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ニアフィールドモニターに 使える 本格派スピーカーに久々に

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ニアフィールドモニターに 使える 本格派スピーカーに久々に
Murata
ES701 Suono
ニアフィールドモニターに
使える
本格派スピーカーに久々に
巡り合った
レコーディング・エンジニア/マスタリング・エンジニア
行方洋一
色付けのないナチュラルなサウンド
ソースの音像が目の前にキレイに並ぶ
行方洋一
村田製作所が 2009 年 10 月に発売した ES701 Suono
るようになった 1960 年代はアルテック 604E とダイヤ
京が、音楽リスナーやオーディオファンの枠を越え新
トーン 2S-305 がモニタースピーカーの主流でした。前
たな潮流を生み出そうとしている。ES701 Suono 京は、
者の 604E は 38cm ウーファーとドライバーを同軸に収
同社が 10 年来に渡って研究/開発を続けてきたハーモ
めたスピーカー、後者の 2S-305 は 30cm ウーファーと
ニックエンハンサーと 13cm のフルレンジ・ユニットを
5cm トゥイーターを収めた 2 ウェイ機で、両者を連日
同軸構造で搭載したブックシェルフ型スピーカーだ。本
のように耳にしていたんです。それからしばらくして、
機の魅力は明確な音像定位再現にあるが、その利点はコ
ロンドンのアビイ・ロード・スタジオで JBL のモニター
ンシュマーのみならず、プロオーディオの現場でも徐々
スピーカー 4320 と巡り合い、当時在籍していた東芝音
にだが認知されつつある。ここではサウンド・クリエイ
楽工業のスタジオと目黒のモウリ・スタジオに 4320 を
ター/サウンド・スーパーヴァイザーとして名高いレ
導入し、使い始めました」
コーディング・エンジニア/マスタリング・エンジニ
1960 年代から 1970 年代におけるわが国のオーディ
アの行方洋一さんに ES701 Suono 京の魅力をたずねた。
オの歴史を振り返る際、モニタースピーカーの変遷を無
近頃、行方さんはかつてご本人がレコーディングに携
視することはできない。それは言うまでもなく、モニター
わった音源を、32 ビット/ 48kHz クォリティで音調整
スピーカーが音の基準として確固たるポジションを築い
(=リマスタリング)を施しオーディオインターフェイ
ていたからに他ならない。JBL スピーカーがモニタース
スのデモンストレーションなどで積極的に披露されてい
ピーカーとして一時代を築いた後は、ウェストレイク
る。本題に入る前に行方さんに 1960 年代から 1970 年
オーディオ、TAD など大型サイズのモニタースピーカー
代におけるわが国のモニタースピーカーの状況について
が次々と登場した。その一方、レコーディング・エンジ
聞いた。
ニアの間では音のバランスをしっかりと確認すべきとい
う機運が高まり、大型スピーカーとは別に調整卓の上に
ネットワーク非搭載の利点が
再生音に見事に表れている
「僕がレコーディング・エンジニアとして仕事をす
位置する場所に小さなスピーカーを置いて音を検聴する
「ニアフィールドリスニング」の概念が広まった。その
時、一世を風靡したスピーカーがメキシコ生まれのフル
レンジ・スピーカー/オーラトーン 5C だった。
Murata
ES701 Suono 京
¥168,000( ペア )
●型式:ハーモニックエンハンサー同軸搭載 13cm 口径フルレン
ジ・スピーカー●平均音圧レベル:85dB( 周波数帯域:70Hz ∼
20kHz) ●最大入力:30W ●推奨アンプ出力:25W ∼ 100W ●
インピーダンス:6 Ω●寸法/質量:W212 H312 D247mm /
5kg ●備考:サランネット付属●問合せ先:株式会社村田製作所フ
リーダイヤル 70120-015-008
http://www.murata.co.jp/speaker/
Murata
ES701 Suono
行方洋一プロフィール
なめかた・よういち。1943 年生まれ、東京都出身。1960 年、
東芝音楽工業 ( 後の東芝 EMI) に入社。坂本九、森山加代子、ジェ
リー藤尾、弘田三枝子、越路吹雪らのヒット作品を数多く担当。
その後制作部に移りプロデューサー&ミキサーとして、読売交
響楽団などのクラシックからアンリ菅野、マリーン、前田憲男
らのジャズまで幅広く担当し、高音質アナログレコード プロ
ユースシリーズ も手掛けた。1980 年に東芝 EMI 退社後はフ
リーのミキサーとして、オーディオ雑誌での評論活動や各種プ
ロ用製品の開発などに携わる。07 年には東芝 EMI の新シリーズ
ExMF(Extended Musical Fidelity) を立ち上げ、オフコースや
チューリップ、アリス、甲斐バンドなどのアルバムをリマスタリ
ングし好評を博した。現在は PA ミキサー、レコーディング・エ
ンジニア、さらにマスタリング・エンジニアとして活躍。昨年末
からポニーキャニオンの擁するジャズ・レーベル「チータ」の新
旧作のマスタリングにも携わっている 。
「オーラトーン 5C はここで紹介するムラタの ES701
ジを加えていきます。そうするとどうしても、ネットワー
Suono 京と同じく 13cm のフルレンジ・ユニットを搭
クを利用することで位相合わせが難しくなり、音像定位
載したスピーカーでしたが、ニアフィールドモニターと
も不明瞭になってくることは避けられません。その点、
してはとてもバランスがよくて重宝していたんです。音
この ES 701Suono 京は高域を担うハーモニックエンハ
の素性が見えてくるし、何よりフルレンジ・スピーカー
ンサーも音が出っぱなしで、ネットワークを使っていな
ならではの音像定位の良さが大きな魅力でした。けれ
いことがトータルの再現性において功を奏しているので
ども、オーラトーン 5C も後年ヤマハの NS-10( 後の NS-
す」
10M) に その座を奪われてしまい、音の基準が大きく変
わってしまいました。モニター環境が変われば当然音
の基準も様変わりするので、音楽制作の現場も混迷は
避けられませんでした。1980 年代から 1990 年代にか
高音質ソースの魅力を引き出す
計り知れないポテンシャル
けてはヤマハの NS-10 M が長年、ニアフィールドモニ
本機に搭載されているハーモニックエンハンサーは半
ターの標準機でしたが、それを手離しでは喜べない側面
球ドーム型の圧電セラミックス振動板が自ら振動し、空
が少なからずあったのです。そうした状況の中、ES701
間に対し、放射状の音波を発生する。また、この振動板
Suono 京の音を耳にして、『これはニアフィールドモニ
は、音楽信号に対して高速応答性の特徴があり、特に倍
ターとして久々に本格的に使えるぞ』と直感的に感じた
音の瞬時変化に対して、音の立ち上り、立下りを時間遅
んです」
れなく再生する。プロオーディオの現場で長年仕事を続
音のエキスパートである行方さんが ES701 Suono 京
けてきた行方さんが、ここまで ES701Suono 京にひか
をニアフィールドモニターに相応しいと感じるのは、ど
れるのは何故なのか。
んな点なのだろうか。
「ES701 Suono 京は現代の小型モニタースピーカーで
「ES701 Suono 京はかつてのオーラトーンにはなかっ
はなかなかお目にかかれない、音像定位の良さに抗し難
たワイドレンジな帯域をカヴァーする点にまずひかれま
い大きな魅力を感じるのです。意外に思われるかもしれ
した。さらに 13cm のフルレンジ・ユニットとハーモニッ
ませんが、現在スタジオで常用されている小型モニター
クエンハンサーをネットワークを使わずに組んでいる点
スピーカーは、ヴォーカルの『さしすせそ』で音像が両
にも大きな魅力を感じているんです。モニタースピー
スピーカーの真ん中にきちんと定位しないことが少なく
カーに限らず、スピーカーの原点は上から下まですべて
ありません。その点にずっと違和感を覚えてきました。
の帯域をカヴァーするフルレンジが基本にあります。け
また、今の流行音楽の中にはあえて口元を大きく聴かせ
れども実際は、高域が物足りないと言ってはトゥイー
て目立たせるミキシングも少なくありませんが、生音を
ターを追加し、中域が物足りないと言ってはミッドレン
尊重した音楽では、ヴォーカルとバッキングにはそれに
相応しい音像バランスがあるんです。このスピーカーは、
音楽本来のバランスをしっかりと見極めるのに相応しい
Murata
ES701 Suono
ニアフィールドモニターとして充分に使えると思いま
す。本機を音楽リスナーやオーディオファンだけのモノ
にしておくのはちょっともったいないし、ES701 Suono
京はプロオーディオの現場における音の基準を今一度考
えるいい機会になると考えているんです」
ES701 Suono 京はトリオ編成のジャズを聴いても、編
成の大きなオーケストラを聴いてもエンジニアが意図し
たサウンド・デザインがあっさりと描き出され驚かされ
ると行方さんは話す。コンプレッサーやエフェクターが
過剰に施されたソースは、そのアラまでが浮き彫りとな
る。行方さんがていねいに音調整を施したハイレゾ音源
の持ち味を、ここまでストレートに引き出す小型スピー
カーはなかなか見つからないという。常日頃、音楽と真
13cm 口径のフルレンジ・ユニット中央に村田製作所ならではの
技術を活かした、半球ドーム型セラミック振動板を採用したハー
モニックエンハンサーを装備する
正面から対峙したいと考えている熱心な音楽リスナー/
オーディオファンにとって、これほど魅力的なスピー
カーが他にあるだろうか。
現在、プライヴェート・スタジオ以外のダビング・ス
タジオには大抵、大型モニターや小型のニアフィールド
モニターに加え、CD ラジカセなどが所狭しと並んでい
る。行方さんは音のバランスを検聴するには、大型モニ
ターとニアフィールドモニターさえきちんと揃っていれ
ば事足りると指摘する。
「ES701 Suono 京のような素性の良いスピーカーを使
えば、CD ラジカセでわざわざモニターしなくても音を
スピーカー端子はバナナプラグにも対応した金メッキ仕様
しっかりと見極められると思うんです。コンシュマー用
スピーカーの大半は独特の音色を持っていますが、こ
の ES701 Suono 京は色付けがほとんどないので、ニア
フィールドモニターにまさに最適だと考えています」
音楽ソースの持ち味を演出・誇張せずにストレートに
引き出す ES701 Suono 京がプロオーディオの現場にお
ける音の基準になれば、音楽ソースの音をも根底から変
えてしまうかもしれない。音楽ファン/オーディオファ
ンにとって ES701 Suono 京の素姓の良い自然な響きは、
ハイレゾ音源を楽しむ PC オーディオ・システムの構築
でも選択肢の一つになる。また、数は少ないながらも充
実した内容で音質的にも魅力度の高い SACD などを存分
に楽しめるスピーカーとして、認知度がさらに高まって
Murata
ES701 Suono 京
いくに違いない。
¥168,000( ペア )
●問合せ先:株式会社村田製作所
企画構成 (Beat Sound 編集部 )
フリーダイヤル 70120-015-008
http://www.murata.co.jp/speaker/
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