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に現れるマグノ ン系カオスとア トラクタの再成

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に現れるマグノ ン系カオスとア トラクタの再成
福井大学工学部研究報告第51巻第1号2003年3月
25
Mcm,Fac,Eng.Fukui Univ一,Vol.51,No.1(March2003)
FMR実験に現れるマグノン系カオスとアトラクタの再構成
察 江‡原田義文洲
千葉明朗‡
小川淳司榊 平田隆寺榊
Chaos ofMagmm Systems im FMR Experim㎝ts㎝d舳e R㏄omstmcti㎝ofAt付actors
Jia㎎CAI‡,Yoshi血miHARADA榊,MeimCHIEA事,Ats11siOGAWA榊㎜dTa㎞y皿kiHIMTパ㍑
(Received February19.2003)
Chaotic time series in FMR experiments were investigated丘。m the viewpoint ofreconstructing
an attract0L As the form ofrecoI1structed attractors was a function oftime de1aXτ,the way to find
out the optima1va1ue ofτwas investigated.To see the detai1of the at廿actor,we constmct the3D
stereograph.Fo1ding and stretching ofthe orbit in3D space can be distinguished in3D stereograph.
We compared the strange attractor of the mathematica1mode1of magnon systems to the㎝e of
experimenta1data.As a resu1t,we fo㎜d some simi1ar structure between thcm.We a1so ana1yzed
the chaotic time series fmm attmctor了econstmction,power spectrum,the1argest Lyapunov
exponents and Poincar6sections.
Keツ肌〃ε:Chaos,Magnon,Time De1ay,Attractor,3D Stereograph,Fermmagnetic Resonance
おける副吸収現象(subsidiary absorpti㎝)と早期飽和
1. はじめに
現象(premature saturati㎝)の発生による均一モード
の磁化が高励起下保存できないことを示した.理論
カオスは非線形物理学の重要な研究テーマである.
では,Suh1[2〕がFMRによって励起された均一モード
気象現象を含む流体力学の世界,生態系での個体数
の変化,経済現象,臨界点付近での物理現象,脳神
経の振る舞いなど,多くの現象の中にカオスがみつ
と他のあるモード間に存在する非線形相互作用の点
からマグノン系の不安定性現象を考査し,S理論を
かっている.実験室でみつかっているカオス現象と
して,熱対流(レーリーベナール対流)実験やFMR実
提唱した.副吸収現象と早期飽和現象はそれぞれ3
マグノン散乱機構(Suh1の第一次不安定性)および
4マグノン散乱機構(Suh1の第二次不安定性)によ
験でのマグノン系の実験に現れているカオスがよく
ってモデル化された.3マグノン散乱とは波数ん:0,
知られている.特に,強磁性共鳴(femmagnetic
周波数ω。=ωρのユニホームモード1個が波数ん≠O,
res㎝ance:略してFMR)は実験条件を精度よくコン
周波数が約ωノ2のマグノン対が生成する過程であ
トロールできることから,カオスの研究において注
る.4マグノン散乱とは波数κ=0,周波数ω。=ω、
目されている.最近,カオス制御の観点からも,FMR
のユニホームモード2個が波数北=0,周波数がω、
実験のマグノン系の研究が盛んになってきた.
のマグノン対が生成する過程である.どちらの散乱
1953年Dam㎝[リが高励起下強磁性体共鳴実験に
過程もマグノン系のエネルギーおよび運動量が保存
される.
物理工学科
1980年代,パラメトリック励起されたマグノン系
(株)起業創研
自励発振131がカオスであることが指摘された.以来,
知能システム工学科
強磁性体におけるマグノン系のカオス現象に関する
Dept.ofApp1ied Physics
研究は実験を中心に展開してきた.マグノン系カオ
G1oba1Business Creation Inc.
Dept.ofHuman and Artificia1Inte11igent Systems
スのパラメトリック励起は,外部静磁場の大きさと
マイクロ波磁場の周波数を固定し,マイクロ波磁場
26
のパワーだけを制御する実験である.パワーを徐々
に上昇させて,一定の閾値を超えるとマグノン間の
相互作用による自励発振現象が観測される.更に大
きいパワーでは,カオス的自励発振,カオスの窓,
間欠性カオス川など様々な非線形現象が観測できた.
パラメトリック励起によって現れる自励発振はマイ
クロ波パワーによって基本周期,2倍周期,4倍周
期,…,カオス的な波形にかわっていく.このプロ
セスは周期倍化のカオスに至る典型的なルートとし
て知られている.パラメトリック励起実験は,FMR
H=一M M
{エ エ
H=一M
M
y
y
(1)
Ψ
−
Z
H=H−M
M
O
Z Z
である 但し,凡,∼,凡は反磁場係数である.
M、十M、十」V、=4π
(2)
である トルコの方程式に式(1)を代入すると
ゴ〃
†=パH・十(Mツ■M・)”〃1
共鳴領域だけではなく,非共鳴励起(non−reS㎝㎝t
aM「
γ=一γ{H。十(M工一M、)〃、}〃工
ac
pumpi㎎)によって非共鳴領域(副吸収が現れる静磁
場領域の近傍)においても行われた[51.自励発振の
ゴM
時系列データより,アトラクタが再構成され,パワー
コr:一γ(M1+M・)”^
スペクトル,最大リアプノフ指数工61などの解析によ
って,マグノン系カオスの特徴が捉えられる.この
ように,マグノン系カオスの微視的な相互作用が比
(3)
を得る.時間変化をe’ω’とし,平衡点近傍の微小振
較的よく研究されている点や観測された豊富な実験
動,すなわち仏,ルら<<〃を仮定する.式(3)の
事実から,マグノン系がカオス力学を研究する格好
変分をとり,ルω仏やμψM工は微小量として落とす
の力学系として知られている.しかし高励起下にお
と,式(3)は
ける非平衡状態でのマグノン緩和現象についてはよ
く分かっていないのが現状である.特に多重散乱を
はじめとする非線形緩和が予測されるので,様々な
角度からマグノン系のカオスについて研究する必要
一’ω
一”五十〃。十(ペツーM、)”、}”、・0
γ
jω
一〃。・(M五イ、)M,/”工一一Mγ=0
7
がある.
非線形現象に現れる時系列をカオスという視点か
ら解析する多くの研究がなされている.例えば,ア
トラクタの埋め込み,次元情報,最大リアプノフ指
数,等々がある.しかし,個々の解析にはまだか確
立しておらず,ノウハウが存在する.本論文はマグ
ノン系カオスの実験データを中心に,それらの解析
の手法を紹介し,かつ,詳細な解析を行う.
一’ω
_δV=0
z
γ
(4)
となる.ωは行列式
一’ω/γ 出十へIぺ)ψ一。
一γ㈹十(ぺ一ぺ)μ} 一1ω/γ
2. FMR実験におけるマグノン系
(5)
により求まる.すると
2.1FMR共鳴
強磁性体における電子スピン共鳴(electron spin
ω
r{4+(へ■洲阿十H)μ}(6)
resonance:略してESR)のことを強磁性共鳴という.
強磁性体は磁気モーメントの間の強い交換相互作用
が求まる.これが反磁場を考慮したKitt1eの式であ
る【71.本実験のような磁気異方性のない球状の強磁
のため,結晶全体として巨視的磁気モーメント〃を
つくっており,その磁気モーメント〃の絶対値を運
性体サンプルを,外部磁場Hoの中に置かれていると
動の保存量とするラーマー(Lanmor)回転運動をす
きは(札=ベツ=札=4π/3)
る.キッテル(Kitt1e)は〃に作用する有効磁場とし
て,反磁場効果を考慮した強磁場共鳴の1式(Kittle
σ)式)を提案した.楕円体の強磁性体が,Z方向に
旦:H
レ1 0
(7)
かけられた外部磁場〃0の中にある時,磁性体中の磁
となって,反磁場効果は消えて常磁性共鳴の式と同
場は,異方性エネルギーが0ならば
じになる.強磁性体共鳴の測定法は電子スピン共鳴
と同様であって,磁性体の磁気双極子遷移を観測す
27
る分光学と考えてよい.また,常磁性体の測定と異
なり,波数κ=0のマグノン励起(通常の強磁性共鳴
で観測される均一モード,キッテルモードとも呼ば
れている)に対応しているため独特な現象が現れる.
2.2自励発振現象とS理論
近接したスピンとの間にのみ交換相互作用エネノレ
ギーをもつN個の一次元的に並んだ強磁性体を考え
る.基底状態は磁場方向に全磁気モーメントを並べ
た状態である.任意のスピンーつをひっくり返した
状態はこの系の第一励起準位と考えられるが,実際,
隣り合ったスピンを次々にひっくり返していく作用
をするから,特定のスピン反転状態は固有状態では
なく,それの線形結合状態が固有状態をつくる.マ
グノン:magnon(或いはスピン波:spin−wave)は励
自励発振現象を説明できる理論としてはS理論【21
がある.この理論は±光モードと±パモードが熱平
衡値を大きく超えて存在していると仮定するモデ
ルにより,白励発振の特徴をうまく再現することが
できた.例えば本実験に考えられる自励発振の非線
形緩和機構として4マグノン散乱(S山1の第二次不
安定性)がある.S理論によれば,エネルギー,運
動量と磁化を保存するん=Oのモードから生成され
た±んモードのマグノン対が±た’モードの対にさら
に散乱される過程,およびその逆過程によって自励
発振が発生する.指数的に増加したマグノン数n止
に従って,マグノン系では新しい非線形的な減衰項
が顕在化し,新しい安定な状態に落ち着くことにな
る.時問的に振動する状態が,マグノン系の自励発
振である.
起されることになる.球状試料強磁性共鳴の式は常
磁性と同じ形になっている.マクロな反磁場は式(8)
3. 遅れ時間とアトラクタ
に入らないが,スピン波が試料中を伝わるとき,波長
に応じて局所磁化が層状に動的軸をつくって入り,
これによる反磁場がスピン波のエネルギーに影響を
3.1レスラーモデルとアトラクタ
従来の物理学では,本来非線形の現象も線形問題
与える.波数がHoからθ傾いた波では,動的軸に垂
直な方向の磁化がsinθに比例し,凡=4πsin2θ川=
として近似し,解ける問題にして取り扱ってきた.
札=0,とし,有限のんをもつ波の共鳴条件は
ず,解析的に解けない問題の方がほとんどである.
しかし現実の物理学の問題はむしろ線形近似ができ
物理現象を記述する方法を大別すると2つある:①
2ハα2
ω= Pγl/(H。一札M、・ ん2)
力
決定論的方法(dete㎜i㎞sticway)と②確率論的な方
法(stochastic way)である.物理現象の中で物理法
則によって,原因と結果を結びつけられる予測可能
2ハα2
(H。一M,M、斗4クM、・i・2θ・ ん2)/l/2
力
な現象が存在する一方,原因と結果の間にはっきり
とした関係が見られない現象,つまり乱雑な要素を
(ん≠O)
(8)
持つといわれる現象もある.
近年に至るまで,このような系についての情報を
十分に多く集めさえすれば「原理的には正確な予測
となる.式(8)において,同じ大きさのκでも,θ
が可能である」,すなわち,乱雑性は多自由度系に
によってエネルギーが異なることがわかる.このよ
うに,反磁場効果を考察することにより,マグノン
のエネルギー一波数んの分散曲線はバンド構造をも
対する情報不足のためと信じられてきたが,ノイズ
が追加されていない微分方程式で記述される少数自
由度系でも,非周期的で乱雑な運動を示すものがあ
つようになる.このため,エネルギーの縮退モード
った.この乱雑さは本質的なものであり,系の情報
が数多く存在し,大きな励起下では,マグノン散乱
をより多く集めたからといって失われるものではな
を中心とした非線形現象が起きることになる.強磁
性体におけるスピン波の非線形現象は励起用の電
磁場(マイクロ波)とスピン波との間の非線形相互
作用およびスピン波間の非線形相互作用が主役で
ある.緒言に述べたSuh1(スール)はSuh1の不安
定性による大励起でのマグノン数の不安定性現象
を予言した.その後のFMR実験によって,励起電
いと考えられ,カオス(chaos)と呼ばれるようになっ
力(マイクロ波パワー)はある閾値以上でマグノン数
が熱平衡値を超えた指数関数的に増加する現象が
発見された.マグノン系の自励発振である.
た.もっとも簡単なカオス現象があらわれる微分方
程式系であるレスラー系でみていこう.自由度3次
元のレスラーモデルは
メ=一z−y
♪=ψ十λ
左=加一(o−x)z
(9)
で記述される.ここで,o,わ,oは定数である.レ
スラー系の状態は,3次元相空間(石ハz)の1点に
28
より記述できる.系の時間発展は相空間での解軌道
H(x)・H(小)=H(γ)十H(xlγ)
(11)
によってみることができる.散逸系では時間発展に
対して相空間の体積は減少する(リュービルの定理).
3次元空間の一点から始まった軌道は十分時間が経
つと3次元より低い次元を持つ空間に吸い込まれる.
この軌道が吸引されている部分空間をアトラクタと
呼ぶ.対象とする力学系はカオス的に振動するとき
のアトラクタはストレンジアトラクタと呼び,その
相空間のある部分空間に軌道が吸い込まれる.スト
レンジアトラクタの軌道が時間発展につれて,引き
伸ばされたり折り畳まれたりする.その度合いをあ
らわす指標はリアプノフ指数である.ストレンジア
の関係から,
∫(X;γ)=∫(γ;X)
(12)
であることもいえる.エントロピーと情報量は相補
的な関係を持ち,エントロピ』とはその事象を完全
に知るために必要な情報量を示していると考えるこ
ともできる.例えば,式変形すると,
H(X;γ)=H(X)十H(γ)イ(Xlγ)
(13)
トラクタの最大リアプノフは正数を取ることになる.
である.これは人γを両方とも知るために必要な情
報量は,xを知るために必要な情報量と,γを知る
また,ストレンジアトラクタは,自己相似構造をも
ために必要な情報量から,その二つに共通している
っており,非整数な次元つまり,フラクタル次元を
情報量を引いたものである,という解釈ができる.
持つことがわかる.従ってカオスの性質を理解する
のにアトラクタの諸性質を調べることが重要である.
く知られたレスラーモデル,マグノン数理モデル,
遅れ時間と再構成されたアトラクタの関係を,よ
図1のレスラー系ストレンジアトラクタは3変数
により作られたものであるが,実際の実験では3次
元空間にアトラクタを埋め込む場合,1次元の数値
マグノンの実験データからみていこう.図2は遅れ
情報しか得られないケースがほとんどである.ユ変
3.2マグノン系カオスのモデルとアトラクタ
微視的相互作用に基づくマグノンモデムのハミル
数の時系列データからアトラクタを再構成するには
ターケンス(丁吐ens)の埋め込み法I8Iを用いる.ス
トレンジアトラクタを再構成する場合,一番重要な
ことは最適な時間遅れτを選ばなければならないこ
とである.例えば,τが大き過ぎると,カオス力学
系の持っ軌道の不安定性により各座標間は無相関と
なり,力学系の座標軸として適当ではない.逆に,
τが小さ過ぎると再構成状態空間内のデータは極端
に相関が高まり,その結果,再構成された軌道は再
構成空間の細狭い部分に押し潰され分布する.
時間τによるレスラーモデルのアトラクタである.
トンニアンは巧=1とおいた単位系で,
1
”・ψ・亭ω舳・ヲ手(・1地・σα)
・/F…p(一1ω、1)∫・・…/・Hil、、
(14)
と表わされる.ここで,ωρは励起周波数,ω片はた
モードマグノンの周波数,ゾとノは空洞共振器内の
フォトンの生成消滅演算子,パとわ止は波数んのマグ
最適な時間遅れτを決める方法としては振動波形
ノンの生成消滅演算子である.Fはマイクロ波強度,
の1基本周期の約数分の1を選ぶ経験的な方法があ
る.しかし,より定量的な時間遅れτの決定する方
法が期待されている.本報告では平均相互情報量の
gκはフォトンとんマグノンとの結合定数である.第
一項は空洞共振器内フォトンのエネルギー,第二項
方法[91を用いて,適当なτを決めることを試みた.
はマグノンのもつエネルギー,第三項は1つのフォ
トンが消滅して波数±たのマグノン対が生成される4
情報理論において,ある事象の結果を知るとある別
の事象に付いてのあいまいさが減少することがあり
マグノン散乱の励起過程およびその逆過程,第四項
うる.その二つの事象が独立でなく何らかの関連を
ことからこ0)二つの差こそが情報量であると考えら
はS理論によるマグノン間の相互作用のハミルトン
ニアンである.ここでμ、tとして考える過程は2つ
のマグノンが消滅,また2つのマグノンが生成され
る過程である(Suh1の第二次不安定性).4マグノ
ン相互作用の中で,対称性の高い散乱過程だけを取
れる.
り入れ,4マグノン過程のハミルトンニアンは
持っているときである.この時のあいまいさの減少
量こそがr相互情報量」である.H(刈はxσ)曖昧さ,
〃(刈ηはγを知った上でのxの曖昧さである.この
∫(X;γ)=〃(X)一H(γ)
(10)
は空洞共振器内フォトンと導波管の結合である.冴、t
1
㌦・塔η独戦蝋十ち十幻)
これが通報γから事象xに関して得られる平均相互
情報量である.
(15)
29
(b)
(a)
×
修ミ
鰺…巡
{謙
y㌔
X
図1 レスラー系のカオス状態でのストレンジアトラクタ.初期条件。=ろ=0.2,c=
5.1,xo=一3.0,γ。=1.0,zo=1.0.(a)3次元空間に埋め込んだ図,(b)x−y平面への射影.
a
;怒、藪紅、
(
い
十
×
ご
×
』■一一こ、一;一
・、醤
X(t)
X(t)
d
(
(
い
.い
十
十
じ
×
じ
×
X(t)
X(t)
図2 レスラー系時系列の再構成例.(a)時間遅れτは1/2基本周期である,(b)1/4基本周
期,(c)1/10基本周期,(d)1/20基本周期.
30
(b)一一
(a)一一一・
〃萎嚢瓢
ぺ髪妙
R2
S1
R1
R1
図3 マグノン系カオスの数値モデルにより得られたアトラクタ.R1は
マグノンを軍述する。lの実数部,Slは虚数部,膿は。2の実数部である.
(C)
(a)
⇒
(
⇒
(
お
お
←
十
■
言
}
←
十
工・
ぐ」 燃・.へ
ろ
自
旨
止、. 卓」・㌧冒’一二,
一、ノ\ノ ・
㌧一^㌔._〉㌔_イ
}
’皇」
R1(n)
R1(n)
(d)
(b)
(
⇒
ミ・ミき㌻t竜一
(
⇒
一
十
自
二
}
’・・、.、、
乃
十
\\ 〕
茅
自
’彩・
、
、へ一、
’■→
、メη
d
一
㊦
迂 、
錘s」t一町己 G.
二
■
4
」ヨ
R1(n)
R1(n)
図4 マグノン系カオスの数値モデルの時系列からアトラクタの再構成例.(a)時間遅れは1/2基本
周期である,(b)1/4基本周期,(c)1/10基本周期,(d)1/20基本周期.
31
のうち,エネルギー縮退している土んとψモードの散
共振器内(Q値はあまり大きくない場合)のフォト
乱過程に限定し
ンλはマグノン。に断熱追従するとして,dλノdt=0
より,月は
1
H㎞=亭㌃ろ二wか十淳∫伽ろ”ん
∼
j
ノ・
1
コ(F+坪・/・二1)
㌃,:㌃,。:㌃,=肋,1∫肘,=∫㌦大=㌃.ム=片..か
(21)
(16)
となり,さらに。κ;一〇κ,一i/F:Q,一/(2F)=Eと
で表せる相互作用を中心に考える.ここでrと∫は
相互作用の強さを表わす定数である.μ、1を分解し
おいて,式(21)を式(20)に代入すると,最終的
にばんモードのマグノン。止についての運動方程式
て,式(14)の第2,3,5項を書き出すと
a0た
”
H一Σ(ω、十Σ㌃ψた)似
κ
,
一:一7た0ドj△ω。0rρ佃片0片
た
1
+5手{(・1+亭∫1^肌十剛
2
一ぺ楓汰㌦q・凪、・Eg4伽/
た
(17)
となる.つまり4マグノン項内,71項は北モードの
た
(22)
を得るIlo1.式(22)に4マグノン散乱モデルに関与す
エネルギーシフトを,∫項は他モードが±火モードを
るモードの数だけの連立方程式を立て,パラメータ
励起する効果を表わしている.S理論では,この∫
項による内部励起とマイクロは励起との間の位相の
蜘一0.2×107,9片。一0,F−1.0×10g,η。一一0.3×10刃,
ずれにより,±んモードの増加が非線形的に抑圧され
∫’。一∫。。一5.0×10“,∫。。一1.5×10つ,△ω’一△ω。一0
るとしている.
(se♂),γ〃=2γ〃=0.1×105として固定し,数値計算
自励発振が起きるほどの高励起下では多くのマグ
η。:7㌧。=2.2×1O“,7三。=1.5×10“,∫。=一0.3×10つ,
を計算した結果を図3に示している.
ノンがこの力学系に関与している.各演算子を古典
複素変数と考えてよい.さらに,現象論的に減衰項
遅れ時間を変えることによって,再構成されたア
トラクタがどのように変わるかをマグノン系カオス
を導入すると以下の運動方程式を得ることができる.
〃
∂〃
のモデルによって見ていく.図3はマグノン系の数
値計算によって得られたデータから再構成したアト
”
∂プ
ラクタである.図4は遅れ時間tau(データ数でま)る
一十Fノ=一j_
aろん
∂〃
一十γ{=一ゴ丁丁
”
∂ろ止
が,遅れ時間に相当する)による各アトラクタであ
(18)
る.遅れ時間によ二って,アトラクタのよすがかわっ
ていくことが確認できる.図5はFMR実験により
第一の式はフォトンの運動方程式,第二の式は及モ
ードマグノンの方程式である.F,γ此はそれぞれフォ
トンとマグノンの減衰定数である.自励発振の周波
数は通常,マイクロは周波数ωρより4∼10桁小さい
ので,ωρの成分を除くために新しい変数メ,o々(メ=λ
得られたマグノンの自励発振の時系列である.図6
は図5の時系列データより作ったアトラクタである.
遅れ時間τ似よって,アトラクタの様子がかわって
いく.この場合,平均情報量の方法で求めたτが基
本周期Pの約1/4であることがわかった.
exp(一iωρt),わ。:o此exp(一iωバ2))を式(18)に導入
すると,
〃
∼
3.3FMR実験で見つかつたマグノン系カオス
FMR実験で使ったサンプルは表面をよく研磨し
1
7+Fノ:一ゴ(F・坪;・1ら1)(19)
た純YIG(yttri㎜nir㎝gamet)球形サンプルであり,直
径は0.9144mm,常温での自発磁化は17800eであ
ac
∼
号十ρ1:一ゴ{△ωlol+・^十2手㌃(・1㌦)・1}
十Σ∫ムた,(・、,・.此。)・二、1
(・・)
か
が得られる.但し,△ωム=ωムーωρノ2である.空洞
る.Y1Gはフェリ磁性体で,表皮効果を避けられ,電
磁波は一様に試料に入って,きれいな強磁性共鳴を
示すことができる.YIGはフォノンとマグノンとの
相互作用が弱く,励起エネルギーがマグノン系内部
にたまりやすく,マグノン間の非線形相互作用が顕
在化することが期待できる.
32
_rP↓圭本周期) 一 1
7百
=
.岩
0
箏
6
富
=
巳
く 一100
40
42
46
44
T[s1
図5 マグノン系のカオス的白励発振,〃。=33000e,ωρ=9,3GH土,
マイクロ波パワーは30mWである.
(a)
(
い
(
い
十
十
←
)
<
←
)
<
A(T)
A(T)
(d)
(b)
(
い
一きざ無
/
、ノ,
㌔’小心\
ミ㌔、 N、..
〃
詠洲
’〃
十
←
)
<
“
辿
、
、、
\“
\洲
ミ態
.7
A(T)
(
い
十
←
)
<
A(T)
図6 FMR実験より得られたマグノン系の時系列の再構成例.(a)時間遅れτは1/2基本周期である,
(b)1/4基本周期,(c)1/lO基本周期,(d)1/20基本周期.
33
FMR共鳴装置は日本電子(JOEL)FA−1oo型ESR共
鳴装置を利用した.装置はマイクロ波発生部,磁石
面f
面a
励起部および分光計制御部によって構成されている.
N 韓、
N 澱。
励起用マイクロ波はXバンド(ωρ=9.3GHz)であ
lJ
る.最大マイクロパワーは200mWに達している.
外部静磁場は電磁石によって作られ,可変調節範囲
は一100∼65000eである.測定は垂直励起方式で,
面e
、満 \
+
←
<
面b
面。
外部静磁場〃。方向と直角にマイクロ波を加える.
FMR吸収を観測するときに,周波数100KHzの変調
面d
A(T)
磁場を掃引するが,自励発振の実験では変調磁場を
0に設定し,外部静磁場も共鳴領域に固定してから,
マイクロ波パワーだけを調整することになっている.
図8 アトラクタのA(T)一A(T+τ)平面への
射影および6つのポアンカレ断面(面a∼f).
実験装置の空洞共振器はTEolIモード円柱形(サン
プルなしの場合の空洞共振器Q値は18,ooo)である.
面a
空洞共振器に励起されたマグノンは導波管を通して
12−bitのAD変換機に送られ,データはコンピュータ
い
によって記録される.
べ
FMR共鳴のKitt1eの式によると,本実験ではXバ
ンドのマイクロ波に対して共鳴は32000e付近にあ
←
<
十
鴇
A(T+τ)
る一励起されたマグノンバンドはωノ2のエネルギー
レベルから高く外れたため,共鳴領域でパラメット
リック励起に現れたマグノン系カオスはスーノレの第
面b
A(T+τ)
面e
8.
1次不安定性が発生せず,Suh1の第二次不安定性に
よるものと考えられる.しかしXバンドのマイクロ
い
N
+
←
<
波を使った非共鳴励起実験よれば,副吸収領域(非共
縛
鳴領域)においてSuh1の第一次不安定性によるマグ
ノン系カオスが観測された.また,本実験の予備実
A(T+τ)
い
N
+
←
<
.〉納
㌦・、.
.㌧・8片
. 雲
A(T+τ)
面f
験として,マイクロ波パワーは30mW以上で副吸収
が22000e付近で確認できた.本実験では変調磁場を
・、・
い
0に設定し,外部静磁場も共鳴領域に固定してから,
N
マイクロ波パワーを徐々にあげていくと,図5のよ
←
<
+
うなに白励発振が観測できた.
A(T+τ)
・〃町2
た
瑚
A(T+τ)
図9 図8より得られた各ポアンカレ断面.
10H
τ
\ろ
着10’o
目ミ
4!
\
ろプ十名
・昌1げ
o2次元
15
旦
曽1び
こ
oo・・▲▲ }ヴ’
!燦緊
急10
幸
2
。
−107
■ ^
■証・
. ^ 口榊
・ム ロー職
.
2
4
6
8
Ω フ.
4
6
8
Fm叩Ie皿。y「Hz1
0
・.
一2
0
○
o 灯。
榊
@ ▲口■▼“
2
4
.3次元
△4次元
▲5次元
口6次元
■7次元
v8次元
▼9次元
◇lO次元
6
10gγ
図10 各埋め込み次元によって求められ相
図7 時系列図5のパワースペクトル.
関次元(斜線の傾き)の変化.
34
(a)
(b)
(C)
図11 マグノン系カオスのアトラクタのステレオ図.(a)は図6(b)に,(b)は図6(c)に,
(c)は図6(d)にそれぞれ対応する.
35
離散な時系列にフーリエ変換を行う.時系列デー
タに対してフーリエ変換を適用すると,各振動数成
分の強度分布をグラフにしたものはパワースペクト
ルである.図5に示されているマグノン系は準周期
的である.図7のように,基本周波数/とメが存在
し(基本周波数スとλの鋭いピーク):ス=4.65Hz,
λ=O.95Hz,また混合周波数ス,ス=∫切=5.60Hz
が確認できる.図7より,図6(b)のアトラクタはT2
は埋め込み次元空間の球の半径である.時間遅れτ
によるm次元空間の点の集合
天、=(ヌ、(1),即、十τ),…,・(1ノ十(m−1)τ)(25)
を作り,これを用いて,1天r天ノ1を求めれば
・一11mlo・(V)
(・・)
・→111097
トーラス構造であることが分かる【11ユ.
Dは相関次元として求められる。実際には,両対数
プロットの傾きから相関次元を求めることができる.
図6(b)のアトラクタの位相生問構造をみるために,
図10は各埋め込み次元m(2∼1O)に埋め込んだ場
ポアンカレ断面をとった.図8はA(T)とA(T+τ)面
合い求められた相関積分の変化図である、埋め込み
への射影図で,0は縦軸(A(不十2τ)の軸)と平行な
中心軸を表し,六本の直線は0の周り6つのポアン
次元は6以上では図6の斜線の傾きはほぼ3.6に一
定となっている.よって,図5に示しているマグノ
カレ断面を表している.ポアンカレ断面の様子は図
ン系は3.6の非整数次元を持っていることが分かっ
9から分かるように,0に対して,回転がすすむにつ
れ,ポアンカレ断面は閉曲線から直線へ,また閉曲
た.図6のようなアトラクタを再構成する場合,可
視化するために埋め込み次元は3とした.また,図
11は図6に対応して作ったマグノン系カオスのアト
ラクタの3Dステレオ図である.
線へ戻ってくる様子がわかり,このアトラクタはト
ーラス構造していることが分かる1111.
初期条件に対して指数関数的に鋭敏である性質は
カオスの特徴である.アトラクタの軌道はn次元の
相生問内に引き伸ばされたり,折り畳まれたりする
ため,ある部分では軌道間の距離が時間に対して指
数的に拡大していく.その様子を定量的に示す指標
として,リアプノフ指数がある.つまりある時刻で
の距離とその直前の時刻での距離の比を対数の平均
値で示されるものである.n次元の系では,各次元
にリアプノフ指数が対応するので,全体としてリア
プノフ指数のスペクトルが得られる.こちらの指数
のうち,最大のものが最大リアプノフ指数である.
厳密的に言えば,力学系は周期あるいは準周期状態
では最大リアプノフ指数が0であるのに対して,カ
オス状態では最大リアプノフ指数は正値を取る.図
5の自励発振時系列により,最大リアプノフ指数は
0,011,僅か0より大きいとなることが分かる.つま
り図5の発振波形はマグノン系が準周期状態からカ
オス状態に移っていく段階にあるものを示している.
ストレンジアトラクタには自己相似構造いわゆる
フラクタル構造をもっている.力学系の次元情報は
フラクタル次元より得られる.フラクタル次元の代
表例は相関次元がある.それは相関積分:
l M
C(・)下茗”(・一1ネー㍉1)
・/
1 (λ≧0)
(23)
(24)
0 (x<0)
但し,1元r天ノ1は王’,天ノ間の距離,〃はヘビサイ
ド関数であり,Mはデータ点数である.ここで,γ
4. まとめ
FMR実験に現れるマグノン系のカオス的な時系
列をストレンジアトラクタの観点から考査した.レ
スラーモデル,4マグノン散乱モデルおよびFMR実
験によるマグノン系カオスの例にして,時間遅れτ
の選び方と時系列データより再構成されたアトラク
タの関係を示した.この結果,相互情報量の方法で
得られたτと数分の一基本周期の方法のτとは一致
することがわかった.このτを用いて,相空間にお
ける解軌道の折り畳み及び引き伸ばしの様子をアト
ラクタの3Dステレオ図によって明確に見ることが
できた.FMR実験により得られたマグノン系アトラ
クタの3Dステレオ図を描いたところ,数理モデム
にあらわれた構造をうまく再現できていることが分
かった.さらに,FMR実験の時系列データに関して
は,パワースペクトル,Lyap㎜ov指数,Poimcar6断
面及び相関次元からマグノン系カオスの時系列解析
を示した.
謝辞
ご協力いただく株式会社オリエントマイクロウェ
ーブの加藤喜康社長及び同研究室の大学院生の上田
耕司氏,田中寛之氏に感謝いたします.また,多く
の御教えをいただいた遠赤外領域開発研究センター
の光藤誠太郎先生にも感謝の意を表わします.
参考文献
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