。香奈ちゃんは舌打ち
して、﹃⋮⋮恥を知れ!﹄とひとこと言い残して体育館を去ったん
だと。
権藤は西沢が活を入れて眼を覚ました後、肩を担がれて保健室へ
直行。ご愁傷様ってわけ﹂
やっぱ切れたか⋮⋮それにしても、掌底で気絶させるの、慣れて
るんだね、香奈ちゃん⋮⋮。
﹁漫画みたいなエピソードだな⋮⋮いいのかよ、有段者が思い切り
技振るっちゃって?﹂
﹁そこは、素人ならともかく権藤も空手経験者だから、西沢が組手
中の事故ってことにしてもみ消したんだと。
学校側も本当は真相を知ってるんだろうけど、公になって早乙女
さんが試合に出れなくなったりしたらマズいから、取り沙汰にする
つもりはないらしい。
権藤はみんなの前で大恥かいたもんだから、あれからずっとムスッ
としてるってさ。D組ではこの件の話は絶対タブー。うっかりネタ
にしようものなら権藤にボコられるって﹂
﹁⋮⋮そうか。本人が蒸し返されたくないと思ってるんなら、逆恨
みして嫌がらせとかしてくる心配もなさそうだな﹂
﹁ぶっちゃけ権藤嫌ってるやつ多いからさー、香奈ちゃんヒーロー
だよ。あ、女だからヒロイン? 俺もこの話聞いてますますファン
になっちゃったなあ﹂
﹁憧れるのはいいが、怒らせると掌底くらってバタンキューだぞ﹂
校舎の玄関に着き、俺たちは靴箱にシューズをしまって、上履き
に履き替えた。
﹁おはようございます、お兄さん﹂
後ろから声をかけられ、振り向くと噂の香奈ちゃんが鞄を持って
立っていた。公人が﹁ひえっ!﹂と大げさに驚く。
304
﹁おはよう、香奈ちゃん﹂
﹁お、おおお、おはよう、早乙女さん! 昨日の演武、素晴らしか
ったです!﹂
さっきまで﹃香奈ちゃん﹄って呼んでたくせに⋮⋮下級生相手に
敬語使うなよ、公人。
﹁昨日、権藤をのしたんだって? あいつ逆恨みするかもしれない
から、何かされたら俺に言えよ﹂
香奈ちゃんは小さく﹁ふっ﹂と笑った。
﹁お優しいんですね。でもご心配なく。そのときは、二度とそんな
気を起こさないようコテンパンにしますから﹂
﹁そっか。でも気をつけなよ﹂
俺は視線を下げて香奈ちゃんの手首を見た。それに気付いた香奈
ちゃんが、胸の前で手首を隠そうとする。
﹁な、何ですか?﹂
﹁いや、痕が残ってないかと思って﹂
香奈ちゃんがふわっと顔を赤くした。
﹁こ、こんなところで⋮⋮! だ、大丈夫ですから! 心配ご無用
です!﹂
香奈ちゃんはサッときびすを返すと、足早に一年の校舎の方へと
去って行った。後に残された公人が、﹁はあ∼﹂と溜息をつく。
﹁何だよ、変な溜息ついて﹂
﹁くうう⋮⋮近くで見ても可愛いしクールだなあ。お前よく平気で
しゃべれるな⋮⋮﹂
﹁そりゃ、あの子が中学のころから知ってるし﹂
﹁二人にしか分からない会話しやがって⋮⋮何だよ、痕って?﹂
﹁ああ、あれ? ⋮⋮んーと、昨日香奈ちゃんが家に遊びに来てさ、
未羽と一緒に夕飯作ってくれたんだよ、白身魚の竜田揚げ。そのと
き油がはねて手首火傷してたからさ、痕残ってないかと思って﹂
一応、油がはねたこと以外は本当だ。香奈ちゃんは処女を奪った
兄妹と普通に団らんして帰った。あらためて考えるとすごい神経だ
305
な。
﹁何それ、何てエロゲー!? あんな可愛い妹とあんな可愛い香奈
ちゃんが手料理作ってくれるわけ!? リアルハーレムじゃん⋮⋮
羨ましい⋮⋮﹂
﹁ハーレム言うなよ、妹と妹の親友だぞ? エロゲーみたいに手を
出すわけにはいかねえよ﹂
最近、すらすらと嘘を口にできるようになった。公人のおかげだ。
﹁しかし、香奈ちゃんは家庭的なことは苦手そうなイメージだった
んだけどなあ⋮⋮あの顔でエプロン着て料理するわけ? 人には意
外な一面があるもんだなあ﹂
俺は公人の肩に、ポンと手を置いた。
﹁公人、その通りだ。人は他人を理解したつもりでも、表面しか見
えていないものなのさ﹂
﹁な、何だよ? やたら実感がこもってるけど?﹂
公人が怪訝そうにそう言ったところで、予鈴が鳴った。
﹁ほら、予鈴だ。急ぐぞ﹂
﹁あ、おい、待てよ﹂
俺は教室へと急ぎ、公人の質問ははぐらかした。
妹のレズ友でドMで、最近アナルも開発されて感じるようになっ
てて、昨日俺が亀甲縛りで動けない彼女の処女をいただきましたっ
て⋮⋮どれ一つとして公人に話せることがねえ。
人は誰しも意外な一面の一つや二つ持っているものだが⋮⋮香奈
ちゃん、表と裏が意外すぎるよ。
早足に歩きながら、俺はそんなことを考えた。
まあ、いいさ。俺はどっちの香奈ちゃんも大好きだ。
おわり
306
307
︻後日談10の1︼香奈ちゃんとロングトーク①︵前書き︶
キャラの性格を鑑みて、香奈ちゃんが鐘良納子を呼ぶときの呼称を
﹁のりちゃん﹂から﹁のり﹂に変更しました。過去の後日談も変更
しています。︵2014/8/3︶
308
︻後日談10の1︼香奈ちゃんとロングトーク①
平日の夕方。玄関のチャイムが鳴る。
応対に出ると、お客は香奈ちゃんだった。学校帰りらしく、制服
を着て鞄を持っている。
﹁こんにちは、お兄さん﹂
無表情で挨拶する。愛想がないと思うかもしれないが、先日処女
を奪ばわれた相手にこうしてきちんと挨拶するのだから、聖職者並
みの人格と言えるだろう。
﹁こんにちは。未羽は今コンビニ行ってるんだけど、上がって待っ
とく?﹂
﹁⋮⋮お兄さんひとり、ですか?﹂
﹁ああ、今日は親父もおふくろも、七時頃にならないと帰らないよ﹂
香奈ちゃんは、虫が嫌いな人がタッパーいっぱいのイナゴの佃煮
を見たような、ものすごく嫌そうな顔をした。
﹁何だよ!? その顔!?﹂
﹁猿以下の理性しか持たない変態が何を言ってるんですか⋮⋮お兄
さんと二人きりの家に上がるなんて、身体中に蜂蜜塗って熊の檻に
入るより危険ですよ﹂
ひどい言いぐさだが、蜂蜜まみれの香奈ちゃんは見てみたいと思
った。ぺろぺろしたい。
﹁あのさ、この間のことは謝るけど、もし俺が香奈ちゃんを家にあ
げて、﹃うおー﹄って襲いかかったとしてだよ? 三秒後にはボコ
ボコになってると思うんだけど、違う?﹂
香奈ちゃんは斜め下に溜息を吐いた。
﹁⋮⋮そうですね、もし変なことをされたら、人中をひと突きすれ
309
ば済むことです。上がらせてもらいます﹂
⋮⋮人中って、確か鼻の下の急所で、ここを強く打つと死ぬと聞
いたことがある。ちょっと背筋が寒くなった。
☆
俺は香奈ちゃんをキッチンに通した。リビングよりこっちの方が
給仕がしやすい。彼女は自分でイスを引いてテーブルに着いた。
﹁何か飲む?﹂
﹁お気遣いなく﹂
﹁敵の家に行っても口を濡らさず帰るなって言うじゃん。どうぞ、
遠慮なく﹂
﹁そうですか⋮⋮じゃあ、アセロラジュースを﹂
﹁⋮⋮そんなの俺ん家にあるの?﹂
﹁冷蔵庫の右奥に原液のボトルが入ってます。それを6倍に薄めて
⋮⋮作り方の説明では5倍になってますけど、それでは甘いので6
倍にして下さい。氷も入れて、ミントの葉を浮かべて下さい﹂
﹁ミント?﹂
﹁マーガリンの横に蓋がオレンジ色のタッパーがあるはずです。そ
れに未羽が庭で摘んだミントの葉が入っています。グラスに入れる
前に掌でパンと叩いて下さい、香りが出ますから﹂
﹁⋮⋮うちの冷蔵庫事情にずいぶん通じてるね、香奈ちゃん⋮⋮﹂
﹁勝手知ったる何とやらですから、普段は自分で作っているんです。
ご面倒でしたらわたしが作りますよ?﹂
﹁いや、いい。お客さんだから、座っててくれ﹂
俺は香奈ちゃんの注文どおりのアセロラジュースを二人分作った。
家主が飲んだことないのも悔しいので、一つは俺の分だ。
﹁どうぞ﹂
﹁いただきます⋮⋮﹂
310
すぐには口を付けず、グラスを眺めている香奈ちゃん。
﹁毒は入ってねえよ﹂
﹁いえ⋮⋮ストローを頼むのを忘れていたのですが、こうしてちゃ
んとストローを挿して出すあたりはさすがの気遣いというか、彼女
もいないのに女の子の扱いに慣れていますね﹂
﹁⋮⋮恐れ入ります。未羽にしつけられてるものでね﹂
毒を吐かなきゃしゃべれねえのかのよ、この子⋮⋮。
ちなみに俺はコンビニでもストローを断る派なので、俺のグラス
には挿していない。
香奈ちゃんが口を付けたので、俺もジュースを飲んだ。彼女のレ
シピによるアセロラジュースは、甘さ控えめで旨かった。
﹁未羽には何の用?﹂
じゅりあ
﹁大した用ではないんですが⋮⋮名前を出すとマズいので仮名にし
ておきますが、同じクラスの樹璃杏がですね﹂
﹁仮名なのにキラキラネーム!?﹂
﹁じゃあA子にします。A子がちょっとした悩みを抱えていて、未
羽がそのことを心配していたのですが、今日わたしが相談にのって
あげて悩みが解決したので、その報告に来たんです。未羽、気にし
ていましたから、早く伝えて安心させようと思って﹂
﹁へえ、そりゃどうもありがとう。立ち入ったことは聞かない方が
いいよね?﹂
﹁女子の間の陰湿な話ですから、聞かない方がいいでしょう﹂
﹁⋮⋮遠慮しとく。解決したんでしょ?﹂
男同士のいざこざは、荒っぽいことがあっても後腐れなくカラッ
としたものだが、女子の﹃上履きに画鋲﹄的なジメジメした話は苦
手だ。
﹁気が滅入りましたか? でしたら、面白い話があるんですが、聞
きますか?﹂
﹁面白い話ならいつでも聞くよ﹂
﹁のりがですね、最近わたしに甘えてくるんですよ﹂
311
﹁へえ、のりちゃんが、香奈ちゃんに?﹂
のりちゃんというのは、﹁大豆鐘良﹂という高級納豆と高級豆腐
を作る工場の娘さんである。
クラスは違うが未羽と香奈ちゃんの同級生で、ちょっぴりシャイ
で可愛らしい女の子だ。
﹁この前ですね、わたしとのりがお泊まりさせていただいたときで
すけど、わたしそのときお風呂上がりでノーブラだったんですよ。
これからまったりとガールズトークに入ろうということで、未羽が
お茶を淹れに一階に降りたんです。
そしたらのりが、﹃⋮⋮ね、ねえ、香奈ちゃん﹄って話しかけるの
で、﹃なに?﹄って聞き返したら赤い顔して﹃う、ううん! や、
やっぱいい⋮⋮﹄って言うんですよ﹂
﹁何それ、面白そう﹂
身を乗り出す俺。
﹁わたしが﹃よくないよ、言ってごらん﹄って言うと、恥ずかしそ
うな顔して、おずおずと﹃お⋮⋮お、おっぱい、触っても、いい⋮
⋮?﹄って聞くんです。可愛かったですよ﹂
﹁おおっ! のりちゃんからおねだりか!﹂
のりちゃんは﹁香奈ちゃんオナニーレッスン事件﹂︵後日談6参
照︶のとき、彼女のおっぱいを揉んだ経験がある。そのときの感触
が忘れられないのだろう。
﹁意外だったので、﹃え? 触りたかったの?﹄って聞いたら、﹃
⋮⋮ま、前から、触りたいなって思ってたんだけど、未羽ちゃんい
ると、恥ずかしくて⋮⋮﹄って真っ赤になるんですよ。胸がキュン
としました。
わたしが﹃そう⋮⋮いいよ﹄って胸を突き出したら、﹃い、いいの
⋮⋮?﹄って。片手は握って口に当てて、もう片方の手をそーっと
伸ばすんですよ。
そうして、手が胸に触れると、﹃わあ⋮⋮柔らかい⋮⋮﹄って言い
ながら、遠慮がちに触るんです。
312
体育の着替えの時とか、ふざけて胸触ってくる女子いるんですが、
ああいうのはイラッとするんですけど、のりちゃんは可愛くって⋮
⋮未羽に触られるのとは違って、エッチな気分にはならずに母性本
能をくすぐられますね﹂
﹁俺は性欲をそそられるけどな﹂
﹁のりって無垢なんですよね⋮⋮。あんな妹が欲しいです﹂
俺の発言を完全にスルーして香奈ちゃんは話を続けた。
﹁わたしが﹃そんなおそるおそる触らなくても⋮⋮ぎゅっと揉んで
いいよ﹄って言うと、﹃い、いいの⋮⋮?﹄って上目づかいに聞い
て。それでもソフトに触るんですよ、わたし、気持ち良くって⋮⋮﹂
頬に手を当ててうっとりした顔をする。見たことのない表情だっ
た。
﹁﹃わあ、ホントに大っきい⋮⋮触り心地いい⋮⋮﹄とか、素直な
感想を言いながら、わたしのおっぱい揉むんです。
それで未羽のこと忘れて夢中になってたら、扉の向こうから足音が
聞こえて。のりは猫みたいにビクーッ!って背を伸ばすと、慌てて
わたしから離れて正座するんです。
未羽がトレイにお茶のポットとカップ乗せて部屋に入ってきて⋮⋮
のりちゃんが挙動不審なのに気付いて﹃何してたの?﹄って聞いた
ら、すっごいどもりながら﹃なななな、何もっ! おっ、おしゃべ
りしてたのっ!﹄って、顔真っ赤なんですよ。可笑しくって、吹き
出してしまいました。
未羽に問い詰められましたけど、秘密にしておきました。未羽なら
知られたって構わないと思うんですけど、本人が恥ずかしがってる
いやあ、いい話だった、
ごちそうさま。のりちゃんエピソー
ので、当分は伏せておこうと思います﹂
﹁
ドは癒されるなあ﹂
﹁続きありますよ、聞きたいです?﹂
﹁聞く聞く﹂
﹁寝るときおばさんが布団を敷いてくれるんですけど、誰がベッド
313
で誰が布団かで、いつももめるんですよね。
常識的に考えれば、部屋の主である未羽がベッドで寝て、わたしと
のりが布団で寝ればいいんですけど、それじゃ未羽が寂しいって言
うし、
じゃあわたしかのりが布団で一人で寝るかっていうと、それは仲間
はずれにしてるみたいでかわいそうだと。
結局いつもシングルベッドに三人で寝ることになるんですよね﹂
﹁ハムスターか君ら!?﹂
いくら三人とも小柄だからって、よほど密着しないと寝られない
だろ、あんな小さいベッド。
美少女が三人寄り添って⋮⋮うう、何て魅惑的な⋮⋮いい匂いが
するんだろうなあ⋮⋮くそお! 俺も一緒に添い寝したい!
﹁一番寝付きがいいのはのりなんですけど、その日のりは何だか落
ち着かない様子で、未羽の方が先に寝たんです。
未羽が寝てから10分くらいして、すっかり熟睡したのを見計らっ
てから、のりが﹃⋮⋮かなちゃん、起きてる⋮⋮?﹄って聞くんで
すよ。
﹃起きてるよ、何?﹄って聞いたら、すっごい恥ずかしそうに、﹃
⋮⋮あ、あのね⋮⋮香奈ちゃん⋮⋮ぎゅって、していい⋮⋮?﹄っ
て聞くんですよ。萌え死にしそうになりました。
わたしは、﹃ぎゅって? いいよ⋮⋮﹄って答えて、のりがおっぱ
いに顔をうずめたいのは分かってましたから、わたしの方から抱き
寄せて、胸に顔を押しつけるように、ぎゅーってしてあげたんです。
のりは﹃はふう⋮⋮幸せ⋮⋮﹄って言いながらわたしのおっぱいに
頬をすりすりするんです。
わたし、胸が大きいのを煩わしく感じることもあるんですけど、こ
のときばかりは巨乳で良かったとつくづく思いました。
愛おしくて、抱っこしながら頭を撫でていたら、そのうち大人しく
なって、気付いたらわたしの胸で寝息を立ててるんですよ。
天使のような寝顔でした。あんまり可愛かったので、頬にキスしま
314
したよ﹂
﹁うらやましい話だ⋮⋮のりちゃんが抱きついてすりすりしてくれ
るなら、俺も豊胸手術して巨乳になりたいくらいだ⋮⋮﹂
﹁そんないかつい身体で胸だけ大きくなっても気持ち悪いだけです
よ⋮⋮でも、聞いてくれてありがとうございます。誰かに話したく
てしかたなかったんですよ。未羽には秘密にするって、のりと約束
したので﹂
﹁俺の方こそ、ほっこりする話を聞かせてもらって感謝だよ。とこ
ろで香奈ちゃん、よく頬にキスで我慢できたね。俺なら我慢できず
に唇を奪ってしまいそうだ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮すみません、嘘つきました。のりのファーストキス
は、わたしが奪いました﹂
﹁やっぱしちゃったんだ! ⋮⋮でもまあ、いいんじゃない? の
りちゃん気付いてないんでしょ?﹂
香奈ちゃんの処女とファーストキスを奪った俺がどうこう言える
立場じゃないだろう。
﹁それにしても、同性っていいなあ⋮⋮香奈ちゃんのおっぱい触り
放題だものなあ﹂
﹁同性でも相手によりますよ﹂
﹁香奈さん、俺、香奈さんのおっぱいが触りたいです﹂
﹁ストレートにきましたね。スラダン風に言ってもだめです﹂
﹁俺が入院したとき、触らせてくれたじゃん﹂
﹁後日談7を読み返して下さい。特別だと言ったでしょう﹂
﹁あのさ、もうセックスもしてしまったことだし、おっぱい触るく
らいは永久ライセンスをくれてもいいんじゃない?﹂
﹁レイプしたからおっぱい触ってもいいだろうと? どんな理屈で
すか?﹂
﹁そうだ、会ったらお礼言おうと思ってたんだ。香奈ちゃんとのセ
ックス最高に気持ち良かったよ。あれをおかずにしてもう何十回オ
ナニーしたことか﹂
315
﹁死ねっ!! 野良犬っ!!﹂
怒らせてしまった。うーん、説得しておっぱい触らせてもらうの
は無理そうだな。
それにしても、俺最近香奈ちゃんに罵られるのが快感になりつつ
あるな⋮⋮もっと豚とか糞とか言ってほしい。
316
︻後日談10の1︼香奈ちゃんとロングトーク①︵後書き︶
☆ 長いのでここでいったん区切りますね∼。
317
︻後日談10の2︼香奈ちゃんとロングトーク②
﹁香奈ちゃん、ちょっと手を広げて見せてくれる?﹂
﹁野良犬と言われても蛙の面に水ですね⋮⋮手を? 何ですか⋮⋮
?﹂
香奈ちゃんは両手をパーにして俺に示した。顎に手を当て、ふむ
ふむと眺める俺。
﹁格闘家は左右の指の長さが違ってくるっていうけど、あれ本当だ
ね﹂
﹁え? 違います?﹂
香奈ちゃんは手のひらを自分に向けて観察した。
﹁微妙だけどね、特に親指が違ってるかな。香奈ちゃん、両手を﹃
いいね!﹄にしてごらん﹂
﹁﹃ぐ∼﹄とかいうオチじゃないでしょうね⋮⋮?﹂
こぶしを握って親指を立てる香奈ちゃん。
﹁うん、そしたら、テーブルの上に親指を並べて。長さ比べるから﹂
﹁こう⋮⋮ですか?﹂
香奈ちゃんが親指を揃えてテーブルの端に置く。
﹁指の間を1センチくらい離して﹂
怪訝そうな顔をしながらも、彼女は指示に従った。
テーブルの上に並んだ、格闘家とは思えない、白く可愛らしい親
指。俺はその上に、香奈ちゃんの飲みかけのグラスを置いた。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
何が起こったのか分からず、思考停止する香奈ちゃん。数秒過ぎ
てから、彼女はやっと﹁グラスが自分ではどけられない﹂というこ
とに気付いた。
﹁えっ? う、動けない⋮⋮ちょ、ちょっと! お兄さん!﹂
焦る香奈ちゃん。グラスにはアセロラジュースが3分の1ほど残
318
っている。グラスをどかすには手を動かさなくてはならず、手を動
かせばグラスが倒れてしまう。
俺は無言で席を立った。テーブルを半周して、香奈ちゃんの背後
に立つ。
﹁な、何を⋮⋮﹂
香奈ちゃんは不安そうに首を捻って後ろを向こうとするが、グラ
スから目を離すと倒れてしまいそうで、振り向くこともできない。
俺が肩にポンと手を置くと、彼女はビクッと震えた。グラスの中
のジュースが揺れる。
﹁ちょ、ちょっと! お兄さん、何を⋮⋮! む、胸触ったら許し
ませんからね!﹂
わめく香奈ちゃんに構わず、俺はセーラー服の胸元に手を入れた。
﹁あっ⋮⋮!﹂
すべすべしたデコルテから、乳房へと降りていく。ブラからはみ
出した谷間の部分を、ぷにぷにと指でつつく。ブラの余りでさえ、
指が沈むほどのボリュームがあった。
﹁や、やぁっ! ちょ、ちょっと! お兄さん、さ、触っちゃだめ
って⋮⋮!﹂
﹁ごめん、香奈ちゃん。俺、自分の気持ちに正直に生きることにし
たんだ﹂
﹁格好良く言ってもだめですよ! ちょ⋮⋮や、やぁん⋮⋮!﹂
俺は自分の気持ちに正直に、ブラとおっぱいの隙間に手をもぐら
せ、少しずつ前進した。
﹁おお⋮⋮プリンのような柔らかさ、すべすべした手触り⋮⋮香奈
ちゃんのおっぱいは何度触っても最高だよ﹂
﹁ほ、褒めてもだめっ! あっ⋮⋮やだ⋮⋮!﹂
﹁おっ、乳首に到達! ここが山頂か。よし、このまま一気に麓ま
で⋮⋮﹂
﹁あっ⋮⋮あぁん⋮⋮やめてってばぁ⋮⋮﹂
俺の右手は香奈ちゃんのブラの奥深くまで侵入し、いまや香奈ち
319
ゃんの左おっぱいを鷲づかみにしていた。
制服の胸元から手を入れておっぱいを揉むのは、電車で痴漢して
いるみたいで、俺は興奮した。⋮⋮つーか、これ自体が痴漢か?
﹁お兄さん⋮⋮! も、もう、やめってたらぁ! あぁん⋮⋮﹂
抵抗できない香奈ちゃんは、言葉で拒否し続けている。
でもね、香奈ちゃんが抵抗できない理由って、親指の上に乗って
るアセロラジュースのグラスだよ?
そんなの、倒れてこぼれようが、床に落ちて割れようがどうでも
よくね?
どこの世界に生乳揉まれるのとジュースがこぼれるのを天秤にか
けて、生乳揉まれるほう選択する女子高生がいるんだよ。このグラ
ス安物だし、割れたって全然構わない。
だから俺は、香奈ちゃんは明らかにおっぱい揉まれたくて揉まれ
てると判断している。
でなきゃ犯罪だものな。みんなも無理矢理女の子のおっぱい揉ん
じゃだめだぜ?
﹁いやっ⋮⋮やぁん⋮⋮! や、やめてぇ⋮⋮﹂
俺は香奈ちゃんのおっぱいを揉みしだいた。
ぐっと握ると、握った分だけ指が沈み込む。かといってばーさん
の垂れ乳みたいにフニャフニャかというとそんなことはなく、確か
な弾力で跳ね返してくる。
肌はしっとりとして、手に吸い付くようだ。手のひらには小粒の
乳首がぷにぷにと当たっている。
﹁ああ⋮⋮香奈ちゃんのおっぱい、最高に触り心地いいよ⋮⋮日本
の宝だ、世界遺産に登録しよう﹂
﹁観光客が来ますよ! バ、バカなこと言ってないで⋮⋮﹂
うーむ、ブラに手を入れて揉むのもシチュエーション的には良い
のだが、片手ではちょっと物足りなくなってきた。
せっかくだし、両手で⋮⋮俺は、胸を揉んでいた右手を制服から
抜いた。
320
﹁はぁ、はぁ⋮⋮やっと⋮⋮﹂
おっと香奈ちゃん、まだ解放したわけじゃないぜ。安心してくれ、
もっと揉んでほしいのは分かってるんだ!
俺はセーラー服の背中をめくり上げた。
﹁⋮⋮えっ!? ちょ、ちょっと、お兄さん!? 何を⋮⋮!﹂
何をって、やること一つしかあるまいに。俺は迷わずブラのホッ
クを外した。ベルトが弾けるように左右に分かれる。
﹁きゃあっ! お、お願い⋮⋮! もうやめてぇ!﹂
﹁香奈ちゃん、すまない、どうしても我慢できないんだ。俺、一ヶ
月はおかずにするから、許してくれ﹂
﹁そ、そんなんで贖罪になるかっ!⋮⋮あんっ! だ、だめってば
ぁ⋮⋮﹂
俺は後ろから手を伸ばし、セーラー服の裾から手を入れて、両手
でおっぱいを掴んだ。
﹁はあぁ⋮⋮両手に生おっぱい、天国だ⋮⋮本当に何て大きさだ、
手から溢れてしまいそうだ⋮⋮俺の手がもっと大きければいいのに﹂
﹁あっ⋮⋮あぁん⋮⋮揉まないでぇ⋮⋮あふっ⋮⋮﹂
ブラから解き放たれたおっぱいは、フリーダムに大きくて柔らか
かった。おっぱい革命だ。
﹁香奈ちゃん、乳首が硬くなってるよ⋮⋮手のひらにこりこり当た
ってる﹂
﹁もっ、⋮⋮いやぁん⋮⋮そんなことないもん⋮⋮﹂
ないもん、って言ったよ、香奈ちゃんが。これはだいぶ感じてき
てるな。
俺は乳首攻撃を開始した。指先で乳首をくりくりといじる。
﹁あっ! あっ、あぁっ! ⋮⋮やぁん⋮⋮!﹂
すぐにあえぎ声が大きくなった。身体がびくん、びくんと震える。
赤いアセロラジュースがグラスの中でゆらゆらと揺れた。
﹁あふっ⋮⋮あっ、んっ⋮⋮はぁん﹂
﹁香奈ちゃん⋮⋮感じてるね⋮⋮気持ちいい?﹂
321
﹁か、感じてませんっ! や、やめなさいってば⋮⋮はぁっ⋮⋮!﹂
強情だな、香奈ちゃん。こんだけ声出してまだ感じてないと言い
張るか。
﹁そうかな? 感じてるみたいだけどなあ? ちょっと確かめてみ
ていい?﹂
俺は、すっと両手をセーラー服から引き抜いた。
﹁あっ⋮⋮﹂
素直に解放されるとは信じられないのだろう、香奈ちゃんが不安
そうに首を振り向ける。
俺は香奈ちゃんのイスの横にしゃがんだ。手を伸ばし、スカート
の裾に手をかける。
﹁えっ⋮⋮!? やっ! お、お兄さん!?﹂
﹁いや、香奈ちゃん感じてないって言うから、確かめようと思って﹂
﹁し、下はだめっ! ひっ⋮⋮! いやぁんっ!﹂
構わず俺はスカートを太ももへとめくり上げた。女子高生にして
は高級そうな、精緻なレースがあしらわれたショーツが露わになる。
﹁だ、だめぇっ! お、お願い、それだけは⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃんの脚、スラッとしててきれいだね﹂
太ももの上に手を置くと、香奈ちゃんは﹁ひゃっ!﹂と叫んだ。
猫を撫でるように太ももをさする。わあ、うぶ毛も生えてねえ⋮
⋮シルクの手触りだ。
﹁やっ!⋮⋮やぁん! し、下はだめぇ!﹂
﹁ちょっと確かめるだけだから。手を入れるよ⋮⋮﹂
手を太ももから下腹部へ移動。ショーツの中へ指先を入れる。
﹁きゃあっ! ほ、本当にそこを⋮⋮や、やめてぇっ!﹂
乙女の秘部へ向かい、ゆっくりと指を進めていく。ぷにぷにした
下腹部の感触が心地よい。
﹁あっ!⋮⋮だ、だめぇっ!﹂
香奈ちゃんはパイパンなので、陰毛の感触を味わうことなしにス
リットに到着した。
322
固く閉じたそこを指でなぞると、やっぱりぬるぬるとした液にま
みれていた。
﹁香奈ちゃん、ここ、ぬるぬるじゃないか⋮⋮いやらしいなあ、無
理矢理おっぱいを揉まれて感じるなんて﹂
﹁⋮⋮くっ⋮⋮いやぁ、言わないでぇ⋮⋮﹂
見上げると、香奈ちゃんは顔が真っ赤だった。下唇を噛んで、激
しい羞恥に耐えている。
ううう、可愛いぜ香奈ちゃん⋮⋮やっぱり香奈ちゃんが恥ずかし
がる顔は最高だ。
もっと羞恥にゆがむ顔が見たくて、俺は襞の間に浅く指を潜り込
ませた。
﹁あっ! そ、そこ⋮⋮! さ、触っちゃだめぇ⋮⋮だめなのぉ⋮
⋮﹂
彼女のそこは、とろっとろに潤っていた。さすがドM香奈ちゃん
だ。
ぬめる襞が指にまとわりついてきて、その感触はイソギンチャク
を想像させた。
﹁そう言えば俺、香奈ちゃんおまんこ触るの初めてだ。うお⋮⋮と
ろとろで柔らかい⋮⋮襞の感触が何とも言えないな⋮⋮﹂
﹁わ、猥褻罪犯しながらのんきに感想言わないで! ⋮⋮んっ、は
ぁっ! あぁん⋮⋮﹂
俺はちゅくちゅくと水音を立てながらおまんこを弄り、クリトリ
スを探し当てた。指が触れると、香奈ちゃんが甲高い声を上げた。
﹁はうっ! あっ!⋮⋮そ、そこだめぇ!⋮⋮あぁんっ!﹂
だめと言われたってやめられるものじゃない。俺はクリちゃんに
集中攻撃を仕掛けた。
香奈ちゃんの身体が小刻みに揺れる。それでも、彼女は律儀にア
セロラジュースを倒さずに維持していた。
﹁お、お兄さん⋮⋮! も、もう許して⋮⋮んっ、あぁん!﹂
指に感じるクリちゃんが、ぷっくりとふくれている。
323
香奈ちゃん﹁許して﹂何て言っているけど、ここでやめたら彼女
の方が辛いんじゃないだろうか?
イカしてあげたいけど、香奈ちゃんは足を閉じているものだから、
どうしても指の動きが不自由になってしまう。ダメ元で交渉してみ
るか。
﹁香奈ちゃん、お願いだけど、ちょっと脚を開いてくれないかな﹂
快感に必死で耐えながら、香奈ちゃんが斜め下にいる俺の顔を見
た。
ほてった赤い頬。眉を八の字にして額に汗を浮かべ、泣き出しそ
うな顔をしている。普段のクールさとのギャップで、どえらくエロ
かった。
﹁ば、ばかぁ⋮⋮やめてって言ってるのに、あ、脚開けとか⋮⋮お
願い、もう、やめてよぉ⋮⋮グラス落としちゃうぅ⋮⋮﹂
舌足らずなタメ口がすげえ可愛いかった。
それにしてもグラス死守するんですね? 落とすと地球が滅ぶの?
﹁でも俺、もう香奈ちゃんがイクまで、やめるなんて到底できない
よ。じわじわ気持ち良くなると、よけい感じちゃうんじゃない? ここはもう、あきらめて脚を開いて、サラッと軽くイった方がいい
んじゃない?﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
俺だけに都合のいい提案に、香奈ちゃんは無言で返した。
無人島に流れついた遭難者が、遠くに見える客船に必死で手を振
るも、気づいてもらえなかったような、彼女はそんな悲しげな顔を
した。
それでも俺は指を止めない。香奈ちゃんはぴくんぴくんと、小刻
みに身体を震わせている。
アセロラジュースのグラスが、円を描くように揺れる。
﹁⋮⋮⋮⋮ゅ⋮⋮なぃで⋮⋮﹂
つぶやいた彼女の言葉は、小さすぎて聞き取れなかった。
﹁え? ごめん、聞こえなかった⋮⋮﹂
324
﹁⋮⋮⋮⋮ゆ、指は⋮⋮入れないで⋮⋮入れたら、グラス落としち
ゃう⋮⋮﹂
蚊の泣くような声で、香奈ちゃんはそう言った。
そうして、ほんの少しだけ、膝の間にこぶし二つ入るくらい、脚
を開いた。
顔を見ると、おでこまで真っ赤にして、死ぬほど恥ずかしそうで、
プラス、ちょっと怒った顔をしていた。
超萌える彼女の表情に、俺のジュニアが破裂しそうなほどいきり
立った。
﹁香奈ちゃん⋮⋮分かった、指は入れない⋮⋮軽くね、軽∼くイカ
せてあげるからね﹂
俺はクリちゃん弄りを再開した。うん、さっきよりずっと自由に
指が動く。
愛液をまとわせて、円を描くようにクリちゃんをすりすりする。
﹁くぅっ⋮⋮! はぁっ!⋮⋮あっ、あぁっ!﹂
あえぎ声のキーが1オクターブ跳ね上がった。もうだいぶ頭がへ
ヴン状態だと思うのだが、それでもグラスを倒さないのは、たいし
た精神力だと思う。
﹁あふっ⋮⋮ああっ、も、もう⋮⋮イ、イキそ⋮⋮﹂
お、早くもフィナーレが近づいてるな。香奈ちゃんシチュが特殊
なほど興奮するから、感度が高まっているんだろう。
あんまり強く刺激すると派手にイっちゃうから、俺はペースを変
えずにクリちゃんを刺激した。
階段を登るように、香奈ちゃんのボルテージが上がっていく。
﹁あっ、あっ、くる⋮⋮はう⋮⋮﹂
身体が強く強ばる。香奈ちゃんはきつく眼を閉じた。
﹁はっ⋮⋮ んっ!はぁっ、あっ、ああっ⋮⋮!﹂
いつものように大絶叫しながらではないが、香奈ちゃんの身体の
震えから、彼女の中を快感の波が通り抜けていくのが分かった。
﹁ふわ⋮⋮んはぁ⋮⋮﹂
325
アセロラジュースのグラスはゆらりゆらりと弧を描き、今にも倒
れそうに大きく傾いて︱︱しかし、それでも倒れずに、最後にぴた
りと直立して静止した。
﹁ふう⋮⋮よ、よし⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮﹂
彼女は安堵の溜息をついた。香奈ちゃんの精神力、大勝利だ。
﹁すごい、香奈ちゃん、よくがんばっ︱︱﹂
そのとき、玄関の方からドアが開く音がした。時計を見るとまだ
六時だ。
まだ両親が帰ってくる時刻ではない、てことは未羽だ。
よし、このまま未羽にも参戦してもらって、香奈ちゃんをさらに
恥ずかしい目に︱︱
﹁ただいまー﹂
﹁ただいま﹂
未羽の声の後に、野太い声の﹁ただいま﹂。
親父だ! 未羽と一緒に帰って来やがった!
俺と香奈ちゃんの背筋に冷たいものが走った。
俺は素早く彼女のショーツから手を抜き、グラスに手を伸ばした
︱︱が、その手よりも早く香奈ちゃんは口でグラスを咥え、持ち上
げてテーブルの上にどけた。
たくし上げられたスカートを払い、背中に手を回して瞬時にブラ
のホックを止め、背を伸ばしてイスに座り直す。
﹁こんばんは、おじゃましています﹂
キッチンに入ってきた親父に、香奈ちゃんは十秒前までの痴態を
微塵ものぞかせずに挨拶した。
﹁おお、香奈ちゃん、来てたのか。こんばんは﹂
親父が口元から白い歯をのぞかせて挨拶を返す。前にも言ったが、
親父は美少女未羽の父親だけあってダンディである。オシャレなち
ょい悪オヤジだ。
﹁あ、香奈ちゃん来てたんだー。待った?﹂
﹁ううん、さっき来たばかりよ。お兄さんとお話ししてたの﹂
326
そのあと二言三言言葉を交わし、親父は風呂へ、未羽はトイレに
行った。キッチンにまた俺と香奈ちゃんの二人が残された。
﹁香奈ちゃん、グラスどかせられるじゃん⋮⋮やっぱやらしいこと
して欲しいんだね﹂
俺がそう突っ込むと、香奈ちゃんはぶわっと顔を赤くした。
﹁お、おじさんが帰ってきたからどうにかしなきゃと思って思いつ
いたんですよ! に、人間窮地に追い込まれると閃くことあるじゃ
ないですか! さ、最初から気付いてたわけじゃ、ないです⋮⋮﹂
﹁どうだか⋮⋮。俺もこのいたずらやられたことあるけど、30秒
で口でどかせばいいって気づいたよ﹂
﹁へ、へえ、そうですか⋮⋮お兄さん、昆虫のように脊髄反射で生
きているのかと思ったら、意外に機転が利くじゃありませんか。爬
虫類に格上げしてあげましょう﹂
﹁毒吐いてごまかすなよ⋮⋮いいかげんドMだと認めたら︱︱﹂
﹁ごめん香奈ちゃん、お待たせー﹂
未羽がトイレから戻ってきた。香奈ちゃんがイスから立って未羽
に抱きつく。
﹁わっ、どうしたの、香奈ちゃん?﹂
﹁お兄さんにいやらしいことされたの! ひどいのよ、お兄さん﹂
未羽の目がキラーンと輝くのを、俺は見逃さなかった。エロエロ
大魔王の眼だった。
﹁そうなの、かわいそうに香奈ちゃん。お兄ちゃんはあたしがキツ
く叱っておくから、お部屋に行って、何をされたか詳しく教えて、
詳しくね﹂
﹁うん⋮⋮未羽、ありがとう﹂
未羽は香奈ちゃんの頭を撫でながら、俺をキッと睨み付けた。
﹁もう、お兄ちゃん! 香奈ちゃんにいたずらするなんて、メッ、
だよ!﹂
そう言って未羽は、パチッ=☆と星が飛ぶようなウインクをした。
香奈ちゃんの肩を抱いて、二階へと階段を上っていく。
327
これから香奈ちゃんは、猥褻警官に事情聴取される痴漢被害者の
ように、何があったのか根掘り葉掘り未羽に聞き出されることだろ
う。言葉責めに近いそのプレイは、ドM香奈ちゃんにとっても願っ
たり叶ったりに違いない。
それにしても、香奈ちゃんブレないなあ。今回の一件で、香奈ち
ゃんの扱い方が分かった気がする。 ﹃わたしは嫌なんだけど、無理矢理いやらしいことをされている﹄
っていうシチュなら、何しても大丈夫そうだな⋮⋮未羽公認だし。
俺は自分の右手の中指を見た。香奈ちゃんのおまんこを弄ってい
た指はまだ乾ききっておらず、愛液がテカっていた。
指を咥えて舐めるとしょっぱくて、ちょっと酸っぱい匂いがした。
萎んでいた俺のジュニアが、再び硬度を取り戻す。
いけね、こんなことしている場合じゃないや。記憶が鮮明な内に
オナニーしなくては。
俺は自分の部屋へと、いそいで階段を上った。
おわり
328
︻後日談11︼海に行かない水着回︵のりちゃんメイン︶①︵前
書き︶
長らくお待たせいたしました。久しぶりののりちゃん回です。
329
︻後日談11︼海に行かない水着回︵のりちゃんメイン︶①
部活が終わって家に帰ると、未羽がお玉を手に夕飯を作っていた。
エプロンを着た後ろ姿に声をかける。
﹁ただいま、未羽﹂
﹁あ、お兄ちゃん、おかえり﹂
振り向いた未羽は、何だか変な顔をしていた。好物を前にお預け
を食らっている犬みたいな表情だった。
﹁⋮⋮何かあった?﹂
﹁あのね、お兄ちゃん、今日のりちゃんが来てたの。それでビデオ
撮ったんだけど、ご飯食べてお風呂入ったら一緒に見よう? あた
しもまだ見てないの﹂
﹁ビデオって、また隠し撮りか?﹂
﹁⋮⋮香奈ちゃんにも九時頃来るようメールしたから、三人で、ね
?﹂
うん、これで盗撮したいやらしいビデオだということは確定した。
﹁お前、のりちゃんにいやらしいことするなとあれほど⋮⋮﹂
﹁し、してないよ! 香奈ちゃんと不可侵条約結んでるもん﹂
﹁そうか⋮⋮あまり信用できないが﹂
﹁のりちゃんはね、ウブなままちょんちょんつついてリアクション
を楽しむのがいいんだよ﹂
﹁イソギンチャクか! のりちゃんが聞いたら泣くぞ!﹂
﹁来週、みんなで海行くの。のりちゃんスク水しか持ってないって
言うから、今日学校帰りに一緒に買いに行ったんだ。それで、あた
しの部屋で試着したんだけど⋮⋮お兄ちゃん、ビデオ見たくないの
?﹂
330
﹁⋮⋮⋮⋮見せてください﹂
兄の威厳もへったくれもなかった。
☆
というわけで、平日の夜九時に、香奈ちゃんは家にやってきた。
ちなみに両親だが、例によって不在である。親戚の⋮⋮いや、も
う理由とかどうでもいいだろ? とにかく今夜は帰らない。
三人掛けのソファに並んで座る。真ん中が未羽、未羽の左に俺、
右に香奈ちゃんという並びだ。
二人とも映画館にポ○モン劇場版を見に来た小学生みたいなワク
ワク顔をしている。まあ、俺も同じ顔をしているのだろうが。
ビデオカメラとテレビは接続済みだ。俺はカメラのリモコンの再
生ボタンを押した。
☆
331
︻後日談11︼海に行かない水着回︵のりちゃんメイン︶②
パッ、と未羽の顔のアップが写った。カメラに向かってピースし
て、すぐに奥の方に引っ込む。
場所は未羽の部屋。アングルからして、本棚にカメラを置いてい
るらしい。向かいのベッドが真正面に写っている。
﹁お兄ちゃん、のりちゃん入ってくるまで早送りして﹂
少し早送りすると、いったん部屋を出た未羽がのりちゃんを連れ
て戻ってきた。
﹁部屋散らかってて恥ずかしいから、片付けるまでちょっと待っ
てて﹂とか言って先に部屋に入り、録画を開始したのだろう。⋮⋮
計画的すぎる。
学校帰りなので二人とも制服姿である。のりちゃんは持っていた
紙袋をローテーブルの上に置いた。袋にはショッピングセンターの
ロゴが印刷されている。中身は水着だろう。
﹁なんか、最近のりちゃん可愛くなってない?﹂
画面に映るのりちゃんを眺めながら俺は言った。初めて会ったこ
ろに比べ、垢抜けたような気がする。
﹁分かる? あたしと香奈ちゃんがおしゃれ講座してあげてるんだ
よ。お化粧はしてないけど、眉を整えて、艶のあるリップつけて、
くせっ毛をヘアクリームで落ち着かせてるの。元がいいから、それ
だけですごい輝くんだよ﹂
へえ、それだけでこんなに変わるのか。俺、この子の放尿シーン
見たことあるんだよな⋮⋮思い出したら早くもジュニアが頭をもた
げてきた。
画面の中では、未羽とのりちゃんがキャッキャウフフと会話して
332
いる。
うちのビデオカメラは親バカの親父︵娘に対して︶が奮発して買
った高級機種なので、室内でも映像は鮮明で明るい。
﹃可愛いの買えたね、のりちゃん﹄
﹃うん、未羽ちゃんと一緒に選んで良かった。ありがとう﹄
﹃いいよぉ、お礼なんか。ねえ、もう一回着てみない?﹄
﹃え? こ、ここで⋮⋮?﹄
﹃試着室じゃゆっくり見れなかったじゃない? 着てみようよ﹄
﹃え∼、な、なんか恥ずかしい⋮⋮﹄
﹃なんで? 一緒にお風呂入った仲じゃない?﹄
﹃お、お風呂とお部屋は違うよ∼﹄
﹃あたし着るよ。のりちゃんも脱いで﹄
言うが早いか、未羽はベッドに腰掛けてニーハイのタイツを脱い
だ。それから立ち上がって、スカートのホックを外す。
ファスナーを下げ、足下にストンとスカートを落とす。淡いピン
ク色のパンツが露わになる。俺のジュニアが完全に硬化した。
﹃わ、わ、未羽ちゃん、ホントに脱ぐの⋮⋮?﹄
焦るのりちゃんに構わず、未羽はリボンを外し、セーラー服を脱
いで下着姿になった。
未羽があっけらかんと脱いでいくので、のりちゃんも観念したよ
うだ。おずおずとリボンを外し、セーラー服のすそに手をかける。
ちょっと躊躇ってから、彼女はセーラー服を脱ぎ、下に着ていた
キャミソールも脱いだ。
のりちゃんが上半身ブラだけになった。色は白で、清楚なデザイ
ンだ。思わずごくりと喉を鳴らす。
肩幅狭っ⋮⋮リカちゃん人形みたいだ。真っ白な肌に、凹凸が希
薄な少女体型。下半身の裸は見たことあるけど、上半身もロリロリ
だ。
未羽はさっさとブラも脱いでしまっている。何気ない顔をしなが
ら、眼だけがギラギラしてのりちゃんの裸を見つめていた。
333
のりちゃんがスカートに手をかけ、ふぁさっ、と足下に落とす。
パンツはお揃いの白だった。下着姿でベッドに腰掛け、ソックスを
脱ぐ。
そこで一旦手が止まってしまうのりちゃん。未羽はお手本を示す
ように、のりちゃんに向いてするりとパンツを脱いだ。
未羽全裸! 相変わらず、すらりとした美しい肢体である。神の
寵愛を感じる。
未羽はパイパンなので、あの角度だとのりちゃんから未羽のスリ
ットが見えるはずだ。
大胆な未羽に、のりちゃんが顔を赤らめる。
﹃ほら、のりちゃんも﹄
未羽はベッドに上がり、のりちゃんの背後に回った。
﹃み、未羽ちゃん?⋮⋮きゃっ!﹄
未羽がブラのホックを外したのだろう。下にずれたブラを、のり
ちゃんが慌てて手で押さえる。
﹃ほらぁ、脱がないと水着着れないよ?﹄
肩ひもを引っ張って、未羽がブラを取り上げてしまう。
﹃あっ⋮⋮﹄
ちっぱいキタ−−−−−!!!!!
のりちゃんのちっぱいが露わになった。
小さい⋮⋮確かに小さいのだが、乳房のラインは将来性を感じさ
せる確かな丸みを描いている。二次性徴期の少女特有の、美しい曲
線だ。
ちょこんと乗っかっている乳首は初々しいピンク色で、皺がなく
艶々していた。
香奈ちゃんの巨乳とは逆方向の破壊力があった。スーパーロリロ
リおっぱいだ。
ふと横を見ると、未羽と香奈ちゃんが画面を食い入るように見つ
334
めている。
こいつら、のりちゃんと一緒に風呂入ってるくせに⋮⋮。画面を
通してみるとまた違った興奮があるのか?
﹃ほら、パンツも脱いで﹄
﹃きゃっ! じ、自分で脱ぐよ∼!﹄
パンツまで脱がされそうになり、のりちゃんはベッドから立ち上
がった。
頬を赤く染めながら、パンツの両脇に親指を差し入れる。
一呼吸置いて、のりちゃんはパンツをするっと下げた。つるつる
のスリットが、眼を射るように飛び込んでくる。
片足ずつ上げて、パンツを足から抜き取る。画面いっぱいの全裸
のりちゃんに、三人いっせいに生唾を呑んだ。
うっわー⋮⋮のりちゃんの身体、スラッとしてロリ可愛い⋮⋮。
噴水とかで全裸で遊んでてもオッケーって感じ。高校生にはとても
見えない、発育のいい小学生といった体型だ。
胸もお尻も控えめだが、幼いなりに均整が取れている。しなやか
で美しい身体だ。羽をつけたら妖精に見えるだろう。
肌は艶があって瑞々しくて、さわり心地良さそうだ。きっと、よ
く寝て野菜をいっぱい食べて、健康的な生活をしているのだろう。
まとめると、﹁おっぱい触りたい、セックスしたい﹂というより
も、﹁全身をくまなくペロペロしたい﹂と思わせる裸だった。
﹁可憐な身体⋮⋮羨ましい⋮⋮﹂
ぼそっと香奈ちゃんが言った。羨望のまなざしで画面を見つめて
いる。
香奈ちゃんはダイナマイトボディだからな︵主に胸が︶。どちら
かというと香奈ちゃんの身体の方が男には好まれるだろうが、人は
自分にないものに憧れるのだろう。
﹃えへへ、のりちゃん裸んぼ∼﹄
﹃も、も∼、 未羽ちゃんもでしょ∼! ほ、ほら、早く水着着よ
うよ!﹄
335
裸が恥ずかしいのりちゃんは、さっさと紙袋を開け、水着を着始
めた。
身体の動きによって、可愛らしいスリットが隠れてはまた見える。
画面にスリットが現れるたび、視線が引き寄せられてしまう。
未羽も水着を取り出して着始める。もっと二人の全裸を眺めてい
たかったが、残念だ。
着替え完了。
のりちゃんはカラフルな花柄のビキニ。セパレートだがあまり露
出を感じさせないデザインだ。上下とも大きなフリルがついていて、
幼児体型をカバーしている。元気そうで、可愛らしい。
未羽はエメラルドグリーンのシンプルなワンピースだ。流麗な身
体のラインをそのまま生かしている。惚れ惚れするほど美しい。
裸はもちろん良いものだが、水着姿もそれはそれで良いものだ。
微笑ましくて頬が緩んでしまう。俺も一緒に海行きてえ。
﹃わ∼! のりちゃん似合ってるよ、可愛い∼!﹄
﹃そ、そうかな⋮⋮? 未羽ちゃんもすっごい可愛いよ∼!﹄
未羽がスタンドミラーを持って来る。鑑の前で、二人はそれぞれ
自分の姿を確かめ合う。
最初恥ずかしそうにしていたのりちゃんだが、鏡を見るうちに水
着が気に入ってきたようだ。表情がにこやかになっている。のりち
ゃんのこういうとこ、すげえ可愛い。
﹃未羽ちゃん、ありがと。あたし、この水着すごい気に入っちゃっ
た﹄
﹃ふふ、来週楽しみだね、のりちゃん﹄
﹃う∼ん、でもあたし、その日泳げるかなぁ⋮⋮﹄
ちょっと表情を曇らせるのりちゃん。
﹃え、何で? 用事が入りそうなの?﹄
﹃そうじゃなくって、ペリーさん来るんだよね⋮⋮予定では四日目
だから、終わってるかもしれないけど⋮⋮﹄
生理のことだってのは分かった。最近では日の丸とかじゃなくて、
336
ペリーって言うのか。黒船来航? すごい隠語だ。
﹃何だぁ、大丈夫、タンポンすればいいよ。四日目なら少ないはず
だし﹄
﹃つ、使ったことないの⋮⋮何か怖くって⋮⋮﹄
﹃痛くないよ、紐も丈夫だから切れることないし﹄
﹃で、でも⋮⋮﹄
﹃のりちゃん、オナニーで指入れるでしょ? じゃあタンポンも入
るよ﹄
ばふん、とのりちゃんの顔が真っ赤になった。相変わらずリアク
ション王だ。
﹃⋮⋮じゃ、じゃあ⋮⋮未羽ちゃん、今タンポンある?⋮⋮使い方
教えて⋮⋮﹄
うん、と返事をして、未羽は机の引き出しをあさった。タンポン
の包みを一つ取り出して、のりちゃんの元へ。
パッケージを破いて開封する。中から白い棒状のものを取り出す。
﹃先ず、ここを引っ張るでしょ﹄
﹃わ、伸びた﹄
﹃で、ここからあそこに入れるでしょ﹄
﹃ど、どの辺まで⋮⋮?﹄
﹃ここ﹄
未羽が指で指し示す。
﹃け、結構奥まで入れるんだ⋮⋮﹄
﹃入ったら、外側の筒を引っ張るの。そしたら、タンポンだけ中に
残るでしょ? これでオッケー。出すときはこの紐を引っ張るの。
簡単でしょ?﹄
﹃⋮⋮﹄
のりちゃんは難しい顔をしていた。まだ恐怖感があるらしい。
﹃のりちゃん、入れてみる? な、なんなら、あたしが入れてあげ
てもいいんだけど⋮⋮﹄
友達を思いやるようなことを言っておきながら、眼が血走ってい
337
た。エロエロ大魔王の眼だ。のりちゃんは俯いてじっと考えている。
﹃⋮⋮あ、あの⋮⋮できたらでいいんだけど⋮⋮未羽ちゃんが入れ
るとこ、見せてくれない⋮⋮?﹄
﹃え?⋮⋮⋮⋮ふぇっ!? あ、あたし!?﹄
未羽が変な声を出して驚く。
﹃む、無理にじゃないから、嫌ならいいんだよ。ほ、ほら、未羽ち
ゃん、この前一緒に香奈ちゃんにオナニー教えてあげたじゃない?
あういうこと提案するくらいだから、未羽ちゃんなら平気かなーっ
て思ったんだけど⋮⋮ご、ごめんね、未羽ちゃん恥ずかしいよね、
いいよ、いいよ﹄
ワイパーみたいに手を振って、発言を撤回する。未羽は湯気が出
そうなほど真っ赤な顔をしていた。
﹃⋮⋮ぐ⋮⋮むむ⋮⋮﹄
未羽が苦い薬でも飲んだような顔をする。隣を見るとリアル未羽
も同じ顔をしていた。
兄として未羽の心理状態を推察すると、タンポンを入れるところ
を見られるのは恥ずかしいが、先日香奈ちゃんのオナニーレッスン
なんてことを二人にさせてしまったため、自分だけ﹁恥ずかしいか
ら嫌﹂とは言いにくいのだろう。エロエロ大魔王の矜持があるのだ。
しかし、未羽は傾向としてはSに偏っているため、攻められるの
は苦手なのだ。人並みの羞恥心が残ってるんだよな、こいつ。
﹃⋮⋮⋮⋮わ、分かった⋮⋮見せてあげる⋮⋮﹄
絞り出すような声で、未羽は言った。
﹃み、未羽ちゃん、いいよ、無理しなくても﹄
﹃い、いいの、これはあたしのカルマだから⋮⋮﹄
﹃な、何? カルマって?﹄
﹃の、のりちゃん、あたしきれいにしてくるから、ちょっと待って
て!﹄
未羽はクローゼットから着替えを取ると、水着のまま部屋を飛び
だした。風呂に行って洗うのだろう。
338
水着姿で一人残されたのりちゃんは、いそいそと制服に着替えた。
おかげで俺たちはまたのりちゃんのロリロリボディを眺めることが
できた。
着替え終わってベッドに座り、手持ち無沙汰なのりちゃん。未羽
の枕をもって、何やらカバーを引っ張ったりぱふぱふと叩いたりす
る。
﹁未羽、何してるの? あれ﹂
香奈ちゃんが聞いた。
﹁枕カバーずれてるの直してくれてるんだよ。ちょっと大きくて、
すぐずれるの。こんなことしてくれてたんだ。のりちゃん優しいな
あ﹂
それからのりちゃんは、ベッドに落ちていた髪の毛をゴミ箱に捨
てたり、テーブルをティッシュで拭いたりした。未羽が感動してい
る。
﹁のりちゃんったら、誰も見てないのに⋮⋮なんていい子なの﹂
俺も感心した。男同士なら速攻でエロ本を探したり鼻をほじった
りしているところだ。
それでも時間が余ったので、のりちゃんは棚に置いてあったぬい
ぐるみを手に取った。どこかの県の、栗をモチーフにしたゆるキャ
ラだ。
﹃︵鼻にかかった声で︶初めまして、ボク、くりまろ君! 君は、
ご主人様の友達かい?﹄
隠し撮りされていると知らない彼女は、ぬいぐるみの両手を持っ
て会話をはじめた。見ている方が恥ずかしくて、背中がむずかゆく
なった。
ちなみにこのゆるキャラは﹁くりまろ君﹂などという名前ではな
い。のりちゃんのオリジナルだ︵﹁まろ﹂は﹁マロン﹂から来てい
るのか?︶。
﹃そうだよ、あたし納子。みんなのりちゃんって呼んでるよ﹄
﹃のりちゃんか、よろしく! ご主人様と仲良くしてやっておくれ
339
よ!﹄
﹃もちろんだよ。未羽ちゃんは優しくて可愛いいから、あたし、大
好き﹄
﹁ぐっ⋮⋮の、のりちゃん⋮⋮﹂
未羽が苦しそうに胸を押さえた。さすがに良心が痛んだようだ。
俺と香菜ちゃんもちょっと罪悪感を感じた。のりちゃんはこんな
にピュアなのに、夜中に集まって盗撮ビデオ見てる俺たちっていっ
たい⋮⋮。
俺たちが凹んでいる間に、画面では未羽が部屋に戻ってきた。タ
ンクトップに短パンと、軽装だ。
﹃お待たせ、のりちゃん。あ、制服着たんだ?﹄
﹃うん。だって、一人で水着でいたら恥ずかしいよ﹄
何食わぬ顔で、くりまろ君をテーブルに置く。ごめん、一部始終
見ちゃったよ⋮⋮。
﹃⋮⋮さて⋮⋮じゃ、じゃあ、教えてあげるね⋮⋮﹄
一つ深呼吸して、未羽は短パンの腰に手をかけた。頬が赤く染ま
っている。
さっきは平気で脱いでいたのに、これからすることを思うと恥ず
かしいようだ。未羽はそっと短パンとパンツを脱いだ。
彼女もパイパンなので、つるんとしたスリットが露わになる。隣
のリアル未羽は、抱えた膝に顔を埋めるようにして画面を見ていた。
下半身裸の未羽が、タンポンを手にベッドに上がる。
例のビーズクッションに背をもたせかけると、あそこが見えるよ
うに脚を開いた。火が出そうなほど顔が赤くなっている。
﹁ああ、未羽に初めて座薬を入れてやった時みたいだ。懐かしいな
あ﹂
﹁あ、そうですね。今すごいデジャブがあったんですけど、そのせ
いだったんだ﹂
﹁ふ、二人とも! そういうこと言うの止めて!﹂
リアル未羽が顔を真っ赤にして抗議する。しかしビデオを早送り
340
しようとはしない。
過去、さんざん人に恥ずかしい思いをさせておいて、自分だけ逃
れることは許されないとわきまえているようだ。特に香奈ちゃんに
はひどいことしてるからね、こいつ。
のりちゃんがベッドのそばに移動して、かぶりつきのポジション
に着く。間近であそこを覗き込まれ、未羽はますます赤くなった。
﹃未羽ちゃんの、きれいだね﹄
﹃⋮⋮っ! お、おねがい、のりちゃん、恥ずかしいから、感想言
わないで⋮⋮﹄
﹃あ、ご、ごめん。あんまりきれいだったから、つい⋮⋮﹄
相変わらずナチュラルに言葉責めするのりちゃんだった。
﹃じゃ、じゃあ、入れるね⋮⋮﹄
未羽が指でスリットを少しだけ開く。
﹃わ、きれいな色⋮⋮ちょっととろっとしてるね﹄
﹃⋮⋮っ! い、言わないでってば⋮⋮死にそう⋮⋮﹄
﹃あわわ、ごめんごめん、つい⋮⋮﹄
画面の中の未羽とリアル未羽が頭から湯気を出していた。
﹃こ、ここに当てて⋮⋮﹄
膣口にタンポンの先をあてがう。
﹃い、入れるよ⋮⋮﹄
ぬーっ、とタンポンが未羽のあそこに吸い込まれていく。
﹃わあ、結構奥まで入るんだ⋮⋮未羽ちゃん、痛くない?﹄
﹃い、痛くないよ、全然⋮⋮﹄
俺のジュニア入るもんな。そりゃ痛くないわな。
未羽はタンポンのカバーを引き抜いた。挿入完了。スリットから
紐がのぞいている。
﹃入った⋮⋮すごーい、未羽ちゃん⋮⋮ねえ、これ、引っ張ってみ
ていい?﹄
﹃⋮⋮えっ!? ぬ、抜くの⋮⋮!?﹄
未羽の返答を待たずに、のりちゃんはスリットからはみ出してい
341
る紐をつまんだ。普段なら絶対そんなことはしないが、好奇心が彼
女を勝手に動かしていた。
のりちゃんが紐を引く。未羽がのけぞった。
﹃あっ⋮⋮やっ、あぁん⋮⋮﹄
﹃あ、出てきた⋮⋮へえ、意外に抵抗ないんだ⋮⋮﹄
卵が生まれるように、未羽の膣口から白いタンポンが出てきた。
少し湿ったそれを、のりちゃんが顔の前にぶら下げて興味深そうに
眺める。
﹃やぁん! み、見ないでっ!﹄
未羽はのりちゃんの手からタンポンを取り上げると、ティッシュ
でくるんでゴミ箱に捨てた。
エロエロ大魔王が珍しく羞恥責めにあっている。香奈ちゃんが尊
敬の眼差しで画面の中ののりちゃんを見ていた。香奈ちゃん、未羽
にやられっぱなしだもんな⋮⋮。
﹃ああもう⋮⋮死ぬほど恥ずかしかった⋮⋮次、のりちゃんの番だ
からね!﹄
のりちゃんがギョッとした顔をする。
﹃え? あたしも、するの⋮⋮?﹄
﹃のりちゃんのためにやってるんだからね!? ヤダとか言ったら
許さないから!﹄
珍しく未羽がのりちゃんに対して怒っていた。全然怖くはないが。
﹃う、うん⋮⋮そうだよね。入れてみる⋮⋮﹄
のりちゃんはそう言って、スカートの中に手を入れた。パンツを
脱ぐようだ。
﹃え? スカートは脱がないの? あたし見せたじゃない?﹄
のりちゃんは急に真顔になった。
﹃いや無理無理無理無理無理。絶対無理。タンポン入れるとこ見せ
るなんて絶対無理それは無理﹄
扇風機のように水平に首を振りながら、のりちゃんは﹁無理﹂と
計八回言った。
342
未羽が唖然とする。勝手な言い分ではあるが、筋道を無視しても
絶対にあそこを見せる気はないようだった。
﹃⋮⋮分かった⋮⋮スカートはいたままでいい⋮⋮﹄
未羽はあきらめてうなだれた。
のりちゃんはベッドの上で膝立ちになり、スカートの中に手を入
れて、パンツを下げた。
ビーズクッションにもたれるようにしてお山座りになり、パンツ
を足から抜き取る。未羽はベッドの上で、のりちゃんの横に寄り添
っている。
未羽がちらりとカメラに目線を向けた。カメラの向きを確認した
ようだ。
のりちゃんが閉じていた足を、ゆっくりと開いた。横にいる未羽
からはスカートの中を覗けないが、カメラからは真正面だ。画面に
はのりちゃんのスリットがバッチリと写っている。
グッジョブ! 俺たちは三人揃ってガッツポーズを取った。
﹃や、やっぱり入れるの怖いな⋮⋮﹄
﹃じゃあ、タンポンの前に、指を入れて慣らしたらいいよ。オナニ
ーするみたいに﹄
﹃ゆ、指⋮⋮? うん、やってみる⋮⋮﹄
のりちゃんがスカート中に右手を潜らせる︱︱かと思いきや、彼
女は途中で手を止めた。
﹃⋮⋮﹄
恥ずかしそうな顔をしながら、止めた手を上げて口元に持って行
く。
﹃⋮⋮つ、つば、付けるね⋮⋮﹄
そう言ってのりちゃんは、ぺろっと舌を出して、右手の中指を舐
めた。唾液に濡れた舌が、ナメクジのように指を這う。
﹁ぐはっ!⋮⋮の、のりちゃん、何だこの天然のいやらしさは⋮⋮﹂
悩殺的なロリエロ可愛さに、俺たちは身悶えした。
指に唾液をまとわせると、のりちゃんは左手でスカートを少しま
343
くった。光が入り、のりちゃんのあそこがますます鮮明に撮される。
右手が下がっていく。のりちゃんは中指の先をスリットにあてが
った。そこで少し、躊躇する。
﹃や、やっぱり恥ずかしいな⋮⋮見られてると⋮⋮﹄
﹃大丈夫、あそこは見えないし、女の子同士だから、平気だよ﹄
エロエロレズビアンワールドの主である未羽が、マリア様のよう
に微笑んで言った。女同士でも全然安心じゃねえ。
﹃う、うん⋮⋮じゃ、入れるよ⋮⋮﹄
のりちゃんが眼を閉じた。中指が、ぬるっとスリットに潜り込む。
﹃あふっ⋮⋮﹄
小さく声が漏れた。オナニーで慣れているのだろう、指は第二関
節までスムーズに入っていった。
﹃んっ⋮⋮﹄
﹃入った? のりちゃん?⋮⋮じゃあ、できるだけ奥まで、指入れ
てみて⋮⋮﹄
﹃う、うん⋮⋮あんまり奥に入れたことないんだけど⋮⋮が、頑張
る⋮⋮﹄
のりちゃんは、きゅっと口を結んだ。未羽の指示に従い、中指を
奥へと進める。
﹃んっ⋮⋮はぅ⋮⋮﹄
﹃のりちゃん、大丈夫? 痛くない?﹄
﹃だ、だいじょぶ⋮⋮平気⋮⋮﹄
ぽわ∼っと頬を赤くしながら、のりちゃんは答えた。薄く開いた
眼が、とろんとしていやらしい。
﹃ん⋮⋮﹄
のりちゃんが再び眼を閉じる。ちょっとだけ眉間にしわが寄って
いた。
スカートの中の右手が微妙に動いてるのに、俺は気付いた。
﹁え⋮⋮? うそ⋮⋮のり、オナニーしてるの?﹂
口に手を当てて香奈ちゃんが言った。
344
のりちゃんの中指が、微妙にスリットを出入りしている。隣に未
羽がいるというのに、のりちゃんはオナニーを始めていた。
薄目を開けて、こっそりと未羽の様子をうかがっている。いつの
間にか顔が真っ赤で、呼吸が不規則になっていた。
横にいる未羽は気付いているのかいないのか、平静な顔をしてい
る。エロエロ大魔王なら気付きそうなものだが。
﹃あ、そうだ!﹄
画面の中の未羽が、手をパンと叩いた。のりちゃんがビクッとし
て、中指を引っこ抜く。
﹃このタンポンよりちょっと細いのの買い置きがあるはずだよ。ど
こだったかなあ? ちょっと一階で探してくるね。五分くらい待っ
ててくれる?﹄
﹃え? あ、うん⋮⋮﹄
言うが早いか、未羽はさっと立ち上がって部屋を出ていった。パ
タパタと廊下を走る音が遠ざかっていく。
のりちゃんはしばらく呆けたような顔をして、部屋のドアを見つ
めていた。それから俯いて、小さな溜息をつく。
顔を上げると、もう一度ドアの方を向いて、首を伸ばした。五分
と言っていた未羽が急に戻って来はしないか、耳を澄まして確かめ
ているようだった。
気配がないのを確認すると、のりちゃんは前を向いて目線を下げ
た。すごく後ろめたそうな顔をして、彼女はスカートを上へたくし
上げた。
右手が股間へと引き寄せられていく。濡れた中指が、再びスリッ
トに潜り込んだ。
﹃ん⋮⋮﹄
友達の部屋のベッドで、純情少女のりちゃんは、オナニーを始め
た。
﹁⋮⋮やっぱりのりちゃん、あたしがいない間オナニーしてたんだ。
わあ、あたし超好判断!﹂
345
画面に見入りながら未羽が言った。
未羽はのりちゃんにオナニーを続けさせるため、わざわざ﹁五分﹂
と時間を申告して部屋を出たのだ。
足音がいつもより大きく聞こえたのもわざとだろう。﹁未羽ちゃ
んが時間より早く戻ってきても足音で分かる﹂と思わせたのだ。
短時間でここまで周到な作戦を思いつくとは⋮⋮恐るべしエロエ
ロ大魔王。
﹃んっ⋮⋮あっ⋮⋮あふ⋮⋮﹄
未羽の作戦に見事にはまったのりちゃんは、隠し撮りされている
とも知らず、あそこを弄り続けている。
水音を立てて、指がスリットを出入りする。邪魔にならないよう
にと左手でスカートをたくし上げており、おまんこどころか下腹部
まで露わになっていた。
﹃あ、あぁっ⋮⋮だ、だめ⋮⋮未羽ちゃんの部屋で⋮⋮こ、こんな
こと⋮⋮あぁんっ⋮⋮!﹄
なんて言いつつも、のりちゃんは快感に抗えなかった。指の動き
が激しさを増す。
切なげな顔で声を押し殺そうとするが、罪悪感が余計に快感を呼
び起こすのか、ときおり抑えきれない声が漏れる。
幼い顔で快感に翻弄されるその姿に、俺は死ぬほど興奮した。
﹃あふっ⋮⋮だ、だめ⋮⋮あっ⋮⋮い、いきそ⋮⋮ああ⋮⋮﹄
指の動きが速くなっていく。のりちゃんは眉を八の字にして、キ
ツく眼を閉じている。未羽が戻ってくるかもしれないということも
忘れているようだった。
奇跡の映像を、俺たち三人はまばたきもせず見つめていた。俺の
ジュニアは破裂しそうなほど熱く膨らんで、我慢汁を漏らしていた。
﹃い、いっちゃうよぉ⋮⋮あ、ああ⋮⋮あん、あふっ⋮⋮!﹄
のりちゃんは完全に理性を失っていた。異常なシチュエーション
に興奮しているのだろうか、普段のしとやかさからは想像もつかな
い乱れっぷりだった。
346
ぴちゃぴちゃと水音が高くなる。左手が、皺になるのも構わずに
スカートをぎゅっと握りしめる。
真っ赤に染まった顔、苦しそうな息。快感の大波が、のりちゃん
を呑み込もうとしてる。
右手がラストスパートに入る。彼女の身体が、ぐっと硬直した。
﹃あっ⋮⋮! はぁっ⋮⋮い、いっちゃう⋮⋮あ、あ⋮⋮ああぁぁ
んっ!﹄
まるで感電したように、のりちゃんの身体が、びくっ、びくっと
大きく震えた。
さすがに絶叫はしなかったが、どうしても声は抑えきれなかった。
子供みたいにキーの高いあえぎ声が、ロリくてやたらとエロかった。
﹃⋮⋮はあ、はあ⋮⋮はあ⋮⋮﹄
快感の波が過ぎ去ると、のりちゃんはぐったりとしてビーズクッ
ションに身体を預けた。
荒い息とともに、胸が大きく上下する。額に汗の粒が浮かんでい
た。
童顔なのに恍惚とした表情を浮かべていて、ドキッとさせられた。
普段とのギャップでどえらく扇情的だ。
﹃ん⋮⋮んん⋮⋮﹄
拡散していた意識が、形を取り戻し始める。ぼんやりしていた眼
が、焦点を合わせた。
﹃⋮⋮⋮⋮ハッ!⋮⋮や、やだ、あたし、何を⋮⋮﹄
視線が下を向く。むき出しのあそこに気付いて、のりちゃんは慌
ててスカートを下げた。
﹃あ、あたし⋮⋮友達の家で、イ、イっちゃうなんて⋮⋮う、う∼
⋮⋮﹄
立ち上がり、テーブルの横のティッシュを取って、愛液に濡れた
指を拭う。
イったときよりも顔が真っ赤になっていた。頭からほわほわと湯
気が出ている。
347
追加でティッシュを引き抜いて、スカートに手を入れてあそこを
拭う。
﹃も、も∼⋮⋮何してんの、あたし⋮⋮﹄
口を波線にしながら、のりちゃんはティッシュを丸め、さらに新
しいティッシュでぐるぐる巻きにした。野球ボールくらいの固まり
ができて、彼女はそれをゴミ箱に放り込んだ。
そうしてる間に、未羽の足音が聞こえてきた。驚いた猫みたいに、
のりちゃんがビクッとする。ガチャリとドアが開く。
﹃お待たせー、のりちゃん。タンポンあったんだけど、あんまり太
さ変わらないかも。待たせちゃったのにごめんね?﹄
﹃いいいい、いいよ、ききききっ、気にしないでっ!﹄
激しくどもるのりちゃんだった。顔は赤いし明らかに挙動不審な
のだが、未羽は気付かない振りをしている。
﹃じゃあ、早速入れてみようか?﹄
﹃ええええ!? い、今すぐ!?﹄
焦るのりちゃん。さっきイったばかりで身体に余韻が残っている
のに、そんなものを入れて大丈夫かと思ったのだろう。
しかし、事を引き延ばす理由も思いつかない。未羽に促されるま
まに彼女はベッドに上がり、クッションにもたれた。
のりちゃんはますます顔を赤くしている。耳まで真っ赤になって
いた。
うん、分かる分かる。オナニー直後だもんな。
俺も、ひと仕事終えたすぐ後に未羽が部屋に入ってきて、匂いと
かで気付かれやしないかと挙動不審になったことがあるよ。
未羽はタンポンの封を切り、筒を伸ばしてセッティングした。親
切でやっているのではない、後戻りできないようにしているのだ。
﹃はい、のりちゃん。自分で入れるんだよね?﹄
タンポンを渡す。のりちゃんは拳銃でも渡されたような顔でそれ
を見つめた。
﹃のりちゃん?﹄
348
﹃ふえっ! わっ、わ、わ、あわわわ﹄
またビクッとしてタンポンを跳ね上げ、キャッチしようとしてお
手玉状態になる。こんなコントみたいなリアクションを素でできる
のがすごい。
﹃あ、うん、ごめん、い、入れるんだよね、うん、うん﹄
何とか手に収まったタンポンを握りしめ、引きつった笑みを返す。
﹃大丈夫、のりちゃん? あたしが入れてあげようか?﹄
﹃いい、いい、いい! じ、自分で入れらりぇるから!﹄
ちょっと噛んでしまったが、未羽は優しくスルーした。
のりちゃんはビーズクッションにもたれて少し足を開き、さっき
と同じ体勢になった。再び画面に彼女の可愛らしいスリットが映る。
しばしタンポンを眺めてから、口を結んで覚悟を決める。
のりちゃんはタンポンの先をスリットに当てた。向きを微調整す
る。
﹃こ、こうでいいのかな⋮⋮? い、入れるね⋮⋮﹄
タンポンの先端が、ぬっとスリットの中へと潜り込む。
﹃あふっ⋮⋮﹄
思わず声が漏れて、のりちゃんは慌てて左手で口をふさいだ。
さっきイったばかりなので、余韻が身体に残っているのだ。少し
の刺激でも感じてしまうようだ。
﹃のりちゃん? 痛いの?﹄
﹃だだだだ、だいじょぶ! ははは初めてだから変な感じがしただ
け! な、何でもないの!﹄
﹃そう? 無理しないでね?﹄
未羽は優しく声をかけているが、眼に妖しい光が宿っている。⋮
⋮完全に気付いてるよな、のりちゃんが感じてるの。
横を見ると、リアル未羽は眼をキラキラさせて、香奈ちゃんはよ
だれを垂らしそうな顔で画面を見つめていた。
香奈ちゃんドMだからなあ⋮⋮人の羞恥責めを見ても興奮するの
だろう。クールビューティーが台無しだよ⋮⋮。
349
﹃つ、つつ、続き、するね⋮⋮﹄
のりちゃんが再びタンポンを構える。10メートルの飛び込み台
から飛び込むような顔で気合いを入れ、タンポンをさらに深く挿入
する。
﹃あっ、はぁん⋮⋮﹄
全然声我慢できてなかった。妖艶なあえぎ声を漏らしてしまい、
一瞬で耳まで真っ赤になる。顔が電気ヒーターみたいにオレンジ色
に発光していた。人間業じゃない。
﹃⋮⋮のりちゃん、気持ちいいの?﹄
わざとらしく首をかしげて未羽が聞く。ぶしゅーっ!とのりちゃ
んが頭から蒸気を噴き出した。
﹃ちちち違うのっ! ほ、ほら! ここここういう無機物の棒みた
いなの入れるのなんて初めてだからっ! へへへへ変な感じがする
だけ! きっ、気持ち良くない全然ないっ!﹄
スキャットマン・ジョンのような早口でどもるのりちゃんだった。
滑舌がいいのか悪いのか分からない。一応突っ込んでおくが、タン
ポンは無機物ではなく有機物だ。
﹃ふうん⋮⋮まあいいけど。で、どうかな? 奥まで入った?﹄
﹃あ、うん、お、奥までね? 奥まで⋮⋮﹄
のりちゃんの頬を冷たい汗が、つう、と流れた。ロシアンルーレ
ットで引き金を引くような顔をして、再度挿入に挑む。
﹃よ、よし⋮⋮い、一気に奥まで入れて、終わりにするから⋮⋮﹄
大きく息を吸い込んで、止める。のりちゃんは、ぐいっとタンポ
ンを挿入した。
﹃はぁっ! あっ⋮⋮!﹄
肩がぴくっと震える。続けて二回、ぴくっ、ぴくっと身体が痙攣
した。
﹃あっ⋮⋮あっ⋮⋮﹄
吐息とともに声が漏れる。のりちゃんは口を半開きにして、とろ
んとした眼をしていた。
350
﹁わっ⋮⋮未羽、のりったら、軽くイっちゃったんじゃない?﹂
驚きに口を押さえ、香奈ちゃんが言った。
﹁だよね、香奈ちゃんもそう思う? あの肩の震え、イっちゃって
るよね﹂
﹁え、マジかよ!? タンポン入れただけでイっちゃうの!?﹂
さっきイったばかりとはいえ、こんな簡単に絶頂を迎えるなんて、
あるものなのか?
﹁ありえます﹂
香奈ちゃんは真面目な顔で断言した。
﹁女性の身体は精神状態に大きく左右されます。ハードな羞恥プレ
イの最中は、身体がとても敏感になるんです。軽くイク程度ならあ
の程度の刺激で充分です。性器以外の性感帯への刺激でも絶頂に達
することがあるほどですから﹂
﹁そ、そうなんですか⋮⋮﹂
実体験を基に解説しているのだろう。言葉に重みがあった。って
いうか香奈ちゃん、普段未羽とどんなプレイしているんだよ⋮⋮。
﹃奥まで入った、のりちゃん?﹄
画面の中の未羽が尋ねる。呼びかけられたのりちゃんは眼をパチ
パチさせた。
﹃⋮⋮え? あ、あたし⋮⋮いま⋮⋮ふえっ!?﹄
自分の置かれた状況をハッと思い出す。友達の目の前で絶頂を迎
えてしまったことに気づき、トマトのように赤くなる。
﹃のりちゃん、奥まで入ったなら、筒を抜かなきゃ﹄
﹃あ、そそそそ、そうだよね! ぬぬぬ、抜きます⋮⋮﹄
間断なくキョドりながら、のりちゃんはタンポンの筒を抜いた。
また﹁あふっ⋮⋮﹂っと声が出た。
﹃ちゃんとできたね、のりちゃん。これで今度の海は安心だね!﹄
﹃う、うん⋮⋮ありがとう、未羽ちゃん﹄
いびつな笑顔を作って礼を言うのりちゃん。律儀な子だ。知らぬ
間にビデオを撮られたり、いろいろひどい目に遭っているというの
351
に。
﹃のりちゃん、これあたしが抜いてもいい?﹄
返事を待たずに、未羽はのりちゃんのスカートの中に手を入れた。
﹃え!? ちょ、ちょ、未羽ちゃん! だ、だめぇ!﹄
﹃だめじゃないよぉ。だって、あたしのはのりちゃんが抜いたじゃ
ない? これでおあいこだよ?﹄
﹃そ、そんな⋮⋮やぁん!﹄
恥ずかしがるのりちゃんに構わず、未羽がスカートを捲る。画面
に白い紐がはみ出しているスリットが鮮明に映った。未羽が紐をつ
まんで引っ張る。
﹃にゃっ!? あっ、あっ⋮⋮あぁっ!﹄
未知の感覚に身を捩るのりちゃん。未羽が手を引くと、白いタン
ポンがおまんこからちゅぽんと抜けた。
﹃あ、ああ⋮⋮﹄
あまりの羞恥に失神しそうになり、のりちゃんはビーズクッショ
ンにぼふっと背を預けた。
未羽は引き抜いたタンポンの紐をつまみ、自分の目の前で振り子
のように揺らした。
﹃わあ、しっとりしてる⋮⋮﹄
タンポン本体を指でつまんで湿り具合を確かめ、くんくんと匂い
をかぐ。それに気付いたのりちゃんが、ものすごいスピードで起き
上がった。
﹃わあああああっ!!!! 何してるの未羽ちゃんっ!!!!!﹄
必死の形相でビーチフラッグのようにタンポンを取り上げる。素
早くティッシュでぐるぐる巻きにして、ゴミ箱にダンクシュートし
た。すごい焦りようだった。
﹃はあ、はあ⋮⋮も、もう、今日は恥ずかしいことばっかり⋮⋮す
っごい疲れちゃった⋮⋮﹄
額に縦線を浮かべ、肩で息をするのりちゃん。
﹃友達だし女の子同士なんだから、恥ずかしがることないよ。良か
352
ったね、タンポン入れられるようになって。はい、のりちゃん、パ
ンツ﹄
ベッドの上にあったパンツを未羽が差し出す。のりちゃんはひっ
たくるように奪い取った。
﹃ひ、人のパンツを無闇に触らないの!⋮⋮もう、未羽ちゃんった
ら⋮⋮そういうの、おおらかすぎるよ⋮⋮﹄
ぶつぶつ言いながら、のりちゃんはパンツをはいた。
﹃ごめんごめん、怒んないで。あ、そうだ。のりちゃん、万が一タ
ンポンの紐が切れたときの、取り出し方の練習もしておく?﹄
﹃そういう上級者向けのはいい!!﹄
キレのいい突っ込みを入れるのりちゃんだった。
353
︻後日談11︼海に行かない水着回︵のりちゃんメイン︶③
﹁エッチなシーンがあるのはここまでだよ。止めるね﹂
未羽がリモコンでビデオを停止した。ブルーバックを映すテレビ
の前で、俺たち三人はさかりのついた犬みたいな顔をしていた。
﹁⋮⋮未羽、ありがとう。おまえは素晴らしい映像を残してくれた。
のりちゃんの絶頂シーンが見れるなんて⋮⋮これは奇跡の映像だ。
ピューリッツァ賞に値する﹂
﹁これでピューリッツァ賞取ったらのりが羞恥で死んでしまいます
よ。⋮⋮でも、本当によく撮ってくれたわ。ありがとう、未羽。あ
あ、わたしもう、とろっとろ⋮⋮﹂
ミニスカートの上から股間を押さえる香奈ちゃん。⋮⋮もう最近、
俺の前でそういう発言を抑えなくなってきたな。
﹁あたしも、この映像を共有できる家族と親友がいることを誇りに
思うわ。さて、これからどうするかだけど⋮⋮﹂
未羽はソファを立ち、腕を組んで俺と香菜ちゃんを交互に見つめ
た。表情が真剣だ。
﹁あたしはどっちかっていうと、今はエッチするよりも、もう一回
ビデオ見ながら思いっきりオナニーしたい気分なの。香奈ちゃんと
お兄ちゃんはどう?﹂
﹁未羽⋮⋮さすがね、わたしもそれがいいわ﹂
﹁異議なし﹂
三人の心が一つになった。
﹁みんなそう言ってくれると思っていたわ。じゃあ、もうひとつ、
とっておきのおかずを持ってくるわね﹂
未羽はそう言って、キッチンへ向かった。冷蔵庫を開け、フリー
ザーバッグを取り出す。
戻ってきた未羽は、自慢げに俺たちの前にフリーザーバッグを突
354
き出した。
﹁こ、これは⋮⋮!﹂
﹁そう、のりちゃんの中に入った、タンポンよ!!﹂
バッグを開け、タンポンを取り出す。
﹁生ものだから、賞味期限は今夜限りだよ。ああ、なんてかぐわし
いの⋮⋮お兄ちゃん、ちょっと待っててね、レディーファーストだ
から、香奈ちゃんからだよ﹂
未羽がタンポンを香奈ちゃんに手渡す。香奈ちゃんは宝物のよう
にそれを受け取った。愛おしそうに手のひらに乗せ、鼻を鳴らして
匂いをかぐ。
﹁ああ、これがのりの匂い⋮⋮なんていやらしいの⋮⋮﹂
香菜ちゃんはタンポンの先端を口に含み、愛液を吸った。
﹁あ、しょっぱい⋮⋮ああ、のり⋮⋮美味しい⋮⋮﹂
香菜ちゃんはうっとりとしてタンポンをしゃぶった。ど変態だっ
た。
描写はしないが、俺も同じようにのりちゃんの匂いをかぎ、タン
ポンをしゃぶった。温まってくると、またひときわ香りが立つのだ
った。
それから俺たちはビデオをもう一度再生し、交替でのりちゃんの
タンポンを嗅いだりしゃぶったりしながら、オナニーした。
背徳の宴が最高潮に達すると、未羽と香菜ちゃんは、恋人がポッ
キーを両側からかじるように、タンポンを両側から咥え、しゃぶり
あった。
俺はその凄まじく淫靡な様を眺めながら、彼女たちの顔に向かっ
て盛大に射精した。未羽も香菜ちゃんも、顔がどろどろになった。
一瞬訪れた賢者タイムの中で、俺たちがこんなことをしていると
のりちゃんが知ったら、ショック死するだろうなあと思った。
355
おわり
356
︻後日談11︼海に行かない水着回︵のりちゃんメイン︶③︵後
書き︶
357
︻後日談12︼俺と未羽の日常① 未羽とショッピング︵前書き
︶
お久しぶりです。後日談12をお届けいたします!
ご感想を足跡だけでも残していただけると嬉しいです!
358
︻後日談12︼俺と未羽の日常① 未羽とショッピング
兄妹でありながらこれまでに6回セックスした経験のある俺と未
羽だが、最近は至極健全な関係を続けている。
しかし、読者の中には俺たちがいまだに淫らな関係にあると思っ
ている人が多いようなので、今回は俺と未羽の日常を紹介しようと
思う。
エピソードを二、三紹介する。もちろん兄妹なのでエッチは無し
⋮⋮のはずである。エロ度が低くて退屈かもしれないが、聞いてく
れ。
☆
日曜日、俺と未羽はショッピングモールに来ていた。
親戚の叔父さんが入院したというので家族で見舞いに行って、そ
の帰りである。ちなみに叔父さんは心配するほどの病状ではなかっ
た。
両親はこのあと別の用事があるので、ここで別れた。今は未羽と
二人きりだ。
前にも言ったことがあると思うが、俺は未羽と二人で出かけると
き、これっぽっちも妹だと思っていない。恋人とのガチデートだと
思っている。
制服でも部屋着でも可愛い未羽だが、よそ行きの服を着ると一層
輝きが増す。
今日の未羽は、パステルカラーのワンピースに裾の短い黒のジャ
359
ケットという格好だ。ワンピースの甘さを黒がビシッと引き締めて、
さすがの着こなしである。
俺はっていうと、ビンテージのジーンズにシャツを引っかけてい
るだけだけど、未羽に言わせると俺はイケメンで体格がいいから、
それだけで充分カッコいいのだそうだ。
⋮⋮石を投げないでくれるかな? 俺が言ってるんじゃないよ、
未羽が言ってんだよ。
﹁ねえ、お兄ちゃん。小物見に行っていい?﹂
隣を歩く未羽が、俺の顔を覗き込んでいった。こいつのこういう
仕草、人目を気にせず抱きしめたくなるほど可愛い。
﹁ああ、いいよ﹂
﹁いいの? お兄ちゃん家電とか見に行きたくない? 別行動しよ
っか?﹂
﹁あのな、俺はお前と一緒に歩けるだけでいいの。レディ・ガガが
ゲリラライブでもやってりゃそっち行くけど﹂
﹁あはは、ガガのライブならあたしもそっち行くよ。じゃ、行こ﹂
眼を三日月にして笑う。笑顔のまぶしさにめまいがした。
未羽は外を歩くとき、いつも俺に寄り添って歩く。
寄り添うというより若干俺に寄りかかるくらいの感じである。完
全に恋人同士の密着度だ。
俺の右手に、さりげなく腕を絡めたり、シャツの袖を掴んだりし
てくる。
ときどき肘におっぱいが当たったりして、そのたびに俺はウブな
少年のようにドキッとする。
未羽とセックスまでしたことのある俺だが、一緒に街を歩くだけ
でも、それはそれで至福の喜びを感じるのだ。
婦人服フロアーの角を曲がったところで、俺は足を止めた。
﹁ん? どしたの、お兄ちゃん?﹂
特に用もなさそうな売り場で立ち止まった俺を、未羽が不思議そ
うに見上げる。
360
﹁あ、ごめん⋮⋮ほら、あれ﹂
俺が指差した先には、畳くらいある大きな鏡があった。俺たちの
全身が映っている。
鏡の中で寄り添う俺たちは、本当に恋人同士のようだった。自画
自賛だけど、絵になるカップルだ。
﹁わあ、どっから見ても恋人だね、あたしたち﹂
未羽が俺の腕にしがみついてくる。胸の谷間に腕が押しつけられ
て、たいへん気持ちが良ろしい。
鏡を見ると、EXI○E系の男︵俺︶が美少女に抱きつかれ、困
ったようで実は嬉しいみたいな顔をしていた。月9ドラマのワンシ
ーンのようだ。
﹁お似合いだね、あたしたち。ちょっと顔が似すぎだけど﹂
未羽が首をかしげて、俺の肩に頭をつける。俺も調子に乗って彼
女の肩を抱いた。
﹁未羽、お前本当に可愛いなあ⋮⋮俺幸せだよ、一緒に歩けて﹂
﹁えへへ、あたしも、お兄ちゃんカッコいいから嬉しいよ、デート
できて﹂
未羽もデートだと思ってくれているのか⋮⋮いかん、涙出そう。
﹁ほら、お兄ちゃん、小物屋さん行くよ﹂
もうしばらく鏡を見ていたかったが、未羽に腕を引かれ、俺は仕
方なく歩き出した。
☆
﹁わあ、これ可愛い。あ、色違いもあるんだ、こっちも可愛い﹂
小物屋が見えると、未羽は抱きついていた俺の腕を放り出し、店
に飛び込んでいった。猫まっしぐらだ。
﹁あ、この鍋敷き、クローバーの形してる、可愛い。わあ、このミ
361
トン、しましまで可愛い﹂
形容詞が﹁可愛い﹂しかなかった。まあ女の子が好みそうな可愛
いものを集めたのが小物屋だからな。仕方あるまい。
俺の興味を引くものはほとんどないのだが、手当たり次第に商品
を手にとっては眼を輝かせている未羽を眺めるのは、楽しかった。
女の買い物に付き合わされるのを嫌う男も多いようだが、信じら
れないね。
俺なら何時間でも未羽を眺めていられるよ。ドッグランで元気に
走り回る愛犬を、眼を細めて眺める飼い主の気分?
﹁あ、ごめんね、夢中になっちゃって。お兄ちゃん、退屈じゃない
?﹂
横からじーっと見つめている視線に気付いた未羽が、俺を気遣っ
てそう言った。
﹁気にすんなって、俺、お前見てるだけで充分楽しいから﹂
﹁あはは、ありがと。お兄ちゃんって、ホントあたしのこと好きだ
ね﹂
未羽はそれからさらに40分かけて小物を選んだ。
﹁よし、これにしよっと﹂
ほぼ全ての商品に目を通して未羽が選んだものは、木製のティッ
シュボックスだった。俺なら1億円あっても買わねえ⋮⋮ティッシ
ュって、裸じゃダメなの?
﹁それが欲しいのか? 買ってやるよ﹂
﹁え? いいの?﹂
未羽の手から、ティッシュボックスを取り上げる。
﹁うん、プレゼントな﹂
﹁やったあ、ありがと! あ、そうだ、あれも⋮⋮﹂
未羽は文具コーナーに走って行き、レターオープナーを取って来
た。
﹁奢ってくれるんなら、これも、いい?﹂
金属製で、可愛いというより、シンプルでシャープなデザインだ
362
った。値段は大したことない。
﹁ああ、これだけでいいのか?﹂
﹁うん、嬉しい、ありがと﹂
俺はレジに行って金を払った。未羽が店員に、別々に包装するよ
う頼んでいた。
﹁ほい﹂
店の前で、未羽に商品の入った袋を渡す﹂
﹁わーい、ありがと、お兄ちゃん大好き! えっと⋮⋮どこだ⋮⋮
?﹂
未羽が袋の中に手を入れ、細長い包みを取り出した。レターオー
プナーが入ったやつだ。
﹁はい、これはお兄ちゃんに﹂
包みを俺に差し出す。
﹁え? これ、俺にだったの⋮⋮?﹂
﹁うん、お兄ちゃんが好きなデザインかなと思って。あたしお金出
してないけどね、てへへ﹂
可愛らしく、ぺろっと舌を出す。
長々と店にいるなあと思ったら、俺のも探してくれたのか⋮⋮な
んていい妹だ⋮⋮。
﹁ありがとう、気に入った。大切にするよ﹂
﹁ふふ、良かった。あたしもありがと﹂
俺たちは互いを見つめて、微笑んだ。
﹁あーっ! やっぱ未羽じゃーん!﹂
突然、未羽を呼ぶ声。声の方を向くと、未羽と同じ年頃の女の子
三人連れがいた。
﹁あっ、みくちゃん、のっこ、ちーちゃん、来てたのー!﹂
未羽が答える。学校の友達だろう。
﹁あ、こ、こんにちは!⋮⋮﹂
傍らにいる俺が未羽の連れだと気付いて、一番活発そうな女の子
が焦って挨拶した。俺も﹁こんちは﹂と挨拶を返す。
363
その子は横目で俺を観察しながら、未羽の袖をくいくいと引いた。
﹁み、未羽はこの方は⋮⋮? ひょ、ひょっとして、彼氏⋮⋮とか
?﹂
﹁えっ!? うそっ! 未羽彼氏いたの!?﹂
﹁彼氏っ!? 聞いてないよ!? ちょ、カッコ良くない!?﹂
﹃彼氏﹄という言葉に、三人がいっせいに沸き立つ。恋バナ好き
だな、JK。
俺が否定しようとしたそのとき︱︱未羽が俺にすり寄って、腕に
ギュッと抱きついた。
﹁そうなの、あたしの彼氏。ごめんね、秘密にしてて﹂
﹁﹁﹁えーーー!!!!!﹂﹂﹂
周りの客が全員注視するほどの大声で叫ぶ。未羽と眼を合わせる
と、彼女は唇に人差し指を当てて﹁黙ってて﹂のサインを送った。
﹁あわわわ、み、未羽に彼氏が、しかもイケメン﹂
﹁ど、どうしよう、未羽、取りあえず写メとっていい!?﹂
﹁み、未羽、何でこんなカッコいい彼氏いるのに内緒に⋮⋮ん?﹂
メガネをかけた子が、何かに気付いて俺の顔をじーっと見た。眉
を寄せて眼を細める。
﹁あーっ! あたし知ってる! 未羽のお兄さんだよ!﹂
メガネっ子が叫ぶ。まあ、同じ高校だし、俺のこと知っててもお
かしくはない。どうでもいいけど、顔を指差さないでくれないかな、
指名手配犯じゃないんだから。
﹁あはは、バレた?﹂
三人は揃って安堵の溜息をついた。
﹁あー、びっくりした。脅かさないでよ−﹂
﹁未羽が内緒にするはずないのに、あんまりお似合いだから信じち
ゃったよ﹂
﹁よく見たら顔似てるじゃん。兄妹揃って美形だこと⋮⋮﹂
三人は未羽と話しながらチラチラと俺を観察した。未羽に何やら
耳打ちしている子もいたが、何を言っているのかまでは聞こえない。
364
ここへは映画を見に来たそうで、もう始まる時刻だという。三人
は未羽に別れを言い、俺にもペコペコ頭を下げた。俺もうなずく程
度にお辞儀を返す。
去って行く三人に、未羽は手を振った。角を曲がって姿が見えな
くなると、首を捻って俺を見上げた。にやにや笑顔が顔に貼りつい
ている。
﹁あたしたちお似合いだって、お兄ちゃん﹂
﹁すぐバレる嘘つくなよ⋮⋮ブラコンと思われるぞ﹂
﹁そんなこと言って∼、お兄ちゃん嬉しかったでしょ?﹂
﹁⋮⋮ちくしょう、認めるよ。ぶっちゃけすげえ気分良かった。あ
あ、本当にお前が彼女だったらなあ﹂
俺が肩を落とすと、未羽は励ますように背中をぽんぽん叩いた。
﹁まあまあ、みんなお兄ちゃんのことカッコいいって言ってたよ。
ちーちゃんに﹃彼女いるの?﹄って聞かれたから、いないって答え
といたけど、お兄ちゃん、あたしの知らないところで彼女作ったり
してないよね?﹂
﹁耳打ちしてた子か⋮⋮まあ、いねえけど﹂
﹁ちーちゃん、紹介してほしそうだったよ? お兄ちゃんがよけれ
ば、あたし間に入ってもいいけど。お兄ちゃんせっかくカッコいい
のに、彼女作んないともったいないよ?﹂
﹁ありがたいけど、紹介は要らないよ﹂
﹁お兄ちゃん、あたしとは付き合えないんだからね? そこは分か
ってる?﹂
﹁ああ、分かってるよ﹂
茶化したりせず、俺は真面目に答えた。未羽は俺の眼をじっと見
て、﹁ふうん⋮⋮﹂と言った。
﹁何か思うところありそうだね。うん、これ以上は聞かないでおく
よ。ねえ、お兄ちゃん、ゲーセン行きたくない? あたし音ゲーや
りたい﹂
﹁いいよ、行こう﹂
365
俺たちはまた連れだって歩き出した。未羽はさっきと変わらず、
寄り添って歩いてくれる。
﹁あれ、一ノ瀬じゃね?﹂
いくらも歩かないうちに後ろから声をかけられた。一ノ瀬っての
は俺の姓だ。ラノベ2冊分くらい書いてきて突然の発表だが、覚え
ておいてくれ。
振り向くと、男の二人連れ。同じ野球部の同級生だった。
﹁おう、渡辺に飯野じゃん。男二人でむさ苦しいな﹂
﹁うっせえよ。てか、その子、誰⋮⋮?﹂
﹁え? ま、まさか、お前彼女が⋮⋮!﹂
渡辺も飯野も、俺と同じ﹁彼女いない歴=年齢﹂軍団だ。ショッ
ピングモールで美少女を連れ歩く俺に、驚愕の表情を浮かべる二人。
チラッと未羽を見ると、彼女は悪戯っぽい笑みを返した。
未羽の意図を汲んだ俺は、未羽の肩に手を伸ばした︱︱
﹁そう、これが俺のかの︱︱﹂
﹃彼女﹄という単語が口を出る間際、驚きに眼を見開く二人の顔
が視界に飛び込んできた。
俺はハッとして、全筋力を総動員して肩に伸ばした手を引き戻し
た。筋が切れそうな勢いで戻した手を、あくまでもさりげなく、未
羽の頭にポンと乗せる。
﹁かのっ、かの、かの有名な、俺の妹だ!﹂
未羽が﹁えっ?﹂と言って俺を見上げた。危機を乗り切った俺は、
精一杯の作り笑いを浮かべた。
渡辺と飯野はしばらく目をパチパチさせた後、俺の言葉を呑み込
んで安堵の溜息をついた。
﹁な、何だ⋮⋮妹かよ、脅かしやがって﹂
﹁ビビったぜ⋮⋮そういや、可愛い妹がいるって聞いたことあった
な。なるほど、よく見ると似てるじゃん。1年生だっけ?﹂
未羽はぺこりと頭を下げた。よそ行きの笑顔を浮かべている。
﹁はい、1年C組の未羽です。いつも兄がお世話になってます﹂
366
﹁こ、これはどうも、ご丁寧に⋮⋮﹂
﹁こ、こちらこそ、いつも一ノ瀬にはお世話に⋮⋮﹂
美少女に丁寧に挨拶され、恐縮する二人だった。顔がだらしなく
緩んでいる。
﹁じゃあな、俺たちもう行くぞ﹂
﹁え、もう? どこ行くんだよ?﹂
﹁これから家具屋行って仏壇選ぶんだよ、ついてくるか?﹂
﹁嘘つけ、冷てえなあ。じゃあ、未羽ちゃん、またね﹂
未羽を促し、その場を離れる。会ったばかりでもう﹁ちゃん﹂付
けするなれなれしい奴らだが、未羽は笑顔で手を振った。
あいつらは野球部の大事な戦力で、根はいい奴らなのだが、うち
の未羽をやるわけにはいかない。
﹁未羽、男ってのは勘違いしやすい生き物なんだから、あんまり愛
想振りまくと⋮⋮﹂
悪い虫がつかないようにひと言注意しようと思った俺は、未羽の
顔を見てギョッとした。さっきまでのよそ行き笑顔はどこへやら、
彼女はフグのようなふくれっ面をしていた。
﹁み、未羽! な、何だよ、その顔は⋮⋮!?﹂
﹁⋮⋮お兄ちゃん、あたしのこと彼女って言ってくれなかった。あ
たしの友達の前ではあんなに嬉しそうにしてたくせに、あれ嘘?﹂
盛大に誤解している未羽だった。
﹁ちっ⋮⋮違うって未羽! 女と男では違うの! お前の場合は﹃
ホントはお兄ちゃんだよー、えへへ﹄で済むけど、俺が﹃こいつ、
俺の彼女なんだ﹄なんて言っちゃうと、後から﹃実は妹でした﹄っ
て言っても、すっげえガチ臭がするっていうか、シャレになってな
いっていうか⋮⋮とにかくマズいの!﹂
﹁言い訳しなくていいよ。本当はあたしを彼女だなんて思われたく
ないんでしょ? そうだよね、こんなチビで貧乳で顔がちょっと可
愛いだけのお子様なんて、連れて歩くの恥ずかしいよね﹂
﹁小柄なのはお前の萌え要素の一つだよ! 胸は人並みだしスタイ
367
ル抜群じゃん! 顔は⋮⋮まあ自分でも可愛いと思ってるようだけ
ど、ちょっとじゃなくて世界一可愛いよ! 間違いなく!﹂
﹁⋮⋮あーあ、もうお兄ちゃんの言うこと信じられなくなっちゃっ
た。あたし、本屋さんで古文の参考書買って先帰るね﹂
﹁つまんねーこと言うなよせっかくの休日に! あ、そうだ、最近
ここの1階にかき氷出す店ができたんだよ、食べてみたくない?﹂
﹁⋮⋮甘いもので釣ろうと? バカにしないでよ﹂
ますます顔を丸くする。ふくれっ面も可愛い未羽だが、いかんせ
んふくらみ過ぎて、可愛く見える限界を若干超えていた。
﹁た、頼むからそんなにふくれないでくれ! 頬が伸びたら可愛い
顔が台無しだぞ!﹂
﹁いいもん、どうせあたしなんてオカチメンコだから﹂
﹁いつの時代の悪口だよオカチメンコって!? なあ⋮⋮俺が悪か
ったから、機嫌直してくれ⋮⋮かき氷、食いたくないのか?﹂
﹁お兄ちゃん、やっぱりあたしのことお子様だと思ってるでしょ?
小学生じゃあるまいし、かき氷なんかで喜ぶと思うの?﹂
﹁ただのかき氷じゃないんだよ。牛乳を凍らせて削ってんの﹂
﹁⋮⋮牛乳?﹂
お、食いつきやがった。
﹁牛乳を甘くして凍らせて、ものすっごく薄く削ってんの。雪みた
いにふわっとしてて、それに生のフルーツのソースかけるんだって。
食べてみたくない?﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
未羽は必死で険しい表情を維持していたが、眼の奥がキラキラと
輝いていた。
﹁な、食べたいだろ? 行こうぜ﹂
﹁べ、別に食べたくなんか⋮⋮﹂
﹁俺も食ってみたいんだよ、男ひとりじゃ入りにくいしさ。未羽が
一緒に行ってくれるとありがたいんだけどなあ⋮⋮﹂
未羽は顔の筋肉を無理やり操作して、﹁やれやれ﹂という表情を
368
作り、溜息をついた。
﹁もう⋮⋮しょ、しょうがないわね、お兄ちゃんがそんなに食べた
いなら、付き合ってあげてもいいわよ﹂
﹁⋮⋮ありがとう、恩に着るよ﹂
俺は膝に手を突いて、安堵の溜息をついた。あとはかき氷が旨い
ことを願うばかりだ。
﹁うわぁ! 何これ、ほんとにふわっふわ∼!﹂
俺と未羽は1階のその店へ行き、1杯780円という非常識な価
格のかき氷を頼んだ。
未羽がイチゴと黒蜜で悩んだので、未羽がイチゴを、俺が黒蜜を
注文した。いつもの半分こ作戦だ。
出てきたかき氷を見て、俺も驚いた。新雪のようにふわりとした
白いかき氷に、甘そうなソースがとろりとかかっている。すごくお
しゃれなスイーツだ。
眼をキラキラさせながら、未羽がスプーンを口に運ぶ。
﹁はぅん、口の中で、スッと溶ける∼、イチゴソースも贅沢に果肉
が残ってて、美味しいぃ∼﹂
頬を手で押さえ、心底幸せそうな笑みを浮かべる。なるほど、だ
からほっぺが落ちそうって言うのか。
俺も食べてみたけど、確かに旨かった。口に含むと舌の上で消え
るように溶ける。牛乳のかき氷は甘さ控えめにしてあって、濃厚な
甘みのソースと抜群に相性が良い。
﹁お兄ちゃん、ごめんね、さっきは拗ねちゃって。お兄ちゃんは世
界一優しいのに⋮⋮あたし悪い子だね。お兄ちゃん、大好きだよ、
許して﹂
﹁機嫌良くなりすぎだお前! 少しは引きずれ!﹂
369
⋮⋮まあ、詳しく書いてもしょうがないから後は省略するけど、
未羽の機嫌は雨上がりの空のようにすっきりと晴れ渡り、かき氷を
食べた後ゲーセンで遊んで帰りました、っていう話だよ。ちゃんち
ゃん、だ。
370
︻後日談12︼俺と未羽の日常② 未羽の陸サーフィン
﹁ただいま⋮⋮ちきしょう、くっそ疲れた⋮⋮﹂
帰宅した俺は、玄関に突っ伏したいのを我慢してまっすぐ風呂へ
向かった。
我が野球部は今年も甲子園への切符を逃がし、夏が終わった。
県ベスト4まで残ったのだから大健闘ではあるのだが、うちの強
みと弱みが浮き彫りになった夏だった。
監督はチームのレベルアップを図るには地力の底上げが必要だと
考えたようだ。最近は練習試合も組まず、ひたすら俺たちに筋力ト
レーニングを課している。
小手先の技術を身につけるよりも、先ずは土台となる基礎体力を
強化する。春の選抜までにじっくりと選手を育てていく作戦である。
俺も監督の考えに賛成だ。
とはいうものの、連日筋トレがつづくとさすがにキツい。いつも
なら熱い風呂に入れば多少筋肉がほぐれるのだが、その程度では焼
け石に水だ。身体中がパンパンである。
自室に戻り、樹が倒れるようにベッドに倒れ込む。もう起きる気
になれなかったので、俺は携帯を取って未羽に電話をかけた。すぐ
に未羽が出る。
﹃お兄ちゃん? 今部屋でしょ? 何で家の中で電話してんの?﹄
﹁⋮⋮監督のシゴキで、もう動けねえ⋮⋮お願い未羽、踏んでくれ
る?﹂
﹃あはは、今日もキツかったんだ。いいよ、ちょっと待っててね﹄
電話が切れる。未羽は隣の部屋にいるはずだが、すぐには来なか
った。
赤いきつねができるくらいの時間が過ぎて、やっとドアをノック
371
する音が聞こえた。
返事すると未羽が入ってきた︱︱︱︱水着姿で。
﹁⋮⋮⋮⋮お前の水着姿が見れるのは嬉しいんだけど⋮⋮何で水着
?﹂
﹁サービス、サービス。お兄ちゃん部活頑張ってるからさ。それに
陸サーフィンするんだから、気分だよ、気分﹂
未羽が着ているのは、この間のりちゃんと買ってきたエメラルド
グリーンのワンピースのやつである。
ビキニよりもワンピースの方が身体のラインが出るので着る人を
選ぶというが、未羽の水着姿はスラリとして実に美しい。胸やお尻
はあくまで発展途上だが、均整のとれた健康的な身体だ。
﹁んじゃ、早速乗るよ∼﹂
そう言って未羽は俺のベッドに登った。うつぶせの俺を踏んづけ
て、腰の上に乗る。
酷使した筋肉にはマッサージが一番なのだが、これだけ張ってる
と生半可な力で揉んでも効果がない。
華奢な未羽の手でマッサージしてもらっても、彼女が疲れるだけ
なので、こうして踏んでもらうのだ。
部活の後輩にやらせてもいいのだが、男は重過ぎるし乱暴だし、
何より野郎に踏みつけられているというのが、何となく屈辱的な気
分になる。
その点小柄な未羽の体重は絶妙な負荷であり、踏まれることで屈
辱を感じるどころか、心に眠るMっ気を満足させることもできると
いう、一石二鳥のシステムなのである。システム?
﹁おっ、おっ、ぐらぐらする、あはは﹂
﹁お∼、未羽、最っ高に気持ちいい⋮⋮背中から足まで、ず∼っと
踏んでって﹂
﹁うん、あはは、揺れる揺れる。ビッグウェーブや∼﹂
そろそろと背中へ移動する未羽。未羽はいつも俺をサーフボード
に見立てて、サーフィンごっこをする。
372
人の身体の上でバランスを取るのは、結構難しいものである。膝
を軽く曲げ、両手を広げてバランスを取る。陸サーフィンってのは
このことだ。
まあ、楽しんでマッサージしてくれるならこっちも御の字なので、
デデ
デデデデー、デーデデーデーデデデデー﹂
好きなようにさせている。ていうか、こんな風にふざける妹、可愛
い過ぎる。
﹁♪デーデーデー
未羽がサーフィンソングで有名なベンチャーズのパイプラインを
口ずさみだした。これもいつものことだ。ピンとこない人は下のU
RLの動画を見てくれ。誰でも知ってる曲だから。
https://www.youtube.com/watch
デデ
デデデデー、デーデデーデーデデデデー﹂
?v=8BHvcGfBh5g
﹁♪デーデーデー
背中から腰へ、腰から脚へと移動し、俺の太ももの上でバランス
デンデケデンデケデンデ
を取る。脚の上は不安定なのでぐらぐらと揺れるが、未羽は上手に
バランスを取る。
﹁♪デンデケデンデケデンデケデンデケ
ケデンデケ﹂
首を捻って見上げると、白い太ももと水着の股間が眼に飛び込ん
ズ
できた。野球部の仲間は汗臭い部室で後輩に踏んでもらってたけど
リーラリーラリラ
⋮⋮あれと比べると天国と地獄だぜ、全く。
リーラリーラリラ
ブクブクブクブクブクブブク﹂
﹁♪リーラリーラリラ
ン!
ブクブクのところで鼻をつまんでしゃがみ、水に潜る真似をする。
デデデケ
デデデケ
デデデケ
親父と一緒に行ったオールディーズ系ライブハウスの店で見た振り
デデデケ
デデデデデ﹂
デデデケ
付けだそうだ。
﹁♪デデデ
デデデケ
アレ、曲が変わったな? いつもはパイプラインの無限リピート
なんだけど⋮⋮?
373
﹁♪デデデ
デデデケ
デデデケ
デデデケ
デデデデデ﹂
デデデケ
デデデケ
デデデケ
デデデケ
デデデケ
デデデケ
うーむ、曲はパイプラインに似たサーフィンっぽい感じなんだけ
デデデケ
デデデデデ﹂
デデデケ
ど⋮⋮聞き覚えがあるが思い出せない。
﹁♪デデデ
デデデケ
⋮⋮ずっとこのフレーズの繰り返しだな。何の曲か聞こうと思っ
て、俺は再度首を捻って未羽を見上げた。
彼女は左右の腕で交互にガッツポーズを取るような振り付けで踊
っていて、それを見て俺はやっと思い出した。←これだった。
https://www.youtube.com/watch
?v=f1FOtbNWFs4
﹁お前それ電撃ネットワークだろ!! 曲調似ているけどサーフィ
ン関係ねーじゃん!!﹂
﹁あははははは! 気付いた? お兄ちゃん? あはははははは﹂
未羽は腹を抱えて笑った。バランスが崩れ、俺のふくらはぎをか
かとでグリグリする。
﹁痛てっ! 痛てえよっ! いくらお前が小柄でもそんなとこ全体
重でグリグリされると痛えよっ!﹂
﹁あははっ、あ、ごめん、お兄ちゃん。こ、今度はちゃんとやるよ、
あははは﹂
デデ
デデデデー、デーデデーデーデデデデー﹂
足から腰へ移動。深呼吸して呼吸を整え、バランスを取り直す未
羽。
﹁♪デーデーデー
再びパイプラインを口ずさみ、陸サーフィン︵兄サーフィン?︶
デデデデー⋮⋮ズンズンズンズンズンズ
を始める。エアでクロールするように踊ってる。可愛い。
デデ
ズンズンズンズンズンズンズズ﹂
﹁♪デーデーデー
ンズズ
⋮⋮途中から曲が変わったよ。アレ? 電撃ネットワークかと思
ったら違うな⋮⋮なんだこれ?
374
﹁♪ズンズンズンズンズンズンズズ
ズ﹂
ズンズンズンズンズンズンズ
タ∼ラリ∼ラ
ラッタッタ∼﹂
ズンズンが長えな。ずっと前に聞いたことがあるような⋮⋮。俺
タリラリラ∼
はまた未羽を見上げた。
﹁♪タ∼ラリ∼ラ
未羽は何やら珍妙な振り付けで踊っていた。それを見て俺はやっ
と元ネタを思い出した。
元ネタ↓ http://www.nicovideo.jp/
watch/sm19828754
﹁お前それ﹃きみのためなら死ねる﹄だろ!! サーフィンからす
ごい遠いとこ行っちゃってるよ!!﹂
﹁あはははは! な、何でお兄ちゃんこんなマイナーな曲知ってん
の!? あはははは!﹂
ツボに入ったらしく、未羽は爆笑して俺の上に倒れた。
親亀子亀みたいに俺の上に腹ばいになって、ベッドをこぶしで叩
きながら笑っている。
水着越しにおっぱいが背中に当たっている。未羽の心地よい体重
を背中に感じながら、幸せだなあと俺は思うのだった。
375
︻後日談12︼俺と未羽の日常③ 未羽とお勉強
夜九時。未羽が俺の部屋にやってきた。
﹁お兄ちゃん、数学の課題で分かんないのがあるの、教えて﹂
未羽は優等生だが、どちらかというと文系の科目を得意とする。
逆に俺は理系が得意なので、彼女は分からない問題があるとこうし
て聞きに来る。
﹁ああ、いいよ﹂
﹃俺の妹がこ○なに可愛いわけがない﹄のコミック版を読んでい
た俺は、ローテーブルに腰を下ろした。未羽が左隣に座り、教科書
を広げる。
﹁この問題。お兄ちゃん分かる?﹂
式①の3次曲線と式②の2次曲線に囲まれた領域をx軸を中心に
回転させたときにできる立体の体積を求める問題だった。
﹁ああ、楽勝﹂
﹁って即答するとこがすごいね、お兄ちゃん。どうやるの?﹂
﹁先ずは、どうせ最後に使うから、式①と式②の交点を求めておこ
う。次数高いけど、連立方程式解ける?﹂
そう言って俺は、未羽の肩を引き寄せた。
未羽は嫌がらずに俺に寄り添う。むき出しの腕が触れ合って、柔
らかな感触が心地良かった。
﹁うん、できる。連立方程式って、パズルみたいで好き﹂
未羽は3次の連立方程式をスラスラと解いた。聡明な子だ。
﹁よくできました。それじゃ、先ず断面積を求めるけど、求め方解
る?﹂
んー、と言って未羽はあごにシャーペンを当てた。
376
﹁解んないことないけど、あたし解法パターンで覚えてるからいま
いち意味がよく分かってないの。復習を兼ねて詳しく教えてくれる
と嬉しいな﹂
﹁オーライ。グラフ描くよ。この3次関数は、係数からしてこんな
形だろ?﹂
俺は未羽のノートに十字に交差するx軸とy軸を描いた。さらに
Nを丸っこくしたような3次曲線を描き足す。
それから未羽の頭を抱き寄せた。未羽は従順に首を傾け、俺の肩
に頭をもたせかける。
頭を撫でながら、俺は髪の匂いを嗅いだ。未羽お気に入りのシャ
ンプーの、果実を思わせる芳醇な香りを、俺は胸の奥まで吸い込ん
だ。
﹁んで、2次曲線がこう重なると。求めるのはこの領域を回転させ
たときにできるドーナツ型の体積だ﹂
2次曲線を描き足し、俺は曲線に囲まれた領域を斜線で塗りつぶ
した。
﹁鳩サブレみたいな形だね﹂
未羽は鳩サブレの顔の部分に、シャーペンでくりくりと目を描い
た。ついでにまつげも三本描く。
﹁⋮⋮遊ぶなよ、人が真面目に教えてんのに﹂
﹁本当はお兄ちゃん、こういうことする妹を、可愛いなって思って
るでしょ?﹂
肘で俺の脇腹をつつく。
﹁⋮⋮思ってるよ、こんちくしょう。問題に戻るぞ。どこでもいい
から、適当なとこでこの鳩サブレをぶった切った断面を考える﹂
俺は鳩サブレを両断する垂直線を描き入れた。
﹁ああっ、ピヨちゃんが﹂
﹁名前付けるな。いいか、この線で回転体をぶった切った断面を考
えるんだ。こうなるだろ?﹂
俺はグラフの上に大きく◎を描いた。ドーナツ部分をまた斜線で
377
塗りつぶす。
シャーペンを走らせながら、未羽の背中越しに腕を回して、おっ
ぱいを触った。未羽は大人しく胸を揉まれている。
そろそろ読者も﹁こいつら何やってんだ?﹂と思っているころだ
ろう。
実は未羽との取り決めで、俺が勉強を見てやっている間は好きに
ボディタッチしていいことになっているのだ。
羨ましいと思うかもしれないけど、楽ではないんだよ。教え方が
下手だと冷たくつっぱねられるんだから。
一学年下とはいえ未羽は優等生だから、俺に聞きに来る問題は数
学にせよ英語にせよ難問ばかりだ。
それをただ答えを教えるだけではなく、解りやすく解説しなくて
はならないのだ。それには予備校講師並の学力が必要だ。
未羽の身体に触るため、俺は部活男子としてはあり得ないほど勉
強している。おかげで成績が急上昇し、この間のテストでは学年で
トップ10に入った。
部活も手抜いてないんだぜ、偉いだろ? それほどの努力をして
この幸せを手に入れているのだ。未羽を愛すればこそだ。
﹁先ず、外側の円の断面積を求めるんだよ。円の面積の公式は?﹂
﹁おっぱいアール2乗 。あ、パイアール2乗だった。お兄ちゃん
がおっぱい触るから間違えちゃった﹂
こつん、と自分の頭を叩き、てへぺろする。こいつの頭の回転の
速さは本当に感心するぜ⋮⋮。
﹁⋮⋮外側の円の半径は?﹂
﹁えーと、この3次曲線が半径と一緒だから⋮⋮あ、なるほど。式
①の右辺がそのまま半径になるんだね?﹂
﹁そう。お利口さんだ﹂
問題を解きながら、俺はやんわりと胸を揉んでいる。あんまり激
しく揉んで未羽が感じてしまうと、保健体育の授業が始まってしま
うから、やんわりと、である。
378
未羽はノーブラだ。キャミソールの上から触るおっぱいはふにゃ
りふにゃりと柔らかくて、最高の触り心地だ。
生乳もいいけど、柔らかな木綿の布越しに触るおっぱいも、また
別の良さがある。
未羽のおっぱいを揉むためなら、朝四時起きで朝練前に勉強する
のも苦にならないぜ。
﹁外側の円の面積を求めるには、どうしたらいい?﹂
﹁んっと⋮⋮右辺がアールだから⋮⋮右辺をカッコでくくって2乗
して、パイかければいいの? 合ってる?﹂
﹁おお、さすが未羽。ちょっとヒントを与えたらすぐ理解できるな。
おまえは頭いいよ﹂
﹁お兄ちゃんが教え方上手なんだよ。いつもありがと﹂
未羽が俺の頬にチュッとキスした。出し抜けだったので、五秒く
らい意識が飛んだ。
﹁お兄ちゃん? 続き教えて?﹂
未羽の声でハッと意識が戻った。⋮⋮くそう、マジで結婚してえ
⋮⋮。
﹁⋮⋮同じようにして小さい方の円の面積も求めるだろ? そして
大きい方の円から小さい円の面積を引けば、ドーナツ部分の面積が
求まる﹂
﹁なーるほど。今度は式②の右辺を2乗してパイかけて、さっきの
式から引けばいいんだね。わー、初めて意味が分かった!﹂
呑み込みの早い未羽は、長い計算式をスラスラとノートに書いて
いく。字がきれいだなあ、こいつ。
﹁ちなみに、パイは共通項だから、先にカッコの外に出しておけば
計算が楽だ﹂
﹁パイを外に出すの? こんなふうに?﹂
と言って未羽は、キャミをぺろんとめくっておっぱいを出した。
俺は、ブシャーッと勢いよく鼻血を噴き出した。
というのは嘘で、漫画じゃないんだから鼻血は噴いていないがそ
379
れくらいの破壊力があった。
真っ白で形がきれいで、しかもTPOだ︵TPO=乳首が・ピン
ク色の・おっぱい︶。何度見ても新鮮に美しいと思う。
﹁ごめんごめん、ふざけちゃって。はい、お兄ちゃん、続き続き﹂
あっさりと胸をしまう未羽。
﹁あ⋮⋮しまわなくても⋮⋮﹂
﹁おっぱい出したまま勉強できないよ。お兄ちゃん、続き﹂
﹁未羽、ちょっと休憩しようか?﹂
﹁まだ問題の途中だよ! x軸を中心に回転した体積を求めるんだ
よ! お兄ちゃん!﹂
俺はしょんぼりして授業を再開した。エサ見せておあずけしない
でくれないかな⋮⋮。ああ、未羽のおっぱいしゃぶりてえ。
﹁あとは簡単だよ。ドーナツ形の断面積が求まったから、式①と式
②の交点の間を定積分すれば体積になるんだよ。交点は最初で求め
たろ?﹂
﹁え? ここから、ここまで⋮⋮あっ、本当だ、体積になる! す
ごい、今完璧に解ったよ⋮⋮えっと、さっきの式にインテグラル付
けて⋮⋮交点は⋮⋮おお、ここで最初に求めた連立方程式の解が役
に立つんだ⋮⋮こんな形で伏線を回収するとは⋮⋮﹂
﹁伏線言うな、小説か。それよりさっさと解き⋮⋮解いてるね﹂
理解でできたのが嬉しいのだろうか。未羽はすごいスピードで数
式を綴っていた。
﹁ここでもパイは共通項だから、インテグラルの外にパイを出して
おくと計算が楽だぞ﹂
﹁パイを出すんだね、こう?﹂
未羽がまたキャミをめくる。今度は予想できたので、俺は素早く
手を伸ばし、指で乳首をつついた。
﹁やんっ﹂
﹁ふっ、俺が未羽のおっぱいを二度も見逃すと思うか﹂
﹁お兄ちゃんのエッチぃ﹂
380
未羽がこぶしを握って、太鼓の達人のように俺をぽこぽこと叩く。
全然痛くねえ、むしろ心地いい。
もっとじゃれ合っていたかったが、未羽はさっと切り上げておっ
ぱいをしまい、計算を再開した。
﹁お兄ちゃん、xの7乗が出てきたよ、7乗が﹂
﹁項が多くて面倒だけど、あとはひたすら解くだけだから、ケアレ
スミスに気をつけて頑張れ﹂
ノートの一行に入りきらない長い数式を、未羽は素早く正確に解
いていく。相当問題の数をこなしていないとできないスピードだ。
俺は感心しながら、未羽の背後に移動した。腕を回して、コアラ
のように未羽に抱きつく。
未羽は無視してシャーペンを走らせている。俺はキャミの裾から
両手を入れた。
手をお椀型にして、おっぱいを包むように触る。
﹁ああ、なんて柔らかいんだ⋮⋮﹂
絹ごし豆腐のような柔らかさだ。しっとりした肌、温かな体温。
手のひらの真ん中に、ぽちっとした乳首が当たっている。手から
幸せの波動が流れ込み、俺の身体に染みこんでいくようだ。
勉強の邪魔にならないように、俺は優しくおっぱいを揉んだ。⋮
⋮邪魔か、俺?
首を伸ばして肩越しにノートを見ると、未羽はもう問題を解き終
わりかけていた。至福の時も、あとわずかだ。
俺は心残りのないように、全身全霊で未羽の身体を感じた。
背中にぴったりと貼りついておっぱいを揉み、うなじにキスしな
がら髪の匂いを嗅いだ。邪魔なことこの上ない。
﹁できたー! 24√5π! お兄ちゃん、合ってる?﹂
問題を解き終わった未羽が、シャーペンを放り投げてバンザイし
た。俺は後ろ髪を引かれながら、未羽のおっぱいを解放した。
﹁どれどれ?﹂
兄のつとめとして、俺は問題を頭から自力で解いてみた。答えは
381
24√5π、未羽と一緒だ。
﹁はい、正解。お疲れさん﹂
﹁やったぁ、お兄ちゃんのおかげで中ボスを倒せたよ、ありがと﹂
﹁ん? 中ボス? ラスボスがいるのか?﹂
﹁うん、次化学教えて。いい?﹂
﹁いいよ、全然﹂
未羽に勉強教えていると、猥褻家庭教師気分を味わえるからな。
何時間でも構わない。
﹁この問題。解ける?﹂
未羽がプリントをテーブルに広げる。
酸素を含む有機化合物Aを燃焼させて生じた二酸化炭素と水の質
量からAの分子式を求め、選択肢から選ぶ問題だった。Aの構造式
も答えなくてはならない。前提条件としてAの質量と光学異性体が
存在することが与えられている。
﹁ん、楽勝﹂
﹁迷わず楽勝って言うとこがすごいね、お兄ちゃん。どうやるの?﹂
俺はシャーペンを手に取った。問題文の重要なところにアンダー
ラインを引く。
﹁取りあえず組成式を求めなきゃいけないよな。それには先ず炭素
と水素のモル比を計算する﹂
﹁酸素はどうやって求めるの?﹂
﹁それは後で出てくるから、取りあえず計算してみな。一度にモル
を求めるんじゃなくて、質量も出しておくといい﹂
うん、と言って未羽はシャーペンを取り、計算を始めた。この程
度のアドバイスで取りかかれるんだから、お利口さんだよな。
感心しながら、俺は未羽の後ろに回って、またキャミの中に手を
入れた。生乳モミモミを再開する。柔らけえなあ⋮⋮。
﹁えっと、二酸化炭素の分子量で割って、炭素の分子量かければい
いの?﹂
﹁うん、炭素は元素だから原子量な。そうそう⋮⋮あ、水の方は、
382
水素2個あるから1じゃなくて2をかけなきゃならない﹂
﹁あ、そっか﹂
おっぱいを揉まれながら、未羽は炭素と水素のモル数を計算する。
﹁んっ⋮⋮﹂
艶っぽい声が、微かに漏れた。
あんまり感じさせないようにソフトに触っているのだが、さっき
からずっと揉み続けているので、さすがに無反応ではいられなくな
ったようだ。
試しに乳首をくりくりすると、未羽はくすぐったそうに身をよじ
った。
﹁うん⋮⋮あっ⋮⋮もう、お兄ちゃん、だめぇ。勉強中だよ?﹂
未羽が俺の腕を押し下げて、キャミの中から手を引きずり出す。
﹁ほら、モル比求まったよ、1対2。酸素はどうやって求めるの?﹂
俺は手のひらに残った暖かみを惜しんで、頬に手を当てた。ムン
クの﹁叫び﹂みたいなポーズで答える。
﹁最初に化合物Aの質量が与えられてるだろ? それから炭素と水
素を引けばいいんだよ﹂
﹁あ、なるほど。だからさっき炭素と水素の質量求めたんだ。あっ
たまいい﹂
未羽がまたノートに向かい、計算を始める。俺は懲りずに未羽に
後ろから抱きついた。
今度は部屋着のフランネルパンツの中に手を忍ばせる。未羽がピ
クッと反応した。首を捻って俺の方を向く。
﹁そ、そこ触るの? も∼、勉強中だってば﹂
﹁ちょっとだけ、ちょっとだから﹂
﹁ん⋮⋮もう﹂
俺は未羽のパンツの中に手を入れた。滑らかな下腹部に指を這わ
せ、下の方を目指す。
﹁あん⋮⋮﹂
スリットに到着! 割れ目を指でなぞると、ぬるっとしたもので
383
指が滑った。
おお、とろっとろ、とまではいかないが、やっぱりおっぱいへの
刺激で感じていたようだ。
いつもだったらここで﹁口ではそんなこと言って、感じてるじゃ
ないか﹂とか言葉責めするところだけど、怒りそうなので俺は黙っ
ていた。
指に愛液をまとわせ、スリットをなぞって全体に広げる。薄く割
れ目が開いて、指が浅く潜り込んだ。
﹁あっ⋮⋮やだ⋮⋮し、下はだめぇ⋮⋮﹂
未羽が身をよじる。でも、シャーペンを持つ手は休まず計算を続
けている。大した根性だ。
﹁あんっ⋮⋮ほ、ほらぁ、できたよ。炭素と水素と酸素が1対2対
1だよ。②のC2H4O2でしょ? 解けたから、もうおしまい!﹂
振り向いて俺に言う。俺は背後にぴったりくっついてるから、顔
がすごく近い。ああ、キスしてえ。
﹁そうか? 前提1個忘れてるぞ﹂
え? と言って未羽はプリントに向き直った。
﹁あ、そうだった。攻殻機○隊って、1個の炭素に4つ違うのが付
いてるのだよね?﹂
﹁何でここでしろまさ先生が出てくる? 光学異性体な。試しにC
2H4O2の構造式書いてみ﹂
未羽は素直にノートに構造式を書いた。その間も俺は未羽のあそ
こを触り続けている。
怒るかもしれないと思ったが、俺は指を浅く入れたまま上の方に
移動して、クリトリスを探し当てた。未羽の身体がびくっと大きく
震えて反応する。
﹁あふっ⋮⋮んんっ⋮⋮なるほど、酢酸しか書けないね、これじゃ
光学迷彩できないや⋮⋮あん⋮⋮﹂
﹁光学異性体な。何でそう攻殻ネタ推すの? 酢酸だけじゃなくっ
てこういうのもあるぞ﹂
384
俺は未羽のあそこを弄り続けながら、左手でシャーペンを持って
構造式を書いた。⋮⋮体勢が大変キツい。でも負けない。
﹁何これ?⋮⋮あ、はんっ⋮⋮﹂
﹁ギ酸メチル。酢酸の異性体でよく出るから覚えてた方がいいぞ。
じゃあ、次は④のC3H6O3の構造式書いて﹂
﹁あんっ⋮⋮お、お兄ちゃん、この問題解き終わるまで⋮⋮ちょ、
ちょっとストップしてくれない? はぁっ⋮⋮!﹂
﹁もうちょっとだ、頑張れ﹂
俺は未羽を励ました。まあ邪魔してるのも俺なのだが。
もとより未羽は感じやすいたちなので、クリトリスを弄りだすと
愛液が溢れてきた。
﹁あっ、はぅっ⋮⋮んん⋮⋮あはぁっ⋮⋮﹂
絶え間なく声を漏らしながらノートに元素記号を綴る未羽。何と
いう向学心だろう。
未羽があまりに真面目なので、俺はどこまで我慢できるのか試し
てみたくなった。クリトリス攻撃を一旦停止し、中指を曲げて入口
を探す。
﹁えっ⋮⋮? お、お兄ちゃん! な、中はだめぇ⋮⋮!﹂
意図を察した未羽が振り向き、焦り顔でそう言ったが、俺は構わ
ず中指を膣の中へと挿入した。滑らかな襞が、指をきゅっと締め付
ける。
﹁ふわっ! あっ⋮⋮! あぁんっ!﹂
堪らずに身体を倒し、テーブルに伏せる未羽。未羽の気持ちいい
ところを熟知している俺は、曲げた中指でそこを集中攻撃した。
﹁あんっ!⋮⋮だ、だめぇ⋮⋮あぁ⋮⋮あふぅ﹂
甘い声を漏らし、身体を震わせる。
うむ、さすがの優等生も、Gスポット攻撃には耐えられないか。
未羽の限界を見極めたと思った俺は、いったん指を抜いて、問題
が終わるまで解放してやろうと思った︱︱のだが!
﹁んっ⋮⋮はうっ!⋮⋮ぐ、ぐぐ⋮⋮﹂
385
ノートに頬をべったりとつけて喘いでいた未羽が、ぐぐっ、と頭
を起こした。
﹁ぐぐ⋮⋮うむむ⋮⋮﹂ あごをテーブルにつけたまま、震える手でシャーペンを握り、匍
匐前進みたいな姿勢で化学式の続きを書く。
こ、こいつ⋮⋮根性が体育会系だ! 帰宅部のくせに!
﹁え、えっと⋮⋮あと、酸素と水素が⋮⋮あ、ここ水酸基だ⋮⋮で
きた⋮⋮!﹂
構造式に水酸基を書き足して、未羽は力尽きたようにシャーペン
を転がした。
﹁あっ、あっ⋮⋮あふぅ⋮⋮ほ、ほら、書けたよ。答え④で、Aは
CH3CH︵OH︶COOHだよ、ああん⋮⋮﹂
﹁せ、正解だよ、未羽。お前すごいよ、二宮金次郎より偉いよ。銅
像を建てよう﹂
﹁ど、どこの小学校が、兄におまんこ弄られながら課題やってる少
女の銅像建てるのよ⋮⋮﹂
未羽が俺の手を払いのける。と、くるんと俺の方を向き、お山座
りになってフランネルパンツとショーツを一緒に脱いだ。
﹁もう、責任取って⋮⋮﹂
未羽が脚を広く。びしょ濡れのあそこが、俺の目の前に露わにな
った。ガツンと脳みそにくるいやらしさだった。
﹁あ、ああ、任せとけ。気持ち良くイカせてやるからな!﹂
俺は未羽が好きなクンニ&指入れ愛撫をしてやろうと思い、あそ
こに向かって身をかがめた︱︱のだが、未羽に頭を押さえられて、
止められた。
﹁み、未羽⋮⋮?﹂
怪訝な表情で、顔を上げる俺。未羽はぽわ∼っと赤い顔をしてい
た。
﹁⋮⋮そ、そうじゃなくって⋮⋮お兄ちゃん、アレ⋮⋮持ってるで
しょ?﹂
386
恥ずかしそうに、未羽は上目遣いでそう言った。
俺はというと、背景で花火が炸裂するくらいの喜びを感じていた。
俺はコマ落としのようなスピードで机の引き出しからコンドーム
を取り出し、電光石火の速さで装着した。
未羽の上に覆い被さる。顔がすげえ近い。もの欲しそうな眼に、
俺の胸が高鳴った。
﹁み、未羽、いいんだな⋮⋮?﹂
﹁うん⋮⋮お兄ちゃん、早くちょうだい⋮⋮﹂
未羽が俺の首に腕を絡める。頭の中で何かが破裂したような気が
した。
俺は夢中で未羽の唇を吸った。すぐに舌を伸ばし、貪るように彼
女の舌に絡める。
﹁んっ⋮⋮はぁっ、お兄ちゃん⋮⋮﹂
べろちゅーしながら、ジュニアに手を添えて狙いを定める。先端
が、熱く濡れすぼったおまんこに触れた。
﹁み、未羽、いくよ﹂
ひと息に腰を進める。充分に潤ったそこは、滑らかに俺のジュニ
アを呑み込んだ。
﹁あっ! ああん!﹂
﹁ううっ、未羽⋮⋮うわ、気持ち良すぎ⋮⋮﹂
俺の股間が堪らない快感に包まれる。急に動くと暴発しそうだっ
たので、俺はゆっくりと腰を動かした。
﹁あふっ⋮⋮ああっ⋮⋮大っきい⋮⋮お、お兄ちゃん、気持ちいい
よぉ⋮⋮あっ、あっ⋮⋮﹂
未羽が全身で答えてくれる。15歳とは思えないよがりようだっ
た。こんなに感じてくれると、男として無上の喜びを感じる。
しかし、ここでスピードアップしてしまうと、あっという間に発
射となるのは間違いない。
俺はスローペースを保って腰を動かし、未羽のキャミをたくし上
げた。
387
未羽の美乳と再び対面する。手を伸ばして触ると少し汗ばんでい
て、それがまた俺を興奮させた。
ピンク色の乳首を口に含む。未羽の身体がぴくっと反応する。
﹁んっ⋮⋮あっ、あんっ⋮⋮い、いいよぉ⋮⋮はんっ⋮⋮﹂
挿入しながらでも、乳首は乳首で感じるようだった。舌でれろれ
ろと転がすと、未羽は敏感に反応した。
﹁んっ⋮⋮はうっ、ああっ⋮⋮あっ⋮⋮? あ、あの、お兄ちゃん
⋮⋮﹂
未羽が呼んだので、俺は乳首を離して顔を上げた。腰の動きも小
休止。
﹁な、なんだい? 未羽﹂
荒い息をしながら、とろんとした眼で未羽は俺に聞いた。
﹁か、化合物Aって⋮⋮乳酸?﹂
﹁合ってるけど今それ聞くの!?﹂
俺は腰の動きを再開した。今度は遠慮なく突き上げる。
今のひとこと、畳の目を数えるより効果あったわ⋮⋮すぐイって
しまいそうだったけど、だいぶ持ち直した、助かったぜ。
﹁ああっ! あんっ、ああっ、ふうっ⋮⋮! あっ、お兄ちゃん、
すごい⋮⋮あんっ!⋮⋮﹂
激しいピストン運動に、未羽は絶え間なくあられもない声を出し
た。眉を八の字にして、苦しそうにも見える顔をしている。
ふと、あるものが視界に入った。この前未羽がのりちゃんとの水
着ファッションショーでも使った、スタンドミラーだ。
俺の頭に、良からぬ考えが浮かんだ。
﹁未羽、俺の首に、手を回して﹂
﹁あっ、あっ⋮⋮え?⋮⋮手、手を?⋮⋮こう?⋮⋮んっ、はぁん
っ!﹂
あえぎながら、未羽は従順に俺の首に両腕を回した。
﹁よし⋮⋮しっかりつかまって﹂
﹁きゃっ⋮⋮! な、なに⋮⋮?﹂
388
ジュニアを挿入したまま、俺は上体を起こした。未羽は俺の首に
腕を絡めているから、そのまま抱きつくような感じで、彼女の身体
も起き上がってくる。
﹁よっと﹂
未羽の膝の裏側に、俺は腕を差し入れた。ぐっと持ち上げると、
未羽の身体は首に回した彼女の手と俺の両腕で支えられてる状態に
なる。
﹁んしょっ!っと﹂
﹁きゃっ!⋮⋮こ、こわい!﹂
両脚を踏ん張り、俺は未羽を抱えて立ち上がった。
初めての駅弁ファックだが、すんなりと移行することができた。
これも日ごろから身体を鍛えているおかげだ。野球でつちかった筋
力を近親相姦に活用する俺だった。
﹁わっ、わっ、な、何これ!﹂
エロエロ大魔王だが耳年増ではない未羽が驚いている。俺はピス
トン運動の再開を試みた。
﹁あっ! あっ、あぁん!﹂
最初腰をそのままにして未羽の身体を上下させようとしたのだが、
未羽をダンベルにして筋力トレーニングするようなものなので、す
ぐに無理だと悟った。
逆に未羽の身体を固定して、腰をぱこぱこと動かす。うん、この
方がスムーズだ。気持ちいい。
﹁こ、こんな格好で⋮⋮あんっ!はぁっ⋮⋮!﹂
未羽が激しく声を出す。未知の体位に興奮しているようだ。
俺は未羽を抱えたまま、スタンドミラーの前へと移動した。いく
ら未羽が小柄だと言っても、こんな不自然な体勢で人ひとり抱えて
歩くのはなかなかの重労働だ。AV男優って偉いなと思った。
﹁ほ、ほら、未羽、鏡見てごらん﹂
﹁あっ、あふっ、あんっ⋮⋮え⋮⋮? な、何⋮⋮?﹂
快感で頭がぼんやりしている未羽が、促されて鏡の方を見る。あ
389
られもない格好でジュニアを突き上げられている自分の姿を見て、
眼を見開く。
﹁ひっ⋮⋮やぁん! い、いやっ⋮⋮! 恥ずかしい⋮⋮!﹂
鏡から眼をそむけ、俺の首の辺りに顔をうずめる。おお、エロエ
ロ大魔王が恥じらっている! ﹁未羽、ほら、鏡見てごらんよ。俺のちんこが出たり入ったりして
るよ、ほら、ほら﹂
﹁やあぁん! あっ、ああっ!﹂
未羽は横目でチラリと鏡を見て、また恥ずかしそうに顔を伏せた。
真っ赤な顔がものすごく萌えた。
羞恥心が快感を倍増しているようで、未羽は絶え間なくあえぎ声
を上げた。
﹁いやぁん⋮⋮! あっ、あっ! やっ、はぁっ、あぁん!﹂
恥じらいながら感じる様は、たまらなく俺のS心をあおった。く
う、可愛いぜ未羽!
しかし、駅弁ファックもそろそろ腕の力が限界だ。未羽を降ろす
ついでに、もっと恥ずかしい体位を試してみよう。
俺は腕を下げて、未羽を床に立たせた。未羽は俺の首に腕巻きつ
けたまま、荒い息をしている。
﹁はあ、はあ⋮⋮やっと降ろしてくれた⋮⋮お、お兄ちゃん、さっ
きの、恥ずかしいよ⋮⋮!﹂
﹁まだまだ、これからだよ、未羽﹂
え? と戸惑いの表情を浮かべる未羽の腕を取り、俺は首から引
き離した。肩を掴んで、立ったままくるんと半回転させる。
﹁お、お兄ちゃん?﹂
未羽が不安そうに後ろを振り向く。俺は構わずに背後から抱きつ
き、身体を密着させた。鏡には未羽の全裸が映っている。
﹁未羽、いくよ﹂
﹁え?⋮⋮ちょ、お、お兄ちゃん! や、やだ⋮⋮!﹂
立ったまま、俺はバックから未羽の中へ挿入した。体位のためか、
390
いつもよりキツく感じた。
﹁ふわぁっ! あっ、やぁっ! こ、こんな⋮⋮立ったままなんて
⋮⋮あっ! やぁん!﹂
﹁ほら未羽、見て。入ってること、よく見えるよ﹂
前屈みになろうとする未羽の身体をぐっと抱き寄せ、できるだけ
まっすぐに立たせる。
つるつるの未羽のおまんこを、俺のジュニアがじゅぽじゅぽと出
たり入ったりしているのが、はっきりと見えた。
﹁い、いやぁっ! だ、だめっ⋮⋮こんなの⋮⋮あっ、あんっ!﹂
鏡には未羽の頭のてっぺんからつま先までが映っている。そう言
えばセックス中の未羽の全身をこうして眺めるのって初めてだ。
未羽の身体は真っ白で華奢で、羽のない天使のようだ。
それが日焼けしたガタイのいい男︵俺︶に背後から抱きつかれ、
いきり立ったいちもつにおまんこを貫かれている。
﹁はあぁっ、あっ、あぅんっ!﹂
俺のピストン運動に合わせて、長い髪が波のように揺れる。発展
途上のおっぱいも、ぷっ○んプリンのように揺れた。
どう見てもレイプされているようにしか見えない、扇情的な眺め
だった。
﹁はうっ!⋮⋮あ、はぁっ!⋮⋮も、もう、イっちゃいそう⋮⋮こ、
こんな⋮⋮やぁん﹂
おお、未羽が早くも絶頂を迎えようとしている。異常なシチュエ
ーションで感度が上昇しているのだろう。
﹁ううっ、未羽⋮⋮お、お兄ちゃんもイっちゃいそうだ。ペースア
ップするぞ﹂
俺はさらにピストン運動を加速した。鏡の中の未羽のおまんこを、
俺のジュニアがいやらしい音を立てて出入りする。
﹁あぁんっ! あっ、ああ! お、お兄ちゃぁん!﹂
未羽が甲高い声を上げ、激しく身を捩る。俺はギュッとその身体
を抱きしめて逃げられないようにし、腰を振り続けた。
391
﹁あっ⋮⋮も、もうイク⋮⋮はぁっ、ああっ!⋮⋮は、初めて、立
ったままなんて⋮⋮あ、初めてじゃないか?⋮⋮﹂
﹁経験あるのかよ!? 香菜ちゃんとどんなプレイしてんだ!?﹂
立ったままクンニでもしてもらったのだろうか。相変わらず性技
にかけては兄の遥か先を行く妹である。
﹁あふっ⋮⋮あっ、あっ、もうだめ⋮⋮イ、イクっ⋮⋮ああん⋮⋮﹂
未羽の身体に変な風に力が入り、身体が強ばってきている。細か
な震えが、触れた肌をとおして伝わる。絶頂が近づいているサイン
だ。
鏡を見ると、未羽は髪を振り乱し顔を真っ赤に染めて喘いでいた。
華奢な白い裸体が、俺の運動に合わせ跳ねるように揺れる。
天使のように愛らしい美少女が、鏡の中で屈強な男に犯されてい
る。その犯しているのは俺なのだ。俺は世界中の男共が羨むような
征服感を味わっていた。
﹁あっ、あっ⋮⋮くる、くる⋮⋮﹂
俺ももう限界だった。頭を真っ白にして、腰の振りマックスで突
き上げる。
﹁あっ、あっ、はぁ!⋮⋮イクっ!⋮⋮あっ、はああああぁぁぁぁ
ぁん!!!!﹂
膝をガクガクと震わせ、大声を上げて未羽はイった。密着した肌
をとおして、彼女の身体を快感のビッグウェーブが通り抜けていく
のが伝わる。
膝をついてへたり込もうとする彼女を抱きとめながら、俺はどく
どくと盛大に射精した。射精は長く続いた。まるで搾乳機で精液を
吸われているようだった。
﹁ふわ⋮⋮あぁ、はうぅ⋮⋮﹂
絶頂の波が過ぎ去ると、未羽は糸の切れた操り人形のように弛緩
した。俺も支えていられなくなり、床の上にそっと彼女の身体を横
たえた。
﹁はぁ、はぁ、はぁ⋮⋮﹂
392
床に横になり、火照った顔で荒い息をする未羽。俺が強く抱きし
めていたため、白い裸体のあちこちが桃色に染まっていた。すぐに
でも第2ラウンドに行けそうなほどエロい絵だった。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮ああ、気持ち良かった⋮⋮うう⋮⋮でも、またや
っちゃった⋮⋮近親相姦しないって決めたのに⋮⋮﹂
横になったままアヒル口をして反省する未羽。こういう顔も可愛
い。
﹁まあいいじゃないか、たまには。スキンシップだよ。お兄ちゃん、
すっごく気持ち良かったよ﹂
﹁あたしも気持ち良かったけど⋮⋮スキンシップで立位セックスす
る兄妹いないよ﹂
﹁お前の天使のように美しい身体を、何もせず放っておくなんても
ったいないよ。それこそ宝の鳩サブレだ﹂
﹁伏線だったんだ鳩サブレ!? ま、まさかオチで出てくるなんて
⋮⋮﹂
驚愕の表情を浮かべる未羽。俺は胸を反らし勝ち誇った。
とまあ、オチもついたところで俺たちは服を着て、テーブルの上
のノートや筆記用具を片付けた。
﹁じゃあ、お兄ちゃん、勉強教えてくれてありがと。あたし部屋に
戻るね﹂
ノートと筆箱を抱いて立ち上がる未羽はどう見ても清純な美少女
で、とても今しがた兄と近親相姦して立位でイったようには見えな
かった。
﹁ああ、おつかれさま。また分かんないとこあったらいつでもおい
で﹂
﹁エッチは無しだよ。勉強教えてもらうたびにセックスじゃ、普通
のカップルよりただれてるよ﹂
おっぱい触るくらいにしとく、と俺は答えた。
393
未羽は部屋を出ていこうとして︱︱ドアのところで足を止めた。
90度だけ身体をこっちに向けて、探るような視線を、俺に向け
る。
﹁⋮⋮何だよ?﹂
未羽は俺の顔をじっと見ている。
﹁⋮⋮お兄ちゃんさ、香奈ちゃんのこと、どうするの?﹂
平坦な声で未羽は聞いた。俺は⋮⋮動揺を顔に出さないようにし
た。
﹁⋮⋮どうするって⋮⋮何を?﹂
はぐらかすような俺の返事に、未羽はちょっとだけ口をへの字に
した。
﹁なんていうのかな⋮⋮らしくないな、って思ったの﹂
そう言ってまた黙る。しばらくの間、無言の時間が流れた。
﹁⋮⋮お前は、どう思ってるんだよ⋮⋮﹂
俺の質問に、未羽は微かに眉間にしわを寄せた。
﹁いや、悪りい。お前に聞くことじゃないよな⋮⋮﹂
がりがりと頭を掻く俺。未羽は何か言いたそうな顔をして︱︱で
も、何も言わなかった。
﹁⋮⋮部屋、戻んな⋮⋮もう遅いし﹂
うん、と言って未羽は部屋を出て、そっとドアを閉めた。急に室
内が静かになる。去り際に見せた、未羽の悲しげな表情が、俺の胸
を刺す。
﹁⋮⋮あーあ﹂
情けない声を出して、俺はごろんと床に寝そべった。大の字に手
足を広げる。
﹁⋮⋮カッコ悪いな、俺⋮⋮﹂
見上げた先には白い天井と鈍く輝く蛍光灯があるばかりで、俺が
求めているものは何もなかった。
何をするのも、何もしないのも、全ては俺の中にあるのだ。
居心地の良い場所に居続けることは、大概良くない結果を招く。
394
ぬくぬくとしている間にも時は過ぎ、世の中は動いているのだ。
居心地の良い場所が、永久に変わらずある訳もなく︱︱。
﹁いつまでもこのまま⋮⋮ってわけにはいかないよな⋮⋮﹂
俺の独り言は部屋の空気に溶けて消えた。俺は固い床の上に寝そ
べったまま、いつまでも考えに沈んでいた。
395
︻後日談13︼プレシャス デイズ その①
夏の週末。俺と未羽、香奈ちゃんとのりちゃんは、四人で海に来
ていた。
未羽とのりちゃんが水着を買いに行った話は以前にしたと思う。
香奈ちゃんも一緒に女の子三人で海に行く予定だったのだ。
そこになぜ俺が加わっているのかというと、親父の差し金である。
美少女三人で海に行って、チャラい男共にナンパされることを心配
してのことだ。
気持ちは分からないでもない。未羽は天使のように可愛いし、香
奈ちゃんも美少女でかつ巨乳だ。
のりちゃんはというと、未羽と香奈ちゃんのおしゃれレッスンに
よって、最近めきめき可愛くなってきている。その上今回の海行き
のため、思い切ってコンタクトを購入した。
太いプラスチックフレームのメガネを外すと、現れたのは愛され
系の美少女だった。初対面のときの地味な印象は、今は微塵もない。
こんな可愛い子が三人揃って歩いていれば、ナンパされないわけ
がないし、夏の海の開放感で、何があるかしれたものじゃない。
仲良しの女子グループに混ざって行くのは気が引けたが、親父が
俺が同行しないなら海行きを許可しないと未羽に断言したので、つ
いていくことになったのだ。まあ、俺もぶっちゃけ心配だったし、
英断だと思う。
未羽とのりちゃんは、俺の同行を快く受け入れてくれた。
香奈ちゃんはというと⋮⋮﹁未羽のお父さんは何も知らないから
罪はないですけど⋮⋮これでナンパされるより危険度が増しました
ね﹂と、俺をジト眼で睨みつつ失礼なことを言っていた。
396
ともあれ、そういう事情で俺たちは海に来て、レジャーを楽しん
でいた。
天気は快晴だ。芋を洗うというほどではないが、ビーチは海水浴
客で賑わっている。
お目付役なのであんまりはしゃいでもいられない俺は、一泳ぎし
たあと、持参した日除けの簡易テントの中でくつろいでいた。四角
錐がぷくーっと膨れたような形のやつだ。
未羽は波打ち際の砂場で、のりちゃんを砂に埋めて遊んでいる。
お約束でおっぱいの山を作ったりして、二人とも楽しそうだ。
香奈ちゃんは泳ぎが上手く、ゆったりと沖の方まで泳いでいたの
だが、泳ぎ疲れたのか先ほど陸に上がってきた。今は俺がいるテン
トに歩いてくるところだ。
水着は白のビキニである。香奈ちゃんはあまりセクシーでないの
を選びたかったそうだが、未羽が﹁白のビキニだよ、香奈ちゃんに
はそれしかないよ﹂と力説し、根負けして買ったのだそうだ。
身体から水をしたたらせながら、香奈ちゃんがこちらへ歩いてく
る。二つの豊かな膨らみが、歩みに合わせて揺れている。
水着、すごい似合ってるなあ⋮⋮。
未羽も単に露出が多いというだけで選んではいないようだ。下手
に隠そうとするよりも、思い切りよく巨乳を晒した方が健康的で清
々しい。白っていうのも、明るくて清潔感がある。
しかし、清々しいのは清々しいのだが、でかいものはでかいし、
エロいものはエロい。
たぷんたぷんと揺れるおっぱいには、どうしても眼が惹きつけら
れてしまう。男女を問わず、﹁ほお⋮⋮﹂と溜息が出る乳だ。
それに、見事な巨乳もさることながら、香奈ちゃんはスタイルが
いい。ウエストは見事にくびれているし、足もスラーッと引き締ま
っている。
おまけに色白で、クールな表情の美少女である。どこにも非の打
ちどころがない。砂浜を歩けば誰もが振り返る。
397
この完璧少女が、こと性に関してはドMの本性を秘めているなど、
ビーチにいる誰もが思いもよらないだろう。
﹁ふう⋮⋮ちょっと泳ぎ疲れました﹂
香奈ちゃんは俺の隣に腰を下ろした。1.5メートル角の小さな
テントだから、肘がおっぱいに当たりそうな距離である。
胸の谷間や白く滑らかな腹部を横目で眺め、俺は気付かれないよ
うに生唾を呑んだ。
ナンパされるよりも俺の方が危険だって言ってたくせに⋮⋮警戒
心あるんだかないんだか。
俺はクーラーボックスからよく冷えたスポーツドリンクを取って、
タオルと一緒に差し出した。香奈ちゃんが礼を言って受け取る。
彼女は軽く髪を拭いてから、タオルを首に掛け、ペットボトルの
蓋を開けた。
飲み口を咥えてコクコクと飲む横顔が艶めかしくて、じーっと眺
めてたら横目で睨まれた。
香奈ちゃんはボトルを離して、ぷは、と息を継ぐと、﹁視姦しな
いでください﹂と言った。
﹁濡れ衣だ﹂
﹁わたしがフェラチオするところを想像していたでしょう。IQひ
と桁のお兄さんの考えなど、お見通しです﹂
﹁色っぽいなあとは思ったけど、そこまでは想像してない。人を何
だと思ってるんだ?﹂
﹁レイプ犯で近親相姦者だと思ってますよ。あ、近親相姦と言えば
ですね﹂
﹁すごいとこから話つなげるねっ!﹂
﹁お兄さんが好きそうな話があるんですけど⋮⋮というか、近親相
姦真っ盛りなお兄さんに相談したいことが﹂
﹁⋮⋮聞こうじゃないか﹂
いろいろ突っ込みたいとこがあったけどスルーした。
﹁わたしに弟がいるのはご存じでしょう?﹂
398
﹁ユウ君な、知ってるよ﹂
﹁漢字だと優です。その⋮⋮優にですね、裸を見られてしまって﹂
そう言って香奈ちゃんは、微かに頬を赤くした。
﹁へえ、優君中二だったよね? どういう状況で?﹂
断っておくが中二病ではない。普通の中学二年生だ。姉弟仲は良
いと聞いている。
香奈ちゃんの弟だけあって美形なのだが、キリッとした香奈ちゃ
んとは反対に、線の細い女の子のような少年である。女装させたら
さぞ似合うことだろう。
本人は女っぽいと思われるのが嫌なので、意識して男言葉を使っ
ている。香奈ちゃんに言わせると、そういうところも含めて可愛い
のだそうだ。
﹁お風呂上がりだったんですけど、わたしいつも、お風呂の鍵は閉
めて脱衣所の鍵は開けておくんですよ。
ほら、わたしがお風呂入っている間にも、誰かが洗面台を使うかも
しれないじゃないですか? その誰かのために、脱衣所の鍵は常に
開けておくべきだと思うんです。
当然お風呂上がりに鉢合わせするリスクが発生するわけですが、
それはお風呂から出たらすぐに脱衣所の鍵を閉めさえすれば、リス
クは数秒間に限られるわけです。その程度のリスクは許容した方が
日常生活が円滑に進むじゃないですか。
でもその日はお風呂上がってから脱衣所のドアの鍵を閉めるのを忘
れてしまって﹂
﹁うん、分かった。脱衣所の鍵を閉め忘れたんだね? 続きを話し
てくれ﹂
ドMの香奈ちゃんのことだから、きっと優君に裸を見られるハプ
ニングを期待して、脱衣所の鍵を開けっ放しにしているのだろう。
弁明を遮られた彼女は不服そうに口を曲げたが、すぐに続きを話
し始めた。
﹁ちょうど髪を拭いていたところで、わたし両手を上げてたんです
399
ね。そこへ優がガチャッと。真っ正面からもろに全裸を見られたん
です。
優は眼をまん丸くして、ほんの一、二秒のことではあったんですけ
ど、視線が上から下へ移動するのは分かりました。
それから優はハッとして、勢いよく戸を閉めて、バタバタと遠ざか
っていく足音が聞こえました﹂
香奈ちゃんは小さく溜息をついた。恍惚と罪悪感が混ざったよう
な溜息だった。絶対喜んでるよな、この子⋮⋮。
﹁一応確認しとくけど、おっぱいだけじゃなくて⋮⋮下も、見られ
たの?﹂
ダイナマイトおっぱいだけでも中学生には刺激が強すぎるが、香
奈ちゃんパイパンだからあそこもモロ見えのはずだ。
﹁それはもう⋮⋮こんなポーズでしたから﹂
香奈ちゃんは首にかけたタオルを取って、髪を拭くポーズを取っ
た。
﹁うーん、モロだね。香奈ちゃんのつるつる割れめちゃん、完全に
見られてるね﹂
﹁つるつるとか言わないでください⋮⋮見られたものはしょうがあ
りませんから、わたし身体拭いて服着てリビングに行ったんですよ。
そこには優いなくて、部屋かなと思って二階に上がったんです。ド
アの前に立ったら、中にいるような気配があったんですけど⋮⋮わ
たしの裸見てすぐに自室にこもるってのは、ひょっとして⋮⋮って
思って。
それで、ドアにそっと耳を当てたんですね。そしたら、﹃はぁっ⋮
⋮はぁっ⋮⋮﹄って、息づかいが聞こえるんですよ。
わあ、お姉ちゃんの裸で、オナニーしてるんだ⋮⋮って、ドキドキ
しました。何なのでしょうね、ああいうときの、ちょっと誇らしい
気持ちって﹂
﹁分かってはいたけどだいぶ倒錯してるね、香奈ちゃん﹂
香奈ちゃんは顔を赤らめてうっとりした顔をしていた。
400
弟におかずにされて喜ぶなよ⋮⋮どんだけ変態なんだ?
﹁それで、邪魔したら悪いので、わたしはリビングに下りたんです。
ソファに座っていると、しばらくして優も下りてきました。
優はあたしに眼を合わさず、向かいに座りました。気まずそうして
ましたけど、すぐに﹃姉ちゃん、ごめん⋮⋮これからは必ずノック
するから﹄って謝ってきました。
本当にすまなそうな顔してたので、わたしが、﹃怒ってないよ、鍵
閉め忘れたわたしが悪いんだから﹄って言ってあげると、ホッとし
てました。
それでもまだ居心地悪そうにしてるので、わたし、気にしてないっ
てこと示すために、﹃お姉ちゃん、おっぱい大きいでしょ?﹄って
聞いたんです﹂
﹁姉弟できわどい会話するね⋮⋮俺が言えた義理じゃないけど﹂
﹁優はびっくりしたようでしたけど、顔を赤くして﹃⋮⋮うん、で
かいとは思ってたけど、ほんとにでかかった⋮⋮﹄って恥ずかしそ
うに言うんですよ。可愛かったです。わたし、ショタに目覚めそう
になりました﹂
﹁目覚めないでくれ、ただでさえキャラ盛り過ぎなんだから﹂
﹁そうしたらですね、優ったら、﹃⋮⋮姉ちゃん、バスト何センチ
なの?﹄って聞くんですよ。
調子に乗ってるなと思ったんですけど、これも性教育かなと思って、
﹃あのね、バストは体格によるから、カップで聞いた方がいいんだ
よ﹄って言ったんです。
すると、﹃じゃあ、何カップなの?﹄って聞くので、﹃Fだよ﹄っ
て答えたら、﹃へー﹄って。やっぱり男の子ですね、興味津々なん
ですよ﹂
﹁そりゃ、健全な男子中学生だもんな。姉とはいえ、女の子と性の
話するのは興奮するだろ。⋮⋮ところで香奈ちゃん、君、EとFの
間じゃなかったっけ⋮⋮?﹂
﹁よく覚えてますね⋮⋮まだ成長してるんです。優の話はこれで終
401
わりで、特にオチもないんですけど⋮⋮それで、近親相姦に詳しい
お兄さんに相談したいんですけど、わたし、姉としてちょっとおっ
ぱい触らせてあげるとか、何かサービスしてあげた方がよかったで
しょうか?﹂
﹁何を言い出すの香奈ちゃん!?﹂
とんでもないことをのたまう香奈ちゃんに、俺は勢いよく突っ込
んだ。
香奈ちゃんはレントゲン写真を眺める医者のような、難しい顔を
していた。
﹁せっかくわたしの裸をおかずにオナニーしてくれていることです
し、姉弟の親睦を深めるためにも、Tシャツの上からおっぱいを触
らせてあげるくらいしてあげてもよかったかなと。そのくらい、ス
キンシップに入りませんか?﹂
﹁のりちゃんに触らせるのとは訳が違うよ!⋮⋮あのさ、優君って、
なよっとしてるからそう見えないかもしれないけど、中学生男子っ
てさかりのついた猫と一緒だから﹂
﹁お兄さん、自分を基準に考えているでしょう?﹂
﹁香奈ちゃん俺のこと変態変態って言うけど、俺人並みだから。た
だ、性欲が妹にも向いているだけだ⋮⋮﹂
変態以外の何者でもない気がする。
﹁そうですか、優がねえ⋮⋮それじゃあ、どの当たりで線を引けば
いいですか? 目の前で着替えるとか、ノーブラにキャミですごす
とか、ブラの上からおっぱい触らせるとかはアリですか?﹂
﹁そんなこと考えてたのか⋮⋮兄弟に下着見られても平気って女子
は多いだろうから、着替えは下着まではオーケーだろう。ノーブラ
は、風呂上がりとかはいいけど、長時間はNG。おっぱい触らせる
のは⋮⋮ブラの上からでもNG﹂
﹁⋮⋮厳しいんですね、それじゃ今までと変わりません﹂
﹁目の前で着替えてたんだ!? 香奈ちゃん、以前から優君のおか
ずになってたと思うよ⋮⋮﹂
402
﹁おかずにはしてるでしょうけど、優ならもうちょっとサービスし
てあげたって近親相姦にはならないですよ。お兄さんじゃあるまい
し﹂
*** 長いのでここでいったん区切りますよ∼ ***
403
︻後日談13︼プレシャス デイズ その②
ドMの香奈ちゃんは、そう言いながらバッグから日焼け止めのク
リームを取り出した。
﹁塗ってなかったのかよ? せっかくの白い肌を⋮⋮﹂
﹁泳いだから塗り直すんです。わたし、焼けると真っ赤になってし
まうので﹂
蓋を開け、腕に、つー、と長く日焼け止めを垂らし、手のひらで
塗り広げる。
﹁背中塗っ
﹁結構です﹂
光速で断られた。
﹁変なことしないから。背中は自分じゃ塗りづらいだろ?﹂
﹁どうせ﹃手が滑った﹄とか言って胸を触るつもりでしょう? 人
に忠告するくせに現在進行形で近親相姦中な理性皆無の犬畜生の考
えなど、お見通しです﹂
よくこんなスラスラと悪態が出てくるもんだよ⋮⋮でも香奈ちゃ
んに罵られると、何だか背中がぞくぞくする。
﹁あのさ香奈ちゃん、日焼け止め、おっぱいの下にも塗らなきゃな
らないだろ? そのためにはその豊かなおっぱいを持ち上げなくち
ゃならない。女性には骨の折れる作業だろう。そんな力仕事は男に
任せて﹂
﹁漬け物石じゃあるまいしそこまで重くないですよ! わたしこれ
身に付けて生活してるんですよ!﹂
ぷりぷり怒る香奈ちゃん。だが、俺のボランティア精神はこんな
ことではくじけなかった。
﹁遠慮しないで。さあ、日焼け止めをこっちへ﹂
404
﹁いいって言って⋮⋮きゃあっ!﹂
俺が水着の肩ひもを引っ張ってほどいたので、香奈ちゃんは叫び
声を上げた。
言い忘れたが香奈ちゃんの水着は肩と背中がひもになってて、下
は腰の方がひもになっている。⋮⋮この水着って、脱がしイベント
のフラグ立ててるようなもんじゃね?
﹁そんな大声上げないでくれ。変質者と思われるじゃないか﹂
﹁へ、変質者そのものじゃないですか! きゃあっ!﹂
胸を押さえて前屈みになっている間に、背中のひもをほどいた。
香奈ちゃんはよけい動けなくなったので、俺は悠々と残った片方の
肩ひももほどいた。
﹁も、もうっ! やめてくださいっ! 変態! 犬っ!﹂
香奈ちゃんに罵られ、俺はますます興奮した。
﹁警戒するなって、日焼け止め塗るだけなんだから。人に見られな
いように、メッシュ閉じるよ﹂
俺は香奈ちゃんをテントの中に入らせて、虫除けのメッシュを閉
じ、ファスナーを閉めた。
﹁メ、メッシュ閉じても丸見えじゃないですか!﹂
網戸のような薄いメッシュなので、外の景色は丸見えだった。通
行人が行き来するのが手に取るように分かる。
﹁大丈夫だって。外は明るいから見えるんだよ。中は暗いだろ? 明るいところから暗いとこは、透けて見えないよ﹂
﹁ほ、本当ですか⋮⋮?﹂
はだけた水着を腕で押さえ、訝しげな視線を外に向ける。乳首は
見えないが、押しつぶされた乳房がひどく扇情的だった。
﹁本当だって。ほら、誰もこっちを見てないだろ?﹂
そう言って俺は香奈ちゃんの水着を引っぱり、腕と胸の間から抜
き取った。
﹁きゃっ! も、もうっ!﹂
胸の前で腕を組んでおっぱいを隠す。元々彼女の水着は体表面の
405
10%しか覆っていなかったが、これで5%になった。白い肌が艶
めかしい。
﹁ほら、通行人見てごらんよ﹂
﹁ぐぬぬ⋮⋮﹂
香奈ちゃんは赤い顔をしてうなり声を上げたが、俺の言ったとお
り行きすぎる人たちは俺たちのテントに注意を払うことはなかった。
ぶっちゃけ確かめたわけじゃないから、中が見えないかどうかは
自信がなかったのだが、どうやら大丈夫そうだ。
俺は日焼け止めの容器を取り、白い液を手のひらに出した。
﹁んじゃ、塗るよ?﹂
﹁⋮⋮はなはだ不本意なのですが、塗らないかぎり解放してくれな
さそうですね⋮⋮どうぞ﹂
といって香奈ちゃんは、胸を隠しながら背を俺に向けた。
⋮⋮きれいな背中だなあ。肌が陶器のように滑らかで、肩甲骨と
背骨のラインが何とも言えず色っぽい。
たっぶりと日焼け止めを塗った手のひらをぺたりと背中につける
と、香奈ちゃんはビクッとした。
﹁まだ警戒してるのかよ? いいかげん信用しろって﹂
﹁こ、こんな無防備な格好で背中を触られたら、誰でもビクッとし
ますよ﹂
日焼け止めを塗り広げる。見た目どおりすべすべの肌だ。全く、
どこをとっても完璧だな。
香奈ちゃんは身体をテントの外の方向へ向けているので、ひどく
外を気にしていた。
頬を赤くしてきょろきょろと目を配っては、こちらに視線を向け
る通行人がいないか探している。
﹁気にしすぎだって。見えないから﹂
﹁だ、だって⋮⋮﹂
﹁心配性だなあ。じゃあ、試してみようか?﹂
﹁え? 試すって⋮⋮きゃあっ!﹂
406
俺は、香奈ちゃんが胸の前で組んでいる腕を引っ張った。背後に
いるので見えないが、腕から解放されたおっぱいが盛大にぷるんと
揺れたことだろう。俺は彼女が胸を隠せないように、腕を後ろに回
して押さえつけた。
﹁やっ⋮⋮だ、だめぇ! 見えちゃう⋮⋮!﹂
実際、香奈ちゃんの悲鳴に気づいたらしい男女の二人連れが、こ
ちらのテントを眺めていた。
﹁あっ⋮⋮ほ、ほら⋮⋮! 見てる、見てますよぉ⋮⋮!﹂
﹁大丈夫、声が聞こえただけだって﹂
正直、やっぱり中が見えているんじゃないかと思ってヒヤヒヤし
たのだが、二人連れは近づいてくることもなく歩き去った。
すごいスリルだ。これ、ただのメッシュだから、完全に中が見え
ないってことはないだろう。うっすらと人影くらいは見えるに違い
ない。さっきの二人連れは、カップルがじゃれているとでも思って
立ち去ったのかもしれない。
﹁もう、いやぁ⋮⋮恥ずかしい⋮⋮!﹂
腕を掴まれたまま、香奈ちゃんは胸を揺らして身をよじった。
それにしても、香奈ちゃん空手黒帯なんだから、後ろ手に手を掴
まれようが、肘打ちを食わすなりいくらでも反撃のしようはあると
思うのだが⋮⋮。
しかし、彼女は決してそんなことはせず、か弱い女の子を演じて
いる。つくづくドMだなあと思う。
﹁中は見えないって分かったでしょ? じゃあ、日焼け止めの続き
を⋮⋮あれ? もうなくなっちゃった﹂
俺は容器を逆さにして振って見せた。
﹁買ったばかりですよ? そんなすぐなくなるはずは⋮⋮﹂
﹁俺も持って来てるから、ちょっと待ってて﹂
俺は自分のバッグの中をあさった。香奈ちゃんは怪訝そうに俺を
見ていたが、やはり人目が気になるのか、前を向いて外をきょろき
ょろと眺めはじめた。
407
﹁⋮⋮⋮⋮わひゃあっっ!!﹂
香奈ちゃんが大きな悲鳴を上げた。
なぜかというと、俺がローションを塗った手を彼女の胸と腕の間
に滑り込ませ、おっぱいを揉んだからである。
久し振りに触った香奈ちゃんのおっぱいは、相変わらずメロンの
ように大きく、絹ごし豆腐のように柔らかかった。
﹁なななな、何をするんですかっ!!﹂
わめく彼女に構わず、俺はおっぱいを揉んだ。とろとろのローシ
ョンにまみれたおっぱいは、手触りが最高に心地良かった。
﹁何って日焼け止めを塗ってるんだよ、これUVカット入りのロー
ションだから﹂
﹁嘘つけっ!︱︱って、そもそもおっぱいは自分で塗れます!⋮⋮
んっ、あぁっ﹂
艶っぽい声が漏れる。露出プレイで既に興奮していたのか、香奈
ちゃんは早くも感じはじめていた。俺の手を振り払おうとするのだ
が、形だけでぜんぜん力が入っていない。
俺は遠慮なく彼女の巨乳を揉みしだいた。香奈ちゃんの豊かな膨
らみは、俺の手に合わせて水風船のように形を変えた。
﹁ああ、香奈ちゃんのおっぱいはやっぱり最高だ。君のおっぱいは、
戦争を止める力があるよ⋮⋮﹂
﹁マクロスですかっ!⋮⋮あっ、あぁん⋮⋮だ、だめぇ、見てるっ
てばぁ⋮⋮﹂
テントの前を行き過ぎる人たちが、ときおりこちらに視線を向け
ていく。
声に反応しているだけなんだろうけど、こちらからは行きすぎる
人の表情まで見えるので、ドキドキする。マジックミラー号状態だ。
乳房をたっぷりと揉みしだいたので、俺は乳首攻撃に移った。ロ
ーションでぬめる手のひらで、円を描くように乳首を愛撫すると、
香奈ちゃんは身体を震わせた。
﹁あっ、やぁん⋮⋮! あっ、あっ⋮⋮いやっ、そんなふうにする
408
と⋮⋮あぁん!﹂
手のひらに感じる乳首が、はっきりと固くなっていた。香奈ちゃ
んはもう手で胸を隠すこともできなくなって、背を反らしおっぱい
丸出しであえいでいる。
視線はずっとテントの外に注いでいる。行き過ぎる人達が顔をこ
ちらに向けるたび、彼女は恥ずかしそうに首を振りながら、よけい
に感じてしまうのだった。
さすがドM香奈ちゃん、見られると一層乱れるなあ。それなら、
この布きれも邪魔だな⋮⋮。
そう判断した俺は、水着の腰のひもを、シュッと引っ張った。そ
れは、はらりと容易にほどけた。
反対側も同じようにほどくと、やっと香奈ちゃんが脱がされてい
ることに気付いた。
﹁え⋮⋮? やっ⋮⋮きゃあっ! お、お兄さん! し、下はだめ
ぇ!﹂
慌てて下の水着を押さえようとするが、俺は水着を引っ張って股
から抜き取った。チラッとパイパンのおまんこが見えた。
香奈ちゃん、レジャー客で賑わう海で、全裸です!!
﹁お、お兄さん、返してぇ⋮⋮!﹂
斜め座りになって片手で胸を隠し、もう一方の手を伸ばして、水
着を返してと懇願する。
ローションにまみれたおっぱいがいやらしい。眉を八の字にした
困り顔は、俺のS性を激しく刺激した。
﹁すごいよ香奈ちゃん、なんてエロいんだ⋮⋮こんなに人が多い中
で全裸なんて、露出狂じゃないか﹂
﹁狂ってるのはお兄さんですよっ! も、もう、返してください!
未羽とのりちゃんがテントに戻ってきたら⋮⋮﹂
心配そうに波打ち際に眼をやるが、未羽は相変わらずのりちゃん
409
を砂に埋めて遊ぶことに没頭していた。何やら砂で人魚の形でも作
っているようだった。
﹁うーん、返してあげてもいいけど、香奈ちゃんばっかり気持ち良
くなって不公平だな。俺も気持ち良くしてくれないか?﹂
﹁なに都合のいいこと言ってんですかっ! お、お願いだから、返
してください⋮⋮﹂
外を気にしながら、弱々しい声で頼み込む。空手黒帯のはずなの
にとてもか弱く見えて、それがますます俺のS性を刺激した。
﹁分かった、パイずりで俺をイカせてくれたら返してあげよう﹂
﹁な、何でわたしがそんなことしなくちゃいけないんですかっ!﹂
声を荒げる香奈ちゃんに構わず、俺は自分の水着を脱ぎ、足を彼
女に向けて寝転んだ。いきり立ったジュニアが、ポールコーンみた
いにぶるんと揺れる。
﹁パイずりしてくれないと返さないよ? ほら、早くしないと、未
羽とのりちゃんが戻ってくるかもよ?﹂
水着を持ったまま、俺は手を枕にして香奈ちゃんを見つめている。
彼女は悔しそうな顔をして唸った。
﹁ぐ、ぐぬぬ⋮⋮なんて卑怯な⋮⋮言うことを聞かない限り、どう
あっても返してはくれないつもりですね⋮⋮﹂
自分でシチュエーション作っちゃったよ、この人⋮⋮。
あのさ、このシチュ、俺がすごい悪者に見えるけど、香奈ちゃん
空手の達人だよ?
俺寝っ転がってるんだから、彼女が飛び乗ったらマウントポジシ
ョンだよ。俺ボコられ放題だよ?
なのにそうしないってのは、結局これは香奈ちゃんが望んだ状況
ってわけ。天性のM女だ。
香奈ちゃんは膝立ちで俺にすり寄り、開いた脚の間にひざまずい
た。
﹁く⋮⋮こんな気持ちの悪い物を⋮⋮何で私が⋮⋮﹂
間近で俺のジュニアを見つめ、はふぅ、と艶っぽい溜息をつく。
410
気持ち悪いなんて言いながら、頬が赤く染まって、明らかに欲情
した顔をしている。逆に俺がレイプされるような気になってくるよ
⋮⋮。
香奈ちゃんが前屈みになった。期待で俺のジュニアがさらに硬度
を増した。
﹁そういえば、以前にパイずりしたことありましたね⋮⋮ずいぶん
久しぶりです。えっと、こうですか⋮⋮?﹂
両手で胸を押さえ、豊かな膨らみで俺のジュニアを包み込む。
柔らかくて温かくて、溜まらず俺は﹁うおお⋮⋮﹂とうめき声を
上げた。
﹁は、挟んだだけで声出さないでください⋮⋮いきますよ﹂
香奈ちゃんがゆっくりと身体を上下させる。ローションでとろと
ろのおっぱいは、本当に挿入しているかのような感触だった。
﹁おおお⋮⋮うわぁ、すっげえ気持ちいい⋮⋮か、香奈ちゃん、最
高﹂
﹁き、気持ちいいんですか? わたしは結構大変なんですけど⋮⋮﹂
香奈ちゃんは最初不器用に身体全体を上下させ、はぁはぁ言って
いたが、すぐにコツをつかんだ。上半身の動きを最小限にして、お
っぱいを主に動かすように工夫する。
動きが楽になり、パイずりのスピードが増した。俺のジュニアに
ずぎゅんずぎゅんと快感が送り込まれる。
﹁ぬおお⋮⋮か、香奈ちゃん、上手すぎる⋮⋮﹂
﹁⋮⋮コツが分かってきました⋮⋮早くイってください⋮⋮﹂
口ではツンなことを言いながら、香奈ちゃんは頬を赤く染めて、
俺のジュニアを一生懸命に擦っていた。
こんな美少女にパイずりしてもらえるだけでも幸せなのだが、俺
の変態脳はさらなる快感を求めた。
﹁か、香奈ちゃん、パイずりしながら、フェラできない⋮⋮?﹂
え? と言って香奈ちゃんが俺を見上げた。パイずりは続けたま
まだ。
411
﹁そ、そんなことできるんですか⋮⋮?﹂
﹁たぶんできると思う⋮⋮試してみてくれる?﹂
AVだったかエロ本だったかで確かに見たことはある、と思うの
だが⋮⋮アレってFカップくらいでもできるのだろうか?
﹁ちょっと待ってください、何で私がお兄さんのをしゃぶらなくち
ゃならないんですか﹂
俺を睨みつけて香奈ちゃんは言った。
﹁何でと言われると、それは俺が香奈ちゃんにフェラして欲しいか
らで、しかもパイずりとセットなんてそれはもう桃源郷のように気
持ちいいに決まっているわけで、全ては俺の欲望のありのままだ﹂
﹁要するにお兄さんには正当な理由とか権利とか何もないわけです
ね?﹂
ジト眼で俺を睨む。正論だが、拒まれるとよけいにフェラしても
らいたくなる。
俺は寝そべったまま手を頭の上にあげ、メッシュのファスナーを
探した。
香奈ちゃんは何をしているんだという眼で見ていた。俺は手探り
でそれを探し当てると、無言でファスナーをジーッと引き上げた。
外の直射日光が三角形になって差し込む。
﹁きゃあああっ! 何をするんですかっ!﹂
30センチも引き上げないうちに、香奈ちゃんが俺の手に飛びつ
いて止めさせた。
都合、香奈ちゃんは俺の腹の上に馬乗りになる形になる。俺の顔
の上で、大きなふくらみがぽよんと揺れた。
﹁みみみ、見られるじゃないですかっ! やめてください!﹂
焦ってファスナーを閉じる。前屈みになったので、俺の額にぺた
っとおっぱいがくっついた。一瞬だったが、何だかほんわかと幸せ
な気分になった。
﹁パイずりしながらフェラしてくれないとファスナー全開にする。
それで水着を外に放り出す。してくんないとホントにやる﹂
412
ゆっくりボイスみたいな棒読みで俺は言った。香奈ちゃんは大き
な諦観の溜息を吐いた。
﹁だだっ子ですか⋮⋮分かりました、してあげます⋮⋮﹂
香奈ちゃんが元の脚の間のポジションに戻る。
俺の腹の上、ちょうど彼女のパイパンおまんこが乗っかっていた
辺りに、何やらローションとは違うような、ぬるっとしたものがつ
いていたが、せっかくフェラしてくれる気になっているのに気分を
害してはいけないので、突っ込まないことにした。
﹁物理的に無理な気が⋮⋮本当にできるものなんですか?﹂
﹁俺も分かんないけど、取りあえずやってみてよ。そういえば、香
奈ちゃんにフェラしてもらうの初めてだね、嬉しいよ﹂
﹁合意じゃないんですから、嬉しいとか言わないでください﹂
ツンデレな香奈ちゃんは︵未だデレたことがないが︶、不平を口
にしながらもおっぱいで俺のジュニアを挟み込んだ。
﹁んっ⋮⋮遠いです⋮⋮﹂
香奈ちゃんは口を開いて迎え入れようとしたが、普通のパイずり
の体勢では、口が遥か遠かった。
﹁舌なら届くかも⋮⋮﹂
あごを限界まで引きつけて、舌を伸ばす。先っぽをれろんと舐め
られて、俺は﹁はうん﹂と声を漏らしてしまった。
﹁女みたいな声出すんですね。舐めるのも気持ちいいんですか?﹂
香奈ちゃんがれろれろとロリポップを舐めるように亀頭を舐め回
す。くすぐったいようなじれったいような刺激に、俺は身を捩った。
﹁うひゃひゃひゃひゃ、か、香奈ちゃんの舌、たまんない⋮⋮﹂
﹁年上の威厳の何もないですね⋮⋮パイずりにこだわってると全然
届かないので、取りあえずフェラしますよ﹂
そう言って香奈ちゃんは、その可憐な唇をぱくっと開けた。バナ
ナに食らいつくように、俺のジュニアをすっぽりと咥えこむ。
﹁おうふ⋮⋮﹂
柔らかく温かな口腔に包まれ、俺は呻き声を上げた。香奈ちゃん
413
の初フェラは、たまらなく心地良かった。
﹁あ、できそう⋮⋮なるほど、こうやれば⋮⋮﹂
香奈ちゃんは自分で工夫して、パイずりしながらフェラする方法
を見つけ出した。
あごを引き、パイずりよりもフェラの方を優先して、おっぱいは
成り行きで届く分だけジュニアを挟み込む。
﹁んっ⋮⋮んんっ⋮⋮﹂
口がいっぱいで息苦しそうにしながら、香奈ちゃんがピストン運
動を始めた。
舌と唇でねっとりと亀頭を愛撫する。初フェラなのに、歯に当た
ることも全くない。未羽と肩を並べられるテクニックだ。
﹁ぷはぁ⋮⋮ん、うん⋮⋮﹂
一度口を離して息継ぎし、すぐまたジュニアを咥える。頭の動き
に合わせておっぱいも上下し、陰茎をぬるぬると擦り上げる。口唇
とおっぱいのダブル愛撫、快感の二重奏だ。
﹁ぬあぁ⋮⋮き、気持ち良すぎるぅ⋮⋮﹂
ついこの間まで処女だったのに、香奈ちゃんはソープ嬢並にテク
ニシャンだった。
未羽もそうだがこの二人、高一のくせに何でこうも性的才能に溢
れているんだろう⋮⋮。
二人でレズるときは、いったいどんなテクニックを駆使している
のやら。
﹁あふ⋮⋮んっ⋮⋮ん、ん⋮⋮﹂
すっかりコツをつかんだ香奈ちゃんは、じゅぽじゅぽといやらし
い音を立てながらリズミカルにピストン運動を繰り広げている。
あまりの快感に、俺のボルテージは急速に上昇していった。
﹁お、おおぉ⋮⋮うわ、お、俺⋮⋮も、もうイク⋮⋮くお⋮⋮﹂
香奈ちゃんが上目づかいにチラッと俺の方を見た。
そうして無言でラストスパートをかける。上下運動がペースアッ
プし、舌が生き物のように亀頭を這い回る。
414
﹁おおお⋮⋮うお⋮⋮もう⋮⋮あっ、出る、出る⋮⋮!﹂
ピークに達し、俺はどくどくと勢いよく射精した。香奈ちゃんは
初めての口内射精に戸惑いながらも、こぼさず口の中に受け止めた。
﹁んっ⋮⋮! んん⋮⋮﹂
喉の奥に精液を放出され、えづきそうになりながらも、香奈ちゃ
んは俺のジュニアを離さなかった。
それどころか、射精を終えてもまだ脈打っているそれに舌を這わ
せ、最後に残った一滴までしぼり取る。シチュエーション上はフェ
ラを強要されているはずなのに、サービス満点だった。
﹁⋮⋮んん⋮⋮おえ⋮⋮﹂
やっと俺のジュニアを解放した香奈ちゃんは、口に溜まった精液
のやり場に困りながら、気持ち悪そうな顔をした。
しかし、あいにくテントの中にはティッシュもなく、かといって
メッシュを開けて外に吐き出すわけにもいかず、処理する術がなか
った。
﹁香奈ちゃん、ごめん、飲んでくれる?﹂
俺がそう言うと香奈ちゃんは﹁むー!?﹂と言って眉をひそめた。
きょろきょろとテント内を見渡すが、やっぱり吐き出す方法が見つ
からない。
そうこうするうちに、口の中につばが溜まってきたのだろう、香
奈ちゃんは眼をつぶって覚悟を決めた。
顔を上に向け、錠剤の薬を飲むように、ごくりと喉を鳴らして飲
み込む。子供が嫌いな食べ物を我慢して食うような表情が、妙にエ
ロかった。
﹁ぷはぁ、お、おえっ⋮⋮うう、変な臭い﹂
手で口を押さえ、気持ち悪そうな顔をする。俺はさっきのスポー
ツドリンクを差し出した。
﹁ごめんごめん。香奈ちゃん、これで口直しして﹂
彼女はペットボトルを受け取ると急いで口に含み、行儀悪くくち
ゅくちゅとうがいしてから飲み込んだ。
415
﹁はぁ、はぁ⋮⋮お、お兄さん、ひどいです⋮⋮﹂
俺を恨めしそうな顔で睨む。さすがにちょっと悪かったなと思っ
たが、陵辱される香奈ちゃんの表情は、罪悪感を上回って俺の性欲
を刺激した。
﹁ごめん香奈ちゃん。お詫びに、香奈ちゃんも気持ち良くしてあげ
るから﹂
﹁へ?⋮⋮きゃっ! お、お兄さん! 何を⋮⋮!?﹂
俺は香奈ちゃんに覆い被さるように近づき、押し倒した。無理や
り脚を広げさせると、きれいなパイパンおまんこが眼に飛び込んで
きた。
﹁やぁっ! や、やめてぇっ!﹂
慌てて手でスリットを隠す。
﹁いや、俺ばっか気持ち良くなって申し訳ないから。借りは作らな
い主義なんだ﹂
﹁カッコいい感じに言ってもダメです! やっ⋮⋮だめぇ!﹂
手首を掴んで股間から手を離させる。股に頭を突っ込み、俺は香
奈ちゃんのおまんこにしゃぶりついた。
﹁あっ⋮⋮! んっ⋮⋮そ、そんなとこ、だめぇ⋮⋮!﹂
舌を伸ばし、俺は香奈ちゃん襞をくまなく舐め回した。海水の塩
味と、海水ではない塩味がした。
﹁ああ、香奈ちゃんのおまんこ舐めるの初めてだ、美味しいよ⋮⋮
今日はお互い、初めてがいっぱいだね﹂
﹁共感を求めるなっ! あっ⋮⋮! やぁん⋮⋮そ、そこっ⋮⋮あ
ぁん﹂
クリトリスと舌でちろちろすると、香奈ちゃんは身体を震わせて
敏感に反応した。とめどなく蜜が溢れてくる。
俺の頭に手を当てて、押しのけようとしているようだが、感じや
すい香奈ちゃんは既に身体に力が入らない。頭に手を添えているだ
けだ。
﹁あっ、あぁっ⋮⋮いやぁん⋮⋮あふっ⋮⋮﹂
416
﹁香奈ちゃん、あんまり声出すと人が来るよ﹂
﹁⋮⋮えっ!? あ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんは慌てて口を押さえた。
テントの外は、相変わらず人が行き交っている。
そんな状況で俺たちの格好はというと、二人とも全裸でクンニの
真っ最中。仰向けで寝転がる香奈ちゃんは、身体が震えるたび豊か
なおっぱいがぷるんぷるんと揺れている。
いくら夏の海辺でも、開放的すぎる。快感に我を忘れていた香奈
ちゃんは、正気に戻って激しい羞恥に襲われた。
﹁い、いやっ⋮⋮見られちゃう⋮⋮! お、お兄さん! も、もう
やめて⋮⋮!﹂
顔を赤く染め、おびえた表情で首を振る。その仕草は、俺の嗜虐
心をよけい駆りたてた。
俺はクンニを再開し、さらに予告なしに中指をぬぷっと奥まで挿
入した。
﹁ふわっ! あっ、あぁん⋮⋮! だ、だめぇ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんの身体が大きく波打った。ドMの香奈ちゃんは、羞恥
心により快感が倍加するのだ! と、特撮ヒーローのようなナレー
ションを入れてみる。
膣の中で指を曲げ、香奈ちゃんが好きなところを集中的に刺激す
ると、まるで感電したように、びくんびくんと彼女の身体が反応し
た。
香奈ちゃんは口を手で覆い、必死で声を殺した。
﹁んっ⋮⋮! ん∼っ! むぐ⋮⋮んんっ!﹂
半分息を止めているような状態なので、顔が真っ赤だ。汗ばんだ
額に前髪が貼りついている。苦しそうな表情が死ぬほど萌えた。
﹁香奈ちゃん⋮⋮可愛い、すげえ可愛いよ⋮⋮イキたいんだろ? よし、もっと気持ち良くしてあげるからね⋮⋮﹂
俺はおまんこへの愛撫を止め、上体を起こした。今しがた射精し
たばかりだというのに、俺のジュニアはビンビンにいきり立ってい
417
た。
羞恥心と快感で朦朧としている香奈ちゃんのおまんこに、俺の先
端をあてがう。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮え?⋮⋮あっ! お、お兄さん、だめぇ! な、
生で⋮⋮!﹂
事態に気付いた香奈ちゃんが、焦って制止する。
﹁大丈夫、中には出さないから⋮⋮いくよ﹂
濡れて光るおまんこに、俺は遠慮なく挿入した。充分過ぎるほど
潤っていたそこは、ぬるりと俺の肉棒を呑み込んだ。
﹁ふわぁっ! あっ、あぁん!﹂
香奈ちゃんがのけぞって大声を出した。滑らかな襞が、俺のモノ
をキュッと締めつけてくる。
﹁おおお⋮⋮香奈ちゃんの中、最っ高に気持ちいいよ、堪んねえ⋮
⋮﹂
俺は犬のように本能で腰を振った。濡れたおまんこがいやらしい
音を立てる。死ぬほど気持ち良くて、さっき抜いてなかったらあっ
という間に昇天していただろうと思った。
﹁あっ! あぁっ! はふ⋮⋮あぁんっ!⋮⋮や、やぁ⋮⋮﹂
腰を動かすたびに、香奈ちゃんは甲高いあえぎ声をあげた。
さすがに声が大きすぎるかなと思って外を見ると、10メートル
ほど離れたところにいた小学校高学年くらいの女の子と眼が合った。
弟らしき小さな男の子を連れている。
いや、眼が合ったというのは気のせいだが、どうやら香奈ちゃん
の声に気付いたらしく、明らかにこちらを注視していた。
﹁か、香奈ちゃん、声⋮⋮!﹂
﹁あっ、あん⋮⋮ハッ! ん、んぐ⋮⋮﹂
慌てて手で口を塞ぐ香奈ちゃん。呼吸が上手くできず、すぐに顔
が真っ赤になる。
しかし、声を殺すのが少し遅かった。水着姿の幼い姉弟は、俺た
ちのテントを目指して歩いてきた。
418
俺が外を凝視していたので、香奈ちゃんも何事かとそちらを向い
た。姉弟に気付き、驚いて眼を見開く。
俺もさすがにヤバいと思ったが、香奈ちゃんのおまんこが甘美す
ぎて、腰の運動を止めることができなかった。
︵んーっ! ん、んっ!︶
香奈ちゃんは口を両手で押さえ、必死に首を横に振った。眼で﹁
やめて﹂と訴える。泣き出しそうなその顔は、逆に俺の嗜虐心を燃
え上がらせた。
︵むぐっ⋮⋮んーっ! んっ、んんっ!⋮⋮︶
俺はさらに腰の動きを大きくした。ジュニアが抜けそうなくらい
腰を引いてから、一気に奥まで挿入する。ひと突きごとに、香奈ち
ゃんはのけぞって呻いた。
姉弟は、俺たちのテントのすぐそばにしゃがみ込んだ。純真な瞳
でテントを覗き込んでいる。メッシュがなければ、手を伸ばせば届
く距離だ。
香奈ちゃんは真っ赤な顔で姉弟を見つめ、羞恥に耐えきれず顔を
そむけた。
︵んんっ!⋮⋮ぐっ! ⋮⋮うんっ!⋮⋮︶
力いっぱい口を押さえ、声を殺す香奈ちゃん。その頬を、涙がぽ
ろぽろと伝って落ちた。
ドMの香奈ちゃんは、恥ずかしさと快感が比例する。今彼女は、
最大級の快感を味わっているはずだ。
香奈ちゃんはキツく眉を寄せている。身体の強張りから、絶頂が
近づいているのを俺は感じた。
︵んーっ! くっ⋮⋮! むぐぅっ!︶
朦朧とした顔で香奈ちゃんが薄目を開け、姉弟の様子を確認する。
女の子の方が、指でつんつんとメッシュをつついた。
︵んっ、うう⋮⋮︶
薄いメッシュ一枚の向こうには幼い子供がいるというのに、香奈
ちゃんは全裸で肉棒に身を貫かれている。
419
彼女は気の遠くなるような羞恥と罪悪感を感じ、ぎゅっと眼を閉
じた。感情が高ぶって、涙が幾筋も頬を流れる。
ラストスパートで、ピストン運動を加速する。香奈ちゃんの身体
が、さらに強張りを増した。快感の大波が、彼女を襲う。
︵んっ⋮⋮んーーっ! んんーっ!︶
いたいけな子供に見つめられながら、香奈ちゃんは絶頂に達した。
背中が浮くほど、大きく背を反らす。
快感の波が幾重にもなって押し寄せ、びくん、びくんと、脈打つ
ように身体が震える。
激しい羞恥が、彼女の快感を何倍にもしていた。
﹁あ⋮⋮あぁ⋮⋮﹂
脱力して、必死で口を押さえていた手が、だらりと下がった。解
放された口から、意味をなさない声と、よだれがこぼれる。
唾液とローションと愛液で、香奈ちゃんはぐっちょぐちょだった。
大波が過ぎ去った後も、まだ余韻が残っているのか、ぴくっ、ぴく
っと、微かに身体を震わしていた。
普段のクールさからは想像できない、そのしどけない姿を見てい
ると、俺はどうしてももう一度射精せずにはいられなくなった。
テントを覗いていた姉弟は、興味を失ったのか、揃って海の方へ
とかけていった。
どの程度中が見えていたのかは分からないが、あの様子ならセッ
クスしていたことには気づいていないだろう⋮⋮と思う。そういう
ことにしておこう。
俺は、傍らに転がっていたローションのボトルを手に取った。手
のひらの上にたっぷりと捻り出し、ジュニアに塗りつける。
そして、俺は香奈ちゃんの脚を持ち上げて、アナルにローション
をすり込んだ。
頭の中がお花畑になっていた香奈ちゃんが、ハッと正気に返る。
﹁⋮⋮あ⋮⋮え⋮⋮? ハッ! お、お兄さん! 何してるんです
か!?﹂
420
危機を感じた香奈ちゃんが焦って俺の手を逃れようとするが、い
かんせんさっきイったばかりなので、身体がいうことを聞かない。
﹁ごめん、香奈ちゃん。ゴム持って来てないんだ﹂
﹁何でローション持って来てゴム忘れるんですかっ!︱︱じゃなく
て、う、後ろはだめです! やぁっ⋮⋮やめてぇ!﹂
﹁未羽から指二本入るって聞いてるよ? ごめん、俺もう、我慢で
きないから⋮⋮﹂
﹁だ、だめぇ!﹂
香奈ちゃんは抗ったが、絶頂後でへなへなな彼女は俺のなすがま
まだった。M字開脚させ、先端をアナルにあてがう。怯えた彼女の
身体がビクッと震えた。
﹁や、やめてぇ! そ、そんな大きいの、入んないよぉ⋮⋮!﹂
﹁大丈夫、力抜いて⋮⋮﹂
腰を進めると、さすがにおまんこよりは強い抵抗とともに、亀頭
がぬぷっと侵入した。
﹁んっ! はぅん⋮⋮!﹂
香奈ちゃんが俺の腕を掴み、ぎゅっと握りしめた。
痛がったら止めようと思っていたが、香奈ちゃんはハフハフと苦
しげな息をしているものの、何とか大丈夫そうだった。
﹁ぜ、全部入れるよ⋮⋮﹂
さらに腰を前進させる。たっぷりと塗ったローションのおかげも
あり、俺のジュニアは無事根元まで入ることができた。
﹁あっ⋮⋮やぁん、お、おっきいよぉ⋮⋮ぬ、抜いてぇ、お願い⋮
⋮﹂
嫌がる言葉は口にするが、痛いとは言わなかった。うん、大丈夫
そうだ。
﹁う、動くよ香奈ちゃん、力抜いてて⋮⋮﹂
ゆっくりと、前後運動を開始する。締め付けがすごい。ジュニア
を絞られているみたいだ。
﹁あっ、だめぇ、う、動いちゃ⋮⋮あっ、あぁん⋮⋮!﹂
421
眉を寄せて香奈ちゃんは喘いだ。未知の感覚にとまどっているよ
うにも見えた。
汗とよだれで顔が艶を帯びている。乱れた彼女を、堪らなく愛し
く感じた。
俺は上体を倒し、香奈ちゃんの唇に顔を寄せた。眼を閉じてアナ
ルの刺激に耐えている彼女に、そっと口づける。
﹁んっ⋮⋮! んん⋮⋮﹂
香奈ちゃんは呻いたが、拒まなかった。柔らかな唇の感触を味わ
ってから、俺は舌を侵入させた。
﹁んっ⋮⋮﹂
乱暴に口内を舌でかき回す。香奈ちゃんの舌や頬の内側は柔らか
くて温かくて、とろけるようだった。
彼女から舌を伸ばしてくることはなかったが、香奈ちゃんは俺の
キスを従順に受け入れてくれた。抵抗する余力がなかっただけかも
しれないが。
とっくりとキスの味を堪能し、俺は唇を離した。唾液が細く糸を
引いた。
﹁お、お兄さんのバカ⋮⋮! む、無理やりアナルセックスしなが
ら唇を奪うなんて⋮⋮鬼畜ですか!﹂
﹁香奈ちゃんが可愛いすぎるのが悪いんだよ⋮⋮滅茶苦茶にしたく
なるじゃないか﹂
﹁かわい⋮⋮って⋮⋮!﹂
香奈ちゃんがいっそう頬を赤く染めた。え? そこ、いま照れる
とこかよ!?
なんて会話をしてるうちに、俺も限界が近くなっていた。アナル
は刺激が強すぎて、すぐにゴールがやってきてしまう。
﹁か、香奈ちゃん、俺もう、イ、イクよ⋮⋮﹂
﹁え? な、中に出すの? え? ちょ、あっ、あぁっ⋮⋮!﹂
とまどう香奈ちゃんを気遣う余裕もなく、俺は彼女のアナルに射
精した。二回目だというのに、どくどくと大量に出た。
422
﹁やっ⋮⋮! 熱ぅい⋮⋮あっ、あぁぁん!﹂
香奈ちゃんの身体が小刻みに震えた。爪を立てて、俺の腕を握り
しめる。
あれ? 香奈ちゃんも軽くイっちゃったようだ。
アナルではイケないと思ってたけど、さっき大絶頂を迎えたばか
りだし、身体が敏感になっていたのだろう。
﹁ふわ⋮⋮はぁん⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮﹂
とろんとした眼で、香奈ちゃんは快感の余韻に浸っていた。
二回の射精を終え、しぼんだジュニアを引き抜くと、彼女は﹁ん
っ⋮⋮﹂と小さな声を出した。
桃色にほてった顔が可愛くて、ん∼、ともう一度キスしようとし
たら、こめかみに手刀をくらった。目の前にチカチカと星が見えた。
﹁痛ててて⋮⋮い、痛いよ、香奈ちゃん﹂
﹁こ、これだけ鬼畜なことしといて、当たり前のようにキスしよう
としないでください! きょ、今日はホントに⋮⋮パイずりに始ま
り後ろの処女まで⋮⋮お兄さんの変態! 野良犬! 色情狂!﹂
俺を睨みながら、香奈ちゃんはマシンガンのように悪態を連呼し
た。香奈ちゃんの罵りの言葉は、春風のように心地良かった。
﹁変質者! おっぱい星人! ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮え、えっと、そ
れから⋮⋮﹂
一気にまくし立て、肩で息をする香奈ちゃん。⋮⋮何つーか、可
愛いなあ、本当に。
﹁⋮⋮もういいかな? じゃあ、俺の話を聞いてくれる?﹂
﹁はぁ、はぁ⋮⋮⋮⋮どうぞ⋮⋮﹂
香奈ちゃんは俺にバトンを渡した。﹁どうぞ﹂だって⋮⋮よく分
かんない思考回路してるよな、この子。
俺は全裸で居住まいを正し、正座した。
ちなみに香奈ちゃんもまだ水着を着ていない。人魚座りして、腕
で胸を隠している。乳房がだいぶはみ出してるけど。
俺は軽く深呼吸して、今年一番の真面目な顔を作った。
423
﹁香奈ちゃん、俺、香奈ちゃんが好きだ。付き合ってくれ﹂
はっきりと、力強い声で、俺は言った。
香奈ちゃんは鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をした後、たちま
ち顔を真っ赤に染めた。
﹁な、なな⋮⋮﹂
口がパクパク動くだけで、言葉が出ない香奈ちゃん。俺はじっと
彼女の眼を見つめていた。
﹁ど、どうして⋮⋮あ、あんなひどいことした後で告白なんかでき
るんですか!? か、からかってるなら⋮⋮﹂
﹁からかってなんかいない。俺、香奈ちゃんが大好きだ。俺なら、
未羽に負けないくらい、香奈ちゃんを恥ずかしい目にあわせてあげ
ることができるよ。だから、俺と付き合ってくれ。お願いします!﹂
俺は手を突いて頭を下げた。俯いたまま、香奈ちゃんの返事を待
つ。
香奈ちゃんはなかなか返事をしなかった。
少し、頭がぼおっとするくらいの時間が流れた。
こりゃ、振られたかな︱︱俺がそう思い始めたころ、彼女は、小
さくつぶやいた。
﹁⋮⋮⋮⋮少し、考えさせてください⋮⋮﹂
424
︻後日談13︼プレシャス デイズ その③
帰りの電車の中。俺たち四人は、向かい合わせのボックス席に座
っていた。
俺とのりちゃんが隣同士、未羽と香奈ちゃんが隣同士で、向かい
の席に座っている。
車窓の外は夕暮れ間近で、景色がオレンジ色に染まりつつあった。
帰りも賑やかに談笑していた俺たちだったが、しばらくすると一
日中海ではしゃいでいた疲れが出て、だんだんと言葉が少なくなっ
た。
のりちゃんがうつらうつらと船をこぎ始めて、そのうち俺の肩に
もたれて眠ってしまった。
心地よさそうに寝息を立てるのりちゃんを、未羽と香奈ちゃんが
愛おしそうに眺めている。
俺も美少女に肩を貸すのは大歓迎だ。触れ合う腕が、柔らかくて
温かい。
三人になると、会話が途切れた。俺と香奈ちゃんの間に漂う、い
つもと違う空気を、未羽は感じ取っているようだった。
しばらくの間、電車の走行音だけが空間を満たした。
﹁⋮⋮未羽﹂
沈黙を破ったのは香奈ちゃんだった。静かな呼びかけに、未羽が
﹁何?﹂とこたえる。
﹁⋮⋮海でね、わたし、テントの中で、お兄さんとセックスしてた
の⋮⋮﹂
思い出話でもするように、香奈ちゃんは静かに話した。
﹁あ、やっぱりそうだったんだ。ずっと二人でこもってるから、何
かしてるんだろうなとは思ってたけど﹂
425
未羽は未羽で、当たり前のようにその言葉を受けとめる。
﹁セックスっていっても、無理やりなんだけど⋮⋮お兄さん、ひど
いのよ? わたし、パイずりとフェラさせられて、レイプされて⋮
⋮アナルセックスまでされたの﹂
﹁えっ? そんなにいろんなことしてたの? それは良かったね⋮
⋮じゃなくて、ごめんね、うちのお兄ちゃん変態で﹂
口を滑らした後でしれっと訂正する未羽だった。レイプされた親
友に﹁良かったね﹂って言うなよ⋮⋮。レイプしたの俺だけど。
﹁それでね、全部すんだ後で⋮⋮お兄さんに、告白されたの⋮⋮付
き合ってくれって⋮⋮﹂
未羽の顔に緊張が走る。香奈ちゃんがチラリと俺に視線を送った。
のりちゃんは変わらず安らかな寝息を立てている。肩を貸してい
る俺は身動きができないので、神妙な顔で座っていた。
﹁そ、そうなんだ⋮⋮うん、お兄ちゃんが香奈ちゃんのこと好きな
のは、あたし気づいてたよ。それで、香奈ちゃんは⋮⋮何て返事し
たの?﹂
聞いた後で、未羽はごくりとつばを飲み込んだ。平静に話してい
るようで、彼女は珍しく固くなっていた。
﹁まだ、返事は⋮⋮あの、お兄さん﹂
水を向けられて俺も緊張したが、気を落ち着けて、﹁何だい?﹂
と返事した。
﹁⋮⋮お兄さんは、もし、わたしが付き合うって言ったら⋮⋮未羽
とエッチするの、やめることができますか?﹂
ずしりと、言葉が重く俺にのしかかった。香奈ちゃんは、訴える
ような眼で俺を見つめている。
未羽も不安そうな顔で俺を見つめている。この質問は、誤魔化す
わけにいかない。
くっ⋮⋮やっぱそうくるか⋮⋮仕方ない、覚悟は決めていたんだ。
﹁⋮⋮分かった。香奈ちゃんが嫌だって言うなら、未羽とエッチす
るのは、もうやめるよ。元々、兄妹でエッチするのがおかしかった
426
んだ。以前に戻るだけさ﹂
努めて明るく、俺は言った。笑顔は引きつっていたかもしれない
が。
未羽が寂しそうな顔で俺を見ていた。
そっか⋮⋮未羽も、俺が香奈ちゃんに告白することを促した時点
で、覚悟を決めていたんだな⋮⋮。
﹁⋮⋮そうですか⋮⋮お兄さんは、それだけの決意を持って、わた
しに告白したんですね⋮⋮﹂
喜んでくれるかと思ったのだが、香奈ちゃんは逆に俯いてしまっ
た。膝の上で、ぎゅっとこぶしを握る。
肩が震えていた。ただならぬ雰囲気に、俺は声をかけようとした
のが、先に香奈ちゃんの方から話し始めた。
﹁で、でも⋮⋮わたしは、未羽と別れることができません⋮⋮お兄
さんのこと、好きだけど、わたしは未羽と⋮⋮これからも、ずっと、
セックスしたいです⋮⋮﹂
言葉を絞り出すように、香奈ちゃんは言った。予想していなかっ
た発言に、俺と未羽はとまどった。
﹁か、香奈ちゃん、何言ってるの? 大丈夫、あたし、香奈ちゃん
がお兄ちゃんと付き合っても、香奈ちゃんとエッチするよ! 今ま
でと変わらないよ! ね、お兄ちゃん、いいでしょ?﹂
切実な顔で俺に聞く。香奈ちゃんも顔を上げて俺に向いた。眼が
涙で潤んでいた。
﹁い、いいよ、構わないよ、香奈ちゃん。そりゃ、男に浮気された
ら怒るけど、未羽なら全然オッケーだよ。え? 俺が反対すると思
ったの?﹂
何でそう思うのかが分からなかった。今までずっと二人の仲認め
てきたじゃん、俺?
香奈ちゃんは涙目で不可解そうな顔をした。
﹁え? だ、だって海で⋮⋮﹃俺なら、未羽に負けないくらい香奈
ちゃんを恥ずかしい目にあわせてあげることができるよ﹄って⋮⋮
427
あれは、もう未羽とセックスするなって意味じゃなかったんですか
⋮⋮?﹂
椅子からずり落ちそうになったが、のりちゃんに肩を貸している
ので何とか踏みとどまった。
﹁ふ、深読みしすぎだよ、香奈ちゃん! 俺が香奈ちゃんと未羽の
仲を引き裂くわけないだろ! 全く、そんなことで悩んでたのか⋮
⋮﹂
﹁そうだよ香奈ちゃん。お兄ちゃんがあたしたちの愛を邪魔するわ
けないじゃん。いつまでも一緒だよ、香奈ちゃん﹂
未羽の言葉でやっと安心したらしく、香奈ちゃんが表情を緩めた。
﹁い、いいんですか⋮⋮未羽、お兄さん⋮⋮良かった、嬉しい⋮⋮﹂
指で目尻の涙を拭う香奈ちゃん。可愛らしい仕草だった。
﹁も∼、香奈ちゃんったら、真面目すぎるよ。そんなこと心配しな
いでいいのに。あたしとお兄ちゃんは普通の兄妹に戻るけど、香奈
ちゃんとあたしは今までどおりだよ﹂
未羽がそう言うと、香奈ちゃんはなぜかキョトンとした顔をした。
﹁え?⋮⋮いや、別に全面禁止ってわけじゃ⋮⋮別にいいわよ? エッチしても﹂
﹁﹁⋮⋮は?﹂﹂
俺と未羽は揃って間抜けな声を出した。
﹁もちろん挿入しちゃだめですけど、触りっこくらいはいいんじゃ
ないですか? それで子供ができるわけじゃなし﹂
﹁え? え? 何だよそれ? か、香奈ちゃんが言ったんじゃない
か、﹃未羽とエッチするのやめて﹄って﹂
﹁わたしは、﹃未羽とエッチするの、やめることができますか?﹄
って聞いたんですよ。仮定の話ですよ、仮定の。お兄さんが﹃いや、
これからも未羽とエッチする﹄って言えば、﹃じゃあ、わたしもそ
うします﹄って、それで済んだんです﹂
﹁紛らわしい聞き方するなよっ! あの流れで誰がそう思うんだよ
っ!﹂
428
いつものクールな口調で解説する香奈ちゃんに、俺は全力で突っ
込んだ。今度こそ本当にへたりそうになった。
⋮⋮俺、真剣に決断したのに⋮⋮彼氏が実の妹とエッチするのを
容認する彼女って、どうなの?
﹁はぁ⋮⋮も∼、香奈ちゃんったら、人をドキドキさせて⋮⋮でも、
良かったぁ。あたしこれからも、香奈ちゃんともお兄ちゃんともエ
ッチできるんだね﹂
未羽が胸に手を当てて安堵の溜息をつく。
その表情を見て、気が付いた。きっと未羽も、香奈ちゃんから﹃
お兄さんと付き合うから、もう未羽とはエッチしない﹄と切り出さ
れることを恐れていたのだろう。
香奈ちゃんも俺も、同じような恐れを抱いていた。だから、互い
に牽制し合って、居心地の良い関係を壊さないようにしてきたのだ。
勇気を持って、一歩踏み出したのは、未羽だった。
未羽は、俺とも香奈ちゃんともエッチできなくなる可能性がある
ことを承知の上で、俺の背中を押してくれた。
⋮⋮何て思いやりのある妹なのだろう。向かいの席で、未羽は陽
だまりのように明るい笑顔を浮かべている。こんな素敵な妹を持っ
たことを、俺は誇りに思った。
﹁⋮⋮ん⋮⋮んん⋮⋮﹂
のりちゃんが薄目を開けた。眼を覚ましたらしい。頭を俺の肩に
乗せたまま、こぶしで眼をこする。
﹁ん⋮⋮あ、未羽ちゃんと香奈ちゃんだ⋮⋮あ、そっか、みんなで
海に⋮⋮ん? ひゃあっ!﹂
枕代わりにもたれていたのが俺の肩だと気づき、のりちゃんはバ
ネ仕掛けのように飛び起きた。
﹁あわわわ⋮⋮お、お兄さん、ごめんなさいっ! え? え? あ、
あたしいつの間に眠って⋮⋮﹂
首をあちこちに振ってきょろきょろするのりちゃん。相変わらず
429
リアクションが面白い。
﹁いいって、のりちゃん。もうちょっと寝てたら? 肩貸すよ?﹂
﹁いえいえいえっ! め、滅相もございません! え? 滅相って
何だったっけ? い、意味あってる?﹂
未羽と香奈ちゃんがくすくす笑った。のりちゃんのおかげで、す
っかり場の空気が和んだ。
﹁おはよう、のりちゃん。ねえねえ、のりちゃんが寝てる間にね、
お兄ちゃんが香奈ちゃんに告白したんだよ。二人付き合うんだって﹂
﹁⋮⋮は?﹂
寝起きに突然重大発表されて、のりちゃんはポカンとした。じわ
じわとその意味が脳みそに染みていく。
﹁え? お兄さんと、香奈ちゃんが⋮⋮? え? ええっ!? こ、
告白って、つ、付き合うって、こ、恋人になっちゃうの!? わ、
わっわっ! ほ、本当に!? お、おめでとうございますっ!!﹂
のりちゃんはフラワーロックみたいに落ち着きなくわたわたしな
がら、俺たちの交際を祝福してくれた。
⋮⋮俺的には、もうちょっとやきもち焼いたりしてくれるかなと
思ったんだけど、のりちゃんにとって俺は、恋愛対象というより、
頼れるお兄さん的存在であったらしい。
ちょっと残念だけど、まあ、いいや。香奈ちゃんっていう、最高
の彼女ができたんだ。これ以上の幸せはない。
﹁お兄ちゃん、これからは香奈ちゃんのおっぱい揉み放題だね﹂
未羽がしれっと言った。
﹁おおおおおっぱ、おっぱいって⋮⋮! み、未羽ちゃん! そん
なこと言っちゃだめぇっ!﹂
顔を真っ赤にしてのりちゃんが言った。反応がすげえ面白い。
﹁だって、これからは香奈ちゃんの巨乳はお兄ちゃんの物だよ。触
りたかったらお兄ちゃんの許可取らなきゃ﹂
﹁きょ、許可って⋮⋮! おおお、お兄さんに、香奈ちゃんのおっ
ぱい触っていいですかって⋮⋮そ、そんなの聞けないよっ!﹂
430
﹁のり、大丈夫よ。のりにはこれからも、フリーパスでおっぱい触
らせてあげるから﹂
﹁あ、のりちゃん、香奈ちゃんのおっぱい触ってたんだ?﹂
﹁んぎゃーっ! か、香奈ちゃんっ、ひ、秘密って言ったのにっ!﹂
顔を真っ赤にして頭を抱えるのりちゃん。可笑しくて、みんな腹
を抱えて笑った。
一時はどうなることかと思ったけど、全ては、今までどおりに落
ち着いた。
この四人の輪は、これからも、変わらない。胸の中が、ほんわか
と温かいもので満ちている。
このきらめくような時間を、大切にしていこう。俺は、強くそう
思った。
431
︻後日談14︼俺と香奈ちゃんの男女交際 その1︵前書き︶
︻閲覧注意︼
後日談14は変態回です。フェティシズム要素を多分に含みます。
パンツの匂いを嗅いだことがないという方はご遠慮ください。
432
︻後日談14︼俺と香奈ちゃんの男女交際 その1
俺が香奈ちゃんに告白してから四日後の木曜日、昼休みの鐘が鳴
ると同時に、香奈ちゃんからメールが届いた。
﹃お弁当を作ってきました。学食には行かないでください﹄
俺は複雑な思いでメールを眺めた。
弁当を作ってきてくれるのは嬉しいけど、事前にそんな話全然な
かったし、やることがかいがいしい割に文章が素っ気ない⋮⋮。香
奈ちゃんらしいと言えばらしいけどさ。
未羽は週のうち三、四日は弁当を作ってくれる。今朝は﹁材料な
いから﹂と言って、弁当なしだった。
たまたまってのは考えにくい。未羽は知ってたんだろう。何かニ
ヤニヤしてやがると思ったら、こういうことだったのか。
﹁おい、一ノ瀬、学食行かないのか?﹂
公人が話しかけてきた。俺は携帯をポケットにしまった。
﹁悪りい、彼女が弁当作ってきたらしいから﹂
﹁⋮⋮えっ!? か、彼女!?﹂
﹁あ、来た。じゃあな﹂
教室の窓の向こうに香奈ちゃんを見つけ、俺は席を立った。彼女
は巾着袋を両手で持って、いつもどおりのクールな表情をしていた。
ハニワみたいな顔で唖然としている公人を放って、俺は教室を出
た。背中にクラス中の視線を感じたが、あえて振り向かなかった。
☆
香奈ちゃんが屋上へ行きましょうと言うので、俺はついていった。
433
気の利く彼女は百均のレジャーシートなんてのも用意していたの
で、それを敷いて俺たちは並んで座った。⋮⋮何か照れる。
どうぞ、と弁当箱を手渡され、俺は礼を言って受け取った。
香奈ちゃんの料理の腕は、未羽と互角である。フタを開けると、
期待通りの彩り豊かなおかずが並んでいた。
﹁ん、旨い﹂
﹁どうも﹂
付き合いはじめたばかりだというのに、初々しさのない会話だっ
た。
それはそうと、視線が煩わしい。屋上には俺たち以外にも数組の
カップルやグループがいるのだが、ある者はチラチラと、ある者は
露骨な視線を向けてくる。
香奈ちゃんは例の空手の模範演武で有名人だし、俺も部活を通し
てそれなりに名前を知られている。昼休みに二人っきりで仲良く弁
当を食っていれば、衆目を集めないわけがない。
﹁えーとさ、香奈ちゃん、弁当すごく美味しくて嬉しいんだけど、
何で急に作ってくれる気になったの?﹂
チキン唐揚げを口に放り込みながら俺は聞いた。
﹁付き合うことになってから、カップルらしいこと何もしていない
じゃないですか。それで、お弁当でもと思ったんです。⋮⋮でも、
こんなに人目を引くとは思いませんでした。もう二度と作りません﹂
そう言って香奈ちゃんはおにぎりに囓りついた。
﹁そう言わずにまた作ってくれよ。⋮⋮でさ、香奈ちゃんの友達は
もう知ってるの? 俺達が付き合ってること﹂
香奈ちゃんは首を横に振った。
﹁そっか、俺もだよ。別に隠しているわけじゃないけど、自分から
﹃俺、彼女できたんだよ﹄っていうのもこっ恥ずかしくてなあ⋮⋮﹂
わたしもです、と香奈ちゃんは答えた。
﹁わたしも正直、話したくて口がムズムズするんですが、こればっ
かりは自分から言ったら負けな気がして⋮⋮誰か﹃香奈って彼氏い
434
るの?﹄とか聞いてくれればいいんですが、都合良くそんな質問も
されず⋮⋮﹂
﹁あー、分かる分かる﹂
﹁普通こういうのって、二人っきりで歩いているところを目撃され
たりして発覚するんですよ。でもわたしたち通学すらバラバラじゃ
ないですか﹂
俺は朝練があるし、放課後は俺が部活、香奈ちゃんは自宅の道場
で空手の稽古があるので、平日はなかなか逢うこともできない。
告白してからの数日、何度かメールを交わした程度で、顔を合わ
あつし
せてすらいないのだ。メールだって、事務連絡的な素っ気ない内容
だ。
﹁だいたいですね、みんなに知られたとしても、わたし淳さんと人
に話せるようなこと何もしていないんですよ。何ですか、付き合う
より先にパイずりや⋮⋮﹂
﹁ちょ、ちょっと待ってくれ! いま歴史的瞬間があっただろ!﹂
いきなり名前で呼ばれたのでビックリした。
いちのせあつし
24万字書いてきて、初めて主人公の名前の発表だ。俺の氏名は
一ノ瀬淳という。以後お見知りおきを。
﹁わたしたち⋮⋮こ、恋人なんですから、もう﹃お兄さん﹄とは呼
べないでしょう。﹃淳さん﹄でいきますからね﹂
頬をほんのり赤く染める香奈ちゃん。⋮⋮初めてちょっとだけデ
レやがった。めっちゃ可愛い。
﹁とにかくですね、付き合っていることが判明したら、次に聞かれ
ることは決まっているんですよ。﹃デートした?﹄とか﹃もうキス
したの?﹄とかです。わたしなんて答えればいいんですか? ﹃デ
ートはまだだけどアナルセックスした﹄って答えるんですか?﹂
ジト眼で俺を睨みつける。
﹁うむ⋮⋮それは申し訳ないと思う。順番がおかしいよな、俺たち﹂
﹁できちゃった婚よりひどいですよ。⋮⋮まあ、すんでしまったこ
とはしょうがありませんから、こうして普通のカップルらしいこと
435
をして、無くしてしまった純情な日々を取り戻そうとしているんで
す﹂
⋮⋮俺、下手に出てるけど、こうなった原因の半分は、香奈ちゃ
んと未羽のエロエロレズビアンワールドにあると思うよ?
でも、そんなことを言って機嫌を損ねてもつまらないので、俺は
黙っていた。
﹁⋮⋮今日、淳さんのご両親、お留守なんですよね?﹂
無表情で、でも微かに頬を染めて、香奈ちゃんは聞いた。
これは⋮⋮フラグか?
﹁うん。未羽に聞いたの?﹂
﹁はい、わたし、夕方伺いますから。お泊まりはしません。夜道は
危険なので、帰りは淳さんが家まで送ってください。
がっかりしないよう先に言っておきますが、わたし生理中なので、
セックスはできません﹂
﹁⋮⋮期待してなかったと言えば嘘になるけど、生理中の女の子に
手を出すほど鬼畜じゃないから、ゆっくりしていってくれ﹂
香奈ちゃんは、何かを観察している猫みたいな顔で俺をじっと見
て、
﹁⋮⋮それじゃ、おじゃまします﹂
と言った。
会話をしながらも俺は箸を動かし続けていて、弁当は空になって
いた。
香奈ちゃんは持参した水筒から麦茶を注いでくれた。それを飲み
干し、俺は満腹の溜息をついた。
﹁美味しかったよ、香奈ちゃん。唐揚げは極力衣を薄目にしてて、
冷めても美味しかったし、ポテトサラダは小さく刻んだリンゴが入
ってて、食感を軽やかにしていた。
おにぎりは、海苔が飯にしっとりなじんで、コンビニ風のパリパリ
海苔よりもこっちの方が俺の好みだ。しそ梅干しが混ぜ込んであっ
て、日本人なら涙が出るような旨さだった。
436
卵焼き
腕の見せどころの卵焼きは、あえてシンプルに砂糖と塩だけの味付
けで、火加減が絶妙でふんわりしてた。⋮⋮ぶっちゃけ、
は未羽が作るのよりも、旨かった﹂
素直な感想を、俺は述べた。
香奈ちゃんは眼を大っきくして、それから、トマトみたいに真っ
赤になった。
﹁⋮⋮黙って食べるからちゃんと味わっているのかと思えば、そん
なことを⋮⋮淳さん、ずるいです﹂
赤い顔で恥ずかしそうに俯く。俺の彼女は、たまに見せるデレが
押し倒したくなるくらい可愛い女の子だった。
☆
437
︻後日談14︼俺と香奈ちゃんの男女交際 その2
明けて翌朝。俺は未羽と朝食の食卓を囲んでいた。
気分をシャッキリさせるコーヒーの香りと、未羽が焼いたフレン
チトーストの甘い匂いが漂っている。
﹁お兄ちゃん、昨日香奈ちゃんとエッチしたの? 香奈ちゃん生理
だったでしょ?﹂
朝っぱらからあまり爽やかでない話題を振ってくる妹だった。
﹁ああ⋮⋮セックスはできなかったけど、香奈ちゃんの攻めで⋮⋮﹂
﹁ふーん、で、どうだった? 香奈ちゃんすごいでしょ?﹂
にたーっと、小悪魔笑みを浮かべる未羽。
﹁うん⋮⋮香奈ちゃん、ドMの印象が強かったけど、攻めに回ると
あんなにすごいんですね⋮⋮﹂
昨日香奈ちゃんにされたことを思い出し、俺は顔が熱くなってし
まった。
香奈ちゃんは宣言どおり、夕方に俺の家にやってきた。
いつものように、彼女は未羽と一緒に夕飯を作ってくれて、三人
で食卓を囲んだ。
その後、香奈ちゃんは未羽の部屋へ行き、ガールズトークに花を
咲かせた。
壁越しに二人の声を聞きながら、﹁俺、彼氏なんだけどなあ⋮⋮﹂
と思いつつも、女の子のおしゃべりを邪魔するなんて無粋なことを
する気もなく、俺は自室で一人真面目に課題をやっていた。
早々に課題を終え、ひとっ風呂浴びてさっぱりし、自室に戻ると
438
ノックの音がした。﹁開いてるよ﹂と言うと、入ってきたのは香奈
ちゃんだった。
ちょっと吊り目な彼女だが、そのときはさらに眼光鋭く、肉食獣
みたいな顔をしていた。
﹁なな、何かな? 香奈ちゃん?﹂
雰囲気に気圧され、ちょっとどもってしまった。
﹁何って、恋人同士なんですから、家に来て逢わずに帰ることもな
いでしょう。ていうか、せっかくご両親もおられないことですし、
エッチしようじゃないですか﹂
﹁いや、香奈ちゃん生理でしょ?﹂
﹁はい、だから今日はわたしが攻めます。いつも淳さんの好き勝手
に弄ばれているわたしですが、攻めに回るとどれだけすごいか、と
っくりと教えてあげましょう﹂
そう言って香奈ちゃんは舌舐めずりした。赤い舌が生き物のよう
に唇をなぞる。
﹁か、香奈ちゃん⋮⋮!? な、何か怖いよ!?﹂
後じさる俺を、彼女はベッドに押し倒した。肩を押さえつけて、
悪魔のような笑みを浮かべる。
﹁ひいぃ! お、お願い、優しくして⋮⋮!﹂
﹁わたしと未羽の研究成果⋮⋮男の人に試すのは初めてです。いい
声で鳴いてください⋮⋮ふふふ﹂
薄笑いを浮かべながら、香奈ちゃんは俺の唇を奪った。舌が潜り
込んできて、俺は頭がくらくらするようなキスをされた。
︱︱俺がよがってる様子を子細に書いたって需要がないだろうか
ら、概略だけ述べる。
香奈ちゃんのテクニックは、とにかくすごかった。二時間六万円
とかする高級ソープのようだった。行ったことないけど。
生理中の香奈ちゃんは、服を脱ぎパンツ一枚になって俺を攻めた。
多分タンポンとかしてたんだと思う。
439
濃厚なべろちゅーに続いて、首すじ、頬、耳へと舌が這う。気持
ち良くてぼーっとしていたら、いつの間にか服を脱がされ、全裸に
なっていた。
香奈ちゃんは常にべったりと身体を密着させて俺を愛撫した。香
奈ちゃんの身体は柔らかくて温かくて、それだけで天国のようだっ
た。
唾液をまとった香奈ちゃんの舌が、俺の全身をねっとりとねぶる。
乳首、手の指、脇腹、膝、足の指︱︱こんなとこ感じるのかよ、
というような部位が、ことごとく気持ち良かった。男の身体にもこ
んなに性感帯が潜んでいるのかと思った。
舌を這わせながら、同時に右手と左手が、それぞれ別の意思を持
っているかのように動き回る。
五本の指先で、触れるか触れないかくらいの微妙なタッチで身体
をなぞられると、気持ちいいやらくすぐったいやらで、ぞくぞくし
た。羽箒で撫でられているみたいだった。
香奈ちゃんは俺の両脚を抱えて、M字開脚させた。未羽にも香奈
ちゃんにもこのポーズをさせたことがあるが、自分でやってみると
想像以上に恥ずかしかった。
一番舐めてほしいところへいく前に、香奈ちゃんの舌は内股、陰
嚢、アナルと寄り道して、俺を焦らした。我慢汁だだ漏れだ。
さんざん焦されてから、先っぽをパクッと咥えられると、俺は女
みたいに大っきなあえぎ声を上げた。
超絶技巧のフェラチオで、俺はあっという間にイキそうになった
のだが、ここでも香奈ちゃんは絶妙な焦らしをみせた。
何度も寸止めされ、お願いだからイカせてくれと懇願して、やっ
とフィニッシュに導いてもらった。
どっくんどっくんと大量に放出した精液を、香奈ちゃんは残さず
口に受けた。
ビーチでのときは嫌がっていたくせに、彼女はそれを美味しそう
に喉を鳴らして呑み込んだ。とろんとした眼がサキュバスのようだ
440
った。
香奈ちゃんは休む間も与えてくれず、すぐさま第2ラウンドへ突
入した。裏すじを舐められると俺のペニスはたちまち復活した。
今度はうつぶせにされ、背中や尻やふくらはぎを舐められた。背
後から攻められると、無防備でドキドキした。
俺は四つん這いにさせられて、アナルにローションをすり込まれ、
スキンで覆った指を突っ込まれた。未知の感覚に頭がおかしくなり
そうだった。
同時に香奈ちゃんは、股の間から手を入れて、俺のペニスをしご
いた。アナルとペニスのダブル攻撃。自分がやられるとは思ってい
なかった⋮⋮。
二回目も俺は盛大に射精した。射精大会だ。
最終ラウンドでダウンしたボクサーのごとく、ぐったりとしてベ
ッドに伸びる。満足げな笑みを浮かべ、俺を見下ろす香奈ちゃん。
MもSも抜群の才能を見せる彼女の前に、俺は屈服するしかなか
った⋮⋮。
☆
﹁⋮⋮何なの? 16歳であの超絶テクニック? ⋮⋮お前、香奈
ちゃんといつもあんなすごいセックスしてるの?﹂
﹁うん、あたしと香奈ちゃんの研究成果だよ﹂
未羽は自慢げに発展途上の胸を張った。
﹁一度、先入観捨ててどこが気持ちいいのか全身を舐めてみようっ
て、もう本当に余すところなく舐め合ったんだよ。
そしたらね、指とか膝とか、意外なところが意外に感じるんだよね。
舌や指の使い方も、いっぱい研究したよ∼﹂
﹄
未羽がうねうねと指を動かす。エロすぎる⋮⋮俺の妹。
美少女二人が全裸で身体を舐め合って、
﹃あ⋮⋮そこ、気持ちいい⋮⋮あっ、あぁん⋮⋮
441
﹃
本当? わたしのも舐めてみて⋮⋮
﹄
とかやってたんだろうなあ⋮⋮想像したらちんこ大っきくなってき
た。
﹁⋮⋮香奈ちゃんが、﹃わたしよりも未羽の方がテクニシャンです
よ﹄って言ってたよ﹂
﹁えー、そんなことないよ、香奈ちゃんの方が上手だよ﹂
お互い謙遜してるってことは、同じ程度のテクニックを持ってる
んだろうな⋮⋮。
﹁二人でエッチするときって、どんなことしてんだよ、お前ら⋮⋮﹂
﹁すっごいスローセックスだよ。一時間以上かけて、頭のてっぺん
からつま先まで愛撫するの。おまんこはそれから﹂
﹁そうか⋮⋮正直、俺のテクニックがいかに稚拙だったかを思いし
らされて、ちょっと凹んだ⋮⋮﹂
未羽と比べられるんだぜ? ハードル高すぎるっての⋮⋮。
﹁落ち込まないでよぉ。香奈ちゃんのテクニックを盗めば、すぐに
同じくらいになるよ﹂
﹁それにしたって差がありすぎて⋮⋮そこでお願いなんだが、この
差を少しでも縮めるために、未羽の身体で練習させてくれないか?﹂
﹁えっ?⋮⋮は?⋮⋮はあっ!?﹂
未羽はぶわっと顔を赤くした。
﹁なっ、何言ってんの! そ、それこそ香奈ちゃんとセックスして
経験積めばいいじゃない! か、彼女とのセックスを妹の身体で練
習って、何考えてるの!﹂
変な汗をかきながら、未羽は焦って言った。やっぱり身勝手すぎ
るか。
﹁すまん、身代わりにしてるみたいで、失礼だよな⋮⋮俺が悪かっ
た﹂
未羽は腕を組み、人差し指をトントンと鳴らしながら、俺を睨み
つけた。
﹁ま、まったく、何を言うかと思えば⋮⋮あ、あたしだって、そん
442
なに都合良くないんだからね!﹂
﹁悪かったって。謝るから、機嫌直してくれ﹂
重ねて謝ると、未羽は赤い顔のまま横目で俺を見た。
﹁ま、まあ⋮⋮お兄ちゃんも困ってるようだし⋮⋮ど、ど∼しても
⋮⋮
﹂
って言うなら、ちょ、ちょっとくらい練習台になってあげないこと
もないけど
﹁恥ずかしそうな顔して承諾するなよ! 都合良すぎるだろお前!﹂
条件反射で突っ込んだ俺だが、すぐに低姿勢になって、レッスン
の約束を取り付けた。
☆
443
︻後日談14︼俺と香奈ちゃんの男女交際 その3︵前書き︶
︻閲覧注意︼
後日談14は変態回です。フェティシズム要素を多分に含みます。
パンツの匂いを嗅いだことがないという方はご遠慮ください。
444
︻後日談14︼俺と香奈ちゃんの男女交際 その3
兄妹のエロ会話はまだ続く。
﹁俺、昨日アナル舐められたけど⋮⋮お前たちもそれするの?﹂
アナルに指入れられながら射精したことは言わなかった。
﹁うん。アナル舐められるのって、身体の中舐められてるみたいで
ぞくぞくするよね。陵辱デーのときは、香奈ちゃんのアナルに指入
れてあげるよ﹂
﹁何だよ﹃陵辱デー﹄って!? 他にどんな日があるの!?﹂
﹁スローセックスの日がイチャイチャデーでしょ。あとはごろにゃ
んデーがあるよ﹂
﹁何それ? 魅惑的なネーミングだけど⋮⋮﹂
﹁ごろにゃんデーはエッチしない日。抱っこしてちゅっちゅして、
ひたらすら﹃可愛い∼♡可愛い∼♡﹄って言いながら頭撫で撫です
るの。抱っこされる方は、﹃にゃ∼♡﹄って猫語しか使っちゃいけ
ないんだよ﹂
﹁え? それ交替でやるの?﹂
﹁交替で﹂
﹁香奈ちゃんが﹃にゃ∼♡﹄とか言うのかよ!? すっげえ見てえ
! それ!﹂
俺には未だそんなデレを見せないくせに⋮⋮くそお! もっとデ
レてほしい!
﹁お兄ちゃん、付き合いが浅いんだよ。香奈ちゃん、あたしにだっ
て簡単には弱いとこ見せなかったよ。信頼関係が大事だね﹂
﹁うーむ⋮⋮まだ完全に心を許したわけではないっていうことか。
時間をかけて関係を築いていくしかないなあ⋮⋮ところで、陵辱デ
ーって何するの? この間の亀甲縛りみたいな?﹂
﹁そうだね、陵辱デーは香奈ちゃんを辱める日だから、手錠とか目
445
隠しとか⋮⋮あっ⋮⋮う、うん、そ、そんな感じかな?﹂
﹁いま﹃あっ﹄って言っただろ! ﹃あっ﹄って!﹂
﹁い、言ってない!﹂
﹁お前が隠そうとしてるってことは、またよっぽどひどいことをし
たんだろう⋮⋮俺の彼女に何したんだ﹂
﹁つ、付き合う前だもん!﹂
﹁やっぱりしてんじゃねえか!﹂
口を滑らした未羽を問い詰めると、未羽はふてくされた顔で話し
始めた。
﹁⋮⋮⋮⋮二ヶ月くらい前のことだけど、香奈ちゃんが空手の稽古
帰りに、直で家に来たんだよ。そのとき家にはあたししかいなくっ
て⋮⋮。
いつもだったら、道場のシャワーで汗流してから家に来るんだけど、
その日はそのまま来たのね。真夏だったから、香奈ちゃんはびしょ
びしょに汗かいてて、お風呂貸してって言うの。
でもあたし、その日ちょっとムラムラしてて、香奈ちゃん汗の臭い
にとっても興奮したの⋮⋮﹂
そう言って未羽は、顔を赤くして頬に手を当てた。
﹁⋮⋮我慢できなくなって、リビングのソファに香奈ちゃんを押し
倒したの﹂
﹁おまえ女の子を風呂にも入れさせずエッチしたの!?﹂
暴走してしまった自分が恥ずかしいのか、未羽はいつになく赤い
顔をしていた。
﹁⋮⋮それまでは﹃エッチの前はお風呂﹄ってのが不文律だったか
ら、香奈ちゃんはびっくりして
﹃み、未羽!?﹄
って叫んだよ。
でもあたしそのとき頭がプッツンしてて、抑えがきかなかったの。
汗でじっとりした香奈ちゃんのTシャツに顔をうずめて、すーはー
すーはーって匂い嗅いで、
446
﹄
﹃はぁ⋮⋮香奈ちゃんの汗の匂い、すっごくいやらしいよ⋮⋮あた
し、我慢できなくなっちゃった⋮⋮
って服を脱がそうとしたら、香奈ちゃん青くなっちゃって。
あたしがふざけてるんじゃないと分かったら、
﹃み、未羽! だ、だめ⋮⋮やめてっ!﹄
って本気で抵抗したよ﹂
﹁そりゃ、するよ⋮⋮﹂
俺だって部活の後に風呂入らずセックスはしたくねえ。
﹁香奈ちゃん強いから、本気で抵抗されるとあたしじゃ絶対かなわ
ないの。
だから、あばれる香奈ちゃんの両手首をなんとかつかまえて、眼を
合わせて言ったの、
﹃香奈ちゃん! じっとして!﹄って。
香奈ちゃん、ビクッとして抵抗やめた。
怯えた顔であたしを見つめて、
﹃み、未羽⋮⋮お願い、やめて⋮⋮﹄
って言うんだけど、そんな顔されたら、あたしよけい興奮しちゃっ
て⋮⋮。
思いっきり眼力込めて、
﹃香奈ちゃん、動いちゃだめだよ! あたしがいいって言うまで、
じっとしてて!﹄
って言い含めると、香奈ちゃんは眉を八の字にして、生け贄になっ
た少女みたいな顔をするの。
あたしがそっと手首を離すと、香奈ちゃん、もう抵抗しなかった。
顔をそむけて、目尻に涙を浮かべて、ひっく、ひっくってえづいて
るの。それでもじっとしてるんだよ。
あたしの勝手な命令だよ? 香奈ちゃんが聞かなきゃいけない謂わ
れは何もないのに、従っちゃうの。
わあ⋮⋮この子、あたしの命令、何でも聞くんだって⋮⋮とっても
愛おしく思った。一生大事にしようと思ったよ﹂
447
﹁全然大事にしてないじゃん!﹂
よくこの二人友情が続いてるよな⋮⋮レイプ後に交際した俺たち
も俺たちだが⋮⋮。
﹁あたしそれから、くすんくすん泣いてる香奈ちゃんの服を脱がせ
たの。あたしも脱いで、裸で抱き合って⋮⋮あのときの、汗でべと
つく香奈ちゃんの肌、思い出しても興奮する⋮⋮﹂
うっとりとした顔をする未羽。⋮⋮ど変態だ、俺の妹⋮⋮。
﹁あたしはおっぱいの谷間に顔をうずめて、わざとくんくんと鼻を
鳴らして、匂いを嗅ぐの。
﹃ああ、香奈ちゃん⋮⋮汗の匂い、すごいよ﹄
って言うと、
﹃ひっ⋮⋮いやぁっ! み、未羽⋮⋮も、もうお願い、やめてぇ⋮
⋮!﹄
って、香奈ちゃん泣くの。もう、たまんないよ。
あたしは、胸の谷間とか、首すじとか、鎖骨のくぼみとか、わざと
汗の溜まってそうなとこを狙って舐めるの。
﹃香奈ちゃんの汗、しょっぱいよ﹄
とか、
﹃動物みたいな匂いする﹄
って言うと、そのたびに香奈ちゃんは狂いそうなほど恥ずかしがっ
て⋮⋮。
あたしは香奈ちゃんに腕を上げさせて、じっとりとした脇の下を、
汗をすくうようにして舐めたの。香奈ちゃんそのとき一番大きい声
で﹃やあぁぁっ!﹄って叫んだよ。
脇の下はとってもしょっぱくて、あたし、
﹃はぁ⋮⋮美味し⋮⋮香奈ちゃん、どんな味か教えてあげる⋮⋮﹄
って言って、口の中に溜めた唾液と香奈ちゃんの汗をミックスして、
口移しで飲ませてあげたの。
これが極めつけで、香奈ちゃん羞恥で失神しそうな顔してた﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
448
⋮⋮もやは、コメントすらできなかった。俺の妹、フェティシズ
ムもハンパなかった。
﹁それから、おまんこを舐めてあげようと思って、身体を下にずら
していったのね。
クンニする気だと分かったら、香奈ちゃんまた抵抗したから、あた
しは
﹃じっとして!﹄
って一喝した。そしたら、
﹃ひっ⋮⋮!﹄
って身を縮めて泣くの。もう、かわいそうなんだけど可愛いんだよ。
あたしは、足を大きく開かせて、わざと鼻を鳴らしておまんこの匂
いを嗅ぐの⋮⋮
﹃香奈ちゃん、すごぉい⋮⋮汗とおしっこと愛液が混じった、いや
らしい匂いだよ⋮⋮﹄
って言うと、さすがに香奈ちゃん羞恥に耐えきれなくて、
﹃い、いやあぁぁっ!﹄
って叫びながら、手であたしの頭を押し戻そうとするのね。
でも、そのときはもう、香奈ちゃん力抜けてへなへなになっちゃっ
てたから、あたしは構わずおまんこにしゃぶりついたの。
そこは、もう舐める前から大洪水で、舌を這わしたら香奈ちゃんの
けぞったよ。
﹃はぁ、はぁ⋮⋮しょっぱい⋮⋮美味しいよ香奈ちゃん⋮⋮エッチ
な匂い⋮⋮﹄
って、実況しながら舐めてあげると、香奈ちゃんすっごい悶えた。
香奈ちゃんもよっぽど興奮してたんだろうね。感電したみたいに、
何度も身体を震わせて⋮⋮すごい感じてた。
指も入れてあげようと思ってたのに、襞をまさぐるようにぺろぺろ
してたら、あっという間にイっちゃった。すっごい大っきな声上げ
て、ぎゅーって身体硬直させてね。
イっちゃったあと、顔も身体も火照らせて、くたーっとしているの。
449
はぁ、はぁ⋮⋮って苦しそうに荒い息をしているのが可愛くって、
あたしはまた、口に溜まった愛液やら何やらを舌に乗せて、口移し
で飲ませてあげた。
そしたら香奈ちゃん、脇の下のときはあんなに嫌がったのに、一生
懸命舌を絡めてくるんだよ。理性ぶっ飛んじゃったんだね。
⋮⋮その後、香奈ちゃんは正気を取り戻して⋮⋮怒って服着て、半
泣きで帰ってしまいました⋮⋮﹂
﹁そりゃ怒るよ! お前、よく絶交されなかったなあ⋮⋮﹂
俺がレイプしたのより悪いんじゃね? 完全に嫌がってることし
てるしなあ。
﹁あたしたち滅多に喧嘩なんかしないんだけど、香奈ちゃんがあん
なに怒ったの、初めてだったなあ⋮⋮メールで謝っても返信来なか
ったし、翌日まで口聞いてくれなかったもんなあ﹂
﹁翌日仲直りできたのかよ!? どうやって!?﹂
どんだけさっぱりしてるんだ、漢同士の川原での喧嘩じゃあるま
いし。
﹁翌日、六限目に体育があって、バスケだったんだよ。あたしすっ
ごい汗かいて⋮⋮。
﹄
っ
でね、授業終わったら、朝からひとことも口聞いてくれなかった香
奈ちゃんが、あたしのこと呼ぶんだよ。﹃片付け手伝って
て。
あたしは香奈ちゃんが話しかけてくれたのが嬉しくて、ご機嫌でボ
ール片付けてたの。
気が付くと体育用具室に残ってるのはあたしと香奈ちゃんだけ⋮⋮
香奈ちゃん、用具室の鍵持ってて、ガチャン、って内側から扉に鍵
かけるの。
怖い顔であたしの顔睨んで⋮⋮
﹃未羽、そこの跳び箱に座りなさい﹄
って⋮⋮それから、ブルマとパンツ脱がされて、イクまでクンニさ
れました⋮⋮﹂
450
顔を赤くして俯く未羽。頭から湯気が出ていた。
﹁それで仲直りできたのか⋮⋮嫌だったろ? さすがのエロエロ大
魔王も﹂
﹁そのあだ名やめてくれる?⋮⋮香奈ちゃん言葉責めするし、死ぬ
ほど恥ずかしかったよ⋮⋮あれ以来、あういうプレイは二人の間で
禁止になりました﹂
﹁そうしろよ⋮⋮高一でアブノーマルすぎるだろ﹂
俺の言葉にうんうんと頷く未羽。
﹁やっぱり、もっと健全に羞恥を追求した方がいいね。ねえ、お兄
ちゃん、せっかく香奈ちゃんもあたしたちの仲を公認してくれてい
ることだし、3Pしようよ﹂
﹁もうちょっとオブラードに包んで言えないかな! 女子高生さん
!﹂
激しく突っ込んだ俺だが、ぶっちゃけ誘われて嬉しい。
﹁日曜には香奈ちゃんの生理も終わってるよ。三人でデートしよう
よ。あ、お兄ちゃんは、香奈ちゃんと二人っきりがいい⋮⋮かな?﹂
ふくろうみたいに肩をすくめる未羽。⋮⋮可愛いなあ、変態だけ
ど。
﹁いいよ、香奈ちゃんも未羽がいた方がいいだろう。どこ行く?﹂
﹁いいの? えへへ、考えてたことがあるんだ。聞きたい?﹂
未羽の計画を聞いて、俺は日曜日がすごく楽しみになった。
告白のときは、﹁未羽に負けないくらい恥ずかしい目にあわせて
あげられる﹂と言った俺だが、陵辱度においても香奈ちゃんとの信
頼関係においても、まだまだ未羽には敵わないなあ、と思った。
おわり
451
︻後日談14︼俺と香奈ちゃんの男女交際 その3︵後書き︶
452
︻エロ無し小話︼香奈ちゃんと優の日常︵前書き︶
タイトル通り、エロい絡みはありません。香奈・優
ィ回です。
姉弟のコメデ
昨日後日談14を投稿した後にこのエピソードを思いついて、1日
で書きました。
今回、本連載で初めてになりますが、兄貴の一人称ではなく、三人
称です。
453
︻エロ無し小話︼香奈ちゃんと優の日常
平日の夜。香奈は自室で英語の予習をしていた。
件名は空だった。
隣の部屋にいるのに何の用
辞書を引きながら長文読解に取り組んでいると、携帯のメール着
信音が鳴った。
ゆう
弟の優からだ。
かと思いつつ、メールを開く。
﹃セリカと海水浴に行く。
背中に日焼け止めを塗ってあげる。
手が滑ったと言っておっぱいを触る。
感じてしまい、メロメロになるセリカ。
人気のない岩場へ連れて行き、セックスする﹄
香奈は眼をパチパチさせてメールを読み返した。差出人をもう一
度確認する。やっぱり優からだ。
何これ⋮⋮? セリカって誰よ? さっぱり意味が分からない⋮
⋮。
困惑しているとドタバタと足音がして、勢いよくドアが開かれた。
ものすごく焦った顔の優が飛び込んでくる。
﹁ね、姉ちゃんっ! メ、メール⋮⋮ああ⋮⋮もう、読んじゃった
⋮⋮?﹂
この世の終わりが来たようにうちひしがれる優。香奈は眉をひそ
めた。
﹁読んだけど⋮⋮何これ?﹂
454
﹁な、何でもないよ、間違って送っちゃったんだ、削除してよ!﹂
顔を真っ赤にして必死に訴える。香奈は涼しい顔をしている。
﹁何をどう間違えたらこんなのを姉に送るよの? 分かるように説
明して。あなたがサブカルチャーに造詣が深いのは知っているけど、
その関係?﹂
﹁サブカルって⋮⋮普通にオタクって言っていいよ! 変に気を遣
われるとよけい気分悪いよ!﹂
香奈の弟、優は、いわゆるオタクである。
姉の香奈は父親の道場で空手を習い、黒帯も持っている文武両道
の少女だが、対照的に優は、女の子っぽくて線の細い少年だ。
父親は優をもっと男らしくしようと小学生のころ道場に通わせた
のだが、なよっとした彼は上達が非常に遅く、稽古にとてつもない
ストレスを感じているようだったので、本人の希望もあってやめさ
せた。
体育会系はからきしダメな優だが、その代わり彼には芸術面の才
能がある。幼少のころから絵が上手く、何度も賞を取っている。
小学校高学年になってからは、アニメやライトノベルなどのサブ
カルチャーにハマった。部屋にはそういった系統のポスターが貼ら
れ、フィギュアが並んでいる。
インドア系ではあるが、一昔前のキモオタというわけではない。
それなりに友人もいるし、アルバイトができる程度の社会性も持ち
合わせている。現代的な、﹁リア充オタク﹂だ。
﹁正直に話しなさい。大丈夫よ、お姉ちゃんそういうの理解あるか
ら。絶対変に思ったり、バカにしたりしないわ﹂
優は飼い主に叱られた犬みたいな顔をした。
﹁本当に、変に思わない⋮⋮? 人にも言わない⋮⋮?﹂
約束する、と香奈は言った。優は覚悟を決めて、ごくりとつばを
455
飲んだ。
﹁⋮⋮俺、イラストノベル描いてるんだよ﹂
決まり悪そうに、横を向いて優は話した。
﹁イラストノベル? 何それ?﹂
﹁⋮⋮漫画とラノベの中間っていうか、場面ごとにイラストがあっ
て、それに文章がついてるの。新作のストーリーを思いついたから、
メモ代わりにメールで自分に送ろうとしたら、間違って姉ちゃんに
⋮⋮﹂
﹁ふーん⋮⋮セリカってのは? あなたが考えたキャラクター?﹂
﹁﹃馬毛村立チャーハン学園﹄に出てくる女の子だよ⋮⋮二次創作
⋮⋮﹂
﹁チャーハン学園って、何それ?﹂
﹁知らないのかよ、﹃このラノベがパネェ大賞﹄で1位取った作品
だよ。いますごいメディアミックスされてんじゃん﹂
﹁知らないわよ⋮⋮なるほどね、だいたい分かったわ。イラストノ
ベルってのは、絵本みたいなものなのかしら? 内容は大人向けみ
たいだけど﹂
優はちょっとムッとした顔をした。
﹁何だよ、バカにしないっていったくせに﹂
﹁してないわよ、ねえ、見せてよ﹂
﹁⋮⋮えっ!?﹂
ギョッとする優。
﹁これまでに描いたのあるんでしょ? 見せてよ。でないと、メー
ルお父さんに転送するから﹂
☆
強力な弱みを握られた優は、姉に従うしかなかった。
二人は優の部屋に移動した。優がお年玉とバイト代をつぎ込んで
買った、彼専用のパソコンを立ち上げる。
456
﹁紙ではないの?﹂
﹁イラストは紙に描くけど、それスキャンして、文章はソフト上で
入れるから⋮⋮﹂
優はブラウザを立ち上げ、pixivにアクセスした。姉の顔を
チラッと見てから、自作のイラストノベルを開く。
﹁これだよ⋮⋮﹂
マウスとイスを姉に譲る。モニターを見つめ、真剣な表情ででペ
ージをめくる香奈。
そのそばで、優はそわそわしながら姉の様子をうかがっていた。
家族にエロ創作物を見られているのだ、落ち着いてはいられないだ
ろう。
高校生の男女が、放課後の教室でセックスする内容だった。
萌え系のアニメ絵がカラーで描かれている。中学生が描いたとは
思えない、秀逸なイラストだった。
ページをめくるにつれ、だんだんと絵とストーリーがR−18に
なっていく。最後は女の子が絶頂を迎えるシーンで終わっていた。
読了し、マウスから手を離す香奈。優は緊張で胸がドキドキした。
﹁ど、どう⋮⋮?﹂
香奈はイスを回し、強ばった顔の優に向き直った。
﹁そうね⋮⋮結構、面白かったわ﹂
﹁そ、そう!?﹂
優の顔に喜びの色が差す。
﹁優、あなた、絵が前よりずっと上手くなったわね。驚いたわ。女
の子も可愛く描けてるし、もうちょっと上達したら商業でも通用し
そうよ。
文章は文法的におかしいところもなくて、読みやすかったわ。中学
生でこれだけ絵と文章がかけたら、すごいと思う﹂
﹁ほ、本当に!?﹂
﹁ただ、惜しむらくは⋮⋮﹂
香奈は口に手を当て、眼を細めた。満面の笑みだった優の顔が、
457
不安に陰る。
﹁ストーリーが単純すぎるわね。これ、誰もいない教室に連れ込ん
で、やるだけじゃない?﹂
﹁ぐっ⋮⋮!﹂
痛いところを突かれ、優は胸を押さえた。
﹁で、でもさ、姉ちゃん。セリカは原作でM設定なんだよ。Mの子
が学校でやられるって、興奮しない?﹂
﹁え? Mなの、この子?﹂
香奈の眼がキラーンと光を放った。
﹁じゃあ、なおさらシチュエーションを工夫しなくちゃ。さっきの
メールのストーリーも、岩場に連れ込んでセックスするだけでしょ
? もっと捻らないと。絵と文章はいいんだから、もったいないわ
よ﹂
﹁や、野外だよ? Mの子と野外で⋮⋮セ、セックス⋮⋮するんだ
から、それだけで⋮⋮﹂
露骨な言葉を口に出すのを恥ずかしがる優を、香奈は可愛いなと
思った。
﹁甘いわね。岩場って言っても、誰もいないところでしょ? その
程度じゃ読者は満足しないわよ﹂
﹁⋮⋮じゃあ、どうしたら⋮⋮﹂
シュンとしてしまう優。香奈はあごに手を当てた。
﹁例えば⋮⋮海水浴客で賑わうビーチで、テントの中でするとか﹂
﹁テ、テント?﹂
﹁野宿用じゃなくて、日除けの簡易テントがあるのよ。その中です
るの﹂
﹁な、なるほど、周りに人がいっぱいいる中で、テントの中で隠れ
てするんだ⋮⋮﹂
優は眼からウロコ顔が落ちたという顔をした。
﹁ああ、そうだわ。そういうテントって、虫除けのメッシュがつい
ているのもあるのよ。完全に隠れてしまうんじゃなくて、メッシュ
458
だけ閉じてするとか﹂
﹁メ、メッシュ!? いやいや、中見えちゃうでしょ!?﹂
大胆なアイデアに、驚いて眼を丸くする。
﹁明るいところから暗いところは見えないのよ、マジックミラーみ
たいなものね。でも、中から外は見えるの。セリカはテントの外を
海水浴客が通るのを眺めながら、声を押し殺して犯されるの﹂
﹁うっわぁ、いやらしい⋮⋮そんなすごいシチュエーション、どう
やったら思いつくんだよ⋮⋮!﹂
優は尊敬の眼差しで姉を見つめた。手放しで褒められ、香奈は気
分が良かった。
﹁そう? じゃあ、こういうのはどうかしら? セリカのあえぎ声
に気づいた子供が、テントに近づいて来るの。
薄いメッシュ一枚を隔てて、手が届きそうな距離に子供がいるのに、
セリカは必死で声を抑えて、絶頂を迎えるの﹂
﹁うわぁ! すげえ! 超やらしい! 姉ちゃん天才だ!﹂
優はワールドカップで日本が勝ったように喜んだ。香奈は得意な
気分だった。
﹁おお⋮⋮何だか創作意欲が湧いてきた⋮⋮! 姉ちゃんありがと
う! 俺、この話描くよ!﹂
両手にこぶしを握って、スーパーサイヤ人に変身する悟空のポー
ズを取る優。
弟の力になることができて、香奈は満足だった。そして、少々調
子に乗った。
﹁わたしのアドバイスが役立って嬉しいわ。描いたらまた見せてち
ょうだい。そうだ、いっそのこと、絶頂を迎えた後に、アナルまで
犯されてしまうってのはどう?﹂
ガッツポーズを取ってやる気満々になっていた優が、ピタリと動
きを止めた。表情がニュートラルになる。
﹁え? アナル? いやいや、それはないでしょ?﹂
急に否定され、香奈はショックを受けた。
459
﹁えっ⋮⋮! だ、だってセリカはMなんでしょ? ア、アナルを
犯されたら、喜ぶんじゃないの?﹂
優はあり得ないという顔をして、首を横に振った。
﹁いやいやいや、セリカと相手の主人公は、互いに好意を持ってる
んだよ。それなのに、主人公がアナルまで犯さないでしょ? そこ
までいったら、本当にレイプだよ﹂
香奈の頬を、冷たい汗が流れた。
﹁そ、そうかなぁ⋮⋮Mの子なら、好きな人だったら受け入れちゃ
うんじゃないかなぁ⋮⋮﹂
﹁アナルを犯されても平気だったら、Mじゃなくてド変態だよ﹂
﹁ゲハッ!!﹂
香奈が盛大にむせた。ゲホゲホと苦しそうに咳き込む。
﹁ね、姉ちゃん! 大丈夫!? どうしたの急に⋮⋮?﹂
心やさしい優は、姉の背中をさすった。喉が痛くなるほど咳き込
み、香奈は涙目になった。
﹁だ、大丈夫⋮⋮ゆ、優⋮⋮イラストノベルの話はもういいでしょ
? わ、わたし、部屋に戻るわ⋮⋮﹂
﹁う、うん⋮⋮今日はありがとう。姉ちゃんのアドバイス、すごい
役に立ったよ。もういいから、部屋でゆっくり休んで。体調悪いよ
うだったら、俺を呼ぶんだよ?﹂
﹁う、うん⋮⋮ありがとう⋮⋮も、もう大丈夫だから⋮⋮おやすみ
なさい⋮⋮﹂
優は心から心配そうにしていたが、香奈は肩を支えようとする手
を振りほどいて、優の部屋を出た。
ふらふらと自室に戻り、倒れるようにベッドに突っ伏す。
﹁⋮⋮だ、誰がド変態よ⋮⋮うう、くそぉ⋮⋮﹂
頭を抱えて悶絶する。サラサラのボブカットがぐしゃぐしゃにな
った。
﹁こ、これというのも、あのシスコンの変態が⋮⋮ああもう! 今
度会ったら急所を滅多突きにして殺してやる!﹂
460
香奈は枕を自分の彼氏に見立て、鋭い手刀を何度も突き刺した。
あつし
やがて枕カバーが破れ、白い羽毛が部屋中に飛び散った。
☆
﹁ふぇ⋮⋮ふぇっくしゅん!!!﹂
一ノ瀬家のリビング。テレビを見ていた淳は、突然大きなくしゃ
みをした。
﹁わっ! お兄ちゃん、大っきなくしゃみだね。風邪?﹂
未羽がびっくりして言った。人差し指で鼻をこする淳。
﹁ふわぁ⋮⋮い、いや、急に鼻がむず痒くなって⋮⋮誰か噂でもし
てるんだろ﹂
﹁香奈ちゃんじゃないの? 今ごろ部屋でお兄ちゃんのこと思って
オナニーしてたりして?﹂
﹁いや、そんなこと⋮⋮そうだったら嬉しいなぁ⋮⋮﹂
﹁たまには電話でもしてみたら? テレフォンセックスできるかも
よ?﹂
﹁そうだな⋮⋮恋人なんだし、用がないのに電話してもいいよな?﹂
﹁﹃声が聴きたくて﹄とか言うんだ? うひゃぁ、恋人っぽいねぇ
!﹂
未羽に冷やかされながら、淳は香奈に電話した。電話に出た彼女
はなぜか逆上していて、淳に猛烈に罵声を浴びせたあと、一方的に
電話を切った。
真っ白な灰のようになって立ちすくむ兄を、未羽はわけも分から
ず呆然と眺めていた。
おわり
461
462
︻後日談15︼お待ちかねリモコンバイブ回 その①︵前書き︶
お待たせしました、後日談15をお届けします。
今回は香奈ちゃんメインのおバカ回ですw
3P成分は薄めですが、そのぶん別の方向に力を注ぎました。
楽しんでいただけたら幸いです。
463
︻後日談15︼お待ちかねリモコンバイブ回 その①
日曜日の朝、俺と未羽は香奈ちゃん家に向かっていた。
昔の武家屋敷みたいな立派な家が見えてきた。香奈ちゃん家は空
手の道場もあるので、とてもでかい。
戦前に建てられたそうだが、古びてはおらず、歴史建造物のよう
な趣がある。
木戸を開け、門をくぐる。よく手入れされた庭が広がっている。
﹁やあ、一ノ瀬君じゃないか。未羽君も﹂
庭木の手入れをしていた香奈ちゃんのお父さん︵将来﹃お義父さ
ん﹄になるかもしれないが、ここでは﹃お父さん﹄にしておく︶に
声をかけられた。作務衣がめちゃくちゃ似合っている。
お父さんは空手道場の主であり、香奈ちゃんの師匠でもある。ス
キンヘッドで、背はさほど高くないが、鋼のような体付きをしてい
る。
﹁おはようございます! お邪魔します!﹂
俺は素早く45度に頭を下げ、大きな声で挨拶した。お父さんは
体育会系を好むので、こうして野球部式の挨拶をすると喜ばれるの
だ。
﹁おじさん、おはようございます﹂
未羽もにこやかに挨拶する。こっちは体育会系ではないが、俺よ
りずっと印象が良いのは間違いない。
﹁一ノ瀬君、きみ、うちの香奈と交際しとるそうだな。あいつは気
が強いが、あれで家庭的なところもあるいい娘なんだ。大事にして
やってくれよ、はっはっはっ﹂
﹁はっ、はい! ご挨拶が遅れてすみませんでした!﹂
464
お父さんは、この通り快活な方だ。それにしても香奈ちゃん、も
う俺たちのこと話してたんだな⋮⋮。
俺は以前からお父さんに気に入られてたから、快く交際は認めて
もらっているようだが⋮⋮先に言っといてくれよ、緊張するじゃな
いか。
玄関の戸がからからと開き、香奈ちゃんが顔を出した。
﹁おはようございます﹂
いつもどおりのクールな表情。服はひらっとした膝下丈のスカー
トに、フェミニンなブラウス。清楚なお嬢様っぽい格好で、すごく
可愛かった。
﹁おはよう﹂
﹁おはよー、香奈ちゃん﹂
俺と未羽もそれぞれ挨拶を返す。
﹁それじゃあ、行きましょうか。行ってきます、お父さん﹂
剪定ばさみを操りながら、お父さんは﹁オウ﹂と言って右手を挙
げた。
☆
三人で駅に向かって歩く。しかし、いくらも歩かないうちに、先
頭を歩いていた香奈ちゃんが、足を止めて振り向いた。
﹁先日は取り乱してしまい、すみませんでした﹂
深々と頭を下げる。一昨日の晩、電話をかけてきた俺に罵声を浴
びせたことを謝っているのだ。
そのときは面食らってしまって戸惑うばかりだったが、翌日メー
ルや電話で香奈ちゃんが怒っている原因を聞き出し、平謝りした。
おかげで機嫌を直してもらうことができたが、こんな風に殊勝に
出られると、こっちが困ってしまう。
﹁か、香奈ちゃん、頭上げてくれよ、すんだことをとやかく言う気
はないから﹂
465
俺がそう言うと香奈ちゃんは上体を起こした。すまなそうな顔を
しているかと思ったら、若干ジト眼だった。
あつし
﹁わたしが謝っているのは一昨日理由も言わず罵声を浴びせたこと
に対してだけで、その他のことは徹頭徹尾隅から隅まで淳さんが悪
いですから、さほどすまないと思っているわけではありません。て
いうか、上から目線にイラッとしました﹂
﹁謝るか責めるかどっちかにしてくれないかな!?﹂
やっぱり殊勝な子じゃなかった⋮⋮。
だいたい、元々香奈ちゃんをアナル開発したのは未羽であって、
こいつも同罪だと思うんだけど⋮⋮全然未羽は責めないのね⋮⋮。
﹁ごめんね、香奈ちゃん、うちのお兄ちゃん変態で。さ、気を取り
直して、行こ﹂
未羽が香奈ちゃんの手を取って歩き出す。当たり前のように恋人
つなぎだった。
﹁それにしても、初デートがカラオケで妹同伴なんて⋮⋮お弁当を
食べたときにも言いましたが、もうちょっと人に自慢できるような
男女交際はできないんですか?﹂
﹁今日の計画立てたのは未羽だよ⋮⋮分かったよ、今度は二人きり
でロマンチックなところへ行こう。湖畔でボートとかどうだ?﹂
﹁えー? いいなあ、あたしも行きたい﹂
﹁じゃあ、未羽も一緒に行きましょう﹂
﹁お前が妹同伴望んでんじゃねえか!﹂
未羽がいると、俺と香奈ちゃんのデートに妹がついてきてるんじ
ゃなくて、妹が親友と遊んでいるとこへ俺がついて行ってるような
雰囲気になるんだよな⋮⋮。
まともな男女交際できるんだろうか、俺たち?
﹁んー、ここがいいかな? 香奈ちゃん、ちょっとこっち来て﹂
﹁え? 未羽、駅はこっち⋮⋮﹂
未羽が手を引いて、香奈ちゃんを狭い路地に連れ込む。俺もあと
をついていった。
466
電柱やら塀やらに隠れた、通りからは目につかない隙間へ、香奈
ちゃんを押し込む。
﹁み、未羽⋮⋮!?﹂
香奈ちゃんの顔に早くも怯えの色が浮かぶ。未羽は楽しそうに眼を
輝かしている。
﹁今日はねえ、いいもの持って来たんだよ∼﹂
バッグをあさる未羽。
﹁あった、ほら、ジャーン!﹂
取り出したものを香奈ちゃんの目の前にかざす。
香奈ちゃんは最初ポカンとしていたが、それが何かを察するなり、
眼を見開き顔を真っ赤にした。
﹁み、未羽! こ、これバイブでしょ!?﹂
﹁当ったりー! リモコンバイブだよ﹂
未羽が手にしているのは、長さが10センチくらい、太さがフラ
ンクフルトサイズの、ピンク色のバイブである。
ちょうどGスポットに当たる部分で頭がくびれている。といって
も、単純に円筒形をくびれさせた形ではなく、微妙な膨らみとくび
れを有している。女体研究の成果がうかがえる形状だ。
﹁見るからに気持ちよさそうだよね。こっちはリモコン、たまごっ
ちみたいでしょ。香奈ちゃん、ちょっとバイブ持ってて﹂
﹁えっ⋮⋮ちょ、ちょっと、未羽!﹂
未羽は無理やりバイブを手渡した。香奈ちゃんは聖火ランナーみ
たいにそれを持った。
タタッと道路の反対側へかけていき、振り向いてスイッチを入れ
る。
バイブが動き出し、香奈ちゃんがビクッとした。
﹁な、何これ!? 遠隔操作できるの!?﹂
バイブは知っててもリモコンバイブは知らなかったらしい。俺た
ちの意図を読み取り、香奈ちゃんは顔を青くした。
バイブは携帯のように振動するタイプではなく、ウネウネと動く
467
やつだ。
首を回すように、先端の丸みを帯びた部分が円を描いてうねる。
すげぇいやらしい動きだ。おまんこに入れればGスポットを適確に
刺激するだろう。
﹁今日はこれ入れてお散歩だよ、香奈ちゃん﹂
これからピクニックに行くような爽やかさで未羽が言う。香奈ち
ゃんがさらに真っ青になった。
﹁お、お散歩って⋮⋮! む、無理無理無理!! こ、こんなの入
れて歩けるわけないでしょ!﹂
ウネウネと動き続けるバイブを、毒蛇か何かのように、できるだ
け手を伸ばして身体から離す。前屈みになって、何故かスカートの
上から股間を押さえていた。
未羽がリモコンのスイッチをピッと切って、香奈ちゃんに走り寄
る。
﹁はい、香奈ちゃん、スカート持ってて﹂
ひらひらのスカートを、ピラッとめくる。
﹁いやぁっ!﹂
慌ててスカートを押さえる香奈ちゃん。助けを求めるように俺の
顔を見る。
眉を八の字にして怯えるその表情を見て、恋人である俺は︱︱勃
起した。
﹁お、お願い、未羽⋮⋮! む、無理だよぉ⋮⋮﹂
﹁大丈夫、ちっちゃいし平気だよ﹂
﹁だ、だめだよぉ⋮⋮あ、あんな動きしたら⋮⋮イ、イっちゃうよ
ぉ⋮⋮﹂
なかなか香奈ちゃんが大人しくしないので、未羽は﹁もう﹂と言
って立ち上がった。
お母さんが子供を叱るような顔で、香奈ちゃんを睨みつける。
﹁み、未羽⋮⋮﹂
これまた叱られる子供のような顔で見つめ返す香奈ちゃん。どう
468
考えても非があるのは未羽なのだが。
未羽は、﹁もう⋮⋮しょうがないなあ﹂と言って表情を緩めた。
香奈ちゃんに近寄り、自然にキスをする。
﹁んっ⋮⋮﹂
舌を潜り込ませ、腕を背中に回し、ぎゅっと抱きしめる。
路上でキスされた香奈ちゃんは一瞬戸惑ったが、直ぐにへにゃん
となって、懸命に舌を絡めた。
美少女二人のべろちゅーは、いつ見ても天使の戯れのような美し
さだった。
﹁ぷは⋮⋮﹂
たっぷりと舌を絡め合ってから、未羽は口を離した。
香奈ちゃんはとろんとした眼をして、はふぅ、と息をついた。唇
が唾液でぬめっている。エロい。
﹁香奈ちゃん、大好きだよ。だから、あたしのこと信じて。いい?
あたしの言うこと聞くんだよ?﹂
﹁はい⋮⋮﹂
﹃はい﹄って言っちゃったよ香奈ちゃん!? 洗脳されてるの!?
﹁じゃあ、今からこれ入れるよ? 痛くないように、ぺろぺろして﹂
未羽がバイブを香奈ちゃんの口の前に持って行く。
見るからにいやらしいそれを目の前にかざされ、彼女はちょっと
たじろいだ。
しかし、未羽が眼で威圧するので、香奈ちゃんは躊躇いながらも
口を開け、舌を伸ばした。
耳元の髪をかき上げながら、先っちょの部分をぺろりと舐める。
まんべんなく唾液をつけるため、未羽がバイブの向きを変える。
香奈ちゃんはミルクを飲む猫のように、ぺろぺろと舐めた。
﹁そうそう、いっぱい濡らすんだよ⋮⋮香奈ちゃん、﹃あーん﹄し
て﹂
言いなりの香奈ちゃんが口を開くと、未羽はバイブを突っ込んだ。
﹁んむ⋮⋮んん⋮⋮﹂
469
眉を寄せ、バイブを咥えてしゃぶる。無理やりフェラをさせられ
ているみたいで、すげぇエロかった。
充分潤ったところで、未羽はバイブを引き抜いた。香奈ちゃんの
唇との間に、唾液が蜘蛛の巣のように細い糸を引く。
﹁おりこうさんだね。それじゃ、早速入れてみようか?﹂
未羽が香奈ちゃんの足下にしゃがみ込む。のれんのようにスカー
トをめくると、頭と手を突っ込んだ。
﹁きゃっ⋮⋮! み、未羽! や、やっぱりだめぇ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんが両手でスカートを押さえる。
だが未羽は、遠慮なく香奈ちゃんのパンツをスルッと膝下まで引
き下げた。
﹁ひゃっ! やっ⋮⋮いやぁ!﹂
﹁香奈ちゃん、スカート邪魔だよ、自分でめくってて﹂
スカートから頭を出し、香奈ちゃんを見上げて未羽は言った。
﹁い、いや⋮⋮こ、ここ、外なのにぃ⋮⋮﹂
﹁言うこと聞くまで、やめないよ? 早くしないと、人が来るかも﹂
﹃人が来る﹄という言葉で、香奈ちゃんはビクッとした。きょろ
きょろを当たりを見回す。今は人影はない。
容赦のない未羽に、香奈ちゃんは服従するしかなかった。彼女は
下唇を噛んで、スカートをめくった。
﹁もっと上まで﹂
﹁えっ? み、見えちゃうよぉ⋮⋮﹂
﹁お兄ちゃんにも見せてあげるんだよ、香奈ちゃん﹂
良かった⋮⋮さっきから全然出番なかったんだけど、空気じゃな
かった、俺。
香奈ちゃんが再び助けを求めるような視線を送ってくる。俺はキ
ラリと歯を光らせ、親指を立てて見せた。
彼氏が全く頼りにならないと悟った香奈ちゃんは、お歳暮をお菓
子だと思って開けたらサラダ油だったときの小学生のような顔をし
た。
470
諦観の溜息をつき、口を結んで、覚悟を決める。
香奈ちゃんはさらに30センチ高く、スカートをまくった。
下腹部まで露わになり、真っ白な肌が眼を射るように眩しかった。
16歳になっても未だつるつるのスリットが、清々しい朝日のもと
にさらけ出される。
香奈ちゃんは顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えた。公道で羞恥に
顔を染めながらスカートをめくり、秘部を晒している美少女の絵は、
とてつもなくいやらしく、犯罪的だった。いや、犯罪だよな、これ?
﹁そうそう、いい子だよ、香奈ちゃん。ちょっと脚開いて﹂
﹁⋮⋮﹂
素直に従って早く終わらせた方が賢明だと悟ったのか、香奈ちゃ
んは素直に脚を開いた。
すねの辺りまで下げたパンツが邪魔して、脚は少ししか開けなか
ったが、それでもスリットが股下まで露わになった。
剃り跡やくすみのない、天然のパイパンだ。いつ見ても美しいと
思う。
未羽は、両手でスリットをくぱぁと広げた。ピンク色の襞が顔を
出すと、香奈ちゃんが﹁あっ⋮⋮﹂と声を漏らした。
﹁あれ? 少し濡れてるね? バイブ舐めて興奮しちゃったんだ?﹂
﹁やっ⋮⋮! い、言わないでぇ⋮⋮﹂
﹁いやらしいね、香奈ちゃん⋮⋮ふふ、入れるよ⋮⋮﹂
未羽はおまんこにバイブの先端を当てがった。敏感な部分に触れ
られて、香奈ちゃんがピクッと身体を震わせる。
﹁いくよ⋮⋮﹂
ぬぷっ、と頭の部分がおまんこに潜り込んだ。未羽がさらに手を
進める。
唾液と愛液による潤滑のおかげで、バイブはすんなりと香奈ちゃ
んのおまんこに呑み込まれた。
﹁ふっ⋮⋮! あっ、あうっ⋮⋮!﹂
未羽の肩に手を置いて、香奈ちゃんが妖艶な声を漏らした。バイ
471
ブを入れただけなのに、シチュエーションのせいか、えらく感じて
しまっていた。
﹁すんなり入ったね⋮⋮まっすぐ立ってみて。どう? 出てきそう
?﹂
未羽は香奈ちゃんのパンツを元通りに上げて、立ち上がった。
香奈ちゃんは内股になって、膝をすりあわせている。顔を赤くし
てもじもじしているのが、すごく可愛かった。
﹁⋮⋮く、くびれにかかって、出てはこないみたい⋮⋮﹂
﹁そう? 良かった。じゃあ動かすよ? 強さ三段階あるの、最初
は﹃1﹄ね﹂
たまごっち型リモコンのスイッチをピッと入れる。とたんに香奈
ちゃんが股間を押さえて前屈みになった。
﹁きゃあっ! あっ⋮⋮あぁっ⋮⋮な、何これ⋮⋮ふあっ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんは顔を真っ赤にして身をよじった。生まれたての子馬
にみたいに脚をがくがくさせている。
﹁やっ、やあぁ⋮⋮! だ、だめぇ! み、未羽、止めて!⋮⋮﹂
﹁わあ、﹃1﹄でこれ? すごぉい﹂
ピッとスイッチを切る。香奈ちゃんは膝に手をついて、はぁはぁ
と荒い息をした。
﹁気持ち良かった? 香奈ちゃん?﹂
﹁み、未羽! お、お願い、許して! こ、こんなの⋮⋮イっちゃ
うよぉ!﹂
泣き出しそうな顔をして訴えるが、未羽はすでにエロエロ大魔王
の顔になっていた。歓喜の薄笑いを浮かべ、眼が正気じゃなくなっ
ている。
﹁何言ってるの、香奈ちゃん。お楽しみはこれからだよ。さあ、駅
に行こ﹂
香奈ちゃんの手を引いて歩き出す。
﹁あっ⋮⋮こ、これ入れて歩くの!? いやぁ!﹂
足をもつれさせながら未羽に引っ張られていく香奈ちゃんが、今
472
度はあまり期待していないような顔で、振り返って俺を見た。
未羽の暴走が若干心配になってきた俺は、苦笑を返した。
さすがにちょっと怒った顔で睨まれたが、香奈ちゃんはすぐに前
を向き、小走りになって未羽の横に並んだ。
☆
473
︻後日談15︼お待ちかねリモコンバイブ回 その②
真ん中に香奈ちゃん、両脇に俺と未羽が並んで、俺たちは駅へと
歩いた。通りにはまばらに人影がある。
﹁⋮⋮こ、これ⋮⋮普通に歩いてるだけでも、中でこすれて⋮⋮﹂
そわそわと落ち着かない香奈ちゃん。未羽は取り合わず、タタッ
と2メートルほど先へ走った。振り返り、俺たちと向かい合わせに
なって、後ろ向きに歩く。
﹁ふわっ!⋮⋮あうっ⋮⋮﹂
急に香奈ちゃんがよろめいて、俺に腕にすがった。未羽が手の中
に持ったリモコンのスイッチを入れたらしい。
﹁ふぅっ⋮⋮んっ⋮⋮あっ、あっ⋮⋮﹂
腕にぎゅっとしがみつき、身体を震わせる。肘に当たるおっぱい
の、超高校級の量感と柔らかさ。うはあ、堪んねえ。
三十代くらいの男性が、俺たちに不審そうな視線を向けて通り過
ぎていった。香奈ちゃんは俺の二の腕に顔を押しつけるようにして、
視線を避けた。
﹁み、未羽! お、お願い、止めてぇ! ひ、人がいるのに⋮⋮ん
っ⋮⋮あぁっ⋮⋮﹂
涙目で懇願するが、それはエロエロ大魔王を喜ばせるだけだった。
﹁だめだよ香奈ちゃん、これから電車乗るんだから、慣れておかな
くちゃ。﹃2﹄にしてみるね﹂
﹁んあっ! ふわ⋮⋮だ、めぇ! あんっ、つ、強っ⋮⋮いやぁ⋮
⋮!﹂
ますます強く俺の腕にしがみつく。頬が赤く染まって、おでこが
ちょっと汗ばんでいる。
羞恥プレイに悶える香奈ちゃんがエロすぎて、俺は歩きながらフ
474
ル勃起していた。股間が隠れるくらいの長めのシャツを着てきて良
かった⋮⋮職務質問されるわ。
﹁あっ、早乙女せんぱーい!﹂
駅の建物が見えてきたころ、50メートルほど前方から声をかけ
られた。遠くなのによく通る声だ。早乙女ってのは香奈ちゃんの名
字だ。
adidasiのスポーツバッグを持った中学生くらいの女の子
が駆け寄ってくる。ショートカットの可愛らしい子だ。
ちなみにadidasiというのは、旨味調味料の代名詞とも言
うべき﹃味だし﹄で知られる食品メーカーで、最近はスポーツ用品
にも事業進出している。ロゴマークの波打つ三本線は、海中で揺ら
ぐ昆布を表している。
さすがにやばいと思ったのか、未羽はスイッチを切った。
香奈ちゃんが安堵の溜息をつく。ホっとしたら俺の腕にすがりつ
いていることに気づいて、慌てて離れた。
﹁おはようございます! 早乙女先輩!﹂
﹁お、おはよう、夏希﹂
道場の後輩なの、と香奈ちゃんは夏希ちゃんを紹介した。
夏希ちゃんは俺たちにも﹁こんちわ﹂と頭を下げると、香奈ちゃ
んにすり寄り、脇腹を肘でつついた。
﹁先輩、彼氏できたって噂、聞きましたよ∼、この人ですか?﹂
声をひそめているつもりかもしれないが、全部聞こえていた。
﹁お父さんが言いふらしてるの? 困った人ね。ええ、そうな⋮⋮
ひうっ!﹂
背中に氷でも当てられたように、香奈ちゃんがビクッとした。
うわ、未羽のやつ、後輩の前でスイッチ入れやがった。
﹁わっ! せ、先輩、どうしました!﹂
﹁な、何でもない⋮⋮ちょ、ちょっとしゃっくりが⋮⋮ひっ、ひっ
く⋮⋮﹂
﹁大っきなしゃっくりですね、大丈夫ですか?﹂
475
夏希ちゃんが心配そうに肩に手をやる。あえぎ声を器用にしゃっ
くりに変えてごまかした香奈ちゃんは、気合いで背を伸ばした。
アイコンタクトで未羽に﹁お願いだから止めて﹂と訴えるが、そ
んなことを聞き入れるエロエロ大魔王ではない。
﹁こ、この人がわたしの彼の、淳さん。こっちは友達の未羽よ⋮⋮
んっ⋮⋮くぅっ⋮⋮﹂
﹁まだしゃっくり止まらないですね? へ∼、この人が⋮⋮背高く
て、カッコいいじゃないですか∼﹂
﹁そ、そう?⋮⋮はぅ⋮⋮﹂
香奈ちゃんは懸命に作り笑いを浮かべたが、眉がピクピクしてい
た。夏希ちゃんは腕の時計を見た。
﹁あ、もうこんな時間だ。あたし、友達とジム行くんですよ、急が
なきゃ。それじゃあ、彼氏さん、未羽さん、さよなら∼﹂
そう言って、夏希ちゃんは元気に手を振って去って行った。
香奈ちゃんは胸の前で小さく手をふって彼女を見送ると、よろけ
て俺にもたれた。
﹁んっ⋮⋮あっ、あぁっ! み、未羽⋮⋮も、もうやめて⋮⋮はぁ
っ!⋮⋮﹂
後輩が去るなり、香奈ちゃんは路上であえぎ声を漏らした。メガ
ネをかけたOL風の女性が、ちらっと視線を注いで歩き去った。
未羽がスイッチを切る。香奈ちゃんはバイブが止まってもはぁは
ぁと肩で息をしていた。
﹁う∼、ぞくぞくするね。さあ、次は電車だよ、香奈ちゃん﹂
☆
﹁香奈ちゃん、そこ座って﹂
電車の中は席がまばらに空いていた。未羽は二人分並んで空いて
いるシートを指差し、香奈ちゃんを座らせた。
﹁お兄ちゃん、あたしたちはこっち﹂
476
隣には未羽が座るものだと思っていたら、未羽は俺の手を引いて、
香奈ちゃんの向かいに座った。未羽が袖を引いて早く座るよう促す
ので、俺は仕方なく未羽の隣に腰を下ろした。
おさらいすると、俺と未羽が隣同士。向かいに香奈ちゃんが一人
で座っている状態だ。
ぼっちになった香奈ちゃんが、﹁わたしの隣り空いてるのに何で
そっちに座るのよ!?﹂と言いたげな視線を俺たちに向ける。もの
すごく不安そうで、額に縦線が入っていた。
香奈ちゃんの右隣は女子高生だ。電車が動き出す直前に二十代後
半くらいの女性が乗り込み、香奈ちゃんの左隣に座った。両側がお
っさんでなかったのは、香奈ちゃんにとって救いだろう。
ちなみに、リモコンバイブってのはぶるぶる振動するのが多いの
だが、そういうのは音が大きい。香奈ちゃんが入れているのはうね
うねと動くタイプで、こっちは音が小さい。さらにおまんこの中に
入れているので、外に漏れる音はさらに小さくなる。電車内くらい
の騒音があれば、音に気づかれる懸念はほとんどない。
ぷしーっとドアが閉まり、電車が動き出した。
横を見ると、未羽がこれからネズミーランドに行くようなウキウ
キ顔をしていた。⋮⋮香奈ちゃん、何でこいつと親友なんだろう⋮
⋮?
香奈ちゃんは落ち着かない様子で、ちらちらとこちらに視線を送
った。持っていた小さなバッグを股間に押し当てている。そんなこ
としても何のガードにもならないのだが。
香奈ちゃんの身体がピクッと震えた。
うわ、容赦ねえ⋮⋮両側に他人が座ってるのにスイッチ入れたよ、
うちの妹。
眉を八の字にして、香奈ちゃんが未羽を見つめる。未羽はうっと
りとした顔で彼女を見つめ返した。
さっきの夏希ちゃんに会ったときよりもずっと近く、脚が触れ合
う距離に人がいるのだ。
477
香奈ちゃんは歯を食いしばり、必死で声をこらえた。しかし、バ
イブの快感は強すぎて、完全に押し殺すのは難しいようだった。
香奈ちゃんは平静を装っているが、おまんこの中ではバイブがウ
ネウネと頭を振っている。
堪えようのない快感に、ときおりぶるっと身体が震える。不安で
青ざめていた顔が、すっかり紅潮していた。
半開きの眼は、理性と恍惚の間を行ったり来たりしている。快感
に我を忘れそうになると、ハッと気が付いて頭を振り、姿勢を正す、
その繰り返しだ。
両側の二人も、香奈ちゃんの様子がおかしいのに気づいたようだ。
右の女子高生は、スマホをいじりながら、時々香奈ちゃんに横目
を向けている。脚が触れ合っているから、身体を震わすのが分かる
のだろう。
左の女性は、もっと露骨に視線を向けている。両隣の乗客に不審
に思われているのを感じ、香奈ちゃんはますます顔を赤くした。
未羽がショートパンツのポケットからリモコンを取り出し、俺に
LEDの表示を見せた。
俺が未羽と眼を合わせると、彼女はニッと笑った。未羽がスイッ
チを押すと、LEDの点灯が﹃2﹄に変わった。
﹁⋮⋮あっ!﹂
一瞬、香奈ちゃんの身体が大きく震えた。思わず声を漏らしてし
まい、慌てて口を手で押さえる。
﹁ご⋮⋮ごほっ、ごほっ⋮⋮くっ⋮⋮﹂
香奈ちゃんはあえぎ声を咳にしてごまかした。女子高生はあから
さまに不審そうな顔を向け、お尻をずらして1センチでも遠ざかろ
うとする。
激しい羞恥に、香奈ちゃんの顔が真っ赤に染まった。目尻に涙が
浮かんでいる。
バイブはぐりんぐりんと頭を振って、Gスポットを刺激する。
香奈ちゃんはもうこちらを見ることもなかった。俯いて、眉間に
478
しわを寄せている。
声が出ないように手で口を強く押さえているので、鼻で息をして
いるのだが、その息が、ふー⋮ふー⋮と、やたら長い。
眼は半開きで、だんだん理性が遠のいているのか、焦点があって
いない。
未羽が俺の太ももを、ちょんとつついた。何か言いたそうにして
いたので、俺は彼女の顔に耳を近づけた。
︵香奈ちゃん、イっちゃいそうだね⋮⋮︶
未羽が耳元でささやく。俺は頷いて同意を示した。
そうじゃないかと思っていたが、未羽も同意見らしい。俺よりも
ずっと香奈ちゃんとのエッチ経験の多い未羽のことだ、間違いはな
いだろう。
香奈ちゃんは膝をぴったりと閉じ、床に足を踏ん張って、身体が
震えるのを押さえ込んでいる。
顔は湯気が出そうなほど火照っていた。額に汗がにじんで、前髪
が貼りついている。
香奈ちゃんが眼をきゅっと閉じた。彼女のことをよく知っている
俺たちは、もう香奈ちゃんには思考力が残っていないのが分かった。
もうすぐ、快感の波が、彼女の身体を駆け抜けていくだろう。大
っきな声出さなきゃいいけど⋮⋮。
﹁あの⋮⋮あなた、具合が悪いの?﹂
そのとき、左の女性が香奈ちゃんに話しかけてきた。
俺はびっくりして、リモコンを持つ未羽を見た。未羽もマジ顔に
なって、いつでもバイブを止められるよう、手にリモコンを構えて
いた。つーか、止めないのかよ⋮⋮。
話しかけたのは、髪の長い優しそうな雰囲気の女性で、香奈ちゃ
んの顔を心配そうにのぞき込んでいる。
香奈ちゃんはびっくりしてその女性を見返した。でも、口を開く
とあえぎ声が漏れてしまいそうで、返事ができない。
﹁さっきから様子が変だし⋮⋮顔が真っ赤だわ。身体が震えてるけ
479
ど、寒気がするの?﹂
そう言って女性は、香奈ちゃんの額に手を当てた。
初対面で普通こんなことはしないが、とても慣れた感じの仕草だ
ったので、香奈ちゃんは大人しく手を当てられていた。
﹁顔が真っ赤だから高熱があるのかと思ったけど、熱は大したこと
ないわね。あ、心配しないで、わたし、小学校で養護教諭をしてい
るの。具合悪いんでしょ? 我慢しない方がいいわ﹂
すごく親切な人だった。こう言われては返事をせずにはいられな
い。
香奈ちゃんは祈るような気持ちで未羽を見た。未羽もさすがに緊
張しているようだが、それでも止めようとはしなかった。
香奈ちゃんはあきらめて、強く口を押さえていた手をわずかに緩
め、隙間を空けた。手や顔がふるふると震えている。
﹁⋮⋮だ、大丈夫、です⋮⋮か、風邪をひいてて⋮⋮はぁっ⋮⋮げ、
げほっ! で、電車にも、酔ったかも⋮⋮あっ、くっ⋮⋮﹂
あえぎ声を漏らしながら、たどたどしく返事を返す。確かにすご
い重病人っぽかった。
﹁大丈夫じゃないでしょう、とても辛そうだわ。次の駅大きいから、
救護室があるはずよ。一緒に降りましょう﹂
﹁だ、大丈夫⋮⋮ふわっ⋮⋮ご、ごほん! お、お気遣いは⋮⋮く
っ⋮⋮﹂
絶頂が近づいているらしく、香奈ちゃんは息が荒くなっていた。
唇がわなわなと震えて、もうアヘ顔になりつつあった。
未羽がスッとリモコンを上げた。ようやく止めるのかと、俺は溜
息をついた。
細い指がスイッチをピッと押す。LEDが﹃3﹄に移動した。
﹁あぁっ!⋮⋮げ、げほっ!﹂
思いっきり声が出て、車内の視線が集中した。
﹁ちょ、ちょっと! 大丈夫!? 吐きそうなの?﹂
女性が香奈ちゃんの肩を抱いた。香奈ちゃんは堪らず女性に寄り
480
かかった。
﹁くうっ! んっ、はわぁ⋮⋮ごほっ、ごほっ⋮⋮﹂
必死で咳にしてごまかす香奈ちゃん。しかし、いよいよ強度﹃3﹄
の快感が、彼女を桃源郷へ連れて行こうとしていた。
﹁あっ⋮⋮けほっ⋮⋮ふうぅ⋮⋮﹂
﹁だ、大丈夫!? しっかり⋮⋮﹂
女性が香奈ちゃんの背をさする。隣の女子高生も心配そうに見て
いた。
﹁ふう⋮⋮はわ⋮⋮あぁ⋮⋮も、もう⋮⋮﹂
香奈ちゃんはぎゅっと眼を閉じ、身体を強ばらせた。おまんこか
ら全身へと、快感の波が広がっていく。
﹁んっ⋮⋮くぅ⋮⋮﹂
香奈ちゃんは大勢の乗客が見守る中で、絶頂を迎えた。全力で口
を押さえ、あえぎ声を抑える。
絶頂の波は何度も押し寄せ、その度に身体が、どくん、どくん、
と大きく震えた。
激しい羞恥が、快感を何倍にもしていた。あまりの気持ちよさに、
理性が散り散りになって飛んでいく。
﹁ふは⋮⋮はふぅ⋮⋮﹂
ようやく波が過ぎ去り、強烈な脱力感が香奈ちゃんを襲う。賢者
タイムを迎えた彼女は、電車内だということも忘れて、恍惚とした
表情をしていた。
ぐったりとして前のめりになるのを、慌てて女性が支えた。
﹁ちょ、ちょっと! 気を失っちゃったの!? だ、誰か手を貸し
て!﹂
☆
その後どうなったのかについては、簡単に述べる。
香奈ちゃんがイってしまってすぐに、電車は駅に着いた。
481
女性の呼びかけに応じた俺が、他人の振りをして香奈ちゃんに肩
を貸し、電車の外に連れ出した。
そこへ未羽が香奈ちゃんのクラスメイトだと名乗り出て、﹁救護
室に連れて行って家族に連絡を取るので、あとは任せて下さい﹂と
言ったのだ。
女性は心配そうにしていたが、未羽がしっかりした様子だったの
で、俺たちを信用し、任せてくれた。
実は急ぎの用があったそうで、俺たちと別れると急いで電車へと
駆けて行った。
自分の用を後回しにして香奈ちゃんの面倒を見ようとしていたの
だから、相当良い人だ。その良い人を兄妹で騙してる俺たちって⋮
⋮。
女性が立ち去ってから、香奈ちゃんは駅のホームでくすんくすん
泣いた。そりゃ泣くよ。
﹁ぐす⋮⋮うう、み、未羽のばかぁ⋮⋮わ、わたし、あんなたくさ
んの人の前で、イっちゃったよぉ⋮⋮﹂
未羽の肩に顔を押し当てて泣く。
端から見たら、俺が泣かして未羽が慰めてるように見えるだろう
なと思った。泣かせたの未羽なんだけど。
﹁ごめんね、香奈ちゃん。香奈ちゃんが可愛すぎるから、あたし、
抑えがきかなくなっちゃった﹂
﹁は、恥ずかしかったよぉ⋮⋮ふえぇん⋮⋮﹂
香奈ちゃんは三分間ほど泣いて、未羽とあっさり仲直りした。
そして、彼氏なのに全然助けようとしなかった俺に腹を立て、み
ぞおちに正拳突きを入れた。俺は悶絶し、歩けるようになるまでも
う三分間かかった。
俺、リモコンに触れてすらいないんだけど⋮⋮何で俺は殴られて、
未羽は責めないの⋮⋮?
☆
482
483
︻後日談15︼お待ちかねリモコンバイブ回 その③
俺たちが降りたのは、偶然降りる予定の駅だった。予定どおり、
俺たちは駅近くのカラオケボックスに向かった。
電車内で十数人の視線を浴びながらオーガズムを迎えるという、
おそらくAV女優くらいしかしたことのない経験をした香奈ちゃん
も、怒って帰ったりせず、カラオケについてきた。さすがエロエロ
大魔王の親友だ、並の神経じゃない。
﹁二時間、禁煙室で。ドリンクバーも﹂
受付でそう注文し、俺たちは部屋に通された。ごく普通のカラオ
ケルームだ。
各々、ドリンクバーで飲み物も用意した。準備万端だ。
﹁み、未羽ぅ、これ、早く取ってよぉ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんがスカートの上から股間を押さえた。
なんと、香奈ちゃんはまだバイブを抜いてもらっていなかった。
未羽が﹃カラオケ店に着いてから﹄と言って、トイレにも行かせな
かったのだ。
﹁はい、香奈ちゃんが一番に入れて﹂
未羽がカラオケのリモコンを差し出す。
﹁そ、そんなの後でいいから⋮⋮バ、バイブを⋮⋮﹂
﹁だーめ、曲入れてからだよ﹂
にこやかな顔をしているが、一度命令したことは絶対曲げない未
羽だった。
香奈ちゃんは溜息をついてリモコンを受け取ると、選曲して送信
した。
﹁はい、じゃあ、次はお兄ちゃんが挿れて﹂
﹁未羽!﹃いれて﹄の漢字が違ってるわよ!﹂
484
香奈ちゃんが鋭く突っ込んだが、間違いではなかった。
俺はすでにベルトを緩め、ズボンとパンツを下げていた。先っち
ょが我慢汁で濡れたペニスが、鉄のように硬くなって屹立している。
﹁何で脱いでるんですかっ! 淳さん!﹂
﹁香奈ちゃん、もう俺ちんこ破裂しそうだよ。下半身に血が集まっ
て貧血起こしそうだ⋮⋮﹂
俺は持参したコンドームを手早く装着した。みんなも、強制露出
プレイするときでも避妊を怠っちゃいけないぜ?
﹁ほら、香奈ちゃん、バイブ抜いてあげるよ﹂
香奈ちゃんのスカートに、未羽が頭を潜り込ませた。
﹁きゃっ⋮⋮! やぁっ!﹂
するするとパンツを下げ、パンツを足首から引き抜く。
スカートをめくり上げると、バイブを突っ込まれたワレメちゃん
が露わになった。スリットの周りが、愛液に濡れててらてら光って
いた。
﹁やっ⋮⋮いやぁっ! こ、こんなとこで⋮⋮﹂
﹁大丈夫だよ、ここ防犯カメラないから﹂
未羽の言うとおり、この店は部屋に防犯カメラがなかった。いつ
かエッチしに来ようと目を付けていたのだそうだ。⋮⋮アホだ、俺
の妹。
未羽はバイブを指でつまみ、わざとゆっくり引いた。
﹁あっ⋮⋮あふ⋮⋮﹂
ぬぽっ、とバイブが抜ける。未羽はそれを目の前に掲げ、愛おし
そうに見つめた。
﹁すごーい、こんなに濡れて⋮⋮温かくなってる⋮⋮﹂
香奈ちゃんが入れた曲のイントロが流れ、部屋がグルーブ感のあ
るダンスミュージックに満たされる。
未羽はバイブに舌を這わせ、香奈ちゃんの愛液を舐めとった。
﹁はう⋮⋮美味しい⋮⋮さあ、次はお兄ちゃんだよ﹂
俺は力強く頷き、香奈ちゃんに抱きついて持ち上げた。小柄な身
485
体は驚くほど軽くて、女の子らしさを感じさせた。
﹁きゃっ! やっ、いやぁ!﹂
﹁うう、今日は俺、朝から勃起しっぱなしで、堪んないよ⋮⋮香奈
ちゃんもう濡れ濡れだから、前戯なしでいいよね?﹂
﹁そ、そんな⋮⋮いやぁっ!﹂
いやなんて言われても、もう止まるもんじゃない。
俺は狙いを定めて、彼女を俺の腰に降下させた。背面座位だ。
MAXに勃起した俺のペニスは、充分すぎるほど潤っていた香奈
ちゃんのおまんこに、スムーズに侵入した。
﹁あっ⋮⋮! あうん⋮⋮!﹂
﹁うっわぁ⋮⋮すげえ、めっちゃ気持ちいい⋮⋮﹂
柔らかく温かな膣壁に包まれ、俺は歓喜のうめき声を漏らした。
朝からずっと視姦ばかりで我慢汁だだ漏れ状態だったので、やっ
とありつけたペニスへの直接刺激は、天国の味だった。
﹁ああ、俺のちんこが喜んでいる⋮⋮香奈ちゃん、動かすよ﹂
俺は香奈ちゃんの身体を背後からぎゅっと抱きしめ、腰を突き上
げた。
﹁あぁっ!⋮⋮あっ、あぁっ! やぁっ、そ、そんな激しく⋮⋮ふ
わぁっ⋮⋮!﹂
不自由な体勢だが、意外にペニスを先っちょから根元まで出し入
れすることができた。うん、普段鍛えてるおかげだな。野球やって
て良かった。
香奈ちゃんは俺が腰を突き上げるたび、大きなあえぎ声をあげた。
﹁はぁっ! んぁっ! あっ、あっ⋮⋮﹂
﹁はい、香奈ちゃん、もう曲始まってるよ﹂
俺の妹は、信じられないことに香奈ちゃんにマイクを差し出した。
歌えっての? この状況で?
﹁あっ⋮⋮! あぁっ! み、未羽⋮⋮い、いま無理⋮⋮はうっ!
⋮⋮﹂
当然香奈ちゃんは断ったが、ちょっと頭のおかしい俺の妹は、そ
486
んなこと聞くわけなかった。
﹁せっかくカラオケ来たんだから、歌おうよ。はい、マイク﹂
無理やりマイクを握らせる。香奈ちゃんは快感に朦朧となりなが
ら、何でこれがわたしの手の中にあるんだろう? といった顔で、
不思議そうにマイクを眺めた。
間奏が終わり、2番のオケが流れる。香奈ちゃんは条件反射で歌
い出した。
﹁♪た、退屈な恋がしたいなら⋮あんっ! ♪じゅ、純情な子を探
せばいいわ、はぁんっ!﹂
俺は構わずピストン運動を続けていたので、香奈ちゃんは歌の合
Love∼はぅん!﹂
me
glass あぁっ⋮⋮♪好きならできるでしょ
treat
間にあえぎ声をあげた。アンプを通していやらしい声が室内に響き
渡る。これ何てプレイだ?
a
﹁♪刺激が欲しいの、あふっ! ♪Don't
like
Burning
﹁うふふ、香奈ちゃんノリノリだね。あたしも気持ち良くなろうっ
と⋮⋮﹂
未羽はショートパンツを脱ぎだした。パンツも一緒に太ももまで
下げる。
未羽のつるつるワレメちゃんが顔を出した。美しいスリットが、
これまたいやらしい汁に濡れていた。
さっきまで親友のおまんこに入っていたバイブを、未羽はおまん
こに当てた。
﹁あふ⋮⋮大人のおもちゃって、初めて⋮⋮﹂
手を進めると、バイブはぬるりとおまんこに侵入した。
﹁はふ⋮⋮あっ、すごい⋮⋮膨らんだとこが絶妙に気持ちいいとこ
に当たってる⋮⋮﹂
挿入を終え、パンツとショーパンをはきなおす。
リモコンでスイッチを入れると、未羽はビクッと身体を震わせた。
﹁あぁっ!⋮⋮あっ、あっ、ひゃうっ! な、何これ⋮⋮? こ、
487
こんなに⋮⋮はうっ!﹂
ショーパンの上から股間を押さえ、びくんびくんと身体を震わせ
る。
﹁ああっ⋮⋮ふわっ、あぁんっ! い、﹃1﹄なのに、こんな⋮⋮
か、香奈ちゃん、よくこんなの電車の中で⋮⋮はぁんっ!⋮⋮﹂
﹁お前がやったんだよ!﹂
香奈ちゃんは感じまくって余裕がなかったので、俺が代わりに突
っ込んでおいた。
未羽はバイブの快感に身をよじりながら、香奈ちゃんのために2
曲目を入れた。
﹁か、香奈ちゃん⋮⋮あふぅ⋮⋮おっぱい舐めたいよぉ⋮⋮あん⋮
⋮﹂
後ろからペニスを突き上げられあえいでいる香奈ちゃんに、未羽
が寄り添う。服の中に手を入れ、ブラのホックを外す。
ブラウスをめくると、香奈ちゃんのメロンサイズ美乳がぽろんと
現れた。着衣で巨乳を晒す姿は、背徳的でいやらしかった。香奈ち
ゃんは2曲目のバラード曲を歌っている。
﹁♪切ない夜は⋮あっ!⋮やぁん⋮お、おっぱい見えちゃう ♪面
影を抱いて⋮あぁっ!﹂
﹁わぁい、香奈ちゃんのおっぱい、大好き、いただきます﹂
未羽が乳首に吸い付く。香奈ちゃんがあえぎ声を上げてのけぞっ
た。
はぅんっ!﹂
﹁あぁんっ! ♪届けるの空に∼ あっ、いい⋮⋮♪叶えてmy
wish∼
そのとき、ガチャッと部屋のドアが開いた。
﹁お待たせしま⋮⋮っ!﹂
時間が停止した。
入ってきたのは、制服を着た店員の女の子だった。トレイを持っ
たまま固まって、眼を丸くしている。
バックで挿入中の俺と香奈ちゃんは、もろに眼が合ってしまった。
488
香奈ちゃんはおっぱい丸出しである。
乳首をしゃぶっていた未羽も、ソフビ人形みたいに首を回して、
女の子の方を見た。
﹁あの⋮⋮焼きうどんお持ちしました﹂
﹁あ、頼んでないです﹂
俺が答えた。店員が入ってこないようにと、セルフサービスのド
リンクバーを注文しているのだ。頼むわけがない。
﹁えっ!? あっ、108号室だ! す、すみませんでしたっ!﹂
女の子は慌てて部屋を出て、ドアを閉じた。
香奈ちゃんの顔が、さーっと青ざめていく。
﹁⋮⋮み、見られたー! ああ⋮⋮もういやぁっ!﹂
顔を覆ってしまう。とりあえず店員が去ったので、俺はピストン
運動を再開した。
﹁あぅんっ! ちょ、ちょっと、お兄さんっ! だ、だめっ! て、
店長とか呼ばれるかも⋮⋮﹂
﹁か、香奈ちゃんっ! いま呼び方が﹃お兄さん﹄に戻ってたよ!﹂
店長よりもそっちの方が俺には重要だった。
﹁あ、﹃淳さん﹄って、本当は意識しないと呼べないんです⋮⋮あ
ぁっ!﹂
﹁あの⋮⋮度々すみません﹂
ドアが少しだけ開いて、さっきの女の子が顔を出していたので、
俺は仰天した。香奈ちゃんと未羽もビックリしている。
﹁な、何でしょうか⋮⋮?﹂
未羽が聞いた。
﹁えっと、うちはこういうの、基本的に禁止なんですけど⋮⋮あっ、
わたし的には全然かまわないので、どうぞお続けください。
でも、あの⋮⋮声が外に漏れてましたので、できれば、マイクの使
用はお控えください﹂
頬を赤くして、その子は言った。香奈ちゃんがボシューッと頭か
ら蒸気を噴き出した。
489
﹁すみません、おじゃましました﹂
そう言って頭を下げる。よく見ると、お嬢様風の美人だった。年
の頃は二十歳前といったところか。
﹁あ、待って﹂
ドアを閉めようとするのを、未羽が呼び止めた。
﹁はい、何でしょうか?﹂
﹁枝豆とミックスナッツお願いします﹂
注文入れやがったこいつ! しかもすぐ来るやつ!
女の子は﹁かしこまりました﹂と言って出ていった。即座にピス
トン再開。
﹁み、未羽! 何考えてるのよ! また来ちゃうでしょ!⋮⋮あふ
っ、あんっ!⋮⋮﹂
香奈ちゃんがさすがにキレた。
﹁あの子は大丈夫だよ、勘で分かるの﹂
﹁だ、大丈夫って⋮⋮わ、わたし、もう⋮⋮イ、イっちゃいそうな
のに⋮⋮あぁんっ!﹂
おお、そうなのか。それならと、俺は腰の運動をペースアップし
た。
﹁あぁっ! あっ、あうっ!⋮⋮だ、だめぇ⋮⋮あの子に見られち
ゃうよぉ⋮⋮﹂
﹁ふふ、香奈ちゃん、恥ずかしいから感じちゃってるね⋮⋮おっぱ
いも見せてあげようよ﹂
エロエロ大魔王は再びブラウスをめくり、乳首に吸い付いた。
﹁ふわぁ⋮⋮あっ、あっ、だめぇっ⋮⋮も、もう、イっちゃう⋮⋮﹂
抱きしめている彼女の身体から、絶頂が近づいているのが感じ取
れた。
﹁お、俺も、もう限界⋮⋮うう⋮⋮香奈ちゃん、中に出すよ⋮⋮﹂
﹁あっ、あふぅ⋮⋮! お、お兄さん、だ、だめっ、中は⋮⋮ああ
っ!⋮⋮﹂
久しぶりに﹃お兄さん﹄って呼ばれるのがすごい興奮した。中は
490
だめって言われても、もう我慢きかないよ。
﹁お待たせいたしました⋮⋮わぁ⋮⋮!﹂
女の子がトレイを持って入ってきた。眼がキラキラしている。
﹁すご⋮⋮胸大っきい⋮⋮﹂
テーブルに枝豆とミックスナッツの皿を置く。すごくゆっくりし
た動作だった。
﹁あっ、あんっ! やっ、いやぁ⋮⋮み、見ないで⋮⋮あっ、あぁ
っ!﹂
女の子は皿を置き終わっても、出ていこうとしなかった。トレイ
を胸に持って、香奈ちゃんの痴態をじっと見つめている。
﹁あ、あの、ドリンクバーで飲み物をお持ちしましょうか?﹂
サービス満点だなこの店! ドリンクバー、セルフだろ普通。
﹁あ、じゃあ、なっちゃんを﹂
未羽が迷いなく注文した。
﹁俺、ジンジャーエールで﹂
﹁かしこまりました。あの、お飲み物、いかがなさいますか﹂
女の子は、イク寸前の香奈ちゃんにも律儀に聞いた。
﹁はぅっ! あっ、あぁっ! くっ、カ⋮⋮カルピス⋮⋮あっ、イ、
イっちゃう⋮⋮! あっ、あっ⋮⋮ああああぁぁぁぁん!!﹂
香奈ちゃんは大っきな声をあげて、絶頂に達した。女の子に見ら
れているのも忘れ、びくんびくんと身体を震わせる。
同時に俺にも限界が訪れた。俺は彼女の中に勢いよく放出した。
朝からずっと我慢していたので、どぴゅどぴゅとすごい量の精液が
出た。
﹁わっ、わぁ⋮⋮すごーい⋮⋮本当にイッちゃった⋮⋮可愛い∼!﹂
女の子は口を手で覆って感激していた。いい心臓してるな、この
子⋮⋮。
快感の波が通り過ぎ、香奈ちゃんはスライムみたいにとろんとな
った。くたっとして、俺に身体を預ける。
﹁⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮ああ⋮⋮﹂
491
おっぱいを晒したままで、香奈ちゃんは荒い息をしていた。唾液
に濡れた乳首がいやらしい。女の子がごくりと生唾を飲んだ。
﹁そ、それじゃ、お飲み物お持ちしますね。しばらくお待ちくださ
い﹂
そそくさと部屋を出ていく。
﹁⋮⋮ハッ! わ、わたし⋮⋮あの子が見てる前で⋮⋮﹂
正気に戻り、羞恥に火が出そうなほど顔を赤くする香奈ちゃん。
﹁香奈ちゃん、可愛かったよ∼。あの子も喜んでたね﹂
ニコニコして香奈ちゃんの頭を撫でる未羽。
﹁未羽⋮⋮あなた、バイブは?﹂
そう言えば未羽、感じてる様子ないな。テーブルの上のリモコン
を見ると、スイッチが切られていた。
香奈ちゃんが素早くリモコンを取り上げる。
﹁か、香奈ちゃん! ちょ、ちょっと待って! あ、あの子戻って
きちゃうから!﹂
﹁い⋮⋮いつもいつも、わたしばかり恥ずかしい目に⋮⋮未羽⋮⋮
覚悟なさい﹂
香奈ちゃんがスイッチを﹃3﹄に入れた。
﹁ふわぁっ! あっ、あぁっ! やっ、いやっ!⋮⋮つ、強すぎ⋮
⋮あぁんっ!﹂
﹁お飲み物、お待たせいたしました⋮⋮わっ! えっ? 何これ?﹂
服を着たままの未羽がソファにぶっ倒れ、ショーパンの上から股
間を抑えてあえぎ声を上げているのを見て、女の子は困惑した。
不思議に思って周りに眼をやり、香奈ちゃんの手に握られたたま
ごっち型リモコンに気づく。
﹁あ、ひょっとしてリモコンバイブ?﹂
変なことを知っている子だった。何者だこいつ?
﹁あっ、あっ⋮⋮あぁっ! も、もうだめぇ⋮⋮イ、イっちゃう⋮
⋮やぁん、み、見ないで⋮⋮!﹂
いまさらそんなこと言っても、香奈ちゃんが許すはずがなかった。
492
﹁未羽、可愛いわよ⋮⋮ほら、イッて、みんなで見ててあげるから
⋮⋮﹂
﹁やぁっ! あっ、あっ、もう⋮⋮イ、イクっ⋮⋮ああ⋮⋮はああ
あぁぁぁぁん!!﹂
女の子に見届けられながら、未羽も絶頂を迎えた。服を着たまま
だが、それが逆にエロかった。
﹁わぁ⋮⋮女の子がイクとこ、二回も見ちゃった⋮⋮すごーい、し
かも二人とも超可愛いし⋮⋮﹂
テーブルにグラスを置きながら、女の子が感想を述べる。
﹁ふはぁ、はぁ、はぁ⋮⋮あ⋮⋮イ、イッちゃった⋮⋮うう、恥ず
かしい⋮⋮﹂
真っ赤になった顔を覆う未羽。相変わらず自分が辱められるのに
は弱いやつだ。
﹁あの、お食事もいかがですか。お代はサービスしますので﹂
﹁あ、じゃあ、焼きうどんを﹂
さっき間違って部屋に持ってきてたのが旨そうだったので、おれ
はそれを注文した。もうこうなったらとことんサービスしてもらお
うと思った。
☆
そのあと、香奈ちゃんがミックスピザを、未羽がたらこパスタを
注文し、俺たちは食事もその店ですませ、二時間きっちり歌って部
屋を出た。
﹁香奈ちゃんはお金出さなくていいからね﹂
﹁⋮⋮今日に限っては一銭も出す気ないわ﹂
妹に出させるわけにもいかないので、全額俺持ちだった。⋮⋮ま
あ、いいけどさ。
俺は香奈ちゃんに五千円札を渡した。
493
﹁何でわたしに渡すんですか!﹂
﹁香奈ちゃん、奢られるんだから払ってきてくれよ。いいだろ、そ
れくらい﹂
本日最後の羞恥プレイだが、何だかこれが一番恥ずかしい気がす
る。
受付にはあの女の子がツヤツヤした顔で待っている。
香奈ちゃんは顔を真っ赤にして、頭から湯気を出しながらレジに
向かった。
﹁お会計、982円でございます﹂
﹁安っ!﹂
香奈ちゃんが思わず声を上げた。俺もビックリした。
ドリンクバーの料金も入ってないんじゃないか? 大丈夫かそこ
まで伝票操作して⋮⋮。
﹁5000円お預かりいたします。4018円のお返しです。こち
らは割引券です。次回のご来店のさいお使いください﹂
﹁⋮⋮はあ﹂
お釣りを受け取る。割引券は10枚くらいあった。
﹁あの、本日のご来店、本当にありがとうございました﹂
眼をキラキラさせて、女の子は言った。香奈ちゃんは何と返して
いいか分からず、頬を染めて黙っていた。
﹁あういうの、露出プレイって言うんですか? 素敵なご趣味だと
思います。お二人ともすっごく可愛いですし、女の子がイクとこを
生で見れて、感激しました。今日わたし、バイト仲間にシフト代わ
ってって頼まれて出勤したんです。なんて幸運なんでしょう﹂
眼を三日月にして、心底嬉しそうに微笑む。⋮⋮変な人だ。
香奈ちゃんは困った顔をして、
﹁⋮⋮はあ、そうですか﹂
と答えた。
﹁またのご来店をお待ちしております。本日は誠にありがとうござ
いました﹂
494
深々と頭を下げる。
香奈ちゃんも軽く頭を下げ、赤い顔で俺達の方へと戻ってきた。
レジの子が満面の笑顔で、小さく手を振っていた。
☆
495
︻後日談15︼お待ちかねリモコンバイブ回 その④
︵作者注:ここから三人称です︶
﹁はあ⋮⋮今日は散々だったわ⋮⋮﹂
帰宅した早乙女香奈は、バッグを食卓のテーブルに置いて、溜息
をついた。
喉が乾いていたので、冷蔵庫からアップルジュースを取り出し、
グラスに注いだ。
椅子に腰掛け、グラスの半分ほどをコクコクと飲む。
﹁まったく、あの変態兄妹ときたら⋮⋮人をどれだけ恥ずかしい目
に遭わせれば気がすむのかしら⋮⋮﹂
カラオケのあと三人は、香奈のご機嫌取りのため、駅内に新しく
できたクレープ屋に行った。淳のおごりで。
そこは期待以上に美味しくて、甘いものを食べているうちに、香
奈は機嫌を直した。
しかし、家に帰ってきてみると、人前で二回も絶頂したという事
実があらためて思い出され、大して体力を使っていないのに、登山
ゆう
でもして帰ってきたような疲労感を感じてしまうのだった。
家は静かで、両親も弟の優も不在のようだ。
香奈は椅子の背もたれに身体を預け、今日一日のことを反芻した。
﹁朝っぱらからリモコンバイブ入れられて、電車の中でイカされち
ゃうし⋮⋮カラオケではあの変な店員に、イクとこ見られちゃった
し⋮⋮初めてのデートだってのに、変態じみたことばっかり⋮⋮も
う、あのシスコンの変態バカ⋮⋮﹂
電車の中で、大勢の人に注目されながら絶頂を迎えたことを思い
出し、香奈は顔が熱くなった。
﹁⋮⋮バイブがあたしの中で暴れ回って、あそこから快感がぶわー
496
って広がって⋮⋮何も考えられなくなっちゃった⋮⋮﹂
おまんこが、じゅん、と湿りを帯びるのを、香奈は感じた。
スカートをめくり上げ、右手をパンツの中に忍ばせる。スリット
に指を這わせると、ぬるっとしたものが指にまとわりついた。
﹁ん⋮⋮あふ⋮⋮思い出しただけで、こんなに⋮⋮あんなに人がい
たんだから、誰か一人くらい、わたしが感じてることに気づいてた
かも⋮⋮ああ⋮⋮﹂
指を潜らせ、クリトリスを刺激する。とろみが次々とあふれ出し
てくる。
﹁あっ、あふぅ⋮⋮すごい濡れてきちゃう⋮⋮﹂
香奈は、邪魔なパンツを脱いで、テーブルの上に置いた。
スカートを下腹部までめくり上げ、切ない声を上げてクリトリス
をいじる。
﹁⋮⋮あっ、はぅっ⋮⋮セックスしてイクとこ、見られちゃった⋮
⋮おっぱいも⋮⋮あの子、遠慮なしにわたしのこと、じっと見て⋮
⋮はぁっ⋮⋮あっ、気持ちいい⋮⋮﹂
すでにおまんこはびしょびしょだった。香奈はさらなる刺激を求
め、中指を潜り込ませた。
﹁あぁっ⋮⋮いいっ⋮⋮ここを、こんな風に、バイブがぐいんぐい
んって⋮⋮あっ、あっ⋮⋮いやっ、見ないで⋮⋮あっ、はあぁっ⋮
⋮﹂
電車の中で、羞恥に震えながらイった場面を反芻する。
興奮がよみがえり、香奈は激しく指を動かした。絶頂が迫り、足
がピンと伸びる。
ラストスパートにかかろうとしたそのとき、香奈はふと、あるこ
とを思い出した。
そう言えば⋮⋮バイブって、誰が持って帰ったんだっけ?
未羽がバイブについた愛液を美味しそうに舐め取り、そのあとお
497
しぼりで拭いてキレイにしていたのは覚えている。
あのあと、誰が持ち帰ったのだろう? 仕舞うところを見た記憶
がない。
香奈は、まさかと思って、テーブルの上のバックを手に取り、開
けてみた。
﹁あっ、未羽ったら⋮⋮﹂
フリーザーバッグに入った、ピンク色のそれが見えた。
﹁もう⋮⋮しばらく貸してあげるって意味かしら⋮⋮?﹂
袋の中から、バイブとリモコンを取り出す。
いやらしいその形状を見ていると、また顔が火照ってしまうのだ
った。
﹁⋮⋮せっかく貸してくれたんだし、好意を無駄にしちゃいけない
わよね⋮⋮﹂
香奈はバイブを手に取った。ごくりと生唾を呑み込む。
入口に、それを当てる。朝、初めてこれを挿入されたときを思い
出し、胸がドキドキした。
とろとろに潤ったおまんこに、バイブがぬるりと吸い込まれる。
﹁んっ⋮⋮ふわぁ⋮⋮﹂
思わず甘い声が漏れる。よく研究されたその形状は、香奈の気持
ちいいところを適確に捉えた。
﹁あっ⋮⋮い、入れただけで、イっちゃいそう⋮⋮﹂
恍惚とした表情を浮かべ、香奈は桃源郷へと行きかけたが︱︱近
づいてくる足音が、彼女を現実へと引き戻した。
︱︱えっ!? 優!? 出かけてるんじゃなかったの!?
家族なので、足音で誰か見当はつく。
香奈はハッとして、テーブルの上のパンツを引ったくるようにつ
かんだ。
履いている時間はない。バッグの中に押し込み、蓋を閉じる。め
498
くれ上がっていたスカートを、膝下に垂らす。それだけで精一杯だ
った。
﹁あ、姉ちゃん、帰ってたの?﹂
ラフな部屋着を着た優が、キッチンに入ってきた。
﹁う、うん、ただいま。お父さんたちは?﹂
何食わぬ顔で返答する香奈。
﹁お母さんと一緒に家具屋に行ってるよ⋮⋮何これ? たまごっち
?﹂
﹁えっ? あっ! そ、それは⋮⋮!﹂
テーブルの上に置きっぱなしだったリモコンに、優が気づいた。
香奈は焦って手を伸ばしたが、先に優に取られてしまった。
﹁変なの? 液晶もないね? これ電源?﹂
﹁か、返し⋮⋮ひゃうっ!﹂
取り返そうとしたが、先に優がボタンを押してしまった。ガタン
と椅子が大きく鳴った。
﹁わっ! 姉ちゃん、どうしたんだよ?﹂
﹁なっ、何でもない、くっ⋮⋮しゃ、しゃっくりよ、しゃっくり⋮
⋮ひっく、あぅっ⋮⋮﹂
バイブの強烈な刺激に耐え、香奈は気合いで喘ぎ声をしゃっくり
にごまかした。
﹁で、でかいしゃっくりだな。姉ちゃんのしゃっくり、そんなんだ
ったっけ?﹂
﹁⋮⋮くぁっ⋮⋮ひ、ひっく⋮⋮ふあっ、あぁっ⋮⋮ひっく⋮⋮さ、
さっきから止まらなくて⋮⋮うぁ⋮⋮﹂
バイブを入れただけですでにイク寸前だったので、香奈は猛スピ
ードで階段を登りつめていった。頭が真っ白になりそうになる。
﹁苦しそうだな、大丈夫かよ。息止めて水飲むといいらしいよ﹂
﹁い、いいから⋮⋮はぁっ! ひ、ひっく⋮⋮そ、それ返して⋮⋮
あぁ⋮⋮﹂
﹁う、うん、ちょっと待って、電源切るから﹂
499
優が適当にボタンを押す。LEDのランプが﹃3﹄に移動した。
﹁ふわぁっ!﹂
﹁わっ! ね、姉ちゃん!?﹂
膣内でバイブが激しくうねる。抗いようのない快感の波が、香奈
に襲いかかる。
﹁あっ、あぁっ⋮⋮ひ、ひっく、ふわぁ﹂
も、もうだめ⋮⋮お、弟の前で、イっちゃう⋮⋮あぁ⋮⋮
ごまかしきれないと悟り、香奈は手で口を覆った。
息を漏らさないように、全力で押さえつける。羞恥と息苦しさで、
顔が真っ赤になった。
﹁ね、姉ちゃん、しっかり!﹂
心配して姉の肩を抱く優。
大きな波が、香奈の身体を呑み込んでいく。香奈の意識は、桃源
郷へと旅たった。
﹁んっ、くぅっ、うんっ⋮⋮﹂
快感が全身を貫く。香奈の身体は何度も震え、テーブルにぶつか
って大きな音を立てた。
﹁姉ちゃん、姉ちゃん!﹂
バイブが動きっぱなしなので、絶頂感は長く続いた。頭がおかし
くなりそうだった。
大波が幾重にもなって押し寄せ、そのたびに香奈はエビのように
背を反らせた。
﹁んっ⋮⋮くはぁ⋮⋮﹂
波がようやく過ぎ去り、香奈は賢者タイムを迎えた。
天井に天使が舞い、花びらをまいている幻想が見えた。
脱力し、腕がだらんと下がる。ドラマで絶命するシーンのようだ
った。
﹁ふわぁ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮﹂
500
﹁姉ちゃん、しっかりしろ! しっかり﹂
苦しそうに荒い息をする姉を、心配して揺さぶる優。
香奈は最後の力を振り絞り、優がテーブルに投げ出したリモコン
を取って、電源を切った。
若干十六歳にして人前で三度絶頂に達するという、希有な経験を
した一日だった。
おわり
501
︻後日談16︼のりちゃんのファンタジックな世界①︵前書き︶
︻後日談16︼は時系列的に︻後日談15︼と︻姫初め2015︼
の間の話になるため、割り込み投稿しています。
502
︻後日談16︼のりちゃんのファンタジックな世界①
1年C組の教室。昼休みの鐘が鳴る。
生徒たちはガタガタとイスを鳴らして立ち上がり、それぞれに昼
食の準備をする。
早乙女香奈も弁当の入った巾着袋を持って立ち上がった。
いつも親友の未羽プラスクラスメイト数人とお昼を食べているの
あつし
だが、今日は未羽は休みである。家族で親戚の法事に行っているの
で、彼氏の淳もいない。
なので、今日は隣のクラスの友人、鐘良納子と一緒に食べようと、
午前中にメールを交わしていた。
﹁香奈、お昼どうするの?﹂
隣のクラスへと歩き出した香奈に、クラスメイトの園子が声をか
けた。
﹁のりと一緒に食べるわ。約束してるの﹂
﹁のりって、B組ののりちゃん? あたしも一緒していい?﹂
断る理由もないので香奈は承諾した。
﹁じゃーさあ、屋上で食べようよ﹂
﹁わざわざそんなとこ行かなくても⋮⋮B組でいいじゃない?﹂
﹁いーじゃんいーじゃん、天気いいしさ、何かこう、いい空気吸い
たい気分なんだよ﹂
香奈は面倒くさそうにしていたが、園子は構わず彼女の手を取り、
教室の外へと連れ出した。
﹁はー、いい天気だねえ。ほら、良かったでしょ、屋上来て﹂
園子はひとり意気揚々として、持参したレジャーシートを広げた。
503
三人でその上に座る。
のりは人見知りで、よそのクラスには未羽と香奈以外にあまり友
人がいない。
園子とはこれまでに二、三回言葉を交わしたことがある程度だが、
のりはそれほど緊張していなかった。
それは園子の人懐っこい性格によるところが大きい。テニス部所
属、ポニテ、貧乳、カラオケではアイドル曲を歌って踊る元気な子
である。まだ彼氏はいない。
﹁おー、香奈のお弁当、美味しそうだねー、女子力高いわー。あー、
のりちゃんのお弁当はやっぱりお豆腐入ってるね。それ、豆腐ハン
バーグ? 美味しそー、食べてみたい﹂
﹁う、うん、いいよ。一個あげる﹂
﹁わーい、ありがと。もぐもぐ、うわ、超美味しい。ところで香奈、
彼氏とはどこまでいったの?﹂
﹁やっぱり目的はそれか!!﹂
抑えきれずストレートな質問を投げかける園子に、香奈が鋭く突
っ込んだ。
園子はアスパラを刺した箸をくるくると回した。
﹁だってさー、未羽の前では聞きづらいんだもん。香奈の彼、未羽
のお兄さんでしょ? 香奈も未羽の前であんなことやこんなこと話
しづらいでしょ?﹂
のりが苦笑した。のりは淳が入院した際、未羽が淳と香奈の前で
左手オナニーの話を振ったのを覚えている。
︵みんな、未羽ちゃんがあたしや香奈ちゃんの前ではエッチな話ガ
ンガンしてくること知らないんだよね⋮⋮それだけあたしたちには
気を許してるってことなのかな?︶
特別に思ってくれるのは嬉しいが、あんまり過激な話をされるの
は恥ずかしいな、と、ひとり顔を赤くするのりだった。
504
﹁いーっぱい聞きたいことあるのにさ、香奈と未羽、いっつも一緒
なんだもん。みんな興味津々で、うずうずしてるんだよ?
今日は貴重なチャンスだから、みんなの分も含めて、じっくりイン
タビューさせてもらうからね、シシシ﹂
こぶしを口に当て、ケンケンみたいに笑う。
﹁そ、園子ちゃん、あんまり露骨に聞いちゃダメだよ。プライベー
トなことなんだから⋮⋮﹂
のりが園子をたしなめる。が、のりの頬はほんのり赤くなってい
て、彼女も興味津々なのはバレバレだった。香奈は溜息をついた。
﹁⋮⋮別にいいわよ、聞いても。隠さなきゃいけないことでもない
し﹂
﹁えーっ、いいのいいの!? それじゃあ、インタビュー始めまー
っす!﹂
大はしゃぎの園子。のりは平静を装っているが、眼がキラキラし
ている。
﹁質問その1、告白したのはどっちですか?﹂
香奈は紙パックの野菜ジュースをちゅーっと飲んでから答えた。
﹁彼の方からよ。一緒に海に行ったとき、帰りの電車の中で﹂
﹁ほーっ、香奈の口から﹃彼﹄なんて言葉が出てきたよ。急に大人
になっちゃって、何かあたしたちすっごい置いてかれてる感じだよ。
あつし
ねー、普段は何て呼んでるの?﹂
﹁⋮⋮淳さんって呼んでるわ﹂
これは嘘だった。付き合いはじめてしばらくは﹃淳さん﹄と呼ん
でいたのだが、どうも慣れないので、﹃お兄さん﹄という呼び方に
戻した。人前でだけ名前で呼んでいる。
﹁へーっ、未羽のお兄さん、淳先輩っていうんだ。野球部で背高く
てカッコいい人だよね。うんうん、香奈と並んだら絵になるよね。
好きになるの分かるなあ﹂
一人で納得してコクコクと頷いている。のりはというと、ここま
では知っている情報なので、口は挟まないものの焦れったそうな顔
505
をしていた。
﹁さて、ジャブはこのくらいでいいかな?﹂
園子の眼がキラーンと光った。
﹁何よ、ジャブって﹂
﹁こっからが本題だよ、ズバリ、もうキスはしましたか?﹂
握ったこぶしをマイクに見立てて、焼き鮭を咀嚼している香奈に
向ける。のりがふわっと頬を赤くした。
﹁そ、園子ちゃんったら、キキキ、キスとか、まだ早いよぉ! ほ
ら、あたしたちまだ十六歳だし、香奈ちゃんもまだ付き合いはじめ
て二週間くらいしか﹂
﹁したわ、キス﹂
﹁うえぇぇっ!?﹂
弁当箱をひっくり返しそうになってのりが驚く。一度宙に浮いた
豆腐ハンバーグが、運良く弁当箱に収まった。
﹁きゃーっ! 香奈ったら、意外に進んでるのね! 奥手なのかと
思ってたけど⋮⋮あ、淳先輩が肉食系なのか﹂
園子が両手を頬に当てて首を振った。のりは淳と香奈のキスシー
ンを想像しているのだろうか、ほわ∼っと赤い顔をしていた。
﹁ねえねえねえ、どこで? どこでキスしたの? 付き合ってどれ
くらいで?﹂
身を乗り出して聞いてくる園子。香奈は落ち着いて、タレ瓶に入
れたドレッシングをサラダにかけている。
﹁彼の部屋で⋮⋮早かったわよ、付き合いはじめて二、三日くらい
で﹂
香奈は友人に聞かれたときのために用意していた嘘をついた。
⋮⋮ファーストキスは未羽の部屋で亀甲縛りでレイプされながら
されたんだっけ⋮⋮あのシスコンの変態のせいで、こんな嘘を⋮⋮。
香奈はブロッコリーを淳だと思って、ゴリッと噛んだ。法事の手
506
伝いをしていた淳は突然悪寒を感じたが、香奈には知るよしもない。
﹁ひゅーっ! 淳先輩、超ー肉食じゃん! じゃあさ、じゃあさ⋮
⋮男の人としては、香奈のご自慢のおっぱいは当然気になるとこだ
と思うけど⋮⋮どう? どう? もう触られた?﹂
イソギンチャクのように手をワキワキさせる。のりが頭からプシ
ューッと湯気を出した。
﹁ちょ、ちょっと園子ちゃんったら⋮⋮! そ、そんな、二週間か
そこらでそこまで進展しないよ! まだ高校生なんだし、未羽ちゃ
んのお兄さんは、そんないやらしく⋮⋮﹂
﹁揉まれたわ、胸﹂
﹁ぶへぇぇぇぇっ!!!﹂
のりが思わずジュースの紙パックを握りしめてしまい、中身が噴
水のように飛び出した。幸い人のいないところに飛んだので被害は
なかったが、三メートルくらい飛んだ。
﹁ちょっ! のりちゃん! 間一髪だったよ今!﹂
﹁あ⋮⋮ご、ごめん⋮⋮! あ、あまりの衝撃で⋮⋮﹂
園子がジュースを避けるため傾けた身体を起こす。のりはあたふ
たしながら謝った。
﹁あっぶな⋮⋮イチゴミルクなんか制服にかけられたら悲惨なこと
になってたよ。
で、でも、やっぱり男の人は、香奈のおっぱい見たら我慢できない
んだね∼! ねえねえ、いつ? いつ触られた?﹂
﹁二回目のキスのときよ⋮⋮付き合って三、四日くらいのころ﹂
﹁早っ! で、で、で、揉むって言ってもいろいろあるじゃん? どんなふうに? 服の上から? それとも⋮⋮な、生?﹂
﹁鼻息が荒いわよ、園子⋮⋮。初めて触られたときはブラもつけて
て、服の上からだったけど⋮⋮二度目は⋮⋮生で⋮⋮﹂
﹁うほーっ! 生乳キター!﹂
﹁そ、園子ちゃん、声大っきいよ﹂
興奮する園子を、のりが肩に手を置いてなだめる。
507
﹁香奈ったら、大人の階段登りまくりじゃん∼。んー、でも、香奈
は女子によくおっぱい触られてるもんね。そんなに抵抗なかった?﹂
﹁確かに、女の子にはよく触られてるけど⋮⋮﹂
と言って香奈は、チラッとのりの顔を見た。二人きりのときにち
ょくちょく香奈のノーブラおっぱいを触らせてもらっているのりは、
ボッと顔を赤くした。
﹁男の人に触られるのはやっぱり違うわよ⋮⋮ドキドキしたわ﹂
﹁くはぁ、羨ましい限りですなぁ、あたしも揉んでみたいよ。香奈、
いっぺんでいいから、その巨乳を思いっきり揉ませてくれない?﹂
園子はまた両手をワキワキさせた。香奈が腕で胸をかばう。
﹁ダメよ、わたしのおっぱいは、特別な人にしか触らせてあげない
の﹂
そう言って香奈は小悪魔笑みを浮かべ、またチラッとのりを見た。
のりがバフンと頭から蒸気を噴き出す。
﹁何でさっきからのりちゃん見てんの? まあいいや、それにして
も香奈、もっと固いと思ってたら、意外にガード甘いじゃない? 淳先輩も肉食系だし、ひょっとしたらひょっとして⋮⋮もう、最後
までしちゃった⋮⋮とか?﹂
園子は探るような眼をして下から香奈の顔を覗き込んだ。
﹁も、も∼! 園子ちゃん、やめなよぉ。いくらなんでも、香奈ち
ゃんがそこまで⋮⋮﹂
﹁ぶっちゃけ、セックスしたわ﹂
﹁むひゃぁぁっ!!﹂
物理法則を無視して、のりが座ったまま十センチくらい浮き上が
った。頭から盛大に湯気を噴き出す。SLのようだった。
香奈は静かな顔をしていたが、実は腹がよじれそうだった。のり
のリアクション芸は、彼女のツボなのだ。
﹁えーっ! もうしちゃったんだ! す、すっごーい、香奈⋮⋮そ、
そんなに進んでたなんて⋮⋮﹂
園子も驚いて眼を丸くした。頬が赤く染まっている。
508
﹁あのね、進展が早いと思うでしょうけど、わたしは、三年前から
未羽の家に出入りしているのよ。
淳さんともしょっちゅう顔を合わせてたし、二人きりで話をするこ
ともあったわ。だから、前哨戦が長かったというか、お互い気持ち
は薄々気づいてたし⋮⋮告白されたのは、けじめみたいなものなの。
普通の交際って、お互いのことを、もっとよく知り合うための時間
があるでしょ? わたしたちはそれが抜けているだけよ﹂
﹁ほ、ほおぉぉ⋮⋮なるほど⋮⋮香奈、すごーい⋮⋮なんか大人っ
ぽい⋮⋮﹂
園子は尊敬の眼差しで香奈を見つめた。のりも一語一句聞き逃す
まいと、前のめりで話を聞いている。
香奈は変わらずクールな表情をしていたが、内心すごく気分が良
かった。
普段は、教室で自慢げに性体験の話をしているチャラチャラした
女子を、心の中で﹁このビッチども﹂と蔑んでいる香奈だったが、
いざ自分がその立場になってみると、えらく気分が良かった。
しょーもない男と行きずりのセックスをしているビッチと違い、
わたしは皆が羨むような男子に見初められ、ちゃんとした恋愛をし
て初体験したのだ、という自負がある。
それで﹁すごーい﹂なんて言われたら、虚栄心とは縁のない香奈
であっても、気分が高揚しないわけがない。
パイずり↓ロストバージン︵レイプ︶↓ファーストキス↓フェラ
↓アナルセックス↓告白、と、とち狂った順番で恋愛と性体験を進
展させてきた香奈は、未だ二人きりのデートすらしたことがなく、
友達にのろけ話もできず、フラストレーションが溜まっていた。
今日はその鬱憤が晴らせる、香奈にとって最高の日だった。
﹁香奈ったら、すごぉい⋮⋮何か遠くに感じちゃうよ。ね、ねえ、
どこで? どこでしたの? 淳先輩ん家だと未羽がいるからマズい
よね? 香奈ん家で?﹂
﹁ラブホテルに行ったわ﹂
509
﹁﹁えぇーーー!!!﹂﹂
園子とのりが絶叫した。
ラブホテルに行ったのは事実だ。実際は家に未羽がいようがいま
いが関係なくセックスしているのだが︵というか未羽がいるとたま
に3Pになる︶、恋愛関係で人に話せるネタが少ない香奈は、友達
に自慢できるような体験がしたくて、淳にねだりラブホに連れて行
ってもらったのだ。作戦大成功だ。
﹁わたしの家は人の出入りが多いし、淳さんの家は未羽の眼がある
から⋮⋮その、誘われて行ったのよ﹂
のりは宇宙人を見るような眼で香奈を見つめ、口をふるふるさせ
ていた。
﹁ふ、ふわわ⋮⋮か、香奈ちゃん、いつの間にそんな遠くまで⋮⋮
ちょ、ちょっと前まで⋮⋮﹂
オナニーでイクことができなくて、あたしが教えてあげたのに︱
︱と言いそうになり、のりは慌てて両手で口を押さえた。
言葉の先を読んだ香奈が、わざと恥ずかしそうな顔でのりと見つ
めると、のりはまた頭から蒸気を噴き上げた。間欠温泉みたいだっ
た。
﹁ラブホテルって、わたしも彼も初めてだったんだけど⋮⋮よくで
きてて、入ってから出るまで全然従業員と顔合わせないですむのよ﹂
﹁え? え? 何それ? どういうこと?﹂
頭にいくつも?を浮かべている二人に、香奈はラブホテルのチェ
ックインとチェックアウトの方法を説明した。
二人は絵本の読み聞かせに耳を傾ける幼児のように、真剣に香奈
の解説を聞いた。香奈は最高に気分が良かった。
﹁それで、このくらいの大きさのカプセルにお金入れて、パイプの
口に置くのね。すると掃除機みたいに吸引されて、シュッって一瞬
でカプセルが飛んでいくの。エアシューターって言うんだって﹂
﹁ふわぁぁ⋮⋮! 何それ、超ハイテクじゃん⋮⋮﹂
﹁す、すごい⋮⋮カルチャーショックすぎて、想像が追いつかない
510
⋮⋮﹂
二人は近代都市の話を聞くマサイ族のようだった。実際にはエア
シューターは旧式になりつつあるのだが。
香奈はあくまでも余裕の表情をくずさなかったが、軽くイキそう
なくらいの愉悦を味わっていた。
ああ⋮⋮何て気分が良いのかしら⋮⋮これこそ恋愛の醍醐味ね⋮
⋮あんな変態でも、付き合って良かった⋮⋮
﹁そ、それで⋮⋮ど、どうだったの? 初体験は? い、痛かった
?﹂
前のめりになって、園子が本題を聞いた。のりも耳をダンボにし
て食いつく。
﹁⋮⋮うん、最初はね、ちょっと痛かったわよ⋮⋮でも、彼、優し
くしてくれて⋮⋮彼の言うとおり、深呼吸して身体の力抜いたら、
楽になったわ﹂
﹁﹁ほ、ほおぉぉ⋮⋮﹂﹂
園子とのりが、ホームに止まった電車みたいに、ぷしゅーっと鼻
息を吹き出した。興奮しすぎて、額が汗ばんでいた。
﹁力まないようにしたら、痛くなくなって、ゆっくりなら動いても
大丈夫そうだったんだけど⋮⋮彼は、無理はしないでって言ってく
れて、入れるのはそこでやめたの⋮⋮
それでその日は⋮⋮ほ、他のことをいろいろして、ホテルを出たの
⋮⋮﹂
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
園子ものりも、言葉を失った。
二人は突然マイケル・ジョーダンに出会ったバスケ少年みたいに、
呆けた顔で香奈を見つめた。頭の中では、﹁他のことをいろいろ﹂
のいろいろなことが激しく渦を巻いていた。
﹁⋮⋮のり?﹂
511
﹁はっ⋮⋮はいっ!﹂
香奈に呼びかけられたのりが、背中に氷を当てられたようにビク
ッとして背を伸ばした。香奈は恥ずかしそうに頬を染めている。
﹁⋮⋮あのね、わたしもこういうこと話すの、すごく恥ずかしいの
よ。今まで園子ばっかり質問してたから、あと三つだけ、のりから
の質問を受けつけるわ。いい?﹂
﹁はっ、はいっ!﹂
顔を火照らせて、のりは返事をした。香奈はわずかに口角を上げ
て、微笑んだ。
実に容易く、のりは香奈の策略にはまった。
既に初体験の様子まで話しているのだ。ここからあと三つも質問
するとなると、さらにディープな内容にならざるを得ない。
これはのりに恥ずかしい言葉を言わせるための罠だった。そうと
も気づかず、のりは火が出そうなのほど真っ赤な顔をして、言葉を
紡ぐ。
﹁じゃ、じゃあ⋮⋮き、聞くよ、香奈ちゃん⋮⋮﹂
﹁どうぞ﹂
香奈は落ち着いている。質問するのりの方が恥ずかしそうだった。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮お⋮⋮お、お、おちんちんって、どど、どのくらい
の、大きさなの⋮⋮﹂
真っ赤な顔でどもりながら、のりは恥ずかしい言葉を口にした。
園子は真面目な顔で香奈の答えを待っている。香奈は背中がぞく
ぞくするような嗜虐感を味わっていたが、顔には出さなかった。
﹁大きさ変わるけど、どっちのとき?﹂
そんなの勃起しているときに決まっているが、香奈はわざと聞き
返した。
﹁お⋮⋮おおお、お、大っきくなってる、とき⋮⋮﹂
ぷしゅーっ、と頭から湯気を出す。香奈はうっとりとしてのりを
見つめた。
﹁大っきくなってるとき⋮⋮そうねぇ﹂
512
あごにこぶしを当てて、考える。
﹁魚肉ソーセージの、一番太いのあるじゃない? アレくらいかな
⋮⋮?﹂
香奈は手をオーケーサインにして、太さを示した。魚肉ソーセー
ジという表現と手の形が脳内に露骨なイメージを描き出し、二人は
揃ってごくりと生唾を呑んだ。
﹁そ、そんなに大っきいの⋮⋮!? よ、よく入ったね⋮⋮﹂
﹁わたしも初めて見たときは、無理って思ったけど⋮⋮入れる前に、
彼、いっぱいしてくれたから⋮⋮準備がちゃんとできてれば、案外、
大丈夫みたい⋮⋮﹂
またまた、﹁いっぱいしてくれた﹂や﹁準備ができていれば﹂と
いう言葉に秘められたイメージが、のりと園子の脳内を渦巻いた。
﹁⋮⋮のり? 大丈夫?﹂
﹁⋮⋮ふぇっ!? は、はいっ!﹂
香奈の呼びかけで、妄想から現実へ引き戻されたのりは、慌てて
頭の上をパタパタと払った。
頭上に浮かんだ吹き出しを消そうとしているようだった。サ○エ
さんじゃあるまいし、そんなの見えるわけないのだが。
﹁質問は、もういいの?﹂
﹁すすす、する! し、します⋮⋮えっと⋮⋮﹂
深呼吸して、気持ちを落ち着ける。ぐっと口を結ぶと、のりはま
たは恥ずかしい言葉を絞り出した。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮ふぇ⋮⋮ふぇ、ふぇ、ふぇらちおっていうの、した
⋮⋮?﹂
香奈と園子が意外そうにのりを見た。兄のエロ本でも盗み見たこ
とがあるのだろうか、意外に性知識のあるのりだった。
﹁フェラチオね? うん、したわ⋮⋮﹂
﹁そ、それもしたんだ⋮⋮な、舐めるんだよね⋮⋮? すごいな⋮
⋮て、抵抗なかった⋮⋮?﹂
﹁小っちゃい子のと違って、すごい形してるから⋮⋮最初は、これ
513
舐めるの?って思ったけど⋮⋮でも、してあげるとすっごく気持ち
よさそうにしてくれるの⋮⋮だから、わたしも嬉しくて、抵抗もな
くなったわ⋮⋮逆に楽しかったくらい⋮⋮﹂
﹁へ、へえぇぇぇ⋮⋮﹂
頬に手を当て、夢見るような表情で香奈が話す言葉を、二人はも
のすごく集中して聞いていた。
﹁じゃ、じゃあ⋮⋮か、香奈ちゃん⋮⋮最後の質問⋮⋮い、いい?﹂
﹁どうぞ﹂
のりが大きく息を吸った。そして口を開こうとして、その状態で
はかえって話しづらいことに気づき、吸った息をぶは∼っと全部吐
き出した。
園子が何をしているんだという顔で見ているのにも気づかず、の
りは茹でダコみたいに真っ赤になって、質問を捻り出した。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮あ⋮⋮あ、あああ、あ、あそこ⋮⋮お、おおお、
女の人の、あ、あそこを、な、なな、舐めるのって、さ、された⋮
⋮?﹂
スキャットマンのようにどもりながら、のりは聞いた。フェラは
知っていてもクンニは知らないらしかった。
香奈はそんなのりをじっと見つめ︱︱実は笑いを堪えていた︱︱
ひと呼吸おいて答えた。
﹁⋮⋮されたわ﹂
﹁ほ、ほんとに!? し、してあげるより、される方が恥ずかしく
ない?﹂
のりが身を乗り出して聞く。園子もすごく興味がある様子だ。
二人とも処女で、キスもまだ。フォークダンスで手をつないだく
らいの経験しかないのだ。
男性の前で脚を開き、濡れた性器を舐められるなど、恥ずかしく
て到底できないと思うのだろう。
﹁わたしも、絶対無理って思ってたんだけど⋮⋮でも、気持ち良く
てボーッとしてたら、いつの間にか⋮⋮
514
エッチって、自分でするのと、人にされるのって、全然違うのよ⋮
⋮人にされると、びっくりするくらい気持ちいいの⋮⋮﹂
そう言って香奈は、横目でのりの顔を見た。
以前に指で香奈をイカせたことのあるのりは、ボシューッと頭か
ら蒸気を噴いた。今日一番の勢いだった。
﹁さっきから香奈とのりちゃん眼で会話してるけど、何なの?﹂
﹁ななななななっ、何でもない! 何でもないよっ!﹂
窓ふきでもしているように手のひらをブンブン振ってごまかすの
り。かえって怪しさ全開だった。
☆
515
︻後日談16︼のりちゃんのファンタジックな世界②
﹁はあぁぁぁ⋮⋮今日は午後の授業全然耳に入んなかったよ⋮⋮﹂
帰宅したのりは二階の自室に上がり、通学鞄とコンビニのレジ袋
を机の上に置いた。のろのろとセーラー服を脱ぎ、部屋着に着替え
る。
﹁香奈ちゃんとお兄さんの仲があんなに進んでいたなんて⋮⋮びっ
くりしちゃった⋮⋮
香奈ちゃんすごいな⋮⋮ほんの二、三ヶ月前にオナニーの仕方教え
てあげたばっかりなのに、あっという間に遠いところへ行っちゃっ
た⋮⋮﹂
脱いだ制服をハンガーに掛け、のりは溜息をついた。
コンビニの袋を見つめ、ごくっと唾を飲む。それから彼女は、お
もむろに袋に手を伸ばした。ガサガサとレジ袋が音を立てる。
﹁⋮⋮お、思わず買っちゃったけど、どうしよう、これ⋮⋮﹂
のりが袋から取り出したものは、オレンジ色のビニール包装に包
まれた、太めの魚肉ソーセージだった。
リップを買おうと入ったコンビニで、偶然それが眼に飛び込んで
きて、思わず買ってしまった。
女子高生が魚肉ソーセージだけ買っていやらしい想像をされては
嫌なので、他にも生卵やスライスチーズなど、要りもしないものを
たくさん買った。無意味な散財をした上に、当初の目的であるリッ
プは買い忘れてしまった。
﹁あ、あたし、魚肉ソーセージ好きだから、香奈ちゃんの話に魚肉
ソーセージが出てきたから、久し振りに食べたいなーって気持ちが、
こう、潜在意識? みたいなとこに刷り込まれて、たまたま入った
516
コンビニにあったから、買ってきたのよ。そ、そうだよ、全然、変
なことするためとか、そんなんで買ったんじゃないから⋮⋮﹂
一人きりの部屋で、誰も聞いていない言い訳をする。のりはまた
ごくりと唾を飲んだ。
﹁⋮⋮ま、先ずは、開けてみたいことには、食べれないから⋮⋮あ、
開けてみます⋮⋮﹂
何故か敬語でそう言うと、のりは引き出しを開け、ハサミを取り
出した。ビニール包装をチョキンと切り取る。中に入っているのは
何の変哲もないソーセージなのだが、彼女はおそるおそる中身を引
き出した。
﹁⋮⋮わ、わぁぁ⋮⋮お、大っきい⋮⋮!﹂
包装の上からでもだいたいの大きさは分かりそうなものだが、の
りは初めて見たかのように感嘆の声を上げた。
ソーセージを傷つけないように注意しながら、ハサミでチューブ
の端を切り取る。
ピ∼っとチューブを裂いて、ぺろんと皮をむく。生々しい肌色が
現れると、胸がドキッとした。
﹁わっ⋮⋮や、やっぱり大っきい⋮⋮か、香奈ちゃん、こんな大き
いのを⋮⋮﹂
チューブを剥いだソーセージを、しげしげと眺める。頬がほんの
りと赤く染まっていた。
﹁⋮⋮香奈ちゃん、おちんちん、舐めたんだよね⋮⋮こ、こんな風
に⋮⋮﹂
のりは小さく口を開いて舌を出した。ソーセージの先を、猫のよ
うに、ぺろ、と舐める。
﹁ふわ⋮⋮こ、これ、すごいエッチだよぉ⋮⋮か、香奈ちゃんった
ら、こんないやらしいこと⋮⋮﹂
続けて舌先でソーセージをぺろぺろと舐めながら、のりはベッド
に腰を下ろした。眼がとろんとしてきている。
﹁か、香奈ちゃん⋮⋮おちんちん生えてきちゃったの⋮⋮? いい
517
よ、あたしがしてあげる⋮⋮﹂
のりはいったんソーセージを口から離した。少し荒い息をしなが
ら、ソーセージを見つめる。
﹁香奈ちゃん⋮⋮ふぇ、ふぇらちお、してあげるから⋮⋮き、気持
ち良くなって⋮⋮﹂
小さな唇が、肌色の肉棒︵確かに肉棒だ︶を、ぱくっと咥えた。
ここで、のりの脳内妄想を解説しておく。
のりは、親友である未羽と香奈に対し、それぞれ異なる憧れを抱
いている。
明るく可愛らしい未羽には、あんな女の子になりたいという変身
願望を、凜々しく美しい香奈には、少女が宝塚の男役に憧れるよう
な、異性への恋心に近い感情を抱いているのだ。
後日談6でのオナニーレッスン以降、のりはオナニーのおかず妄
想に頻繁に香奈を登場させていた。
恋愛経験がなく、男に少々恐怖心を持っているのりにとって、香
奈は男性の代わりにちょうど良いのだった。
今も一ノ瀬淳のペニスを直接想像するのではなく、﹁お兄さんが
香奈ちゃんになっちゃった﹂というような、都合の良い置き換えが
なされているのである。
ときには香奈が男となってのりに挿入したり、のりが男役になっ
て香奈を愛撫したり︱︱オナニーの最中、彼女の脳内では性別と攻
守が幾度も入れ替わり、不条理な妄想世界が築かれるのだ。
もちろんこんなこと、香奈はもちろん誰にも言ったことはない。
﹁あぁ⋮⋮香奈ちゃんの、とっても大っきいよぉ⋮⋮どう? 気持
ちいい⋮⋮?﹂
ソーセージをしゃぶりながら、のりはベッドにころんと横になっ
た。眼を閉じて、夢中でれろれろと舌を動かす。
魚肉ソーセージの柔らかさ、少し生臭い香りとしょっぱさが、妙
518
なリアルさを醸し出してた。﹁おちんちんって、こんな味なんだ⋮
⋮﹂とか思っていた。こんな味ではない。
﹁んあ⋮⋮はふぅ⋮⋮香奈ちゃん、あたしのおちんちん舐めて⋮⋮
あぁっ、気持ちいいよぉ⋮⋮香奈ちゃんも、あそこ触ってあげる⋮
⋮﹂
性別が入れ替わった。
今のりの脳内では、のりが男になって、ペニスを香奈にしゃぶら
れている。それでフェラをされつつ、お返しに香奈に愛撫してあげ
ようとしているのだ。ややこしいがそういう設定だ。
のりは空いている手で、ルームパンツの腰の部分に指をかけ、す
るっと下げた。子供っぽい膨らみを残した下腹部が露わになる。
そのまま太ももの辺りまで、ルームパンツと下着を下げる。つる
つるの神聖なスリットが顔を出した。
ぷにぷにした幼い指が、腹から下腹部へと肌をなぞっていく。中
指がスリットにたどり着くと、身体がピクッと震えた。
﹁あっ⋮⋮か、香奈ちゃん、もう、こんなに濡れて⋮⋮オナニー覚
えたばっかりなのに、いけないんだからぁ⋮⋮﹂
本人がいないので勝手なことを言うのりだった。濡れているのは
自分のおまんこだ。
指がスリットへと浅く潜り込む。慣れた手付きでクリトリスを探
し出し、くにくにとこね回す。
﹁あぁっ⋮⋮! んっ⋮⋮はぅっ⋮⋮! き、気持ちいい? 香奈
ちゃん⋮⋮あっ、はぁっ⋮⋮あ、あたしも、いいよぉ⋮⋮あっ、あ
ぁん⋮⋮﹂
ソーセージを咥えたまま、のりがベッドの上で身をよじる。キシ
キシとマットが軋む音が、部屋の中に満ちる。
今日はアイテムもあるせいか、のりはいつになく興奮していた。
細い指がせわしなく秘所をまさぐり、溢れた愛液が太ももまで濡ら
していた。
﹁はぁっ⋮⋮き、気持ちいい⋮⋮か、香奈ちゃん⋮⋮指、入れてあ
519
げる⋮⋮﹂
クリトリスへの愛撫を止め、中指の先を膣口にあてがう。ふぅ⋮
⋮と息を吐いて、のりは指を侵入させた。
﹁ふわっ⋮⋮あっ、あぁっ!⋮⋮か、香奈ちゃん⋮⋮﹂
充分に潤ったそこは、のりの指をすんなりと根元まで呑み込んだ。
ちゅぷちゅぷと水音をさせて、指を出し入れする。
﹁あっ、あぁっ⋮⋮! い、いいっ⋮⋮すごい、感じちゃう⋮⋮あ
ぁんっ⋮⋮﹂
息が苦しいのと、思わず噛み切ってしまいそうだったので、のり
は口からソーセージを抜いた。代わりに舌を出して、亀頭に当たる
部分をぺろぺろと舐める。
いつの間にかTシャツがめくれ上がり、わずかに膨らんだおっぱ
いが顔を出していた。
童顔で幼い身体付きをした女の子が、おっぱいから太ももまで白
い肌をむき出しにして、ペニスに見立てた肉棒を舐めながら、濡れ
たおまんこを弄っている。それは果てしなく淫靡な絵だった。
﹁あふっ⋮⋮あっ⋮⋮? か、香奈ちゃん⋮⋮あ、あたしの中に、
入れたいの⋮⋮? だ、だめぇ⋮⋮﹂
また性別が逆転した。
今度はのりが女の子、香奈が男になって、のりに挿入しようとし
ている。
舌の上に唾液を乗せて、ソーセージをねぶる。たっぷりと唾液を
まとわせると、のりは恍惚とした表情でそれを見つめた。
おまんこから指をぬるりと抜いて、はふぅ、と息をつく。
下着と一緒に、ルームパンツをさらに下げ、のりは両方とも足首
から引き抜いてしまった。これで着ているのはTシャツだけだ。
控えめに、30度くらいに脚を開く。幼い割れ目がわずかに開い
て、きれいなピンク色の襞をのぞかせた。
魚肉ソーセージが股間を目指し、ゆっくりと降下していく。
﹁あっ⋮⋮香奈ちゃん、だめぇ⋮⋮そんなの、入んないよぉ⋮⋮﹂
520
ソーセージがおまんこに到着した。すぐに挿入はせず、丸い先端
でクリトリスをくにくにと愛撫する。
﹁あっ、はうっ⋮⋮あぁっ⋮⋮お、おちんちんで、お豆さんを⋮⋮
き、気持ちいいよぉ⋮⋮﹂
恥ずかしがり屋さんな割に好奇心旺盛な彼女だが、道具を使って
オナニーするのは初めてだった。
ソーセージで愛撫するのは、意のままにならなくてもどかしいが、
それがかえって人に触られているような感じで、快感を増加させた。
溢れ出す愛液が蜜のようにソーセージにまとわりつき、潤滑を高
める。股間から発した快感が、背筋を伝い、全身に広がっていく。
オナニーでこんなに感じるのは初めてだった。のりは絶え間なく
身悶えした。
﹁あふっ⋮⋮あっ、あぁっ! き、気持ちいい⋮⋮あぁ、香奈ちゃ
ん⋮⋮!﹂
のりはクリトリスを弄るのを止め、ソーセージを膣口に当てた。
﹁あっ⋮⋮! だ、だめ、香奈ちゃん! い、入れちゃ、だめぇ⋮
⋮﹂
ソーセージを握った手に、少し力を加える。
完全に挿入するつもりはなかった。先っぽだけ、入るかどうか試
すつもりだ。
﹁あっ、あぁっ! だ、だめぇ⋮⋮! か、香奈ちゃん、そんな大
っきいの、入んないよぉ⋮⋮!﹂
指で充分ほぐされているのだが、ソーセージはなかなか入らなか
った。タンポンを入れるのとは訳が違った。
﹁あぁっ⋮⋮ふ、太いよぉ⋮⋮香奈ちゃん、だめぇ⋮⋮! あっ、
あっ、入っちゃう⋮⋮んっ、くあっ⋮⋮﹂
ふにゃふにゃと曲がって膣口から逃げようとするソーセージを、
のりは短く持ち直した。
角度を調整して膣口に当て、ふうぅぅ⋮⋮と深呼吸する。
﹁⋮⋮ちょ、ちょっとだけ⋮⋮えいっ⋮⋮!﹂
521
ソーセージを握る手に、ぐっと力を込める。膣口が押し広げられ、
ぬっ、と先端が侵入した。
﹁あぁっ! あっ、はぁっ⋮⋮や、やっぱり大っきい、む、無理だ
よぉ⋮⋮﹂
痛くはないが、膣口がいっぱいに広がっている感じがする。のり
はそれ以上侵入させず、先っぽが入ったままで、はぁ、はぁ、と息
を継いだ。
﹁はぁ⋮⋮はふぅ⋮⋮い、いっぱいいっぱいだよぉ⋮⋮か、香奈ち
ゃんの、やっぱり大っきすぎるよぉ⋮⋮﹂
ソーセージで処女喪失する気はないので、のりはおまんこからそ
れを抜いた。膣口がキュッと閉じるのを感じる。
﹁ふわぁ⋮⋮や、やっぱり、あたしにはまだ早いよぉ⋮⋮え⋮⋮?
か、香奈ちゃん? どうしてもしたいの? あっ、ま、待って⋮
⋮だめだってばぁ⋮⋮!﹂
脳内香奈ちゃんが、﹁のりちゃん⋮⋮わたし、もう我慢できない
⋮⋮﹂とか何とか言って、再び挿入を試みる。
しかし、今度はソーセージは入れない。指を香奈のペニスだとい
うことにして、おまんこに挿入する。すでにとろとろなので、ひと
息に奥まで潜り込ませる。
﹁あぁっ! ぜ、全部、入っちゃったぁ⋮⋮やぁん、お、大っきい
よぉ⋮⋮﹂
指だからそんなに大きくないはずだが。どこまでも都合の良い妄
想だった。
のりは一定のリズムで指を出し入れした。濡れた襞がぴちゃぴち
ゃといやらしい水音を立てた。
﹁はぁっ、あっ、あぁんっ! か、香奈ちゃぁん⋮⋮! そ、そん
な大っきいのを、そんな、激しく⋮⋮あっ、はぁっ!⋮⋮﹂
脳内香奈ちゃんが激しく腰を振る。のりは指を動かしながらソー
セージを舐めた。
おまんこに入ってるのが香奈のペニスなら、口に入っているのは
522
何なのだろうか。しかしのりの中では辻褄が合っているらしく、彼
女は無心にソーセージをしゃぶっている。
﹁あっ、あっ⋮⋮! も、もう⋮⋮イク、イっちゃう⋮⋮はぁっ!
⋮⋮﹂
あえぎ声が切なさを増す。濡れすぼったおまんこに、子供みたい
な指が激しく出入りしている。
のりが眉を八の字にして、ギュッと眼をつぶった。身体がぐっと
硬直する。快感の波が、彼女を呑み込もうとしていた。
﹁はぁっ、あっ、あぁ⋮⋮! イ、イっちゃう⋮⋮か、香奈ちゃん、
あ、あたし、イっちゃう⋮⋮ふわっ⋮⋮あっ、あっ⋮⋮ああぁぁぁ
ぁぁぁんっ!﹂
快感の大波に呑まれ、のりはエビのように背を反らせた。びくん、
びくん、と、身体が大きく震える。
﹁あぁっ!⋮⋮あっ、あふっ⋮⋮!﹂
背筋を何度も快感が通り抜け、のりはその度に身体を痙攣させた。
半開きの口から、だらしなくよだれが流れ落ちる。
引き潮のように波が過ぎ去ると、彼女はとろけるチーズみたいに
脱力した。恍惚とした表情を浮かべ、小さなおっぱいを上下させて
息をする。
﹁⋮⋮はぁ⋮⋮はぁ⋮⋮ふわぁ⋮⋮あ⋮⋮す、すごい、良かった⋮
⋮﹂
無意識に正直な感想を漏らす。よだれが垂れているのに気づき、
慌てて手の甲で拭った。
のりは手を突いて身体を起こした。あらためて自分の身体を眺め
る。
Tシャツはめくれ上がり、おっぱいから下は全部丸出しで、全裸
に近い。その上全身がほんのりと桜色に火照っている。
股間はいやらしい液体に濡れ、ふと見るとベッドの上に魚肉ソー
セージが転がっていた。のりは急に恥ずかしくなった。
﹁⋮⋮きゃっ⋮⋮あ、あたし、な、なんかすごいことを⋮⋮﹂
523
慌ててTシャツを下げて胸を隠す。ティッシュを取って股間を拭
くと、びっくりするくらいぐっしょりしていて、のりは顔が真っ赤
になった。
﹁う、う゛∼⋮⋮こ、これは⋮⋮あ、あれだよ! か、香奈ちゃん
からあんな話聞いちゃったから、きょ、今日は特別、エッチに気分
になっちゃっただけで⋮⋮あ、あたし、いやらしくないもん!﹂
誰も聞いていない言い訳を独りごちながら、のりは下着とルーム
パンツをはいた。誰に見られたわけでもないのに、無性に恥ずかし
かった。
☆
一階のキッチン。のりは困ったような顔をして、テーブルに置い
た皿を見つめていた。
﹁⋮⋮食べ物を粗末にするのは良くないけど、これを食べると、さ
らにいけない道に踏み込んでしまうような気がする⋮⋮﹂
皿の上には、斜めにスライスされた魚肉ソーセージ。もちろんさ
っきオナニーに使ったものだ。
のりは食べ物を捨てることにとても抵抗を感じるタイプだ。しか
も、魚肉ソーセージは本当に大好きなのである。
香奈ちゃんはフェラチオをしてあそこも舐められたという。性器
を直接舐めることに比べれば、このソーセージがあそこにちょっと
触れたことなど、大したことではないのではないだろうか?
そう考え、取りあえず水洗いしてみた。ちょっとでも愛液や唾液
の臭いが残るようなら捨てようと思っていたのだが、きれいに落ち
てしまった。
﹁⋮⋮全然普通に食べれそうになっちゃった⋮⋮取りあえず切って
みよう。食べる食べないはともかく、取りあえず切ってみるだけね、
切ってみるだけ﹂
ぶつぶつ言いながら、まな板の上でソーセージをスライスした。
524
皿に並べ、ついでに冷蔵庫にあったキュウリも切って、横に添えた。
彩りが良くなった。
薬味皿に醤油とマヨネーズを入れてそばに置くと、到底ゴミ箱に
は捨てられない一品ができあがってしまった。
﹁しまった⋮⋮すごく美味しそう⋮⋮落ち着いて、落ち着くのよ、
納子⋮⋮! き、きれいに洗ったとはいえ、自分のあそこに擦りつ
けたものを食べるのって、どうなの?
そ、そうだわ、炒めた方がいいかもしれない。そうすれば何かリセ
ットできる気がするわ。うう、混乱してきた⋮⋮ちょっとトイレに
行って、気を落ち着けよう﹂
感じなくてもよいやましさを感じながら、のりはトイレに行った。
用を足しても気持ちは晴れないままで、彼女はキッチンに戻った。
﹁あ、のりちゃん、お邪魔してるよ﹂
未羽がテーブルについて、魚肉ソーセージを手で摘まんで食べて
いた。
﹁んひゃあぁぁぁ! み、未羽ちゃん! 何でいるの!?﹂
髪を逆立てて仰天するのり。未羽は囓りかけのソーセージをポン
と口に放り込んだ。
﹁玄関先でおばさんに会って、のりちゃん家にいるはずだから、勝
手に上がって探してちょうだいって。そしたら魚肉ソーセージがあ
ったから、つまみ食いしちゃった。あたしこれ好きなの。ごめん、
食べたらいけなかった?﹂
すまなそうな顔をする未羽。のりは顔をくしゃくしゃにした。
﹁い、いや⋮⋮た、食べてもいいんだけど⋮⋮そ、その、せめて、
醤油かマヨネーズつけて食べてくれない⋮⋮?﹂
﹁あたしそのままが好きなの。のりちゃんも食べてよ、美味しいよ﹂
未羽が皿をすすめる。ソーセージは先端部分の片方が無くなって
いた。
う⋮⋮二分の一の確率で、未羽ちゃんあたしがあそこにぐりぐり
525
したとこ食べたんだ⋮⋮。
非常に申し訳ない思いを味わいながら、のりはもう片方の端っこ
を指でつまみ、何もつけず口に運んだ。
特に変な味も臭いもしなかった。普通に美味しいが、複雑な思い
がした。
﹁もう一個もらうね。そう言えば香奈ちゃん、あたしのお兄ちゃん
のおちんちん、魚肉ソーセージくらいだって言ったんだって?﹂
﹁ぶはっ!!!﹂
のりが噛み砕いたソーセージを散弾銃のように吹いた。ふりかけ
状の細かい破片が、いくつも未羽の顔に付着した。
﹁わっ! の、のりちゃん⋮⋮これはちょっと⋮⋮﹂
﹁げほっ、げほっ⋮⋮あ、あぁっ! み、未羽ちゃん! ごめんな
さい!⋮⋮げほっ﹂
のりは涙目でむせながら謝った。
﹁もう、そんなに驚くことないじゃない﹂
そう言いながら未羽は、顔に付いたソーセージの破片をひょいパ
クひょいパクとつまんでは口に運んだ。
﹁み、未羽ちゃん! あたしが吹いたの食べないで! ティ、ティ
ッシュで拭くから、じっとしてて!﹂
のりはティッシュを取って、未羽の顔を拭った。顔を拭かれなが
ら、未羽はまた皿に手を伸ばし、ソーセージをつまんだ。
﹁ごめんね、未羽ちゃん⋮⋮で、でも、その話、誰から聞いたの⋮
⋮?﹂
﹁香奈ちゃん本人から。あたし、魚肉ソーセージ好きだから、その
話聞いて食べたくなっちゃって、のりちゃん家遊びに来たら、まさ
にそれがあるからさー、ついつまんじゃった。のりちゃんも香奈ち
ゃんの話聞いて食べたくなったの?﹂
﹁う、うん、そうだよ。あたし、子供のころから大好きで⋮⋮﹂
﹁ふーん、やっぱり。そういうのあるよね、会話やテレビに出てく
526
ると、食べたくなるの﹂
良かった、うまくごまかせそう⋮⋮。のりはそう思った。
のりは未羽の顔と制服に付いた破片を全て拭った。取りこぼしが
ないかチェックしていると、至近距離で未羽と眼が合った。未羽は
ヒヨコの雌雄区別をするような顔で、彼女を見つめていた。
﹁な、なに⋮⋮? 未羽ちゃん⋮⋮?﹂
﹁のりちゃん、ソーセージで処女喪失してないよね?﹂
﹁してないよっ!! ていうかほんの少しでもそう思ってるならソ
ーセージ食べないでっ!!!﹂
全力で否定するのり。先っぽだけで踏みとどまって良かったと、
彼女は心からそう思った。
それにしても、友達の性器に挿入されたかもしれないものを平気
で食べるって⋮⋮。
未羽は三切れ目のソーセージを口に運んだ。もぐもぐと美味しそ
うに食べている。
目の前の美少女の汚れない笑顔を眺めながら、のりは未羽に対し
あらためて畏怖の念を覚えるのだった。
おわり
527
︻後日談17︼親がいるのにコタツの中で妹と姫初めした件①︵
前書き︶
公式ミニ企画﹁姫初め2015﹂参加作品です。連載中の第58∼
60部分での参加になります。
初めての方にも読んでいただけるように、登場人物の紹介も入れて、
短編として独立して読めるようにしています。
この機会に本シリーズを手にとっていただけると嬉しいです。
内容はサブタイトルどおりです。親はもちろんエッチに参加しませ
んが、﹁﹃親﹄という字を見るだけで萎える﹂という方は、前半の
会話部分だけでもお楽しみ下さい。
528
みう
︻後日談17︼親がいるのにコタツの中で妹と姫初めした件①
大晦日。俺は妹の未羽と夕飯の食卓についていた。今年は二人き
りで年越しだ。
大晦日なのに親は何をしているんだとお思いだろう。確かにうち
の両親は家を空けることが多いのだが、今日はちょっと事情がある。
うちはいつもは東北にある父方の実家で年を越すのだが、今年は
新幹線の予約が遅れて二人分しかチケットが取れなかったのだ。
そのため、今年は両親だけ帰省し、俺と未羽は自宅で年を越すこ
とになった。
二人きりで寂しいかというとまったくそんなことはない。
妹を心の底から愛している俺は、兄妹水入らずの時間を楽しんで
いた。毎年二人きりでも構わない、むしろ大歓迎だ。
﹁わぁ、伊勢エビ、身がぷりぷりで美味しいね、お兄ちゃん﹂
食卓には伊勢エビのマヨソース焼きと、タコのカルパッチョ、温
野菜のサラダ、ガーリックライスが並んでいる。
締めには年越しそばが出てくる予定である。全部未羽の手作りだ。
伊勢エビは今日の昼、お歳暮として届いたものだ。こんな豪勢な
ものが贈られるのだから、うちの親父仕事できるんだろうな、きっ
と。見た目はチョイ悪だけど。
生のままクール宅配便で届いたそれをどうしたものかと両親に電
話したら、置いといても鮮度が落ちるだけだから、俺と未羽で食べ
なさいと言われた。
﹁あたし、丸ごとの伊勢エビなんて捌いたことないからどうなるこ
とかと思ったけど、美味しくできて良かった。お兄ちゃん手伝って
くれてありがとね﹂
﹁いやいや、俺エビを真っ二つにしただけじゃん。全部お前の腕だ
529
よ。焼き加減完璧で、旨いよ﹂
未羽は料理上手である。料理だけでなく掃除洗濯なんでも上手で
家庭的だ。それだけではなく顔も可愛いし、性格が明るくて優しく
て⋮⋮ちょっと待ってくれ、長所が多すぎるので、整理する。
未羽は俺より学年が一つ下の高校一年生、早生まれなのでまだ十
五歳だ。
髪はセミロングで前髪パッツン。お嬢様カットがよく似合う、小
柄で可愛らしい美少女である。
眼がきれいで、桃みたいなすべすべほっぺをしてて、唇がぷるん
としている。全体の印象はあどけない感じ。眼を三日月にして笑う
笑顔は、膝が砕けそうになるほど絶品だ。
胸やお尻はまだ発展途上だが、未成熟だからこそ、彼女の身体は
妖精のように美しい。
でもって前述のように女子力が高く、性格が良くて頭も良い。運
動神経だけは人並みを少々下回るようだが、女の子ならそれも萌え
ポイントと言えるだろう。
かように、あらゆる面で完璧な妹である。
こんな可愛い女の子が家にいたら、たとえ妹であっても情欲を抱
いてしまうのではないかと、読者はお思いになるだろう。
それはそのとおりであって、妹に異性を意識するどころの話では
なく、俺はオナニーを覚えてからおかずの大半を妹にしていた。
それでも俺は強固な克己心を発揮して、決して妹に手を出すとこ
とはなかった⋮⋮はずだったのだが、あることがきっかけでついに
俺たちは結ばれてしまい、ここ半年ほどで七回セックスした。
まごうことなき近親相姦であるが、どろどろした関係ではなく、
スキンシップの延長でセックスしている。延長しすぎだ。
シリアスな関係でない証拠に、俺にはれっきとした彼女がいる。
名前は香奈ちゃんといって、ツンデレでドMで巨乳というキャラ
530
盛過ぎな子だ。妹の親友兼レズセフレでもある。
香奈ちゃんは俺たちの関係を知っており、さすがに兄妹でセック
スしてはいけないと言っているが、多少のスキンシップは認めてく
れている。3Pもしたことがある。
⋮⋮あらためて俺たちの関係を書き出してみたが、近親相姦同性
愛乱交パーティー状態だ⋮⋮三人とも学校では優等生でとおってい
るのだが⋮⋮どうしてこうなった?
まあ、そんな感じであるわけだが、俺と未羽はひとつ屋根の下に
住んでいるからといって、ただれた生活を送っているわけではない。
セックスはなるべく控えている。
控えているというか、のめり込んでしまわないようにと、未羽が
ストップをかけているのだ。そのため、普段は少々過剰なスキンシ
ップにとどめている。おっぱい触ったり、一緒にお風呂入ったりと
かね。
俺は未羽の許可さえあれば、セックスもバッチこいである。
近親相姦するまでは俺も知らなかったのだが、未羽は天使のよう
な顔をしているくせに、ひとたびスイッチが入るとエロエロ大魔王
に変貌するのだ。
そのためときどき暴走して俺とセックスする。それが、半年間で
七回ってわけだ。
︱︱妹の紹介終了。夕飯の食卓に戻る。
﹁お兄ちゃん、窓見て、窓﹂
雪でも降り出したのかと、未羽が指差すリビングの窓を見たが、
いつもと変わらない風景が広がっていた。
﹁外がどうかしたか? 何もないけど?﹂
﹁窓、すっごくきれい。ガラスが無いみたいだよ。お兄ちゃん、寒
いのにお掃除頑張ったね、見てて清々しいよ、ありがとう﹂
今日は未羽と二人で大掃除した。未羽はきれい好きなので、手早
531
く家中のあらゆる場所を磨き上げていく。
だらしないと思われてはかなわないので、俺も頑張って掃除した。
窓は俺の担当だ。
﹁なんだ、そんなことか。俺より未羽の方が何倍も掃除してんじゃ
ん。家が新築みたいになってるよ﹂
﹁そんなことないよ。お兄ちゃん、レンジ周りの油汚れもピッカピ
カにしてくれて、夕飯作るのが気持ち良かったよ。お風呂もツルッ
ツルで、今日湯船に入るのが楽しみ﹂
おだててるんじゃなくて、ニコニコして本当に喜んでいる顔をし
ていた。
﹁当然のことをしたまでだが⋮⋮そう言ってくれると、頑張った甲
斐があるよ﹂
ちくしょう、まるで新婚の嫁さんのようだ。ああ、結婚してえ。
近親結婚と一夫多妻が認められている国に移住して、香奈ちゃん
と三人でハーレム作りたい。
﹁お兄ちゃん、お掃除頑張ったから、未羽がご褒美上げるよ。何か
ひとつ、言うこと聞いてあげる。何がいい?﹂
﹁あ、セックスで﹂
俺は即答した。未羽が温野菜のカリフラワーを囓りながら、急に
顔を曇らせた。
﹁﹃セックス以外で﹄って但し書きをつける暇もなかったよ⋮⋮お
兄ちゃん、そんなんだから香奈ちゃんに野良犬って言われるんだよ﹂
﹁彼氏のことを野良犬呼ばわりするのもどうかと思おうが⋮⋮まあ
香奈ちゃんツンデレだからな、口が悪いのは気にしないさ﹂
﹁ポジティブすぎるよ﹂
﹁とにかく、俺はお前が﹃但し﹄と言う前にリクエストしたんだが
ら、俺の願いを叶えるべきじゃないのか?﹂
俺は伊勢エビの大振りの身を頬張った。パセリを散らしたマヨソ
ースと相まって、めちゃくちゃ旨え。
﹁どっちが早いとかじゃなくて、ずーっと前から近親相姦はダメっ
532
て言ってんじゃん。セックスはダメ。大サービスで、口でしてあげ
るから﹂
﹁いやいや、もう取り消せないって。大晦日だし、たまにはセック
スしようよ。そうだ、12時少し前から始めて、年をまたいで姫初
めするってのはどうだ? おお! 我ながらなんて素晴らしいアイ
デアだ!﹂
こんな素晴らしい提案をしたのに、ジト目を返す未羽。
﹁熟年カップルのお遊びだよ、それ。そもそも姫初めって、日常的
にセックスしてるカップルのその年最初のセックスでしょ﹂
﹁間違ってないだろ?﹂
﹁⋮⋮近親相姦に幕を引こうという気が微塵もないんだね⋮⋮お兄
ちゃんが好きな⋮⋮シ、シックスナイン⋮⋮してあげるから⋮⋮あ
れ恥ずかしいから、嫌なんだけど⋮⋮そ、それで許してよ﹂
頬を染めて未羽は言った。
﹁いや、もう年越しセックスじゃないと我慢できなくなった﹂
﹁実の妹がここまでサービスしてあげるって言ってんだから譲歩し
なよ! 野良犬っていうか鬼畜だよ!﹂
頭から湯気を出して怒る未羽。
ツンデレ香奈ちゃんと違って温厚な未羽はあまり激高することが
ないのだが⋮⋮俺、間違ったこと言ってるか?
﹁あのな、未羽。ここんとこご無沙汰で、大晦日で親がいないって
いう絶好の条件が揃ってるんだよ。いつもじいちゃん家で年越して
るじゃん。こんなチャンス、もう来ないよ﹂
﹁来なくていいよ。お兄ちゃん彼女いるんだから、妹とのセックス
から卒業しなよ﹂
﹁⋮⋮お前は香奈ちゃんとセックスしてるくせに﹂
ふてくされた顔で俺は言った。
俺と付き合う前から、香奈ちゃんは未羽とレズ友達だったのだが、
付き合いはじめてからもその関係は続いているのだ。
未羽はぐっと言葉に詰まった。
533
﹁お前と香奈ちゃんが百合友なのは、別に嫌じゃないし、エッチす
るななんて言う気はさらさらないけど、でも、自分たちは好き放題
セックスして、俺にはおあずけって、ちょっと不公平じゃね?﹂
﹁レ、レズと近親相姦は違うよ。同性愛は認めない方が後進的だも
ん。近親相姦は赤ちゃんできたら大ごとだもん﹂
﹁ちゃんと気をつけてるじゃないか。未羽、お前今日安全日だろう
?﹂
﹁妹の生理周期を把握しないでよっ! つーか中出しする気だった
のっ!?﹂
未羽は憤慨し、席を立った。怒って退席したのではなく、麺を鍋
の湯に投入して戻ってきた。
﹁お前はそうやって俺とのセックスを拒むけど、香奈ちゃんは俺を
気遣ってくれているんだぞ﹂
未羽は、怪訝そうに眉を寄せた。
﹁香奈ちゃんが⋮⋮? どんな風に気遣ってるのよ?﹂
﹁香奈ちゃんは、俺には近親相姦するなと言っておいて、自分は未
羽とセックスしていることを気にしてるんだよ。お前が言うとおり、
近親相姦は一般に受け入れられるものではないけど、そうは言って
も気が引けるんだろう﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
未羽は無言でカルパッチョを口に運んだ。タコの切り身をむにむ
にと噛む。
﹁香奈ちゃん、この前セックスしたとき、
﹃⋮⋮お兄さん、今でも未羽とセックスしたいですか?﹄
って聞くんだよ。俺、正直に
﹃したい﹄
って言ったら、
﹃そうですか⋮⋮すみませんね、わたしは未羽とエッチしているの
に⋮⋮﹄
って言うんだよ。
534
普通、彼氏が妹とできてたら許さないじゃん、それを逆に気遣って
くれるなんて、なんていい彼女だろうと思ったよ﹂
﹁⋮⋮まあ、多少常軌を逸しているけどね。香奈ちゃんは優しいよ﹂
﹁それでさ、
﹃⋮⋮でも、やっぱり兄妹でセックスするのは良くないと思います
から⋮⋮代わりに、こういうのはどうですか?﹄
って⋮⋮何してくれたと思う?﹂
﹁⋮⋮? あたしの服着てエッチしたとか?﹂
﹁おお、それもいいなあ!﹂
未羽が通り雨に濡れた洗濯物を見るような眼つきで俺を見た。
﹁⋮⋮正解は?﹂
﹁アイマスク出してきてさ、それを俺につけさせて、お前の声色使
って、物真似しながらセックスしてくれた﹂
﹁何してんの香奈ちゃん!?﹂
眼をまん丸くして驚く未羽。
﹁お前も香奈ちゃんも小柄だから、眼を閉じるとおっぱい以外は身
体付き似てるんだよな。それで、お前そっくりの声で、
﹃お兄ちゃぁん、未羽のおっぱい舐めてぇ⋮⋮﹄
とか言ってくれるんだよ。
もう俺、本当にお前とセックスしてるみたいで、
﹃⋮⋮ああ、未羽、お前、いつの間にこんなにおっぱいが大きくな
ったんだ⋮⋮﹄
って言うと、
﹃あぁん⋮⋮み、未羽、お兄ちゃんのこと考えながら、いっぱいオ
ナニーしてたら、おっぱい大きくなっちゃった⋮⋮﹄
とか言うんだよ。めちゃくちゃ興奮した﹂
﹁初めて聞いたよその話! あたしの知らないとこでどんなアブノ
ーマルプレイしてるのよっ!?﹂
愕然とする未羽。額が青くなっていた。
﹁アブノーマルとか言うな、失礼な﹂
535
﹁⋮⋮誰かの物真似しながらセックスって、彼女からしてみたらも
のすごく屈辱的じゃないの⋮⋮? 男から頼まれたら別れるよね、
普通⋮⋮しかも妹って⋮⋮﹂
﹁そこを自ら進んでやってくれるところが、香奈ちゃんの優しさだ
よなぁ。
﹃お兄ちゃん、未羽のおまんこ、もっと舐めて⋮⋮クリちゃんぺろ
ぺろしてぇ⋮⋮﹄とか、
﹃お兄ちゃんのおちんちん、大っきくて気持ちいいよぉ⋮⋮もっと
ちょうだい⋮⋮み、未羽、おかしくなっちゃうぅ⋮⋮﹄
とか、普段なら言わないような卑猥な言葉を連発してた。
アレは脳内で﹃これはわたしが言ってるんじゃない、未羽が言って
いるんだ﹄ということにして、羞恥心をお前に肩代わりさせていた
んだろう﹂
﹁ホントにあたしが恥ずかしいよ! あたし言わないもんそんなこ
と!⋮⋮香奈ちゃん、これはお仕置きが必要だね⋮⋮お兄ちゃんも
彼女にそんな痛いプレイさせないでよ、気の毒だと思わないの?﹂
﹁いやいや、香奈ちゃんノリノリだったよ。だってほら、香奈ちゃ
んお前のこと大好きじゃん。お前になりきってエッチするの、楽し
かったんだと思うよ。コスプレイヤーの心境?﹂
﹁全裸のコスプレなんてないよ!⋮⋮はぁ、なんかもう、突っ込み
疲れてきた⋮⋮﹂
げんなりする未羽。きっと、大掃除の疲れが出てきたのだろう。
キッチンタイマーがピピピピと鳴った。
未羽は溜息をついてキッチンへ行き、茹で上がったそばをざるに
取って湯を切り、丼に移した。汁を入れ、カマボコやネギを盛りつ
け、食卓に戻る。
﹁はい、お兄ちゃん、おそば⋮⋮﹂
湯気の立つ年越しそばを、俺は息を吹いて冷ましながら食った。
﹁未羽、出汁がきいててすげえ旨い。こってりしたものの後に、さ
っぱりしたそばっていいね﹂
536
﹁お粗末です⋮⋮﹂
﹁ところで、香奈ちゃんのお前の声真似、すっごい似てたんだけど、
お前聞いたことある?﹂
﹁香奈が友人たちの前で披露したことがあります。わたし自身は似
ていないと思ったのですが友人たちは爆笑していたので似ているの
でしょう﹂
﹁お前も香奈ちゃんの声真似できるんだ! すっげえ似てる!﹂
声優かこいつら⋮⋮どんだけ特技持ってるんだよ。
﹁というわけで、香奈ちゃんがここまでしてくれているんだから、
お前も今年最後のサービスをしてくれてもいいんじゃないか? 今
年の締めくくりと、来年も良い年になるようにとの願いを込めて、
年越し姫初めをしよう﹂
﹁理屈が逆だよ。香奈ちゃんはあたしたちに近親相姦させないため
にそこまでしてるんでしょ?⋮⋮でも、もういいや⋮⋮反論するの
疲れちゃった﹂
溜息交じりの言葉に、俺はすかさず食いついた。
﹁えっ? ﹃もういいや﹄って、オーケーってこと?﹂
﹁⋮⋮あたしが折れるまであきらめる気ないんでしょ? いいよ、
してあげるよ﹂
﹁本当か! ありがとう! なんて素晴らしい年の暮れだ!﹂
未羽はくたびれた顔をしていたが、俺は夏の甲子園出場が決まっ
たかのように喜んだ。
みんなも、夢をあきらめちゃダメだぜ? あきらめずに夢を追い
続ければ、妹と近親相姦だってできるんだ!
﹁ガッツポーズで喜ばないでよ⋮⋮少しは罪悪感とか背徳感とかな
いの?﹂
﹁兄妹で結ばれてはいけないなんて、そんなの誰かが勝手に決めた
ルールさ。自分に嘘をつくなんて、まっぴらだ!﹂
未羽はとくにコメントせず、ジト眼していた。
なじられるよりスルーされる方が辛かったが、気にしないことに
537
した。
﹁そうと決まれば、ご飯食べ終わったらさっそく始めるとしよう。
未羽、一緒に風呂入るか?﹂
﹁まだ8時前だよ! 年越しでやるんでしょ!?﹂
未羽がキレ気味に怒鳴った。
﹁いいじゃないか、4時間くらいかけたって。スローセックスだよ、
スローセックス。お前も香奈ちゃんとやってるだろ?﹂
﹁香奈ちゃんとだって4時間もかけないよ⋮⋮そんなただれた年の
越し方したら絶対いい年来ないよ﹂
﹁分かった、じゃあ1時間くらい前から始めるとして⋮⋮そうだ!
12時ちょうどにタイミングを合わせて、二人同時に絶頂に達す
るのはどうだ!?﹂
またまた良い提案だと思ったのだが、未羽は、うーん、といって
あごに手を当てた。
﹁それ、難しいと思うよ。あたしとお兄ちゃん身体の相性いいから、
同時にイクことはできると思うけど⋮⋮時間まで合わせるのはどう
かなあ? 時間前にお兄ちゃんが我慢できなくてイっちゃったりし
たら、すごいグダグダになるよ?﹂
冷静な意見に、俺は言葉が詰まった。
﹁う⋮⋮ぐぬぬ⋮⋮すごいありそうな気がする⋮⋮﹂
﹁もっとハードル下げてさ、12時ちょうどにおちんちんがおまん
こに入ってたら、年越し姫初め成功にしようよ。時間気にしながら
セックスするなんて、気持ち良さが半減しちゃうよ﹂
﹁うむ、その通りだ⋮⋮久し振りの未羽とのセックスだ、心置きな
く楽しみたい。よし、﹃年越し姫初め﹄の定義はそれでいこう。あ
あ、それにしても楽しみだ。未羽、ありがとう、こんな可愛い妹と
セックスしながら年が越せるなんて、俺は世界一の幸せ者だ。感謝
するよ﹂
俺はテーブルに額をつけて、未羽に礼を言った。
俺なりの精一杯の感謝の表現だったが、顔を上げると、未羽は口
538
をへの字にしていた。機嫌悪そうな顔なのに、なぜか頬がほんのり
赤い。
﹁⋮⋮そんな風に、頭下げたりとかしないでよ⋮⋮別に、お兄ちゃ
んのためだけってわけじゃ、ないんだからね⋮⋮﹂
﹁へ?﹂
突然のツンデレ口調の意味が分からず、俺は間抜けな声を出した。
未羽は腕を組み、顔はそっぽ向いて、視線だけ俺に向けた。
﹁⋮⋮あ、あたしだって、お兄ちゃんとセックスしたくなくないわ
けじゃないんだよ⋮⋮でも、のめり込んじゃうといけないから我慢
してるのに⋮⋮そんなに必死にあたしの身体求められちゃったら⋮
⋮大晦日だし、今日くらいはいいかなって、揺らいじゃうじゃん⋮
⋮で、でも、こんなの、しょっちゅうじゃないんだからね! 滅多
にしかないんだから、あたしを満足させないと、怒るからね!﹂
香奈ちゃんをも上回るツンデレっぷりを見せる未羽に、俺はテー
ブルにちんこが当たるほど勃起した。俺の妹はやっぱり、世界一可
愛かった。
﹁あ⋮⋮ああ! もちろんだ! 今日は⋮⋮﹂
︱︱最高の夜にしよう、俺がそう言いかけたとき、車のエンジン
音が近づいてきて、家の前で止まった。
ドアが開閉する音。タクシーのようだ。しばらくして、玄関を開
く音がした。
︱︱親父と母さんが、帰ってきた。
☆
539
あつし
︻後日談17︼親がいるのにコタツの中で妹と姫初めした件②
﹁何だ、淳も未羽もニュース見てないのか? メールも送ったぞ?﹂
親父と母さんは、新幹線が大雪で不通になり、家に帰ってきた。
淳ってのは俺の名前だ。
テレビをつけると、ちょうどそのニュースをやっていた。メール
も確かに来ていたが、大掃除やら何やらで忙しく、気がつかなかっ
たのだ。
新幹線は復旧のめどが立っていない。今年の帰省は無理そうだ。
﹁そうか、親父も母さんも、とんだ骨折りだったな。風呂入ってゆ
っくり休みなよ。俺は部屋にいるから﹂
親が帰ってきてしまったが、俺はまだ未羽との年越し姫初めをあ
きらめていなかった。
久しぶりに未羽からセックスの承諾がもらえたのだ。ここで引き
下がったら男がすたる。
俺は未羽にメール送って部屋に呼んだ。彼女はすぐに来た。
﹁残念だったね、お兄ちゃん﹂
部屋に入るなり苦笑いでそう言った未羽に、
﹁いや、全然あきらめてねえよ﹂
と俺は返した。
﹁はあ!? 何言ってんの! お父さんとお母さんいるんだよ!?﹂
眼を丸くして大声を出す未羽。
﹁だから、部屋で声をひそめてすればいいじゃないか。声が出ない
程度に、こっそりするんだよ﹂
﹁えっ、えぇぇっ!? お、お兄ちゃん、本気なの!?﹂
﹁俺はいつだって本気だ。親父も母さんも、いつもテレビ見ながら
540
年越すだろ? 大丈夫だよ﹂
肩にポンと手を置く。未羽は、ぽわ∼っと顔を赤くした。
﹁ホ、ホントにするのぉ⋮⋮!? こ、声出ちゃったらどうするの
⋮⋮?﹂
﹁大丈夫、俺がコントロールするから。どうしても声が抑えられな
かったら、この前電車の中で香奈ちゃんがイったみたいに口を押さ
えればいいよ﹂
﹁あ、あれすっごい苦しそうだったよぉ⋮⋮うう、自信ないなぁ⋮
⋮﹂
﹁⋮⋮その苦しい思いさせたの、お前だよ﹂
しゅわしゅわと頭から湯気を出しながら小さくなる未羽。それで
も、彼女は拒みはしなかった。
未羽、エロエロ大魔王だからな。あんまり顔には出さないけど、
一度その気になったものだから、少々無茶してもエッチしたいとい
う気持ちはあるのだろう。
作戦会議を済ませた俺は、意気揚々として、彼女と一緒にリビン
グに向かった。
しばらくは家族水入らずで団らんして、頃合いを見て部屋に引き
上げ、未羽と年越しセックスするのだ。
☆
しばらくは、何事もなく時間が過ぎた。
未羽と母さんが洗い物を片付け、各々風呂に入って、もうあとは
年を越すだけとなった。
計画に不備はないはずだった。しかし、家族全員がリビングのコ
タツに集合すると、親父が想定外のことを言いはじめやがった。
﹁今日はみんなで紅白を見て、ゆく年くる年を見ながら、みんな一
541
緒に新年を迎えよう﹂
﹁な、何言ってんだよ親父!? 俺も未羽もそんなの見ないぜ!﹂
計画を台無しにする発言に、俺は速攻で抗議したのだが、親父は
そよ風のように受け流した。
﹁そう言うな、淳。なあ、今年はたまたま新幹線が止まって、こう
して家族四人、家で水入らずで年を越せるんだ。
こんな機会、きっともうないぞ? お前はもうすぐ大学生だし、彼
女もいる。未羽も大学生になったら、友達付き合いも増えるだろう。
親と一緒に自宅で年を越すなんて、あと何年ってとこだろう。だか
ら今日は、俺と母さんと一緒に、みんな揃って年を越そう。父さん
からのお願いだ﹂
そう言って親父は、頭を下げた。言葉が返せない。
何で急にいい話はじめるんだよ、この親父!? そんなに家族思
いなら普段からもうちょっと家に居着けよ!
﹁淳、母さんからもお願い。父さんも母さんも、普段家を空けてば
かりだけど、今日は本当に滅多にない機会じゃない? 父さんのわ
がまま、聞いてあげてよ﹂
母さんも親父の味方だった。
前にも言ったが、うちの両親は美少女未羽の親だけあって、美男
美女である。
親父はいかにもチョイ悪親父といった憎たらしい風貌だ。母さん
はさすがに四十を超しているのでピチピチというわけにはいかない
が、往年の女優のような美貌である。
そんな母さんに、菩薩のような微笑みとともに頼みごとをされて
は、断りようがない。親父は全然可愛くないが、俺は母さんには弱
いのだ。
﹁分かったよ⋮⋮せめて紅白じゃなくて、﹃笑ってはいけない﹄じ
ゃだめかよ?﹂
﹁いや、紅白でなきゃだめだ﹂
﹁何だよそのこだわり!?﹂
542
不平たらたらな俺だったが、仕方ないので大人しくコタツに座っ
ていた。
ここでポジションを説明しておこう。リビングに42インチのテ
レビがあって、その前にコタツ。テレビの正面に親父と未羽が並ん
で座っている。親父の右に未羽だ。
母さんはテレビに向かって右側、左側が俺だ。
未羽にチラッと視線をやると、彼女は苦笑を返した。
俺は﹁いや、まだあきらめない﹂という意味を込め、小さく首を
振った。未羽が眼を丸くする。
︵何言ってんの!? お父さんとお母さんいるのに、コタツの中で
できるわけないでしょ!?︶
︵いや、12時ちょうどに入ってさえいればいいんだ。望みはある︶
俺と未羽はアイコンタクトで会話した。俺たちくらい仲の良い兄
妹なら、これくらいの情報は容易にやりとりできるのだ。
しばらくの間、ミカンやお菓子を食べたりお茶を飲んだりしなが
ら、まったりと時間が過ぎた。親父は未羽の酌で熱燗をちびちびや
っていた。
紅白なんて見るの久し振りだが、ちゃんと見ると意外に面白かっ
た。つーか、タレントと金の使い方が尋常じゃねえな。パネェぞN
HK。
今年流行ったものや話題になった出来事などもふんだんに盛り込
まれているので、それをネタに会話も弾んだ。
両親とこんなに話をするのも久し振りだ。最初は余計なことをと
思ったが、こうして和やかに一家団欒していると、親父の提案も悪
くないと思えた。
しかし、それはそれだ。俺は未羽との年越し姫初めをあきらめて
はいない。時刻は11時を過ぎている。
﹁ずっと座ってるとキツいな。未羽、お前の部屋にあるビーズクッ
ション貸してくれ﹂
俺はそう未羽に声をかけ、眼で合図を送った。
543
﹁う、うん、いいよ。冷えるから、あたし部屋から上着取ってこよ
っと﹂
俺と未羽は揃ってコタツを出て、二階に上がった。未羽の部屋で
作戦会議を開く。
﹁未羽、お前、何か理由をつけて俺の側に来い﹂
﹁お、お兄ちゃん、本気でするつもりなの!?﹂
未羽は頬を赤くして焦り顔をした。
﹁大丈夫、バレそうになったら即中止するから。俺、クッションで
横になるから、俺の前で一緒に寝ろ﹂
﹁ううう⋮⋮わ、わかったよぉ⋮⋮ちょ、ちょっとでも危ないと思
ったら、すぐ止めてよ!﹂
﹁大丈夫だ、問題ない。全て俺に任せろ﹂
﹁うっわー、こんなに力強く言ってるのに不安しか感じない⋮⋮う
うう、何でこんな変態兄貴と関係を持っちゃったんだろう⋮⋮﹂
それは逆に変態だからこそ近親相姦にまで至ったんだと思うが、
時間もないので言わないでおいた。
☆
俺と未羽はリビングに戻り、元のポジションに着いた。
俺は持って来たジャンボクッションを脇に敷き、立てた腕を枕に
して横になった。計画通りだ。
幸いなことに、親父はだいぶ酒が回っていた。
可愛い娘に酌をしてもらうのが嬉しいらしく、わんこそばの早食
いみたいに熱燗をおかわりした。
おちょこじゃなく茶碗を使えばいいのにと思ったが、器が小さい
方が回数が増えるから、その方が良いのだろう。
そのうちに親父はますますへべれけになって、未羽の肩や腰を触
ったりと、セクハラ行為が始まった。
﹁も⋮⋮も∼、お父さん酔っ払いすぎ、お酒臭いよ。お母さんに相
544
手してもらって﹂
未羽は下手くそな演技をして親父の隣を抜け出し、俺の方へ避難
してきた。
コタツ布団をめくって俺の前に入り、クッションを枕にしてテレ
ビに向いて寝転んだ。俺の腹と未羽の背中がくっついている状態だ。
未羽は親に甘える子供のように、背中をもたせかけている。はた
から見ても別にいやらしい光景ではないと思うが、ふにゃっとした
女の子特有の柔らかさに、俺は即座に勃起した。
目の前にある彼女の頭から、シャンプーのいい匂いがしてくる。
今すぐギュッと抱きしめたいのを、俺は堪えなくてはならなかった。
﹁あらあら、あなたたち、高校生になっても仲いいのね﹂
母さんがのんきに言う。何も疑ってはいないらしい。
ピンと張ったジャージのテントが未羽の尻に当たっているが、彼
女は別段身体をずらして避けようともしなかった。⋮⋮天使だ、俺
の妹。
﹁おーい、未羽、戻ってこい﹂
﹁お父さんのそばヤダ。お兄ちゃんがいい﹂
親父は戻るよう促したが、未羽は無視した。親父はやれやれと言
って、母さんに酌してもらっていた。
娘にはフラレたが、相変わらず機嫌はいい。四十超してまだラブ
ラブなんだよ、うちの両親。
﹁今日は冷えるなあ、母さん、暖房も入れようか?﹂と親父。
﹁電気代の無駄よ。ちょっと待ってて﹂
母さんはコタツを出ると、もこもこした大きめのブランケットを
二枚持って戻ってきた。一枚を親父の肩にかける。
﹁はい、あなたたちも。肩が冷えるでしょ?﹂
そう言って母さんは俺と未羽の上半身にブランケットをかけてく
れた。
母さん! ナイスアシスト! 叫びたいのをこらえて、俺は﹁あ
あ、ありがと﹂と普通に礼を言った。
545
☆
546
︻後日談17︼親がいるのにコタツの中で妹と姫初めした件③︵
前書き︶
公式ミニ企画﹁姫初め2015﹂参加作品です。連載中の第58∼
60部分での参加になります。
初めての方にも読んでいただけるように、登場人物の紹介も入れて、
短編として独立して読めるようにしています。
この機会に本シリーズを手にとっていただけると嬉しいです。
内容はサブタイトルどおりです。親はもちろんエッチに参加しませ
んが、﹁﹃親﹄という字を見るだけで萎える﹂という方は、前半の
会話部分だけでもお楽しみ下さい。
547
︻後日談17︼親がいるのにコタツの中で妹と姫初めした件③
時刻は11時半を回った。すっかりできあがった親父は、言い出
しっぺのくせに船をこぎ始めていた。
紅白は紅組の大トリ、電子の妖精こと初音ミクがディラッドスク
リーンに登場して、数十名のダンサーが千本桜に合わせてオタ芸を
踊り、盛り上がっている。母さんは親父の接待から解放され、テレ
ビに集中していた。
チャンスだ。俺は自分の太ももに添えていた手を、コタツの中で、
すすす、と未羽の腹へ移動させた。
未羽の肩がぴくっと震えた。首を捻って、背後にいる俺の表情を
伺う。
未羽は、未だ決心を決めかねているような顔をしていた。俺がア
イコンタクトで﹁大丈夫﹂と思念を送ると、よけい不安そうな顔を
した。失礼なやつだ。
未羽がテレビの方を向く。
俺は、コタツ布団やブランケットが不自然な動きをしないように
気をつけながら、ゆっくりと彼女のトレーナーの中へ右手を潜り込
ませた。
地肌に触れられた未羽が、またピクッと身体を震わせた。
親父はうつらうつらしていて、母さんは丁寧にミカンの筋を取り
ながらテレビを見ている。俺たちに注意を払っていないのは確かだ
が、それでもすげぇドキドキした。
すべすべの肌を手のひらに感じながら、徐々に手を上へと移動さ
せる。みぞおちを越えて、指先が柔らかな膨らみに、ちょん、と触
れた。ノーブラだった。
548
︵あっ⋮⋮︶
未羽が微かに声を漏らす。
未羽は普段、おっぱいを触っても﹁いやーん、お兄ちゃんのエッ
チぃ﹂くらいのリアクションなので、二人きりのときはほぼ自由に
触らせてもらっている。
しかし今は状況が状況なので、指先が膨らみに触れただけで、洞
窟で宝物を見つけたような気持ちになった。
そのまま、手をさらに上へと這わせる。柔らかな丘の頂で、指先
が小さな突起を探し出した。男のロマン、乳首大明神に俺は到達し
た。
︵はふ⋮⋮︶
敏感な部分に触れられ、未羽が艶っぽい息を吐いた。感度がすご
く高まっているようだ。未羽も興奮しているのだろう。
親の動向を確認、異常なし。俺はさらに右手を奥地へと侵入させ、
手のひらですっぽりと乳房を包んだ。
やんわりと、もみもみ開始。未羽のおっぱいはちょうど手のひら
に収まるサイズで、くにっと握るとぽにょんと跳ね返す弾力が、何
とも言えず心地良い。
︵⋮⋮ふぅ⋮⋮ふうぅ⋮⋮︶
未羽は口をきゅっと結んで声を出さないようにしている。それで
も、緊張が感度を高めているせいもあり、空気の薄い高山にいるよ
うに息が荒かった。
顔を覗くと、頬がきれいな桜色に上気していた。うおぉ⋮⋮超可
愛い。
﹁淳、あんたどっちが勝つと思う?﹂
母さんから急に話しかけられ、心臓が口から飛び出た。紅白の勝
敗予想を聞いているのだと、こんな簡単なことを理解するのに五秒
かかった。
﹁えっ!? あっ、ああ、し、白組じゃないかな、お、俺の好きな
コノヨノオワリも出てるし﹂
549
﹁えー? そうかな、わたし紅組だと思うけど。AK47にH&K
も総出演じゃない。未羽はどっち?﹂
おっぱいに当てた手から、未羽の心臓がどっくんどっくんと激し
く鼓動してるのが感じられた。
﹁あ、あたしお母さんと一緒! AKが勢いあるよ、やっぱ﹂
母さんは﹁そうよねー﹂と言って、またテレビに向いた。
俺と未羽は揃って、ふはー⋮⋮と長い息を吐いた。心臓止まるか
と思った。
おっぱい揉み再開。
未羽がまた首を捻って俺を見る。眉が八の字になっていた。
︵お、お兄ちゃん、やっぱ無理だよ⋮⋮もう止めよう?︶
︵いや、怪しまれてないから⋮⋮もうちょっと続けよう⋮⋮︶
︵う゛∼⋮⋮︶
こそこそと会話を交わす。未羽はおしっこを我慢しているような
顔をしたが、俺にあきらめる気がないことを悟ると、テレビを向い
て寝転がった。
俺は乳首攻撃を開始した。ぷにぷにした先っちょを指先でつまみ、
ソフトに弄る。
︵ふわ⋮⋮あっ、んん⋮⋮︶
ぷるっ、ぷるっと、未羽が断続的に震える。妹の身体を知り尽く
している俺は、彼女がとても敏感になっているのが分かった。
右のおっぱいをたっぷりと可愛がり、左のおっぱいへ移動する。
未羽は同じように、身体を震わせて感じてくれた。
今のところ、未羽は声を押し殺すのに成功している。しかし、顔
はすっかり赤くなってしまっていた。もう母さんと面と向かうこと
ができないだろう、怪しすぎる。
﹁あら、白組が勝っちゃった。えー、何でよ? エグイサルの人気
?﹂
不満げに結果を分析する母さんに、俺と未羽はあいまいに返事を
返した。親父は座椅子にもたれ、完全に寝入っていた。
550
﹁もうチャンネル変えてもいい? お父さん寝てるし、ゆく年くる
年じゃなくてもいいわよね?﹂
母さんはチャンネルを民放に変えた。ザッピングしているとジャ
ニーズのカウントダウンライブをやっている局があって、母さんは
Kidsじゃない、もっと早く見れば良か
そこでチャンネルを止めた。
﹁あら、KinShi
った﹂
ジャニーズ好きな母さんは紅白よりもずっと集中してテレビを見
Kidsとは、ジャニーズ初のメンバー
始めた。若い男好きなんだよな、うちの母親⋮⋮老けないわけだぜ。
ちなみにKinShi
全員がメガネをかけているという男性アイドルグループのことだ。
何にせよ、こっちには好都合だ。俺はおっぱいへの愛撫を切り上
げ、手を下腹部へと移動させた。
︵えっ!? お、お兄ちゃん!?︶
性器を触られるとは思っていなかったらしい未羽が、驚いて首を
振り向ける。
︵大丈夫、母さんテレビに夢中だから︶
︵だ、大丈夫じゃないよぉ⋮⋮! こ、声出ちゃう⋮⋮!︶
未羽は泣きそうな顔をしていたが、俺は構わずに右手をルームパ
ンツの中へと潜り込ませた。
︵あっ⋮⋮︶
緩やかな丸みを帯びた下腹部へ、そーっと手のひらを這わせる。
これまたすべすべの肌︱︱俺の妹は、どこをとっても一級品である。
︵だ、だめぇ⋮⋮︶
未羽がルームパンツの上から俺の手を押さえつけた。でも、非力
な彼女の腕では、抵抗にもならなかった。
ちょっと強引に、手を進める。未羽は十五歳になってもつるつる
なので、俺は陰毛の感触を味わうことなしに、スリットに到着した。
︵あんっ⋮⋮!︶
指先で秘部をなぞる。脚を閉じているので、そこはぴったりと閉
551
じていたが︱︱溢れるほど、潤っていた。
︵わっ⋮⋮未羽、こんなに⋮⋮︶
︵やぁっ⋮⋮は、恥ずかしい⋮⋮︶
肩をすくませて、未羽が耳まで赤くなった。頭から湯気が出てい
る。死ぬほど萌えた。
スリットにそって指を往復させると、指先がとろとろのぬめりに
包まれた。おお⋮⋮こんなに感じていたのか、妹よ⋮⋮なんて可愛
いやつだ。
指を浅く潜らせて、クリトリスを探し出す。未羽の身体が、大き
く震えた。
﹁あっ⋮⋮﹂
声が出てしまい、未羽は慌てて口を押さえた。
﹁ご、ごほっ! ごほっ!⋮⋮こほっ⋮⋮﹂
咳にしてごまかす。この前、香奈ちゃんが羞恥プレイ中にあえぎ
声をごまかすのに使ったテクニックだ。未羽も自分でやる羽目にな
るとは思っていなかったろう。
﹁未羽、大丈夫? 風邪なの?﹂
﹁だ、大丈夫⋮⋮さ、さっき食べたポテチが喉にかかって、むせち
ゃっただけ⋮⋮けほっ、けほっ⋮⋮﹂
﹁苦しそうね、お茶飲めば?﹂
﹁う、うん、ありがと、大丈夫﹂
咳が治まると、母さんはまたライブに集中した。歌を一緒に口ず
さんでいる。曲知ってるのかよ⋮⋮女子中学生か。
時刻は11時45分。まだ挿入には早いだろう。俺はクリトリス
への愛撫を再開した。
スリットはしっかりと閉じているが、とろっとろに潤っているの
で、指を差し入れるとぬるりと俺の指を受け入れる。
お豆さんを探り当て、くりくりと弄ってやると、未羽はぷるぷる
と身体を震わせて反応した。
﹁んっ⋮⋮はぁっ⋮⋮け、けほっ、けほっ⋮⋮﹂
552
母さんはもう未羽の咳を気にしなかった。みんなも経験あると思
うけど、一度むせるとしばらく続くものだが、それで身体を壊すこ
とはない。
おまんこからどんどんぬめったものが溢れてくる。ドキドキ感が
未羽の感度を最高潮に高めていて、彼女は身体が震えるのをどうに
も止められないでいた。
ぶるっと大きく震えるたび、
﹁んっ!⋮⋮ん∼、けほ、けほ⋮⋮﹂
という風に、﹁まだ喉の奥に残ってる感じ﹂を演出し、ごまかす。
こういうことはとても器用にやってのけるんだよな。
とはいえ、表情の方はもう完全にごまかしが効かない状態だった。
耳まで真っ赤になって、眼がとろんとしてきている。
むせる演技ができていることから、まだ理性は残っているようだ
が、これ以上続けているとあえぎ声が抑えられなくなりそうだ。
おまんこへの刺激で計画が頓挫しては元も子もない。
時刻は11時50分。いよいよ、作戦を最終段階へと進めるとき
だ。
親父はすでに熟睡モード、母さんはテレビに夢中である。⋮⋮よ
し、決行だ。
俺は未羽の股間から手を出して、ルームパンツの腰の部分に指を
かけた。
未羽がビクッとして肩をすくませる。顔をうかがうと、内科でこ
れから浣腸でもされるような顔をしていた。
すごく緊張はしているようだが、ここまできて逆らう気はないよ
うだ。
俺はそ∼っと、パンツと一緒に未羽のルームパンツを下げた。
布団を被っているので見えないが、未羽の小振りな可愛らしいお
尻が、ぷりんと顔を出した︵はずだ︶。
︵あっ⋮⋮︶
未羽がカ∼ッと顔を熱くした。これから起こることに備えて、彼
553
女は身を縮こまらせた。
お尻をなでなでとさする。もう前戯は充分なので尻をさわる必要
などないのだが、さわれるところは余さずさわっておく俺だった。
ぷにぷにで撫で心地最高。
よし、いくぞ⋮⋮俺は、自分のジャージを下げた。
いきり立った強張りがビヨンと顔を出した。破裂しそうなほどパ
ンパンだ。
未羽の尻に強張りを押しつけると、彼女はドキッとして、さらに
身を縮こまらせた。
ペニスに手を添え、狙いを定める。先っちょがおまんこに触れる
と、彼女はまたピクッと身体を震わせた。
︵お、お兄ちゃん⋮⋮や、やっぱり⋮⋮︶
︵未羽、いくよ︶
未羽が弱気なことを言い出す前に、俺は腰を前進させた。にゅる
っと、亀頭がおまんこに潜り込む。先っちょが入っただけなのに、
甘美な感触に頭がクラッとした。
︵あっ⋮⋮! くぅっ⋮⋮︶
声が出そうになり、未羽は片手でぐっと口を押さえた。ペニスの
先で彼女のぬくもりを感じながら、俺はさらに腰を進めた。
︵んっ⋮⋮くはぁ⋮⋮︶
ぬぬぬ⋮⋮と、生のペニスが根元まで進入した。とろとろの襞の
感触と、粘膜を通して伝わる温かさ。久し振りに味わう妹のおまん
こはとろけるようで、天国の味だった。
﹁ぷはぁ⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
挿入の快感を何とか声を出さずにしのいだ未羽は、口から手を離
し、息を継いだ。緊張のためか、おまんこがキュッ、キュッ、と断
続的に俺のペニスを締めつける。
時計を見ると、11時53分だった。歴史的瞬間だ。
よし、無事挿入に成功した。派手に腰を振ることはできないが、
精神が高揚しているためか、入れているだけでやけに気持ち良かっ
554
た。
あとはこの状態をどうにか12時を過ぎるまで維持すれば⋮⋮緊
張で萎えたり暴発したりしなければ、偉業は達成される!
俺は上半身を極力動かさないようにして、腰を引いた。カリ首の
辺りまでペニスを抜く。
︵ふわ⋮⋮う、動くの⋮⋮?︶
腰を動かす気だと悟った未羽は、また口を覆った。抜くときと同
じように、俺はゆっくりと腰を前進させた。
︵あっ⋮⋮んぁっ⋮⋮︶
うん、このくらいのスピードなら、不自然に思われず動けそうだ。
俺は、10秒で一往復くらいの、超スローペースで前後運動を開
始した。
動きはゆっくりなのだが、その分膣壁に亀頭がこすられる感覚が、
頭に映像が浮かぶほど微細に感じられて、予想外に気持ち良かった。
︵くうっ⋮⋮ふわ⋮⋮!︶
未羽も俺と同じように、いつもと違う感覚を味わっているようだ
った。異常なシチュエーションと焦らすようにゆっくりなピストン
運動が、快感を倍増していた。
﹁お父さん、起きて、年が変わっちゃうわよ﹂
母さんが親父を揺り起こそうとして、俺たちはまた心臓が飛び出
そうになった。
﹁んん⋮⋮ああ、母さんか⋮⋮あれ? 紅白は?﹂
﹁もう終わったわよ。あと三分で新年よ、もう起きて﹂
親父が寝ぼけ眼をこする。
俺はピストン運動を止めてじっとしていた。⋮⋮この緊迫した状
況でちんこが縮こまらなかった俺って、すごいと思う。
﹁ゆく年くる年見ないのか?﹂
﹁いやよ、あなた寝てたくせに。カウントダウンライブ見るの﹂
テレビでは七面鳥の羽を模した衣装を着たターキー&翼がMCを
始めていた。時刻は23時59分。
555
﹁ほら、あなたたちも起きなさい。新年くらい、ちゃんと座って迎
えなさい﹂
ぐっ⋮⋮! くそう、これまでか⋮⋮。
母さんに至極真っ当なことを言われ、俺は万事休すかと思った。
しかし、意外にも親父から助け船が出た。
﹁ああ、いいんだ、いいんだ、俺も寝てたし。こうして家族が揃っ
ているだけで、充分だよ。淳も未羽も、寝たけりゃ寝てていいんだ﹂
﹁あ、ああ、親父、そうするよ﹂
﹁あ、あたしも寝転んでるね﹂
﹁お行儀悪いわね、まったく、お父さんったら甘いんだから﹂
母さんは呆れて溜息をついたが、それ以上小言は言わず、ミカン
を口に放り込んだ。
23時59分50秒。ターキー&翼が音頭を取り、カウントダウ
ンが始まった。
親父も母さんも、テレビに集中している。チャンスだ。俺はピス
トン運動を再開した。
︵あっ⋮⋮! あぁっ⋮⋮!︶
﹃10、9、8、⋮⋮﹄
ライブ会場の大型モニターにでっかく残り時間が映し出され、一
秒ごとに減じていく。観客全員の声が重なり、会場を揺るがす大歓
声となる。
︵んっ⋮⋮あふ⋮⋮︶
さっきよりも幾分速いペースのピストンに、未羽は顔を火照らせ、
甘い息を漏らした。新年まであとわずかだ。
﹃⋮⋮3、2、1、ゼロー!! あけまして、おめでとー!!﹄
巨大なアリーナ会場が大歓声で満たされる。母さんがパチパチと
手を叩いた。
俺と未羽は、揃って溜息をついた。年越し姫初め、大成功だ。
さすがにこのスローペースではイクことができなかったが、結合
するだけでなくピストン運動しながら年を越すことができた。目標
556
を上回る成果だ。すげぇ達成感。
﹁あけましておめでとう、お父さん﹂と母さん。
﹁ああ、あけましておめでとう﹂
親父と母さんが互いに新年の挨拶を交わす。
俺と未羽も、半分だけ身体を起こして挨拶した。ちんこはつなが
ったままだ。
﹁あけましておめでとうございます﹂、と未羽。
﹁あけましておめでとう﹂、と俺。
家族全員で、ぺこりと頭を下げる。うん、いい年明けだ。これで
こそ日本の正月だ。
﹁母さん、俺の丹前どこだっけ?﹂と親父。
﹁二階よ。着るの? 着るなら探してくるわよ?﹂
﹁いや、いい、自分で探すから。母さんは熱燗もう一本つけててく
れないか﹂
親父と母さんはそんな会話を交わし、親父はよっこいしょと爺く
さいかけ声とともに立ち上がり、二階へ行った。
母さんは空いた徳利を持ってキッチンへ。
リビングのコタツに、つながったままの俺たちだけが残された。
キッチンからは、コタツに入っている俺たちは死角になっている。
首を伸ばし、未羽の顔をうかがう。彼女は、恥ずかしいような、
でもちょっと期待しているような表情を俺に見せた。
そうして彼女は、俺の眼をじっと見ながら、頬をほんのり染めて、
小さくコクッと頷いた。
︵くわぁ! 未羽、愛してる!︶
あまりの可愛らしさに鼻血が噴き出そうだった。俺は背後から未
羽を腕ごとガッシと抱きしめた。
︵あっ⋮⋮お、お兄ちゃん、きて⋮⋮はうっ⋮⋮︶
強く彼女を抱きながら、俺はハイスピードで腰を振った。
さんざん焦れったい思いを味あわされた後だったので、全速のピ
ストンはめちゃくちゃ気持ち良かった。
557
︵あっ、あっ! お、兄ちゃん、すごぉい⋮⋮! はぁっ!︶
未羽も激しく感じているようだ。昨年のうちにある程度できあが
っていた俺たちは、あっという間に頂上近くまで到達した。
︵ふわっ⋮⋮! あっ、あっ⋮⋮も、もう、イク⋮⋮!︶
︵お、俺もイキそ⋮⋮み、未羽、中に出すよ⋮⋮くう⋮⋮︶
未羽がときおり、ギュッと身体に力を込める。絶頂が目の前に近
づいているのを、俺は感じた。
身体の奥からから、快感のビッグウェーブが押し寄せてくる。俺
はラストスパートをかけ、激しく腰を突き上げた。快感の波が、俺
たちを呑み込んでいく。
︵あっ、あぁっ!⋮⋮はわぁっ、あっ、もう、もう⋮⋮あっ、ああ
ぁぁぁん!⋮⋮︶
背筋を快感が突き抜け、未羽が大きく身体を震わせる。
波は幾重にもなって押し寄せた。そのたびに、びくん、びくんと
身体が波打つ。
同時に俺も射精した。妹の膣内へと、盛大に精液を放出する。
絶頂を迎えた未羽のおまんこは何度もキュッと収縮し、俺は精液
を残らず絞り取られた。
︵ふわぁ⋮⋮はふ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮︶
快感の波が過ぎ去り、未羽は空気が抜けたように脱力した。
頬が紅潮し、マラソン後のように息が荒い。毎度のことだけど、
イった後の未羽、すげぇエロい。
俺は抱きしめていた腕を解き、ペニスを抜いた。いろんな液体で
湿っているのは感じていたが、ちんこを出しっ放しにしておくわけ
にも行かないので、すぐにジャージを上げた。
未羽も桃源郷から帰ってきたらしく、急いでルームパンツをはき
直した。⋮⋮お互い、パンツに少々染みがつくのは許容しなくては
ならない。後で手洗いしてから洗濯に出そう。
未羽はころんと寝返って、仰向けになった。高級ホテルのディナ
ーを平らげたような、満足げな顔をしていた。
558
﹁⋮⋮ふわぁぁ⋮⋮すっごい、気持ち良かった⋮⋮﹂
実の兄妹で中出しセックスした後に、正直すぎる感想を述べる妹
だった。顔が緩みきっている。
キッチンを見ると、母さんは徳利を湯煎しながら何かつまみを調
理しているらしかった。しばらくこっちを向くことはなさそうだ。
俺は、未羽におでこが触れ合うくらい顔を寄せた。
﹁今年もよろしくな、未羽。愛してるよ﹂
﹁うん、今年もよろしくね。お兄ちゃん、大好き﹂
俺は世界一可愛い妹に、今年最初のキスをした。彼女の唇はぷっ
くりと柔らかくて、天使に口づけているような気持ちになった。
舌を入れると、未羽もすぐに応えてくれた。舌を絡め、とろける
ような感触を味わう。
いつまでも妹とのべろちゅーを味わっていたかったが、ここで親
バレしては台無しだ。俺は未練を感じつつ唇を離した。
﹁えへへ﹂
未羽が眼を三日月にして笑った。相変わらず、腰くだけになる笑
顔だ。
﹁まったく⋮⋮可愛すぎるよ、お前。ほら、起きるぞ﹂
俺は身を起こし、未羽の手を引いて彼女も上体を起こさせた。
親父が二階から丹前を着て下りてきて、母さんもお盆を持ってリ
ビングに戻った。熱燗とジュースと、お歳暮でもらったハムを焼い
た皿を、コタツに置く。
﹁あなたたちも食べなさい。これ、羊のハムよ﹂
﹁へー、珍しいな。あ、来年ひつじ年だからか﹂
﹁お兄ちゃん、もう今年だよ。ん∼、いい匂い、縁起物だね﹂
未羽が俺と自分の分のジュースをグラスに注ぎ、親父が母さんに
日本酒を酌してあげた。
各々に飲み物が行き渡ったところで、親父が乾杯の音頭を取る。
﹁それじゃあ、あらためて。今年も家族みんなが健康で、良い年に
なりますように、あけまして、おめでとう﹂
559
﹁﹁﹁あけまして、おめでとう﹂﹂﹂
カツン、コツンと、グラスとおちょこで乾杯する。穏やかな新年
の幕開けだった。
みんなにも、良い年が訪れますように。今年もよろしく。
おしまい
560
︻前日談1︼十二歳の思い出 ①︵前書き︶
※タイトルを︻後日談18︼から︻前日談1︼に変更しました。
よく考えたら、全然後日談じゃなかったw
お待たせいたしました。久々の﹁妹痔﹂更新です。
﹁なろう﹂に浮気しておりましたが、あちらの方が目標の10万字
に到達しましたので、戻って参りました。
応援してくださっている方々には、長くお待たせしてしまい申し訳
なく思っております。
﹁なろう﹂で連載中の﹁魔法少女ココロリータ!百合成分増量中!﹂
ですが、物語を頭の中から出してやらないと破裂しそうな感じだっ
たので、やむなく﹁妹痔﹂を休載し、そちらを執筆しておりました。
ご容赦願います。
その上、久々の更新だというのにエロ度低めです。少年誌を読んで
いるような気持ちで読んでいただけたらと思います。
﹁魔法少女ココロリータ!百合成分増量中!﹂は、タイトル通りゆ
りゆりな作品です。百合・ギャグ・バトル・日常・ほのぼのなど、
いろいろ取りそろえております。
エロは軽いお色気程度しかありませんが、女の子のキャッキャウフ
フが好きな方にはぴったりな作品ですので、こちらも読んでいただ
けたら幸いです。
←
http://ncode.syosetu.com/n6725
cn/
561
︻前日談1︼十二歳の思い出 ①
︱︱未羽と香奈が出会ったばかりの、十二歳の頃の話。
四月下旬。中学に入学して、もうすぐひと月。
新しい環境にも慣れてきて、浮き足立っていた気持ちがちょっと
落ち着いてくる時期だ。
そのころ、未羽のクラスの女子には、自然と三つのグループがで
きていた。
ひとつは、いかにも女子中学生といった感じの、キャピキャピし
た明るい子たちのグループ。未羽はこのグループの中心的存在だっ
た。
もうひとつは、ちょっと大人びた子たちが属する、落ち着いてい
て学業優秀な子たちの多いグループ。ここは香奈が中心になってい
た。
最後に、ヤンキーとまではいかないが、ちょっと派手で優等生で
はない子たちのグループ。
他に人付き合いが苦手な子が一人いたが、それは未羽が誘ってキ
ャピキャピグループに入れたので、このクラスに孤立した子はいな
かった。
グループは特に名前がついているわけでもなく、メンバーは固定
していないし、対立もしていない。ただ、班分けしたり遊んだりす
るときにはそのメンバーで集まることが多い、というだけのことだ。
リア充でコミュ力抜群の未羽は、もっと他のグループとも交流し
たいと思っていたのだが、まだ中学生活が始まったばかりだし、先
ずは様子見、といった感じに構えていた。
そんな、特にいざこざもない、穏やかな日常が繰り返されていた、
562
ある日の出来事︱︱。
未羽のクラスは、三限の体育を控え、更衣室で着替えをしていた。
女子更衣室は下着姿の女の子がひしめいていて、天国のような光
景が繰りひろげられていた。
﹁きゃっ!﹂
背後で女の子の悲鳴がして、未羽は振り向いた。ブルマに上半身
はブラだけの香奈が、身をかがめて胸を押さえていた。
れいみ
香奈の前で、例の優等生ではないグループのリーダー的存在であ
る麗美が、ケラケラと笑っている。天然ウェーブの髪で、彫りが深
い。ハーフみたいな外見の子だ。
﹁いやー、ホント、いいもの持ってるよね∼、香奈は、へっへっへ﹂
その言葉で、麗美が香奈の胸を触ったのだろうというのは、容易
に想像がついた。
以前から麗美は、着替えのたびごとに隙があると香奈の胸を触っ
ていた。
未羽も目撃したことがあるのだが、麗美の触り方はえげつない。
後ろからそっと近づいて、胸を鷲づかみにするのだ。
麗美のグループの子らも真似をするので、香奈は週に二、三回は
誰かに胸を触られていた。
﹁もう、やめてって言ってるでしょ﹂
﹁いーじゃん、減るもんじゃないし、ひひ﹂
香奈が怒っても、決まり文句を返すばかりだ。周りのみんなも慣
れっこになってしまって、くすくす笑うだけで、取りざたにする者
はいなかった。
未羽と香奈は、このころはまだあまり会話をしたことがなかった。
お互い、可愛い子だなと意識はしていたのだが、自分の属するグル
ープの付き合いだけで手一杯だったのだ。
未羽は、香奈が胸を触られたあとに、一瞬辛そうな顔をするのを
知っていた。きっと、本当に嫌なんだろうなと思っていた。
563
でも、それを強く麗美に注意すると、彼女のグループを刺激する
ことになりそうで、言うことができなかった。
下手をすると、麗美のグループと未羽たちのグループが敵対関係
になりかねない。自分一人のことなら構わないが、友だちを巻き添
えにはしたくなかった。
香奈は黙って着替えをすませた。感情を押し殺した横顔を見てい
ると、未羽は胸がちくちくと痛むのだった。
その日の体育は走り幅跳びだった。砂場はひとつしかないので、
順番を待つ間、クラスメイトは二、三人ずつ集まっておしゃべりを
していた。
香奈はみんなから少し離れたところで、芝の上に座っていた。未
羽は、チャンスと思って彼女に近づき、一メートルくらい間を開け
て隣に座った。
みんな、特に二人に注意を払うこともなかった。リア充の二人が
並んでいたところで、珍しいということもないのだ。
﹁やっ﹂と未羽。
﹁⋮⋮やぁ﹂と香奈。
香奈は、未羽がグループを離れて自分に近づいて来たことを珍し
く思っているようだった。
﹁香奈ちゃん、一回目何メートルだった?﹂
﹁⋮⋮4メートル5﹂
﹁えっ! すごい! 4メートル超えたの!?﹂
未羽が眼を丸くする。
﹁すっごい⋮⋮あたし3メートルいかなかったよ、運動神経いいん
だねー。でも香奈ちゃん、部活入ってないよね?﹂
持ち前のコミュ力で、以前から仲良しにように話しかける未羽。
香奈は未羽のよく動く表情を見て、﹁やっぱり可愛いな、この子﹂
と思っていた。
564
﹁部活はやってないけど⋮⋮わたし、空手習ってるから﹂
﹁あっ、そうなんだ。へえ、カッコいいね、初めて聞いたよ﹂
﹁怖がれそうだから、みんなには言ってないの。未羽も秘密にして
て﹂
香奈は、さらりと秘密を喋ってしまった自分を、不思議に思って
いた。未羽に空手のことを話すのに、何の抵抗もなかった。
二人はそのあとも、たわいもない話を続けた。普段はどちらかと
いうと無口な香奈も、未羽が相手だと言葉がすらすらと出てきた。
入学以来あまり話したことがなかったのが嘘のようだった。
話が弾んでも、話題が切り替わるときには一瞬間が空く。未羽は
タイミングを見計らって、本題を切り出した。
﹁⋮⋮香奈ちゃんさ⋮⋮着替えのとき、胸、触られてたよね⋮⋮﹂
急に声のトーンが下がる。香奈は、﹁あ、それでか﹂と、未羽が
近づいてきた訳を察した。
﹁気にしないで、小学校のころからしょっちゅうだし、慣れてるわ﹂
﹁でも、本当は嫌なんでしょ? もっと強く言った方がいいと思う
よ?﹂
未羽は親身に言った。香奈が苦笑する。
﹁大丈夫、あんなの気にしてたら、やってられないわ﹂
﹁⋮⋮強く言うと、冗談が通じないとか、空気読めないとか、そう
いう風に思われるのが嫌なんでしょ? だから、我慢してるんだよ
ね?﹂
未羽は眉を八の字にして、でも、瞳には力を込めて、香奈をじっ
と見つめた。そのとおりだったので、香奈は言葉に詰まった。
﹁あたしから麗美ちゃんに言おうか? その方が⋮⋮﹂
﹁いや、大丈夫だよ、未羽がそんなこと⋮⋮﹂
﹁香奈ー! もう準備しなよー!﹂
言葉の途中で、香奈はクラスメイトに名を呼ばれた。二回目の順
番が回ってきたらしい。
﹁行ってくるね﹂
565
香奈は立ち上がった。ブルマの尻をはたいて、芝の葉を落とす。
﹁未羽、ありがとう⋮⋮でも、本当に大丈夫だから﹂
そう言って、香奈は走り幅跳びのスタートポイントへと駆けてい
った。未羽は心配そうな顔で、その背中を見送った。
体育の時間が終わった。
香奈は日直だったので、メジャーの片付けを体育教師に頼まれ、
用具室に片付けてきた。
そのため、みんなより着替えが少し遅れてしまった。更衣室では
あらかたの者が制服に着替え終わっていたので、香奈も急いで上着
を脱いだ。︱︱だから、油断してしまったのだ。
香奈の背後に麗美が忍び寄った。未羽が気づいたときにはすでに
遅く、麗美は手を伸ばして、香奈の胸を鷲づかみにした。
﹁痛っ⋮⋮!﹂
﹁ひゃっはっは∼! 何回揉んでも香奈のおっぱいは触り心地いい
ね∼!﹂
香奈は胸を隠し、唇を噛みしめて麗美を睨みつけた。麗美はへら
へらした顔を崩さない。
﹁そんな怒んないでよ∼、減るもんじゃないじゃん。巨乳は揉まれ
る運命にあるんだよ﹂
香奈は悔しさに顔をゆがめ、涙目になった。未羽はもう我慢がで
きず、香奈と麗美の間に制服姿で立ちふさがった。鋭い目付きで、
麗美を睨む。
﹁あれ? 何、未羽? 怒ってんの? ちょっと、マジになんない
で⋮⋮﹂
﹁麗美ちゃん! 香奈ちゃんのおっぱい触るのやめて!﹂
大きな声で未羽は言った。更衣室に残っていた全員の視線が集中
する。
﹁ちょ、未羽、何マジに⋮⋮﹂
566
未羽の剣幕に麗美は少したじろいだが、それでもふざけて誤魔化
そうとした。未羽は本気で怒った。
﹁麗美ちゃん! 聞いて!
確かにさ、香奈ちゃんおっぱい大きいよ! 触りたくなるのわかる
よ!
でも、大っきくても小っちゃくても、おんなじおっぱいなの!
そんな風に、乱暴に触られると痛いんだよ! 誰だってそうでしょ!
香奈ちゃん、痛いけど本気で怒ったら空気読めないって思われるか
らって⋮⋮我慢してるんだよ!
だから、触っちゃダメなの! 女の子のおっぱいだよ? デリケー
トなんだよ!﹂
更衣室に響き渡る大きな声で、未羽は一気にまくし立てた。荒い
息をしながら、麗美を睨みつける。
更衣室が、しん、と静まりかえった。みんな、温厚な未羽がこん
なに激高したことに、驚いていた。
麗美も唖然としていたが、未羽の後ろで小さくなっている香奈の
姿を見て、ようやく未羽が言わんとしていることを呑み込んだ。
﹁⋮⋮香奈⋮⋮そう、なの⋮⋮?﹂
小さな声で麗美が聞く。香奈はぴくっと肩をふるわせて、それか
ら、こくりとうなずいた。
麗美は、手で口を押さえた。後悔の色が、顔に広がる。
﹁そっか⋮⋮そうだったんだ⋮⋮あっちゃ∼、香奈⋮⋮マジで、超
ごめん﹂
麗美は、素直に頭を下げた。顔を上げると、何だかくしゃくしゃ
な顔をしていた。
﹁マジで! マジでごめん! 香奈も言ってくれれば⋮⋮って、言
えなかったんだよね⋮⋮うっわ∼、空気読めないのあたしじゃん⋮
⋮ごめんよ、もう絶対触んないから、許してよ﹂
両手を合わせて香奈に謝る。麗美がこんなに素直に謝るとは思っ
ていなかったので、みんなあっけにとられた。
567
﹁未羽∼、ありがとう、ハッキリ言ってくれて。あたしバカだから
さ∼、全然わかんなかったよ﹂
未羽に向かって頭を下げる。言い合いになると思っていた未羽は、
意外な展開にきょとんとした。
麗美は脳天気でがさつだが、意外に素直な性格らしい。みんなに
とっても、これは新しい発見だった。
﹁あんたらも! 香奈のおっぱい触んじゃないよ!﹂
麗美は後ろを向いて、成り行きを見守っていた自分のグループの
子たちに言った。突然水を向けられて、メンバーは肩をすくませた。
﹁何言ってんの? 麗美が一番触ってんじゃん﹂
﹁そーだ、そーだ、あたしたち、タッチするくらいだもん﹂
﹁鷲づかみにするの、麗美だけだよ﹂
いっせいに反抗するメンバー。でも冗談交じりで、本気で抗議し
ているわけではなかった。
﹁うっせー! 口答えすんな! ソフトタッチでも触んなっつって
んの! わかった!?﹂
へーい、と、メンバーはダレた返事を返した。
麗美が香奈に歩み寄る。未羽は横にどいて場所を譲り、麗美と香
奈が向き合う形になった。
﹁香奈、ごめん⋮⋮ぶっちゃけ、あたしおっぱい小さいからさ∼、
羨ましかったんだよ。でも、もう触んないから、許してくれる?﹂
そう言って麗美は、首を傾けた。
香奈は上半身ブラだけでみんなに見つめられるのが恥ずかしかっ
たので、棚から制服を出して、急いで着た。
結果、上半身セーラー服で、下がブルマという、かえっていやら
しい格好ができあがった。その姿で、香奈は麗美に眼を合わせた。
﹁⋮⋮わかれば、いいわよ﹂
ぶっきらぼうだが、怒った言い方ではなかった。麗美は安堵の溜
息をついた。
﹁ありがと、許してくれて⋮⋮あ∼、でもその豊満なおっぱいが触
568
れなくなるのは寂しいなぁ、優しくするから、最後に一回だけ触ら
せてくんない?﹂
手を合わせてお願いする麗美に、香奈は腕で胸を庇い、﹁ダメ﹂
と言った。
この事件があってから、未羽と香奈は急速に仲良くなった。
中心人物同士が仲良くなったので、キャピキャピグループと大人
っぽいグループは、混ざり合うように親しくなった。
麗美も未羽や香奈たちと親しく話すようになり、彼女のグループ
も、他のグループとの交流が深くなった。
そうしてこの年の未羽のクラスは、女子が全員仲良しな、ベテラ
ン教師も驚くほどまとまったクラスになったのである。未羽も香奈
も、中学一年のあのクラスは楽しかったと、今でも思い出に残って
いる。
☆
569
︻前日談1︼十二歳の思い出 ②
おっぱい事件から三日後、香奈の家が近所だと知った未羽は、学
校帰りに彼女の家へ遊びに行った。その日は空手の稽古も休みだっ
た。
門を抜けて庭に入った未羽は、感嘆の声を上げた。
﹁わー、すごいお家だね。お侍さんが出てきそう﹂
﹁古いでしょ、恥ずかしいわ﹂
﹁古いって言うより、歴史があるって感じだよ。いいね、趣があっ
て﹂
未羽は香奈の部屋に上がった。香奈らしいよく片付いた、こざっ
ぱりした部屋だった。
﹁おじゃましまーす。きれいな部屋だね﹂
﹁座布団あるから、適当に座ってて。お茶入れてくるわね﹂
未羽は本棚の本の背表紙を眺めたりしながら、大人しく待った。
香奈の部屋は、木の匂いがした。心が落ち着く匂いだった。
香奈が紅茶と茶菓子を持ってきた。二人はちゃぶ台を囲んで、と
りとめのないおしゃべりに興じた。
香奈は、未羽とは本当に波長が合うと感じていた。
未羽の声を聞いているのは、とても心地良かった。早朝にじょう
ろで水をかけられている朝顔のような気持ちになる。
それに、普段はあまり喋らない方なのに、未羽の前では饒舌にな
ってしまう。
心の垣根がなくなって、思ったことがすらすらと口から出た。未
羽はうんうんと相づちを打って聞いてくれる。香奈はすごく安らか
な気持ちになった。
570
学校の話題になって、そのつながりでおっぱい事件の話になった。
﹁あの時はありがとう。未羽が言ってくれなかったら⋮⋮﹂
﹁え、そんな、いいよぉ。あたし、麗美ちゃんがあんな素直だと思
わなかったから、やんわり言えばよかったのにすごい剣幕で怒っち
ゃって⋮⋮後で恥ずかしくなったよ﹂
﹁大丈夫よ、麗美はそんなの気にする子じゃないし⋮⋮それに、わ
たしは嬉しかったわ﹂
微笑んで香奈は言った。未羽はなんだか照れて赤くなった。
﹁そ、そう? ならいいけど⋮⋮え、えっとさ、香奈ちゃん⋮⋮﹂
俯いて口ごもる未羽。香奈が不思議そうな顔をする。
﹁どうしたの? 未羽?﹂
未羽は上目遣いに香奈を見た。頬がほわ∼っと赤い。
﹁⋮⋮あ、あのさ、麗美ちゃんにあんなこと言っといて、なんなん
だけど⋮⋮﹂
﹁?﹂
未羽が妙に恥ずかしそうにしているので、香奈は首をかしげた。
﹁⋮⋮あ、あたしも、香奈ちゃんのおっぱい⋮⋮触ってみたいんだ
けど⋮⋮いい⋮⋮?﹂
正直な思いを口にすると、未羽はますます顔を赤くした。眼をぱ
ちくりさせる香奈。
﹁い、嫌ならいいんだよ? ちょ、ちょっと触ってみたいな∼って
思ってみただけだから﹂
焦って手をワイパーみたいに振る未羽に、香奈はクスッと笑って
言った。
﹁いいわよ? 未羽なら、嫌じゃないわ﹂
﹁ホ、ホントに!?﹂
香奈の了解が得られて、未羽は眼を輝かして喜んだ。童貞の男の
子みたいだった。
﹁ちょっと待ってて⋮⋮制服、脱ぐわね﹂
香奈が胸のリボンをしゅるりと外した。未羽はそれだけでドキッ
571
とした。
セーラー服の裾に手をかける。香奈はちらっと未羽の表情をうか
がった。
未羽が眼を爛々と輝かせて見つめているので、香奈は恥ずかしく
なったが、更衣室で着替えるのと一緒だと思い直して、制服を脱い
だ。
香奈は上半身ブラだけになった。未羽が感嘆の溜息を漏らす。
﹁ふわぁ⋮⋮こうしてまじまじと見るの初めてだけど、ホントに大
っきいね、香奈ちゃんのおっぱい﹂
﹁⋮⋮未羽、更衣室でちらちらわたしの方見てるわよね?﹂
﹁あは、気づいてた?﹂
頭をかく未羽。でも眼はおっぱいを見つめたままだ。
香奈は恥ずかしそうな顔をして、右手をこぶしに握り、口に当て
た。
﹁み、未羽⋮⋮﹂
﹁は、はい﹂
なんだか重大発言が出そうな雰囲気だったので、未羽は緊張して
敬語で答えた。
香奈はちょっと言い淀んでから、つぶやくように言った。
﹁お、おっぱい⋮⋮直に、触る⋮⋮?﹂
ブラの上から触ることしか考えていなかった未羽は、ちょっと驚
いた。
﹁えっ、い、いいの⋮⋮?﹂
﹁み、未羽は、特別だから⋮⋮未羽が、その方がいいなら、いいよ
⋮⋮﹂
香奈は、カァ∼ッと顔を赤くして、もじもじしながら言った。未
羽も顔を真っ赤にして、こくこくと頷いた。
﹁う、うん、直接、触りたい﹂
﹁そう⋮⋮じゃあ、ブラ、脱ぐね⋮⋮﹂
香奈が手を後ろに回す。ホックを外すとブラがスッと緩んで、肌
572
との間に隙間ができた。真っ白な乳房が大きく露出して、未羽は視
線を吸い寄せられた。
ブラが落ちないように腕で押さえながら、香奈は肩ひもを片方ず
つ外した。
ちらりと未羽を見ると、彼女は食い入るように香奈のおっぱいを
見つめていた。
香奈は恥ずかしい気持ちと、こんなにも自分の裸に興味を持って
もらえる嬉しさが綯い交ぜになって、変な気持ちだった。香奈のM
性の目覚めだったかもしれない。
未羽の視線を感じながら、香奈はゆっくりとブラを下げた。未羽
がごくりと唾を呑む。
香奈のおっぱいの全てが、露わになった。
このころ香奈のおっぱいはまだ巨乳と呼べるほど大きくはなかっ
たが、それでも成人女性に負けない大きさがあった。
若いから張りがあって、まん丸な形をしている。まるで果実のよ
うだ。
乳輪はすこし大きめで、淡いピンク色。それに小ぶりの乳首が、
ちょこんと乗っている。幼さと妖艶さが同居した、めちゃくちゃい
やらしいおっぱいだった。
﹁わぁ、香奈ちゃんのおっぱい、きれい⋮⋮﹂
﹁ちょ⋮⋮もお、感想言わないでよ、恥ずかしいから⋮⋮﹂
香奈が腕で胸を庇う。でも隙間から乳首が見えていて、それがか
えってエロかった。
﹁か、香奈ちゃん、後ろから触ってもいい?﹂
﹁後ろから? う、うん、いいけど⋮⋮﹂
﹁じゃ、じゃあ、ベッドに腰掛けて﹂
未羽は香奈を立たせ、ベッドに腰掛けさせた。自分もベッドに上
がり、香奈の背後に寄り添う。
﹁おっぱい見たいから、こうしていい?﹂
そう言って未羽は、後ろから香奈の肩にあごを乗せた。頬と頬が
573
触れあう。
恋人同士の距離だが、親しくなったばかりだというのに全然不快
ではなかった。未羽の頬は、すべすべで気持ち良かった。
﹁⋮⋮香奈ちゃん、おっぱい、触るね﹂
﹁う、うん⋮⋮いいよ﹂
未羽は香奈の脇から手を伸ばした。手のひらをお椀型にして、優
しく、添えるようにおっぱいに被せる。
﹁あ⋮⋮﹂
﹁わぁ⋮⋮こんなに柔らかいんだ⋮⋮すごい、大っきい⋮⋮﹂
絶対に痛くしないように、と気をつけながら、未羽はやんわりと
胸を揉んだ。﹁あふ⋮⋮﹂と、香奈が艶っぽい声を漏らす。
十二歳の半裸の美少女が、同じく十二歳の美少女にベッドの上で
生乳を揉まれている。この世の桃源郷ともいうべき光景だった。
﹁すごーい⋮⋮こんなに大っきいのに、こんなにふにゃふにゃなん
だ⋮⋮香奈ちゃんのおっぱい、すっごい触り心地いいよ⋮⋮ずっと
揉んでいたい⋮⋮﹂
友人のおっぱいを揉みながら、詳しく感想を述べる未羽だった。
﹁そ、そう⋮⋮? ん⋮⋮あっ⋮⋮!﹂
香奈が少し大きめの声を上げたので、未羽はびっくりして手を離
した。
﹁ご、ごめん、痛かった?﹂
首を伸ばし、香奈の顔をのぞき込むようにしながら、未羽が言っ
た。
﹁だ、大丈夫、痛くないわ⋮⋮ちょっとくすぐったかっただけ。も、
もうちょっと強く揉んでも、大丈夫かも⋮⋮﹂
顔を赤らめて香奈は言った。
このころ、香奈はすでにオナニーを覚えていたが、まだ自分で胸
を刺激することはしていなかった。
触ったことはあるのだが、あまり気持ち良くならなかったのだ。
でも、未羽の手で揉まれると、身体の奥から何かうずいてくるよう
574
な感じがした。
大きいだけでなく、香奈の胸は大人の感度を備えつつあったので
ある。未羽のおかげで色んなことに目覚める香奈だった。
﹁いいの? じゃあ、ちょっと強くするよ。痛かったらすぐ言って
ね﹂
﹁うん⋮⋮たぶん、平気﹂
未羽はさっきより大胆に手のひらを動かした。指の動きに合わせ
て、香奈のおっぱいはふよんふよんと柔軟に形を変えた。
﹁わぁ、すごい⋮⋮指が潜り込んじゃうよ。肌すべすべ、あったか
いし⋮⋮気持ちいい∼、ずっと触ってたい⋮⋮﹂
﹁あっ⋮⋮あん⋮⋮あふ⋮⋮﹂
もにゅもにゅと乳を揉まれ、香奈は堪らず甘い声を漏らした。十
二歳の少女のあえぎ声は、AV女優を百人集めても敵わないくらい
いやらしかった。
﹁⋮⋮気持ちいいの? 香奈ちゃん?﹂
耳元で未羽が囁く。未知の快感にぼんやりとしていた香奈は、未
羽の声で我に返り、ぶわっと顔を赤くした。
﹁ち、違うの! こ、こんなにおっぱい触られるの初めてだから、
く、くすぐったくて⋮⋮﹂
ふーん、と言って、未羽はまた胸を揉んだ。
初めのうちは手のひら全体で揉んでいたのに、今は自然を装って
巧みに乳首を刺激している。
露骨に乳首をつまんだりはしないが、手のひらで擦ったり、指の
間に挟んでみたり︱︱香奈は必死に声を堪えた。
﹁⋮⋮ねえ、香奈ちゃん﹂
﹁あふ⋮⋮えっ? な、何?﹂
また頭が桃源郷に行ってしまっていた香奈は、焦って聞き返した。
﹁⋮⋮おっぱい、吸ってもいい?﹂
サラッととんでもないことをのたまう十二歳だった。
﹁えっ? す、吸うって⋮⋮く、口で!? だ、だめよ⋮⋮!﹂
575
﹁え∼、だめ? じゃあ、おっぱいに顔すりすりしてもいい?﹂
﹁⋮⋮おっさんみたいね、未羽⋮⋮ま、まあ、そのくらいなら⋮⋮﹂
﹁わーい、じゃあ、すりすりするね﹂
﹁って⋮⋮きゃっ﹂
未羽は香奈をベッドに押し倒した。おっぱいがぷるんと揺れる。
香奈の胸は、仰向けになっても立派な量感を保っていた。
﹁んふ∼、すりすり∼﹂
胸の谷間に顔をうずめ、頬を擦りつける。やっていることはスケ
ベ親父みたいだが、未羽がやると微笑ましい光景だった。
﹁あんっ⋮⋮もう、未羽ったら⋮⋮﹂
香奈は恥ずかしそうに身をよじった。でも、まんざらでもないよ
うで、やめさせようとはしなかった。
﹁ふわぁ、香奈ちゃんのおっぱい、すべすべで柔らかいよぉ⋮⋮い
い匂い⋮⋮﹂
﹁あん、そんな、嗅がないで、恥ずかしいよぉ⋮⋮﹂
胸の谷間で、未羽は鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。甘ったるい香り
が鼻腔を満たし、未羽は恍惚となった。
﹁んふ⋮⋮香奈ちゃん⋮⋮﹂
とろんとした顔で胸の谷間から頭を上げると、未羽はごく自然に
香奈の乳首に吸い付いた。
﹁あっ⋮⋮! だ、だめっ! 未羽⋮⋮!﹂
﹁あっ、これ楽しい⋮⋮﹂
未羽は香奈の乳をちゅうちゅう吸った。むずむずする感覚と羞恥
に耐えきれず、香奈は未羽の肩を押して乳首から唇を離させた。
﹁も、も∼! だめ、未羽ぅ⋮⋮く、くすぐったいよ⋮⋮﹂
困り顔で香奈は訴えたが、未羽はとろけて火照った顔をしていて、
香奈の言葉も耳に届いていないようだった。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮香奈ちゃんのおっぱい舐めるの、すっごい楽しい
⋮⋮もうちょっと、いい?﹂
未羽は香奈の両手首をつかまえると、ベッドの上に押さえつけた。
576
身をかがめて、拒否されているのに構わず乳首に吸いつく。
﹁あんっ、ま、またぁ⋮⋮あっ、ああっ⋮⋮﹂
未羽は乳を吸うだけでなく、舌でれろれろと乳首を転がすように
して舐めた。くすぐったくて、じんじんするような初めての感覚に、
香奈は声を上げて身をよじった。未羽の長い髪が、さわさわと脇や
腹をくすぐるのも、ひどく艶めかしい感触だった。
しかし、香奈の筋力であれば、ひ弱な未羽がどんなに頑張って押
さえつけたところで容易にひっくり返すことができるはずだが、彼
女はそうしなかった。二人の間には、初めての性的接触なのに、す
でにSとMの関係ができあがっていた。
﹁ぷはぁ⋮⋮こっちも⋮⋮﹂
右のおっぱいをたっぷりと味わった未羽は、よだれまみれの口を
左のおっぱいに移動させた。
﹁あんっ、だ、だめだったらぁ⋮⋮あぁっ⋮⋮﹂
香奈が身をよじると、唾液に濡れて光る右のおっぱいがぷるんと
揺れた。
先月までランドセルを背負っていた十二歳の少女が、同じく十二
歳の少女に乳を吸われ、半裸で喘ぎ声を上げ、身をよじっている。
露出度は高くないのに、どんなAVでも敵わないような官能的な光
景だった。
﹁⋮⋮ぷはっ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮香奈ちゃんのおっぱい舐めるの、
楽しいよぉ⋮⋮いっぱい舐めちゃった⋮⋮﹂
左のおっぱいの堪能した未羽が、ようやく顔を上げた。よだれが
あごまで垂れて、恍惚とした顔をしていた。すでにエロエロ大魔王
の片鱗がのぞいている。
﹁も、もお⋮⋮未羽のエッチぃ⋮⋮恥ずかしいって言ってるのにぃ
⋮⋮!﹂
香奈が胸を腕で庇う。唾液がべっとりと腕について、﹁こんなに
舐められてたんだ⋮⋮﹂と、あらためて恥ずかしくなった。
﹁ごめんごめん、香奈ちゃんの反応が面白くて⋮⋮香奈ちゃん、気
577
持ち良かった?﹂
にこやかに羞恥責めする未羽だった。香奈はカァ∼ッと顔を染め
た。
﹁も、もう! く、くすぐったいだけよ⋮⋮! わたしだけ触られ
るの、ずるいわ! 未羽のおっぱいも触らせて!﹂
香奈が反撃に出た。未羽はふわっと顔を赤くした。
﹁えっ! あ、あたしのおっぱい!? そ、そんな、あたしペッタ
ンコだし、さ、触っても面白くないよ﹂
﹁そんなことない、わたし着替えのとき見てるから。未羽ちゃんと
おっぱい膨らんでる﹂
﹁いつの間に見てたの!? あたし視線感じなかったよ!?﹂
着替えの際、互いにいやらしい眼で見ていたことが露呈した。タ
イプが違うようでどこか似ている二人だった。
﹁まさか、自分は触られるのも嫌なんて言わないわよね? さあ、
未羽、服を脱ぎなさい﹂
﹁う゛∼⋮⋮﹂
未羽は猫のように唸ったが、観念してセーラー服のリボンをシュ
ッと解いた。頬がほんのりと赤くなっている。
﹁⋮⋮あたし、仰向けになるとおっぱいなくなっちゃうから、この
ままでいい?﹂
未羽は仰向けの香奈の上に馬乗りになっている。いわゆるマウン
トポジションだ。香奈は未羽の胸さえ触れれば良かったので、﹁い
いよ﹂と答えた。
未羽がセーラー服を脱いだ。控えなにレースで飾られた淡いピン
クのブラが露わになると、香奈はドキドキしてきた。同性とはいえ、
自分の腹の上で女の子が服を脱いでいる光景は、扇情的に感じられ
た。
ブラを脱ぐ段になると、未羽はちょっとためらい、香奈の表情を
うかがった。香奈は微笑みながら、期待を込めた目線で見つめ返す。
全然やめる気ないな、と読み取ると、未羽は覚悟を決めた。手を
578
背に回し、ブラのホックを外す。
肩ひもをずらすと、十二歳の未羽の、可愛らしいおっぱいが露わ
になった。
香奈に比べるとささやかな膨らみだが、乳房は脇から胸の谷間に
かけて丸みのある曲線を描き、女の子であることを主張している。
眩しいくらい白い肌。その上に、淡いピンク色の幼い乳首が、ち
ょこんと乗っている。
妖精のように美しい身体だと、香奈は思った。思わずごくりと、
生唾を飲む。
﹁ち、小っちゃいでしょ⋮⋮? 恥ずかしい⋮⋮﹂
おっぱいの下で腕を組んで、未羽は恥じらった。赤く染まったそ
の顔は、香奈の情欲を激しく刺激した。
﹁ううん、未羽のおっぱい、すごくきれいよ⋮⋮触らせて⋮⋮﹂
香奈が未羽の乳房に向かって手を伸ばす。
﹁あっ⋮⋮﹂
指先が触れると、未羽はピクッと肩を震わせた。香奈はそっと指
を乳房に這わせた。
﹁わぁ⋮⋮すべすべ⋮⋮気持ちいい⋮⋮ねえ、未羽、ちょっと屈ん
でみて﹂
﹁え? こ、こう⋮⋮?﹂
香奈の頭の横に手を突いて、未羽は身体を屈ませた。
﹁そう⋮⋮おっぱい、揉むね⋮⋮﹂
屈むことで目の前に迫ったおっぱいに手を伸ばし、香奈は両手で
未羽の胸を揉んだ。
﹁わぁ⋮⋮すっごい柔らかい⋮⋮小っちゃいことないじゃない⋮⋮
触り心地、いいよ﹂
やわやわとおっぱいを揉む。張りがあるのに柔らかい。自分の胸
を触るのとは、全然違う感じだった。
﹁んっ⋮⋮あっ、か、香奈ちゃん、そんなに⋮⋮﹂
﹁あっ、ごめん、痛かった?﹂
579
﹁い、痛くはないけど∼⋮⋮何か、変な感じが⋮⋮﹂
﹁気持ちいいの?﹂
未羽が、ぼわっと顔を赤くした。
﹁ち、ちがくて! な、何か、自分で触るのと全然違うから、へ、
変な感じするだけ! く、くすぐったいし⋮⋮﹂
顔を真っ赤にして弁明する未羽。香奈は、自分と一緒なんだな、
と理解した。
﹁未羽、もっと屈んで﹂
﹁え? も、もっと? このくらい⋮⋮?﹂
未羽はさらに身体を傾けた。おっぱいが顔の前まで迫ったが、香
奈はそれ以上を要求した。
﹁もっとよ、未羽。おっぱい吸ってあげるから、わたしの口に届く
まで屈んで﹂
﹁えっ!? す、吸うの!?﹂
未羽は焦ってますます顔を赤くしたが、香奈は容赦しなかった。
﹁未羽、まさか、わたしのおっぱいあれだけぺろぺろしといて、自
分は吸われるの嫌とかそんなこと言わないわよね?﹂
﹁わ、わかったよぉ∼、ふえぇ∼ん﹂
未羽は泣く泣く身を屈めた。無理やり乳を吸われた香奈と違い、
こっちは自ら進んで乳を吸わせる格好になるので、羞恥心もひとし
おだった。
ささやかだけど柔らかな乳房が、ふにょんと香奈の口に押しつけ
られた。香奈は、ちゅっ、と乳首に吸いついた。
﹁あっ⋮⋮! あっ、やんっ⋮⋮くすぐったいよぉ⋮⋮﹂
未羽がくすぐったそうに身をよじる。香奈は最初から舌を使って
乳首をれろれろと舐めた。
﹁あっ、あぁっ、はうっ⋮⋮か、香奈ちゃん、そんな激しく⋮⋮あ
っ、あんっ⋮⋮﹂
﹁ほんと楽しいわね、おっぱい舐めるの。未羽ったら、すごい反応
⋮⋮﹂
580
﹁あっ! も、もおっ⋮⋮く、くすぐったいってば⋮⋮あっ、あは
ぁっ⋮⋮﹂
柔らかなおっぱいにしゃぶりつくのは、とても心地よい感触だっ
たが、それにもまして未羽の反応が面白かった。
乳首を舐めていると、押さえきれない甘い声が漏れ、身体がとき
おり、びくん、びくん、と震えた。
くすぐったいと言っているけど、本当は感じていることはわかっ
ている。香奈もそうだったのだ。
香奈は左右のおっぱいを公平にぺろぺろぺろぺろした。未羽はす
っかり息が上がってしまった。
﹁あっ⋮⋮はぁ、はぁん⋮⋮あっ! も、もお、だめっ!﹂
理性を保っていられなくなりそうになり、未羽は上体を起こした。
ちゅぽん、と音を立てて、香奈の口から乳首が引き抜かれる。
未羽は香奈に馬乗りになったまま腕で胸を庇い、肩を揺らして荒
い息をした。火照って汗ばんだが顔が、すごくいやらしかった。
﹁も、も∼、香奈ちゃんのエッチぃ⋮⋮﹂
香奈は手の甲で口元の唾液を拭った。
﹁ふふ、未羽、可愛かったわよ﹂
﹁やん、もう、恥ずかしい﹂
未羽は恥ずかしがって身をくねらせた。それから、意味ありげな
目線を香奈に送った。
﹁あ、あのさ、香奈ちゃん⋮⋮﹂
躊躇いがちに、未羽は言った。香奈が﹁何?﹂と答える。
﹁⋮⋮キ、キスしても⋮⋮いい?﹂
未羽と香奈が、同時にポッと顔を赤くした。
﹁えっ!? お、女の子同士だよ!?﹂
香奈が眼を大きくして驚く。女の子同士で乳を吸い合うのはいい
のかと未羽は思ったが、突っ込まないでおいた。
﹁と、﹃友ちゅー﹄だよ。ほら、アイドルグループのAK47とか、
普通に女の子同士でキスするじゃない? 今時フツーだよ、軽くチ
581
ュってするだけだし﹂
あくまで大したことじゃないという風を装って、未羽は説得した。
その割りには顔が真っ赤だった。
﹁未羽、﹃友ちゅー﹄したことあるの?﹂
﹁は、初めて⋮⋮﹂
未羽の頭からしゅわしゅわと湯気が出ていた。全然軽い感じじゃ
ない。
香奈は戸惑った。異性とのキスですらまだまだ縁遠い話だと思っ
ていたのに、同性から迫られるとは思いもよらなかった。
そしてなにより、これっぽっちも嫌悪感がないことが、香奈を戸
惑わせた。
未羽の桃色でぷるんとした唇に、眼が吸い付けられてしまう。香
奈はごくりと唾を呑んだ。
﹁ふ、普通にみんなしてるのよね⋮⋮? だ、だったら⋮⋮いいけ
ど⋮⋮﹂
頬をほんのり赤く染めて、香奈は承諾した。未羽が顔を輝かせる。
﹁いいの!? じゃ、じゃあ、するよ⋮⋮か、軽∼くね⋮⋮﹂
未羽はひとつ大きく深呼吸した。ほんの少しだけ唇を突き出して、
香奈に顔を寄せる。
顔が近づいてくると、とたんに香奈の心臓が激しく鼓動を打ちだ
した。身をすくませ、香奈はぎゅっと眼を閉じた。
未羽は、そっと香奈に口づけた。予想を遙かに上回る柔らかさに、
未羽は驚きを覚えた。
︵わっ⋮⋮唇って、こんなに柔らかいんだ⋮⋮気持ちいい⋮⋮︶
軽くチュッとではなく、唇の弾力を感じ取れる程度の強さで、未
羽は唇を押し当てた。
五秒ほど経ってから、すっと顔を上げる。心臓がバクバクしてい
た。
﹁か、香奈ちゃんの唇⋮⋮気持ちいい⋮⋮﹂
香奈も顔を赤くして、ほわ∼っとした顔をしていた。いつも凜々
582
しい彼女が見せたことのない表情だった。
﹁み、未羽のも⋮⋮び、びっくりした⋮⋮気持ちいいのね、キスっ
て⋮⋮﹂
﹁⋮⋮香奈ちゃん、もう一回してもいい⋮⋮?﹂
﹁う、うん⋮⋮﹂
﹁香奈ちゃん⋮⋮﹂
未羽はベッドに突いた腕を深く折り曲げて、香奈の上に覆い被さ
った。裸の上半身が密着する。しっとりした肌と温かな体温が、堪
らなく心地よかった。
未羽のちっぱいに押されて、香奈の豊かな胸が鏡餅のようにひし
ゃげる。大きさに差はあるが、おっぱいとおっぱいを合わせるのは
気持ち良くて楽しかった。
顔を寄せ、未羽が再び唇に吸いつく。今度は押し当てているだけ
ではなく、むにむにと唇を動かして、香奈の唇の弾力を味わった。
香奈も陶然としながら、無意識に唇を動かして未羽に応えた。
心地よさに朦朧とした未羽の頭の中で、何かがプチッと切れる音
がした。未羽は本能に突き動かされ、舌を伸ばした。
舌が唇に触れると、香奈の身体がびくっと震えた。未羽はノック
をするように舌先でつついて、唇の間に舌を潜り込ませようとする。
香奈は戸惑ったが、逆らうことはできなかった。身体の方が未羽
を求めていた。
薄く口を開くと、すぐに未羽の舌が潜り込んできた。舌先が触れ
合い、二人はそのとろりとした感触に衝撃を受けた。
夢中で舌を絡め合う。唇を重ねるだけのキスとは、桁違いの心地
良さだった。
﹁ん⋮⋮んん⋮⋮﹂
﹁んっ⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
ときおり、幼い声の吐息が漏れる。十二歳の少女が欲望のままに
舌を絡め合う姿は、この世のものとは思えぬほど美しく、いやらし
い光景だった。
583
﹁ぷはぁ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮﹂
﹁ぷは⋮⋮はふぅ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮﹂
呼吸が苦しくなるほどの時間が過ぎてから、未羽はようやく唇を
離した。口の周りが唾液でべったり濡れていた。
べろちゅーしながらうまく息をすることができなかったので、二
人は短距離走の後のように荒い息をした。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮す、すっごい気持ち良かった⋮⋮﹂
﹁も、もぉ、未羽ったら⋮⋮舌まで入れるなんて⋮⋮これ、﹃友ち
ゅー﹄なの?﹂
わざと訝しげな表情を作って、香奈は聞いた。未羽も困った表情
を作って答える。
﹁えーと、もう友ちゅーじゃないよね、これ⋮⋮ごめんごめん、気
持ち良すぎて、ちょっと暴走しちゃった⋮⋮香奈ちゃん、嫌だった
?﹂
答えがわかっている質問だった。
﹁⋮⋮嫌じゃないけど、ぜんぜん⋮⋮わたしも気持ち良かったし⋮
⋮﹂
﹁じゃあ、もっかいしてもいい?﹂
﹁もう⋮⋮未羽、エッチなんだから⋮⋮﹂
二人はまた口づけた。未羽は唇を重ねたまま香奈の上からどいて、
並んで寝転がった。
半裸の二人は固く抱き合い、舌を絡めた。
ときおり漏れる吐息と、微かなベッドの軋みの音が、そのあとも
長く続いた。
☆
︱︱というわけで、未羽と香奈が初めて肉体的接触に至った話は、
584
取り立ててオチもなく終わる。
二人の秘密の逢瀬はその後も続くのだが、キスとおっぱい以上に
は長らく進展しなかった。
二人ともオナニーくらいは覚えていたのだが、下半身を触る、触
られるというところまでは、なかなか踏み込めなかったのだ。未羽
も香奈も、羞恥心は強いのである。
おっぱいをしゃぶり合い、べろちゅーをして、後でこっそり風呂
やトイレでオナニーする、という関係が二年ほど続いた。
中学三年生になってから、二人の間は急速に進展する。
未羽の﹁オナニーのとき自分の愛液を舐めると興奮する﹂発言か
ら、相互オナニー↓愛液の舐めっこに至り、香奈の﹁オナニーで指
を入れたことがない﹂発言から、未羽が指でイかせてやるまでに進
展した。
その後、座薬事件の二、三ヶ月前にはクンニまでするようになっ
ていた。香奈が女子トイレで未羽に座薬を入れてやったことを報告
した際に、﹁女の子のあそこを間近で見るの初めて﹂と言っていた
のは嘘である。
以上で、昔話を終わる。初々しかった二人のその後は、みなさま
ご存じの通りである。
おわり
585
︻後日談18︼のりちゃんの王子様①︵前書き︶
お待たせいたしました。久々の、妹痔更新です!
586
かねよしのりこ
︻後日談18︼のりちゃんの王子様①
平日の学校帰り、鐘良納子は、コンビニに寄った。
お茶とグミを買い、店を出る。ガラス窓に貼られたキャンペーン
のポスターを何気に眺めながら、駐車場を横切ろうとしたときだっ
た。
﹁きゃっ﹂
よそ見をしていた彼女は、車の間に停めてあった中型モトクロス
バイクに気づかず、ハンドルに腕をぶつけた。
運の悪いことに、片側スタンドのバイクはバランスを崩し、ガタ
ンと音を立てて倒れてしまった。
﹁あっ! 何しやがんだ、てめぇっ!﹂
店の前でたむろっていた高校生くらいの男三人が、いきり立って
立ち上がった。
﹁あ⋮⋮ご、ごめんなさい! き、気づかなくて⋮⋮﹂
﹁気づかなかったで済むか! あーあ、傷ついちまったじゃねえか
よ。どうしてくれんだよ!﹂
納子は壁を背にして、ガラの悪い男たちに囲まれた。鋭い目で睨
まれ、納子は怯えてガタガタと震えた。
﹁あ、あ⋮⋮す、すみません⋮⋮!﹂
﹁すみませんで済んだらケーサツ要らねえんだよ! きっちり弁償
してもらうからな。財布出せよ、それで足りなきゃ、かき集めてこ
い﹂
﹁ゆ、許してくださいぃ⋮⋮﹂
納子は涙目になった。男たちは相手が臆病だとみると、かえって
強気になった。一人が手を伸ばし、納子のカバンを奪い取る。
﹁あっ⋮⋮! か、返して⋮⋮!﹂
587
﹁返して∼じゃねえよ! おまえが素直に財布出さねえから⋮⋮﹂
﹁のり、どうしたの?﹂
男たちの背後から、凜とした少女の声がした。聞き覚えのある声
に、納子はハッとした。
﹁んあ?﹂
誰か来たのかと、男たちがふり向く。納子も声の主を見た。
自分と同じ制服を着た、切れ長の眼をした美少女︱︱親友の、早
乙女香奈だった。
﹁か、香奈ちゃん!﹂
﹁あっ、こいつ!﹂
男たちの気がそれた隙に、納子は男たちの間をすり抜け、香奈の
背中に隠れた。
﹁何だ!? てめえっ!﹂
男の一人が吠える。納子は﹁ひっ⋮⋮!﹂と声をあげ、身を縮こ
まらせた。香奈は眉をひそめ、男たちに軽蔑の視線を送った。
﹁⋮⋮事情を聞くまでもないわね。あんたたち、か弱い女の子相手
に、恥ずかしいと思わないの?﹂
﹁ざけんな! おまえも一緒にぶちのめされてえのか!﹂
荒々しくすごむ男たちに、香奈は面倒くさそうに溜息をついた。
﹁やってみなさいよ⋮⋮言っておくけど、わたしに手を出したら、
わたしも、﹃仕方なく﹄正当防衛しなくてはならないわ。覚悟しな
さいよ?﹂
﹁ああっ!? ナメてんのかてめえっ!﹂
女にバカにされたと受け取った一人が、いとも簡単にキレた。彼
我の実力差を測ることのできない愚か者だった。
﹁引っ込んでろよっ!﹂
腕を振り上げて殴りかかる。男が香奈を狙ってこぶしを振り下ろ
した瞬間、彼の顔は勢いよく天を向いた。
﹁ぐえっ!!﹂
身体を横にして攻撃を避けた香奈が、一瞬で懐に踏み込み、肘で
588
あご
相手の顎を跳ね上げたのだった。危険なので、試合では禁じ手にな
っている技だ。
﹁あっ⋮⋮!﹂
間抜けな声を出したもう一人に、香奈は電光石火で頸動脈に手刀
を食らわせた。脳への血流が阻害された男は瞬時に気を失い、崩れ
るように後ろ向きに倒れた。アスファルトに後頭部を打ちつけ、ゴ
スッと鈍い音が響く。
﹁ひっ⋮⋮! う、うわぁっ!﹂
最後に残った一人が冷静さを失い、闇雲に殴りかかる。
こぶしを振るった瞬間、香奈の姿が消えた。香奈は一瞬で男の後
ろに回り込み、背後から金的蹴りを放った。ローファーが男の股に
深く食い込む。
﹁ぎえぇぇっ!!!﹂
男は股間を押さえ、前屈みになってバタリと倒れた。わずか十秒
足らずで、三人の男は地に伏したのだった。相当お怒りだったらし
く、全ての技が禁じ手だった。
﹁ふん、たわいもない﹂
香奈は、パンパン、と手をはたいた。別に汚れてもいないのだが、
気分だった。
﹁か、香奈ちゃん、ありがと∼! 怖かったよ∼!﹂
納子が香奈に抱きつき、わんわん泣く。香奈は優しく頭を撫でて、
慰めた。
﹁よしよし、もう大丈夫よ﹂
そのとき、もう一人の大柄な男の影が近づいてくるのに、香奈は
気づいた。
﹁何だ? こいつら、何でこんなところで倒れて⋮⋮? げっ! 早乙女!?﹂
三年の権藤だった。極真空手の有段者で、校内では有名な不良で
ある。彼は以前、体育の空手の授業で香奈に組み手を挑み、失神さ
せられた苦い経験がある。
589
荒事に縁のない納子は権藤を知らなかったが、本能で危険を察知
し、香奈の背中に隠れた。
﹁おまえの仕業かよ、何があったんだ⋮⋮?﹂
呆れ顔で権藤は言った。
﹁この子がそいつらに絡まれてたのよ。あなたの知り合い? ろく
なのと付き合ってないわね﹂
﹁名前と顔知ってるだけだ⋮⋮。おい、起きろ﹂
権藤は顎を殴打され気を失った男の脚を、乱暴に蹴った。男は呻
いて眼を覚ました。
﹁う、うう⋮⋮い、痛てて⋮⋮あっ、権藤さん⋮⋮!﹂
﹁権藤さん、じゃねえよ。どういう状況だ、こりゃ?﹂
男は顎を押さえて立ち上がった。まだ痛そうだが、権藤を助っ人
と思っているのか、その顔には喜色が浮かんでいた。
﹁き、聞いてくださいよ、権藤さん! そ、そこのちっちゃいのが、
俺のバイクを倒して⋮⋮﹂
﹁ああ? んなことかよ? モトクロスじゃねえか、こんなの傷つ
いてなんぼだろ﹂
権藤がバイクを蹴飛ばす。バイクはアスファルトに擦れて、ガリ
リッと音を立て90度回った。
﹁ああっ! ひ、ひどいっすよ! 権藤さん⋮⋮!﹂
﹁身の程もわきまえねえで喧嘩ふっかけやがって。言っとくがな、
その女、お前たちが十人寄ったって敵わねえぞ﹂
男が驚く。
﹁ご、権藤さん、知ってるんですか、この女!?﹂
権藤は苦虫をかみつぶしたような顔をした。本当のことは言えな
いので、彼は言葉を選んだ。
﹁⋮⋮空手の関係者なんだよ。おまえら、今後この女と後ろのちん
ちくりんに手を出したら、俺が承知しねえからな。人数頼んで仕返
ししようとか考えるなよ、俺がぶっ殺すぞ﹂
﹁ひっ⋮⋮! は、はい、分かりました⋮⋮﹂
590
男は怯えて小さくなった。
﹁早乙女、消えろよ⋮⋮もう用はねえだろ?﹂
権藤が冷たい視線を香奈に送る。
﹁⋮⋮⋮﹂
香奈は無言で納子の手を取り、きびすを返した。納子は香奈に手
を引かれ、一度だけ不安そうに権藤に振り返ったが、あとは前を向
いて、急ぎ足で香奈についていった。
顎をやられた男が、悔しそうに彼女たちの後ろ姿を見送っている。
﹁権藤さん、あの女、マジでそんな強いんっすか?﹂
顎をさすりながらそう聞くと、権藤は、チッ、と舌打ちをした。
﹁⋮⋮一度だけ、あの女と組み手やったことあんだけどよ、まあ、
俺と互角かもしれねえな﹂
﹁ご、権藤さんと⋮⋮!﹂
実際は、格ゲーみたいな三連コンボを食らってのされたのだが、
さすがにそれを言うことは権藤のプライドが許さなかった。
﹁んったく⋮⋮もう俺に面倒かけんじゃねえぞ﹂
﹁はっ、はいっ! すみませんでした、権藤さん!﹂
深々と頭を下げる男を背に、権藤は歩み去った。
苦々しい思いを、彼は道に転がる空き缶にぶつけ、思い切り蹴飛
ばした。空き缶は放物線を描き、高く飛んだ。
☆
591
︻後日談18︼のりちゃんの王子様②
﹁鐘良?⋮⋮おい、鐘良納子﹂
古典の授業中、ぽ∼っとしていた納子は、数回名前を呼ばれて、
やっとその呼びかけが自分に向けられていることに気がついた。
﹁⋮⋮え? あっ、は、はいっ!﹂
慌てて上体を起こす。教師は呆れ顔をした。
﹁寝不足か? ぼーっとするなよ。72ページ3行目から、読んで
みろ﹂
﹁は、はい。え、えっと⋮⋮﹂
くすくすと笑い声のおこる中、納子は焦ってページを探し、たど
たどしく音読した。
昼休み、納子は同じクラスの子に誘われて、未羽と香奈のいる隣
のクラスに昼食を食べに行った。机を四つ並べ、各々の弁当箱を開
く。
ガールズトークに花が咲いたが、ひとり、納子だけが無口だった。
元気がないというより、ぽ∼っとしていた。
﹁のり? 話、聞いてる?﹂
香奈に呼びかけられ、納子はハッとして眼を瞬かせた。
﹁えっ? あ、ご、ごめん! ぼーっとしてた⋮⋮﹂
頬がほんのりと桃色になっている。香奈は熱でもあるのかと思っ
た。
﹁最近、ぼんやりしてること多いわね? 具合でも悪いの?﹂
手を伸ばし、納子の額に、ぺとっと手を当てる。
592
﹁んひゃっ!﹂
納子は大げさに両手を挙げてリアクションした。ぶわっと顔が赤
くなる。
﹁ちょっ⋮⋮そんな驚かなくても。熱はないみたいだけど﹂
香奈は心配そうな顔をして、手を引っ込めた。
﹁だ、大丈夫だよ! た、体調はいいから、ほら、元気元気﹂
両手でガッツポーズを取る。運動音痴な納子には、すごく似合わ
なかった。
﹁ならいいけど⋮⋮のり、最近変よね?﹂
﹁そ、そんなことないよ、あはは、あは⋮⋮﹂
頬を桃色に染め、口を引きつらせて笑う納子。
未羽は、この掛け合いにはあえて入らず、じーっと、納子を観察
していた。
放課後、納子が帰ろうと鞄に教科書を詰めていると、マナーモー
ドにしていた携帯がブーンと震え、メールの着信を伝えた。
﹁あっ、未羽ちゃんからだ⋮⋮﹂
メールを開く。
﹃ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな? よければ、
中庭の東屋で﹄
納子は、見透かされたように感じて、ちょっとドキッとした。
すぐに、﹃いいよ、今行くね﹄と返事を返し、彼女は中庭へと急
いだ。
中庭には東屋には、納子のほうが先に着いた。遅れて未羽がやっ
てきて、手には缶ジュースが二本、握られていた。
﹁遅れてごめんね、これ買ってたの﹂
二本とも、微糖のアップルティーだった。一本を納子に手渡す。
593
﹁ありがとう、未羽ちゃん﹂
二人はプルトップを開け、紅茶を口にした。ふう、と揃って溜息
をつく。
﹁⋮⋮話って、何かな、未羽ちゃん⋮⋮﹂
おずおずと、納子が聞く。未羽は首を傾けて、んー、と言った。
﹁話があるっていうか⋮⋮のりちゃんのほうが、話したいことある
んじゃない?﹂
納子はギュッと缶を握った。
﹁あ、あたし⋮⋮? は、話したいことって⋮⋮﹂
﹁のりちゃん、最近香奈ちゃんのこと、妙に意識してない?﹂
香奈の名前が出ると、納子の肩がピクッと震えた。ほわ∼っと、
彼女の顔が赤くなる。
﹁そ、そんなこと⋮⋮﹂
﹁そんなことあるよ。最近のりちゃん、香奈ちゃんに話しかけよう
としないし、話してもギクシャクしてるし。この間のコンビニでの
事件のあとからだよね? あのあと、何かあったの?﹂
未羽は翌日には納子からこの話を聞いていた。あれから一週間。
日を追うごとに、納子の様子がおかしくなっていくので、未羽は心
配していたのだ。
何もかも図星だったので、納子は恥ずかしくて前屈みになった。
未羽はそれ以上問い詰めず、納子が自分からしゃべり出すのを待
った。
﹁み、未羽ちゃん⋮⋮﹂
しばらくして、俯いたままの納子がようやく口を開いた。
﹁何? のりちゃん?﹂
優しく、未羽は問いかけた。俯いているので顔は見えないが、納
子の耳は、茹でたみたいに真っ赤だった。
﹁あ、あたし⋮⋮⋮⋮香奈ちゃんに⋮⋮⋮⋮こ、恋しちゃったかも、
しれない⋮⋮⋮⋮﹂
途切れ途切れに、納子は告白した。
594
想定内の答えだったので、未羽は落ち着いて紅茶を飲んだ。
﹁あー、やっぱり、そうだったんだ﹂
﹁み、未羽ちゃん、気づいてたの⋮⋮?﹂
納子が顔を上げる。湯気が出そうなほど真っ赤になっていた。
﹁気づくよ。少女漫画みたいに分かりやすーく、恋する少女の症状
まんまなんだもん。まあ、女の子同士の恋だから、他の子たちは気
づいてないと思うけど﹂
さっぱりとした口調で未羽は言った。納子は、はあぁぁぁ、と深
い溜息をついた。
﹁うう、恥ずかしい⋮⋮未羽ちゃんにはバレバレだったんだね⋮⋮
ねえ、あたし、変なのかな⋮⋮?﹂
﹁変じゃないよぉ。ねえ、のりちゃん、どんな気持ちなの? 詳し
く教えてよ﹂
納子の顔を未羽はのぞき込んだ。その眼にからかうような色はな
く、納子は未羽が親身に相談に乗ってくれているのを感じた。
ずっと胸につかえていたこの気持ちを、全て話してしまおう、納
子はそう思った。
﹁う、うん⋮⋮全部、話すよ⋮⋮未羽ちゃん、変に思わないで、聞
いてね⋮⋮﹂
﹁絶対思わない。あっ、そうだ、のりちゃん﹂
﹁な、何?﹂
未羽は納子の眼を見つめ、真面目な顔で言った。
﹁もし、話がエッチなことに及んでも、正直に話して。あたし、真
剣に聞くから﹂
納子は、ごくりと唾を飲んだ。
﹁わ、分かった⋮⋮﹂
紅茶をひと口飲んで、気持ちを落ち着ける。納子は小さな声で、
話し始めた。
﹁⋮⋮あ、あたし⋮⋮香奈ちゃんは、美人で成績も良くて、その上
空手も黒帯で、すごいなって、友達になってからずっとそう思って
595
たんだけど⋮⋮、
でも、初めのうちは、当たり前だけど、大事な⋮⋮女の子の友達だ
って、思ってたんだよ。
で、でもほら、香奈ちゃんに⋮⋮オ、オナニー、教えてあげたこと
あったじゃない? そのあとくらいから、香奈ちゃんのこと、ちょ
っと特別に感じはじめたの⋮⋮。
香奈ちゃん、顔きれいだしクールだから、も⋮⋮もし、香奈ちゃん
が男の子だったら、カッコいいだろうなーって思って⋮⋮頭の中で
想像したら、すっごいカッコいい、王子様みたいな香奈ちゃんがで
きあがっちゃったの。
それで、香奈ちゃんが、あたしの彼氏だったらって、妄想して⋮⋮
が、学校で、普通に話をしてるときも、あたしはいま、彼氏とおし
ゃべりしてるんだ∼、とか、勝手に、思ってたの⋮⋮﹂
俯いて話していた納子は、未羽に変に思われていないだろうかと
思い、ちらりと彼女のほうを見た。
未羽は真面目な表情を崩さずに聞いていた。真摯な態度にほっと
したが、それでも恥じらいながら、納子は話を続けた。
﹁⋮⋮ちょっと前までは、頭で想像しながらでも、普通に香奈ちゃ
んに接することができたんだけど⋮⋮あの、コンビニでの出来事が
あってから、おかしくなっちゃって⋮⋮。
あたし、不良っぽい男の人たちに囲まれて、すっごい怖かったの。
そこへ、香奈ちゃんが颯爽と現れて⋮⋮。
もうね、白馬の王子様みたいだったの⋮⋮キラキラして、胸がキュ
ンとするくらい素敵で⋮⋮。
香奈ちゃん、ものすごく強くって、身体もずっと大きい男の人を、
アクション映画みたいにバッタバッタと倒していくの。
も∼、あんまりにもカッコ良すぎて⋮⋮あたしが抱きついて泣いた
ら、よしよし、って頭撫でてくれるし⋮⋮。
それから、香奈ちゃんが王子様にしか見えなくなっちゃって⋮⋮顔
を見るだけで、ドキドキしちゃうの⋮⋮﹂
596
納子は、ここで言葉を切って、未羽の反応をうかがった。
﹁ふーん、そうなんだ⋮⋮﹂
未羽は、割と普通に相槌を打った。
納子は、自分としては大変なカミングアウトをしているつもりな
のだが、未羽はそれほど大ごとに受け止めていないように感じた。
自分が大げさなのか、未羽が寛容なのか⋮⋮納子にはどっちか判
別がつかなかった。
﹁ねえ、のりちゃん、香奈ちゃんとエッチなことするのも、想像し
たりする?﹂
﹁ふえっ!?﹂
納子は電気ショックでも与えられたみたいに反応した。一瞬で顔
が真っ赤に染まる。
﹁エ⋮⋮エエエ、エ、エッチ、な、こと⋮⋮?﹂
激しくどもる。未羽は、じーっと納子を見つめている。
赤い顔を見られるのが恥ずかしくて、納子は顔を伏せた。そして、
最初に、エッチなことも正直に話すことを約束したことを思い出し、
勇気を出して、答えた。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮す、する⋮⋮﹂
消え入りそうな声だったが、ちゃんと未羽の耳に届いた。
のりちゃん弄りが大好きな未羽だが、このときばかりは、ちゃん
と真面目に聞いていた。エロエロ大魔王は、TPOをわきまえてい
るのだ。
﹁ふーん、どんなこと? 香奈ちゃんが男の子だと思って、想像す
るの?﹂
納子は熱く火照った頬に両手を当て、頭から湯気を出しながら答
えた。
﹁う、うん⋮⋮香奈ちゃんが、男の子で⋮⋮だ、抱き合ったり⋮⋮
キスも⋮⋮﹂
﹁ふーん⋮⋮ねえ、のりちゃん、こういうこと話すの、恥ずかしい
よね?﹂
597
﹁え?⋮⋮う、うん⋮⋮﹂
質問の意図が分からなかったが、恥ずかしいのはそのとおりだっ
たので、納子はこくこくとうなずいた。
﹁じゃあ、これ、最後の質問にするよ。話すのは恥ずかしいだろう
から、二択にするね。イエスか、ノーで答えて﹂
ちょっと不安になったが、納子はうなずいて返事した。
﹁⋮⋮男の子になった香奈ちゃんとセックスする想像しながら、オ
ナニーしたことある?﹂
﹁っ!﹂
納子は眼を大きくして、頭から、ボシューッっと蒸気を噴き出し
た。顔が完熟トマトのように赤くなる。
未羽はまた、納子の顔を、じーっと見つめた。答えるまでいくら
でも待つ気の眼だ。
納子は金魚のように口をパクパクさせたが、声にならなかった。
額に変な汗が噴き出てくる。
﹁ぐっ⋮⋮くく⋮⋮﹂
羞恥心で、頭が爆発しそうだった。納子は顔を伏せた。
でも、答えなくてはならなかった。真摯に相談に乗ってくれてい
る親友が、答えを待っている。
残り少ない歯磨きをチューブから捻り出すように、納子は喉の奥
から声を絞り出した。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮し、しし⋮⋮したこと、⋮⋮ある⋮⋮い、いっ
ぱい⋮⋮﹂
聞かれていない回数まで、納子は頑張って答えた。顔が熱くて、
自然発火しそうだった。
未羽は、彼女の背中をぽんぽんと叩いて、労をねぎらった。
﹁うんうん、のりちゃん、よく頑張って答えたね。言ったほうが、
スッキリするでしょ?﹂
﹁う、うう⋮⋮﹂
さすがにまだ、スッキリという気分にはなれなかったが、未羽が
598
普通に接してくれるのが救いだった。ちょっとでも引かれたら、ト
ラウマになっただろう。
火照って汗まみれの顔を上げる。目尻に涙も浮かんで、ぐちゃぐ
ちゃだった。
﹁ね、ねえ、未羽ちゃん∼⋮⋮あたし、変じゃない⋮⋮? あたし
って⋮⋮レズ、なのかな∼?﹂
胸のつかえを全て吐き出したので、吹っ切れたようだった。納子
は赤裸々に尋ねた。
﹁うーん、そうだね﹂
未羽は腕を組み、眼を伏せて思案顔をした。
﹁あたしが思うに、のりちゃんはレズじゃないし、変でもないね。
恋に憧れる、普通の女の子だよ﹂
きっぱりと未羽は答えた。納子はすぐにはその言葉を飲み込めな
かったが、いくらかホッとする材料にはなった。
﹁そ、そうかな⋮⋮? お、女の子とエッチするとこ、想像してる
んだよ? 変じゃない⋮⋮?﹂
﹁男の子だと思って想像してるんでしょ? じゃあ、普通だよ。
女子高なんかで、後輩がカッコいい先輩に憧れて、ラブレター送っ
たりお弁当作ったりするじゃない? のりちゃんは、それの延長だ
よ。
疑似恋愛っていうと言葉が悪いけど、女の人を、理想の男性に見立
ててるんだね。ほら、少女漫画に出てくる男子って、ほとんど女み
たいでしょ?
レズかどうかっていうと、女の子を男子に見立ててるわけだから、
むしろレズとは真逆だと思うよ﹂
未羽の言葉は、すとん、と納子の胸に落ちた。言っていること全
てに、すんなりと納得できた。
﹁そ、そうなんだ⋮⋮じゃあ、あたし、レズじゃないんだね⋮⋮﹂
﹁あたしはLGBTフレンドリーだから、のりちゃんがレズでも構
わないんだけど、まあ、そういうことだね﹂
599
﹁何? そのL⋮⋮何とかって?﹂
レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーなど、
性的マイノリティーに理解がある、という意味。未羽はそう説明し
た。
﹁でも、香奈ちゃんおかずにオナニーしはじめたの、コンビニ事件
より前でしょ? 魚肉ソーセージのころからじゃないの?﹂
﹁あじゃげぶっ!!﹂
納子は日本語ではない声をあげた。
﹁み、未羽ちゃん⋮⋮そう思っててあれ食べたの⋮⋮? い、いい
や、その件は深く突っ込まないでおこう⋮⋮﹂
納子は赤い顔をしてうなだれた。
﹁さて、のりちゃんの症状はハッキリしたけど、まだ解決したわけ
じゃないよね。のりちゃん、香奈ちゃんに会うと、胸が苦しいでし
ょ?﹂
顔を上げる納子。彼女は眉を八の字にして、こくん、とうなずい
た。
﹁じゃあさ、のりちゃんが香奈ちゃんに彼氏になってほしいって思
ってること、伝えた方がいいと思うよ。それで、香奈ちゃんに男の
子になってもらって、デートしてみれば?﹂
予想外の提案に、納子はポカンとした。じわじわとその意味を理
解して、顔が、じわ∼っと赤くなっていく。
﹁か、香奈ちゃんに話すのっ!? だ、だめだよ! き、嫌われち
ゃうかも⋮⋮﹂
﹁あたし香奈ちゃんと付き合い長いけど、のりちゃんにそういう風
に思われて、香奈ちゃんが気を悪くするってことは、100パーセ
ントないよ。逆に喜んでくれると思うけど﹂
﹁そ、そうなの⋮⋮? そ、そ、それで⋮⋮デ、デートって、何?
ほ、本当に男の子になれるわけ、ないじゃない⋮⋮﹂
﹁のりちゃん、男装カフェって知ってる?﹂
納子は眼をパチパチさせた。何かは知らなかったが、﹁男装﹂と
600
いう言葉が、すごく魅惑的に聞こえた。
﹁店員さんは女の人なんだけど、男装して接客するんだよ。お客さ
んはほとんどが女性で、最近すごい人気があるんだって。そういう
店が流行るくらいだから、のりちゃんが全然普通だってあたしが言
うの、納得でしょ?﹂
﹁へ、へえ⋮⋮未羽ちゃん、いろんなこと知ってるね﹂
﹁男装デートってサービスもあるらしいよ。男の服着た女の人が、
男性として女性をエスコートしてデートするんだって。この前テレ
ビで紹介してたけど、デートした女の人、﹃今まで付き合ったどの
男よりも素敵!﹄って言ってたよ。女性のほうが女性の気持ちやし
てほしいことが分かるから、すごくリードが上手なんだって﹂
納子は、ごくりと生唾を飲んだ。今の彼女の気持ちを簡潔に言う
と、﹃それだ!﹄だった。
﹁だから、香奈ちゃんに男装してもらって、一日、男の子になりき
ってデートしてもらったら? そうすれば、欲求が満たされて、す
っきりすると思うよ?﹂
⋮⋮だ、男装した香奈ちゃんと、デート⋮⋮? 素敵にリード⋮
⋮?
頭がくらんくらんした。あまりにも魅惑的すぎて、鼻血が出そう
だった。
﹁香奈ちゃんには、あたしが話してあげるよ。今日香奈ちゃんち行
ってくるね﹂
﹁もっ、もう話すの!? ちょ、ちょっと待って! 心の準備がぁ
⋮⋮!﹂
納子は激しく動揺した。夢のような話がいきなり現実味を帯びて
きて、頭が追いつかなかった。
﹁善は急げだよ。デートは今度の日曜とかどう?﹂
﹁ひゃあ! そ、そんな急に!? あわわわ、ど、どうしよう⋮⋮
601
う、うう、でも、香奈ちゃんとデート⋮⋮み、未羽ちゃん、よ、よ
ろしく、お願いします⋮⋮!﹂
手を千手観音みたいにわたわたさせながら、結局納子は未羽に託
したのだった。
﹁まかせて。大丈夫、オナニーのこととかは話さないから﹂
﹁み、未羽ちゃんって、可愛い顔してさらっとそういう単語言うよ
ね⋮⋮﹂
しゅわしゅわと湯気を発しながら赤い顔をする納子だった。
☆
﹁︱︱ということなの。香奈ちゃん、協力してくれる?﹂
場所は、香奈の部屋。二人はベッドに並んで腰掛けている。
部屋で過ごすときは、だいたいこのポジションだ。気が向いたら
いつでもセックスになだれ込むことができるので、都合がよい。
ちょくちょく嘘をつく未羽は、オナニーの辺りもぼかすことなく、
放課後の納子との会話を微に入り細に入り報告した。
﹁もちろん、協力はするけど⋮⋮そっか、のりが最近様子がおかし
かったのは、わたしが原因だったんだ⋮⋮﹂
﹁いいなあ、香奈ちゃん。のりちゃんにぞっこん惚れられちゃって。
うらやましい﹂
未羽は口を尖らせた。いつも三人一緒にいて、未羽も納子のこと
が大好きなのに、納子の視線が香奈にばかり向いているのが、不服
なのだろう。
﹁自分にないものを人に求めているだけよ。だからわたしを男だと
妄想しているんでしょ? わたしは未羽のほうがうらやましいわ。
のりは、未羽に憧れてるのよ﹂
﹁は? あたしじゃなくて、香奈ちゃんでしょ? 憧れてるのは﹂
602
香奈は人差し指を振って、﹁ち・が・う﹂と区切って言った。
﹁わたしは、宝塚の男役に向けるのと同じ憧れ。未羽には、同じ女
の子として憧れてるのよ。
未羽ちゃんは可愛くて優しいって、いつも言ってるわよ、のり。未
羽みたいな女の子になりたいって、そう憧れてるの﹂
﹁えーっ? そんな大したものじゃないけどなぁ⋮⋮まあ、香奈ち
ゆう
ゃんがそう言うんなら、ありがたくそう思って、やきもちはやめて
おくよ。
で、香奈ちゃん、デートの話に戻るけど、服、どうするの? 優君
に借りる?﹂
忘れているかもしれないので述べておくが、優は香奈の弟である。
﹁そうね、あいつ、生意気に最近背が伸びてわたしと同じくらいに
なってるから、たぶんサイズ合うわ。
デートコースは⋮⋮ベタだけど遊園地がいいかしらね? ハプニン
グも多そうだから、のりが喜ぶでしょう。あとは⋮⋮ひとつだけ、
不安なことがあるんだけど﹂
香奈は頬に手を当て、首を傾けた。
﹁何? 香奈ちゃん?﹂
﹁⋮⋮未羽、わたし、そういう雰囲気になったら自制できる自信が
ないわ。のりには手を出さないって二人で約束したのに、抜け駆け
してしまうかも﹂
許しを請うような眼で、香奈は未羽を見つめた。
﹁⋮⋮肉食だね、香奈ちゃん。それはあたしも、ある程度は許容す
るよ。でなきゃ、デートなんかできないでしょ﹂
﹁いいの?⋮⋮ごめんね、未羽。わたしもできるだけ我慢して、ど
うにかキスくらいで止めておくようにするわ。でももし、のりが可
愛い反応なんか示してしまったら、勢いで最後までしてしまうかも
⋮⋮﹂
﹁うん、そのときは仕方ないよ。もしそうなったら、潔くこちら側
へ引っ張り込んで、お兄ちゃんも一緒に4Pしよう﹂
603
﹁そうね、引っ張り込んだ以上は、こっちの色に染まってもらいま
しょう﹂
納子の身に危険が迫っていたが、当人は知る由もなかった。
日曜日は三日後。納子の貞操や如何に。
☆
604
︻後日談18︼のりちゃんの王子様③
香奈と軽く着衣セックスしたあとで、未羽は帰っていった。
入れ違いに、TATSUYAで﹁妹はぷりん体!﹂のアニメDV
ゆう
Dを借りてきた優が帰ってきた。香奈はさっそく彼の部屋へ行った。
﹁優、服を貸してくれない?﹂
優は座ったイスを半回転させて、姉に向いた。
﹁服? 俺の? 何で? 姉ちゃんが着るの?﹂
香奈はちょっと逡巡したが、オタクの優なら理解してくれるだろ
うと思い、正直に言うことにした。
﹁わたしの友達の、のりを知ってるでしょ?﹂
﹁ああ、あの、マルチーズみたいな人でしょ? のりさんが着るの
?﹂
﹁犬に例えないでくれる⋮⋮? いいえ、着るのはわたしよ。男装
して、のりとデートするの﹂
﹁⋮⋮⋮﹂
優は、わずかに眼を伏せた。そして身じろぎもせず、姉の顔を見
つめた。
香奈は優が何を考えているのか分からなかったが、取りあえず眼
を逸らさず見つめ返した。
掛け時計の秒針の音が耳に入ったので、香奈は秒数を数えてみた。
22まで数えたところで、ようやく優が動作した。
机の上に置いてあったスマホを取る。画面を操作して、耳に当て
る。電話をかけたらしい。
﹁あ、もしもし、カポリンさんですか? すみません、急に電話し
て。実はですね、うちの姉が、急に男装したいなんて言い出して、
605
服を持ってたら貸してもらえないかと⋮⋮歳は十六です⋮⋮美人で
すよ、キリッとした感じの⋮⋮はい、絶対似合うと思います。巨乳
なんですけど、なんか隠す方法あります? はい、はい、あ、お願
いできますか? 助かります、待ってますね﹂
通話を終え、優は電話を切った。
﹁俺の知り合いのカポリンさんが、服貸してくれるって。飛んでく
るって行ってたから、すぐ来るよ﹂
香奈は眉をひそめた。
﹁あなたの特殊なネットワークには感心するけど、何者なの? そ
のカポリンさんって?﹂
﹁腐女子。BLも百合も何でもいける人。男装カフェも大好きらし
いから聞いてみたんだけど、服持ってるって﹂
﹁ああ、そう⋮⋮﹂
でっぷり太った変態オタク男が来るのではないかと心配していた
香奈は、安堵の溜息をついた。
三十分ほどして、玄関のチャイムが鳴り、優が迎えに行った。香
奈は優の部屋で待った。
ドアが開き、優に続いて、大きなバッグを抱えた高校生くらいの
メガネ女子が、わくわく顔で入ってきた。
﹁お邪魔しまーす! 美人のお姉さんに男装してもらえると聞いて、
飛んできました! ⋮⋮え?⋮⋮あっ!﹂
香奈の顔を見て、カポリンは大きく眼を見開いた。
一秒遅れで彼女の顔を思い出した香奈は、脳を超高速で回転させ、
牽制の言葉を放った。
﹁初めまして! お、弟が急に呼び出して、悪かったわね!﹂
カポリンは一瞬困惑したが、香奈のアイコンタクトによって、意
図を理解した。
﹁あっ⋮⋮ど、どうも、初めまして! ゆ、優君の、お姉さんです
よね? 今日は、よろしくお願いします﹂
礼儀正しく頭を下げる。優は、特に不自然を感じてはいないよう
606
だった。
香奈は胸がどっくんどっくんしていたが、平静を装った。カポリ
ンも何食わぬ顔をしている。
二人は、初対面ではなかった。以前、プリクラで香奈が未羽に全
裸にされ悪戯されたとき、偶然それをのぞいて、香奈が絶頂に達す
るのを見届けたオタク少女だった。
香奈とカポリンはそれぞれ自己紹介をして、優がカポリンに男装
デートうんぬんの事情を説明した。
﹁じゃあ、姉ちゃん、さっそく試着してみてよ。俺はリビングで待
ってるから、着替えたら電話で呼んでよ。俺も見てみたいからさ﹂
﹁う、うん⋮⋮分かったわ﹂
﹁じゃあ、カポリンさん、よろしくお願いします﹂
優はカポリンに軽く頭を下げ、部屋を出て行った。バタン、とド
アがしまる。
﹁お、お姉様∼!﹂
優が出て行くなり、カポリンは感涙を流しながら香奈の前にひざ
まずき、その手を取った。
﹁だ、誰がお姉様よ! 手を離しなさい!﹂
﹁い、一度だけでもよいから、またお目にかかれないかと、切望し
ておりました⋮⋮ま、まさか、優君のお姉様だったとは⋮⋮!﹂
両手で香奈の手をぎゅ∼っと握り、涙をぽろぽろと流す。会えな
い間に、だいぶ神聖化されてしまったようだ。
﹁ちょっ、ちょっと、離しなさい! 優が戻ってきたらどうするの
!?﹂
香奈がカポリンの手を振り払う。カポリンはへこたれず、指で涙
を拭った。
﹁す、すみません、喜びのあまり、興奮してしまいました。でも、
再会できて本当に嬉しいです。あの⋮⋮お相手の、あの可愛らしい
方とは、今もお付き合いされているのですか?﹂
﹁⋮⋮彼女はわたしの親友よ。生涯別れることはないわ﹂
607
﹁そうですか! 素晴らしいことです。お二人の幸せは、わたしの
幸せです!﹂
カポリンは眼を輝かせていった。香奈は疲れた溜息をついた。
﹁⋮⋮一応聞いておくけど、あなた、歳いくつ?﹂
﹁花の十七歳です!﹂
﹁⋮⋮うん、年上だと分かっても、あなたには全く敬語を使う気に
なれないわ﹂
﹁ヒエラルキーはお姉様が上なのでいっこうに構いません! それ
で、ひとつ伺いたいことがあるのですが⋮⋮﹂
香奈は面倒くさそうに、﹁何?﹂と聞いた。
﹁優君が最近描いた、﹃馬毛村立ラーメン学園﹄の二次創作イラス
トノベルで、ヒロインのセリカが夏のビーチのテントの中で、声を
押し殺してセックスするシーンがありまして⋮⋮。
あれ、優君がお姉様からアイデアをいただいたと話していたのです
が⋮⋮ひょっとして、実体験でしょうか?﹂
﹁⋮⋮っ!﹂
香奈は言葉に詰まった。顔が、ほわ∼っと赤くなる。
﹁お、お姉様⋮⋮!? お姉様は、男性経験もあられるのですか!
?﹂
カポリンが驚愕の表情を浮かべる。香奈は特に肯定の言葉を述べ
なかったが、彼女の中では決定事項のようだった。
﹁ショ、ショックです⋮⋮お姉様は、純粋な百合だとばかり⋮⋮﹂
﹁勝手に落ち込まないでよ⋮⋮わたしが誰と付き合おうが、わたし
の自由でしょ﹂
﹁つ、付き合ってるんですか!? その男と! い、いったいどこ
の馬の骨です!?﹂
激高するカポリン。本当に、香奈の知ったことではなかった。
﹁人の彼氏を馬の骨とか言わないでよ⋮⋮プリクラで一緒にいたあ
の子の、お兄さんよ﹂
﹁は?﹂
608
鳩豆顔をするカポリン。
﹁わたしと彼女との関係も、彼は知ってるわ﹂
﹁なっ⋮⋮!?﹂
一度は落胆した彼女の表情が、今度は歓喜の色に彩られていく。
﹁い、妹と兄と、両方と関係を持っているのですか!? さ、さす
がお姉様⋮⋮!
エロ同人を制作しているわたしたちの想像力を、リアルで斜め上に
超えていく性体験⋮⋮お姉様は、やっぱりわたしが見込んだとおり
の変態ですっ!!﹂
﹁変態って言うなっ!!!﹂
弟からも、そのオタク友達からも変態と言われ、香奈はかなり凹
んだ。優が例の二次創作にアナルセックスまで描き込まないで良か
ったと思った。
﹁⋮⋮無駄話はもうやめましょう。男装の服、持ってきたんでしょ
? 早く着せてちょうだい﹂
﹁あ、は、はい! 取りあえず四着ほど持ってきたのですが⋮⋮そ
うですね、お姉様には、こちらがお似合いになるでしょう﹂
﹁⋮⋮何でそんなに持ってるの? あなた、男装するの?﹂
﹁いいえ、わたしはしません。何でこんなに持っているのかという
と、それはまさに、こういうときのためです﹂
﹁ああ、そう⋮⋮﹂
香奈は、全く文化の違う外国人と話しているような気がした。
☆
609
︻後日談18︼のりちゃんの王子様④
そんなこんなで、日曜日がやってきた。
予定では、香奈が納子の家へ迎えに行き、一緒に遊園地へ向かう
はずだった。しかし、あいにくの雨模様である。
香奈がカポリンに借りた服に着替え、家を出たときは、ポツポツ
と降る程度だった。香奈は傘を差して駅に向かった。
納子の家までは、電車で二駅である。車内では人の眼が痛かった。
前に座った女子高生二人が、頬を赤らめながらヒソヒソと囁きあっ
ていた。
︵超カッコ良くない?︶
︵でも、女?︶
などと喋っているのが漏れ聞こえてくる。サングラスをかけてき
て良かったと、香奈は思った。知り合いにでも会ったら、目も当て
られない。
目的の駅に着くと、土砂降りになっていた。借りた服を汚すわけ
にもいかないので、香奈はタクシーに乗った。納子の家まではワン
メーターだ。
納子に電話をかけて、もうすぐ着くこと伝え、家人がいないこと
を確認した。
晴れていれば、家の前に納子に出てきてもらって合流する予定だ
ったのだ。こんな格好、納子のご両親にでも見られたら大ごとだ。
今は納子ひとりで家にいるそうだが、急に家人が帰ってこないと
も限らない。見つからないように、サッと納子の部屋に上げてもら
わなくてはならない。全く、ヒヤヒヤだ。
610
電話を受けてから、納子は玄関先でそわそわしながら香奈の到着
を待った。
昨日はよく眠れなかったが、興奮して眠気は感じない。うろうろ
と歩いたり、髪を直したり、納子はとにかく落ち着かなかった。
ピンポーン、と呼び鈴が鳴ると、ずっと待っていたくせに納子は
驚いて飛び上がった。
﹁わ、わ、わっ⋮⋮き、来ちゃった! どうしよう⋮⋮﹂
どうしようも何も、戸を開ける以外ない。納子はたたきに下りて、
引き戸の玄関をカラカラと開けた。
﹁やあ、のり、おはよう﹂
香奈はいつもより低めの声で挨拶し、軽く片手を上げた。
納子は、パチパチと何度も瞬きをした。
少し光沢のある、黒のスーツとベスト。ジャケットの上にはみ出
るくらい、大きな襟の白いシャツ。紫色のネクタイ。いつもはサラ
サラのボブカットは、ワックスでざっくりと固めている。
どこのホストかビジュアル系バンドか、と聞きたくなるような格
好の香奈が、そこにいた。歌舞伎町でホストをやれば、間違いなく
No.1を取れるだろう。とてつもなく似合っていた。
カポリンと優に、﹁一番似合う、つーか、これしかない!﹂と言
われ着てきた服だが、納子にとっては、どストライクだった。
コンビニで絡まれたような、ガラの悪い不良は大嫌いだが、こう
いう、派手で女の扱いに慣れていて、どこか危険な匂いのするイケ
メンというのは、納子の日常とは対極であるがゆえに、至極刺激的
だった。
納子は頬を赤く染めて、ぽ∼っ、と香奈を見つめた。頭のてっぺ
んから靴まで、何度も往復して眺める。
﹁⋮⋮のり? あの、上がってもいいかな?﹂
いつまで経っても納子が挨拶すらしないので、香奈はまた声をか
けなくてはならなかった。納子はハッと我に返った。
611
﹁⋮⋮あっ! ご、ごめんなさい! あ、上がって⋮⋮!﹂
しどろもどろに言って、納子は香奈を家に上げた。玄関先で、香
奈はくるりと一回転した。
﹁どうかな? この服? 優の女友達に借りたんだ。ちょっと気恥
ずかしいんだけどね﹂
納子は、ほわぁぁ⋮⋮と、熱のこもった溜息を吐いた。
﹁すっごく、似合ってる⋮⋮似合いすぎてて、びっくりしちゃった
⋮⋮漫画か映画から抜け出してきたみたい⋮⋮﹂
﹁そうかい? 良かった。のりにはもっと、少年っぽい格好がいい
と思うって、ボクは言ったんだけど、優たちはどうしてもこっちを
着ろって譲らなくてさ﹂
﹁ボ⋮⋮ボクっ!?﹂
話と関係なく、納子は香奈の一人称に過剰反応した。鼻血が出る
と思ったのか、慌てて鼻を押さえた。
﹁今日一日は、ボク、って言おうと思うんだ。のりは、ボクのこと
なんて呼ぶ? 想像の中では、なんて呼んでるの?﹂
納子は早くも、頭からほわほわと蒸気を出していた。
﹁⋮⋮じゃ、じゃあ⋮⋮か、香奈くんって、呼んでいい⋮⋮?﹂
両手を頬に当て、カ∼ッ、と赤い顔をしながら、納子は言った。
﹁もちろん構わないよ。今日は、土砂降りになっちゃって残念だね。
とても外出するような天気じゃないや﹂
﹁⋮⋮い、いいよ⋮⋮なんかもう、遊園地とかどうでもよくなっち
ゃった⋮⋮﹂
﹁じゃあ、おうちデートにしよう。こんな日は他のカップルも、み
んなおうちデートしてるよ。のりの部屋、上がってもいいかな?﹂
﹁う、うん⋮⋮か、香奈⋮⋮くん、先に、部屋行ってて⋮⋮あたし、
お茶用意するね⋮⋮﹂
﹁うん、分かった。のりも、早くおいで﹂
﹁は、はい⋮⋮!﹂
香奈は廊下を進んで、階段を上がっていた。何度ものりの家を訪
612
れているのだから、勝手知ったるなのは当たり前なのだが、男装の
香奈が迷わず家の奥へ入っていくのは、不思議な気分だった。
湯を沸かし、納子は紅茶を入れた。茶を入れながら、三十秒ごと
に溜息をついた。
﹁はぁぁぁぁ⋮⋮まさか、想像を遙かに超えてくるなんて⋮⋮素敵
すぎる⋮⋮﹂
頭がふわふわして、足が地に着いていないような気持ちだった。
﹁⋮⋮一度デートすればすっきりするって未羽ちゃん言ってたけど
⋮⋮やばいよ⋮⋮すっきりどころか、のめり込んでしまいそう⋮⋮。
あ∼、もう、どうしよう⋮⋮! あんなんで迫ってこられたら、絶
対抵抗できないよ⋮⋮って! な、何で香奈くんがあたしに迫って
くるの!? で、でも、香奈くん、ノリでそういうことしてきそう
⋮⋮。
うん、ぎゅって抱きしめるのは、女の子の香奈ちゃんのときにもし
てもらってるし、可能性高そう⋮⋮。
か、香奈くんに抱きしめられて⋮⋮も、もしかしたら、キ、キ、キ
キキ⋮⋮キ、キス、とかも⋮⋮んっひゃぁぁぁぁぁ!!!﹂
納子は頭を抱えてしゃがみ込んだ。こんな状態だったので、茶を
入れる作業は著しく時間を要した。
☆
613
︻後日談18︼のりちゃんの王子様⑤
﹁お、お待たせ⋮⋮ごめんね、時間かかっちゃって⋮⋮﹂
お茶とお菓子をトレイにのせて、ようやく納子は部屋に入った。
香奈は、ローテーブルのそばにあぐらをかいて座っていた。納子
は自分の部屋に超イケメン男子がいることが、まだ信じられなかっ
た。
テーブルの上に、トレイを置く。納子はいそいそと紅茶を注いだ。
﹁ご、ごめんね、香奈⋮⋮くん、イスとかなくって。ズボン、キツ
くない?﹂
納子は身体を傾けて、香奈の脚を見た。あぐらをかいているので、
股を大きく開いている。別にその中にペニスがあるわけでもないの
に、納子は妙にどきどきした。
﹁大丈夫だよ、脚より、胸の方がキツいけどね﹂
﹁そう言えば、香奈くん、胸ないね? どうしてるの?﹂
Fカップの巨乳が、Aカップ程度のなだらかな膨らみになってい
る。どこに乳を持っていったのか、納子は不思議だった。
﹁ナベシャツっていって、男装用に胸をつぶすためのシャツがある
んだよ。ちょっとキツいんだけど、本当に胸がなくなるからびっく
りしたよ﹂
﹁だ、大丈夫、そんなの着けて? 苦しくない?﹂
﹁大丈夫。これ、空手するときにもいいなって、いい物見つけたよ。
のり、触ってみる?﹂
﹁ふえっ!?﹂
大げさに反応して、納子の髪が揺れた。
香奈が手を伸ばして、納子の手を取った。手が触れるだけで、心
614
臓がバクンと鳴った。
﹁ほら、こんな感じ﹂
手を重ねて、香奈は胸を触らせた。納子は香奈のおっぱいを何度
か触らせてもらったことがあるのだが、それとはまるで違う固い感
触に、納子はドキリとした。本当に、男性の胸を触っているような
気になった。
﹁か、固いんだね⋮⋮でも、ちょっとだけ、押し返してくる⋮⋮﹂
納子は、何気に目線を胸から上げた。すると、さっきから納子を
見つめていたのか、香奈と二十センチくらいの至近距離で眼が合っ
た。
﹁っ!!!﹂
納子はびっくりして飛び退いた。香奈は呆気にとられた顔をして、
それからくすくすと笑った。
﹁あはは⋮⋮そんなに反応しなくても。のりのリアクションは、相
変わらず面白いなあ﹂
﹁わ、笑わないでよ∼⋮⋮もう、お茶、飲んで﹂
顔を赤くして、納子は紅茶とクッキーをすすめた。香奈はクッキ
ーを一枚手にとって、裏表を返して見た。
﹁可愛いね。手作り?﹂
﹁う、うん⋮⋮早く目が覚めたから、作ったの。遊園地で食べよう
と思ってたんだけど⋮⋮﹂
香奈がクッキーをひと口囓る。
﹁うん、美味しい。のり、お菓子作るの上手だよね﹂
﹁良かった⋮⋮。いっぱい食べて﹂
家にものすごく格好いい彼氏が来て、手作りのお菓子を美味しそ
うに食べてくれてる⋮⋮。納子は、不思議さと幸福感を同時に味わ
っていた。
﹁その服、すっごく似合ってるね。優くんのお友達から借りたんだ
っけ⋮⋮?﹂
﹁うん、その子自身は男装しないんだけど、可愛い女の子を見つけ
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るとコスプレさせる妙な趣味があって⋮⋮ボクがこの服着たら、そ
の子すごく興奮してさ、壁ドンしてくれって、何度もやらされたよ﹂
﹁か、壁ドン!?﹂
納子がめちゃくちゃ食いついた。大人しい子ほど、こういうのに
憧れるものなのだ。
﹁やってみる? じゃあ、そこの壁に背中つけて立ってくれる?﹂
二人は壁際に移動した。胸に手を当て、納子は怯えと期待がない
交ぜになった顔をした。
﹁壁の向こう、人いないよね? 壁ドンって言っても、そんなに強
くは叩かないけど﹂
﹁だ、大丈夫。お兄ちゃんの部屋だけど、工場行ってるから⋮⋮﹂
﹁じゃあ、やるよ﹂
香奈は納子の頭の横に片手を突いた。それだけなのに、逃げ場が
なくなったような気がして、納子はビクッとした。
香奈が、ぐっと顔を寄せる。心臓が跳ね上がった。
﹁あのさぁ、何でいっつも、俺のこと見てんの?﹂
﹁はうっ!!﹂
納子は身体をのけぞらせ、壁に背中をこすりつけながら、ずずず
ず、とへたり込んだ。
﹁の、のりっ!? 大丈夫!?﹂
香奈が心配して声をかける。納子はイったあとみたいな恍惚とし
た顔をしていた。
﹁だ、大丈夫⋮⋮す、すごい良かった⋮⋮もっとちょうだい⋮⋮﹂
﹁カポリンと同じような反応示すんだね⋮⋮そんなにいいの? こ
れ? してほしかったら、立って﹂
納子はよろけながら立ち上がり、壁に背をつけた。その顔は期待
に彩られていて、香奈はちょっと引いた。
香奈が、今度はちょっとこわい顔をして壁に手を突く。納子はい
ちいちビクッとした。
﹁あいつと俺、どっち選ぶんだよ!﹂
616
﹁あんっ!﹂
納子が甘い声を上げて、身を捩る。壁ドンに反応する性感帯があ
るみたいだった。
﹁あ、あたしなんかを取り合って⋮⋮香奈くん、香奈くんを選ぶよ
⋮⋮!﹂
﹁のり!? しっかり! これフィクションだから!﹂
とろんとした表情の納子の肩を、香奈が揺さぶる。納子はハッと
我に返った。
﹁あっ⋮⋮ご、ごめんない⋮⋮! フレーズが頭の中で広がって⋮
⋮﹂
﹁あんまりやると身体に障りそうだね。もうやめにしとく?﹂
﹁あっ、や、やめないで! もっと、聞きたい⋮⋮!﹂
﹁のり⋮⋮分かった、あと三つだけ、してあげるよ﹂
香奈は約束どおり、壁ドン3コンボを決めた。
﹁俺が欲しいんだろ? ⋮⋮素直になりなよ﹂
﹁あぅんっ!﹂
﹁ふざけてなんかいない⋮⋮おまえが、好きなんだ!﹂
﹁きゃんっ!﹂
﹁子供扱いするなって? ⋮⋮じゃあ、俺が大人にしてやるよ﹂
﹁やぁんっ!﹂
納子は毎回敏感に反応した。びくん! と身体を震わせる様は、
どう見ても性的な快感を得ているようにしか見えなかった。
﹁ちょ、ちょっと休憩しようか、のり⋮⋮喉が渇いたよ﹂
いい加減ネタも尽きてきたので、香奈はローテーブルに戻った。
納子もテーブルについて、香奈に紅茶を注いだ。顔が火照って、
ツヤツヤしていた。
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﹁あ、ありがとう、香奈くん⋮⋮なんだか、すっごく元気もらった
気がする﹂
﹁そ、そう? のりが喜んでくれるなら、嬉しいよ﹂
香奈は、逆にエネルギーを吸収された気がした。大人しい子って、
性を抑圧している反動で妄想力が発達するのだろうか?
しばらくの間、どうということのない会話をして時間を過ごした。
とりとめのない話をしながらも、のりはやっぱりどこか緊張して
いるようだった。頬が桜色に染まっているし、上目遣いで、はにか
みながら喋る。いかにもウブな少女の仕草で、香奈は、そんな納子
を可愛いと思った。
お尻をスライドさせて、香奈は納子のそばに寄り添った。納子が
ドキッとして、顔を赤らめる。
﹁か、香奈くん⋮⋮!?﹂
﹁いいだろ? 恋人同士って、こうして寄り添うものだよ﹂
﹁こ、恋人⋮⋮!﹂
納子はますます、カ∼ッと顔を赤くした。
香奈が手を伸ばし、納子の髪を触った。手櫛で梳いたり、指に絡
めたりする。
きわどいことをしているわけでもないのに、納子はなんだかすご
く恥ずかしかった。
﹁か、香奈くん、か、髪、そんなに⋮⋮さ、触っちゃ、だめ⋮⋮﹂
香奈は指をとめない。
﹁何で? のりの髪、ふわふわで、気持ちいいよ﹂
﹁そ、そんな⋮⋮あ、あたしくせっ毛だし⋮⋮﹂
﹁だめなのかい? じゃあ、ここは⋮⋮?﹂
髪を弄っていた手を、すっと離す。その手はごく自然に納子の胸
に下りて、彼女のささやかな膨らみを、そっと包んだ。
﹁あっ⋮⋮! か、香奈くん⋮⋮!﹂
突然胸を揉まれた納子は、焦って身をよじった。でも、それは形
ばかりの抵抗で、全く香奈の手を引き剥がすことはできなかった。
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﹁だ、だめぇ⋮⋮! か、香奈くん、お、おっぱい触っちゃ⋮⋮!﹂
﹁おうちデートするカップルって、みんなこういうことしてるよ。
⋮⋮のり、じっとしてて﹂
﹁あんっ⋮⋮! や、やぁん⋮⋮!﹂
香奈はやわやわと胸を揉んだ。揉みながら、空いている手を納子
の背に回し、ブラウスの上からブラのホックを外した。
﹁あっ! 香奈くん⋮⋮! だ、だめ⋮⋮!﹂
香奈は、服の上からブラのカップを上にずらした。薄い生地のブ
ラウスに、微かに乳首の突起が浮かんだ。
ノーブラ状態のおっぱいに、包み込むように手のひらを当てて、
香奈はゆっくりと揉みはじめた。
﹁あっ⋮⋮! や、やぁん! だめぇ⋮⋮! そんな⋮⋮﹂
﹁いいじゃないか、ボクたち、恋人同士だろ?﹂
﹁こ、恋人⋮⋮! で、でも、恥ずかしい⋮⋮あっ、あぁん⋮⋮﹂
納子は口ではそう言って拒んだが、香奈の手を振り払おうとはし
なかった。
彼女の胸の膨らみはささやかなもので、オナニーしながら自分で
触ってもそれほど感じることはなかったのだが、人に触られると全
然別の感覚があった。
大切なところを、人に触られている︱︱いや、触らせているのだ。
いけないことをしているという気持ちが、普段よりもずっと身体を
敏感にさせた。
﹁あっ⋮⋮あぁ⋮⋮も、もうだめぇ⋮⋮! 香奈くん、す、すとっ
ぷ⋮⋮!﹂
本当は、もっと触ってほしいんだろう、香奈はそう分かっていた
が、わざと手を止めて、その手を離した。
納子は頬を上気させて、少し呼吸が荒くなっていた。きっと、心
臓がバクバクいっていることだろう。
﹁ふふ⋮⋮可愛いよ、のり。おっぱい、気持ち良かった?﹂
﹁も、もう⋮⋮! 香奈くん、意地悪⋮⋮﹂
619
納子は香奈の肩に顔を伏せた。頭からしゅわしゅわと蒸気が出て
いた。
﹁いいこと思いついたよ。のり、こういうのはどう?﹂
﹁え⋮⋮?﹂
不意な提案に納子が戸惑っていると、香奈はベッドにもたれるよ
うにして、身体を大きく後ろに傾けた。
﹁小学生のころ、バカな男子がふざけてやってたんだ﹂
香奈はズボンのベルトを外した。中に入れていたシャツを出して
ズボンを緩め、ホックは留めたまま、ファスナーを下までさげる。
﹁か、香奈くん⋮⋮!?﹂
何をしようとしているのか、納子には分からなかった。いや、分
からなくて、当然だった。
香奈は、へその方から、ズボンの中へ右手を入れた。
﹁ほら、こうすると、おちんちんみたいでしょ?﹂
人差し指と中指を揃えて、開いたファスナーから、にゅっ、と突
き出す。納子は、頭を殴られたような衝撃を感じた。
指なのだ、指だということは分かっている。でも、ズボンの股間
から肌色の長いものが、ぬっと突き出しているのは、ダイレクトに
ペニスを連想させ、ひどく露骨で、いやらしかった。
﹁か、香奈⋮⋮くん⋮⋮!﹂
手で顔を覆い隠しながら、納子は言った。指の間から眼が覗いて
いるのは、お約束だ。
納子の反応に、香奈はおかしそうに微笑んで、
﹁⋮⋮のり、ボクのおちんちん、舐めてよ﹂
と、言った。
﹁えっ⋮⋮! な、舐めてって⋮⋮!﹂
眼を見開いて驚く納子。香奈は、小悪魔的な笑みを浮かべ、
﹁さっき、おっぱい触ってあげただろ? だからお返しに、舐めて
よ、ボクのおちんちん⋮⋮﹂
﹁⋮⋮!﹂
620
無茶苦茶な理屈だったが、納子は何も言えなかった。
さすがに、少し躊躇ったが、身体のほうが勝手に動いた。
納子は床に手を突き、四つん這いになって、足の方から香奈に這
い寄った。香奈の、閉じて伸ばした脚の上に、身体を重ねていく。
ファスナーから飛び出した指が目の前に迫ると、納子は、ごくり
と生唾を飲んだ。
香奈も胸の高鳴りを覚えながら、納子の様子を見守っていた。納
子は、香奈の疑似ペニスに魅入られたように、普段見たことのない
エロティックな表情をしていた。
﹁ん⋮⋮﹂
納子はその小さな口から舌を伸ばした。そして、眼を閉じて、香
奈の指を、れろ、と舌でなぞった。
﹁あっ⋮⋮﹂
香奈が小さく声を漏らした。
納子は薄く眼を開いて、アイスクリームを舐めるように、れろれ
ろ、れろれろ、と指を舐めた。香奈は敏感に反応した。
﹁あっ、あふっ⋮⋮﹂
思わず声が漏れてしまう。この異常なシチュエーションに興奮し
ているためか、指を舐められているだけなのに、クンニされている
ような快感が走った。
納子の脳内では、香奈の指は完全にペニスに変換されていた。彼
女は恍惚として、想像上の香奈のペニスをしゃぶった。
香奈が感じてくれるのに気を良くして、納子は一生懸命に舌を使
った
﹁あっ⋮⋮の、のり⋮⋮気持ちいいよ⋮⋮﹂
﹁あふっ⋮⋮か、香奈くん⋮⋮﹂
納子は香奈の指を、ぱっくりと咥え、ピストン運動を始めた。処
女で、初フェラなのに、なかなか大胆だ。
指は唾液にまみれ、垂れてズボンや香奈の男物の下着を濡らした。
香奈はぞくそくするような快感を味わっていた。
621
納子はうっとりとした表情で、健気に奉仕を続けている。香奈の
理性に、パキッ、とひびが入った。
﹁の、のり⋮⋮﹂
﹁ん⋮⋮?﹂
名前を呼ばれて、納子は口から指を引き抜き、顔を上げた。眼が
とろんとしたその表情に、香奈は激しい欲情を覚えた。
ズボンから、右手を引き抜く。唾液に濡れた二本の指を、香奈は
納子の眼前に持っていく。
戸惑う納子に、香奈は、子供に問いかけるように、こう言った。
﹁のり⋮⋮入れてあげようか? ボクの⋮⋮おちんちん⋮⋮﹂
納子の眼が、大きく見開かれた。
彼女は俯いて、戸惑い、迷った。何度も、顔を上げようとしては、
また俯いて、顔を横に振ったりした。
表情は見えなくても、真っ赤に染まった耳から、彼女の気持ちは
知れた。香奈は静かに、納子が答えを出すのを待った。
そうして、長い間逡巡してから、納子は︱︱小さく、こくり、と、
うなずいた。
﹁のり⋮⋮いいんだね⋮⋮?﹂
香奈が確認すると、納子はいじらしく、もう一度うなずいた。
香奈は身体を起こすと、彼女のそばに膝立ちで座った。両手を、
納子の背中と脚の下に通す。
﹁え⋮⋮? きゃっ!﹂
香奈も小柄なので、納子と背丈はそう変わらないのだが、香奈は
軽々と彼女をお姫様抱っこで持ち上げた。
体重を感じていないような動作で歩き、納子をベッドに横たえる。
続いて自らもベッドに上がり、彼女に寄り添うようにして、横にな
った。
﹁か、香奈くん⋮⋮﹂
﹁下着⋮⋮脱がすよ﹂
香奈は納子のスカートに手を入れると、躊躇いなくパンツをスル
622
ッと引き下げた。
﹁きゃっ! や、やぁっ! だ、だめっ⋮⋮﹂
﹁いい、って言ったじゃないか。⋮⋮ごめん、もう止まんないよ﹂
香奈が獣の眼になっていた。童貞みたいだった。
問答無用で、香奈は彼女のパンツを足首から引き抜いた。小さく
丸まったそれを、ポイ、と投げ捨てる。
﹁あっ! か、香奈くん! や、やっぱりだめぇっ!⋮⋮﹂
﹁触るよ、のり⋮⋮﹂
寄り添いながら、香奈は手を伸ばし、スカートの中の秘部に触れ
た。
﹁あっ⋮⋮! だ、だめぇ!⋮⋮あんっ⋮⋮﹂
思った通り、そこはもう、とろけるように潤っていた。
胸への愛撫と疑似フェラで納子が感じ、興奮してるのは分かって
いた。ひょっとしたら壁ドンのときから濡れていたのかもしれない。
納子が指入れオナニーをしているのは知っていたので、このまま
挿入しても大丈夫そうだったが、いきなりそうはせず、香奈は襞の
間からクリトリスを探し出し、指で転がした。
﹁あっ! ふわっ⋮⋮あ、あぁっ! か、香奈くん⋮⋮はぁっ!⋮
⋮﹂
身体が準備万端だった納子は、香奈の指に敏感に反応した。
びくん、びくん、と、何度も身体が震えた。寸前まで﹁だめ!﹂
とか言っていたのに、すぐに何も考えられなくなって、香奈にしが
みついた。
﹁ふふ⋮⋮のり、可愛いよ﹂
﹁あっ、あぁっ!⋮⋮はぁっ⋮⋮んっ、あぁんっ!⋮⋮﹂
香奈の声も耳に届かない様子で、納子は激しく声をあげた。
︱︱クリちゃん弄るだけでも、すぐにイっちゃいそう⋮⋮早めに
入れてあげないと、だめみたいね⋮⋮。
623
そう判断した香奈は、いったん指を止めた。
﹁あふ⋮⋮はぁ、はぁ⋮⋮﹂
火照った顔で、荒い息をしている納子に、おでこをくっつけるよ
うにして、顔を寄せる。
﹁のり⋮⋮入れるよ⋮⋮﹂
指一本じゃ、オナニーと一緒よね⋮⋮初体験の気分を、味わって
もらわなきゃ。
香奈はサービス精神を発揮して、中指と薬指を揃えて、彼女の入
口にあてがった。
﹁え⋮⋮? か、香奈くん⋮⋮?﹂
﹁いくよ⋮⋮﹂
ぬぷっ⋮⋮と二本の指が、先端だけ彼女の中に潜り込んだ。
﹁あっ! あぁっ⋮⋮!﹂
少しキツいが、とろとろに潤ったおまんこは、どうやら二本の指
を受け入れてくれそうだった。
ぬるっ、と、さらに指を進める。納子は強く香奈に抱きついた。
﹁あっ! はぁっ⋮⋮は、入ってくるぅ⋮⋮香奈くんの⋮⋮あぁっ
⋮⋮!﹂
﹁のりの中、温かくて、気持ちいいよ⋮⋮すごい⋮⋮キュッ、って、
締め付けてくる⋮⋮奥まで、いくよ⋮⋮﹂
﹁ふあっ⋮⋮あぁっ!⋮⋮﹂
香奈は、さらに指を進め、根元まで挿入した。
とろとろにぬめった襞が、キツく指を締め付けてくる。香奈はす
ごく興奮した。
﹁はわぁ⋮⋮! お、大っきいよぉ⋮⋮! か、香奈くんの⋮⋮あ
ぅ⋮⋮﹂
大っきい、と言ってるってことは、指を二本入れるのは初めてな
のかもしれない。香奈は本当に納子の処女を奪ったような気持ちに
624
なった。
﹁のり、動くよ⋮⋮身体を楽にして﹂
ゆっくりと、香奈は抽挿をはじめた。抜ける寸前まで指を後退さ
せ、また、ぬ∼っ、と根元まで指を前進させる。軽く指を折って、
気持ちいい場所を刺激するのも忘れない。スローペースで、香奈は
それを繰り返した。
﹁あっ⋮⋮あ、あぁっ⋮⋮あ、あたし、香奈くんと、セックスして
る⋮⋮はぅん⋮⋮あぁ、気持ちいい、よぉ⋮⋮!﹂
理性が吹っ飛んだ納子は、耳元で赤裸々な言葉を囁いた。切なげ
な顔をして、ますます強く香奈にしがみついてくる。
こんなに乱れて⋮⋮可愛い⋮⋮。
納子のおまんこからは、とめどなくとろりとした蜜が溢れてくる。
先ほどより出し入れがスムーズになってきたのを感じ、香奈は抽挿
のペースを少し速めた。ちゅぷちゅぷと、いやらしい水音が部屋の
中に響く。
﹁あっ、はぁん! そんな、激しく⋮⋮あっ、ふわぁ⋮⋮お、おか
しく、なっちゃう⋮⋮はうっ、あぁん!⋮⋮﹂
納子は眉を八の字にして、きつく眼を閉じ、甘い声を漏らし続け
ている。
幼い顔立ちなのに、快感に身を任せ、あられもなく喘いでいるそ
の表情は、香奈を激しく興奮させた。クールな彼女も、さすがに理
性のブレーキがきかなくなってきていた。
﹁のり⋮⋮好きだよ﹂
香奈もこのときは、冷静な判断力を失っていたのだろう。
ごく自然に、納子のファーストキスだとか、そんなことは何も考
えず、欲望のままに、香奈は納子に口づけた。
﹁んっ⋮⋮! ⋮⋮んん⋮⋮﹂
さすがに納子も驚いて、くぐもった声を漏らしたが、彼女はすぐ
625
に眼を閉じ、なすがままになった。
香奈の唇は柔らかくて、心地良かった。キスってこんなに気持ち
いいものなんだと、納子は衝撃を受けた。
︱︱と、のんびり初めてのキスを味わう間もなく、香奈が舌先で
彼女の唇をつつきだした。
納子が驚いてわずかに口を開くと、すかさず舌を潜り込ませてく
る。ウブな乙女を相手に、香奈は情熱的に舌を絡めた。
﹁んんっ⋮⋮! んっ、ん⋮⋮!﹂
おまんこを指でかき回されながら、納子は呼吸困難になるほど激
しくべろちゅーされた。快感と息苦しさで、頭がくらくらした。
香奈が唇を離すと、彼女は素潜りから海面に上がったみたいに、
酸素を求めて激しく喘いだ。
﹁ぷはぁっ! はぁ、はぁ、はぁ⋮⋮あふっ、か、香奈くん⋮⋮あ
っ、ああっ!⋮⋮﹂
相変わらずおまんこを弄られながらなので、今度はあえぎ声を漏
らす。巧みな香奈の愛撫に、納子はすっかり翻弄されていた。
香奈の指はぬるぬるに濡れすぼっている。彼女がさらに抽挿のス
ピードを増すと、納子は激しく身を捩り、大きな声を上げて喘いだ。
﹁あぅん! ⋮⋮はぁっ、あっ⋮⋮あぁん! も、もう⋮⋮イ、イ
っちゃ⋮⋮イクっ⋮⋮はぁんっ!⋮⋮﹂
首筋を舐めながら、香奈は彼女の声を聞いた。
⋮⋮のりったら、もうイっちゃうのね⋮⋮大人しい顔して、いや
らしいんだから⋮⋮。
香奈は、にたり、と悪魔のような笑みを浮かべ、彼女の耳元に口
を寄せた。
﹁ふふ、可愛いよ、のり。イかせてあげる⋮⋮ボクのおちんちんで
⋮⋮﹂
そう囁くと、言葉に反応して、納子の身体がビクッと震えた。
626
寄り添うように横たわりながら、香奈はさらに指の動きを激しく
した。ちゅぷちゅぷといやらしい音が、部屋の中に満ちる。
﹁あぁっ! はうっ⋮⋮あっ、あっ⋮⋮も、もうだめ⋮⋮イクっ、
イっちゃうよぉ⋮⋮! あっ、はぁんっ!⋮⋮﹂
納子が、ぎゅ∼っ! とすごい力でしがみついてくる。身体がど
んどん強ばりを増してきているのを、香奈は感じていた。
﹁のり⋮⋮! ああ、ボクもイキそうだよ⋮⋮! のりの中に出す
よ、いいね? ボクの熱いの、受け止めて、のり⋮⋮!﹂
切ない声を演技して、香奈は言った。絶頂間近な納子は、香奈の
言葉を冷静に分析する余裕などなかった。
﹁あぁっ!⋮⋮香奈くん⋮⋮! イってぇ! あ、あたしの中、い
っぱい出してぇ! あっ、あぁんっ!﹂
中出しオーケーだった。香奈は指にラストスパートをかけた。オ
ナニーでは経験したことのない快感が、納子の身体を貫いていく。
﹁イクっ⋮⋮! も、もう⋮⋮あっ⋮⋮ふわっ、あぁ⋮⋮あっ、あ
あああぁぁぁぁんっ!﹂
足の先から頭のてっぺんまで、何かが身体を通り抜けていくよう
な感覚だった。納子は絶叫し、エビのようにのけぞった。
絶頂の波は、幾重にもなって押し寄せ、絶頂感が貫き抜けていく
たび、彼女はびくん、びくん、と、大きく身体を震わせた。
﹁あっ⋮⋮! あぁぁ⋮⋮ふわ⋮⋮はあぁぁぁ⋮⋮﹂
長く続いた絶頂感が、ようやく彼女を解放した。納子は生八つ橋
みたいに、へにょんと脱力した。
﹁はぁ、はぁ、はぁぁ⋮⋮﹂
顔が赤く火照って、呼吸が速い。額に汗の粒が浮かんで、乱れた
前髪が貼りついていた。
一見苦しそうにも見えるが、その顔は三つ星レストランのフルコ
ースでも食ったような満足感に彩られていた。
快感の余韻に浸り、頭の中がお花畑になっている納子を、香奈は
愛おしそうに見つめ、髪を撫でた。
627
﹁ふふ⋮⋮気持ち良かったかい? のりがイクときの顔、とっても
可愛かったよ﹂
囁く香奈の声が、納子を正気に引き戻した。拡散していた意識が、
シュッと明確な輪郭を持って集結する。
疑似フェラ、指での愛撫、べろちゅー、大絶叫しての絶頂と、次
々に記憶がよみがえった。雰囲気に酔って忘れていた羞恥心が、大
挙して押し寄せてくる。
﹁あ、あたし⋮⋮ひやぁ⋮⋮!﹂
アルコール温度計みたいに、納子の顔が下から順に真っ赤になっ
た。彼女は羞恥に耐えきれず、うつ伏せになって枕に顔をうずめた。
﹁う⋮⋮うう⋮⋮は、恥ずかしい⋮⋮死にそう⋮⋮﹂
香奈が納子の背を優しく撫でる。
﹁恥ずかしがらないで、のり。ほら、顔上げて﹂
そう促しても、納子はまくらに伏せて、﹁ううう⋮⋮﹂と呻くば
かりで、なかなか顔を上げようとはしなかった。耳がパプリカみた
いに真っ赤だった。
三分くらいそうして、ようやく、納子が少し落ち着いてきた。香
奈はずっと彼女の頭や背を撫で続けていた。
﹁⋮⋮⋮⋮香奈くん⋮⋮﹂
やっと、納子が言葉を発した。香奈が﹁何だい?﹂と聞く。
納子は少し首を傾けた。恥ずかしそうに、片目で香奈をのぞく。
﹁⋮⋮あたし、もう⋮⋮処女じゃないのかなぁ⋮⋮?﹂
ぷっ、と香奈は笑った。
﹁これがロストバージンなら、ボクだってのりにオナニーの仕方教
えてもらったときがロストバージンになっちゃうよ。のりは、処女
だよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮そっか⋮⋮﹂
納子は眼を伏せて、何か考えてるような顔をして、また黙った。
﹁⋮⋮香奈くん、着替えて﹂
しばらくしてから、納子はぼそっとつぶやいた。
628
﹁え?﹂
﹁⋮⋮着替え、持ってるでしょ? お風呂入って、女の子に戻って
⋮⋮﹂
﹁いいのかい? せっかくのおうちデートなのに﹂
﹁⋮⋮これ以上、香奈くんと一緒だと、破裂しちゃいそう⋮⋮香奈
ちゃんに、戻って⋮⋮﹂
香奈はクスッと笑い、溜息をついた。
﹁分かったよ。じゃあ、お風呂借りるね。今日は楽しかったよ。の
り、ありがとう﹂
香奈は身を屈めて、頬にキスをした。ピクッと、納子の身体が震
えた。
☆
香奈は着替えの入ったバッグを持って階下に下り、風呂に入った。
髪のワックスを落とし、身体を洗って、悶える納子の痴態を思い
出しながらオナニーした。
風呂を上がり、スカートにブラウスと、いつもの格好に着替える。
スーツとナベシャツから解放され、すごく楽になった。
男装の衣装をバッグに詰め、香奈は納子の部屋に戻った。
﹁あ∼、香奈ちゃんだ∼!﹂
納子が駆け寄って、香奈に抱きついた。断りもせず、おっぱいに
顔をすりつける。
﹁ちょ、ちょっと、のり。もう、男の子になってほしかったんじゃ
ないの?﹂
香奈は納子に抱きつかれたまま歩いて、ベッドに腰掛けた。のり
は幸せそうな顔をして、胸に顔をうずめている。
﹁男の子の香奈くんもすごく格好良かったけど、ずっと一緒だと疲
629
れちゃう⋮⋮あ∼、香奈ちゃんのおっぱい、落ち着くよ∼。なんだ
か、海外旅行から一週間ぶりに家に帰ってきたような気分⋮⋮﹂
﹁勝手なんだから。じゃあ、もう男の子にならなくてもいいのね?﹂
﹁んー⋮⋮また、お願いするかも。香奈ちゃん、今日はありがとう。
⋮⋮エ、エッチは恥ずかしかったけど、男の子の香奈くん、とって
も素敵だった。初めてのデート、楽しかったよ⋮⋮﹂
頬を桃色の染めながら、納子は言った。
可愛いなぁ⋮⋮香奈はいじらしくなって、納子をギュッと抱きし
めた。
﹁わたしも楽しかったわ。ねえ、のり⋮⋮キスしていい?﹂
納子は少し驚いた顔をして、香奈を見上げた。
﹁えっ⋮⋮! か、香奈ちゃん、女の子だよ?﹂
﹁したいの⋮⋮いいでしょ?﹂
納子はもじもじと恥じらってから、﹁⋮⋮うん﹂と答えた。
二人は口づけを交わした。香奈は、軽くバードキスをするつもり
だったのだが、やっぱり押さえきれなくなり、舌を潜らせた。
納子もそれに答える。外はいつの間にか雨が上がり、雲を透かし
て陽が差していたが、二人はそんなことにも気づかず、可愛らしく
舌を絡め合ったのだった。
☆
630
︻後日談18︼のりちゃんの王子様⑥
☆
﹁ということがあったんだって、お兄ちゃん﹂
平日の夕方。俺と未羽は夕飯の食卓を囲んでいた。今日のメニュ
ーはカキフライだ。未羽の手料理は、相変わらず抜群に旨い。
飯を食いながら、俺は事の顛末を未羽から詳細に聞いた。
﹁そうか、あの清楚なのりちゃんに、そんな欲求があったとは⋮⋮
のりちゃんと香奈ちゃんは、その後どうなんだよ? おまえたちの、
エロエロレズビアンワールドに引きずり込んじゃいないだろうな?﹂
﹁⋮⋮その何とかワールドっての、やめてくれない? のりちゃん
と香奈ちゃんは、あの後はエッチしてないよ。のりちゃんはアレで
すっかり欲求不満が解消されたみたい。二、三ヶ月したらまた男装
してほしいとは言ってるけどね。今度はホストみたいな格好じゃな
くて、普通の少年っぽい格好でって﹂
﹁俺は、ラストシーンで女の子に戻った香奈ちゃんとのりちゃんが
べろちゅーしてたのが、ひじょ∼に気になるんだが⋮⋮﹂
俺はカキフライを囓った。外はカリッと、中はジューシーだ。旨
え。
﹁うん、キスは普通にするようになった。あたしものりちゃんとキ
スしたよ。でもそれだけ、エッチはしてないよ﹂
﹁キスって、べろちゅーかよ!?﹂
﹁ううん、舌は入れない。友ちゅーだよ、友ちゅー。あたしと香奈
ちゃんがキスしてることバラしちゃったから、三人の間で、キスは
631
解禁することにしたの。最近はのりちゃんのほうからねだってくる
よ。可愛いの﹂
﹁ぐぐぐ、いいなあ、羨ましい﹂
﹁女の子同士だとこういうとき得だね、お兄ちゃん﹂
俺は、のりちゃんと未羽と香奈ちゃんが、キャッキャウフフしな
がらちゅっちゅしているところを想像した。
⋮⋮桃源郷じゃねえか。ああ、俺も転生して美少女になって加わ
りてえ。
それにしても、のりちゃんがまた一歩、エロエロレズビアンワー
ルドに接近してしまったなあ。
彼氏でもできればその心配はないのだが⋮⋮それはそれで、嫌だ。
俺には香奈ちゃんという素晴らしい彼女がいるのだが、それでも嫌
だ。娘を嫁に出したくない父親の感情?
そんなことを考えていたら、前に座っている未羽が、はぁ⋮⋮と、
溜息をついた。
﹁何だそのため息? 幸せが逃げるぞ﹂
﹁香奈ちゃんが羨ましいなあと思って。あたしも、のりちゃんのお
っぱいをぺろぺろしたり、おまんこを指でかき回してヒィヒィ言わ
せたりしたいよ﹂
﹁女子高生が飯食いながら言うことじゃねえな!!⋮⋮でもまあ、
もし、抑えが効かずにのりちゃんをレズビアンワールドに引きずり
込んでしまったとしたら⋮⋮その、ついでと言ってはなんだけど⋮
⋮お、俺も誘ってくれても、いいんだぞ?﹂
﹁お兄ちゃんこそ、欲望がだだ漏れだよ⋮⋮。でも、それはないと
思うよ﹂
⋮⋮4Pに混じれるかと思って聞いてみたのだが、あっさり否定
されてしまった。
俺は、飯を食う未羽をじっと見つめた。彼女はサラダのレタスを
むしゃむしゃと食んでいる。こいつ、飯をすごく旨そうに食うんだ
よな、すげえ可愛い。
632
こんな可愛い妹とひとつ屋根の下に住んで、しかも巨乳で美少女
の彼女がいるのだ。俺はあらためて幸せを噛みしめた。
4Pなんて、贅沢すぎだな。俺はそう思い直し、味噌汁をすすっ
た。
未羽特製の、野菜たっぷり具だくさん味噌汁は、心がほっこりす
るような旨さだった。
おわり
633
︻後日談18︼のりちゃんの王子様⑥︵後書き︶
634
︻エロ無し小話︼元気のない未羽︵前書き︶
全裸待機していただいた方々には申し訳ございませんが、
タイトル通り、エロ無しです。作者が書きたくて書きました。
635
︻エロ無し小話︼元気のない未羽
夕方、部活を終えて帰宅した俺は、薄暗い家の中に﹁ただいま﹂
と声をかけた。
返事はない。帰宅部の未羽は俺より帰りが早いはずだが、出かけ
ているのだろうか︱︱と思ってリビングに行ってみたら、未羽がソ
ファで横になっていた。制服のままだ。
寝ているのかと思ったら、眼は開いている。珍しく表情が暗い。
﹁ただいま。どうしたんだよ、電気もつけないで﹂
﹁おかえり、お兄ちゃん⋮⋮何でもない、ぼーっとしてただけ﹂
﹁元気ないな、具合でも悪いのか?﹂
﹁大丈夫、風邪とかじゃないよ⋮⋮お兄ちゃん、晩ご飯、簡単なの
でいい? レトルトソースのパスタにしようと思うんだけど?﹂
構わないよ、と俺は返事して、風呂へ向かった。
身体の不調でないとすると、精神的なものか⋮⋮温厚で人当たり
がいいから、あまり面倒な人間関係に巻き込まれることのない未羽
ではあるが、なにしろ多感な高校生である。望む、望まざるに係わ
らず、辛い思いをすることもあるだろう。
取りあえず部活の汗を流してから、ゆっくり話を聞いてやろう、
俺はそう思い、急いで身体を洗って風呂を出た。
髪を乾かしてからリビングへ行くと、電気がついていた。未羽は
部屋着に着替えて、ひとり掛けの方のソファに、肘掛けにもたれる
ようにして座っている。
俺は冷蔵庫から出した麦茶をグラスに注いで、向かいのソファに
座った。
未羽はゆっくりと視線を動かして俺と眼を合わせたけど、すぐに
逸らして、何もない壁をぼんやりと見つめていた。
636
俺は黙って麦茶を飲んで、タイミングを待った。
未羽は明らかに凹んでいるし、それを隠そうともしていない。凹
んだところを俺に見られたくないなら、部屋にこもるか、作り笑い
で空元気を装うはずだ。落ち込んだ姿を見せてるってことは、俺に
何かしてほしいのだろう。
放っておけば未羽の方から何か言ってくるかもしれないし、聞い
てほしそうなそぶりを見せれば、こっちから聞けばいい。未羽の出
方次第だ。
俺は飲み干したグラスをテーブルに置いた。コトリというその音
が合図のように、未羽が口を開いた。
﹁お兄ちゃん⋮⋮﹂
暗い声だった。
﹁ん、何だい?﹂
﹁⋮⋮ちょっと、甘えてもいい⋮⋮?﹂
未羽はそう言うと、のそのそとした動きでソファを立った。
﹁お兄ちゃん⋮⋮寝転がって⋮⋮﹂
﹁うん﹂
言われるがままに、俺は三人掛けのソファに身体を倒した。
肘掛けを枕にして横たわると、未羽が手を伸ばして、ゆっくりと
覆い被さってきた。
未羽は俺の胸に顔をうずめ、両腕を背に回し、しっかりと俺に抱
きついた。こんな時だが、ノーブラのおっぱいが押しつけられて、
思わずドキリとしてしまう。
幼児が母親にするような、無防備な甘え方だった。
両脚も俺の上に乗っけて、ほとんど全体重を俺に預けてしまって
いるが、小柄で華奢な彼女の重みは苦になるどころか、心地良いく
らいで︱︱それでも、それは、思春期の女の子ひとり分の、重さだ
った。
未羽は黙って抱きついている。少女特有の柔らかな身体の感触と、
服を通して伝わる体温が心地良かった。
637
手を伸ばして、頭を撫でる。しっとりサラサラな彼女の髪は、絹
のように滑らかだ。
未羽は俺の上でじっとしている。妹が悩みを抱えてるらしいとい
うのに、不謹慎だとは思うのだが、弱さを隠そうともせず甘えてく
れるのは、ぶっちゃけ、兄として嬉しかった。
そして、誠に不謹慎きわまりないのだが、俺の意志とは関係なく、
ちんこは大きくなってしまうのだった。
未羽は腹にあたる強ばりに気づいているはずだが、何も言わなか
った。俺の勃起をネタにする気も起きないほど、凹んでいるようだ。
﹁⋮⋮どうしたんだよ? まあ、話したくなきゃ、話さないでもい
いけど﹂
﹁⋮⋮⋮⋮聞いてくれる? お兄ちゃん⋮⋮﹂
あさみ
俺の胸に顔を埋めたまま、彼女は話し始めた。
﹁︱︱五ヶ月前に、麻美ちゃんって子が、あたしのクラスに転校し
てきたの。お父さんの仕事の都合で、よく転校してるらしいんだけ
ど︱︱大人っぽくて、無口な子だった。
麻美ちゃんは、すごくきれいな子で、カッコ良かったから、みんな
友達になろうとしたのね。でも、麻美ちゃんはそういうの全部突っ
ぱねちゃって⋮⋮最初はアプローチしてた子たちも、だんだん、﹃
ああ、この子は、こういう子なんだ﹄って、相手にしなくなったの
⋮⋮。
麻美ちゃんは、誰とも友達になろうとしなくて、クラスで、孤立し
てたのね。でも、あたしだけは、ずっと、話しかけたりして、コン
タクトしようとしたんだよ。
ぼっちでかわいそうとか、そんなんじゃないの。のりちゃんのとき
もそうだったんだけど、なんか、惹かれるとこがあったんだよ、麻
美ちゃんには。
それでね、ある日、音楽室に用があって、行ったんだけど、ピアノ
の音がしてたの。静かな、とってもきれいなメロディーが︱︱。
あたしは、音楽の先生が弾いてるだろうと思ってたんだけど、ピア
638
ノを弾いてたのは、麻美ちゃんだったのね。びっくりした。
あたし、すごいすごいって、麻美ちゃんのこと褒めたの。麻美ちゃ
んは照れくさそうにしてたけど、ジャズやってるんだって、教えて
くれた。
あたしは、こんなに上手なら、吹奏楽部か軽音部入ったらってすす
めたんだけど、ジャズとはやっぱり少し違うって言うのね。
でも、それから麻美ちゃんは、あたしにだけは、少しだけ打ち解け
てくれたの。
大学に入ったらジャズ研に入って、思いっきりジャズやるんだ、と
か、友達を作らないのは、転校が多くて、仲のいい友達作ると、別
れが辛くなるからだとか、そういうこと話してくれた。
あたしは、別れが辛いから友達作らないって、そんなのおかしいっ
て言って⋮⋮麻美ちゃんは、﹃じゃあ、未羽とだけなら、仲良くな
る﹄って、言ってくれたの。
それで、一緒にお弁当食べたり、音楽の話とかしたり、あたしは、
仲良くなった、つもりだったの⋮⋮﹂
そう言って、未羽は深い溜息をついた。
つもりだった、ってことは、そうじゃなかったんだろうな⋮⋮。
﹁⋮⋮今日ね、帰りのホームルームで、先生が麻美ちゃんを教壇に
呼んで⋮⋮麻美ちゃん、別の学校に転校するって、言うの。うちの
学校に登校するのも、今日までなんだって。本人の希望で、今日ま
で黙ってたって先生は言って⋮⋮みんな、驚いてざわざわってした
けど⋮⋮そんだけだよ。お別れする暇も、何もなし。
あたしは、呆然としちゃって⋮⋮仲良くなったつもりだったのに、
あたしにもひと言もなくって⋮⋮。
麻美ちゃんはその日、普段と同じように、一人で下校した。もう、
みんなと会えないのに、だよ⋮⋮?
あたしも、麻美ちゃんに、何も言えなくって⋮⋮心が通じ合ってる
ように感じてたのに⋮⋮全部、あたしがそう思ってただけで⋮⋮自
分がバカみたいで⋮⋮﹂
639
未羽は、俺を抱く腕に、ギュッと力を込めた。
俺も、彼女を抱いた。力強く、ギュッと。未羽の身体は、華奢で、
小っちゃくって︱︱こんな小さな身体に、いろんな思いを抱えてる
んだなぁって、すごい、いじらしかった。
﹁大丈夫だよ、未羽の思いは、ちゃんと麻美ちゃんに伝わってるよ。
麻美ちゃんは、不器用なだけじゃないかな﹂
﹁で、でも⋮⋮麻美ちゃん、あたしに、さよならも言わないで⋮⋮﹂
﹁んなことないって﹂
俺はまた未羽の頭を撫でた。
﹁俺の自慢の妹が仲良くなろうとしたんだから、おまえの心が伝わ
ってないわけないよ。麻美ちゃんの気持ちも、察してやりなよ﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
未羽は答えず、黙って俺の胸に顔を伏せていた。
適当に慰めているつもりはなかった。何と言っても、俺が世界一
愛している妹なのだ。未羽に好かれて、それを無下にできる人間が
いるわけない、俺はそう信じていた。
そのとき、テーブルに放り出していた未羽の携帯が鳴った。メー
ルの着信音だった。
俺の身体の上で、未羽がビクッと身体を震わせた。何となく、予
感があった。
未羽は俺の上からどいて、携帯を手に取った。俺もソファの上に
座り直した。
﹁あっ⋮⋮麻美ちゃんから⋮⋮!﹂
未羽が眼を見開く。着信を知らせるメッセージを見つめたまま、
未羽はしばし膠着した。俺も、ぐっと緊張した。
﹁未羽⋮⋮俺も、一緒に、見ていいか⋮⋮?﹂
ごくりとつばを飲む未羽。彼女は、こくり、とうなずいて︱︱も
う、数秒間逡巡したのち︱︱受信のボタンを、押した。メールに件
名はなく、俺たちは、すぐに本文を読んだ。
640
﹃未羽、何も言わずに転校してごめんね。怒ってる?
本当にごめんなさい。未羽にだけは言わなきゃって思ってて、言お
う、言おうって思ってたのに、最後まで言えなかった。
わたし、別れって、本当に苦手なの。どうせ、すぐに音信不通にな
るのが分かってるのに、うわべだけの言葉を言うのが⋮⋮。
でも、未羽は違った。未羽とは、ずっとつながっていたいと思って
る。だから今は、未羽に言わなかったこと、すごく、後悔してる。
今度行く高校には、軽音部があるの。わたし、そこに入ろうと思っ
てる。
未羽と出会って、︱︱たとえ、別れが辛くても、友達作ろうって、
そう思えるようになった。
未羽の住んでる辺りには、たぶんまた寄る機会があると思う。わた
しに愛想尽かしてなければ、また会ってくれるかな? 優しい未羽
のことだから、わたしを許してくれることを期待してるよ。じゃあ、
またね﹄
未羽は、一行一行を確かめるように読んで、ゆっくりとスクロー
ルした。俺もじっくりと、舐めるようにメールを読んだ。
最後まで読み終えると、未羽は、ぐすっ、と鼻をすすった。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮﹂
未羽は座ったまま、俺に抱きついた。胸に顔を押しつけた頃には、
嗚咽をはじめていた。
﹁う、うう⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮あ、麻美ちゃん⋮⋮麻美ちゃん
が⋮⋮﹂
ぽろぽろと涙を流しながら、未羽は俺に抱きついて泣きじゃくっ
た。
﹁ふえ⋮⋮ふえ∼ん⋮⋮! お兄ちゃ∼ん! よかった⋮⋮よかっ
たよ∼!﹂
Tシャツが未羽の涙でびしょびしょに濡れた。俺は彼女を抱きし
めながら、バカのひとつ覚えみたいに頭を撫でた。
641
﹁な? 俺の言ったとおりだったろ? おまえの気持ちが、伝わら
ないはずないって﹂
﹁お兄ちゃ∼ん! ぐすっ、ぐす⋮⋮ふえ∼ん!⋮⋮﹂
号泣する未羽をあやしながら、俺は、ああ、やっぱり俺の妹は世
界一だなあ、と、神様とか、その他もろもろいろんなものに、可愛
い妹を授かったことへの、感謝を捧げた。
おわり
642
︻後日談19︼都合良すぎる俺の彼女
ブックマークを外さず待ってくださった皆様、お礼を申し上げます!
書籍用の加筆や、プライベートではキャトられたりとかいろいろあ
りまして、更新が滞っておりました。
長らくお待たせいたしましたが、後日談19をお届けいたします。
これからも﹃妹痔﹄の応援をよろしくお願いいたします!
******************************
******************
︻後日談19︼都合良すぎる俺の彼女
以前、未羽とのトークで、香奈ちゃんが未羽の物まねをしながら
セックスしてくれた話をしたのを覚えているだろうか? あの話、
妙に読者のみんなのウケが良かったんだよ。
そこで、トークではダイジェストだったので、ここで少しかいつ
まんでその話をしてみようと思う。
都合良すぎる俺の彼女、香奈ちゃんのエピソードだ。聞いてくれ。
☆
俺と香奈ちゃんが付き合いはじめて、一ヶ月くらい過ぎたころだ
ったと思う。
ある土曜日のこと。未羽は友達と遊びに行っていて留守だった。
読者のみんなは、未羽と香奈ちゃんはいつもべったりな印象を持
643
っているだろうが、それぞれ共通ではない友人もいるのだ。
香奈ちゃんは午後、俺の家へやってきた。両親も未羽も留守なの
を知ってのことだ。いつも未羽に会いに来たついでに俺に会ってい
るような感じなので、今日は久しぶりに二人で恋人らしくすごそう
と、気を遣ってくれたらしい。
勝手知ったるなんとやらで、香奈ちゃんはキッチンで茶を入れ、
茶菓子と一緒に俺の部屋に運んできてくれた。
ローテーブルを挟んで座り、紅茶を飲む。俺は、初めて彼女を部
屋に招き入れたチェリーボーイみたいに、軽い緊張を感じていた。
香奈ちゃんは、俺しか家にいないのを知って来ているのだから、
絶対その気はあるはずだ。
ブラウスの胸元をこんもりと盛り上げている巨乳を横目で眺めて
いると、それだけで股間が張りつめてしまう。
そろそろ、さりげなく立ち上がって彼女の隣に座ろうかとタイミ
ングをうかがっていると、香奈ちゃんのほうから話しかけてきた。
﹁お兄さん⋮⋮お兄さんは、まだ未羽とセックスしたいですか?﹂
出し抜けにこんなことを聞いてきた。飲みかけの紅茶にむせ返り
そうになりながら香奈ちゃんを見ると、彼女はなぜか、すまなさそ
うな顔をしていた。
﹁な、何だよ? 藪から棒に﹂
﹁怒ったりしませんから、正直に答えてください﹂
香奈ちゃんは、じーっ、と俺の眼を見つめている。
⋮⋮どのみち、重度のシスコンであることは知られているのだ。
俺は隠し立てしないことにした。
﹁⋮⋮そりゃ、したいよ⋮⋮香奈ちゃんには悪いけど、俺は未羽も
好きだし、香奈ちゃんも大好きだ﹂
俺が有り体にそう言うと、﹃大好き﹄という言葉に反応して、香
奈ちゃんは、ぽわ、と頬を赤らめた。赤くなるところか? ここ?
﹁そうですか⋮⋮そうですよね。別に、謝る必要はないんです。あ
んな可愛らしい子とセックスしたくないなんて言うほうがおかしい
644
んですから。未羽が可愛すぎるから悪いんです﹂
香奈ちゃんはそう言って、小さく溜息をついた。
付き合いはじめたばかりの彼女に向かって、﹃妹とセックスした
い﹄と宣言したら、普通はブチ切れられるだろう。
でも香奈ちゃんは、本当に俺を責める気はないようだった。どえ
らい寛容さだ。
﹁むしろ、わたしのほうがズルイですよね⋮⋮お兄さんには近親相
姦するなと言っておいて、わたしは好き放題未羽とセックスしてい
るんですから﹂
﹁え? そんなこと気にしてたの?﹂
俺と未羽は、どうあっても世間に許される関係ではないし、未羽
と香奈ちゃんはずっと前から仲良しで、そこに俺が割り込んできた
わけで、香奈ちゃんが申し訳なく思う必要など微塵もないだろう。
﹁ちょ⋮⋮香奈ちゃん、そこまで都合良くならなくてもいいだろ?
申し訳なく思う必要なんかないよ。普通、彼氏が妹に欲情してい
ることを知ったら、それだけでジ・エンドだよ。
俺が未羽とイチャつくのを容認してもらってるばかりか⋮⋮その、
ちょくちょく3Pまでしてくれてるんだから、俺としてはありがた
いばかりで⋮⋮﹂
あらためて、俺世界一幸せなんじゃないかと思えてきた。
でも、香奈ちゃんはなおもすまなそうな表情をしたまま、こう続
けたのだ。
﹁お兄さん、未羽と最後にセックスしたの、いつです?﹂
時々していることを前提にした質問だな⋮⋮。未羽から情報は入
ってるはずだから、ここは嘘をつかないほうが賢明だろう。
﹁香奈ちゃんと付き合う、少し前⋮⋮﹂
﹁ああ、猥褻家庭教師のように、勉強を教えながらセックスになだ
れ込んだときですね?﹂
﹁そこまで具体的に話してるのかよ! 未羽は!﹂
いくら親友でレズ友だからって、実兄との性生活を赤裸々に話す
645
なっての⋮⋮。
﹁一ヶ月以上前ですね⋮⋮やっぱり申し訳ないです。わたしと未羽
は、週に二、三回はセックスしているのに﹂
﹁そんなにしてたのか⋮⋮新婚さんか君ら﹂
香奈ちゃんが、うつむき加減だった顔を上げた。もう、すまなそ
うな色はなく、いつものクールな彼女に戻っていた。
﹁わかりました。お兄さんには悪いのですが、これからも近親相姦
は控えてもらわなくてはなりません。ですので、わたしなりのお詫
びをさせてもらいます﹂
膝を立てて、スッと立ち上がる。
﹁未羽の部屋から取ってくるものがあります。お兄さんは服を脱い
で待っていてください﹂
﹁へ? ふ、服?﹂
戸惑う俺に構わず、香奈ちゃんはスタスタ歩いて俺の部屋を出て
行った。
続いて未羽の部屋のドアを開け閉めする音。言葉通り、隣の部屋
へ入ったのだろう。
俺は一人で困った。香奈ちゃんの物言いは明瞭で、﹃服を脱いで
待っていてください﹄とハッキリ聞こえた。
かといって、果たして言葉通り全裸待機でいいのかというと、そ
れもどうだろうと思う。
万一俺の聞き間違いで、香奈ちゃんが戻ってきたとき、﹁何脱い
でるんですか?﹂とか言われたら死にたくなるだろう。
迷った末、妥協案として、俺はパンツいっちょで正座して彼女を
待った。⋮⋮何これ? 罰ゲーム?
ほどなくして、香奈ちゃんが部屋に戻ってきた。手には小さな紙
袋を持っている。
俺のパンツを一瞥し、﹁ああ、下着は脱がなかったんですね﹂と
でも言いたげな表情を見せたが、ノーリアクションだった。
﹁これをつけてください﹂
646
香奈ちゃんは袋から黒いアイマスクを取り出すと、身を屈めて俺
の顔に装着した。鼻のあたりに隙間があるような安っぽいやつでは
なく、作りが立体的になっていて、つけると完全に視界を奪われた。
未羽とどんなプレイをしてんだ? と突っ込みたかったが、スル
ーしておいた。
﹁こちらへ﹂
俺の手を引き、ベッドへとうながす。彼女に導かれるまま、俺は
ベッドに横になった。
眼も見えないので大人しく寝転がっていると、スルスルと衣擦れ
の音が聞こえた。香奈ちゃんが服を脱いでいるらしい。
これは⋮⋮? ﹃お詫び﹄っていうのは、俺が総受けの目隠しプ
レイをしてくれるということなのだろうか?
何をされるのかと思ったが、とりあえず香奈ちゃんとセックスは
できるようだ。俺は期待に胸と股間を膨らませた。
きしり、とベッドが軋んだ。香奈ちゃんがベッドに上がったのだ。
すぐそばに彼女の気配を感じる。
期待に胸が高鳴る。俺は、ごくりと唾を飲んだ。
﹁ふふ、お兄ちゃんったら、もうこんなにおちんちん大っきくなっ
てる。エッチだね∼﹂
﹁えっ!! み、未羽!?﹂
突然未羽に話しかけられて仰天した俺は、素っ頓狂な声を出した。
しかし、俺はすぐに冷静になった。
待て待て待て! おかしい! 今ここに未羽がいるはずがない!
それに、すごく似てるけど、未羽の声色とは少し違う︱︱香奈ち
ゃんが未羽の物まねをしてるのか!?
﹁か、香奈ちゃんなの!? な、何でそんなに未羽の真似上手⋮⋮
!?﹂
﹁む∼﹂と、未羽そっくりの不機嫌そうな声。
﹁香奈ちゃんじゃないよぉ、未羽だもん。ふーんだ、お兄ちゃん、
やっぱりおっぱい大っきい子のほうが好きなんだね?﹂
647
声色もセリフも、未羽そのものだった。何でこんなに上手いのか
驚きだったが、俺は彼女の意図を理解した。
俺に目隠しをして、未羽の声色を使って妹になりきってセックス
してくれるらしい。
こ、恋人なのに、彼氏の妹になりきってセックスしてくれるって
⋮⋮優しすぎるだろ! 香奈ちゃん!
﹁み、未羽! お兄ちゃんは、未羽も香奈ちゃんも大好きだよ! 未羽のちょうど手のひらに収まるおっぱいも、香奈ちゃんの巨乳も
大好きだ!﹂
んっふっふ∼、と、未羽は︱︱もうここからは、﹁香奈ちゃんの
物まね未羽=未羽﹂ということにする︱︱未羽は、楽しそうに笑っ
た。
﹁そうだよね∼、お兄ちゃん、あたしのことも大好きだもんね∼。
今日は久しぶりに、いっぱいエッチしよ、お兄ちゃん♡﹂
未羽が俺に覆い被さり、ギュッと抱きついてきた。肌と肌が密着
し、彼女の体温が伝わってくる。夢のような心地良さだ。
小柄な香奈ちゃんの身体は、未羽の身体付きによく似ていた。頭
を撫でると、長さは違うけど髪がサラサラで、本当に未羽を抱いて
いるような気持ちになった。
唯一の明白な違いは、俺の胸板に押しつけられている巨大な膨ら
みだ。未羽の身体に巨大なおっぱいがついている。それは不思議な
感覚だった。
未羽が、手を突いて上半身を起こす。
﹁お兄ちゃん、未羽のおっぱい、触って﹂
未羽が俺の手を取り、胸へと導く。巨大なプリンのような塊を、
俺は両手でふよふよと揉んだ。
﹁ああ、未羽、おまえ、いつの間にこんなにおっぱいが大きくなっ
たんだ?﹂
﹁あふっ⋮⋮お兄ちゃんのこと考えながら、毎日オナニーしてたら、
こんなに大っきくなっちゃったんだよぉ⋮⋮あぁ、お兄ちゃん、未
648
羽のおっぱい、舐めてぇ﹂
未羽は俺の顔におっぱいを押しつけた。俺は夢中で乳首にしゃぶ
りつき、れろれろと舐めまわした。
﹁あっ、あぁん! おっぱい、気持ちいいよぉ⋮⋮! お兄ちゃん、
もっとぉ⋮⋮!﹂
﹁おお⋮⋮! 未羽、気持ちいいのかい? もっと、もっと舐めて
あげるよ∼!﹂
俺は必死になって、犬のように未羽のおっぱいを舐めまわした。
未羽は俺の上で、ときおりビクッと身体を震わせた。
﹁あんっ⋮⋮! はぁっ! お、お兄ちゃぁん⋮⋮!﹂
気持ち良すぎて上体を起こしていられなくなった未羽が、俺に身
体を重ねてきた。俺は彼女をギュッと抱きしめ、ごろんと回って体
勢を上下入れ替えた。
﹁未羽⋮⋮!﹂
未羽に覆い被さった俺は、手探りで顔の位置を把握すると、渇き
を癒やすように激しいキスをした。
﹁はぅっ⋮⋮! お兄ちゃん⋮⋮!﹂
すぐに舌を潜らせ、未羽の小さな舌に絡める。久しぶりに味わう
妹とのべろちゅーは、甘くとろけるようだった。彼女も舌を動かし
て応えてくれて、柔らかな感触に、俺は陶然となった。
俺は満足するまでしつこく未羽の唇を吸い続けた。ようやく口を
離したときには、彼女は息も絶え絶えになっていた。
﹁はぁ、はぁ、はぁ⋮⋮お兄ちゃんのキス、すごすぎるよぉ⋮⋮﹂
﹁未羽! ああっ、未羽っ! なんて可愛いんだ!﹂
俺は再びおっぱいにしゃぶりつき、乳首を舐めまわした。敏感に
未羽が反応する。
﹁あっ! ふわぁ⋮⋮あっ、はぁんっ⋮⋮! お兄ちゃぁん⋮⋮!﹂
おっぱいからわき腹、わき腹から下腹部、内ももへと、俺は徐々
に攻める部位を下降させていった。
﹁はぁっ⋮⋮んっ、あぁ⋮⋮っ⋮⋮はぅ⋮⋮﹂
649
未羽は切ない声を漏らし続けている。しかし、俺は焦らし作戦を
開始していた。
わざとおっぱいやおまんこを避けて愛撫を続ける。そのうち、未
羽は物足りなさを感じはじめたらしく、あえぎ声に甘えるような声
が混じってきた。
じっくりと焦らしてから、偶然のように、少しだけスリットに指
を触れてあげたら、彼女の身体がビクッと跳ねた。
﹁あんっ!⋮⋮﹂
やっとおまんこを弄ってもらえる⋮⋮未羽はそう期待しただろう
が、俺はまだ焦らし作戦を継続し、脚の付け根や内ももを舐め続け
た。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮あぁっ⋮⋮﹂
もの欲しそうな顔で、未羽が俺を見つめる︱︱いや、アイマスク
してるから見えないんだけど、きっとそんな表情をしてたと思う。
﹁⋮⋮お、お兄ちゃん⋮⋮も、もう⋮⋮ちょうだい⋮⋮欲しいの⋮
⋮﹂
﹁ん? なんだい? 未羽?﹂
わざとらしく、俺は聞いた。
未羽は羞恥にカ∼ッと顔を染めて︱︱たぶんそんな顔をして、俺
におねだりした。
﹁お、お願い⋮⋮もう、舐めてよぉ⋮⋮! いじわるしないでぇ⋮
⋮﹂
﹁どこを舐めるんだい? はっきり言ってごらん、未羽﹂
﹁も∼っ⋮⋮!﹂
未羽はさらに顔を赤くして︵たぶん︶、大きな声で言った。
﹁未羽の⋮⋮未羽のおまんこ舐めてぇ! いっぱい、ぺろぺろして
ぇ!﹂
その言葉を聞くだけで、俺は射精しそうになった。
でも、すぐには舐めてやらなかった。今日はせっかく香奈ちゃん
が未羽に扮してくれているのだ。このチャンスに普段の未羽になら
650
できないことをしてやろうと思った。
﹁未羽、四つん這いになってごらん﹂
﹁え⋮⋮? よ、四つん這いに⋮⋮!?﹂
我慢できずクンニをおねだりする未羽に、俺は意地悪な指示を与
えた。
四つん這いは未羽が一番恥ずかしがるポーズだ。香奈ちゃんも心
得たもので、俺がそれを要求すると過剰な反応を示した。
﹁そ、そんな⋮⋮! いやぁ、恥ずかしい!﹂
﹁四つん這いにならないと、おまんこ舐めてやんないぞ。そら、い
い子だから﹂
俺は彼女の身体の下に手を差し入れ、ころん、とうつ伏せにひっ
くり返した。
﹁きゃんっ!﹂
さらに、腰をつかまえ、尻を引き上げる。顔はベッドにつけて、
尻だけを高く持ち上げているポーズができあがった。四つん這いど
ころではないいやらしさだ。見えないけど。
﹁やっ!⋮⋮いやぁん! こ、こんな格好、恥ずかしい!﹂
﹁おお、未羽⋮⋮! おまんこもお尻の穴も丸見えだよ。なんてい
やらしいんだ⋮⋮!﹂
アイマスクで見えないのだが、俺はそう言って未羽の羞恥をあお
った。
﹁やぁん⋮⋮! お兄ちゃん、エッチなこと言わないでぇ⋮⋮!﹂
﹁はぁ、はぁ⋮⋮未羽、いま舐めてやるからな⋮⋮!﹂
俺は身を屈めて、未羽のおまんこにしゃぶりついた。
﹁あっ!⋮⋮あぁん!﹂
待ち望んでいた快感を与えられた彼女が、歓喜の声をあげる。す
でに蜜に潤んでいたそこを、俺はべろべろと荒っぽく舐めまわした。
﹁あっ、ふわぁっ! んっ、あぁん⋮⋮! お兄ちゃぁん⋮⋮!﹂
﹁ああ、未羽⋮⋮! 愛してるよ!﹂
俺は無茶苦茶興奮して、クリトリスを転がしたり膣口に舌をねじ
651
込んだりと、夢中でおまんこを舐めた。
﹁だめぇ﹂とか﹁恥ずかしい﹂とか言いながらも、彼女のおまん
こからはとろりとした蜜が溢れだしてくる。羞恥心が快感を倍増さ
せているのだろう。
﹁あぁっ、やぁん! あふっ⋮⋮す、すごい⋮⋮あぁっ、気持ちい
いよぉ⋮⋮!﹂
未羽は絶え間なくあえぎ声をあげ続けている。クンニだけでは物
足りないだろうと、俺は指を二本揃えて、膣口に当てた。
﹁あっ⋮⋮!﹂
指の感触に気づいた未羽が、ぴくん、と身体を震わせた。抵抗し
たりはせず、彼女は早く欲しいとばかりに尻を軽く左右に振った。
期待に応え、俺は指二本を未羽の中へと潜り込ませた。熱い体温
が俺の指を迎え入れる。
﹁あっ! あぁんっ!!﹂
不自由な体勢のまま、未羽が背をのけ反らせた。
充分にほぐれていたそこは、俺の指を呑み込んでとろけるような
膣壁をまとわせてくる。
じゅぷじゅぷと抽挿を開始すると、彼女はあられもなくあえぎ声
をあげた。
﹁あぅっ!⋮⋮はぁっ、あぁんっ! あっ、あっ⋮⋮くっ⋮⋮あぁ
んっ!﹂
指を軽く曲げて、彼女の好きなところを刺激してやる。未羽の身
体が、電流を流したようにびくん、びくんと震えた。
﹁あっ⋮⋮あぁっ⋮⋮! い、いいよぉ、お兄ちゃん⋮⋮! も、
もう⋮⋮﹂
え? ﹁もう⋮⋮﹂って、もうイキそうなのか?
うーむ、未羽の中の人であるところの香奈ちゃんは、羞恥プレイ
大好きなドMさんだからな。未羽になりきり、一番恥ずかしいポー
ズでおまんこを弄られ、著しく感度が高まっているのかもしれない。
そのとき、俺の膝に何かごわごわした物が当たった。
652
見えなくても、何なのかはすぐにわかった。香奈ちゃんが未羽の
部屋から持ってきた紙袋だ。膝に当たった感じだと、他に何か入っ
ているようだ。
俺は指の抽挿を続けながら、もう一方の手でアイマスクをほんの
少し上にずらし、紙袋の中身を確認した。
袋の中には、コンドームとローションと、この前電車でのプレイ
に使ったリモコンバイブが入っていた。自分で用意するのかよ⋮⋮
どんだけMなんだ?
まあいい、ローションとバイブが入っていたのは、俺にとって都
合が良かった。
リモコンバイブを手に取ると、俺はアイマスクを元に戻した。未
羽の中に収まっていた指を、ぬるりと引き抜く。
﹁あっ⋮⋮! お、お兄ちゃん? やめないで⋮⋮﹂
首を捻ってこちらに顔を向ける。眉が八の字になって、すごく物
欲しそうな顔をしていた︵見えないので想像である︶。
﹁ちょっと待って、未羽。すぐにいい物をあげるからね﹂
俺はバイブの先端をおまんこに当てた。
﹁あっ! お、お兄ちゃん、それ⋮⋮!﹂
﹁ほら、いくよ﹂
バイブを、ずにゅうっ⋮⋮と挿入する。遠吠えする犬のように、
未羽が背をのけ反らせた。
﹁あうぅっ! あっ⋮⋮はぁん!﹂
﹁未羽、もっと気持ち良くなるよ﹂
紙袋の中から手探りでリモコンを探し出し、俺はスイッチを入れ
た。
彼女の中で、バイブがぐりんぐりんと頭を回し出した。未羽は叫
ぶように声をあげた。
﹁あっ! あぁんっ! だっ、だめぇっ! は、激しすぎ⋮⋮あぁ
っ!﹂
前に電車プレイしたときにも思ったのが、このバイブ、彼女の気
653
持ちいいところにジャストミートのようだ。
未羽は激しく身をよじり、あられもない声を出して悶えた。
﹁あっ、だ、だめぇっ! お、おかしくなっちゃう⋮⋮! ふわぁ
っ、あぁっ!﹂
﹁おお、未羽⋮⋮こんなに感じて、なんていやらしいんだ! よし、
お兄ちゃんが、もっと気持ちいいことをしてあげるからね!﹂
俺はまた手探りで紙袋をまさぐった。ローションのボトルを探し
出し、キャップを開けて中身を手のひらに捻り出す。
たっぷりとローションを手に乗せると、俺はそれを未羽の尻にぺ
とりと塗りつけた。もちろん、アナルを中心にだ。
﹁えっ⋮⋮!? お、お兄ちゃん!?﹂
未羽が焦って首を捻り、俺の方を向いた︵たぶん︶。
﹁未羽、お兄ちゃんがいいものをあげるからね。未羽は香奈ちゃん
にしてあげたことはあっても、自分で体験するのは初めてだろう?﹂
そう言いながら、俺は手のひらに残ったローションをペニスに塗
りつけた。俺のイチモツはビンビンに勃起して、ローションで怪し
げにてらてらと輝いている。すごく凶悪な感じだった。
﹁やっ⋮⋮! いやぁっ! だめぇっ! み、未羽、また切れ痔に
なっちゃうよぉ!﹂
未羽は怯えて、四つん這いで這って逃げようとした。
中の人である香奈ちゃんは妹にアナルを開発されまくっているの
に、未羽になりきっている今は本気で怖がっていた。迫真の演技だ。
俺は逃げ出そうとする彼女の腰をつかまえて引き戻した。ベッド
のシーツが引きずられてぐしゃぐしゃになった。
﹁いやあっ! お、お兄ちゃん、だめぇっ! お尻はだめぇっ!﹂
﹁大丈夫だよ、未羽。もう切れ痔はすっかり治ってるから。お兄ち
ゃんが、未羽に新しい世界を教えてあげるよ﹂
﹁やだぁっ! こ、怖いよぉっ!﹂
未羽は暴れて抵抗したが、しっかりと腰を抱くと、もう逃げられ
なくなってしまった。
654
もっとも、中の人であるところの香奈ちゃんが本気で抵抗したら、
俺などスライムよりもあっけなくボコボコにされてしまうだろう。
香奈ちゃんは、自分の意志で俺に従っているのだ。
だから、これはレイプじゃないんですよ。あくまでイメージプレ
イです。
俺は、ペニスの先端をアナルに当てた。﹁ひっ!﹂と声をあげ、
未羽がビクッと身体を震わせる。
﹁お、お兄ちゃん! お願い、やめてぇ! こ、怖いよぉ!﹂
﹁大丈夫だよ、未羽、お兄ちゃんを信じて﹂
怯える未羽に構わず、俺は腰を前進させた。
ほぐしてもいなかったのでさすがに入りづらかったが、ぐっと力
を入れると、ぬぷっ、と亀頭がアナルへともぐり込んだ。直腸がギ
ュッとペニスを締めつける。
﹁あぁっ! ほ⋮⋮本当に入って⋮⋮だ、だめぇっ! そんな大っ
きいの、入んないよぉ!﹂
﹁ゆっくりやるから、大丈夫だよ⋮⋮力を抜いて、お兄ちゃんのち
んちんを受け入れるんだ﹂
﹁やあぁぁ! こ、壊れちゃうよぉ⋮⋮!﹂
香奈ちゃんが真に迫って演技するので、俺はリアルに未羽の尻を
犯しているような気持ちになった。本当に切れ痔になりやしないか
と不安になり、俺は優しく、ゆっくりと腰を進めた。
﹁あっ⋮⋮あっ、あっ、入ってくるよぉ⋮⋮やあぁ⋮⋮!﹂
しかし、そこは香奈ちゃんの尻穴なので、おまんこよりはずっと
キツいものの、彼女の肛門は難なく俺のペニスを根元まで飲み込ん
だのだった。
香奈ちゃん十六歳なんだけど、すっかりアナル開発されてるのな
⋮⋮。俺の妹、マジでエロエロ大魔王だ。
﹁ほら、未羽、全部入ったぞ! お兄ちゃんが言ったとおり、大丈
夫だろう?﹂
﹁いやぁん、は、入ってもだめぇ⋮⋮! お、お兄ちゃん、もう抜
655
いてぇ!﹂
抜いてと言われても、おまんこに入れたバイブのうねりが膣壁を
通して伝わってきて、ただ入れているだけでも気持ちいいのだ。こ
こでやめられるわけがない。
﹁何を言ってるんだ、これからじゃないか。さあ、動かすよ﹂
俺はゆっくりと抽挿を開始した。腸壁がギュッと締めつけてきて、
刺激がすごい。
たっぷりとローションを塗り込んだおかげで、出し入れはスムー
ズだ。動かしているとさらにローションがなじんで、滑らかな感触
になってきた。バイブのうねりも伝わってきて、すげぇ気持ち良か
った。
﹁ああ、未羽、気持ちいいよ、未羽のお尻、最高だ!﹂
﹁あっ、あんっ、はうぁっ⋮⋮! いやぁん、お兄ちゃんのいじわ
るぅ⋮⋮あぁっ!﹂
口ではそう言いながらも、未羽もバイブ&アナルファックの同時
攻撃で、堪らなく感じているようだった。最初は抵抗のそぶりを示
していたのに、今は俺に尻穴を貫かれるがままだ。
抽挿に伴うじゅぽじゅぽという音と、俺の下腹部が尻に当たって
パンパンいう音が、狭い部屋の中に響き渡る。AVの撮影現場みた
いだった。
﹁うあ⋮⋮あっ、はぁっ、あぅん⋮⋮! も、もう、だめ⋮⋮イ、
イっちゃう⋮⋮! あぁっ!﹂
クンニとバイブですでに登りつめそうになっていた未羽が、早く
も絶頂を迎えそうになっていた。
アナルの刺激が強すぎて、俺もそろそろやばくなってきたところ
だ。一緒にフィニッシュを迎えようと、俺はさらに抽挿を激しくし
た。
﹁ああ、未羽、未羽ぅ! 気持ちいいのかい? お兄ちゃんもイっ
ちゃいそうだよ! あっ、ああっ! い、一緒にイこう!﹂
﹁ふわぁっ、あぁんっ! お、お兄ちゃん⋮⋮未羽、イっちゃう⋮
656
⋮イっちゃうのぉ! あぁんっ!﹂
俺は未羽の尻をがっしりと抱いて、思うさま腰を振った。いやら
しい水音が部屋の中でこだまする。
蟻の門渡りの辺りから熱いものがこみ上げてきた。未羽も身体が
強く強ばってきていて、絶頂が目の前なのが感じられた。
﹁あぁ⋮⋮! 未羽、イクよぉ!﹂
﹁あぁっ! あぁ、お、お兄ちゃん⋮⋮一緒に、一緒にぃ!﹂
ラストスパートをかける。頭の中で花火が打ち上がったような感
じがして、俺は未羽の尻穴に盛大に射精した。
﹁あっ⋮⋮お兄ちゃんの熱ぅい! あぁっ、はあああぁぁぁぁぁぁ
んっ!!﹂
同時に未羽も絶頂に達した。射精の脈動に同調するように、びく
ん! びくん! と大きく身体を震わせる。
﹁あっ⋮⋮あぁっ⋮⋮はあぁ⋮⋮﹂
未羽の絶頂は長く続いた。彼女が身体を震わす度に腸壁が収縮し
て、俺は最後の一滴まで精を絞り取られた。
﹁はぁっ⋮⋮ふわぁ⋮⋮⋮⋮﹂
ようやく快感の波が過ぎ去ると、未羽は脱力して、ぱたりとベッ
ドに倒れ込んだ。
精液を出し切って萎んだペニスが、にゅるんとおまんこから抜け
た。
﹁はぁ、はぁ、はぁ⋮⋮未羽⋮⋮あぁ、すごかった⋮⋮﹂
全力疾走した後みたいに荒い息をしながら、賢者タイムを迎えた
俺はアイマスクを外した。
乱れたベッドの上には、香奈ちゃんが横たわっていた。
火照った顔と身体が、汗ばんで桃色に染まっている。はぁ、はぁ
⋮⋮と、小刻みに肩を上下させて息をしているのが、昼寝してる猫
みたいで可愛かった。
バイブは自分で抜いたのか自然に抜けたのか、足元に転がってウ
ィンウィンと唸っていた。リモコンでスイッチを切ると、部屋に静
657
寂が訪れた。
今、ベッドに横になっているのが香奈ちゃんであることが、当た
り前なのに不思議な心地がした。
香奈ちゃんの物まねが上手すぎるものだから、途中から本当に未
羽とセックスしているような気になっていた。
調子に乗って、リアル未羽なら絶対拒否する四つん這いとアナル
セックスまでしてしまった。正直、めちゃくちゃ興奮した。俺の心
の奥に潜むSな部分が充足された思いだ。
もう、ベッドの上に未羽はいない。でも、喪失感は全然なかった。
代わりにベッドに横たわっているのは、未羽にまったく引けをと
らないほど可愛らしく、メロンみたいな巨乳を備えた女の子だ。
この美少女が、俺の恋人なのだ。喪失感など感じようはずもなか
った。俺はあらためて、可愛い妹と可愛い彼女に恵まれたことに感
謝した。
﹁⋮⋮ふう⋮⋮もう、お兄さんったら⋮⋮﹂
呼吸を落ち着けた香奈ちゃんが、ゆっくりと身を起こした。いつ
ものクールな顔に戻っていたが、どこか恥じらっているような色が
隠れていた。
﹁激しかったですね。どうでしたか? わたしの未羽の真似は?﹂
人魚みたいなポーズで座って、俺に感想を聞く。
﹁﹃どうでしたか﹄も何も、そっくりだったよ⋮⋮声だけじゃなく
てセリフもまんま未羽だったし、小柄な身体付きも似てるし、本当
に未羽とセックスしてるみたいだった。久しぶりに妹とセックスで
きたよ、ありがとう﹂
俺が率直に礼を言うと、香奈ちゃんは苦笑を浮かべた。
﹁中身があたしだと思って、やりたい放題でしたね。未羽にあんな
ことしちゃだめですよ﹂
﹁ご、ごめん! 調子に乗りました。乱暴にしてごめんなさい!﹂
やりすぎだったと反省して、おれは頭を下げた。
香奈ちゃんは、こほん、と小さく咳をして、なぜか頬を赤らめた。
658
﹁べ、別に乱暴ってことは⋮⋮み、未羽に無理やりアナルを攻める
ようなことをしてはいけないってことを言いたかっただけですから
⋮⋮謝ることは、ないんです﹂
乱暴にするのはいいのか⋮⋮やっぱりアナルを犯されて嬉しかっ
たんだな。ブレないドMっぷりだな、香奈ちゃん。
﹁えーと、それで⋮⋮俺、風呂入ってチンコきれいにしてくるから、
香奈ちゃんがよければ、もう一戦付き合ってもらえませんか⋮⋮?﹂
俺がそう頼むと、彼女は戸惑うような顔をした。
﹁もう一回ですか? あんなに盛大に射精したのに、元気ですね。
そうですね、今日は貴重な機会ですから、もう一度未羽の真似をし
てあげてもいいですよ﹂
﹁いや、そうじゃなくて、今度は香奈ちゃんと、香奈ちゃんのまま
でセックスしたいんだ﹂
ぶわっ、と顔を真っ赤にする香奈ちゃん。時々、チョロすぎて心
配になるよ、この子⋮⋮。
﹁なっ⋮⋮そ、そんな、無理しなくても、せっかく未羽がいないん
ですし﹂
﹁違うって、俺は香奈ちゃんとセックスしたいの。さっきも言った
けど、俺は未羽も好きだし、香奈ちゃんも大好きなんだよ。俺、香
奈ちゃんとセックスしたい﹂
香奈ちゃんは頭から湯気を出し、ますます顔を赤らめた。これだ
け変態的なことをいつもされてて、よくこんな純情ところが残って
るよなぁ、と感心する。
﹁ううう⋮⋮そんなストレートに⋮⋮わ、わかりました。セックス
しましょう。わ、わたしもお風呂入ります。どろどろになっちゃっ
たから⋮⋮﹂
彼女は恥ずかしがりながらそう言った。デレると本当に可愛いな、
香奈ちゃん。
と、そのとき、俺の携帯の着信音が鳴った。大きな音量にしてい
たので、二人ともビクッとしてしまった。
659
慌てて携帯を手に取ると、未羽からのメールだった。件名は﹁小
学生可愛い♡﹂だ。何だこの犯罪臭のする件名は⋮⋮?
香奈ちゃんが横からのぞき込んでくるので、俺は彼女にも見える
ようにして、メールを開いた。
﹃今日は文芸部の友達と一緒に、学童保育園で絵本の読み聞かせ会
やったよ。子供たち可愛いの♡﹄
メールには写真も添付されてて、小学一年生くらいの子供たちに
囲まれて嬉しそうにしている未羽が写っていた。文芸部の友達とや
らに撮ってもらったのだろう。
﹁何の用事で出かけてるのかと思えば、こんなことやってたのか⋮
⋮﹂
﹁わたしも聞いていませんでした。急に誘われたのでしょう﹂
休みの日にボランティアで子供たちに絵本の読み聞かせか⋮⋮。
エロエロ大魔王の印象が強すぎる未羽だが、外見だけじゃなくて、
中身も天使のようにいい子なんだよなぁ⋮⋮。
﹁何だか、ちょっとすまない気持ちになってきた⋮⋮﹂
未羽がこんな慈善活動をやってる間に、恋人に妹の物まねしても
らいながらアナルファックって、何してんだ俺?
﹁わたしもです⋮⋮未羽、﹃未羽のおまんこ舐めてぇ﹄とか言って
ごめんなさい⋮⋮﹂
うなだれてしまう香奈ちゃん。うーん、香奈ちゃんのほうが罪悪
感は大きいかもしれない。
﹁まあ、直接悪いことをしたわけではないから、あまり気に病むの
はやめよう。それじゃあ、お風呂入ってもう一戦交えようか?﹂
気を取り直して俺がそう言うと、香奈ちゃんはジト眼で俺を睨ん
だ。
﹁この流れでそうきますか⋮⋮鬼畜ですか? お兄さん?﹂
﹁いや、まあ、その、毒を食らわば皿までというか、ここで俺たち
660
がセックスするのをやめても未羽には何のメリットもないわけだし、
俺のチンコもそろそろ復活してきたし﹂
あれほど勢いよく射精した後だというのに、香奈ちゃんの裸を眺
めているうちに、俺のペニスは再び固さを取り戻し始めていた。我
ながら節操のない下半身だ。
香奈ちゃんは、諦観の大きな溜息をついた。
﹁野良犬のような性欲ですね⋮⋮兄妹揃ってエロエロ大魔王ですか。
いいでしょう。これも変態兄妹と関わったわたしの業です。お相手
しましょう﹂
﹁ありがとう⋮⋮いろいろ突っ込みたいことあるんだけど、スルー
しておくよ﹂
変態であることに関しては香奈ちゃんも負けず劣らずだと思うん
だけど⋮⋮。
しかし、彼女が﹁業﹂と言うとおり、俺たち兄妹が香奈ちゃんと
出会ったのは、神が導いた運命だったのかもしれない。そう考える
と、やっぱり俺は幸運だなぁ、と思えるのだった。
☆
そうして、俺は香奈ちゃんと一緒にシャワーを浴びて、素の香奈
ちゃんともう一戦交えたのでした。
どこまでも都合の良い、俺の彼女のエピソードだ。聞いてくれて
ありがとう。また面白い話が合ったら報告するよ。では、アディオ
ス。
661
︻SS︼浴衣とお約束︵前書き︶
﹃妹が痔になったので座薬を入れてやった件﹄発売日が決まりまし
た!
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書籍化記念に、エロ無しですが、短いお話をお届けします。
662
︻SS︼浴衣とお約束
たまには思い出話でもしてみようかと思う。半年くらい前、香奈
ちゃんのM性が徐々に明らかになってきた頃の話だ。
休日の昼下がり。未羽は浴衣姿で、リビングのソファに腰掛け、
くつろいでいた。
お祭りがあるので、香奈ちゃんと一緒に出かけるのだという。香
奈ちゃんも浴衣を着てうちに来る予定だ。
浴衣の未羽を、俺は眼を細めて眺めていた。明るい花柄の模様が
よく似合っている。浴衣って、何でこんなにも女の子を可愛く見せ
るのだろう。
玄関のチャイムが鳴った。
﹁あ、香奈ちゃんだ﹂
未羽が立ち上がって玄関にかけていく。
俺もあとから玄関に向かった。香奈ちゃんの浴衣姿も見ておかな
くてはもったいない。
廊下を曲がって玄関へ行くと、たたきに香奈ちゃんが立っていて、
未羽と話をしていた。
おお⋮⋮若干胸が大きすぎるきらいがあるが、香奈ちゃんの浴衣
姿も、期待を裏切らず可愛らしい。
紺色に白抜きの雪花文様。落ち着いた感じが、彼女によく似合っ
ていた。
﹁こんにちは、お兄さん﹂
愛想笑い無しで、軽く頭を下げる香奈ちゃん。うん、いつもどお
りクールだ。
﹁こんにちは、香奈ちゃん。浴衣よく似合ってるよ﹂
俺がそう言うと、香奈ちゃんはポッと頬を赤らめ、﹁⋮⋮ありが
663
とうございます﹂と言った。うん、いつもどおりのツンデレ反応だ。
﹁二人ともよく似合ってて、可愛いんだけど⋮⋮可愛すぎて、心配
になるレベルだ。俺、一緒について行こうか?﹂
こんな可愛い浴衣姿の女の子が二人で歩いてたら、ナンパしてく
れと言ってるようなもんだ。変な男に引っかからないように、俺が
番をしなくては、思ったのだが。
﹁クラスの子たちも一緒にいくんだよ、お兄ちゃん。さすがに下級
生の女子グループと一緒にお祭り歩けないでしょ?﹂
﹁しかし⋮⋮おまえたち、100%ナンパされるぞ?﹂
﹁大丈夫です、わたしがいますから。未羽のことは心配しないでく
ださい﹂
香奈ちゃんは引き締まった顔でそう言った。そういや、香奈ちゃ
んは空手の有段者だ。
﹁未羽のことだけ心配してるんじゃないんだが⋮⋮まあ、香奈ちゃ
んがいるなら大丈夫か。くれぐれも、変な男についていったりしな
いようにしてくれよ﹂
﹁そんなビッチな真似はしません。心配ご無用ですよ。⋮⋮ところ
で、ちょっと未羽、耳貸して⋮⋮﹂
香奈ちゃんは未羽を呼び寄せると、未羽の耳元に口を寄せて、何
事かこそこそとつぶやいた。頬が微かに赤くなっていた。
﹁えー、いいじゃん、そのままで﹂
香奈ちゃんの話が終わると、未羽は面白そうな顔でそう言った。
﹁そ、そんな⋮⋮! お祭りの間中こうしてなさいって言うの?﹂
香奈ちゃんが眉を八の字にして困り顔で返す。話の内容が全然わ
からなかった。
﹁どうかしたのか?﹂
女子の会話に割って入るのも無粋かとは思ったが、力になれるこ
とがあればと思って、俺はそう訪ねた。
﹁香奈ちゃん、浴衣だから今日はノーパンにチャレンジしてみたそ
うなんだけど、いざやってみるとドキドキして、うちに来るまでの
664
間にもう濡れちゃったんだって。だからパンツ貸してちょうだいっ
て﹂
﹁どうしてお兄さんに言っちゃうのよ!? 未羽!!﹂
ひそひそと耳打ちした意味が全くなかった。素晴らしい妹だ。
﹁あ、ごめん、口止めされなかったから、話していいのかと思って﹂
未羽はしれっとした顔で言った。
﹁あ、あなた⋮⋮どうしてわたしが耳打ちしたと⋮⋮﹂
香奈ちゃんはがっくりと肩を落とし、完熟トマトみたいに顔を真
っ赤にして、頭から蒸気を出した。
﹁お、お兄さん! こ、これは、下着をはいてない無防備な感覚に
身体が防衛反応を示しただけで、け、決して⋮⋮﹂
言い訳になっていない言い訳をする香奈ちゃんだった。彼女がド
Mなことは熟知しているので、俺はあんまりいじめないことにした。
﹁うん、わかってるよ、香奈ちゃん。君に露出癖とかないのは、よ
く知ってるから﹂
﹁うう⋮⋮﹂
釈然としない顔をして、香奈ちゃんはますます顔を赤くした。香
奈ちゃんの羞恥顔、堪らんなぁ。
﹁香奈ちゃん、あたしもパンツはいてないよ。だから平気だよ。さ
あ、お祭り行こう?﹂
未羽は玄関に下りて下駄を履くと、香奈ちゃんの手を引いた。
﹁え? ええ!? こ、このまま行くの!? ちょ、ちょっと、未
羽⋮⋮!﹂
﹁みんな待ってるよ。早く合流しなきゃ﹂
うろたえる香奈ちゃんに構わず、未羽は彼女の手を引いて、強引
に連れ出していった。
香奈ちゃんが振り向いて、俺にすがるような視線を向けたが、俺
は微笑んで手を振り、彼女たちを見送った。
俺が頼りにならないことにショックの表情を浮かべると、香奈ち
ゃんは諦観を溜息をつき、未羽に手を引かれ出かけていった。
665
☆
夜の九時頃になって、未羽と香奈ちゃんは帰ってきた。俺は玄関
に迎えに出た。
﹁香奈ちゃん、今日お泊まりするから﹂
玄関で未羽はそう言った。いつもの手ぶらお泊まりだ。こいつら、
服も下着も平気で貸し借りするんだよな。男友達なら絶対無い感覚
だ。
未羽の後ろで、香奈ちゃんはほわほわと顔を赤らめていた。
うん、一日中ノーパンだったから、彼女のおまんこはさぞかしじ
っとりとしていることだろう。ドMの香奈ちゃんにとって、今日は
良い日だったに違いない。
﹁うん、いっぱい遊んで、疲れたろ。香奈ちゃん、お風呂入って、
ゆっくりしなよ﹂
﹁⋮⋮お世話になります﹂
元気な未羽と、赤ら顔の香奈ちゃんは、階段を上って未羽の部屋
へと向かった。階段を登るとき、浴衣姿の小振りのお尻が揺れるの
が、すごく可愛かった。
☆
﹁お兄ちゃーん、ちょっと来てー!﹂
彼女たちが二階に上がってしばらくすると、未羽が俺を呼ぶ声が
聞こえた。
まだ風呂も入ってないのに、何の用かと訝しがりながら、おれは
666
未羽の部屋へと向かった。
コンコン、と戸をノックする。
﹁未羽、入るぞ?﹂
ドアを開けると、まだ浴衣姿の香奈ちゃんと、白い肌襦袢姿の未
羽がいた。
ちなみに肌襦袢の未羽は、すっごく無防備でエロくって、俺は瞬
時にフル勃起していた。
﹁お兄ちゃん、﹃あ∼れ∼!﹄って男の夢でしょ? 香奈ちゃんで
させてあげる﹂
﹁何⋮⋮? ﹃あ∼れ∼!﹄って?﹂
何となく予想はついているが。
﹁香奈ちゃんの帯、くるくる∼って引っ張って。あたしはね、いま
香奈ちゃんにしてもらったの。楽しかったよ﹂
どういう遊びをしてるんだおまえら⋮⋮。でもまあ、着物を着た
ら試してみたくなる気持ちは、よくわかる。
﹁い、いいの? 香奈ちゃん?﹂
香奈ちゃんは、ぼわっ、と顔を赤らめた。
﹁ま、まあ⋮⋮中はちゃんと肌襦袢を着ていますし、浴衣が脱げて
も、特に問題はありません﹂
香奈ちゃんはそう言って、帯の中に隠していた紐の結び目を解い
た。
彼女たちが着ているのは、ワンタッチ帯ってやつで、リボンみた
いに結ばれた帯が脱着できて、初心者でも簡単に着付けができるや
つだ。所々にある止め紐を解けば、帯がフリーになる。
﹁よ、用意できました⋮⋮どうぞ﹂
緩めた帯の端を、俺に差し出す。未羽はわくわく顔をしていた。
﹁香奈ちゃん、ちゃんと﹃あ∼れ∼!﹄って言うんだよ﹂
﹁わ、わかったわよ﹂
俺は帯の端をつかみ、スタンバイした。
﹁じゃあ、いくよ、香奈ちゃん﹂
667
﹁は、はい﹂
俺は勢いを加減しながら帯を引いた。簡易な帯なので、せいぜい
一回転半くらいなのだが、香奈ちゃんは律儀に身体を回してくれた。
﹁あ、あ∼れ∼!﹂
香奈ちゃんはよろけて、体勢を崩した。
空手で体幹ができあがっている彼女は、この程度でよろけるはず
はないのだが、それでも香奈ちゃんは足をもつれさせ、こてん、と
尻もちをついたのだった。
﹁痛たた⋮⋮﹂
腰をさする香奈ちゃんの前で、俺は目を皿のようにしていた。
浴衣と肌襦袢がはだけて、彼女の大事な部分︱︱つるつるのあそ
こが、丸見えになっていた。
一日中ノーパンで羞恥プレイを続けた彼女のあそこは、しっとり
と潤んでいて、果てしなくエロかった。
﹁え⋮⋮? ひっ⋮⋮! きゃああぁぁぁぁ!!!﹂
あそこを見られていることに気づいた香奈ちゃんは、バネのよう
な勢いで立ち上がり、俺に掌底突きを放った。額に衝撃を受け、脳
震盪を起こした俺は一瞬で気を失った。
︱︱と、まあ、こういう他愛もない話だ。
俺が眼を覚ましたのは翌朝で、未羽と、お泊まりした香奈ちゃん
と一緒に、何のわだかまりもなく朝食を食った。この程度のことで
俺と香奈ちゃん間にひびが入るはずもなかった。
﹁香奈ちゃん、昨日はいいものを見せてくれてありがとう。さっそ
く起き抜けにおかずにしたよ﹂
﹁なっ⋮⋮!? し、死になさい! 野良犬!﹂
爽やかな朝に、香奈ちゃんの怒号が響き渡る。未羽はにこにこと
楽しそうに朝食のパンを食んでいる。
今日も平和な一日のはじまりだ。可愛い妹と、その親友と仲良く
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過ごせることを、感謝しよう。
669
︻後日談20︼のりちゃんの好奇心 その①
平日の学校、昼休み。
気持ちの良い天気だったので、未羽と香奈と鐘良納子は、中庭の
東屋でテーブルを囲み、昼食をとっていた。
﹁ほら、男の人のあそこって、裏側に筋があるじゃない? 根元か
ら先っちょにかけて﹂
しゃべっているのは香奈である。周りに誰もいないので、下ネタ
全開だった。
納子は、未羽と香奈のエロばなに多少は慣れてきたものの、やっ
ぱり恥ずかしくて、顔を赤らめて話を聞いていた。
﹁﹃これ何?﹄ってお兄さんに聞いたら、﹃胎児の性器ってのは、
最初男女とも女性器の形をしていて、それが延びて筒状になってつ
ながったのが男性器になるんだそうだ。そのつながったところが、
裏筋として残るんだと﹄って言うの。よくそんなトリビア知ってる
なって、感心したわ﹂
﹁﹁へ∼﹂﹂
きみと
未羽と納子は、揃ってお約束の声を上げた。
﹁でも、お兄さんの友達の公人さんは、子供のころずっと﹃手術の
跡﹄だと思ってたそうよ。﹃俺は、赤ちゃんのころちんちんを手術
されたんだ﹄って、ずっと思ってたって﹂
﹁ぷっ! あはははは!﹂
未羽が吹き出して、卵焼きを箸に差したまま大きな声で笑った。
納子は下ネタで爆笑するのははしたないと思い、声を殺して笑った
が、腹筋が痛そうだった。
﹁あははは⋮⋮ああ、面白かった。でも、アレってそういうふうに
してできるんだね。勉強になったよ、香奈ちゃん﹂
笑いすぎて出た涙を指で拭いながら、未羽が言った。
670
﹁⋮⋮未羽ちゃん、見たことあるの?﹂
真顔で納子に聞かれ、未羽は焦った。
﹁い、いやほら、生で見たことはないけど、情報として知ってると
いうか、ほ、ほら、ネット見てたら、突然無修正画像がバーンと出
てきたりするじゃない、そういうのとかでだよ﹂
﹁そっか⋮⋮未羽ちゃんも見たことないんだ﹂
純真な納子は、エロエロ大魔王の言い訳を素直に信じた。未羽は
気づかれないように安堵の溜息をついた。
﹁のり、男の人のアレを見てみたいの?﹂
さらっと香奈が言うと、納子はボッ!と顔を赤くして、頭から蒸
気を噴いた。
﹁ちちちち、違うよっ! は、話の流れで聞いただけで⋮⋮﹂
身を縮こまらせながら、納子はしゅわしゅわと頭から蒸気を漂わ
せた。
﹁のりちゃん、おちんちん見たいんなら、携帯で見ればいいじゃん﹂
シャケの切り身を食みながら、未羽が言った。
﹁だから見たいわけじゃなくて⋮⋮だ、だいいちあたしの携帯、お
父さんに小学生用のペアレンタルコントロールかけられてて⋮⋮そ
れに、ネットで見るのって、なんかグロくて、怖い⋮⋮﹂
眉をひそめて納子は言った。グロいと知っているということは、
ネットで見たことはあるようだ。
﹁なるほど、のりは生で見たいのね? お兄さんに頼んであげよう
か? 協力してくれると思うけど﹂
﹁お願いやめてそんなこと言われたらあたし死んじゃう!!﹂
すごい早口で納子は言った。額に変な汗が浮かんでいた。
﹁香奈ちゃん、いくら彼女だからって、未羽ちゃんの前でよくそん
な話できるね⋮⋮未羽ちゃん、いいの⋮⋮?﹂
﹁うちはオープンだから、別に構わないよ。のりちゃん、遠慮しな
いでお兄ちゃんに見せてもらったら?﹂
﹁頼めるわけないでしょ! も、もう勘弁して⋮⋮想像するだけで
671
恥ずかしい⋮⋮!﹂
納子は真っ赤な顔をして俯いてしまった。未羽と香奈は、﹁ウブ
で可愛いなあ﹂と頬を緩ませた。納子弄りが大好きな二人だった。
﹁でものりちゃん、見たいのは見たいんでしょ?﹂
未羽がそういうと、納子は俯いたままピクッと肩を震わせた。
﹁のり、それは思春期の少女の正常な好奇心よ。恥ずかしがること
じゃないわ。わたしも興味あったもの﹂
香奈が手を伸ばし、優しく納子の背をさする。納子はゆっくりと、
赤くなった顔を上げた。
﹁⋮⋮そ、そうかな⋮⋮あたし、変じゃない⋮⋮?﹂
それは、遠回しだが、男性器を見てみたいという告白だった。香
奈は柔和な笑みを浮かべ、頷いた。
﹁ぜんぜん変じゃないわ。ねえ、のり。お兄さんに頼んで見せても
らうのが恥ずかしいんだったら、こういう手はどう?﹂
香奈は、たった今思いついた作戦を、かいつまんで説明した。未
羽は楽しそうに、納子は表情をめまぐるしく変えながら話を聞いた。
﹁︱︱どう? いい作戦だと思うけど?﹂
﹁そ、そんなうまく、いくかなあ⋮⋮?﹂
﹁絶対大丈夫だよ、のりちゃん。あたしも協力するから﹂
不安げな納子だったが、未羽と香奈の強い押しにあって、彼女は
流されるままその作戦に乗ることにしたのだった。
672
︻後日談20︼のりちゃんの好奇心 その②
野球部の練習を終え、俺は夕方に帰宅した。
﹁ただいま、未羽﹂
﹁おかえり、お兄ちゃん﹂
リビングで新婚夫婦のような挨拶を交わし、俺は風呂に入って部
活の汗を流した。
タオルで頭を拭きながら風呂を上がると、未羽が声をかけてきた。
﹁お兄ちゃん、香奈ちゃんがお泊まりに来てるよ。あたしの部屋に
いるから﹂
帰ってきたときには玄関に靴は見当たらなかったが、俺が風呂に
入っている間に来たらしい。
愛する彼女が家を訪ねてきたというのに、逢わない理由などない。
俺は未羽の部屋に向かった。
ドアノブに手をかける。まあ、他人行儀だし、ノックは要らない
だろう。俺はそのままドアを開けた。
﹁香奈ちゃん、来てたの⋮⋮⋮えっ!﹂
﹁ひゃっ⋮⋮!﹂
部屋にいたのは、香奈ちゃんではなかった。着替えの途中だった
のか、未羽の部屋着を着たのりちゃんが、上着のボタンを全部外し
ていて、合わせ目から真っ白な腹部と、淡いピンク色のブラをのぞ
かせていた。
﹁きゃあっ!﹂
慌ててしゃがみ込み、自分を抱くようにして胸元を隠すのりちゃ
ん。
﹁ご、ごめん!﹂
突然のスケベハプニングに狼狽しつつ、俺は慌ててのりちゃんに
背を向けた。すると、いつの間にか真後ろに立っていた香奈ちゃん
673
と至近距離で向かい合う形になった。彼女は悪鬼のような表情をし
ていた。
﹁ひいっ!!﹂
漫画の猫のように、俺は身体中をギザギザにして飛び上がった。
﹁お兄さん⋮⋮わたしというものがありながら、のりに何をしてい
るんですか⋮⋮!﹂
﹁い、いや、これは⋮⋮!﹂
﹁問答無用!!﹂
香奈ちゃんの掌底が俺の額に飛んできた。
ゴッ!! という鈍い音を俺は聞いた。脳を揺さぶられ、俺の意
識は儚く散った。
俺は膝から崩れ落ち、前のめりに床に伸びてしまったのだった。
︱︱って、一人称で気を失う描写をするのはおかしいって思うだ
ろ?
そのとおりで、俺は気を失ってなどいなかった。今回の計画は、
事前に香奈ちゃんと未羽から全貌を聞いていたのだ。
俺がのりちゃんに手を出したと香奈ちゃんに誤解させ、掌底で俺
を気絶させる。その間に、俺のちんこをのりちゃんに観察させよう
と、そういう計画だった。
確かに香奈ちゃんの掌底は威力抜群だが、途中で俺が眼を覚まし
てしまっては計画がおじゃんだ。だから、のりちゃんには秘密で、
俺もこの計画に一枚噛むことになったのだ。
香奈ちゃんは手加減して掌底をふるい、俺はのりちゃんがおちん
ちん観察をすますまで気絶したふりをしていると、そういう悪だく
みだ。
俺的には、可愛いのりちゃんにちんこを観察されたり触ったりさ
れるのは願ってもないことなので、二つ返事でオーケーした。
それにしてもだが⋮⋮俺の妹と俺の彼女は、親友に俺のちんこを
674
観察したり弄ったりさせることを、単に楽しい悪戯としか考えてい
ないらしい⋮⋮。俺たちの関係のアブノーマルさをあらためて感じ
てしまう。
うつ伏せに床に這いつくばる俺のそばに、可愛らしい足音が近づ
いてきた。
﹁わ、本当に伸びちゃった⋮⋮だ、大丈夫? 息してる?﹂
﹁大丈夫よ。このくらいで死んだりしないわ。当分は眼を覚まさな
いわよ﹂
健気に心配してくれるのりちゃんをよそに、香奈ちゃんは乱暴に
俺をひっくり返して仰向けにすると、お姫様抱っこで俺を持ち上げ
た。
﹁よいしょっと﹂
177センチの俺の身体をやすやすと持ち上げると、香奈ちゃん
はポイッとベッドの上に放った。さすが空手で鍛えたスポーツ少女
だ。俺はベッドの上でバウンドして、そのまま気を失った振りを続
けた。
﹁そ、そんな手荒くして大丈夫なの? 眼を覚ましたりしない?﹂
﹁大丈夫よ。しばらくは眼を覚まさないし、眼を覚ましたとしても、
しばらくは朦朧としているわ。万が一眼を覚ましたら、ボーッとし
ている間にのりだけ部屋を出てしまえばいいのよ﹂
﹁そ、そうなの⋮⋮?﹂
言葉巧みにのりちゃんを安心させる香奈ちゃんだった。
ちなみに、俺と未羽の関係をのりちゃんに知られるわけにはいか
ないので、この場には未羽は不参加である。その代わり、本棚には
いつものビデオカメラが備えられている。未羽は後からビデオを見
て楽しむ算段だ。
ベッドがきしんで、微かに揺れた。香奈ちゃんとのりちゃんがベ
ッドに上がったのだ。胸がドキドキしてきたが、俺は呼吸を落ち着
675
けて、気を失った振りを続けた。
﹁じゃあ、早速、いくわよ﹂
﹁え? も、もう⋮⋮?﹂
﹁早くしないと眼を覚ますかもしれないでしょ? ズボン、下げる
わよ﹂
ジャージの腰の辺りに香奈ちゃんが手をかけるのを、俺は感じた。
別に見せ見せおじさん的な露出癖はないのだが、これからウブな
のりちゃんにちんこを見られるのだと思うと、すごく興奮した。俺
は素数を数えたり古文の活用形を頭の中で唱えたりして、必死に勃
起を押さえ込んだ。
事前に香奈ちゃんに﹁気絶して勃起してるのは不自然ですから、
勃てないでくださいよ﹂と言われていたのだ。﹁そんな無茶な﹂と
訴えたが、聞き入れてもらえなかった。
﹁⋮⋮いくわよ﹂
ずるっ、と香奈ちゃんがパンツごと一気にジャージを下げた。股
間が外気に晒されるのを、俺は感じた。
﹁きゃっ⋮⋮! おちんちん⋮⋮!﹂
こっそり薄目を開けると、のりちゃんが眼を大っきくして、口を
手で押さえていた。うん、予想どおりのリアクションだ。
﹁どう? 初めて見た感想は?﹂
﹁す、すごい⋮⋮小っちゃい子のと違って、複雑な形してる⋮⋮へ
え、先の方って、こんな形なんだ⋮⋮﹂
のりちゃんが正直な感想を漏らした。薄目を開けて状況を確認す
ると、のりちゃんがすっごい顔を寄せて俺のちんこを観察していた。
息を荒くしているのか、太ももの辺りに温かい吐息を感じる。
好奇心いっぱいな彼女の表情を見ていたら、ますます興奮してき
た。俺は頭の中で二桁のかけ算をして、必死に勃起を押さえた。
﹁こ、これ、大っきくなってないんだよね?﹂
﹁そうよ、触ってごらんなさい。柔らかいから﹂
﹁い、いいの? 眼を覚まさない?﹂
676
﹁すぐには起きないってば。眼を覚ましそうなったら素早く部屋を
出ればいいわ﹂
﹁う、うん⋮⋮﹂
薄目の細い視界の中で、のりちゃんがおずおずと指を伸ばすのが
見えた。亀頭に指先が触れる。細い指の感触に、お医者さんごっこ
をしているような背徳感を、俺は感じた。
﹁わー⋮⋮こんな感じなんだ⋮⋮ぷにぷにしてる。ん? あれ? 動いてる⋮⋮?﹂
﹁触ったから勃起しはじめてるのよ。もっと触ってごらん﹂
﹁う、うん⋮⋮あ、なんか固くなってきた﹂
勃起許可が出たものと判断して、俺は暗算をやめた。たちまち股
間に血液が集まってくる。
﹁わっ! す、すごい、どんどん大っきく⋮⋮わ、わ、こんなに⋮
⋮!﹂
わずかの間に、俺はフル勃起した。⋮⋮まあ、このシチュで勃た
ないほうがおかしいと思うよ?
俺が眼を覚ます気配のないのに安心したのか、のりちゃんは大胆
にちんこを触るようになってきた。俺のちんこを指で挟んで、固さ
を確かめている。
﹁すごーい⋮⋮さっきはふにゃふにゃだったのに、こんなにカチコ
チになるんだ⋮⋮なるほど⋮⋮だから、せ⋮⋮せっくすできるんだ
ね﹂
ほわほわと赤い顔をして、のりちゃんは言った。うう、いちいち
感想が可愛すぎるよ、のりちゃん。
﹁すっごく大きくなってる⋮⋮さっきの倍くらいあるね。香奈ちゃ
ん、こんなの入れちゃうの⋮⋮? 初めてのとき、痛くなかった?﹂
﹁のりに指入れるオナニー教えてもらったおかげで、そんなに痛く
はなかったわ。でも、初めてのときは、わたしも大っきいなって思
ったわよ﹂
﹁そうなんだ⋮⋮そう言ってもらえると、あたしも香奈ちゃんに、
677
その⋮⋮お、おなにーの仕方教えてあげて、良かったと思うよ﹂
のりちゃんはエッチな言葉を口にするとき、躊躇いからちょっと
どもってしまう。それが初々しくて、とても可愛い。
﹁のり、精液が出るとこ、見てみたい?﹂
えっ! そんなサービスまでしてくれるの!? 小躍りしたい気
持ちだったが、俺は喜びを顔に出さないようにして寝たふりを続け
た。
﹁ええっ! だ、大丈夫なの? そんなことして⋮⋮?﹂
﹁大丈夫。眼を覚ます気配ないでしょ? 見てみたくない?﹂
﹁み、見れるのなら、見てみたいけど⋮⋮﹂
のりちゃんは、ごくりと唾を呑んだ。相当興味があるようだ。
﹁じゃあ、見てて⋮⋮こうするの﹂
香奈ちゃんは俺のちんこに手を添えると、優しくさすりだした。
彼女の愛撫はツボを心得ていて、うっとりするほど気持ち良かった。
﹁わあ⋮⋮すごい、香奈ちゃん、慣れてるね⋮⋮﹂
﹁ほら、見てごらん、先っちょが濡れてきてるでしょ﹂
﹁本当だ⋮⋮男の人も、女の子みたいに濡れるんだね﹂
⋮⋮のりちゃん、それは、自分もオナニーすると濡れるって白状
してるのと一緒だよ。のりちゃんって、ときどき口を滑らせて女の
子の秘密を漏らしちゃうんだよな。
そうするうちに、俺は香奈ちゃんの気持ちよすぎる手コキで、我
慢汁だだ漏れになってしまっていた。亀頭がぬるぬるだ。
じつは、最近部活の練習がきつかったり課題が多かったりでバタ
ンキューすることが多く、ここ五日ほど抜いていないのだ。
そのため、ただでさえ香奈ちゃんのテクニックがソープ嬢並なの
に加え︵ソープ行ったことないけど︶、ちんこが敏感になっている
ので、俺はかなり早漏ぎみになっていた。
︵ぐわあぁ⋮⋮き、気持ちよすぎる⋮⋮すぐイってしまいそうだ︶
俺が溜まってることを知らない香奈ちゃんは、普段通りのペース
で俺のちんこをしごいている。発射はまだまだ先だと思っているよ
678
うだ。
︵うう⋮⋮のりちゃんが俺のちんこに顔を寄せている。このままだ
と顔射か、最悪髪にぶっかけてしまうかも⋮⋮︶
のりちゃんは、頬を赤く染めて恥ずかしそうにしながらも、興味
津々で俺のちんこを見つめている。かぶりつきで見ているものだか
ら、いま発射したら、彼女の顔や髪に精液が付着するのはまぬがれ
ない。
ウブで清純なのりちゃんに﹁ぶっかけ﹂とかしちゃったら、香奈
ちゃんがすっごく怒りそうな気がする⋮⋮。不可抗力だし、そもそ
もこんなことにのりちゃんを巻き込んだのは彼女なのだが⋮⋮そう
いう理屈は通じないだろうなあ⋮⋮。
イキそうだということを香奈ちゃんに伝えることもできず、俺は
絶頂寸前まで登りつめた。︱︱と、そこで神の救いか、香奈ちゃん
が手を止めてくれた。
︵うう⋮⋮助かった︶
香奈ちゃんの意図は分からなかったが、ひとまず危機を回避する
ことができた。俺は再び素数を数え、猛りきったちんこの沈静化を
図った。
﹁香奈ちゃん⋮⋮?﹂
のりちゃんもなぜ香奈ちゃんが手コキをとめたのかわからず、困
惑していた。すると、香奈ちゃんはこんなことをのたまった。
﹁のり⋮⋮口でするとこ、見てみたい?﹂
いまフェラするのかよ!? と、俺は心の中で突っ込んだのだが、
よく考えたら俺にとってはそのほうが都合が良かった。
︵そっか、フェラでイケば、のりちゃんにぶっかける懸念はない。
射精するところを見るっていうのはかなわなくなるけど⋮⋮俺の身
の安全のほうが大事だ︶
のりちゃんに顔射したりしたら、掌底くらいじゃすまないだろう。
香奈ちゃん、この前不良三人を十秒でノックアウトしたらしいから
なぁ⋮⋮恐ろしい⋮⋮うう、俺、何も悪いことしてないのに⋮⋮!
679
﹁えっ! く、口で⋮⋮!﹂
﹁そう、見る?﹂
﹁う、うん⋮⋮見せて、香奈ちゃん⋮⋮﹂
ウブなのに好奇心旺盛なのりちゃんだった。香奈ちゃんは十六歳
とは思えない妖艶さで微笑むと、その桃色の可憐な唇を開いて、俺
のちんこに、ぱくん、と食らいついた。
︵うっ⋮⋮! くおぉ⋮⋮!︶
さっきのインターバルで、射精まで90%くらいまで登りつめて
いたのをどうにか60%くらいまで持ち直したのだが、香奈ちゃん
の超絶フェラ技巧で、俺はまたボルテージを高められていった。
﹁わあ⋮⋮香奈ちゃんがおちんちん咥えてる⋮⋮! す、すごいエ
ッチな絵だよぉ⋮⋮!﹂
のりちゃんは手で口を覆って、親友の痴態を眺めていた。完全に
恥ずかしさよりも好奇心のほうが勝っていて、眼を大きくして香奈
ちゃんの口から出入りするちんこを凝視している。
のりちゃんへの刺激が強すぎてはいけないと配慮しているのか、
香奈ちゃんのフェラはいつもよりスローペースだったが、それでも
生でセックスしているのと同じくらい気持ちよかった。
ぬちゅぬちゅといやらしい水音が、部屋を漂っている。処女に見
せていいのか? こんな光景⋮⋮。
︵ぐっ⋮⋮! ああ、もう⋮⋮イキそう⋮⋮︶
いよいよ絶頂が間近になってきて、俺は身体を強ばらせた。
ふと、香奈ちゃんのピストン運動が、ピタリと停止した。ちゅぽ
ん、と口からちんこを引き抜く。
薄目の視界の中に、怪訝そうな彼女の表情が見えた。おそらく、
俺の様子から絶頂が近いの感じとったのだろう。今日は妙に高まる
のが早いことを、不思議に思っているのに違いない。
﹁ふうん⋮⋮? のりが見てるからかしら?﹂
のりちゃんに聞こえないようにつぶやいて、香奈ちゃんは手の甲
で口元の唾液を拭った。
680
﹁のり、お兄さんに、手でしてあげて⋮⋮あなたがイカせるのよ﹂
危うく驚きの声を上げるところだった。俺は動揺を必死で押し隠
した。
﹁えっ!? あ、あたしが⋮⋮!?﹂
当然、のりちゃんもびっくりしていた。火照った顔が、さらに赤
みを増す。
﹁そ、そんな⋮⋮あたし、したことないし⋮⋮か、香奈ちゃんはい
いの? 香奈ちゃんの彼氏さんなのに⋮⋮﹂
﹁誰でもいいわけじゃないわ。のりだから許せるのよ﹂
うまい殺し文句だった。本心は初めてちんこを弄るのりちゃんの
表情を拝みたいだけなのだろうが。
﹁わ、わかった⋮⋮じゃあ、やってみる﹂
﹁イクときは教えてあげるから、手のひらで受けて。じゃあ、触っ
て⋮⋮﹂
香奈ちゃんはのりちゃんの手を取ると、俺の股間へと導いた。ち
んこに指が触れると、俺は心臓がバクバクした。
﹁軽く握って。そうして、こう、優しく上下に⋮⋮﹂
﹁こ、こう?﹂
のりちゃんの手が、俺のちんこをやんわりと包む。彼女の手は、
小柄な香奈ちゃんよりもさらに小さくて、ぷくぷくしていて、子供
の手みたいだった。
︵ぐわぁ! のりちゃんの手、ロリロリすぎて罪悪感がパネェ! つ、つたなさがまた、何とも言えない⋮⋮!︶
のりちゃんの愛撫は、香奈ちゃんのテクニックに及ぶべくもない
が、それはそれで、初々しさに興奮してしまうのだった。
しかし、これはかなり危険な状態だ。のりちゃんはちんこを間近
で見つめながらしごいているので、このまま発射すれば、顔にぶっ
かかってしまうのは確実だ。
﹁イクときは教える﹂と言っておきながら、香奈ちゃんはのりち
ゃんに何も言わなかった。きっと、まだ俺に余裕があると思ってい
681
るのだ。
余裕などとんでもなくて、香奈ちゃんが射精まで80%くらいと
思っているのなら、俺はもう97%くらいに達していた。
いつ発射してもおかしくないのだが、幸いにも、のりちゃんの不
慣れなスローペース手コキのおかげで、俺はまだ持ちこたえていた。
しかし、それは逆に、﹁寸止め﹂状態が長く続いているのと同じ
だった。ちんこの付け根の辺りがじんじんして、早くイってしまい
たくて堪らないのだが、愛撫がソフトすぎて、あと一歩のところで
イケない。
いや、イってしまったら大変なことになるのだが、それでもイっ
てしまいたい。精液をぶちまけたい! のりちゃんの手の動きに合
わせて、腰を動かしてしまいそうになる欲求をぐっとこらえて、俺
は寝たふりを続けた。
のりちゃんは、とろんとした表情をして、俺のちんこを擦り続け
ている。幼い顔立ちに浮かんだ淫靡な色が、めちゃくちゃエロかっ
た。ううう⋮⋮イキてえよぉ⋮⋮。
︱︱ふと、のりちゃんが手の動きを止めた。
慣れないことをして手が疲れたのか、羞恥心がMAXになって、
香奈ちゃんと交代する気になったのか︱︱俺は薄目を開けて、彼女
の表情を読み取った。
のりちゃんはもじもじしながら、香奈ちゃんにこう言ったのだっ
た。
﹁⋮⋮ね、ねえ、香奈ちゃん⋮⋮あ、あたしも、お口でしてみて⋮
⋮いい?﹂
思い切って言ったとたんに、のりちゃんは顔を真っ赤にした。香
奈ちゃんは、さすがに動転した。
﹁えっ!? く、口で⋮⋮?﹂
﹁ちょ、ちょっとだけでいいから⋮⋮どんな感じか、試すだけ⋮⋮﹂
香奈ちゃんは当惑した。確かにこんなエッチな悪戯に誘ったのは
彼女だが、処女の納子にそこまでさせていいのか︱︱そんな表情だ
682
った。
それに、扱いがぞんざいなところはあるが、一応自分の彼氏なの
だ。親友とはいえ、彼氏のちんこをしゃぶらせていいものか︱︱そ
んな思いもあったに違いない。香奈ちゃんは珍しく焦っていた。
﹁わ、わたしのつばがいっぱいついてるわよ? のり、無理しない
で﹂
﹁香奈ちゃんとは、し、舌入れるキスしたこともあるじゃない、平
気だよ。ちょっとだけ⋮⋮いい?﹂
上目遣いでお願いする。のりちゃんの甘え顔は破壊力抜群で、香
奈ちゃんは承諾するしかなかった。
﹁わ、わかった⋮⋮ちょっとだけなら⋮⋮﹂
﹁うん、ありがとう。ちょっとね、ちょっとだけ⋮⋮﹂
のりちゃんは無邪気な笑みを浮かべ、それから、緊張した表情に
なった。胸がドキドキしているのが、顔を見るだけで伝わってくる。
のりちゃんが俺のちんこにそっと手を添えた。咥えやすいように、
ちんこを直立させる。
︵う、うわ⋮⋮! マジ!? マジでのりちゃん、俺の咥えちゃう
の!?︶
俺も心臓が飛び出そうだった。処女で、男とキスもしたことのな
いのりちゃんが、俺のやんごとなきものを、今にも口に含もうとし
ている。
のりちゃんは覚悟を決めるように、はふう⋮⋮と息を吐いた。香
奈ちゃんも息を呑んで、親友の初フェラチャレンジを見つめている。
のりちゃんは、小さなお口を、あーん、と開けて︱︱あむ、とア
イスキャンデーを食べるように、俺のちんこを咥えた。
︵うっ⋮⋮! おぉう⋮⋮!︶
舌と唇が亀頭に触れる。滑らかな感触に、俺は陶然となった。
﹁んふぅ⋮⋮これが、お兄さんの⋮⋮﹂
のりちゃんの口内は、柔らかく温かかった。薄目を開けると、童
顔で中学生くらいにしか見えないのりちゃんが、俺のいきり立った
683
ちんこを口に含んでいるのが見えた。背徳感がパネェ絵だった。
﹁んっ⋮⋮んふ⋮⋮﹂
さすがにピストン運動はしなかったが、のりちゃんは舌を使い出
した。アメを舐めるように、俺の先っちょをれろれろする。
︵おおっ! うう⋮⋮くはぁっ! き、気持ちいい⋮⋮!︶
もう、我慢の限界だった。のりちゃんの一生懸命な愛撫で、俺は
一気に頂点へと登りつめた。
︵あっ⋮⋮! もう、だめ⋮⋮︶
身体の奥から熱いものがこみ上げてきて、俺は激しく射精した。
まるでちんこにポンプが内蔵されているかのように、勢いよく精液
が噴き出た。
﹁んぷっ!!﹂
突然口内に発射されたのりちゃんが、慌ててちんこを口から抜い
た。
五日分の精液の噴出は簡単におさまることはなく、射精はどぴゅ
どぴゅと長く続いた。ヨーグルトのように濃い体液が、ベトベトと
のりちゃんの顔に付着した。
﹁ひゃっ⋮⋮! きゃあっ!﹂
﹁ああっ! のりちゃんっ!!﹂
尋常ではない量の精液を、俺はばらまいた。長い寸止めから解放
され、天に昇るような快感だった。ようやく射精が止むと、俺は魂
が抜けたように、くたっと脱力した。
のりちゃんは顔中を精液だらけにして、呆然としていた。唇の端
から、口に含みきれなかった精液が垂れている。髪や服にも精液が
飛んでいて、まるで輪姦されたあとみたいな有様だった。⋮⋮罪悪
感で、胸がキリキリと痛んだ。
﹁ん、んん∼⋮⋮!﹂
頬を膨らませ、のりちゃんは視線で香奈ちゃんに助けを求めた。
あまりのことに香奈ちゃんも呆然としていたのだが、のりちゃんが
口内の精液の処理に困っているのに気づくと、慌てて手のひらを差
684
しだした。
﹁の、のり! ここに出して!﹂
のりちゃんは舌を出して、うえー⋮⋮と、精液を吐き出した。泡
だった白い液体が、香奈ちゃんの手のひらに広がった。
﹁だ、大丈夫? のり⋮⋮﹂
﹁う、うん、大丈夫だよ。いきなりだったからびっくりしたけど⋮
⋮これ、変な味だね﹂
﹁ご、ごめんなさい、のり⋮⋮こんなことになるとは⋮⋮﹂
﹁だ、大丈夫だよ、香奈ちゃん。おちんちん見たいって言ったのあ
たしだし﹂
のりちゃんは、意外にショックは受けていないようだった。無理
に平静を装っているようにも見えない。
エロエロ大魔王とドM香奈ちゃんの親友なのだから、ウブなよう
で意外と性的なことに耐性があるのかもしれない。トラウマを植え
付けずにすんで、俺はホッとした。
香奈ちゃん大量のティッシュを使って、のりちゃんの顔を拭った。
﹁ごめんなさい、のり⋮⋮わたしのせいで⋮⋮﹂
本気で申し訳なさそうに、香奈ちゃんは謝った。
﹁気にしないで、香奈ちゃん。あたし、お風呂入ってくるね﹂
のりちゃんは努めて明るくそう言って、部屋を出て風呂へと向か
った。
ドアがパタンと閉じる。香奈ちゃんと二人きりになり、俺は眼を
閉じたままゆっくりと上体を起こした。
おそるおそる、眼を開ける。﹁しょうがないわね﹂と、呆れ顔の
香奈ちゃんを期待したが、俺の目の前にいたのは、仁王像のような
怒りの表情を浮かべた彼女だった。
﹁お、お兄さん⋮⋮! のりに、何してんですか⋮⋮!﹂
﹁か、香奈ちゃん! こ、これは、ほんっとにどうしようもない不
可抗力であって⋮⋮!﹂
﹁彼女の目の前で、無垢な女の子に口内射精して顔射するって、ど
685
ういうことよ!? くたばれっ! 野良犬っ!!﹂
香奈ちゃんの正拳突きが、俺の腹にヒットした。手加減なしの、
渾身の突きだ。
背中に突き抜けたのではないかと思うような、とんでもない威力
だった。一人称なので、気絶しても話を続けるというわけにはいか
ない。
俺は、今度こそリアルに気を失って︱︱
☆
香奈ちゃんの正拳突きを食らったあと、俺はしばらく気を失って
いた。眼を覚ますと香奈ちゃんは﹁⋮⋮確かに、お兄さんに落ち度
はありません。殴ったりして、すみませんでした﹂と殊勝に謝って
きた。
あんな思いっきり殴ったあと謝られても⋮⋮と思ったが、美少女
相手に怒る気もせず、俺は彼女を許したのだった。まあ、のりちゃ
んのフェラ気持ちよかったし、俺に損はない。
一時間後、俺たち四人はキッチンに集合した。のりちゃんもお泊
まりするので、これからみんなで夕食なのだ。
俺の向かいにのりちゃんと香奈ちゃんが座っていて、未羽が食卓
に料理を並べている。今日のメニューは、チーズ入り手作りハンバ
ーグだ。
もちろん、あのことは無かったことになっているので、みんな普
段通りに会話をしている。未羽と香奈ちゃんはまったく変わった様
子はないが、一人のりちゃんだけは、微かに頬を赤らめて、言葉少
なだった。⋮⋮こういうとこ、本当に可愛いなあ。
﹁のりちゃん、さっきはゴメンな。ノックすべきだった﹂
686
俺が話しかけると、のりちゃんはビクッとして背筋を伸ばした。
﹁い、いえっ! あ、あたしのほうこそ、鍵を掛けとけばよかった
んで⋮⋮お、お兄さん、香奈ちゃんに殴られて、だだ、大丈夫でし
たか?﹂
失神中にちんこをしゃぶった相手から話しかけられ、のりちゃん
はわたわたしながら返答した。相変わらず、リアクション王だ。
﹁ああ、大丈夫、慣れてるから﹂
﹁慣れてるってどういうことですか!? わたしがいつも殴ってる
みたいに!﹂
香奈ちゃんが盛大に突っ込む。いや、俺、これまでに何度が殴ら
れてるよ⋮⋮?
﹁まあ、慣れてるというのは大げさだが、三十分ばかり気を失った
だけで、何ともない。最近寝不足だったから、熟睡できてちょっと
体調がいいくらいだ﹂
﹁そ、そうですか⋮⋮良かった﹂
のりちゃんが安堵の溜息をついた。俺がしっかり気を失っていた
ことが確認できて、安心したのだろう。
﹁お兄ちゃん、サラダのドレッシング、今日は市販のでいいよね。
青じそとシーザードレッシング、どっちがいい?﹂
﹁あ、シーザーで﹂
﹁うん、みんな一緒でいいよね?﹂
サラダが盛られた四つの皿に、未羽がシーザードレッシングをか
けていく。
﹁はい、のりちゃん﹂
青々としたサニーレタスと真っ赤なトマトに、白濁したシーザー
ドレッシングがかかっている。未羽はそのサラダをのりちゃんの前
に置いた。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
のりちゃんは無言で、サラダの皿を見つめいていた。頬が微かに
赤くなっている。頭の中で何を想像しているのか、一目瞭然だった。
687
﹁のりちゃん? どうしたんだい、赤い顔して?﹂
俺が声をかけると、彼女はぶわっと顔を赤くして、頭から蒸気を
出した。
﹁なななな、何でもないですっ! いいい、いただきます!﹂
のりちゃんは箸をとって、シーザードレッシングのかかったサラ
ダを食んだ。顔はますます赤くなって、額が汗ばんでいた。
俺と未羽と香奈ちゃんは、笑いを押し殺して飯を食った。やっぱ
り、彼女のリアクションは最高に面白い。今日は大人の階段を一つ
登ってしまったが、のりちゃんにはいつまでもウブでいてほしいも
のだ。
俺は未羽が作ったチーズ入りハンバーグを囓った。チーズの旨味
と相まって、ジューシーなハンバーグが抜群に旨かった。
688
︻短か∼いSS︼未羽とフォトショッピ︵前書き︶
フランス書院美少女文庫﹃妹が痔になったので座薬を入れてやった
件﹄
書籍化関係情報はtwitterにて発信しています。
https://twitter.com/peanuts︳ka
ra
なお、本作品の略称は﹃妹痔﹄で、
振り仮名は﹁いもじ﹂に公式決定しましたので、
お知らせいたします。
689
︻短か∼いSS︼未羽とフォトショッピ
平日の夜。俺が部屋でくつろいでいると、ノックの音がした。こ
の控えめな音は未羽だ。俺は入っていいよと声をかけた。
﹁お兄ちゃん、この中に入ってる写真、パソコンで見たいの﹂
未羽は手にメモリカードを持っていた。
﹁携帯からメモリカードに画像を移したの。先に言っとくけど、エ
ッチな写真じゃないよ﹂
﹁どうしてそういう⋮⋮俺を何だと思ってるんだ?﹂
俺はそう言ったのだが、本心は絶対エロい写真だと思っていた。
香奈ちゃんの野外露出とか。
﹁妹に欲情する変態だと思ってるよ? ねえ、早く書斎行こ。いい
もの見せたげるよ﹂
未羽にうながされ、俺は一階の書斎へと向かった。
書斎ってのは親父がそう読んでるだけで、実際は物置みたいな部
屋なのだが、一応机と家族共用のデスクトップパソコンがある。
俺はイスに座り、パソコンの電源を入れた。カードリーダーも接
続する。後ろに立っている未羽は、俺の肩に手を置いて、顔を寄せ
るようにしてモニターを覗き込んでいる。
わざとなんだろうけど、ときどき頬と頬が当たる。⋮⋮すべすべ
で柔らけぇ。ふわ∼っといい匂いしてくるし⋮⋮ああ、押し倒した
い。
三歳児のようにスキンシップしてくる未羽に、ちんこを半立ちに
させつつ、俺はメモリカードのアイコンをクリックした。﹁MIU﹂
と名の付いたフォルダが現れる。
﹁開くぞ? いいんだよな?﹂
エロ写真じゃないと言われても、フォルダを開くのは少しドキド
キした。なにしろ、エロエロ大魔王の所有物だからな。﹁いいもの
690
見せたげる﹂って言ってたのも気になる。
﹁いいよ、開いて﹂
﹁お、おう﹂
フォルダをダブルクリックする。JPEGファイルが五枚入って
いた。一覧表示にしていたので画像は表示されず、小さなアイコン
が並んでいる。0001から番号順のファイル名は、中身を推測す
るのに何の助けにもならなかった。
﹁どれでもいいから、開いて﹂
﹁わかった⋮⋮ポチッと﹂
﹁写真﹂+﹁いいもの﹂というと、=﹁エロ写真﹂以外に俺は思
いつかなかったのだが、とりあえず俺は一番番号の若いファイルダ
ブルクリックした。
モニターに大きく映った画像を見て、俺は眼をしばたたかせた︱
︱それは、俺の予想を斜め上に超えていく写真で︱︱ショートカッ
トの未羽の上半身だった。
﹁え⋮⋮? ええっ!? な、何だこれっ!?﹂
俺は素っ頓狂な声を出した。振り返って未羽を見たが、もちろん
いつもの艶やかなロングストレートで、ショートカットなわけはな
かった。明らかにヅラでもない。
﹁驚きすぎだよ、お兄ちゃん。写真を加工しただけだよ、フォトシ
ョッピで﹂
﹁フォ、フォトショッピ? 加工⋮⋮? あ、ああ、そうか⋮⋮﹂
俺は手の甲で額に滲んだ汗を拭った。よく考えればすぐわかるこ
となのに、衝撃が強すぎて変に焦ってしまった。
﹁中学のときの友達で、芸術系の高校に行った子がいるの。今デジ
タル制作習ってるそうなんだけど、メールで﹃上半身の写真送って﹄
って来たから、何するのかなーって思って写真つけて返信したら、
フォトショッピで写真をいろんな髪型に加工して送ってくれたの﹂
﹁なるほど⋮⋮その一つがこれか﹂
俺はモニターをまじまじと見つめた。オリジナルのリアル未羽が
691
至上なのは言うまでもないが、画面の中のショートカット未羽も、
新鮮で可愛かった。
﹁くう⋮⋮元がロングだから、ショートは普段とぜんぜん違って新
鮮だなあ。ちょっと小年っぽくて、やんちゃ感があるよ。運動音痴
なのに、テニス部とか入ってそうに見える﹂
﹁運動音痴は余計だよ。 でも、どう? 可愛いと思わない?﹂
俺は、うんうんと大きくうなずいた。
﹁確かに、めっちゃ可愛い。オリジナルと違って料理下手そうだけ
ど、それでも許せる可愛さがある﹂
﹁髪短くするだけで料理が下手になるの? すごい想像力だね。ね
え、他のも見てよ﹂
﹁お、おう。次は、なんだろう⋮⋮?﹂
俺は次の番号のファイルをクリックした。少し内にカールした、
肩までのボブカットの未羽が映し出されて、俺の胸にキューピット
の矢がドスッと刺さった。
﹁う⋮⋮! うおおっ!! これいいっ!! ちょっと大人っぽく
て、清楚な雰囲気が堪らんっ!!﹂
﹁髪型変わるだけでそこまでキャラ設定変わるんだね⋮⋮恐れ入る
よ﹂
背後で未羽が呆れ顔をしているのを感じたが、俺は構わず舐めま
わさんばかりにモニターを見つめた。
﹁うんうん、いいなあ。絶対ピアノ弾ける顔してる。セントバーナ
ードとか、絶対でかい犬飼ってる﹂
﹁何でそんなこと確信できるの!? 髪型でそんなにキャラ変わる
んなら、元のあたし何なの⋮⋮? まあいいや、次の見てよ﹂
次のファイルをクリックする。ツインテールだった。
﹁ぷっ⋮⋮! ははは、これ可愛いな! 頭悪くて生意気そう。頭
撫でたら、﹃子供扱いすんな、バカ兄貴っ!!﹄とか言うんだろう
な、子供のくせに﹂
﹁だんだんあたし、自分のアイデンティティに不安を覚えてきたよ。
692
ねえ、おにいちゃん、ほんの少しだけ吊り目になってるのわかる?﹂
﹁あ、ホントだ。なるほど、だから性格キツそうに見えるんだな。
でも、最初はこのくらいツンの方が、攻略しがいがあるな﹂
﹁エロゲ脳だよ、それ。はい、次行って﹂
もっとゆっくり見ていたかったのだが、未羽にうながされ俺は次
のファイルをクリックした。まあ、あとでゆっくり見ればいいしな。
次の写真は、縦ロールだった。
﹁うん、面白いけど、これは出オチだな。縦ロールって時点でほぼ
キャラが定まってしまうから、あまり弄りようがない。次行こう﹂
﹁縦ロールに冷たいね!? お兄ちゃん! ⋮⋮ちぇっ、あたし、
これが一番面白かったのに﹂
口を尖らせ、不服そうな顔をする未羽。
﹁うーん、本人は面白いかもしれないが、あまりに突飛すぎると、
冷めちゃうんだよなあ。あり得る範囲の変化がいいんだよ。むしろ
微妙なくらいのが﹂
﹁お兄ちゃんの価値観はよくわからないよ。でも、そういうことな
ら、次のは気に入ると思うよ﹂
いつの間にか、もう最後のファイルになっていた。名残惜しく感
じつつ、俺はファイルをクリックした。
最後の髪型は、ツーサイドアップだった。ロングの髪はそのまま
に、左右の一部だけツインテ風にまとめている。
﹁おっ! これは⋮⋮! ロングとツインテのいいとこ取りがツー
サイドアップの魅力だが、なるほど、いろんな角度から楽しめるな﹂
俺は、ぐぐっと顔を近づけてモニターを見つめた。後ろで呆れた
感じの溜息が聞こえた。
﹁案のじょう食いつくね、お兄ちゃん。でも、あたしもこの髪型、
可愛いと思うよ﹂
﹁うん、ロングのしとやかさとツインテのおませ感が融合して、複
雑なキャラ設定を醸し出しているな。相反する要素を持ち合わせて
いそうだ。生徒会長だけど、魔法少女もやってるとか﹂
693
﹁アニメ脳でもあるんだね! お兄ちゃん! まあ、そんなに喜ん
でもらえたら、あたしも見せた甲斐があるよ。お兄ちゃん、どれが
一番良かった?﹂
未羽が興味深そうな顔で俺の顔をのぞきこむ。俺は腕を組んで考
えた。
﹁うーん⋮⋮ツインテと縦ロールはネタだから選外だけど、他は甲
乙つけがたいなあ⋮⋮特に、ボブとツーサイドアップが﹂
﹁ふーん。あたしはショートがいいな。なんだか、画像見てたらイ
メチェンしたくなってきたよ。思い切って、短くしちゃおうかな﹂
﹁!﹂
俺は息を呑んだ。未羽は、長い髪を手にすくい、美容師のような
顔で髪を弄っている。そうして、いたずらっぽい眼で、俺のことを
チラッと見た。
﹁み、未羽⋮⋮! 切らないでくれよ。ショートやボブの未羽も可
愛かったけどさ、オリジナルのリアル未羽が一番だよ。そのままで
いいよ、おまえ﹂
うろたえながら、俺は言った。我ながら情けないが、すがるよう
な声だった。
﹁ふーん、どうしよっかな?﹂
未羽は、半眼の小悪魔笑みで俺を見つめた。︱︱と思ったら急に、
ニカッとヒマワリみたいな笑みを浮かべた。
﹁へへっ、嘘だよ。切らないから、安心してよ﹂
いつものように、眼を三日月にして笑う。俺は安堵の溜息をつい
た。
﹁そ、そうか⋮⋮! 良かった∼! ショートにでもしたらどうし
ようかと⋮⋮﹂
緊張が解けて脱力する俺を、未羽は可笑しそうに眺めている。
﹁ふふふ、お兄ちゃんったら、そんなに焦っちゃって。⋮⋮でも、
あたしはね∼、知ってるんだよ∼。お兄ちゃんがあたしに髪を切っ
てほしくない理由を∼。ふひひ﹂
694
見透かしたような顔をして、未羽はニヤニヤ笑いながら俺を見つ
めた。
﹁な、なんだよ? 切ってほしくない理由って?﹂
そう言いながら、俺は動揺していた。確かにあるのだ。切って欲
しくない理由が︱︱。
何でもお見通しという顔で、未羽は人差し指を立て、ビシッと俺
を指差した。
﹁ズバリ! お兄ちゃん、あたしとエッチするとき、髪が胸やお腹
をさわさわとくすぐるのが気持ちいいんでしょ!﹂
ピシャーン! と、雷が落ちた。というのは視覚効果だが、実際、
大正解だった。俺は犬嫌いな人が犬に吠えられたようなポーズをと
り、おののいた。
﹁ぐっ!! ど、どうしてそれを﹂
腰に手を当て、ふっふーん、と勝ち誇る未羽。
﹁香奈ちゃんが言ってた﹂
﹁ああ⋮⋮そうか。おまえら、エロエロレズビアンワールドだもん
な⋮⋮﹂
同じ穴のムジナでした。ちゃんちゃん。
﹁お兄ちゃん、エロいね。妹とエッチすること考えて、髪切るな!
なんて﹂
﹁ちっ⋮⋮違うぞ! それだけじゃない! やっぱり、おまえには
ロングが一番似合ってる! そのつやっつやでしなやかな美しい髪
を切るなんてもったいない! おまえのスカウターがぶっ飛びそう
なくらい高い女子力とお嬢様っぽいロングストレートは、最高に相
性がいいんだ! おまえがショートにするなんて、かぐや姫がスポ
ーツ刈りにするくらいありえないぞ!﹂
俺はつばを飛ばす勢いで力説した。未羽は気圧されてちょっと引
いていたが、まんざらでもなさそうな顔をしていた。
﹁そ、そんなにロング好きなんだ。切るってのは冗談だから、安心
してよ。でも、そこまで言ってもらえると、悪い気はしないよ。そ
695
んなに好きなら、お兄ちゃん、さわさわする?﹂
突然の申し出に俺は一瞬フリーズしたが、すぐに食いついた。
﹁えっ? え? さわさわ? 何それ!? どんなことしてくれん
の!?﹂
﹁猫まっしぐらだね、お兄ちゃん。じゃあ、そこに寝てよ﹂
書斎は畳間である。おれは即座に畳の上にごろんと寝転んだ。
﹁Tシャツ、めくるね﹂
未羽はTシャツをめくり、俺の腹と胸を露出させた。そうして、
俺の上に四つん這いになって覆い被さった。
﹁ほら、さわさわ∼、さわさわ∼﹂
頭を動かし、長い髪を俺の腹と胸で滑らせる。羽ぼうきで撫でる
ような感触が、くすぐったくて、なまめかしくて、すげえ気持ちよ
かった。
﹁お⋮⋮おお⋮⋮なんて心地よい感触なんだ⋮⋮未羽の髪、最高だ
よ⋮⋮﹂
俺はすぐにフル勃起した。未羽はクスッと笑って、ジャージの上
からちんこを撫でた。
﹁ふふ⋮⋮お兄ちゃんったら、もうこんなにしちゃって。おにいち
ゃんって、ホント、シスコンの変態さんだね﹂
﹁おまえとこういうことできるんなら、もう変態でいいです⋮⋮﹂
髪の感触と、ちんこを撫でられる心地よさに俺がうっとりしてい
ると、不意に、未羽が俺のジャージの腰の部分に両手をかけた。
ん? と思うまもなく、ズルッとジャージを下げる。フル勃起し
たちんこが、びよんと揺れた。
﹁み、未羽!?﹂
﹁未羽のこと大好きなお兄ちゃんに、サービスしてあげるね⋮⋮﹂
未羽はエロエロ大魔王の顔になっていた。未羽は髪をかき上げて、
俺の下腹部と太ももに、ふぁさー⋮⋮と髪を被せた。そうして、俺
のちんこに、ぱくんと食いついた。
﹁うおっ⋮⋮! お、おおっ⋮⋮!﹂
696
未羽が十五歳とは思えない超絶技巧で俺のちんこをしゃぶる。相
変わらず、とろけるような極上フェラだ。
﹁んっ⋮⋮あふっ⋮⋮お兄ちゃんの、大っきい⋮⋮﹂
﹁うおお⋮⋮! み、未羽、気持ちいいよ⋮⋮!﹂
未羽がピストン運動を開始する。髪が揺れて、肌をさわさわとく
すぐる。ああ⋮⋮やっぱり未羽はロングがいいよ!
彼女のスーパーテクニックで、俺はあっという間に登りつめた。
ちんこの付け根の辺りから、熱いものがこみ上げてくる。
﹁ああっ⋮⋮! み、未羽⋮⋮! お、俺、もう⋮⋮﹂
﹁いいよ、出して、お口の中⋮⋮﹂
﹁あっ、も、もう、イク⋮⋮!﹂
快感が身体を突き抜けて、俺は未羽の口内に精液を迸らせた。ド
ックンドックンとちんこを脈動させ、思うさま放出する。
﹁んっ! んん⋮⋮﹂
未羽はちょっとえづきそうになりながらも、俺の大量の精液を口
で受け止めた。なおかつ、舌で軽く愛撫を続け、最後の一滴まで絞
り出してくれた。風俗嬢のようなサービス精神だ。風俗行ったこと
ないけど。
﹁ん∼⋮⋮﹂
ぬぽん、とちんこを口から引き抜くと、未羽は身体を起こした。
口に手を当て、しばらくもごもごしていたが、ペンギンが魚を飲
み込むような動作で、ごくん⋮⋮とひと息に精液を飲み下した。兄
の精液を飲み込むその仕草は、たった今射精したばかりだというの
に、ちんこを復活させるくらいエロかった。
﹁ぷはぁ⋮⋮えへへ、飲んじゃった﹂
﹁エロいよおまえ⋮⋮ホント、エロエロ大魔王だ⋮⋮フェラも、髪
の感触も、最高に気持ちよかった。やっぱりおまえは、世界一の妹
だ﹂
﹁ふふ、お兄ちゃん、大好き﹂
未羽が俺に覆い被さってきて、キスをした。俺たちは、むさぼる
697
ように舌を絡め合った。
﹁ぷは⋮⋮エッチするの久しぶりだね、お兄ちゃん﹂
﹁ああ⋮⋮あ、あのさ、未羽。お願いがあるんだけど⋮⋮﹂
﹁何? お願いって﹂
ちょっと気恥ずかしくて、俺はおずおずと頼み事をした。
﹁髪、結んで、ツーサイドアップやってみてくんない?﹂
未羽はちょっと眼を大きくして、それから、ぷっと吹き出した。
﹁ぷぷ⋮⋮あはは。いいよ、お兄ちゃん。好きだね? ツーサイド
アップ﹂
﹁いいじゃん、見てみたいんだよ。アニメ脳とか言うなよ?﹂
俺たちは二階の未羽の部屋に行った。未羽は俺のリクエストにこ
たえ、髪を束ねてツーサイドアップを披露してくれた。あの写真の
通り、とても可愛かった。
でも、やっぱりロングストレートには敵わない。オリジナルの未
羽が、世界一の妹だ。
698
︻エロ無し小話︼スリートップ︵前書き︶
・完全にエロありません。﹁エロねーよ﹂という苦情はご勘弁を。
・今回登場のモブキャラの再登場予定はありません。無いったら無
いです。
699
︻エロ無し小話︼スリートップ
やまなかれみい
とだりつこ
△△高校一年生の山中怜魅衣は、学級委員長の戸田律子と一緒に
明日の学校行事で使う雑貨の買い出しのため、東急ハンスへ来てい
た。
二人ともモブキャラなので名前を覚える必要はないが、怜魅衣は
そのキラキラネームが体を表すとおり、おつむが残念なイケイケコ
ギャルちゃんである。漢字変換するのも面倒なので以後カタカナで
書く。対して戸田は、三つ編みにメガネの学級委員長の鑑のような
少女である。
二人は仲が良いわけではなく、何をさせてもサボることしか考え
ないレミイを、荷物持ちとして戸田が連れてきたに過ぎない。
必要な品を手際よく買い物かごに放り込んでいく戸田に対し、レ
ミイは最初からつまらなそうで、すぐにはぐれていなくなってしま
った。戸田は探すのも面倒なので、最後に荷物持ちさえさせればい
いと、買い物を続けていた。
﹁あ∼、やっべ、これ超カワイイじゃん﹂
レミイは携帯電話グッズのコーナーへ行き、不必要に大きなスト
ラップを手にとっては、少ない語彙で感想を述べていた。
﹁んったく、戸田っちってばよ。買い物くらい一人で行けっての。
⋮⋮あれ? アイツは⋮⋮﹂
店の奥にいた小柄な少女に見覚えがある気がして、レミイは16
かねよし
MBくらいしか容量のない脳みそに検索をかけた。
﹁あっ、鐘良じゃん。へえ、こんなとこで会うなんてね。おもしろ、
からかってやろ﹂
かねよしのりこ
今年の四月に一緒に高校に入学し、同じクラスになったものの、
引越のため夏休み中に転校していった、鐘良納子だった。内気で気
の弱い性格だったのでクラスになじめず、委員長の戸田がよく面倒
700
を見ていた。戸田が唯一の友人だったと言っていいだろう。
納子が高級大豆食品の工場の娘であることを、レミイは知らない。
転校前の納子はそのことを隠していたので、唯一親しくしていた戸
田の他には、大豆のことを知っている生徒はいなかった。
納子の真価に気づくことのなかったレミイは、同じコギャル仲間
と一緒に、ことある毎に納子をからかった。おしゃれに疎く、ちび
でくせっ毛で運動音痴な彼女は、からかいのネタに事欠くことがな
かった。
イジメにまでは発展しなかったが、前の高校で納子に友人ができ
なかったのは、多分にレミイらの影響もある。みんな、まとめて標
的にされるのを避けたのだ。勇気を持って納子に寄り添ったのは、
戸田だけだった。
レミイは悪ガキの笑みを浮かべ、納子に近づいていった。最初は
喜々としていた彼女だが、近づくにつれ、訝しげな表情に変わって
いく。
︵⋮⋮鐘良って、あんな可愛かったっけ?︶
納子は横を向いて、便箋を手にとって眺めている。その姿は記憶
にある﹁鐘良納子﹂に間違いない。変わったところと言えば、知ら
ない学校の制服を着て、以前に比べると少しくせっ毛が落ち着いて
いるだけなのだが、半年ぶりに会う彼女は、不思議と垢抜けて見え
たのだ。
︵高校デビューでもしやがったのかな? まあいいや、それならそ
れでからかい甲斐があるや︶
レミイは深くは考えず、響く声で納子に声をかけた。
﹁あっら∼、鐘良じゃん、おひさ∼﹂
納子は驚いてビクッと肩を震わせ、振り向いた。
701
﹁あっ⋮⋮えっと、レミイ⋮⋮さん?﹂
彼女に関して良い思い出のない納子は一瞬顔を曇らせたが、すぐ
に愛想笑いを浮かべた。名前が思い出せたことにホッとする。
﹁あんた、あたしの名前忘れかけてんね。まあいいや、久しぶりじ
ゃん。転校したの、どこの高校だったっけ?﹂
﹁あ、○○高⋮⋮﹂
﹁あー、○○か。制服可愛いじゃん。でもって、鐘良も雰囲気変わ
ったね。どしたの? 気合い入れて転校デビューでもしたの?﹂
ニヤニヤ笑いながらレミイは聞いた。納子が困り顔で答える。
﹁デ、デビューとかしてないよ。そんな変わってないでしょ?﹂
﹁んなことないじゃん、雑草みたいだったくせっ毛が大人しくなっ
てるのは何で?⋮⋮あっ! 眉整えてんじゃん! あたしらが眉剃
れって言っても絶対剃らなかったくせに。なんだよ∼、転校を機会
に変身しちゃったわけ? 友達とか彼氏が欲しくて? 超ウケる!﹂
レミイはケラケラと笑った。
﹁そ、そんなんじゃないってば。普通でしょ?﹂
納子は不快そうな表情を浮かべたが、レミイは取り合わなかった。
﹁アハハハ! あたしらがいくら言ってもおしゃれしなかったくせ
に、転校デビューして目覚めたんだ? ファッション誌とかいっぱ
い買ってお勉強したの? 鐘良が? あんたも女の子だったんだね
え、アハハハ﹂
﹁⋮⋮﹂
納子は、もう何も言い返さず、唇を噛んで耐えた。謂われのない
ことでバカにされているのが、とても悔しかったが、理不尽すぎて
何と言い返せばいいのかわからなかった。
﹁レミイ、ほっつき歩いてないで荷物持って⋮⋮えっ、納子?﹂
大きなレジ袋を二つ抱えた戸田が、レミイを探してやってきた。
﹁あっ、りっちゃん﹂
久しぶりの再会に、納子は嬉しそうな表情を浮かべた。戸田も懐
かしそうに微笑む。
702
入学当初は委員長としての責務から納子をかまった戸田だったが、
彼女の人柄を知るにつれ、愛おしく想うようになった。家業の工場
を継ぐことを早くから決意し、大豆の良さを世に広める夢を抱いて
いる納子に、尊敬の念さえ覚えたのだ。短い間ではあったが、二人
は親友だった。
﹁納子⋮⋮元気そうで、良かった﹂
戸田も納子の変化に気づいた。彼女は、明らかに可愛らしくなっ
ていた。
それは、引っ込み思案だった納子が、前向きに女の子らしくなろ
うとしているのだと思えて、戸田にはとても好ましく感じられた。
﹁戸田っちさー、笑っちゃうよね、鐘良って、生意気に転校先でデ
ビューしちゃったみたいでさー⋮⋮﹂
﹁あ、のりちゃん、ここにいたの?﹂
﹁あ、未羽ちゃん﹂
納子の背後から現れた少女によって、レミイの言葉は遮られた。
レミイはポカンと口を開け、言葉を失った。その子が、あまりに
も美少女だったからだ。
お嬢様カットの、艶やかなストレートロングヘア。驚くほどの小
顔に、抱きしめたら折れそうな華奢な身体。
すっぴんだということは、レミイには一瞬でわかった。マスカラ
もアイラインも施していないその瞳は、それでも吸い込まれそうな
ほど美しく、涼やかだった。アイドルのオーディションを受けたら
一発で合格するだろうと思った。女の子なら誰もが羨む愛らしさだ。
レミイを驚かせたのはもう一つ、納子と同じ制服の、その着こな
しだった。
○○高の制服は、可愛いと評判のセーラー服である。白地に紺の
襟、襟に走る三本の白いラインはセーラー服の定番だが、襟と同じ
紺色と白ラインが袖口にもあしらわれている。これがオーソドック
スなデザインにアクセントを与えているのだ。
それに加え、白い胴の部分は寸胴ではなく、カットが入ってウエ
703
ストが詰められている。キュッとすぼまったくびれはまるで着せ替
はやり
え人形のようにキュートだ︵着る人を選ぶ︶。
スカートは流行のチェック柄ではなく、襟と同じ紺色の左巻きプ
リーツ。シンプルだが、プリーツの幅と素材感が絶妙で、上着との
組み合わせがハイセンスに可愛らしい。制服目当てに○○高を受験
する女子も多いというのもうなずける。
そのセーラー服を、未羽と呼ばれた少女は1ミリも着崩さずに着
こなしていた。いかに着崩して貞操感のなさをアピールするかを競
うレミイらとは、真逆のベクトルだった。
パリッと糊のきいた上着はしわ一つなく、落ち着いた朱色のリボ
ンタイは、キュッと締まってお行儀が良い。真っ白なハイソックス
と、曇りなく磨かれたローファーは清らかな少女らしさを漂わせて
いる。﹁この制服が好きだ﹂という思いが如実に伝わってくるよう
な着こなしだった。
レミイは、猛烈な嫉妬を感じた。同時に、﹁この子を連れて歩き
たい﹂という思いに駆られた。虚飾に生きるレミイのような人種に
とっては、自慢できる﹁友達﹂は最高のステータスなのだ。
だが同時に、レミイは複雑な感情を感じていた。それは彼女には
あまり縁がなく、言葉にして理解することができなかったが、﹁気
後れ﹂という感情だった。
目の前の少女は確かに美少女で、アクセサリーとして連れ歩くに
は最高であるのは間違いなかったが、自分とはあまりにもベクトル
が違いすぎる。考えないようにはしていたが、未羽と並べばレミイ
が見劣りするのは明らかだ。レミイは自分ではよく理解できない感
情によって、ギリッと歯がみした。
﹁もう、のりちゃんったら、探したんだよ﹂
未羽と呼ばれた少女は、頬を膨らませて肩を納子に擦り寄せた。
さりげないスキンシップが、二人の親密さをうかがわせる。
﹁み、未羽ちゃん、ごめん﹂
﹁ねえ、この人たちは? 友達?﹂
704
﹁うん、前の高校の⋮⋮﹂
未羽はキラキラと光がこぼれるような笑みを浮かべ、二人に挨拶
した。
﹁こんにちは、のりちゃんと同級生の、一ノ瀬未羽です﹂
戸田は、まるで娘に良い友達ができた母親のように満面の笑みを
浮かべ、﹁納子の前の高校でクラスメイトでした、戸田と申します﹂
と丁寧に挨拶を返した。レミイは、﹁⋮⋮山中っす﹂と、仏頂面で
簡素に自己紹介した。
レミイはすっかり意気をそがれ、戸田に﹁もう行こう﹂とうなが
そうとしたのだが、それを言う前に、もう一人の少女が現れた。
﹁あ⋮⋮のりも未羽も、どこ行ったかと﹂
﹁あっ、香奈ちゃん﹂
今度現れた少女にも、レミイは衝撃を受けた。
サラサラのボブカットに、切れ長の眼が凜とした印象を与える美
少女だ。こちらも納子や未羽と同じ制服を着ている。引き締まった
身体と姿勢の良さは、スポーツで鍛えていることを想像させる。
そして︱︱これが彼女の一番の身体的特徴なのだが︱︱巨乳だっ
た。貧乳で彼氏からいつもバカにされているレミイは、激しくコン
プレックスを刺激された。
﹁香奈ちゃん、こちら、のりちゃんの前の学校のクラスメイトだっ
て﹂
﹁ああ⋮⋮こんにちは、早乙女香奈です﹂
軽く会釈する間も、愛想笑いは浮かべない。如才ない未羽とは逆
に、洗練されたクールさを感じさせる。こういう、自分にも他人に
も厳しそうな完璧超人タイプは、レミイの苦手とするところだ。
﹁こら、のり。勝手にいなくなっちゃだめでしょ。探したのよ﹂
片手を納子の頭に伸ばし、髪をわしゃわしゃする。納子は焦って、
﹁ひえ∼﹂と変な声を出した。
﹁ご、ごめん、香奈ちゃん。でも、便箋見たかったの﹂
﹁言ってから移動してよ。迷子になったらどうするの﹂
705
﹁高校生にもなって迷わないよ∼﹂
香奈が彼女の頭を解放すると、納子は手ぐしで髪を整えた。仲の
良さをアピールするような振る舞いを見せつけられ、レミイは愕然
とした。どう見ても接点がなさそうなクールビューティーと納子が
じゃれ合っているのが、信じられなかった。
レミイは、あらためて三人を眺めた。
清楚なお嬢様系美少女の未羽と、宝塚の男役のような、凜とした
雰囲気をまとった香奈。どちらもそんじょそこらでお目にかかるこ
とのない美少女だ。
だが驚いたことに、タイプの違う二人の美少女に挟まれていなが
ら、納子はまったく見劣りしていなかった。レミイが﹁ダサい﹂﹁
どんくさい﹂と散々バカにしてきた少女は、三番目の個性として二
人の間に存在していた。
化粧もしていないし、髪と眉を整えたくらいで、何で︱︱?
確かに、外見の変化は些細なものかもしれない。納子が未羽と香
奈の間にすんなり収まることができるのは、納子の内面の変化︱︱
いろんなことに、ちょっとずつ自信がついてきたこと︱︱それと、
三人の信頼関係によるところが大きいのだが、うわべにとらわれて
いるレミイには、それを理解することはできなかった。
レミイは、﹁負けた⋮⋮﹂と思った。納子のように、あの二人の
間に収まることは、自分には到底できない。きっと、引き立て役に
しかならず、劣等感を味わうだけだろう。未羽と香奈に挟まれ、笑
顔をふりまいている納子に、レミイは激しく嫉妬した。
﹁もういいや⋮⋮帰ろう、委員長﹂
力ない声でそう言うと、レミイは別れの言葉も言わず後ろを向い
た。そのままとぼとぼと歩き出す。
﹁あっ、ちょっと、レミイ!﹂
戸田はレミイと納子たち三人を交互に見たが、レミイを放ってお
706
くわけにも行かず、彼女を追いかけざるを得なかった。
﹁納子、今日は会えて嬉しかったわ。とっても元気そうで安心した。
未羽さんと香奈さんも、お元気で!﹂
早口に別れの口上を述べ、頭を下げると、戸田は両手に大きなレ
ジ袋を下げながら走って行った。
﹁りっちゃーん! 元気でねー!﹂
彼女の背中に、納子が大きな声をかける。戸田はチラッと振り向
いて、そのまま駆けていった。
﹁戸田さんって、いい人だね。のりちゃん﹂
未羽がそう言うと、納子は戸田の背に振り続けていた手を下ろし
た。
﹁うん。前の学校でね、いっぱいお世話してもらったの。あたし、
ぼんやりしてるから⋮⋮﹂
﹁そう。でも、もう一人の子は、あたし、あんまり好きくない﹂
人の悪口など口にしたことのない未羽が、珍しく顔をしかめて言
った。
﹁うん⋮⋮レミイさんには、あたし、いっつもからかわれて⋮⋮あ
んまり、いい思い出、ない⋮⋮﹂
苦笑いを浮かべて俯く納子。香奈は彼女の肩にそっと手を乗せた。
﹁わかってるわ。だから、わたしたちが仲いいとこ、見せつけてや
ったの。悔しがってたよ、あの子﹂
﹁ああ、それで、べたべたと⋮⋮﹂
納子は納得した。未羽も香奈もスキンシップは大好きなのだが、
人前では自重しているのだ。その分、お泊まりのときなどはハムス
ターのようにひっつき合うのだが。
﹁そっか⋮⋮ありがとう。あたし、未羽ちゃんと香奈ちゃんと、友
達で良かった⋮⋮﹂
﹁何よー、のりちゃん、お礼なんて。あたし達のほうが⋮⋮﹂
﹁あっ、あのっ!﹂
切迫した声で呼びかけられて、三人は前を向いた。戸田が息を切
707
らせて立っている。走って戻ってきたようだが、両手に荷物はない。
レミイに預けてきたようだ。
﹁あ、あの、未羽さん、香奈さん﹂
胸に手を当て、真面目な顔で戸田は言った。
﹁わたし、新しい学校で納子に友達ができて、すごく嬉しいんです
! 納子は、本当にとってもいい子なんで⋮⋮未羽さんも香奈さん
も、これからもずっと、納子と友達でいてあげてください!﹂
堰を切ったように戸田は喋った。未羽と香奈は、面食らって目を
しばたたかせたが、すぐに、にっこりと微笑んだ。
﹁のりちゃんがいい子なのは、あたしたちが一番よく知ってるよ。
安心して﹂
未羽が優しくそう言うと、戸田はホッとして表情を緩めた。
﹁でも、﹃友達でいてあげて﹄ってのは感心しないわね﹂
﹁えっ⋮⋮?﹂
香奈の言葉に、戸田は再び緊張する。
﹁﹃友達でいてあげる﹄んじゃなくて、わたしたちは、のりと友達
でいたいから友達なの。これからも、ずっとね﹂
香奈は戸田に微笑みかけた。一見冷たくさえ見えるクールな顔に
浮かんだその笑顔は、戸田もドキリとするほどチャーミングだった。
﹁は、はいっ! よろしくお願いします! あっ、の、納子、メア
ド教えて!﹂
﹁えっ? あ、うん﹂
戸田は未羽と香奈に深く頭を下げてお願いしたあと、納子とメア
ドを交換して去って行った。姿が見えなくなるまで、何度も振り向
いては大きく手を振っていた。
﹁あはは、何か慌ただしい子だね、戸田さん。でもすっごいいい人﹂
未羽が可笑しそうに笑って言った。
﹁うん⋮⋮あたしも、久し振りに会えて嬉しかったな。でも、あん
なに心配してくれてたとは思わなかった﹂
﹁メアド、聞いてなかったの?﹂
708
香奈がもっともな質問をする。
﹁りっちゃん、携帯持ってなかったんだよ。最近買ってもらったん
だね。家電は知ってたけど⋮⋮かけないよね?﹂
﹁そうなんだ? 今どき携帯を持たされていなかったとは⋮⋮本当
に委員長キャラだね﹂
﹁のり、戸田さん安心させてあげるために、﹃最近は三人で友ちゅ
ーしてるよ﹄ってメールで教えてあげたら?﹂
﹁おっ、送んないよっ! そんなメール!﹂
ぼわっ、と顔を赤くする納子。相変わらずのリアクション王だっ
た。
﹁送んないよって。友ちゅーよりすごいこと何度もしてるのに、い
まさら﹂
﹁なっ、何のことっ!?﹂
未羽が口に手を当てて﹁ぷぷぷ﹂と笑いながらそう言うと、納子
はますます顔を赤くして、焦りの汗を浮かべた。
香奈は、納子が頭の上に吹き出しを浮かべて、これまでの数々の
エッチエピソードを回想しているのを想像した。
︵わたしたちが納子にあんなことやこんなことをしていると知った
ら、戸田さん心配するでしょうねえ︶
以前男装おうちデートで、納子に指二本入れてイカせてあげたこ
とを思い出しながら、﹁そろそろまた男装デートしてあげようかし
ら﹂と思い、香奈は納子に気づかれないように舌なめずりした。
ふと、未羽と眼が合うと、彼女はニヤリと笑ってウインクした。
未羽もエロいことを企んでいるんだろうなと、香奈は思った。
﹁のり、買い物も済んだし、今日は未羽のお家に寄って、たっぷり
ちゅっちゅしてきましょう。未羽、おじゃましていいかしら?﹂
﹁うん、いいよ。ちゅっちゅ、ちゅっちゅ﹂
﹁お、お店の中でそんなこと言わないで∼!﹂
709
頭から湯気を出して恥ずかしがる納子を、未羽と香奈はそれぞれ
片手を引いて連行していく。
親友はできたが、エロ事に巻き込まれることは誰も心配してくれ
ない納子だった。
710
︻エロ無し小話︼のりちゃんと友人のロングトーク その①︵前
書き︶
サブタイトルにあるように、エロ無しです。︱︱と思わせておいて、
もなく本当にエロ無しです。
﹁これ、前話の﹃スリートップ﹄と内容同じじゃん﹂とは思ったの
ですが、脳内でずーっと納子と知美の会話が続いていたので、頭の
中から外へ出すことにしました。
最後まで二人がくっちゃべってるだけなので、暇つぶしにお読みく
ださい。
711
︻エロ無し小話︼のりちゃんと友人のロングトーク その①
はらともみ
お
平日の昼休み。一年B組の教室で、鐘良納子はクラスメイトの小
原知美と向かい合わせに座り、昼食を食べていた。
知美は納子の友人で、クラスの中では一番仲が良い。文芸部で三
つ編みでメガネっ子という、わかりやすい文学少女キャラだ。
納子も知美も人見知りで大人しい性格なので、打ち解けるのに時
間はかかったが、似たもの同士なので一度親しくなるとすぐに仲が
良くなった。今ではクラスで一番の仲良しである。
先に断っておきますが、知美はモブキャラなのでエロ展開も再登
場の予定もありません。あしからず。
﹁この前の土曜さ、のりちゃんとこでお豆腐買ったんだ、わたし﹂
鮭の切り身をほおばりながら、知美が言った。
﹁えっ、そうなの? ありがとう。お店に来たんなら声かけてくれ
ればいいのに﹂
﹁うーん、あんまり時間なかったし、のりちゃん忙しかったら悪い
と思って。本当にお豆腐一丁2000円するんだね⋮⋮びっくりし
た﹂
納子の家は豆腐工場兼販売店兼住居である。豆腐が一丁2000
円、藁包みの納豆が一つ1000円する。銀座の高級料亭から注文
が来る高級大豆食品店である。
﹁ごめんね、高くて。で、なんでまたうちの豆腐買おうと思ったの
?﹂
豆腐の厚揚げを頬張りながら納子が聞く。
﹁わたしの兄さん、茨城で働いてるんだけど、結婚を前提に付き合
ってる人がいて、土曜に家に連れてくることになったのね、一泊で。
わたしもちょっとだけ兄さんの婚約者さんに会ったことあるんだけ
ど、すごくいい人なの。お父さんとお母さんもその人すごく気に入
712
ってるから、どうやってもてなそうかって頭を悩ませて、豪勢な食
事といえば蟹か海老だろうって、時季外れだけど蟹鍋出すことにし
たの。両親はお金には糸目着けない感じだったから、﹃わたしの友
達が高級な豆腐屋さんやってるよ﹄って教えてあげたら、眼を輝か
せて﹃すぐ買ってこい!﹄って。そういうわけなの﹂
﹁へえ、おもてなしにうちに豆腐を選んでくれるなんて、嬉しいよ。
それで、味はどうだった?﹂
知美は紙パックのヨーグルトを、ちゅーっと吸った。
かすみ
﹁感想はちょっと待って、順を追って話したいの。えっと⋮⋮﹃婚
約者さん﹄って呼ぶの面倒だから、香澄さんって名前で呼ぶわ。そ
れで、兄さんは香澄さん連れて、土曜の夕方に帰ってきたの。久し
ぶりに会ったけど、やっぱりきれいで優しくてね、すごく素敵な人
なの。両親も、兄さんがいい人をお嫁さんに見つけたことがすごく
嬉しそうで、和気あいあいで団らんしたの、すごくいい雰囲気だっ
た。
で、いよいよ夕食で蟹鍋出したのね。こう、惜しげもなく蟹がババ
ーン!って乗ってる感じで。香澄さんが﹃すみません、こんな気を
つかわせてしまって﹄って恐縮するくらい。
鍋が蟹で敷き詰められてるから、蟹取らないと下の具材に届かない
の。だから先ず、みんな取り皿に蟹取って食べたんだけど⋮⋮その
蟹ね、お父さんがネットで調べて、評判の良かった通販サイトで取
り寄せたんだけど、時季外れだからちょっと冷凍焼けしちゃってて
⋮⋮不味いってほどじゃないけど、イマイチだったんだよね﹂
﹁えー? あらら⋮⋮﹂
納豆巻きを食みながら、納子は親身になって心配そうな声を上げ
た。
﹁ひとくち食べて、みんな﹃あれっ⋮⋮?﹄って顔になって。お父
さんとお母さん、青くなって香澄さんに謝るの。香澄さんは﹃そん
なことないですよ、美味しいです﹄って取りなすんだけど、期待外
れな味なのは明白なわけで⋮⋮そのうちみんな黙っちゃって、さっ
713
きまで和気あいあいだったのに、一気にお通夜みたいになっちゃっ
たの。兄さんだけが、場を盛り上げようと一人で喋ってた﹂
﹁うわー、それはつらい状況だね⋮⋮﹂
納子は肩を縮まらせた。話を聞いているだけで、いたたまれない
気持ちになってくる。
﹁それでも、黙々と食事は進むわけで⋮⋮蟹の次に何に箸を伸ばす
かというと、わたしたち家族はお豆腐が高級品だって知ってるから、
先ずは味をみようと、揃ってお豆腐を取るのね。
香澄さんも、同じようにお豆腐を取ったの。のりちゃんちのお豆腐、
色つやが良くてぷるんとしてて、見るからに美味しそうだから、思
わず手が伸びちゃうんだろうね。
わたしはお箸を止めて、香澄さんを観察してた。香澄さん、湯気が
立ってるお豆腐を、上品に息吹いて冷ましてね、そしてちょっとお
豆腐を見つめてから、はむ、と食べたの﹂
文学少女だけあって描写が細かいな、と納子は思った。知美のこ
ういう話し方を、納子は好ましく思っている。
﹁口に入れてひと噛みした瞬間、香澄さん、眼を大きくしてね、お
箸を持った手をあごに当てて、味を確かめるように咀嚼するの。ま
るで初めて食べる食べ物みたいな顔してた。
ごく、って飲みくだすと、すぐにまた取り皿に箸を伸ばして、急い
で息吹いて冷まして、口に放り込むの。
まだ熱いもんだから、はふ、はふ、ってしちゃって。ずっと年上な
のに、なんか可愛かった。それで、驚いたような顔してるのね。
わたし、あらためて家族を見わたしてみたら、香澄さんだけじゃな
くてみんな同じ顔してた。眼を大っきくして、じっ、と取り皿のお
豆腐を見つめてるの。
香澄さんはお豆腐を食べきると、取り皿とお箸を置いてね、はふぅ、
って溜息つくの、満足そうに。それから、すっごい切実な顔して、
こう聞くのよ。﹃あの⋮⋮お母さん、このお豆腐、何ですか⋮⋮?﹄
って。
714
お母さんもお豆腐に衝撃受けてぼんやりしてたから、﹃え?﹄って
聞き返した。香澄さんは、﹃⋮⋮このお豆腐、普通のじゃないです
よね? 美味しすぎて⋮⋮こんなお豆腐、食べたことないです﹄っ
て言うの。
わたしは、ガッツポーズしたい気持ちだったよ。蟹でしくじったの
を、お豆腐で挽回することができたってね。
お母さん慌てて、﹃あ⋮⋮ああ、これ!? えーとね、知美のお友
達のお豆腐屋さんで作ってるのよ。わたしたちも初めて食べるんだ
けど、本当に美味しいわね⋮⋮﹄って言って、わたしに目くばせす
るの、あんたも何か喋れって。
わたしが、﹃大豆鐘良っていうお店で、高級なお豆腐や納豆を作っ
てるんです。銀座の料亭から注文がくるようなお店なんですよ﹄っ
て教えてあげたら、香澄さんすっごい感心した顔した。﹃あの、も
う少しいただいてもいいですか⋮⋮?﹄って遠慮がちに言うから、
みんなして﹃どうぞ,どうぞ﹄って、ダチョウ倶○部みたいにすす
めて。それですっかり和んじゃった。
極めつけは、お父さんが﹃どうです、うちの湯豆腐は美味しいでし
ょう﹄って冗談言って、兄さんがそれに﹃こんなに蟹が入った湯豆
腐があるかよ!﹄って突っ込んで、一同大爆笑。
それからはみんな笑顔で、楽しくお話ししながら食卓を囲んだの。
もうさあ、のりちゃん様々だよ。鐘良のお豆腐がなかったら、どん
な暗い食事会になっていたやら﹂
知美は、大げさに机に両手をついて頭を下げた。冗談めかしてい
るが、本当にそれくらい感謝しているのだろう。
﹁いやいやいや、知美ちゃんお客さんなんだから、頭上げてよ。う
ちの豆腐をそんな大事なおもてなしに出してくれて、あたしのほう
こそ感謝だよ。それで、知美ちゃんはどうだったの? うちのお豆
腐﹂
将来兄とともに工場を背負って立つつもりの納子は、一番気にな
ることを聞いた。
715
﹁わたし猫舌だから、一番最後にお豆腐を口にしたんだけど⋮⋮ひ
と口食べたとたん、お豆腐の常識が吹き飛んだよ﹂
知美は真面目な顔をして言った。
﹁こう、ひと噛みしたとたんに、じゅわって香りと旨味が口の中に
広がって⋮⋮噛めば噛むほど味が出てきて、ものすごく濃厚なのね。
でも、同じ﹃美味しい﹄でも、フランス料理みたいな小洒落た﹃美
味しい﹄じゃなくて、すっごく素朴な味わいなの。
食べてるのはお豆腐なのに、頭の中には茹で上がった大豆や大豆畑
が思い浮かぶんだよ。大地と地続きな味なのね。本当に美味しかっ
た﹂
﹁知美ちゃん、さすが文学少女だね⋮⋮そこまで褒めてもらえて、
嬉しいよ﹂
納子は感謝の言葉を述べながら、食べ終わった弁当の蓋を閉じた。
﹁翌日はね、朝ご飯に納豆出したの。お店の人が、﹃最初はお醤油
だけで食べるといいですよ﹄って言うから、そうして出したんだけ
どね。
香澄さん、大豆鐘良の納豆ですよって言ったら、期待に眼をキラキ
ラさせてた。炊きたてのご飯の上に納豆乗っけてね、ひと口頬張っ
たらもう、眼を閉じて恍惚とした顔しちゃって、﹃美味しい∼﹄っ
てしみじみ言ってたよ。わたしも食べたけど、スーバーで売ってる
納豆と比べられる代物じゃないね。噛みしめるとアミノ酸の旨味が
口の中にブワッと広がって⋮⋮納豆が発酵食品だってこと、再認識
したよ﹂
﹁納豆も買ってくれたんだ、ありがとう。高いから毎日は食べれな
いだろうけど、たまに思い出して買ってくれたら嬉しいよ﹂
﹁うん、香澄さんはね、ご両親にも食べさせたいって、帰りにお豆
腐と納豆お土産に買うって言ってた。うちの家族も、時々は食べよ
うって言ってるよ。これからは、誕生日やクリスマスにケーキとお
豆腐が出てくるよ、うちは﹂
﹁あはは、ごひいきにしてくれて、ありがとうね﹂
716
ひとしきり話し終え、知美はしばらく黙って弁当の残りを食べた。
少しの間二人とも無言だったが、気心が知れているので気まずくは
ない。
☆
717
︻エロ無し小話︼のりちゃんと友人のロングトーク その②
﹁知美ちゃん、五限の英語の課題やってきた?﹂
知美が食べ終わるタイミングで、納子が別の話題を振った。
﹁うん。のりちゃん、やってないの?﹂
﹁やったけど、和訳で一個わかんないのがあって。知美ちゃんの見
せてくれない?﹂
﹁いいよ、待ってて﹂
机をあさってプリントを探していた知美が、﹁あれ?﹂と声を上
げた。
﹁どしたの? 知美ちゃん?﹂
﹁あー⋮⋮ノートとプリントは持ってきたんだけど、教科書忘れち
ゃった。どうしよ﹂
困り顔をする知美。納子は、なーんだ、という顔をしている。
﹁他のクラスから借りてきたら?﹂
﹁⋮⋮他のクラスにあんまり親しい子いないのよ、わたし⋮⋮文芸
部は一年わたしだけだし﹂
﹁じゃあ、後で未羽ちゃんか香奈ちゃんに借りるよ。一緒に行こ﹂
﹁ありがとう⋮⋮のりちゃんってさ、C組の一ノ瀬さんと早乙女さ
んの両方と仲いいよね⋮⋮すごい﹂
人見知りな知美が、尊敬の眼で納子を見つめる。納子は照れて頬
を赤くした。忘れているかもしれないので補足するが、一ノ瀬が未
羽の姓で、早乙女が香奈の姓だ。
﹁すごいって⋮⋮未羽ちゃんのほうから友達になってくれただけで
⋮⋮未羽ちゃんは、ほら、誰とでも分け隔てなく接するじゃない?﹂
﹁うん⋮⋮一ノ瀬さんはね、まだわかるの。一ノ瀬さんって、あん
なに可愛いのに全然すましたところなくって、みんなに親切だよね。
718
猫被ってるんじゃなくて、本当に心が清らかなの。あの笑顔見てる
と、マリア様かと思っちゃう。一ノ瀬さんならね、引っ込み思案な
のりちゃんの、内に秘めたいいところに気づけるんだろうなって、
そう思うの﹂
友達が褒められるのは嬉しかったが、後半の自分への評価が喜ん
でいいのかどうかよくわからない納子だった。
﹁⋮⋮まあ、確かに声かけてくれたのは未羽ちゃんのほうからだっ
たけどね﹂
﹁うん、一ノ瀬さんはね、向こうから接してきてくれたら、それほ
ど緊張せずお話しできそうな気がするのよ。多少粗相をしても、笑
って許してくれそうなの。
でも、早乙女さんは⋮⋮あんまりにも凜々しすぎて、近寄りがたい
というか、恐れおおいというか⋮⋮。のりちゃん、よく早乙女さん
と気軽に話せるね﹂
弁当箱を片付けながら、知美は尊敬の眼で納子を見つめた。
﹁うーん、そんなことないんだけどな⋮⋮香奈ちゃん、吊り目で愛
想笑いしないから怖く見えるけど、未羽ちゃんと同じくらい優しい
よ?﹂
﹁吊り目って失礼でしょ、あれは切れ長の眼って言うのよ。それに、
わたしは近寄りがたいのであって、怖いとまでは思ってなくて⋮⋮
畏敬の念というか⋮⋮﹂
納子は、知美は香奈に憧れを抱いているんだろうな、と察した。
それは、納子も同じだ。人は自分が持っていないものを持っている
人に憧れるのだ。
﹁一ノ瀬さんと早乙女さんってペアみたいなものだから、一ノ瀬さ
んと仲良くなったら自動的に早乙女さんともお近づきになるんでし
ょうけど⋮⋮最初は緊張しなかった? わたし、もし何か失敗して
早乙女さんを怒らせてしまったりしたら、たぶん卒倒するわ﹂
﹁だから、香奈ちゃん滅多なことで怒ったりしないって。でも、最
初はね、あたしも緊張したし、うまく話せなかったよ。何でこんな
719
に大人っぽくてクールな人が、あたしなんかにかまってくれるんだ
ろうって思ってた﹂
﹁だよねー。どういう心境の変化で、早乙女さんと気やすく付き合
えるようになったの?﹂
軽く身を乗り出して知美が聞く。未羽と香奈は学校のアイドルみ
たいなものだから、どうやって親しくなったのか、興味津々なよう
だった。
納子は軽く受け流すべきか、それとも真実を話すべきか、少し迷
った。そして、知美の誠実さを信じて、話せる部分だけ話すことに
した。首を左右に振って聞き耳を立てている者がいないことを確認
すると、納子は真面目な顔をしてこう切り出した。
﹁⋮⋮知美ちゃん、秘密守れる?﹂
真剣な様子に少々気おされた知美だが、もちろん﹁うん﹂と答え
た。
﹁⋮⋮あのさ、未羽ちゃんと香奈ちゃんって、すっごく仲いいけど、
人前でべたべたしないでしょ?﹂
﹁え? あー⋮⋮うん、一緒にいること多いけど、キャピキャピは
しゃいだりする感じはないかな﹂
知美は、廊下ですれ違ったりするときに見かける二人の様子を思
い浮かべた。二人の関係は大人っぽいというか、他の女子と違って、
大きな声で高笑いしたり、肩をバンバン叩いたりということはしな
い。﹁仲良しの友達﹂というよりは、﹁おしどり夫婦﹂と言ったほ
うがぴったりくる。二人はいつも、ほんわかした雰囲気で一緒にい
るのだ。
﹁あれはねえ⋮⋮人前では、控えてるんだよ﹂
手で口をかくし、ひそひそと納子は話した。知美が怪訝そうな顔
をする。
﹁何? 控えてるって?﹂
﹁未羽ちゃんと香奈ちゃんね、二人っきりになると、スキンシップ
すごいんだよ。ず∼っとひっついてるの。二匹の子猫みたいだよ﹂
720
﹁えぇっ!? 何それ!? ほ、本当なの!?﹂
知美が驚いて眼を丸くした。納子は話を続ける。
﹁本当。あたしも、初めて香奈ちゃんと一緒に未羽ちゃんち遊びに
行ったとき、びっくりしたよ。道歩いてるまでは普通にしてたのに、
家に着くなり腕組んだりハグしたり⋮⋮果てはほっぺにちゅーまで
するし。二人きりになるとこんなに甘々なんて知らなかったら、す
ごいびっくりした﹂
﹁ほ、本当なの、それ⋮⋮? わあぁ! あ、あの美少女ペアが、
抱き合ったり、ほっぺにちゅーとか⋮⋮うう、絵的に美しすぎる⋮
⋮!﹂
知美は両手を頬に当て、顔を真っ赤にした。知美は未羽にも並な
らぬ憧れを抱いているのだ。百合の花に囲まれた未羽と香奈が、抱
き合いながら愛を語らっているところを想像すると、頭がカッカと
のぼせてくるのだった。
﹁未羽ちゃんさあ、髪、きれいじゃない? つやっつやのロングス
トレートで﹂
﹁う、うん⋮⋮﹂
﹁でね、断りもなく髪触る人、いるじゃない? ﹃髪きれいだねー﹄
とか言って。そういうのって悪気はないんだろうから、未羽ちゃん
我慢して受け流してるんだけど、本当は、髪触られるの、嫌なんだ
って﹂
﹁ああ、それわかる。生理的にダメって人、いるよね。一ノ瀬さん、
髪をすごく大事にお手入れしてそうだから、よけいそうなんだろう
ね﹂
﹁でね、香奈ちゃんは、胸触られるのが嫌いなの。着替えのときと
か、ふざけて触る子いるじゃない? そういう子ってたいがい乱暴
に触るから、単純に痛いし、不愉快だって。
まあ、ふざけてそういうことしてくる子は、思いっきり睨みつけて
やると二度としてこないって、香奈ちゃん言ってたけど﹂
﹁う⋮⋮あの立派なお胸は一度触ってみたいと思ってたけど、早乙
721
女さんに睨まれたら、わたしきっとショック死するわ⋮⋮﹂
知美は怯えて身を縮こまらせた。香奈の巨乳も気になっていたよ
うだ。
﹁でもね、二人っきりになるとね、香奈ちゃんは未羽ちゃんの髪を
指で梳いたり、三つ編みにして遊んだりしてるし、未羽ちゃんは断
りもせず香奈ちゃんのおっぱい触ってるし、もう、見てるほうが落
ち着かないくらい、いちゃいちゃするんだよ﹂
﹁一ノ瀬さんそんなことするの!? あ、あの豊かなふくらみを触
り放題⋮⋮う、うらやましい⋮⋮! それに、未羽さんの三つ編み
とか⋮⋮! あ∼! ひと目見てみてみたい!!﹂
両手を握りしめ、知美は悶えた。だいぶ百合妄想の激しい性質の
ようだった。
﹁知美ちゃん、悶えないで。話を元に戻すよ﹂
﹁はぁ、はぁ⋮⋮う、うん⋮⋮元の話って、何だったっけ?﹂
﹁どうやって香奈ちゃんと気やすく付き合えるようになったかって
話だったでしょ。⋮⋮いま話したとおり、未羽ちゃんと香奈ちゃん
のイチャつきぶりはすごいわけだけど⋮⋮仲良くなるにつれて、あ
たしにもすっごいスキンシップしてくるようになってくるのね﹂
﹁一ノ瀬さんと早乙女さんがスキンシップしてくるの!? のりち
ゃんに!?﹂
納子は平静を装っていたが、頬がほんのり赤くなっていた。
﹁うん⋮⋮猫をあやすみたいに、すっごい触ってくる。でね、香奈
ちゃんと知り合ったばかりのころは、不安だったんだよ、﹃こんな
クールな人が、本当にあたしなんかのこと好いてくれてるんだろう
か? 未羽ちゃんがあたしにかまってるから、ついでにそばにいる
だけなんじゃないだろうか?﹄って。
でもね、さっき、未羽ちゃんは髪触られるの嫌いで、香奈ちゃんは
胸触られるの嫌いって話したでしょ? 好きな人は別として。それ
って逆もそうで、やっぱり好きでもない人を、ぺたぺた触ったりし
ないだろうと思ったの。
722
それがわかったら、香奈ちゃんがあたしのこと好きでいてくれるの
が信じられるようになって⋮⋮それで、固くならずに話せるように
なったの﹂
知美は、﹁へ∼﹂と長く感嘆の声を上げた。
﹁なるほどねえ、スキンシップか⋮⋮そりゃ、嫌いな人をわざわざ
触るなんてことしないよね、納得した⋮⋮それで、のりちゃんのほ
うからスキンシップすることもあるの?﹂
﹁んえっ!?﹂
知美の質問に納子は一瞬言葉を詰まらせたが、いまさらごまかす
こともできず、正直に話すことにした。
﹁⋮⋮ま、まあ、むこうが触ってくるんだから、あたしも触るよ。
未羽ちゃん、あたしが髪触っても嫌がらないし⋮⋮﹂
﹁早乙女さんは?﹂
﹁え?﹂
﹁早乙女さんはどうなの? のりちゃんから触ったりするの?﹂
﹁す、するよ。⋮⋮香奈ちゃん、あたしが肩とか髪とか触っても嫌
がんないし﹂
﹁⋮⋮そう⋮⋮さっき、一ノ瀬さんは早乙女さんの胸触るって、言
ったわよね⋮⋮? のりちゃんは、どうなの?﹂
知美が真剣な顔で睨むので、納子はたじろいだ。
﹁ど、どうって⋮⋮﹂
﹁質問の意味わかってるでしょう? はぐらかさないで。早乙女さ
んのおっぱい、触ったことあるの?﹂
知美に、じっと見つめられ、納子は冷たい汗を流した。もう、こ
れだけスキンシップの話をしているのだから、今までに香奈の胸に
触れたことがないというほうが不自然だった。
しかし、事実をありのままに言うわけにもいかない。実際は、触
るどころか生乳を揉んで乳首をしゃぶったりしたこともあるのだが、
それを正直に言うと知美が鼻血を出して死んでしまうかもしれない。
納子は﹁仲のいい友達﹂レベルのおっぱいの触り方を想定し、そ
723
てい
の体で話すことにした。
﹁⋮⋮まあ⋮⋮触ったこと、あるよ⋮⋮香奈ちゃんにお願いして。
あんな大っきいおっぱい、触ってみたくなるよ、誰だって﹂
﹁やっぱりあるんだ⋮⋮それで、触り方にもいろいろあるでしょう
? どんな風に⋮⋮触ったの?﹂
身を乗り出してくる知美。納子は十センチほど身を引いた。
﹁⋮⋮⋮⋮未羽ちゃんちに、香奈ちゃんと一緒にお泊まりしたとき
に⋮⋮え、えっと⋮⋮パジャマの上から﹂
知美はごくりと唾を飲み込んだ。
﹁そのとき⋮⋮ブラは?﹂
﹁⋮⋮着けてなかった﹂
ぐふっ、と知美が変な声を出した。
﹁パ、パジャマの布越しなんて、ほとんど生じゃない! あ、あの
豊かなお乳を⋮⋮羨ましい∼!! そ、それでどんな感じだったの
⋮⋮?﹂
まるで童貞のような食いつきっぷりだった。
﹁どんなって⋮⋮まず、大っきいよ。手をいっぱいに広げても、全
然はみ出しちゃう。メロン二個だよ。同い年なのに、何食べたらあ
んなに育つのか⋮⋮。
でもね、あれだけ大きいと、もう自分のおっぱいと比べる気にもな
らないよ。もう階級が別だから、コンプレックス感じないの。触っ
てるとありがたくなってくるよ、御利益ありそうで﹂
﹁ほ、ほぉぉぉ⋮⋮﹂
﹁それでね、柔らかいの⋮⋮ぎゅってすると、指の一本一本が沈み
込んじゃう。揺らすとね、ゆらゆら波を打つの。まるでスライムだ
よ﹂
﹁そんなにがっつり早乙女さんのおっぱい触ったの!? ちょっと
タッチするくらいだと思ってた!﹂
興奮して知美は言った。喋りすぎただろうか、と納子は思った。
これでも真実の十分の一も話していないだが。
724
﹁それにしても、お泊まりまでしてるの? 本当に仲いいのね⋮⋮
早乙女さんのお宅にも、泊まったことあるの⋮⋮?﹂
﹁⋮⋮ある。未羽ちゃんと一緒にお泊まりしたこともあるし⋮⋮一
人でも﹂
﹁早乙女さんとひと晩一緒に過ごすの!? うう⋮⋮早乙女さんは
憧れだけど⋮⋮ひと晩二人っきりとか、絶対無理⋮⋮! いったい
何を話すのよ⋮⋮酸欠になりそう⋮⋮﹂
苦しそうに胸を押さえる。想像力がたくましすぎる知美だった。
﹁だから、知美ちゃんの香奈ちゃんのイメージがおかしいんだって
ば。香奈ちゃん普通の女の子だよ﹂
﹁う∼、のりちゃんはそう言うけど、早乙女さんはまばゆすぎて⋮
⋮あ、もうひとつ確かめなきゃいけないことが⋮⋮お風呂って、ど
うしてるの?﹂
﹁は?﹂
納子の顔が硬直した。
﹁お風呂、どうしてるの⋮⋮? 別々に入るの?﹂
納子は眼を二、三回しばたかせてから、正直に答えた。
﹁⋮⋮⋮⋮一緒に入ってる。三人のときは、三人で﹂
﹁桃源郷じゃないの!﹂
知美は顔を火照らせ、額に手を当てて溜息をついた。
﹁はぁ⋮⋮一ノ瀬さんの裸とか、同性だけどすごい見てみたい⋮⋮
すらっとしてきれいなんだろうなあ、あの長い髪、濡れたらどんな
に色っぽいんだろう⋮⋮。
早乙女さんも、あんな大っきな胸してるのに、スポーツしてるから
身体キュッと締まってるし⋮⋮さ、早乙女さんのおっぱいって、ど
んな⋮⋮なの?﹂
直球で聞いてくる知美だった。
﹁あんなに大きいから、垂れてるんじゃないかって思うでしょ? 香奈ちゃんね、すんごい美乳だよ⋮⋮﹂
﹁うそ⋮⋮すごい⋮⋮! わ、わたしね、早乙女さんの胸って、服
725
の上から見てもきれいな形してるから、美乳なんじゃないかって思
ってたの!
でも、あんなに大きいと、やっぱり垂れちゃうのかな∼って。それ
が自然なのかな∼って思ってたんだけど⋮⋮良かった、夢が壊れな
いで﹂
﹁香奈ちゃんのおっぱいはねえ、あんなに大っきいのに横に広がら
ないで、キュッと上向いてるの。乳首もきれいなピンク色だし。
あんな絹ごし豆腐みたいに柔らかいおっぱいが、きれいに形を保っ
ているのが不思議で不思議で⋮⋮たぶん重力を緩和する機能かなん
かが備わってるんだと思うよ。でなきゃ説明がつかない﹂
﹁すごい⋮⋮早乙女さんの巨乳って、科学を超越しているのね⋮⋮﹂
二人は眼を閉じ腕を組んで、うんうん、と大きくうなずいた。本
気で重力をキャンセルする機能があると思っているようだった。
﹁さて、知美ちゃん、そろそろお昼時間終わるから、教科書借りに
行かないと﹂
﹁そ、そうね⋮⋮うう⋮⋮早乙女さんと一ノ瀬さんのお話、いっぱ
い聞いたあとだから、すごく変な気持ちだわ⋮⋮やましいことをし
ているような⋮⋮﹂
﹁別に悪いこと何もしてないじゃない。ほら、C組行くよ﹂
尻込みする知美の手を引いて、納子はC組へと向かった。
☆
726
︻エロ無し小話︼のりちゃんと友人のロングトーク その③
﹁う⋮⋮一ノ瀬さんが、いない⋮⋮﹂
トイレにでも行っているのか、C組には未羽の姿がなかった。代
わりに香奈が一人席に腰掛け、次の授業の準備をしている。
﹁ほら、行くよ﹂
﹁ちょ、ちょっと待って、心の準備が⋮⋮﹂
﹁授業始まっちゃうよ、ほら﹂
﹁あっ、ちょ⋮⋮待って﹂
納子がすたすたとC組に入っていくので、知美は背中に隠れるよ
うにしてあとをついていった。
﹁香奈ちゃん﹂
﹁あ、のり。どうしたの?﹂
香奈は、納子に隠れるようにして、緊張気味な顔をしている少女
に気づいた。C組に来たのはその子が関係する用だろうかと、軽く
首をかしげる。
﹁この子、あたしのクラスの知美ちゃん。今日、五限英語なんだけ
ど、教科書忘れちゃったの。香奈ちゃん、貸してくれない?﹂
﹁ああ、ちょうど三限で英語あったわ。いいわよ﹂
香奈は机の中から教科書を取り出した。﹁はい﹂、と知美に向か
って差し出す。
﹁あ、ありがとうございます!﹂
力みすぎな声で礼を言って、知美は教科書を受け取ろうとした。
が、香奈はまるで意地悪するように、彼女が手に取る前に教科書
をスッと引いたのだった。
何か気分を害することでもしてしまったのかと、知美が青くなっ
て香奈を見ると、香奈は何かを思い出そうとするような顔をして、
727
知美を見つめていた。
﹁知美⋮⋮ああ、あなた、ひょっとして文芸部の知美さん?﹂
﹁えっ! は⋮⋮はいっ!﹂
なぜ自分を知っているのかと、知美は混乱した。すぐに情報源は
納子しか有り得ないことに気づき、ブンッ!と首を捻って友人を見
た。
変なこと話してないでしょうね!? という思いが前に出て、強
ばった顔で納子を睨む。納子は気づかない振りをして顔を逸らした。
﹁図書館で、文芸部がおすすめ本のコーナー作ってるでしょう?﹂
﹁えっ? あ、は、はい⋮⋮!﹂
香奈に向き直り、どもりながら返事する知美。憧れの香奈からフ
レンドリーに話しかけられ、すっかり気が動転していた。
﹁あなたが紹介文を書いた小説、﹃ミーナの行進﹄ね、わたし読ん
だわ﹂
﹁えっ! よ、読んでくれたんですか!﹂
知美は感激した。図書館でのおすすめ本の紹介は、文芸部の伝統
的な活動の一つだ。しかし、昨今の活字離れの傾向もあり、なかな
か読んだという声を聞くことはない。自分が良いと思う本を読んで
もらえるのは、文芸部員としてこの上ない喜びなのだ。
﹁とっても素敵な小説だったわ。時間を忘れて読んじゃった、あり
がとう。またいい本を紹介してくれるの、楽しみにしてるわ﹂
香奈は、ほんの少し眼を細め、ほんの少し口角を上げて、微笑ん
だ。それは微かな笑みだったが、普段のクールな表情しか知らない
者には、ほのかに輝いてさえ見える笑顔だった。知美の胸に、ぷす
っ、とキューピットの矢が刺さった。
﹁あっ⋮⋮あ⋮⋮よ、読んでくれて、あああ、ありがとうございま
す⋮⋮ここ、これからも、いい本があったら⋮⋮﹂
真っ赤になった知美がどもりながら喋るうちに、次の授業の予鈴
が鳴った。香奈が教科書を差し出す。
﹁はい、遅れるよ﹂
728
﹁あっ、お、お借りします! ありがとうございます!﹂
水飲み鳥みたいに深いお辞儀をして、知美は足早にその場を立ち
去った。
﹁あっ、知美ちゃん待って。香奈ちゃんありがと、またね﹂
急いで香奈に礼を言い、納子は知美の後を追った。二人揃ってC
組を出るなり、知美は教科書を胸に抱いて廊下にへたりこんだ。
﹁知美ちゃん? 大丈夫?﹂
納子が身を屈めて聞く。大丈夫? と聞きはしたが、別に心配は
していない。うつむいているので顔は見えないが、その真っ赤な耳
を見れば、具合が悪くてへたりこんだのではないことは明らかだっ
た。
﹁⋮⋮⋮⋮あれは、反則⋮⋮惚れるって⋮⋮﹂
ぼそぼそと知美がつぶやく。納子は溜息をついた。
︵まったく⋮⋮香奈ちゃんったら、女ったらしなんだから。無自覚
なのがたち悪いよね︶
納子は肩を貸して友人を立たせた。知美がよろよろと立ち上がる。
﹁どうしよう⋮⋮のりちゃん、わたし、恋しちゃったかも⋮⋮﹂
﹁はいはい。教科書返すのは一人で行く?﹂
﹁む、無理無理無理! お願い、のりちゃんついてきて﹂
﹁はいはい﹂
ふらつく友人を支えながら、納子はB組へと戻った。
︵⋮⋮微笑みひとつでこんなになっちゃうんじゃ、香奈ちゃんにオ
ナニーの仕方教えてあげたことや、男装デートして⋮⋮エッチなこ
とされた話なんかとてもじゃないけどできないなあ⋮⋮うーむ、あ
たしも知美ちゃんも、そんなにキャラは違わないと思うのに、何で
あたしだけこんなに大人の階段登っちゃってるんだろう?︶
729
それは、蜜月の仲だった未羽と香奈が、二人の輪の中に迎え入れ
たいと願うほどの魅力を納子が持っていたからで、それは知美に限
らず他の誰も持っていないものなのだが、控えめな納子はまだ、自
分の内なる輝きに気づいていなかった。
知美を席に座らせ、納子も自分の席に着いた。英語の男性教師が
来て、授業が始まった。
知美は前の方の席なので後ろ姿が眼に入るのだが、背中を見てい
るだけで授業が上の空なのがわかった。彼女は授業中何度も深い溜
息をつき、教師に﹁ボーッとするな﹂と注意された。
友人があれだけぞっこんになってしまう人があたしの親友だなん
て、ありがたいなあ、と紀子は思うのだった。
730
︻エロ無し小話︼のりちゃんと友人のロングトーク その③︵後
書き︶
作中に登場する書籍﹃ミーナの行進﹄は小川洋子先生著の本当に素
晴らしい小説です。普通の女の子がちょっとした事情によって、お
金持ちの家で一年間を過ごす物語です。そう聞いただけでわくわく
しませんか?
731
︻後日談21︼﹁お兄ちゃん、あたしをレイプしてみて﹂︵前書
き︶
﹃妹が痔になったので座薬を入れてやった件﹄がlyricbox
からビジュアルノベルとして発売されます。
詳しくはあらすじをごらんください。
情報はtwitterで発信しています。または﹁リリックボック
ス﹂でググって。
732
︻後日談21︼﹁お兄ちゃん、あたしをレイプしてみて﹂
平日。例によって両親が不在な夜。
夕飯のあと部屋でくつろいでいると、ノックの音がした。入って
いいよと声をかけると、風呂上がりでパジャマ姿の未羽が入ってき
た。
﹁お兄ちゃん、あたしをレイプしてみて﹂
と、彼女はにこやかに言った。発言の内容とは裏腹に、楽しげな
表情をしている。
﹁唐突に何を言い出すんだ? 妹をレイプできるわけないだろ﹂
俺は呆れ顔で言った。妹はセックスするものであって、レイプす
るものではない。
﹁香奈ちゃんに護身術習ったの。お兄ちゃんがあたしをレイプしよ
うったって、そうはいかないからね。こうしてこうやって、﹃痛て
ててて∼!﹄ってなるんだから﹂
未羽はエアで関節技をキメるような動作をした。⋮⋮すげえへな
ちょこだ。こいつ、運動音痴だもんなあ。
﹁さあ、お兄ちゃん、レイプして。手加減は要らないよ﹂
両手を広げて俺を招く。うーむ、俺、フェミニストだから、陵辱
趣味はないんだよなあ。エッチなことしていいとお許しがでたのは
嬉しいのだが、イマイチ気乗りしない。
﹁あのな、未羽。おまえとセックスしたい気持ちはものすごーくあ
るんだが、俺はおまえのこと愛しているから、無理やり犯すとかは
したくないんだ。それに⋮⋮たとえお遊びでレイプの真似事をした
としてもだ、おまえが妙に反応しちゃって、それでムラムラっとき
たら、たぶん俺、止まんなくなるぞ﹂
﹁いいって、いいって。お兄ちゃんが本気で来ても、レイプなんか
されないんだから﹂
733
俺は諭すように言ったのが、未羽は耳を貸さなかった。手のひら
を上に向け、カモン、カモンってやってる。
言っとくけど俺、野球部の次期キャプテンだからね? 身長17
7センチで毎日部活で鍛えてるし、小学校高学年並の腕力しかない
未羽が、どうやったって俺を押さえつけられるとは思えないのだが
⋮⋮。
しかし、護身術の師匠はあの香奈ちゃんだ。柔よく剛を制すると
言うし、本当に特殊な技を教えてもらったのかもしれない。それな
ら、男として逆に興味がある。格闘技好きなんだよ、俺。
﹁わかった。未羽がそこまで言うのなら、相手をしてやろう。ただ
し、おまえの護身術が俺に通用しなくて、なおかつ俺に火がついて
しまった場合マジでレイプするから、悪く思うなよ﹂
﹁ふっふっふ⋮⋮お兄ちゃん、そんなこと言っていられるのも今の
うちだよ。﹃参りました﹄と頭を下げることになるんだからね﹂
強気の発言が、逆にフラグ立ててる気がする⋮⋮まあいい、どう
なるにせよ、すぐに結果はわかるだろう。
﹁じゃあ、いくぞ。知らんぞ、俺に犯されても﹂
未羽は不敵に笑い、太極拳のように腕を回して、妙なポーズをと
った。
﹁ふふふ⋮⋮香奈ちゃんに習った奥義、その身体でしかと思い知る
がいいわ。あっ、そうだ、お兄ちゃん﹂
急に素になる未羽。
﹁何だ? 未羽?﹂
﹁関節決められたら、無理しないですぐギブアップしてよ? 骨折
するといけないから﹂
﹁どっから来るんだ!? その自信!?﹂
いい加減前振りが長くなってきたので、俺は未羽に挑みかかるこ
とにした。とは言っても、か弱い女の子相手にいきなり全力で襲い
かかるなんてことはできない。俺は柔道の組み手のようなポーズで、
とりあえず彼女の手を押さえようと、手を伸ばした。
734
﹁来たね⋮⋮ハッ!!﹂
未羽は俺の左手の甲を外側から包むようにつかまえ、親指で手首
の辺りを強く押した。確かにツボっぽいところではあるし、痛くな
いことはないのだが⋮⋮強めのマッサージのレベルだ。
﹁えいっ! えいっ! ⋮⋮あ、あれ? お兄ちゃん、痛くない?﹂
そんなはずないのに、という顔で俺を見上げる未羽を、俺は自販
機でコーヒーを買うときくらいの素の顔で見返した。
﹁おまえ⋮⋮握力がUFOキャッチャーレベルだ。一応ツボに当た
ってると思うけど、全然痛くない﹂
﹁えっ⋮⋮!? そ、そんな? えいっ! えいっ!﹂
一生懸命未羽がツボを押すので、俺はこりがほぐれそうになった。
蚊を叩くように手を振ったら、未羽が握っていた手はあっさりとほ
どけた。
﹁あっ!⋮⋮﹂
未羽は一瞬風船を逃がしてしまった子供のような顔をしたが、俺
が呆れ顔をしているのに気づくとすぐに気を取り直し、腕を組んで
不敵な笑みの表情を作った。
﹁ふ、ふふふ⋮⋮! さすが野球で鍛えてるだけあって、やるわね
お兄ちゃん。でも、女より男のほうが腕力に長けているのは当たり
前のことよ。腕力で上回る相手をねじ伏せてこそ、護身術の真骨頂
と言えるんだわ﹂
﹁⋮⋮うん、早く俺をねじ伏せてくれ﹂
﹁お兄ちゃん、こんな風にあたしの肩をつかもうとしてみて﹂
未羽がジェスチャーで動きを示す。
﹁レイプ犯に指示すんなよ!﹂
﹁さあ、やってみて、遠慮は要らないから﹂
言ってることの意味分かってるのか、こいつ⋮⋮。俺はますます
呆れたのだが、指示に従わないとさっぱり未羽が護身術をふるえそ
うにないので、俺は素直に手を伸ばして彼女の肩をつかもうとした。
﹁はっ!﹂
735
しめた、とばかりに未羽が俺の腕に飛びかかり、きゃしゃな手で
ギュッと握る。力を抜いて彼女のするがままにまかせていると、俺
は腕をひねられ、背中でねじ上げられた。
﹁はぁ、はぁ⋮⋮どう!? 身動き取れないでしょ!﹂
﹁こんだけで息切れてんのかよ!? どんだけ体力無いんだ!?﹂
兄として、妹の身がマジで心配になってきた。こいつ⋮⋮夜道と
か絶対一人で歩かせられねえ。親友の香奈ちゃんが空手の達人で良
かった。
背中でねじ上げられている腕がどうかというと⋮⋮俺、部活でス
トレッチしてるから身体柔らかくて、普通に曲げられる範囲だ。
﹁お、お兄ちゃん大丈夫!? 無理しないでよ!? 無理すると骨
折れちゃうからね! 意地張らないでギブアップするんだよ!?﹂
必死に俺の腕をねじ上げながら、未羽は俺を気遣ってそう言った。
本気で心配しているようだった⋮⋮逆にこっちが妹のことを心配に
なる。
俺は、グッと腕に力を込めた。捻られた腕を、無理やり逆に回し
ていく。
﹁あれっ? おろろろろろろろ﹂
肴○本店に突っ込むローズ○ップみたいな声を出し、未羽は俺の
腕をつかんだままフォークダンスのようにくるりと回った。結果、
首脳会談のマスコミ向け記念撮影のように、俺たちは向かい合って
握手している格好になった。
﹁う゛⋮⋮﹂
さすがに未羽も、習った護身術がまったく役に立っていないこと
に気がついたようだ。自信たっぷりに大言を吐いたのが恥ずかしく
なったのか、頬が赤くなっている。
それでもまだ虚勢を張るつもりなのか、未羽は俺の手をふりほど
くと、腰に手を当てて胸を張った。
﹁ふ⋮⋮ふふふ。どうやら手加減しすぎたようね﹂
﹁いや、むしろいつにないほど全力だっただろ﹂
736
てつざんこう
﹁そ、そんなことなんもん! お、お兄ちゃんは身体が柔らかいか
ら関節技が効かないようね。それなら、体当たり技の鉄山靠を決め
てあげるわ﹂
今度こそ目にもの言わせてやると言わんばかりに、未羽は自信た
っぷりだった。
﹁何だ? その鉄なんとかいうのは?﹂
﹁近寄ってくる相手を背中で体当たりして吹き飛ばす技よ。お兄ち
ゃん、場所かわって。お兄ちゃんの後ろにベッドが来るように⋮⋮
そうそう。これでお兄ちゃんが吹っ飛んじゃっても安心ね﹂
俺は未羽と立ち位置を入れかえ、ベッドを背にして立った。⋮⋮
すごく要らない心配のような気がする。
﹁お兄ちゃん、あたしに襲いかかってきて。ゾンビみたいに手を広
げて、ゆっくりね﹂
﹁⋮⋮おまえ、レイプ犯にもそうして注文を出す気か?﹂
﹁いいから、さあ!﹂
手のひらを上に向けて、くいくいと曲げ、﹁かかってこい﹂と俺
を誘う。俺は注文通りにゆっくりと未羽に近づいた。手を広げろと
言ったのは、体当たりの邪魔になるからだろう。
﹁このレイプ魔め! 喰らえ! 鉄山靠!﹂
未羽は必殺技の名前を高らかに叫び、くるりと身を翻して背中で
俺に体当たりした。
なるほど、背中と言ってもぶつけるのは右肩の肩甲骨の辺りで、
ここを相手の胸にドン!と突き当てるらしい。当たっても大して痛
くない部位だから、恐怖感なしに思い切る当たることができる。
きっと、ちゃんと腰が入っていれば、女性でも結構な威力になる
と思う。だが、未羽は身を翻す時点で若干足がもつれており、腰を
入れるどころではなかった。
しかも、もっと相手を引き寄せてからお見舞いすればいいのに、
タイミングが早すぎて身体が倒れてしまっている。体当たりという
よりは、よろけてしまったのを俺が支えるような形になった。
737
﹁あ、あれ?﹂
俺に抱きすくめられ、未羽はあごをあげて俺を見上げた。顔を上
下逆さまに突き合わせ、俺たちは見つめ合った。
間近で見る未羽の顔は、焦った表情をしていても相変わらず可愛
らしい。それに、抱きしめているこの身体。小柄で、ふよふよと女
の子特有の柔らかさが心地良い。ふわりとシャンプーの香りが鼻を
くすぐると、俺はあっけなく理性が崩壊し、未羽を力いっぱい抱き
しめた。
﹁きゃっ! お、お兄ちゃん!?﹂
﹁未羽、ごめん。俺、今からおまえをレイプする﹂
﹁えっ⋮⋮? ええっ!? お、お兄ちゃんちょっと待って!﹂
﹁いいや、これはおまえから言い出したことなんだから、遠慮なく
レイプさせてもらう。だいたい、俺が日頃おまえとセックスしたい
のを我慢してるの知ってるくせに、自分の護身術が通じないからと
おあずけ喰らわすのは勝手すぎる。ここはおまえがどれだけ非力か
身体で学んでもらうためにも、思う存分レイプする﹂
﹁そ、そんな∼!﹂
未羽は俺の手から逃れようともがいたが、俺に腕ごと抱きかかえ
られているので、せいぜい身体を揺するくらいの抵抗しかできなか
った。
﹁よいせっと﹂
﹁わっ! わわっ!﹂
抱きかかえて持ち上げると、すいっと簡単に足が浮いた。俺は彼
女を持ち上げたまま移動し、クローゼットからスポーツタオルを、
机の引き出しから秘密の小箱を取り出した。
未羽は足をばたつかせてもがいたが、ものを取り出すときに片手
になっている間でさえ、彼女の抵抗はさしたる障害にはならなかっ
た。猫を風呂に入れる方がもっと面倒な気がする。
ベッドの上に、未羽を放り出す。彼女はマットの上でぼよんと弾
んだ。
738
﹁あんっ!﹂
起き上がろうとするのをすぐに押さえつけ、うつ伏せにして両手
を背中に回させる。細い手首に、俺はスポーツタオルを巻き付けた。
﹁お、お兄ちゃん!? ご、ごめん、ごめんなさい! あたし全然
へなちょこだってわかったから! 謝るから! こ、こういうのコ
ワいよ∼! 香奈ちゃんにしてあげて∼!﹂
未羽は切羽詰まった声で降参したが、俺は容赦しなかった。タオ
ルをキュッと結わえる。固結びを一回しただけだが、ほどける懸念
はなさそうだ。
﹁大丈夫か、未羽? 痛くないか? キツすぎるようだったら緩め
るぞ?﹂
﹁う、うん、痛くない⋮⋮って! 優しい言葉かけるくらいならほ
どいてよ! も∼、今日のお兄ちゃんコワいよ∼! もう許して⋮
⋮﹂
﹁いや、せっかくの機会だから、今日は普段できないようなことを
させてもらう﹂
そう言うなり、俺は彼女のパジャマのズボンの裾をつかみ、引っ
張った。みかんネットからみかんを取り出すような容易さでズボン
は脱げて、真っ白ですらりとしたおみ足があらわになる。
﹁ひゃっ!﹂
うつぶせのまま内股になって膝を擦り合わせるが、そんなことを
してもどこも隠すことはできやしない。ちなみに今日のパンツは淡
いピンク色だ。可愛い。
﹁ああ、未羽、きれいな足だなぁ﹂
俺が太ももにぺとりと手を置くと、彼女はビクッと身体を震わせ
た。この程度のスキンシップはいつもしているのだが、後ろ手に縛
られ身動きできない状況なので、過敏になっているようだ。
﹁お、お兄ちゃん、もうやめようよ∼! あたしこういうの苦手⋮
⋮!﹂
﹁おまえ、ふだん香奈ちゃんにこういうことばっかしてるだろ。彼
739
女の気持ちを知るいい機会じゃないか﹂
﹁あ、あたし香奈ちゃんみたいにドMじゃないよ∼!﹂
自分の親友と俺の彼女に対してすごく失礼なやつだった。やっぱ
りこいつ、お仕置きしないといけない。
俺は未羽の腰に手を回し、ぐっと持ち上げた。うつ伏せで尻を高
く上げた、えらく扇情的なポーズができあがる。手を縛られている
ので、なおさらエロい。
﹁やぁんっ! よ、四つん這いイヤだったらぁ!﹂
初めて未羽に座薬を入れてやろうとしたときもそうだったが、今
でもこのポーズは恥ずかしいらしい。手を突いてないから正確には
四つん這いではないのだが。
未羽は屈辱的なポーズのまま身体と首をひねり、側頭部をベッド
に付けたまま顔を俺に向けた。許しを請うような顔で俺を見つめる
のだが、その表情はかえって俺の嗜虐心を煽るのだった。
パンツに手をかけると、未羽はまたビクッと震えた。
﹁えっ⋮⋮!? や、やだっ! お兄ちゃん!﹂
﹁未羽、パンツ下げるよ⋮⋮﹂
パンツのゴムを引き、指を潜り込ませる。俺はゆっくりと彼女の
下着を下げていった。まあるいお尻の頂を越え、太ももまでパンツ
をずり下げる。
﹁やっ⋮⋮! やぁんっ!⋮⋮﹂
未羽のお尻の穴が、俺の眼の前十センチに晒される。そのピンク
色の襞の集まりは、野に咲く小さな花のようで、相変わらず可憐だ
った。
﹁ああ、きれいだ⋮⋮未羽のお尻の穴、こんな風に眼の前で見るの
久しぶりだなぁ。座薬を入れてあげてたのってそんな昔のことじゃ
ないのに、なんだかすごく懐かしく感じるよ﹂
﹁そ、そんなとこ見て郷愁にひたらないで∼! も、もうお願い、
お兄ちゃん勘弁して⋮⋮﹂
小振りなお尻を震わせ、未羽は懇願した。
740
﹁何を言ってるんだ、まだ序の口だぞ。今日は普段できないような
ことをさせてもらうと言っただろう﹂
俺は再び未羽のパンツに手をかけ、太ももから膝、膝から足首へ
と引き抜いていった。足首からパンツを抜き取るとき、未羽は﹁く
っ⋮⋮﹂と悔しそうな声を出した。
妹に嫌われたくないので、普段は未羽の嫌がるようなことなどし
ないのだが︵エッチのスパイス的に、ちょっと恥ずかしがらせたり
はするけれど︶、今日の俺はタガが外れていた。
がっつくと警戒されて距離を置かれそうなので、日頃は未羽への
アプローチをほどほどに抑えているが、本当は未羽と毎日でもセッ
クスしたいし、ちょっとアブノーマルなプレイもしてみたいのだ。
近親相姦自体がアブノーマルかもしれないが。
さらに最近ご無沙汰なところへ未羽が﹁レイプしてみて﹂なんて
言うものだから、正直その時点で﹁おお、やったろうじゃねえか!﹂
的な気分だった。あの言葉を免罪符に、今夜は好きなことをさせて
もらおう。
太ももの間に手を入れ、脚を開かせる。未羽は驚いて﹁やぁっ!﹂
と声を上げ脚を閉じようとしたが、俺は彼女の脚の間に膝をつき、
閉じさせないようにした。
﹁いやぁ⋮⋮! や、やだもう⋮⋮お兄ちゃん、恥ずかしいよぉ∼
⋮⋮!﹂
未羽が心底恥ずかしそうに言う。うつ伏せで尻を高く上げ、脚は
九十度くらいに開いている。お尻の穴が丸見えだし、その下もおま
んこも、脚を閉じているときは縦にスリットが走っているのが見え
るだけだったのが、今はわずかに開いてピンク色の中身をのぞかせ
ている。恥ずかしいのも当然だった。
﹁おお⋮⋮未羽、おまえの可愛いお尻の穴もおまんこの襞も、丸見
えだよ。なんていやらしいんだ⋮⋮お兄ちゃん、チンコが破裂しそ
うだよ﹂
﹁い、いやらしい格好させてるのお兄ちゃんでしょ! も、もうホ
741
ントにお願い⋮⋮許して⋮⋮﹂
未羽はクロールの息継ぎをするように肩と首を捻って、ずっと顔
を俺に向けている。こんなポーズだと表情が見られないなと思って
いたのだが、意外と顔を拝むことができた。未羽は俺に許しを請う
ためにそうしているのだろうが、俺にとって恥じらう表情が見られ
るのはサービスでしかなかった。
俺は、パンパンと柏手を打ち、彼女の肛門を拝んだ。後ろで何が
起こっているのが見えない未羽は、不安に身体を強ばらせた。
﹁な、なになに!? お兄ちゃん!?﹂
焦る妹にかまわず、俺はお尻に手を当て、顔を近づけていった。
﹁じゃあ、いただきます﹂
俺の舌先がアナルに触れると、未羽は﹁うみゃぁっ!﹂と尻尾を
踏まれた猫みたいな声を出した。
﹁なんだ? そんなにビックリして? おまえ、香奈ちゃんとアナ
ル舐め合ってるんだろ?﹂
リアクションの大きさが意外だったが、それはそれとして、俺は
未羽のアナルをれろれろれろれろと舐めた。
﹁お、お兄ちゃんに舐められるの初めてだしぃ⋮⋮あっ、くぅ⋮⋮
んん゛∼⋮⋮! やぁっ! もう、変な感じぃ⋮⋮! 舐めないで
ぇ⋮⋮﹂
香奈ちゃんに舐められるのとは心持ちが違うらしい。アナル舐め
は性感よりも、アブノーマルなことをしているという背徳感がミソ
だからな。未羽の反応が面白くて、俺は犬のようにそこを舐めまわ
した。
﹁あっ!⋮⋮あぁんっ! ん、んん∼⋮⋮も、も∼、お兄ちゃん、
アナルばっかり⋮⋮ど、どうせなら、おまんこ舐めてよぉ⋮⋮﹂
恨むように視線を向けて、未羽がおねだりした。ちょっと怒った
ような顔をしているのは羞恥を隠そうとしているのだろうが、顔が
真っ赤なのでバレバレだ。
気づいてはいたが、アナルを舐めているうちに未羽のおまんこは
742
じゅくじゅくと潤んできて、愛液がこぼれ落ちそうになっていた。
微かにうごめく襞が、アナルよりこっちに刺激が欲しいと誘ってい
る。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮ねえ?⋮⋮﹂
小さく腰を振る。清純な顔をしておまんこへの愛撫をねだる未羽
は、いやらしさが青天井だった。いつもの俺なら、堪らずおまんこ
にしゃぶりつき、ペニスを突き立てていたことだろう。
だが、今日の俺は違うのだ︱︱今日は、いつもはやれないことを
するのだ。
深呼吸して爆発しそうな性欲を静めると、俺はいったん未羽の尻
を離れ、さっき用意した小箱を手に取った。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮?﹂
いつもなら、妹がおねだりすれば猫まっしぐらに飛びついてくる
兄が、そうしない。勝手の違う兄の行動に、未羽が不安そうな声を
出す。
小箱の中身は、言ってしまえばアダルトグッズである。未羽も似
たような箱を持っていて、兄妹で貸し借りして使っている。誰に使
うのかというと、主に香奈ちゃんである。
小箱の中からローションを取りだし、右手に捻り出す。とろりと
したそれを、指全体になじませる。
﹁お、お兄ちゃんってば! 何してるの!?﹂
わざと未羽から見えない角度でやっているので、彼女はますます
不安そうな声を出した。
ローションまみれになった手でアナルに触れると、彼女はビクッ
と背をのけ反らして驚いた。
﹁ひっ! ⋮⋮え!? お兄ちゃん!? な、何するつもり⋮⋮!
やっ、やだっ!! アナルはだめぇっ!!﹂
尻に塗られたのがローションだと気づくと、未羽は本気で焦り、
芋虫のように這いずって逃げようとした。もちろん俺は彼女の太も
もをひっ捕まえて、逃がしはしなかった。
743
﹁こら、逃げるな未羽。おまえがレイプしてって言ったんだぞ。ア
ナルくらいなんだ﹂
﹁ア、アナルはだめぇ∼!! また切れ痔になっちゃうよ∼!!﹂
今度は引き止めるのにある程度力が必要だった。本気になるとこ
の程度は抵抗できるのだということがわかったが、それでも男の腕
力なら身動き取れなくするのはたやすい。
﹁もう完治してから半年くらい経ってんだから、大丈夫だよ。おま
え、香奈ちゃんのアナル開発しまくってるくせに﹂
﹁そ、それとこれとは∼! お、お願い、お兄ちゃん⋮⋮! 未羽、
お兄ちゃんの言うこと何でも聞いてあげるから、お願いだから、ア
ナルだけはやめて! こ、怖いよぉ⋮⋮!﹂
涙目で訴える未羽の表情は、正直、グッときた。﹁何でも言うこ
と聞いてあげる﹂という餌はすごく魅力的だったが⋮⋮いま俺が一
番何がしたいかというと、未羽のアナルを攻めてみたいのだった。
必死の懇願を無視して、俺はローションにぬめる小指を、彼女の
すぼまったアナルに当てた。
﹁ひぃっ! お、お兄ちゃん! やめてぇ!﹂
恐怖にうわずった声で未羽が叫ぶ。だが、おれは怯まなかった。
幼児を押さえつけて予防接種の注射を受けさせるお母さんみたいな
気分だった。
﹁大丈夫だよ、未羽。最初は小指でいくから。ちょっとでも痛かっ
たら言ってくれ﹂
﹁こ、小指でもやだぁ! お兄ちゃん、本気なの⋮⋮!? せ、せ
めてスキンとかしてよ! 生はやだ∼! あ、あたしが香奈ちゃん
のアナル弄るときも、必ずスキンするんだよ! お願い、それだけ
は∼!﹂
俺に引く気が全くないと悟った未羽は、今度は指にスキンをはめ
てくれと訴えてきた。まあ、乙女として当然のことだろう。少女セ
○トにもそんな描写があった気がする。だが、初めてのアナル挿入
で、指先の感覚を鈍らせるような危険な行為をするわけにはいかな
744
いのだった。
﹁悪いが未羽、スキン越しでは直腸の感触がわかりにくくなってし
まう。初めてのことだし、ここは生でいかせてくれ。おまえが初め
て香奈ちゃんのアナルに指突っ込んだときも、生だったろう?﹂
﹁ふえ∼ん! 全部自分に返ってきてる∼!﹂
めそめそと泣く未羽。これも自業自得だと思いつつ、俺は彼女の
アナルに対し垂直に小指を当てた。
﹁⋮⋮いくぞ、未羽﹂
妹のアナル攻めという初めての体験に胸を高鳴らせつつ、俺は指
を前進させた。固く閉じていたアナルが、ちょうど指の太さだけ広
がり、ぬぷっ、と指先を呑み込んだ。
﹁あぁんっ!⋮⋮お、お兄ちゃん、ホントに入れ⋮⋮あぁっ、やだ
よぉ⋮⋮!﹂
括約筋が、きゅっ、きゅっ、と断続的に締めつけてくる。さすが
におまんこよりもキツいが、たっぷりと塗ったローションのおかげ
で挿入はスムーズだった。切れ痔を生じるような恐れはないように
思える。
﹁ほら、未羽、すんなり入ったぞ。痛くないだろう? もっと奥ま
で入れるよ﹂
﹁や、やだっ⋮⋮変な感じだよぉ⋮⋮!﹂
拒否をスルーして、少しずつ指を進める。小指程度なら、さして
抵抗もなかった。
﹁あっ、あっ⋮⋮入ってくる⋮⋮くぅっ⋮⋮﹂
眉をハの字にして眼を固く閉じ、未知の感覚を受け止める未羽。
普段見ることのない表情がエロくって、俺はギンギンに勃起してい
た。
﹁ほら、入った⋮⋮どんな感じ? 痛くはないだろ?﹂
ほどなくして、俺の小指は根元まで未羽のアナルに呑み込まれた。
未羽が﹁はふぅ⋮⋮﹂と濃い溜息を漏らす。
﹁うう⋮⋮痛くないけど、変な感じ⋮⋮身体のすっごく奥まで弄ら
745
れてるみたい⋮⋮くぅ⋮⋮﹂
未羽は眉をひそめ、どちらかというと気持ち悪そうな顔をしてい
た。エロエロ大魔王のことだから、アナルがまったく感じないなん
てことはないと思うが、快感や異物感や不安がないまぜになって、
この感覚をどう受けとめればよいか悩んでいるのだろう。
﹁大丈夫そうだな。よし、今度は中指にチャレンジしてみようか﹂
﹁えっ⋮⋮! ちょ、ちょっと待ってお兄ちゃん、急すぎ⋮⋮!﹂
初挿入はゆっくりだったが、抜くのに気遣いはいらないだろうと
思って、俺は小指をにゅるん、と抜いた。
﹁あぁんっ!﹂
未羽が大きな声を出した。抜くときは排泄するような感覚が伴う
からな。それも初めてのことだったのだろう。休む間を与えず、今
度は中指をアナルにあてがう。
﹁ちょっ⋮⋮! ま、待って⋮⋮﹂
焦った未羽が尻を揺らしたが、俺は構わず中指を侵入させた。第
一関節まで、ぬるっと入り込む。
﹁あぁっ!⋮⋮お、お兄ちゃん、待って⋮⋮! そんな、急に⋮⋮﹂
﹁力を抜いて。奥までいくよ﹂
﹁やっ⋮⋮! いやぁっ⋮⋮!﹂
ぬぷぬぷぬぷ⋮⋮先ほどの小指を入れた感触と未羽の反応で、切
れ痔の再発は心配ないだろうと俺は感じていた。なので、初挿入よ
りは速いペースで指を潜らせた。
﹁あっ、くぅっ⋮⋮! そ、そんな奥まで⋮⋮!﹂
未羽のアナルはスムーズに中指を根元まで呑み込んだ。あっけな
く感じるほどだった。
腸壁が指全体をギュッと締めつけてくる。この感触、違和感に眉
をひそめる未羽の表情、妹の肛門を弄る背徳感。全てが限りなくエ
ロくて、俺は暴発しそうなほどペニスを膨らませていた。
﹁ほら、未羽、根元まで入ったぞ。大丈夫だったろ?﹂
﹁だ、大丈夫じゃないよぉ⋮⋮! も、もう抜いて⋮⋮! お腹が
746
⋮⋮変⋮⋮﹂
﹁何言ってんだ、これからだよ。そのうち、香奈ちゃんみたいに気
持ち良くなるから﹂
俺は腸の中で指を動かしはじめた。最初は優しく、波を打つよう
に曲げて刺激する。
﹁あっ! やっ、だめぇっ! 動かしちゃ⋮⋮あっ、あぁっ⋮⋮や
だ⋮⋮﹂
未羽は身体を震わせ、敏感に反応した。初めての感覚に翻弄され
る彼女を見てると、征服感がふつふつと湧いてくる。本当にレイプ
しているような気になってきた。してるのか?
﹁お兄ちゃぁん⋮⋮お、お腹が、変になる⋮⋮もう、ストップぅ⋮
⋮!﹂
﹁いやいや、やっと身体が慣れてきたころだろ? 上手に力みを抜
くことができるようになってきたじゃないか。そろそろ出し入れし
てみようか?﹂
﹁えっ!? そ、そんな、だめぇ⋮⋮! くうっ!! あっ、あっ、
ホントに、指を⋮⋮やあぁぁっ!! や、やめてぇ! お兄ちゃぁ
ん⋮⋮!﹂
俺は指の抽挿を開始した。肛門から抜けそうになるまで指を抜き
出し、また根元まで挿入する。これをゆっくりとしたペースで繰り
返した。
指が入っていくときには身体の中を陵辱されているような感覚に
なり、指が出ていくときは背徳感ともに排泄と同じ快感を味わうは
ずだ。これを交互に繰り返されたら、思考力などぶっ飛んでしまう
だろう。アナルへの愛撫に、未羽は大きく声を上げて反応した。
﹁ああぁっ! あふっ、ぐっ、くぅっ⋮⋮! やっ、いやぁっ!⋮
⋮おかしくなっちゃう⋮⋮! んんっ⋮⋮あぁっ!⋮⋮﹂
頭を低くして血がのぼっているせいもあるのか、未羽はおでこま
で顔を真っ赤にして、苦しそうに喘いだ。半開きの口からよだれが
垂れて、ベッドのシーツに染みを作っている。あられもない乱れっ
747
ぷりに、俺は背中がぞくぞくするほど興奮した。
俺はしばらくの間、指の抽挿を続けた。未羽は苦しそうなあえぎ
声を漏らしているが、続けているうちに身体が順応してきたのか、
全身の強ばりが解けてきた。アナル開発は力を抜くのが第一だ。さ
すが、幼く見えても性に関してはエキスパートなエロエロ大魔王様
だけある。身体が順応するのが早い。
すでに切れ痔は完治し、指でいじるくらいなら何の問題もないこ
とを確かめることができた。俺は次のステップに進むため、ぬるり、
とアナルから指を引き抜いた。
﹁あふっ⋮⋮! ああ⋮⋮﹂
最後の排泄感を味わい、未羽はぐったりとなって横に倒れた。手
は後ろ手に縛られたまま、身体を丸め、はぁ、はぁ、と荒い息をす
る。高熱でもあるように顔を火照らし、とろんとした眼で喘いでい
る姿は、本当にレイプされた後みたいにエロかった。
﹁未羽、大丈夫か?﹂
訪ねても返事はない。頭が朦朧としているようだ。初めてのアナ
ルプレイにしてはちょっと刺激が強すぎただろうか。これだけ脱力
しているところからすると、苦しそうに見えて実は意外と快感もあ
ったのかもしれない。
まあ、未羽のことだからじきにシャッキリするだろうし、どのみ
ち、次のプレイが始まればぐったりとしている余裕などなくなるの
だ。
俺は、未羽がボーッとしている間に、べっとりと手についたロー
ションを拭い、服を脱いで全裸になった。期待に胸を膨らませた俺
は、同時にペニスも最大限に膨らませていた。
未羽も裸にしてしまおうと、彼女のパジャマの上着に手をかけた
のだが、全裸にするとレイプ感が薄れると思い、ボタンを外すだけ
にした。小学生がするようなワイヤーなしカップなしのブラを着け
ていたので、それは上にずり上げておっぱいを露出させた。発展途
上だが美しい曲線を描く乳房と、愛らしいピンク色の乳首が顔を出
748
す。
すぐにでもしゃぶりつきたくなったが、未羽が呆然としているう
ちに事をすませてしまおうと、俺は再び小箱を手にした。
中から取り出したのは、細身のアナルバイブ。サイズは俺の中指
より少し太く長い程度で、初心者用だ。こいつは何度か香奈ちゃん
のアナルにご訪問したことがある。買うのに金を出したのは俺だが、
選ぶときは未羽と一緒にネット通販で選んだ。未羽に貸してやった
こともある。確か商品名は﹁ヴァージンアナル3﹂だったと思う。
未羽もまさか、ヴァージンアナル3が自分の肛門にさし込まれる
羽目になるとは夢にも思わなかったことだろう。
バイブにスキンを被せ、たっぷりとローションを塗って、準備完
了。未羽のアナルにも塗り直してやろうと、俺は手のひらいっぱい
にローションを取り、彼女の尻に手を触れた。
とたんに、ビクッとして眼を覚ます未羽。尻穴をいじられる恐怖
が、瞬時に彼女の意識を呼び覚ます。
﹁なっ、なになになに!? お、お兄ちゃん!? レ、レイプごっ
こは終わりだよ! もうお尻に指入れられるのヤだから! これほ
どいて!﹂
ずりずりと、ベッドの上を這って俺から逃げようとする。シーツ
がぐしゃぐしゃになった。
﹁未羽、指は入れないよ。今度はほら、これ。ヴァージンアナル3
にチャレンジしてみよう﹂
俺が掲げたバイブを見て、未羽は、サーッと顔を青くした。
﹁やっ⋮⋮やだやだやだ! そんな大っきいの入んない!! も、
もう許して∼!!﹂
﹁大丈夫だよ、おまえ、処女なのに俺のチンコすんなり入ったろ?
それと一緒だよ﹂
﹁お、おまんことお尻は違うもん!! お、お願い、お兄ちゃん⋮
⋮もうやだよ∼!! え∼ん!﹂
未羽はめそめそと泣き出してしまった。普段の俺なら、こんなと
749
きは妹に嫌われたくない一心で引き下がってしまうのだが、この日
の俺はどうかしていて、未羽の泣き顔を見ているとよけいに嗜虐心
が湧き起こってしまうのだった。
ベッドの上で逃げようとする彼女の足をつかまえる。それだけで
こいつは身動きが取れなくなってしまう。まったく、赤子の手を捻
るとはこのことだ。
同じ四つん這いでは芸がないと思ったので、俺は彼女の片脚を高
く上げて自分の肩に乗せ、犬がオシッコするようなポーズをとらせ
た。おまんこが丸見えで、かなり屈辱的な格好だ。
﹁い⋮⋮いやぁ! お、お兄ちゃん、だめっ! バイブはいやぁっ
!﹂
未羽は本気で叫んだ。これは本当に嫌われるかもしれないという
思いがよぎったが、もうブレーキをかけることはできなかった。自
制心が吹っ飛んでいた。
アナルにローションを塗る。未羽は涙目で訴え続けた。
﹁お兄ちゃん⋮⋮もうやめようよぉ⋮⋮! あたし、こわいよ⋮⋮
!﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
会話をすると我に返ってしまいそうだったので、俺は無言で返し
た。バイブをアナルに当てると、未羽はふるふると身体を震わせた。
﹁だ、だめ⋮⋮! だめぇ! お兄ちゃん⋮⋮!﹂
﹁未羽、力を抜いて⋮⋮いくよ﹂
バイブを持つ手に少し力を加えると、ぬぷっ⋮⋮と先端が沈み込
んだ。
﹁あふっ⋮⋮!! あっ、あぁ⋮⋮!﹂
未羽が背をのけ反らせる。ああ、本当にレイプしているみたいだ。
俺は少しずつ、バイブを奥へと沈めていった。未羽の不安と裏腹
に、挿入はいたってスムーズだった。
﹁う⋮⋮うう⋮⋮お、おっきぃ⋮⋮﹂
妹の肛門に、スモールサイズとはいえ、れっきとした大人の玩具
750
であるバイブが、少しずつ潜り込んでいく。征服感やら非現実感や
らで頭がくらくらしたが、下半身は堅い木のように勃起して、俺が
性的に興奮していることをハッキリと示していた。
﹁んっ⋮⋮! くぅ⋮⋮そ、そんな、奥まで⋮⋮﹂
バイブは難なく根元まで未羽の中へと沈み込んだ。初心者用とは
いえ、座薬より大きなものを入れたことない彼女には、とてつもな
く大きく感じるようだった。
未羽が拒んだわりに挿入はスムーズだったが、本番はこれからだ。
俺は、未羽のアナルから突きだしているバイブの端を探り、シリコ
ンカバーの内に隠れているスイッチを探り当てた。ポチッ、と電源
を入れる。
﹁⋮⋮んっ! んあぁぁぁ!﹂
バイブが振動音の唸りを上げる。とたんに未羽が叫んだ。
﹁な、何これっ⋮⋮! あっ、あっ⋮⋮やだ⋮⋮いやぁっ! お、
おかしくなっちゃう⋮⋮!﹂
嬌声を上げながら未羽が激しく身をよじる。おまんこと違って、
直腸への刺激はすぐには性感として受け止められないようだった。
未知の感覚に翻弄され、彼女はガクガクと身体を震わせた。
﹁あああぁぁぁっ!⋮⋮こ、こんのな、だめぇっ! 変になるぅ⋮
⋮!﹂
悶える未羽の背後に回り、手首の縛めをほどいてやる。これで未
羽は自由の身だ。
﹁あっ、手が⋮⋮! お兄ちゃん、抜いて、抜いてぇっ!﹂
未羽が俺にすがりつき、バイブを抜いてと懇願してくる。自分で
抜くのは怖いらしい。
でも、俺はまだ彼女を解放する気はなかった。レイプは、ペニス
を突っ込んで初めてレイプなのだ。妹の生理周期を熟知している俺
は、未羽が安全日なのを知っていた。今日は生で大丈夫だ。
すがりついてくる未羽を、腕ごとギュッと抱きしめる。そのまま
仰向けに倒れると、当然俺の上に未羽が被さってくることになる。
751
急に倒れたので、未羽はビックリして声をあげた。
﹁きゃっ!﹂
今の体勢はというと、俺が仰向けになってベッドに寝転がり、そ
の上に未羽がうつ伏せに覆い被さっている状態だ。俺が腕ごと彼女
を抱きしめているので、未羽は身動きがとれない。
﹁お、お兄ちゃん⋮⋮!?﹂
抱き合っているので顔が間近だ。未羽は、今度は何をされるのか
と怯えた顔をしていた。
﹁未羽、久し振りに、セックスしよう﹂
﹁えっ!? そ、そんな、まだバイブ入って⋮⋮ああっ!﹂
承諾も待たずに、俺はいきり立ったペニスを挿入した。アナルへ
の刺激でとろとろに潤んでいたおまんこが、俺のいちもつを、ぬぷ
ぷっ⋮⋮と受け入れる。
﹁ああぁっ! あっ、あぁっ⋮⋮! お、お尻にも入っているのに
ぃ⋮⋮だ、だめぇ!﹂
﹁うおおっ⋮⋮久し振りの未羽のおまんこ、最高だよ!﹂
俺はすぐに抽挿を開始した。未羽の膣内が、絶妙な締まりでとろ
けるようにペニスを包み込む。しかも膣壁越しにアナルバイブの振
動が伝わってきて、いつもの倍気持ち良かった。
﹁お、お兄ちゃんのおちんちんと、バイブが、一緒に⋮⋮な、何?
この感じぃ⋮⋮! あっ、あぁっ!﹂
未羽の方は、バイブとペニスを同時に入れられる快感を、まだ素
直に受けとめることができないようだった。
でも、抽挿を続けていると、そのうち未羽がはっきりと恍惚の表
情を示すようになってきた。
アナルばかり弄られ、快感なのか違和感なのかはっきりしない感
覚だけ与えられていたので、直接的な刺激を欲していたのだろう。
ペニスを突き入れるたびに、未羽はめちゃくちゃ幸せそうな顔をし
た。
﹁あっ、くはぁ⋮⋮! ⋮⋮お兄ちゃんのおちんちんと、バイブが
752
あたしの中で暴れて⋮⋮き、気持ちいいよぉ! あふっ、も、もっ
とぉ!﹂
未羽がおねだりをはじめたので、ここから和姦になってしまった。
もう拘束する必要もないと思い、俺は彼女の両腕を解いて、胴体を
抱きしめた。汗で湿った肌と肌が、ねっとりと密着する。俺の胸の
上でつぶれるおっぱいの感触と未羽の体温が、この上なく心地よか
った。
﹁あっ、ふぅっ! あぁっ⋮⋮お兄ちゃぁん⋮⋮!﹂
感極まった未羽が、俺に抱きついて熱烈に唇を吸ってくる。俺も
舌を伸ばしてそれに応えた。実の妹とセックスしながら舌を絡め合
う。これ以上の幸せがこの世にあるだろうか。
﹁ぶはぁっ⋮⋮あふっ、あふっ⋮⋮あぁんっ! お、お兄ちゃぁん
⋮⋮!﹂
べろちゅーのあいだ息を止めていたのか、未羽は顔を上げて息を
継いだ。キスしながら呼吸するくらいできるだろうに、よほど理性
を失っているようだ。
おでこがぶつかりそうな距離で、未羽は生温かい息を吐き、あえ
ぎ声をあげている。半開きの口からだらしなくよだれが垂れてきて、
俺はそれをタコみたいな口をして吸った。とろみがあって、爽やか
な甘みを感じた。
未羽の唾液は媚薬効果があって、俺はますます興奮し、激しくペ
ニスを突き上げた。
﹁んあぁっ、あっ、ああぁっ! お、お兄ちゃん、あたし、もう⋮
⋮!﹂
眉をハの字にして、切なげに未羽が言った。おお、未羽、もうイ
キそうなのか!
やっぱり兄妹で身体の相性が良いらしく、俺も限界が近くなって
いたところだ。抽挿のペースを速める。俺は機関車のように力強く
腰を振った。じゅぽじゅぽじゅぽと、いやらしい音が部屋に響く。
﹁あぁっ! き、気持ちいい⋮⋮! イ、イクっ! あっ、あっ、
753
すごい⋮⋮! はぁっ、もう⋮⋮!﹂
絶頂を間近に、未羽の身体が小刻みに震える。赤く染まった顔は
うっすらと汗ばんで、十五才とは思えないほどエロい。最高の瞬間
を迎えるため、俺はマックススピードで腰を突き上げた。
おまんことアナル、二つの刺激が共鳴し、時空を揺るがす波とな
って、未羽の身体を呑み込んでいく。
﹁はぁっ!⋮⋮あっ、来る⋮⋮! あっ、あっ⋮⋮あああぁぁああ
ぁぁぁぁっ!!!﹂
未羽は大絶叫して絶頂を迎えた。電流が走るように快感が全身を
突き抜け、びくん! びくん! と、俺の上で身体が波打つ。
同時に俺も射精した。濃い精液が水道をひねったように勢いよく
迸る。思考が吹っ飛ぶような射精感が頭を突き抜けた。
﹁あっ、あぁっ⋮⋮くふぅ⋮⋮!﹂
未羽は俺の上で背をのけぞらし、絶頂の余波に浸っている。とき
おり、ぴくん、ぴくん、と小さく身体を震わし、うっとりとした顔
で、口の端からよだれを垂らしていた。
﹁はふ⋮⋮はふぅ⋮⋮⋮⋮﹂
そのうち、未羽は電池が切れたように弛緩した。ぐったりと俺の
上にのびてしまう。まだ少し息が荒いが、意識を失ってしまったよ
うだ。身体に感じる彼女の体重が心地良い。未羽の満足げな寝顔を
見ていると、俺も満ち足りた気持ちになった。
精を吐き出しきって、萎んだペニスがにゅるんと抜けた。バイブ
はまだ未羽のアナルで唸り続けている。
手を伸ばし、バイブをつかんで、ぬぽっと抜く。絶頂後で敏感に
なっている身体に排泄感を感じ、未羽が﹁んにゃっ﹂と声をあげて
眼を覚ました。
﹁起きたかい、未羽。久しぶりの兄妹セックス、気持ちよかったな
ぁ﹂
未羽はのろのろと身体を起こした。俺の上であひる座りになるが、
まだボーッとした顔をしていた。
754
次第に拡散していた思考が集まり、だんだんと未羽の意識がはっ
きりしてくる。すると、彼女の眉間にしわが寄り、少しずつ怒りの
表情を現しはじめてきた。
ああ、そうだ。俺、妹をレイプしたんだっけ。しかも、過去に切
れ痔を患ったことのある肛門を、思うさま弄ったのだ。性行為の最
中は夢中で何も考えていなかったが、俺たちの兄妹愛、ヤバイので
はないだろうか。
未羽がジト眼で俺を睨む。俺の頬を冷たい汗が伝った。
﹁えいっ﹂
パジャマの前をはだけおっぱい丸出しの未羽が、俺のみぞおちに
正拳突きを放った。
﹁ぐえっ!!﹂
軽く放ったその突きは、正確にみぞおちのど真ん中にヒットし、
俺はむせ返った。
﹁ゲホッ! ゲホ⋮⋮﹂
﹁あっ、これは効くんだ? ご、ごめん、お兄ちゃん、痛かった?
大丈夫?﹂
未羽が心配そうな顔で聞く。
﹁香奈ちゃんが﹃殴るならここ﹄って教えてくれたんだけど、みぞ
おちって本当に効くんだね。軽くパンチしたつもりなんだけど、強
かった? お兄ちゃん、ごめん﹂
﹁い、いや、大丈夫⋮⋮ゲホ⋮⋮﹂
心配させないために、俺は平気な振りをした。眼の端に滲んだ涙
を指で拭う。
﹁でも、お兄ちゃんが悪いんだからね。あたし、ヤダって言ったの
に、アナルなんか⋮⋮ひどいよ﹂
﹁ご、ごめん。なんか、いつになく興奮してしまって⋮⋮﹂
未羽は﹁はぁ⋮⋮﹂と溜息をついた。
﹁ん∼⋮⋮でも、あたしも悪いのかぁ。レイプして、って言ったの
あたしだもんね﹂
755
﹁い、いや、未羽が謝る必要はない。俺が調子に乗ったせいで⋮⋮﹂
俺が言い終わる前に、未羽は身体を倒し、俺の胸を枕にして寝そ
べった。
﹁ふう⋮⋮﹂
胸の上でもう一度溜息をつく。どうやら、許してもらえるらしい。
正拳突き一発で妹との仲が修復できるのなら、安いものだ。
﹁香奈ちゃんに習った護身術、全然役に立たなかったなぁ⋮⋮腕力
がないのは自覚あったけど、あんなに手も足も出ないなんて⋮⋮﹂
﹁これに懲りたら、今後絶対に夜道を一人で歩いたり変な合コンに
参加したりするんじゃないぞ。おまえは可愛すぎて狙われやすいん
だから、人一倍注意しなくちゃならない﹂
﹁そうだね﹂
﹁⋮⋮そこは少し謙遜してもいいかと思うが、実際世界一可愛いん
だから、ヨシとしよう。体格のいい兄と格闘家の親友に恵まれて良
かったな。いつでも用心棒になってやるから、遠慮なく俺や香奈ち
ゃんを頼るんだぞ﹂
﹁その兄にさっきレイプされたけどね﹂
﹁ぐ⋮⋮﹂
俺が言葉に詰まると、未羽はくすくすと笑った。可愛らしい笑顔
だった。
﹁お兄ちゃん、ありがとね⋮⋮﹂
唐突に礼を言われ、俺は戸惑った。
﹁それ、何に対しての礼だよ? アナルにバイブ突っ込んだ相手に
﹃ありがと﹄とか、いくらなんでも都合良すぎるだろ、おまえ﹂
﹁そういうんじゃなくって⋮⋮﹂
未羽がぽりぽりと頬を掻く。
﹁香奈ちゃんにね、前から﹃未羽のアナルを攻めたい﹄って言われ
てたの。でも、切れ痔の再発が怖いからって、ずっと断ってたんだ。
あたしは好きなように香奈ちゃんのアナルを弄んでるのにね。
本当は、もう何ともないのわかってたんだけど、やっぱり怖くっ
756
て⋮⋮勇気が出なかったの。
お兄ちゃんが無理やりでも弄ってくれなかったら、あたしずっと
香奈ちゃんのお願いを断り続けてたかも。これで、香奈ちゃんの思
いを受けとめることができるよ。そのことへの、ありがと﹂
未羽は首を伸ばして、俺に、チュッとキスをした。不意を突かれ
たので、俺はドキッとしてしまった。優しい笑顔を浮かべて、未羽
が俺を見つめる。
﹁お兄ちゃんは、いつもあたしを新しい世界に連れてってくれるね。
大好きだよ、お兄ちゃん﹂
言葉が、じゅわっと胸に染みこんでいくような気がした。嬉しす
ぎて、素直に返すことができず、俺は憎まれ口を叩いた。
﹁新しい世界って、近親相姦やアナルプレイかよ。悪い道に引きず
り込んでるだけじゃないのか? 俺﹂
﹁それを悪いと決めてるのは、古い道徳観だよ﹂
サラッととんでもないこと言いやがった、こいつ。エロエロ大魔
王の倫理って、どうなってるんだ。
﹁ねえ、お兄ちゃん。アナル弄られるのは怖かったけど、お尻にバ
イブ入れながらセックスするの、頭の中真っ白になるくらい気持ち
良かった。香奈ちゃんとのエッチも、それはそれは素敵なんだけど、
やっぱりお兄ちゃんのおちんちんには、お兄ちゃんのおちんちんで
しか得られない気持ち良さがあるね。最高だったよ﹂
目を輝かして赤裸々なことを言う妹に、俺は苦笑してしまった。
﹁うん⋮⋮気持ちは嬉しいけど、十五歳の女の子は、もうちょっと
オブラートに包んでもいいんじゃないかな?﹂
﹁あたし、もっとお兄ちゃんのおちんちん欲しいな⋮⋮ねえ、アナ
ルはなしで、普通にラブラブなセックス、もう一回しない?﹂
﹁するするする、しますします何回でも!!!﹂
すごい早口で俺は言った。オブラートなんか要らねえ。未羽が眼
を三日月にして、にっこりと笑う。
﹁ふふ、お兄ちゃん、大好き﹂
757
未羽が上半身を倒して、身体を重ねてきた。俺の背中に腕を回し
てギュッと抱きつくと、まるで心音を聞こうとしているように、胸
に耳をつけた。
すぐにプレイ再開かと思ったら、未羽は横になったまま静かにし
ている。俺はいつでもバッチコイなのだが、あんまりがっつくのも
カッコ悪いので、彼女のペースに合わせることにした。エッチの前
に、兄に甘えたくなったのかもしれない。
未羽が喋らないので、俺も黙った。この角度だと、表情は見えな
い。艶のある髪が綺麗だったから、俺は猫を撫でるように頭を撫で
た。
﹁ふぅ⋮⋮﹂
未羽がまた溜息をつく。今日は溜息が多いな、って思ってると、
彼女はぼそっとこう言ったのだ。
﹁⋮⋮⋮⋮あたし、お兄ちゃん以外の男の人とは、絶対セックスで
きないと思う﹂
どくん、と俺の心臓が鳴った。
何気ない感じで放たれたその言葉は、とてつもない爆弾発言にも、
ただの冗談にも思えた。
﹁⋮⋮それ、どういう⋮⋮意味⋮⋮?﹂
おそるおそる聞くと、未羽がむくりと頭を起こした。﹃ねえ、聞
いてよ﹄って顔をしてた。
﹁あのね、あたし、ずーっと前から、男の子とそういうことしたい
と思ったこと、一度もないの。
思春期になると、周りの女の子はみんな普通に男女交際やエッチ
の話をするんだけど、正直、全然興味なくて、興味ないことがバレ
ないように、適当に話を合わせてた。
あのことがきっかけで、お兄ちゃんとセックスして、お兄ちゃん
とのセックスは、とっても気持ち良かったの。
だから、これをきっかけにあたしも変わるかなって、男の子に興
味もてるようになるのかなって思ったんだけど、全然変わらなかっ
758
た。
今でもそう。あたし、男の人とセックスなんて、したいと思わな
いし、考えられないし、これからも絶対しないと思うの。
香奈ちゃんやのりちゃんとは、エッチしたいと思うんだよ? で
も、男の人でエッチしたい、セックスしたいって思うのは、お兄ち
ゃんだけ。
こんなこと考えるのも、今だけかなって、大人になったら考えも
変わるのかなって、そうも思ったんだけど︱︱最近は、やっぱり違
うと思うんだ。
あたしがまだ子供だからとか、そんなんじゃなくて、これからも、
ずっと、あたしがセックスするのは、お兄ちゃんだけ。絶対そうだ
と思うの︱︱﹂
ずっと、心に秘めてきたことだからなのか、未羽は、淀みなく語
り終えた。そうして、じーっ、と、俺の眼を見つめた。
俺も、瞬きもせず彼女を見つめ返した。
結婚、とか、子供、とか。そういう言葉が頭をよぎったけど、口
に出すことはできなかった。
時が止まったような数十秒間が過ぎ、未羽が悩ましげな顔をして、
首をかしげた。
﹁重い?﹂
彼女は俺に上に寝そべっているので、それはどっちの意味にもと
れた。
﹁重くないよ﹂
と俺は答えた。
﹁お前はちっこくて華奢だから、ぜんっぜん重くないよ。おまえの
重みは、俺には心地いいんだ。いつまでも寝そべってていいよ﹂
俺がそう言うと、未羽はちょっとだけ眼を大きくして、それから
楽しそうに笑った。鈴を転がすような声が、耳をくすぐる。
﹁あははは⋮⋮お兄ちゃんなら、そう言ってくれると思ってた。ね
え、セックスしよ。いっぱい﹂
759
﹁おう、今夜は寝かさないからな!﹂
俺は未羽を抱きしめ、キツく唇を吸った。頭の中は空っぽになっ
ていた。
言葉どおり、その日俺たちは一晩中セックスした。
世界に二人しかないみたいな気分で、俺は何度も何度も、未羽の
中に射精した。
翌日。さすがに起ききれず、二人揃って風邪を引いたことにして、
学校を休んだ。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://novel18.syosetu.com/n8819by/
妹が痔になったので座薬を入れてやった件
2016年12月4日18時14分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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