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投信窓販 3.0 顧客本位の販売モデルへの変革を

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投信窓販 3.0 顧客本位の販売モデルへの変革を
投信窓販 3.0
顧客本位の販売モデルへの変革を
1998 年 12 月に投資信託の銀行窓販が解禁になって 16 年が経過する。この 16 年を概観すると、1998
年の解禁から 2002 年までと、それ以降とで販売のスタイルや戦略が大きく異なる。解禁当初はおっかな
びっくりのならし運転。全店舗における投信販売拠点も限定的であったし、MMF や中期国債ファンドが販
売商品の中心であった金融機関もある。当時は IT ブームに沸いた日本株投信がブームとなったが、IT
バブルの崩壊とともに販売上位から姿を消した。
代わって、じわじわと残高を積み上げてきた国際投信のグローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)が、
2002 年に残高の首位に立つ。グロソブの残高は最盛期に5兆円を超え、毎月分配型で先進国ソブリン
債に分散投資をするタイプの投信が窓販の主流になる。「グロソブを売ること」=「投信販売戦略」といっ
ても過言ではない時代が続いた。筆者は、「グロソブ前」「グロソブ後」とも言うべき 2002 年を分水嶺とし
て、以前の販売スタイルを「投信窓販 1.0」、以降を「投信窓販 2.0」と区分する。
さて、2014 年4月、そのグロソブが残高首位の座から降り、ハイイールド債券や海外リートを投資対象
先とする投信が上位を占めるようになった。これらの投信はグロソブに比べて値動きが大きい。果たして
この 10 年で日本の投資家のリスク許容度は大きく上がったのか。そんなことはないだろう。定期分配金
の高さが強調されるあまり、本質的なリスクの話は後回しにされているのが現状だ。
そうしたビジネスモデルに持続性はない。事実、ここ数年は投信の顧客数が増えておらず、むしろ減
少しているという金融機関の悩みを多く聞く。また、フローの投信販売が好調な陰で、ストックである投信
残高が増えていない。どこかに歪みがある。
2002 年に 60 歳で定年を迎えて、退職金の資産運用を始めた顧客も今や 72 歳。ライフプランニングの
アプローチでいけば、そろそろ資産運用を卒業する層だ。顧客の裾野を拡げる工夫、いや、挑戦をして
いかなければ先細りは自明。一時代を築いた「投信窓販 2.0」も制度疲労を迎えているのである。
では、新たな「投信窓販 3.0」では何を目指すのか。顧客本位、投資家本位のモデルを築くということに
尽きる。窓販で提供できる価値は「さまざまな投信を並べて売る」ことでなく、「顧客の中長期の資産形成、
資産運用を、身近な相談者として継続的に支援する」ことだ。本来、投資信託はそのための便利な道具
に過ぎない。自社の「顔」ともいうべき投信ラインアップは中長期投資の受け皿としての魅力を備えてい
るか。販売の担い手は分散投資の重要性とその具体的なソリューションを顧客の状況に応じて提案でき
るか。対面販売の提供価値と手数料報酬のバランスは適切かなど、今すぐ点検し、改革すべき事項は
多い。
折しも、金融庁から発表された「平成 26 事務年度 金融モニタリング基本方針」の「資産運用の高度化」
において、商品開発、販売、運用等それぞれに携わる金融機関の役割・責任(フィデューシャリー・デュ
ーティー)が明示され、販売会社には真に顧客のニーズや利益に適う商品の提供が求められることとな
った。本邦の投信関連法体系では、販売会社の役割・責任は極めて限定的だっただけに、大きな転換
点となる。裏を返せば、「貯蓄から投資へ」が実現し、皆が豊かになっていくために、販売会社の果たす
役割への期待はそれだけ大きいということである。
三菱アセット・ブレインズ 執行役員 主席コンサルタント 内田一博
(MaDo vol.36 2014 年 11 月 25 日 Opinion 寄稿記事)
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