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直線回帰式法による識別検索を用いた アポEおよびTGリッチリポ蛋白に

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直線回帰式法による識別検索を用いた アポEおよびTGリッチリポ蛋白に
博士 ( 栄 養学 ) 学 位 論 文
直線回帰式法による識別検索を用いた
アポEおよびTGリッチリポ蛋白に潜む病態の解明
-
高 レ ム ナン ト 血症 を 捉 える
-
Pathologic Background in ApoE- and TG-rich Lipoproteins Revealed
by Discrimination via Linear Regression
for understandig of hyper-remnant-lipoproteinemia
2 01 2 年
指 導教 員
氏
名
田中
明
井越
教授
尚子
IKOSHI, Naoko
女子栄養大学
要旨
Ⅰ
略号
Ⅳ
目次
緒言
1節
研 究の 発 端 と経 緯
2節
リ ポ蛋 白 の 生化 学
1
2-1
リ ポ 蛋 白の 構 成成 分
3
2-2
ア ポ E の特 徴
4
2-3
リ ポ 蛋 白代 謝
6
3節
レ ムナ ン ト の定 義
8
4節
メ タボ リ ッ クシ ン ドロ ー ム の背 景 と成 因
10
1節
人 間ド ッ ク 母集 団 の 75gOGTT 施 行 受 診 例を
11
目的
用いた解析の背景
方法
1節
対象
11
2節
検 討項 目 の 測定 意 義と 検 査 方法
12
3節
病 態解 析 の 特性 と 解析 法
14
結果
1節
回 帰式 に よ る病 態 識別 法
16
2節
回 帰式 上 下 層の 検 討
17
3節
識 別値 の 設 定と 区 分化
17
4節
区 分け の 解 釈
18
5節
ア ポE rich リ ポ 蛋白 群 (上 層 群 )と
18
各 群の 検 査 項目 の 比較
考察
19
まとめ
21
Summary
22
図表一覧
23
参考文献
39
謝辞
44
要旨
【背景】
人 口 増 加は 高 度 経済 成 長 を生 み、地 球 上 に 活 性 酸素 汚 染 を蔓 延 させ た 。
し か も 、 我 が 国 の 戦 後 の 高 度 成 長 は 生活 に 豊 か さ を も た ら し 、 食 の 半 欧
米 化 を 容 易 に 受 け 入 れ た 。 結 果 的 に 蔓延 化 し た 食 の ス ト レ ス は メ タ ボ リ
ッ ク シ ン ド ロ ー ム (MetS)に 代 表 さ れ る 生 活 習 慣 病 の 元 凶 と な っ た 。 こ
の 病 態 は 内 臓 肥 満 と 糖 尿 病 が 絡 む 合 併症 で あ り 、 動 脈 硬 化 の 独 立 し た 危
険 因 子 と し て 対 応 の 必 要 性 は 深 刻 さ を増 し て い る 。 動 脈 硬 化 は 3 大 死 因
(悪 性 新 生 物 ・ 心 疾 患 ・ 脳 血 管 疾 患 )の 約 50 % を 占 め 、 早 期 発 見 並 び に
早 期 治 療 を必 要 と する も の であ る 。
【目的】
MetS は 高 中 性 脂 肪(TG)血 症 を 伴 う病 態 であ る 。 特に 、 TG rich リ ポ 蛋
白 の 中 間 代 謝 産 物 の レ ム ナ ン ト リ ポ 蛋白 の 血 中 停 滞 は 、 動 脈 硬 化 性 病 変
の 発 症 と 進 展 に 関 わ る こ と か ら 注 目 度は 大 き い 。 そ こ で 、 レ ム ナ ン ト リ
ポ 蛋 白 の 基 本 成 分 で あ り 、 HDL も し く は VLDL と し て 分 泌 さ れ る ア ポ
蛋 白 質 E (ア ポ E )に 注 目 し 、 動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク タ ー 項 目 と の 関 連 性
を 検 討 し た 。 そ し て 、 ア ポ E 測 定 の 意義 と そ こ に 潜 む 病 態 を 解 明 し 、 動
脈 硬 化 の スク リ ー ニン グ と して 臨 床的 に 有 用で あ る知 見 を 確認 し た 。
【方法】
① 対 象 : 人 間 ド ッ ク 受 診 者 75gOGTT 施 行 者 141 名 を 対 象 と し た 。 男 性
105 、女 性 36 例 。年 齢 は 平均 49 ± 8 歳(平均 ± SD)、最 高 は 76 歳 。 WHO
診 断 基 準 によ り 、判 定 は 正常 型 120 名 、 境 界 型 (IGT)18 名 、糖 尿病 (DM)
型 3 名 で あ った 。
② 測 定 項 目 : 一 般 的 な 肝 機 能 、 脂 質 検査 な ど 生 化 学 、 血 液 検 査 デ ー タ に
加 え 、 血 清 ア ミ ロ イ ド A 蛋 白 (SAA)、 ア デ ィ ポ ネ ク チ ン (Adipo)、 ア ポ
- Ⅰ -
E 、 イ ン ス リ ン (IRI)を 測 定 し た 。 他 に 血 圧 、 ウ エ ス ト 周 囲 長 、 BMI な
ど を 計 算 した 。
③ 病 態 指 数 : イ ン ス リ ン 抵 抗 性 指 数 は Mathews ら の HOMA-R の 式 に 従
い 、 MetS 診 断 は メ タ ボ リ ッ ク シ ン ド ロ ー ム 診 断 基 準 委 員 会 に 従 っ た 。
④ 病 態 識 別 法 : 解 析 の 手 段 に 用 い た 回帰 式 に よ る 病 態 識 別 法 は 折 れ 線 回
帰 分 析 に 準 拠 し た 。 ま ず 、 ア ポ E を 目 的 変 数 (y 変 数 )と し 、 説 明 変 数 (x
変 数 )に 複 数 項目 (総コ レ ス テロ ー ル(TCHO)、HDL-C、LDL-C、TG、SAA、
Adipo、 HOMA-R)を 挙 げ 、 重 回 帰 分 析 の 結 果 、 TG が 有 意 (p<0.0001)な 項
目 と し て 選択 さ れ た 。 次 に ア ポ E と TG 2 者 間 に おい て 線形 型 回 帰か 非
線 形 型 回 帰 か を 確 認 し た 。 そ し て 、 中村 の 折 れ 線 回 帰 法 に 基 づ き 、 適 合
度 を 確 認 し 分 析 し 、 折 曲 点 が 設 定 さ れる 。 そ れ ら の 点 と 回 帰 直 線 で 区 分
さ れ る 上 層 群 (ア ポ E rich リ ポ 蛋 白 群 )と 下 層 群 (ア ポ E poor リ ポ 蛋 白
群 )、 さ ら に 折 曲 点 に よ っ て 分 け ら れ る 領 域 に 含 ま れ る 対 象 の 病 態 の 特
徴 を 解 析 した 。
【結果】
① 線 形 の 直 線 回 帰 : ア ポ E (y 軸 )と TG( x 軸 )間 で 、 回 帰 式 は ア ポ E =
0.0108 TG + 3.2032、 相 関 係 数r = 0.612 と 有 意 (p<0.001)な 線形 関 係 が認 め
ら れ た が 、折 曲 点 は存 在 し なか っ た。
② 直 線 回 帰 上 層 群 に 潜 む 病 態 : ア ポ Eは 動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク タ ー で あ
る HOMA-R、 SAA と 有 意正 相 関 (各 々 r=0.333、p<0.01 とr=0.271、p<0.05)
、抗
動 脈 硬 化 作用 の あ る HDL-C、 Adipo と 負の相関(各々r=- 0.393、p<0.001 とr=
- 0.366、p<0.001)を認 め た 。
③ 識 別 値 の設 定 と 区 分 化 : ア ポ E と TG の 関 係 は 折曲 点 を認 め な い線 形
と な っ た の で 、 識 別 値 と し て あ て は ま り 度 の 良 い TG(150mg/dL)と ア ポ
E (4.8 mg/dL)を cut off に 設 定 し 、x 軸、 y 軸 点 と回 帰 直 線と 交 叉 させ 、
- Ⅱ -
延 長 線 を 引 い て 区 分 し た 。 そ し て 、 回 帰 直 線 の 上 下 層 を ア ポ E rich リ
ポ 蛋 白 群 とア ポ E poor リ ポ蛋 白 群 とし 、 さら に ア ポE 、 TG 共 に 正常 範
囲 を A 、 アポ E 正 常範 囲 で TG は 高 値 域を B 、 ア ポ E が高 値 域 で TG が
正 常 範 囲 を C 、 両 者 共 に 高 値 域 を D とし た 。 ま た 、 回 帰 直 線 で 分 け ら れ
る A の 領 域を 線 分 上 方 に 位 置 す る 方 を A1 、下 方 を A2 と し た 。 その 結
果 、 ア ポ E rich リ ポ 蛋白 群 で ある 上 層 群 は ア ポ E 及 び TG の 低 い 方か ら
順 に A1、 C 、 D と な り、 C 群 の BMI と 血圧 は A1 よ り 有意 に 高 値、 D
群 の HOMA-R、SAA、BMI、拡 張 期 血圧 は A1 よ り有 意 に 高 値 、HDL と Adipo
は 有 意 に 低値 と な った 。
④ D 群 ス クリ ー ニ ング テ ス トの 有 用性 : MetS と 診 断 さ れ た症 例 16 例 中
12 例(75 % )が D 群域 に 集 中 し て い た 。
【考察】
ア ポ E と TG の 2 者 間 に お け る 回帰 直 線に お い て回 帰 式上 層 群 、ア ポ
E rich リ ポ 蛋 白 群 で は ア ポ E と 動 脈 硬 化 リ ス ク は 正 相 関 を 認 め た 。 ま
た 、 ア ポ Eお よ び TG rich リ ポ 蛋白 域 は 高レ ム ナ ント 血 症と 考 え られ 、
ア ポ E お よび TG が 高 値 にな る ほ ど動 脈 硬化 リ ス クが 増 加す る こ とが 示
された。
- Ⅲ -
略語
ACAT: Cholesterol O-acyltransferase
Adipo: Adiponectin
Apo: Apolipoprotein
BMI: Body Mass Index
Chol: Cholesterol
CE: Cholesterol Ester、 Esterified Cholesterol
CETP: Cholesterol Ester Transfer Protein
CM: Chylomicron
DM: Diabetes Mellitus
EBM: Evidence Besed Medicine
FC: Free Cholesterol
FFA: Free Fatty Acid
Gluc: Glucose
HDL(-C): High Density Lipoprotein( Cholesterol)
HOMA-R: Homeostasis Model Assessment Ratio
HTGL: Hepatic Triacylglycerol Lipase
IGT: Impaired Glucose Tolerance
IRI: Immunoreactive Insulin
LCAT:Lecithin Cholesterol Acyltransferase
LDL(-C): Low Density Lipoprotein( Cholesterol)
LPL: Lipoprotein Lipase
MetS: Metabolic Syndrome
OGTT: Oral Glucose Tolerance Test
PL: Phospholipid
- Ⅳ -
SAA: Serum Amyloid A protein
TCHO: Total Cholesterol
TG: Triglyceride
VLDL: Very Low Density Lipoprotein
注 釈 : 本 論文 中 で は生 化 学 で用 い られ る『 リ ポ 蛋 白 質 』を『 リ ポ蛋 白 』、
『 ア ポ リ ポ 蛋 白 質 』 を 『 ア ポ 蛋 白 』、 さ ら に 『 ア ポ 蛋 白 質 E 』 を 『 ア
ポ E 』 と す る 。 同 様 に 、『 血 清 ア ミ ロ イ ド 蛋 白 質 A 』 を 『 血 清 ア ミ ロ
イ ド A 』 と し 、『 SAA』 と 略 す 。 こ れ ら は 臨 床 的 な 場 で は 広 く 一 般 的
に 使 用 され 、 通 用す る も ので あ る。
- Ⅴ -
緒言
1節
研 究の 発 端 と経 緯
戦 後 の 経 済 復 興 か ら 高 度 成 長 を 遂 げた 我 が 国 の 医 学 お よ び 医 療 は 著 し
く 発 展 し た 。 国 民 の 生 活 は 豊 か に な り、 半 欧 米 化 食 の 常 食 化 が 老 若 男 女
問 わ ず 定 着 し た 。 バ ブ ル 時 代 か ら 肥 満が 増 加 し 、 代 償 と し て 高 血 圧 、 脂
質 異 常 症 、 糖 尿 病 (DM: Diabetes Mellitus)な ど の 動 脈 硬 化 症 の リ ス ク と
な る 疾 患 やガ ン が 増加 し て いっ た 。昭 和 32 年 、 特に 40 歳 以 上 に 多い 病
気 と し て 、 加 齢 と 共 に 発 生 す る 「 成 人病 」 が 取 り 上 げ ら れ た が 、 改 善 に
は 限 界 が あり 、そ の後 、個 人 の 生活 習 慣が 影 響 する こ とが 強 調 され 、
「生
活 習 慣 病 」 と 言 う 名 称 を 利 用 す る こ とが 提 唱 さ れ た 。 し か し 、 国 民 健 康
作 り 運 動 の 「 健 康 日 本 21」 計 画 の 中 間 評 価 報 告 書 案 に あ る 「高 血 圧 や 糖
尿 病 な ど の生 活 習 慣病 が 中 高年 男 性で 改 善 され て いな い な ど」を踏 ま え 、
世 界 的 な 動 向 に も 合 わ せ 、 か つ 個 人 レベ ル で 理 解 し や す く 、 そ し て 啓 蒙
し や す い 「メ タ ボ リッ ク シ ンド ロ ーム (MetS: Metabolic Syndrome)」と 言
う 呼 び 方 に す る こ と で 健 康 政 策 を 転 換す る こ と に な っ た 。 こ れ は 国 民 の
多 く に 「 メ タ ボ 」 と 言 う ネ ー ミ ン グ が流 行 す る ほ ど の 旋 風 が 起 こ っ た 。
こ れ ま で 、 私 が 、 臨 床 検 査 技 師 と して 関 わ っ て き た 『 成 人 病 』 の 時 代
か ら 『 生 活 習 慣 病 』、 そ し て 『 メ タ ボ リ ッ ク シ ン ド ロ ー ム 』 へ と 医 療 の
対 象 が 推 移 す る 中 、 糖 尿 病 患 者 を 中 心に 、 病 態 解 明 に つ な が る 有 効 な 検
査 の 測 定 法 や 研 究 を 積 極 的 に 行 っ て きた 。 私 は 、 現 在 も 減 る こ と の な い
予 備 軍 を 早 期 に 発 見 す る マ ー カ ー を 見い 出 し 、 母 集 団 を 適 切 に 解 析 す る
こ と を 通 して 、 臨 床に 貢 献 する こ とを 使 命 と考 え てい る 。
今 回 、 動 脈 硬 化 の 発 症 や 病 態 を 把 握す る 目 的 で 、 人 間 ド ッ ク 健 診 受 診
者 を 対 象 に 動 脈 硬 化 の リ ス ク フ ァ ク ター を 解 析 し 、 ま た 新 た な 識 別 法 を
利 用 し た 解析 が 適 切で あ る かを 試 みた 。
-1-
本 研 究 で は 、 動 脈 硬 化 の 発 症 に 関 連 す る と 言 わ れ る 中 性 脂 肪 ( TG:
Triglyceride) の多 い 、 つま り 、TG rich リ ポ 蛋 白 の中 間 代 謝産 物 で ある レ
ム ナ ン ト の 成 分 と し て ア ポ E に 注 目 した 。 そ し て 、 ア ポ E と 最 も 相 関 関
係 の あ る TG と の 間 に 折 れ 線 回 帰 分析 を 適用 し 、 母集 団 を解 析 し 、ア ポ
E と TG、 さ ら に 動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク タ ー と の 関 係 を 明 ら か に し た 。
-2-
2節
2-1
リ ポ蛋 白 の 生化 学
リポ 蛋 白 の構 成 成 分
動 脈 硬 化 性 疾 患 は 様 々 な リ ス ク フ ァク タ ー が 複 雑 に 絡 み 合 い な が ら 進
展 し て い く 。 特 に リ ス ク と し て 高 い のは 血 清 脂 質 で あ り 、 中 で も コ レ ス
テ ロ ー ル (Chol: Cholesterol) や TG の 上 昇 が挙 げ ら れる 。
一 般 に 、 血 清 脂 質 は Chol、 TG、 リ ン 脂 質 (PL: Phospholipid)、 遊 離 脂
肪 酸 (FFA: Free Fatty Acid)の 4 種を 指 し、 FFA 以 外 の 3 種が リ ポ 蛋白 を
構 成 し て い る 。 血 中 で の リ ポ 蛋 白 の 球 体 構 造 を 図 1 に 示 す ( 1 )。 外 郭 の
主 成 分 で あ る PL が い わ ゆ る 脂 質 二 重 層 と 呼 ば れ る 二 層 に な り 、 ミ セ ル
を 形 成 し て い る 。 PL の 性 質 で あ る 両 親 媒 性 物 質 を 利 用 し て 、 PL 二 層 は
互 い に 疎 水 性 部 分 を 内 側 に 、 ま た 親 水性 部 分 を 外 側 に 向 け て い る 構 造 で
あ る 。 ミ セ ル の 外 郭 に は 親 水 性 の 遊 離 型 コ レ ス テ ロ ー ル ( FC: Free
Cholesterol)や ア ポ 蛋 白 が 、 中 心 に は 疎 水 性 の エ ス テ ル 型 の コ レ ス テ ロ ー
ル (CE: Cholesterol Ester、 Esterified Cholesterol)や TG な ど が存 在 す る。 こ
の よ う な 構造 な た めリ ポ 蛋 白が 血 中を 移 動 する こ とが で き 、疎 水性 の CE
や TG が 血 中 に 存 在 で き るの で あ る ( 1 )(2 )。
リ ポ 蛋 白は 表 1 に示 す よ うに 5 つに 分 類 され る 。そ れぞ れ 比 重、直 径、
脂 質 の 種 類、 荷 電 状 態 、 電 気 泳 動 の 移動 度 な どが 異 な る 。 特 に TG 含 有
の 多 い 上 位3 つ 、カイ ロ マ イク ロ ン 、VLDL(Very Low Density Lipoprotein)、
レ ム ナ ン トは TG rich リ ポ 蛋 白 と呼 ば れ る。 ア ポ 蛋白 の 分布 の 中 で、 ア
ポ E が LDL に 含 ま れ な い こと は 特 徴 的 で ある ( 1 )(2 )。
こ れ ら の リ ポ 蛋 白 を 構 成 す る ア ポ 蛋白 の 中 で 主 な 種 類 で あ る A か ら E
を 表 2 に 示す ( 2 )。 ア ポA -Ⅰは ほ とん ど が HDL に 含ま れ 、 HDL の 構 築
維 持 や 末 梢 細 胞 か ら の Chol の 引 抜 き に 重 要 で あ り 、 ア ポ B は 脂 質 と の
結 合 力 が 強 く 、 ア ポ C や E は 物 理 的 な力 や 水 解 や ス ト レ ス な ど に よ り 容
-3-
易 に リ ポ 蛋白 か ら はず れ や すい な ど、 各 々 に特 徴 を持 つ ( 1 )(2 )。
2-2
アポ E の 特徴
注 目 す る ア ポ E は 、 1980年 代 以 降 、 WHO 分 類 に お け る 脂 質 異 常 症 の
う ち レ ム ナン ト の 増加 を 示 すⅢ 型 にお い て 、そ の増 加 が 注目 さ れた( 3 )。
そ れ 以 降 、 ア ポ E の 多 様 性 と 遺 伝 に つい て 次 々 と 解 明 さ れ て い っ た 。 ま
た 、 ア ポ E の 同 定 後 、 表 2 に 示 し た よ う に LDL 受 容 体 と の 親 和 性 が 発
見 さ れ 、 リ ポ 蛋 白 代 謝 に お け る そ の 役割 が 明 ら か に な り 、 臨 床 的 に 重 要
な も の と なっ た ( 3 ) ~ ( 8 )。
アポEの生成場所は主には肝臓であるが、マクロファージでも合成
さ れ て い る。 ま た 、分 布 は VLDL や VLDL レ ム ナ ント の アポ 蛋 白 中約 15
% を 占 め 、こ の 他 に は カ イ ロ マ イ ク ロ ン (CM: Chylomicron) や CM レ ム
ナ ン ト に 10 % 程 度 、HDL に も 少 量 は 含 まれ て い る と の 報告 も あ る( 3 )。
山 村 ( 4 ) によ れ ば 、 ア ポ E は 正 常 人 の血 清 で は VLDL と HDL に ほぼ 等
量 ず つ 分 布 し て い る と も 言 わ れ て い る 。 さ ら に 、 HDL 亜 分 画 で は HDL
3より
HDL 2 分 画 に 多 い ( 3 )。
ア ポ E の分 子 特 性は 分 子 量は 33,000 な い し 39,000 で 構 成ア ミ ノ 酸の う
ち ア ル ギ ニン が 10 ~ 12 mol % と 多 量 に 含む 糖 蛋 白で あ る。 ア ポ Eの N
末 端 は リ ジ ン で 、 C 末 端 の ア ミ ノ 酸 配 列 は ロ イ シ ン -セ リ ン -ア ラ ニ ン で
あ る 。 SDS ポ リ アク リ ル アミ ド ゲ ル電 気 泳動 で は 幅広 い バン ド か 2本 の
バ ン ド 帯 と し て 出 現 さ れ る こ と か ら アポ E 分 子 は 多 様 性 が 推 定 さ れ て い
る 。 ア ポ E は 3 分 子 S -S 結 合 で ア ポ A-Ⅱ と 複 合 体 を 形 成 し 、 分 子 量
46,000 の と こ ろ に 出 現 する こ とも 見 出 され て いた ( 3 ) ~ ( 7 )。
表 3 に ア ポ 蛋 白 E の 分 子 多 様 性 を 示 す ( 4 )。 ア ミ ノ 酸 配 列 の 異 な っ た
-4-
同 位 体 、 ア イ ソ フ ォ ー ム E1か ら E5の 5つ が 分 離 さ れ て い る 。 主 な も の は
E2、E3、E4で、299個 の ア ミ ノ 酸 から な るポ リ ペ プチ ド を 合成 し て いる 。
構 成 ア ミ ノ 酸 の 中 で シ ス テ イ ン と ア ルギ ニ ン の 違 い に よ る こ と が 明 ら か
に さ れ て い る 。 E2だ け を 有 す る E2ホ モ 接 合 体 ( ε 2/ε 2遺 伝 子 型 、 E2/2
表 現 形 ) は 受 容 体 を 介 す る レ ム ナ ン トの 処 理 が で き な い 。 つ ま り 、 レ ム
ナ ン ト レ セ プ タ ー に 対 し て 結 合 活 性 が ほ と ん ど な い 。 し か し 、 E2ホ モ 接
合 体 に 限 ら ず 、 E2ヘ テ ロ 接 合 体 お よ び E4素 因 の 症 例 な ど 、 各 々 の リ ポ 蛋
白 代 謝 が 異な る ( 3 )( 4 )。
ア ポ イ ソ蛋 白 は E2、E3、E4の 順 に ChoL(LDL)を 増 加 さ せ、逆 に E4、E3、
E2の 順 に TG(VLDL)を 増加 さ せる こ と も知 ら れて い る 。E3(ε 3)は 野生 型
ま た は 自 然 体 で 最 も 高 頻 度 で あ る ( 2 ) ~ ( 4 )。 こ れ ら E2、 E3、 E4の 含 有
程 度 に よ り脂 質 の 動態 が 異 なる の であ る ( 8 ) ~ ( 13)。
ア ポ E 遺伝 子 は 第 19 染 色体 に 3.6kb の 長さ で 存 在し 、 4つ の エ クソ ン
と 3 つ の イン ト ロ ン か ら な る 。 そ の 5 kb 下 流 に は 4.7kb 長 の アポ C -Ⅰ
遺 伝 子 が あ り 、 こ れ ら の 遺 伝 子 制 御 には 共 通 す る 部 分 の 存 在 が 示 唆 さ れ
る 。 ま た 、第 19 染 色 体 には ア ポ C -Ⅱ 遺 伝 子 や LDL レ セ プ タ ー 遺伝 子 も
含 ま れ て いる ( 2 ) ~ ( 4 )。
ア ポ E の生 理 的 役割 は TG rich リ ポ 蛋 白で あ る レム ナ ント に お いて ア
ポ E が 肝 臓 な ど に 存 在 す る レ ム ナ ン トレ セ プ タ ー の リ ガ ン ド と な る こ と
で あ る 。 また 、 LDL レ セ プ ター に も 結合 し やす く 、 アポ B -100 に 比べ て
そ の 親 和 性は 数 倍 高い こ と が知 ら れて い る ( 2 )。LDL レ セ プタ ー の N 末
端 側 断 片 にそ の 結 合 領 域 が 含 ま れ て い る 。 一 方 、 C 末 端 側断 片 は 脂質 に
対 す る 親 和 性 を 有 す る 配 列 が あ り 、 この 部 分 で リ ポ 蛋 白 に 結 合 し て い る
と 考 え ら れて い る ( 1 )( 3 ) ~ ( 8 )。
ア ポ E と 疾 病 と の 関 わ り を 見 る 。 アポ E の 多 様 性 は ア ミ ノ 酸 組 成 差 に
-5-
あ る と 述 べ た が 、 脂 質 異 常 症 の Ⅲ 型 とⅤ 型 で は ア ポ E ア イ ソ フ ォ ー ム の
分 布 に 各 々特 徴 が ある ( 3 )。 Ⅲ 型は 75%が E2、 25 % が E2/3 の ヘ テロ 接
合 体 を 示 し、 Ⅴ 型 は約 31%が E4、 約 43%が E4 の ヘテ ロ 接合 体 を 示し て
い る 。 ア ポ E2 ホ モ 接 合 体は LDL 受 容 体 と結 合 し ない た めに リ ポ 蛋白 代
謝 異 常 を 来し 、 β -VLDL が 出 現 す ると 考 えら れ て いる 。 また 、 先 天性 の
脂 質 代 謝 異常 症 で は Tangier 病 に おい て ア ポ E が 減少 し て いる が 、無 β リ ポ 蛋 白 血症 や LCAT 欠 損 症 で は アポ E が増 加 し てい る 。ほ か に 、肝 障
害 に お い て も ア ポ E は 上 昇 の 傾 向 が あ る 。 DM に お い て は 脂 質 代 謝 の 異
常 を 来 し や す い こ と か ら 、 ア ポ E が 増加 し て い る こ と が 容 易 に 考 え ら れ
る 。 さ ら に 、 過 剰 の コ レ ス テ ロ ー ル 摂取 後 で は ア ポ E を 多 く 有 す る リ ポ
( 11 )
蛋 白 、特 に β -VLDL ま た は HDL-C が 増 加 す る こと が 知 ら れ て いる( 4 )
~ ( 13 )。
以上より、アポEはコレステロールのホメオスターシスに多様に関与
し て い る こ と が 示 唆 さ れ 、 リ ポ 蛋 白 代謝 の 調 節 に 大 き く 関 わ っ て い る と
考 え ら れ る。
2-3
リポ 蛋 白 代謝
リ ポ 蛋 白の 代 謝 経路 を 図 2に 示 す ( 4 )。
食 事 由 来 の 外 因 系 経 路 (カ イ ロ マ イ ク ロ ン : CM お よ び CM レ ム ナ ン
ト )、 お よ び 肝 臓 か ら 生 合 成 さ れ る 内 因 系 経 路 (VLDL お よ び そ の 代 謝 産
物 の VLDL レ ム ナ ン ト(IDL)、 LDL) の 代 謝 経 路 であ る ( 2 )。
小 腸 か らは CM が 、一 方、肝 臓 から は VLDL が 合 成お よ び 分泌 さ れ る 。
TG rich リ ポ 蛋白 は 各 組織 に TG を 供 給し て い る。 ア ポB は 小 腸で は B-48
が 、 肝 臓 で は B-100 が 合 成 さ れ る 。 CM は 肝 外 組 織 の 毛 細 血 管 壁 に 存 在
-6-
す る リ ポ 蛋白 リ パ ーゼ (LPL)に より TG が 水 解 さ れ 、相 対 的 に Chol rich
な CM レ ム ナ ン トに な る 。そ し て 、そ れ は肝 細 胞 表面 に ある ア ポ Eを リ
ガ ン ド と する レ ム ナン ト レ セプ タ ーに 結 合 し肝 臓 に取 り 込 まれ る 。ま た 、
VLDL も CM と 同 様 に TG が 水 解 さ れ 、 VLDL レ ム ナン ト に なる 。 IDL は
VLDL レ ム ナ ン ト の 一 部 で あ る 。 VLDL レ ム ナ ン トの 50 % は ア ポ Eが リ
ガ ン ド と なり 、肝 臓 の レ ム ナ ン トレ セ プタ ー に 結合 し 、50 % は さ ら に TG
が 水 解 さ れ、 Chol rich な LDL に 変 換 され る ( 1 ) ~ ( 4 )。
-7-
3節
レ ムナ ン ト の定 義
レ ム ナ ント リ ポ 蛋白 (レ ム ナ ント )を 定 義 する 。
こ れ は 食事 由 来 の CM や 肝 臓 で 合 成 さ れ る VLDL が LPL 作 用 で TG が
水 解 さ れ 、 粒 子 サ イ ズ が 小 さ く な り 、生 成 さ れ る リ ポ 蛋 白 を 言 う 。 内 容
的 に は CM レ ム ナ ン トと VLDL レ ム ナ ン トの 両 者 を含 み 、ア ポ E およ び
CE に 富 む TG rich リ ポ 蛋 白で あ る 。 成 分 と して は Chol と TG を ほ ぼ同 量
(30 ~ 40 % )に 含 ん で いる ( 2 )( 4 )( 5 )( 14 )。
高レムナント血症における動脈硬化惹起メカニズムを図3に示す
( 8 )。 レ ム ナ ン ト は 酸 化 変 性 を 受 け な く て も マ ク ロ フ ァ ー ジ に 取 り 込 ま
れ や す い とい う 特 徴が あ る 。
高 レ ム ナ ン ト 血 症 で は 、 血 管 内 皮 細胞 へ の 単 球 の 接 着 が 亢 進 し 、 血 管
壁 に 侵 入 し や す く な り 、 そ こ で 単 球 はマ ク ロ フ ァ ー ジ に な る 。 一 方 、 高
レ ム ナ ン ト 血 症 で は 血 小 板 凝 集 能 が 亢 進 、 ま た 、 PAI-Ⅰ 活 性 も 亢 進 し 、
血 栓 が 溶 解 さ れ に く い 状 態 と な る 。 そし て 、 血 管 内 皮 機 能 も 障 害 が 亢 進
す る 。 ま た 、 高 レ ム ナ ン ト 血 症 で は 中膜 の 平 滑 筋 細 胞 の 増 殖 も 亢 進 し 、
内 膜 へ 移 動し 、 そ こで マ ク ロフ ァ ージ に な る。 マ クロ フ ァ ージ に は Chol
取 り 込 み の 調 整 機 構 が な い た め 、 容 易に 細 胞 内 に 蓄 積 さ れ や す い 。 マ ク
ロ フ ァ ー ジは LDL 受 容 体 だけ で な く、 変 性 LDL を 認 識 する ス カ ベン ジ
ャ ー 受 容 体 と レ ム ナ ン ト 受 容 体 も 発 現 し て い る 。 Chol 取 り 込 み で マ ク
ロ フ ァ ー ジ の 泡 沫 化 が 促 進 さ れ る 。 結果 的 に 、 高 レ ム ナ ン ト 血 症 で は レ
ム ナ ン ト の マ ク ロ フ ァ ー ジ へ の 取 り 込み が 亢 進 し 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 泡
沫 化 が 進 むの で 、 動脈 硬 化 の初 期 病変 が 生 じる ( 1 )( 8 )( 15 )。
レ ム ナ ン ト は 代 謝 が 速 く 、 健 常 者 の早 朝 空 腹 時 の 血 中 に 通 常 は 認 め ら
れ な い 。 し か し 、 食 後 に は 増 加 が 見 られ る こ と か ら 、 高 脂 血 症 の 食 後 の
重 要 な マ ーカ ー と 言え る ( 1 )( 4 )( 8 )( 15 )。
-8-
図 4 ( 16 ) に見 ら れ るよ う に イ ン ス リン 抵 抗 性が 生 じ る と TG rich リ ポ
蛋 白 の 異 化障 害 が 起き 、 レ ムナ ン トが 上 昇 する ( 17 ) ~ ( 23 )。
ま ず 、 ①小 腸 壁 の ACAT( ア シ ル CoA コ レ ス テ ロー ル トラ ン ス フェ ラ
ー ゼ : Cholesterol
O-acyltransferase)活 性 亢 進 が 見 ら れ る 。 つ ま り 、 腸 管 で
の Chol 取 り 込 み が 増 加 し、 CM お よび CM レ ム ナ ント が 増加 す る 。② 血
管 内 皮 表 面 の LPL(リ ポ 蛋 白 リ パ ー ゼ : Lipoprotein Lipase)活 性 が 低 下 す
る 。 つ ま り 、 TG の 加 水 分 解 が 不 十 分 と な り 、 レ ム ナ ン ト 代 謝 が 停 滞 す
る 。 ③ 肝 臓 の レ ム ナ ン ト 受 容 体 の 活 性が 低 下 す る 。 つ ま り 、 肝 臓 へ の レ
ム ナ ン ト 取 り 込 み が 低 下 す る 。 ④ 肝 臓 の HTGL( 肝 性 TG リ パ ー ゼ :
Hepatic Triacylglycerol Lipase) 活 性 が低 下 す る。 つ まり 、 TG の 加 水 分解 が
不 十 分 で 、 VLDL レ ム ナ ン ト (IDL)の 代 謝 が 低 下 す る 。 ⑤ ホ ル モ ン 感 受
性 リ パ ー ゼ が 亢 進 す る 。 つ ま り 、 脂 肪 組 織 で の TG 異 化 が 亢 進 し 、 FFA
(Free Fatty Acid)が増 加 し、 肝 臓 へ動 員 さ れる 。 よっ て 、 TG 合 成 が亢 進
し 、 VLDL が 増 加 、 結 果 的 に レ ム ナ ン ト が 増 加 と な る 。 こ れ ら の 流 れ か
ら 、 イ ン ス リ ン 抵 抗 性 が 高 レ ム ナ ン ト血 症 を 引 き 起 こ す 原 因 で あ る こ と
が わ か る ( 16 )。
以 上 よ り、 レ ム ナン ト は アポ E と CE が豊 富 な TG rich リ ポ 蛋 白で あ
り 、重 要 な動 脈 硬 化の リ スク フ ァ クタ ー と し て 注 目さ れ る こと が わか る 。
言 い 換 え れば 、TG rich リ ポ 蛋白 の 多 い場 合 は、レ ム ナ ント 濃 度 に 応 じ 、
動 脈 硬 化 リス ク が 高ま る と 言え る 。
-9-
4節
メ タボ リ ッ クシ ン ド ロー ム (MetS) の 背景 と 成 因
高 レ ム ナ ン ト 血 症 の 原 因 で あ る イ ン ス リ ン 抵 抗 性 に 起 因 し て MetS は
生 じ や す いと 考 え られ る ( 16 ) ~ ( 23 )。
表 4 に 示さ れ る よ う に 、 1990 年 前 後 から 各 研 究 者 た ち は MetS に つ い
て さ ま ざ ま な 観 点 か ら 研 究 を し て い る ( 24 )。 い ず れ に も イ ン ス リ ン 抵 抗
性 も し く は高 イ ン スリ ン 血 症が 含 まれ て い るこ と と、ほ か に耐 糖 能異 常 、
高 血 圧 、 脂 質 異 常 症 、 さ ら に は 内 臓 脂肪 、 動 脈 硬 化 な ど 多 数 の 因 子 が 含
ま れ て い る こ と が 各 特 徴 と し て 挙 げ られ る 。 こ れ ら を 総 括 し た 病 態 概 念
が MetS と い う こ と にな る ( 8 )( 16 ) ~ ( 23 )。
MetS の 成 因 を 図 5 に 示 す ( 25 )。 過 剰 栄 養 お よ び 運 動 不 足 に よ る 内 臓 脂
肪 の 蓄 積 が 元 凶 で あ る こ と が わ か る 。そ の 結 果 、 リ ポ 蛋 白 質 合 成 亢 進 と
様 々 な ア デ ィ ポ サ イ ト カ イ ン の 合 成 分泌 異 常 が 起 こ り 、 イ ン ス リ ン 抵 抗
性 を 来 た す 。 さ ら に 、 こ れ を 基 盤 と して 、 脂 質 異 常 症 、 耐 糖 能 異 常 、 高
血圧など、様々な病態を合併させながら動脈硬化に陥いる流れである
( 8 )( 16 ) ~ ( 30 )。
MetS 診 断 基 準( 日 本 内科 学 会 関 連 8 学会 に よる 内 臓 脂肪 蓄 積の 指 標)
を 図 6 に 示す( 31 )。腹 部 肥満 の 計 測に は 臍 部 位 で ウエ ス ト 周 囲 長 を測 り 、
こ の 結 果 が 必 須 条 件 と な る 。 さ ら に ①か ら ③ の 脂 質 、 血 圧 、 血 糖 の 3 項
目 中 、 2 つが あ て はま っ た 場合 、 MetS と 診 断 され る ( 32 )( 33 )。
- 10 -
目的
1節
人 間ド ッ ク 母集 団 の 75gOGTT 施 行 受 診 例 を 用 い た解 析 の 背景
動 脈 硬 化 発 症 を よ り 早 期 に 予 測 す るス ク リ ー ニ ン グ テ ス ト が 必 要 と 考
え 、人 間 ド ッ ク 母集 団 の 75gOGTT( Oral Glucose Tolerance: 経 口 負 荷 試験 )
施 行 受 診 層 を 対 象 に 検 討 し た 。 動 脈 硬化 の 発 症 に は レ ム ナ ン ト リ ポ 蛋 白
が 大 き く 関 わ っ て い る こ と か ら 、 レ ムナ ン ト の 基 本 成 分 と な る ア ポ E と
TG と の 関わ り に 注 目 し 、解 析 を 試み た 。
方法
1節
対象
対 象 者 の 臨 床 的 背 景 を 表5 に 紹 介す る 。
今 回 の 対象 者 は 、 人 間 ド ック 健 診 にお い て 、75gOGTT を 施 行 し た 被験
者から無作為に抽出した受 診 者 141 例 であ る 。 WHO 診断基準に従い、正常型
120 例、境界型 18 例、糖尿病型3例と分類された。性別は男 性 105 例 、女 性 36
例 で 、年 齢 は 最 低 30 歳 、最 高 76 歳 の 平 均 年齢 49 歳 ± 8(平均±標準偏差)
で あ る 。年齢構成は 70 歳代1例、60 歳代 12 例、50 歳代 55 例、40 歳代 58 例、30
歳代 15 例、性別は男性 105 例、女性 36 例の構成であった。
本健診における MetS 診断項目と生化学検査の主なデーターは平均値± SD で
示す。尚、検査は全て血清を用いている。表の右 欄 は 生 化 学 デ ー タ に つ い て
脂 質 項 目 を 中 心 に 糖 尿 病 関 連 や 肝 機 能な ど を 示 し た が 、 い ず れ の 項 目 も
平 均 値 は 正常 範 囲 内 で あ っ た 。 この結果、全対象 141 例中、MetS と診断さ
れたのは16例(11 %)存在した。本研究対象はは佐世保中央病院の倫理委員会に
より承認された。
- 11 -
2節
検 討項 目 の 測定 意 義 と検 査 方法
今回の検討には表6に示すように動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク タ ー 8 項 目 を 選
択した。
① 測定項目並びに測定方法
酵素法、TIA 法及びラテックス凝集比濁法は全て日本電子 BM1650、自動分析機
東芝 TBA-200FR、その他項目は専用装置を用いて測定した。
1)総コレステロール:脂 肪 酸 と 結 合 し た 疎 水 性 の エ ス テ ル 型 と 、 結 合 し
て い な い 親 水性 の 遊 離型 、両 者を 合 わ せた も の を指 す。細胞 膜 の材 料 、
血 管 の 強 化 や 維 持 な ど の 重 要 な 役 割 、ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン 、 胆 汁 酸 の 主
成 分 な ど の材 料 に もな る 。
( TCHO: 酵 素 U V 法 、 イ アト ロ Q
T-CHO(A)Ⅱ、三菱 化 学 )
2)LDL コレステロール:肝臓 か ら 生合 成 さ れる 内 因 系の リ ポ 蛋白 で Chol
の 供 給 源 であ り 、 末梢 組 織 の Chol を 全 身 の細 胞 に 運 ぶ 役 をな す 。
( LDL-C: 酵 素 免 疫 測定 法 、デ タ ミ ナ -LDL-C 、協 和 メデ ッ ク ス )
3)HDL-コレステロール:末梢組織の FC を取り込む。FC は、HDL 粒子表面上
のレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)作用でエステル
化され、HDL 粒子内に貯えられる。LCAT とはレシチンのβ位の脂肪酸を Chol
に転移させ、Chol のエステル化を行う酵素である。コレステロールエステル転
送蛋白(CETP:Cholesterol Ester Transfer Protein)は HDL 内の CE を VLDL、IDL、
LDL に転送し、Chol は最終的に肝臓に取り込まれる。
(HDL-C:酵素免疫測定法、デタミナ-HDL-C、協和メデックス)
4 )中性脂肪:食事から摂取した TG はグリセロールを母体に3つの FFA がエ
ステル結合した形で、膵リパーゼにより分解された FFA は胆汁酸とミセルを形
成し、十二指腸、空腸から吸収され、小腸粘膜細胞内で再度 TG に合成される。TG
- 12 -
は CM を構成し、リンパ管から血中へ入る。遊離脂肪酸はエネルギー産生に利
用されると共に肝で TG を合成し、VLDL に含まれて血中に放出される。
(TG:酵素法、イアトロQ TGⅡ、三菱化学)
5 ) アポE:測定の意義は緒言2節-2参照
(アポ E:免疫比濁(TIA)法、アポEオート・N「第一」キット、第一化学)
6)血清アミロイド蛋白A:慢性炎症刺激によりサイトカイン作用を受けて組
織に沈着するアミロイドAの前駆体蛋白である。近年、血管炎症の場において、
活性酸素の作用で LDL と結合した SAA が血中に存在し、動脈硬化のリスクとな
る炎症マーカーとして知られている。
(SAA:ラッテクス凝集免疫比濁法(LIA 法)
、LZ テスト‘栄研’SAA キット、
栄研化学)
7 ) アディポネクチン:脂肪細胞から産生される善玉アディポサイトカインの
代表。内臓脂肪の蓄積により血中レベルが減少し、インスリン抵抗性、高血糖、
脂質異常、動脈硬化などの予防に関与する。
(Adipo:enzyme-linked immune sorbent assay (ELISA 法)、高分子量アディポネ
クチンキット、富士レビオ)
8)HOMA-R:インスリン抵抗性指数(insulin resistance index)は、Matthews ら( 33 )
の HOMA-R (Homeostasis model assessment ratio)の式( 34 ) より、早朝空腹時血中
IRI (Immunoreactive Insulin)値と空腹時 Gluc (Glucose)を用いて求めた。
- 13 -
3節
病 態 解析 の 特 性と 解 析 法
多 く の 検 査 項 目 は 健 常 人 が 母 集 団 の場 合 、 正 規 分 布 型 ま た は 対 数 正 規
分 布 型 を 示 し 、 回 帰 直 線 の 線 上 に 近 似分 布 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 し
か し 、 対 象 の 分 布 の ば ら つ き に よ り 、た と え ば 逸 脱 す る よ う な 異 常 値 が
存 在 す る 場合 は 、線形 と して 扱 う と解 釈 や 判 断 に 危険 を 含 むこ と にな る 。
つ ま り 、 解 析 法 に 線 形 あ る い は 非 線 形方 法 を 適 切 に 選 択 す る こ と が 必 要
で 、 そ の 結 果 、 分 布 か ら 得 ら れ る 情 報を よ り 正 確 に 捉 え な け れ ば 、 臨 床
的 に 用 い るこ と は でき な い ので あ る。
対 象 の 分 布 状 況 を 確 認 す る 方 法 で は、 多 因 子 間 の 場 合 、 ま ず 相 関 関 係
を 調 べ 、 最 も 有 効 な 関 係 を 見 つ け る こと が 重 要 で あ る 。 選 択 さ れ た 関 係
の 組 合 せ の 確 認 の た め に ノ ン パ ラ メ ト リ ッ ク 法 の Spearman の 順 位 相 関
を 行 う 。 さ ら に 、 関 連 の 予 測 に ス テ ップ ワ イ ズ 法 に よ る 重 回 帰 分 析 を 行
う こ と も 良い 。こ の 時 、単 回帰 分 析 と同 じ く x を 説 明変 数 、y を 目 的 (被
説 明 )変 数 と す る 。 算 出 さ れ た 重 回 帰 式 の 有 意 性 は 回 帰 式 で 説 明 さ れ る
も の と 説 明 し き れ な い も の の バ ラ ツ キ (残 差 )を も と に 検 定 さ れ る 。 重 相
関係数 R とその説明率 R
2
が 重 要で 、 R は 重 回 帰 式で 予 測さ れ る 値と 実
際 の 観 測 値 と の 相 関 係 数 を 表 し 、 絶 対値 が 1 に 近 い ほ ど 当 て は ま り が 良
い こ と を 示す 。
次 に 、 有 効 な 変 数 を 選 択 し 、 折 れ 線回 帰 分 析 を 行 う 。 中 村 の 折 れ 線 回
帰 法 ( 35 ) で は 適 合 度 の 高 い 非 線 形 モ デ ル が 自 動 的 に 設 定 さ れ る 。 非 線
形 の 場 合 は 、 検 出 力 の 高 く 、 か つ 危 険率 の 低 い 、 あ て は ま り の よ い 折 曲
点 が 導 か れ る 。 全 て の 折 れ 線 関 数 を 共変 数 と し て ス テ ッ プ ワ イ ズ 法 で 解
析 す る 。 こ こ で 、 線 形 の 場 合 で 折 曲 点が 存 在 し な い 場 合 は 、 識 別 値 と し
て cut off に 相 当 する 候 補 を設 定 す るこ と を試 み 、 その 適 合度 を 求 め、 選
択 す る こ とで あ る 。い ず れの 場 合 も回 帰 直 線 の x 軸と y 軸 にプ ロ ット し 、
- 14 -
各 々 両 軸 に 平 行 に 延 長 線 を 引 き 伸 ば す。 回 帰 式 で 区 分 さ れ る 上 下 層 と 延
長 線 で 区 分 さ れ た 領 域 に お い て 、 そ こに 分 布 す る 対 象 を 解 析 す る 。 こ の
解 析 手 法 は 各 領 域 毎 に 潜 む 対 象 の 病 態を 捉 え る に 効 能 を 発 揮 す る も の と
期 待 で き る。
本 研 究 で 用 い た 折 れ 線 回帰 分 析を 説 明 する た め に 、 石田-前畑ら( 36 ) 、
Maehata ら( 37 ) の共同研究の解析例を図 7 に 示 す 。 ここ で は HOMA-R とアデ
ィポネクチンの関 係 を 示 し て お り 、 対 象 は 健 常 者 411 例 で あ る 。 統 計 解
析 に は 十 分 な 症 例 数 で は あ る の だ が 、低 濃 度 域 の 密 集 し た 範 囲 を 見 る と
ほ と ん ど 一塊 で あ る。こ こ で 、折曲 点 の設 定 に Adipo 5、10、15、20 μ g/ml
の 4 点 を 挙 げ 、 ス テ ッ プ ワ イ ズ 法 で 解 析 し た 結 果 、 Adipo は 10 μ g/ml
の 適 合 度 (F 値 )が 大き く 、 有意 差 が最 も 高 かっ た こと か ら 10 μ g/ml で
折 れ 曲 が るこ と が 最適 で あ ると 決 定し た 。 よっ て 、Adipo の cut off は 10
μ g/ml が 高 感 度 識別 値 と な り 、 HOMA-R は 1.0 と の 交点 が 最 適 で あ る 非
線形となった。こ の 点 を 境 に 区 分 け さ れ る 群 を 各 々 解 析 す る と 2 変 数 間
に 動 態 が 異 な る 対 象 を 見 い 出 す こ と に 成 功 し て い る ( 36 ) 。 そ れ は 折 れ 線
上 下 で 群 分け ( + )( -) と し 、Adipo 亢 進 に 伴い 、 HDL の 上昇 か つ TG
低 下 、 逆 に Adipo10 以 下域 で は HOMA-R は 高 く な った 。 従来 の 指 標と し
て の 意 義 が 裏 付 け ら れ 、 特 に 密 集 域 を ( + )( - ) 群 に 分 け る こ と で 病
態 の ( + )群 に 潜 む病 態 を 捉え て いる ( 36 ) 。
- 15 -
結果
1節
回 帰式 に よ る病 態 識 別法
こ こ で 、 今 回 用 い る 8 因 子 の 動 脈 硬化 リ ス ク フ ァ ク タ ー の 統 計 的 関 係
を 表 7 に 示し た 。
ま ず 、 多 因 子 に お け る 相 関 を 見 る ため に 偏 相 関 を 求 め た と こ ろ 、 ア ポ
E に 対 し て の TCHO、 LDL、 TG の 3 つ が 有 意 な 確 率 で 選 択 さ れ 、 そ の
中 で も TG が 最 も 相 関 係 数は 高 い 結果 と な っ た 。
多数の因子間の関連づけを行うためにノンパラメトリック法で
Spearman の 順 位 相関 を 行 った と こ ろ 、 同 じ 3 因 子 が 選 択 され た 。 さら に
重 回 帰 分 析 (ス テ ッ プ ワ イズ 法 )を 行 い、 確 認 を行 っ た 。 結 果 的 に TG の
1 因 子 が 選 択 さ れ た の で 、 y の 目 的 変 数 は ア ポ E 、 x の 対 応 変 数 は TG
と し 、 病 態 の 特 性 を つ か む た め 、 折 れ線 回 帰 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、
この2者間には折れ曲がり点が得られる関係とはならなかったのであ
る。
解 析 に は統 計 ソ フト JMP と EXCEL を 用い た 。 相関 係 数を 求 め 、そ の
寄与率から有用性を検定し、群毎の比較にはノンパラメトリックの
Wilcoxon 順 位 和 解析 、 Bonferrori の 多 重比 較 解 析 を 用 いた 。
よ っ て 、ア ポ E と TG は 図 8 のよ う なy = 0.0108 x + 3.2032、 相関 係
数 は 0.612、 p<0.001 の 線 形 回 帰 の 関 係 と なっ た 。
そ こ で 、 回 帰 式 の 上 側 を 上 層 群 、 つ ま り ア ポ E rich リ ポ 蛋 白 群 、 ま
た 、下 側 を下 層 群 、つ ま り ア ポ E poor リ ポ 蛋白 群 と した 。対 象は 上 層 64
例 と 下 層 77 例 に 分 け ら れ 、下 表 に示 す よ うに 、上層 群 が 下層 群 に 対し 、
ア ポ E と TG 両 項 目 と も に p<0.001 で 有 意 に 高値 で あ った 。
つ ま り 、回 帰 式上 層 群 と は ア ポ E rich か つ TG rich リ ポ 蛋白 群 であ り 、
高 レ ム ナ ント 血 症 群と 考 え られ る 。
- 16 -
2節
回 帰式 上 下 層の 検 討
図 9 に 回 帰 式 の 上 下 群 別 に 分 け 、 アポ E と 動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク タ ー
と の 関 係 を比 較 し た。
上 層 群 では 、 イ ンス リ ン 抵抗 性 の指 数 で ある HOMA-R( r = 0.333、p<
0.01)と 炎 症 マ ー カ ー で あ る SAA( r = 0.271、p<0.05)と は 有 意 に 正 相 関
と な っ た 。一 方 、 抗動 脈 硬 化作 用 をも つ HDL-C( r =- 0.393、p<0.001)や
Adipo( r =- 0.366、p<0.001)と は 有 意な 負 の相 関 と なっ た 。ま た 、 下層 群
は い ず れ の項 目 と も相 関 関 係は 認 めら な か った 。
つ ま り 、 上 層 群 の 高 レ ム ナ ン ト 血 症で は ア ポ E が 高 い ほ ど 動 脈 硬 化 リ
ス ク が 高 くな る と 考え ら れ る。
3節
識 別値 の 設 定と 区 分 化
ア ポ E と TG 間 に は 折 曲 点 が 求 めら れ なか っ た こと か ら、 そ の 代わ り
と し て 識 別値 に 相 当す る cut off を 設定 し た。 x 変 数の TG の 仮 の 折曲 点
と し て 、 100、150、 200、 250、 300mg/dl を 5 点を 候 補 とし た 。 TG に 対 す
る ア ポ E の F 値 (p 値 )を ス テ ッ プ ワ イ ズ 法 で 確 認 し た 結 果 、 150mg/dl が
最もあてはまりが高かった。そこからy軸アポEとの交点を求めると
4.8mg/dl と な った 。 TG は 動脈 硬 化予 防 の ガイ ド ラ イ ン で ある 150mg/dl に
相 当 し 、 アポ E は 共同 研 究 者(石田 、 前 畑 ら )の 研 究 ( 36 ) で 用 い た cut off
値 4.8mg/dl に 当 ては ま る もの と な った 。 これ ら の 点を 各 々延 長 さ せ、 回
帰 式 と 交 わる 区 域 を作 成 し た。 こ の区 分 け を図 10 に 示す 。
- 17 -
4節
区 分け の 解 釈
各 群 を 図 10 に 緑字 で 示し た が 、ア ポ E 、 TG 両 項目 と も正 常 域 をA 、
ア ポ E 正 常か つ TG 高 域 を B 、 こ こで A は回 帰 式 の上 側 をA 1 、 下側 を
A 2 と 細 区 分 し た 。 回 帰 式 上 層 群 で は、 ア ポ E の み 高 域 を C 、 両 者 と も
高 域 を D とし た 。
各 々 に 分布 す る 症例 数 は 回帰 式 上層 群 の A1 は 19、Cは 28、D は 17、
下 層 群 A 2は 67、 B は 10 例 で あっ た 。
さ ら に MetS と 診断 さ れ た 16 例 の 分 布 を下 表 に 示し た 。図 中 に 赤色 で
示 し た 各 マー ク 、ア ポ E rich TG 群 で は D群 に 12 例、ま た ア ポE poor TG
群 で は 4 例 (A2 に 1 例、 B に 3例 )と D 群 に集 中 し分 布 し てい た 。
5節
ア ポ E rich リ ポ 蛋 白群 (上 層 群 )の 各群 に お ける 検 査 項目 の 比較
ア ポ E rich リ ポ 蛋 白群 (上 層 群 )に おい て ア ポE も TG も 正常 域 の A 1
群 に 対 す るC 、D 群の 動 脈硬 化 リ スク フ ァ ク タ ー の比 較 を 表8 に 示し た 。
ま ず 、 ア ポ E は 高 域 、 か つ TG 正 常 域 の C 群 で は TG と ア ポ E ( p<
0.0001)、BMI と 収 縮 期 お よ び 拡張 期 血 圧 (p<0.05)が 有意 に 高 値と な った 。
ま た 両 者 共 に 高 域 の D 群 で は TG と ア ポ E ( p< 0.0001)、 HOMA-R( p<
0.05) 、 SAA( p< 0.05) 、 BMI( p< 0.0001) お よ び 拡 張 期 血 圧 ( p< 0.05) が 有
意 に 高 値 、一 方 、 HDL-C お よ び Adipo は 有意 に 低 値と な った 。 こ れら の
結 果 よ り 、回 帰 式 の 上 層 群 で は ア ポ Eお よ び TG が 高 値 にな る ほ ど動 脈
硬 化 の リ スク が 増 加す る こ とが わ かっ た 。
- 18 -
考察
今 回 、 動 脈 硬 化 の 予 知 お よ び 予 防 のた め に レ ム ナ ン ト リ ポ 蛋 白 に 注 目
し た 。 そ の構 成 成 分で あ る アポ E およ び TG の 関 連性 を ドッ ク 健 診受 診
者 を 対 象 に 回 帰 式 識 別 法 を 用 い て 分 析し 、 動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク タ ー と
の 関 わ り を検 討 し た。
一 般 的 に 、 検 査 の 現 場 は 、 得 ら れ たデ ー タ を 第 1 手 法 と し て 容 易 に 回
帰 分 析 を 行 い 、 結 果 を 求 め て い る こ とが 多 い 。 単 相 関 で の 回 帰 式 の 信 頼
度 は 寄 与 率 が 影 響 す る こ と が 問 題 と な る 。 経 験 的 に 相 関 係 数 r = 0.6 以
下 の 母 集 団 で は 寄 与 率 が 低 く 、 x と y変 数 の 関 わ り は 充 分 に 強 く な い と
考 え る 。 し か し 、 病 態 解 析 対 照 群 の 特性 は 解 析 法 の 選 択 に よ っ て 病 態 の
捉 え 方 や 、 そ の 傾 向 が 異 な っ て し ま うこ と を 筆 者 は 度 々 経 験 し て き た 。
石 田 - 前畑ら( 36 ) の研究は HOMA-R を中心に MetS の基本病態を健常者 411
例を用いて検討した。HOMA-R と Adipo の2者間において折曲点が求められ、
低濃度の密集域は緩和され、回帰直線の上層群と下層群で病態の差異を把握で
きた。また、先述したように Maehata ら( 37 ) の研究においては炎症性のマーカ
同士の相関での解析をしている。糖尿患者を対象に用いているので、血管内皮
細胞障害マーカーなど既に病態進行の陽性度の挙動は捉えられるが、cut off 境界
域での病態識別は鈍くなる。今回のように健常者を対象に用いる場合において
は、病態把握を推し量るに識別値(cut off)を設定することは大変有用性が高いの
である。
今 回 は 、 動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク タ ーの 多 因 子 の 中 か ら 、 y 変 数 に は 反
応 性 が 遅 い ア ポ E 、 x 変 数 に は 食 事 の影 響 な ど を 受 け や す い 反 応 性 の 早
い TG が 選 択 さ れ た 。 折 れ 線 回 帰 分析 の 結果 、 折 曲点 が 認め ら れ ない 関
係 と な っ た が 、 回 帰 式 上 下 層 群 で 関 わり を 検 討 し た 。 回 帰 式 上 層 群 で は
ア ポ E は イ ン ス リ ン 抵 抗 性 指 数 で あ る HOMA-R お よ び 炎 症 マ ー カ ー
- 19 -
SAA と 有 意な 正 相 関 、 一 方 、 抗 動 脈 硬化 作 用 のあ る HDL-C お よ び Adipo
と 有 意 な 負相 関 が 認め ら れ た。また 、回 帰 式 下層 群 も 同様 に 検 討し た が、
何 も 有 意 差は 認 め られ な か った 。
そ こ で 、折 曲 点 の代 わ り に識 別 値と し て 仮設 定 した cut off の 中 から 適
合 度 の 良 い 値 を 選 択 し 、 対 象 の 分 布 を線 分 で 区 分 け し た 。 そ の 区 分 け さ
れ た 中 で アポ E お よび TG rich リ ポ 蛋 白 の意 味 を 持つ D 群に は 高 レム ナ
ン ト 血 症 を 含 む こ と が 考 え ら れ 、 そ の存 在 を 確 認 す る こ と が で き た と 思
わ れ る 。 そし て 、 そ れ は ア ポ E お よ び TG が 正 常 域か ら 高域 へ 値 が増 加
す る ほ ど 動 脈 硬 化 リ ス ク が 増 加 す る こと が 認 め ら れ た こ と が 裏 付 け と な
った。
さ ら に は、D 群 に MetS が 多 く分 布 す る こ と から ア ポ E およ び TG rich
で あ る ほ ど 、 MetS の 成 因 が 存 在 す る 可 能 性 が 高 い こ と を 示 唆 す る も の
と考える。
以 上 の こ と か ら 、 こ の よ う に 直 線 回帰 式 法 に よ る 識 別 検 索 を 用 い て ス
ク リ ー ニ ング す る こと は 臨 床的 に 有効 で あ るこ と を証 明 す る。
- 20 -
まとめ
私 の 研 究の 歩 み は、臨 床検 査 の 現場 で の 臨 床 検 査法 の 開 発と そ の意 義 、
さ ら に は 検 査 標 準 化 に 向 け て の 母 集 団解 析 な ど で あ っ た 。 今 ま で 、 手 掛
け た テ ー マ は 糖 尿 病 関 連 の 検 査 法 の 臨 床 的 意 義 が 中 心 で 、 糖 化 sampled
studies で 物 質 (HbA1c、 糖 化 ア ル ブ ミ ン 、 1.5-AG な ど )、 血 管 損 傷 マ ー カ
ー (AEI) ( 38 )( 39 )、 動 脈 硬 化 マ ー カ ー (HOMA-R、 Lp(a))な ど に つ い て 日
常 検 査 法 の 実 用 化 に 向 け て 検 討 し 、 これ ま で 発 表 し て き た 。 し か し 、 測
定 法 の 評 価の 域 は 越え ず 、 従来 か らの sampled studies の 限界 を 知 り、 さ
ら に 有 意 な EBM(Evidence Besed Medicine)検 査 を追 求 し て き た 。
今 回 、 動 脈 硬 化 の 予 防 お よ び 予 知 する た め に 、 動 脈 硬 化 リ ス ク フ ァ ク
タ ー を 多 数 の 因 子 で 検 討 し た 結 果 、 アポ E と 中 性 脂 肪 が 選 択 さ れ た 。 こ
れ ら は 、 一 般 に 検 査 項 目 と し て 容 易 に測 定 で き 、 ス ク リ ー ニ ン グ に 用 い
る こ と が でき る 。
本 研 究 で は 、 病 態 の 把 握 に 統 計 的 手 法 (ス テ ッ プ ワ イ ズ 法 に よ る 折 れ
線 回 帰 分 析 )を 工 夫 し て 取 り 入 れ る こ と で 、 対 象 を よ り 適 切 に 捉 え て 、
解 析 し て い く こ と が で き 、 さ ら に 臨 床に 貢 献 で き る も の と 考 え て い る 。
- 21 -
Summary
Aiming to characterise atherosclerotic risk in individuals with ApoE- and TG-rich
lipoproteins, the authors analysed the combined clinical data for ApoE and TG using
discrimination via linear regression.
The result of discrimination via linear regression showed that individuals above the
regression line (+) had significantly higher ApoE and TG levels than those beneath
the regression line (-), forming an ApoE- and TG-rich group. In the above-the-line (+)
group, ApoE significantly correlated with increases in insulin resistance (HOMA-R)
and SAA and decreases in HDL-C and Adipo, suggesting that a higher level of ApoE
might indicate a higher risk of atherosclerosis in ApoE- and TG-rich individuals.
Next, the sub-groups defined by the cut-off values for ApoE and TG were
analysed. Among the sub-groups in the above-the-line (+) region, group C (high
ApoE, normal TG) had significantly higher BMI, systolic blood pressure, and
diastolic blood pressure than group A1 (normal ApoE and TG), while group D (high
ApoE and TG) had significantly higher HOMA-R, SAA, BMI, and diastolic blood
pressure and significantly lower HDL-C and Adipo than group A1. Group A1 had the
lowest levels of ApoE and TG, followed by groups C and D in decreasing order, and
group D showed a high frequency of subjects with MS. These results are considered
to suggest that the risk of atherosclerosis increases with rises in ApoE and TG levels.
They also suggest that an ApoE- and TG-rich status may constitute a risk of
atherosclerosis in MS .
- 22 -
図表一覧
図1
リ ポ蛋 白 の 構造
図2
リ ポ蛋 白 の 代謝 経 路
図3
動 脈硬 化 惹 起の メ カニ ズ ム
図4
イ ン ス リ ン 抵 抗 性 に おけ る レ ム ナ ン ト 代 謝 の メ カ ニ ズ ム
図5
メ タボ リ ッ クシ ン ドロ ー ム の成 因
図6
メ タボ リ ッ クシ ン ドロ ー ム の診 断 基準
図7
HOMA-R と ア デ ィ ポ ネ クチ ン の 関 係
図8
ア ポE と TG の 相 関関 係 と 回 帰 式 で分 け た 上下 層 群
図9
回 帰式 上 下 層群 別 のア ポ E との 相 関
図 10
識 別 値 で 区分 け し た各 群 にお け る 分布 状 況
表1
リ ポ蛋 白 の 構成
表2
ア ポ蛋 白 の 種類 と その 特 徴
表3
ア ポE の 分 子多 様 性
表4
各 病態 の 特 徴
表5
対 象者 の 臨 床的 背 景
表6
動 脈硬 化 リ スク フ ァク タ ー とし て の検 討 項 目
表7
動 脈硬 化 リ スク フ ァク タ ー の関 係
表8
ア ポ E rich
リポ蛋白群(上層群)における各群の比較
- 23 -
PL:リン脂質
FC:遊離型コレステロール
CE:エステル型コレステロール
TG:中性脂肪
図1
リポ蛋白の構造
参考文献(1)戸塚 実:講義のアポリポ蛋白-量から質の検査へ,臨床検査,54(4),343-351,2010.加筆作図
外 郭 の 主 成 分 で あ る リ ン 脂 質 (PL)が 脂 質 二 重 層 と な り 、 ミ セ ル を 形 成 す る 。
PL二 層 は 両 親 媒 性 物 質 で 、 疎 水 性 部 分 を 内 側 、 親 水 性 部 分 を 外 側 に 構 成 す る 。
ミ セ ル の 外 郭 に は 親 水 性 の 遊 離 型 コ レ ス テ ロ ー ル (FC)や ア ポ 蛋 白 、 中 心 に は
疎 水 性 の エ ス テ ル 型 コ レ ス テ ロ ー ル (CE)や 中 性 脂 肪 (TG)な ど が 配 す る 。
- 24 -
小腸
肝臓
LDLレセプター
レムナントレセプター
図2
リポ蛋白の代謝経路
参考文献(4)山村 卓:特集 血漿リポ蛋白異常症 基礎編 アポ蛋白-アポ蛋白の分子生物学 アポ蛋白E,
日本臨床,52(12),58-66,1994.加筆作図
CM: Chylomicron、 VLDL: Very Low Density Lipoprotein、
LDL(-C): Low Density Lipoprotein( Cholesterol)、
TG: Triglyceride
HDL(-C): High Density Lipoprotein( Cholesterol)、
LPL: Lipoprotein Lipase
食 事 由 来 の 外 因 系 経 路 (カ イ ロ マ イ ク ロ ン : CM・ CM レ ム ナ ン ト )、 お よ び 肝 臓
か ら 生 合 成 さ れ る 内 因 系 経 路 (VLDL・ VLDL レ ム ナ ン ト (IDL)、 LDL) の リ ポ 蛋 白
代 謝 経 路 を 示 す 。 小 腸 か ら CM が 、 肝 臓 か ら VLDL が 合 成 ・ 分 泌 、 TG rich リ ポ 蛋
白 は 各 組 織 に TG を 供 給 し て い る 。 肝 細 胞 表 面 に あ る ア ポ E を リ ガ ン ド と す る レ
ム ナ ン ト レ セ プ タ ー に 結 合 し 肝 臓 に 取 り 込 ま れ る 。 VLDL も TG が 水 解 さ れ 、
VLDL レ ム ナ ン ト か ら Chol rich な LDL に 変 換 さ れ る 。
- 25 -
単球
血小板凝集能亢進
PAI-1活性亢進
血管内腔
内膜:
血管内皮細胞
接着亢進
血管内皮
機能障害
レムナント
取り込み亢進
血管壁
マクロファージ
中膜:
平滑筋細胞
アポB-48
受容体
泡沫化亢進
増殖亢進
外膜
図3
動脈硬化惹起のメカニズム
参考文献(8)田中 明:レムナントリポ蛋白,medicina,44(8),1496-1498,2007.加筆作図
高レムナント血症における動脈硬化惹起メカニズムを示す。
血管内皮細胞への単球の接着が亢進し、血管壁に侵入、単球はマクロファージに
な る 。 血 小 板 凝 集 能 や PAI-Ⅰ 活 性 が 亢 進 し 、 血 栓 が 溶 解 さ れ に く い 状 態 と な り 、
血管内皮機能も障害が亢進する。中膜の平滑筋細胞の増殖亢進し、内膜へ移動、
マクロファージになる。さらに泡沫化が促進し、動脈硬化の初期病変が生じる。
- 26 -
①
②
③
④
⑤
→
インスリン抵抗性
ACAT活性亢進
LPL活性低下
レムナント受容体活性低下
HTGL活性低下
ホルモン感受性リパーゼ活性亢進
脂肪組織
TG
脂肪酸
ホルモン感受性
リパーゼ
脂肪酸
アポB-100
肝臓
レムナント
受容体
TG
VLDL
レムナント
VLDL
受容体
小腸壁
HDL
カイロミクロン
レムナント
血管内皮
LPL
カイロミクロン
カイロミクロン
TG
HTGL
LDL
アポB-48
エステル型コレステロール
VLDL
レムナント
ACAT
遊離型コレステロール
コレステロール
食事
腸管腔
図4 インスリン抵抗性におけるレムナント代謝のメカニズム
参考文献(16)田中 明:レムナントとメタボリックシンドローム,The Lipid,18(4),35-40,2007.加筆作図
ACAT( Cholesterol O-acyltransferase)、 LPL( Lipoprotein Lipase)、 TG: Triglyceride
HTGL( Hepatic triacylglycerol lipase)、 LCAT(Lecithin Cholesterol Acyltransferase)
VLDL: Very Low Density Lipoprotein、、 LDL(-C): Low Density Lipoprotein( Cholesterol)
インスリン抵抗性におけるレムナントの代謝を示す。
イ ン ス リ ン 抵 抗 性 が 生 じ る と ① か ら ⑤ の 状 態 を 来 た し 、 最 終 的 に は TG rich リ ポ
蛋白の異化障害が起き、レムナントを上昇させる。
- 27 -
過剰栄養
運動不足
内臓脂肪蓄積
門脈
遊離脂肪酸↑
グリセロール↑
アディポサイトカイン分泌異常
アディポネクチン↓ PAI-Ⅰ↑
リポタンパク質合成亢進
インスリン抵抗性
脂質異常症
耐糖能異常
高 血 圧
動脈硬化
図5 メタボリックシンドロームの成因
参考文献(25)徳永勝人,松村俊子:メタボリックシンドローム発症基盤としての脂肪細胞機能異常,体内脂肪分布の異常,日本臨床,69巻増刊号1,
211-213,2011.加筆作図
メタボリックシンドロームの成因を示す。
過剰栄養および運動不足による内臓脂肪の蓄積が元凶で、リポ蛋白質合成亢進と
様々なアディポサイトカインの異常からインスリン抵抗性を来たす。これを基盤
に脂質異常症、耐糖能異常、高血圧などを合併し、動脈硬化に陥いる。
- 28 -
必須項目
◎ 臍部ウエスト周囲長
男性 85cm 以上
女性 90cm 以上
上記に加え、①から③の3項目のうち2つあてはまるか
① 中性脂肪
150 mg/dl 以上
and/or
HDLコレステロール 40 mg/dl 未満
② 血圧
130 / 85 mmHg 以上
③ 空腹時血糖
図6
110 mg/dl 以上
メタボリックシンドロームの診断基準
日本内科学会関連8学会による内臓脂肪蓄積の指標
参考文献(31)メタボリックシンドローム診断基準委員会:日内会誌,94,794-809,2005.加筆作図
日本内科学会 関連8学会による内臓脂肪蓄積の指標であるメタボリック
シンドローム診断基準を示す。
- 29 -
→
通常の回帰分析
8
7
7
N= 411
y = -0.032x + 1.529
r=-0.263
P<0.001
5
4
6
(+)群
r=-0.40
p<0.001、N= 152
(-)群
r=-0.50
p<0.001、N= 259
5
HOMA-R
6
HOMA-R
折れ線回帰分析
8
4
3
3
2
2
1
1
0
0
折曲点
(+)群
0
10
20
30
Adipo
図7
40
(-)群
0
50
(μg/mL)
10
20
30
Adipo
40
50
(μg/mL)
HOMA-Rとアディポネクチンの関係
参考文献(36)石田紀子,野嶋廣巳,桃木野鉄義,前畑英介,矢野正生,下村弘治, 山門 実,井上 穣,中村 剛:健診群の
HOMA-Rとアディポネクチンとの関係を折れ線ハザードで、識別した際の知見,総合健診(第34回大会予稿号),33:258,2006.
折れ線回帰分析の例を紹介する。
健 診 施 行 者 411 例 に お い て 、 折 曲 点 は HOMA-R
1.0 と ア デ ィ ポ ネ ク チ ン 10mg/dl
が得られ、低濃度も密集域に潜む病態の解析が有効となる。
- 30 -
(m g/dl)
10.0
回帰直線上層群(アポErichリポ蛋白群)
64例
8.0
y = 0.0108x + 3.2032
r=0.612 (N=141)
p<0.001
アポE
6.0
4.0
2.0
回帰直線下層群(アポEpoorリポ蛋白群)
77例
0.0
0
100
200
TG
300
400
500
(mg/dl)
(mg/dl)
TG
アポE
上層群 127±80*** 5.4±0.9***
下層群 94±47
3.5±0.5
図8 アポEとTGの相関関係と回帰式で分けた上下層群
*** p < 0.001
ア ポ E と TG に 回 帰 分 析 を 行 っ た 結 果 、 相 関 関 係 は y = 0.0108 x + 3.2032、
相 関 係 数 は 0.612、 p<0.001 の 線 形 回 帰 の 関 係 と な っ た 。 回 帰 直 線 の 上 下 層 群 に
分 け 、 下 表 に 示 す よ う に TG と ア ポ E は 有 意 に 上 層 群 が 高 値 で あ っ た 。
- 31 -
アポE vs HOMA-R
10
10
10
8
8
8
6
6
6
4
4
4
r=0.333 2
2
6
4
アポE
p<0.01
0
10
r=0.163
p(NS)
6
下層群:
N=77
r=-0.393
p<0.001
0
10
8
アポE vs SAA
mg/dl
8
2
アポE vs Adipo
mg/dl
10
上層群:
N=64
アポE vs HDL-C
mg/dl
mg/dl
r=-0.366
p<0.001
0
10
8
r=-0.170
p(NS)
6
2
10
8
8
r=-0.212
p(NS)
6
4
4
4
2
2
2
2
0
0
0
2
4
6
8
mg/dl
0
50
HOMA-R
100
150
mg/dl
HDL-C
0
5
10
15
20
mg/ml
Adipo
r=-0.041
p(NS)
6
4
0
r=0.271
p<0.05
0
0
0
10
20
30
40
mg/ml
SAA
図9 回帰式上下層群別のアポEと動脈硬化リスクファクターの相関
HOMA-R: Homeostasis model assessment ratio、 Adipo: Adiponectin
HDL-C: High Density Lipoprotein( Cholesterol)、 SAA: Serum Amyloid A protein
上 層 群 で ア ポ Eと 正 相 関 を 示 し た の は 、 赤 丸 内 の HOMA-R( r=0.333) 、 SAA( r=0.271) 、
負 相 関 を 示 し た の は 、 青 丸 内 の HDL-C( r=-0.393) 、 Adipo( r =-0.366) で あ っ た 。
一方、下層群は全て無相関であった。
- 32 -
(mg/dl)
10.0
上層群(アポE rich TG群)
9.0
C
D
(N=28)
8.0
(N=17)
アポE
7.0
6.0
5.0
4.8
4.0
(N=19)
3.0
2.0
A2
B
(N=67)
1.0
(N=10)
下層群(アポE poor TG群)
0.0
0
100
150
200
300
TG
400
対 象(橙色で表示)
メタボリックシンドローム
図10
500
(mg/dl)
総数
(%)
16(11%)
上層群64例
A1
C
D
0
0
12
下層群77例
A2
B
1
3
識別値で区分けした各群における分布状況
上層群
△ : A1、 ● : C、 × : D
( Mets 例
×:D
下層群
◆ : A2、 ■ : B
◇ : A2、 □ : B
ア ポ E と TG 間 の 識 別 値 と し て TG150mg/dl、 ア ポ E 4.8mg/dl を cut
)
off と 設 定 し 、
こ れ ら の 点 を 延 長 さ せ 、 区 域 を 作 成 し た 図 を 示 す 。 下 表 は MetS の 分 布 を 示 し 、
各 々 の マ ー ク で 赤 色 で 示 す 。 ア ポ E 、 TG 両 項 目 が 正 常 域 を A 、 ア ポ E 正 常 か つ
TG 高 域 を B 、 さ ら に A を 回 帰 式 の 上 側 を A 1 、 下 側 を A 2 、 回 帰 式 上 層 群 で 、
アポEのみ高域をC、両者とも高域をDとする。
- 33 -
表1
比重
(density)
分画
リポ蛋白の組成
直径
(mm)
脂質
含量
アガロース
電気泳動の
移動度
PL
脂質の内訳
CHOL TG
カイロミクロン
<0.950
100~
1.000
98%
7%
84%
VLDL
0.950~
1.006
30~80
90%
19%
50% 21%
レムナント
1.006~
1.019
25~30
82%
45%
28%
LDL
1.019~
1.063
20~25
75%
45%
10% 20%
HDL
1.063~
1.210
7.0~10
50%
22%
4%
7%
9%
24%
アポ蛋白
原点
A-Ⅰ、A-Ⅱ、B-48
C-Ⅱ、C-Ⅲ、E
pre β
B-100、C-Ⅱ
C-Ⅲ、E
broad β
B-48、B-100
C-Ⅱ、C-Ⅲ、E
β位
B-100
α
A-Ⅰ、A-Ⅱ
C-Ⅱ、C-Ⅲ、D、E
参考文献(1)戸塚 実:講義のアポリポ蛋白-量から質の検査へ,臨床検査,54(4),343-351,2010.加筆作表
表2
アポ蛋白の種類とその特徴
アポ蛋白
産生臓器
A-Ⅰ
小腸・肝臓
A-Ⅱ
肝臓
HDL
B-100
肝臓
VLDL ・ IDL ・ LDL
B-48
小腸
C-Ⅱ
HDL ・ カイロミクロン
カイロミクロン ・
カイロミクロンレムナント
肝臓(小腸)
HDL ・ カイロミクロン
VLDL ・ レムナント
肝臓・脳・脾臓・肺
副腎・卵巣・腎臓
マクロファージ
末梢組織
カイロミクロン
カイロミクロンレムナント
VLDL ・VLDLレムナント
LDL ・ HDL
C-Ⅲ
E
存在するリポ蛋白
機 能
LCAT活性化 、
HDL受容体との結合
LCAT活性阻害 、
HTGLの活性阻害
LDL受容体への結合
外因性リポ蛋白の構成蛋白
LPLの活性化
LPLやHTGLの活性阻害 、
レムナント受容体との結合を阻害
レムナント受容体 、
LDL受容体との結合
参考文献(2)荒井秀典:リポ蛋白の代謝経路,medicina,48(5),720-724,2011-5.加筆作表
- 34 -
表3
アポEの分子多様性
アポE遺伝子
アポE同位体
遺伝子頻度
レセプター結合活性(%)
ε2
E2
0.05
<2
ε3
E3
0.852
100
ε4
E4
0.093
100
参考文献(4)山村 卓:特集 血漿リポ蛋白異常症 基礎編 アポ蛋白-アポ蛋白の分子生物学 アポ蛋白E,
日本臨床,52(12),58-66,1994.加筆作表
表4
各病態の特徴
シンドロームX
死の四重奏
インスリン抵抗性症候群
内臓脂肪症候群
(Reaven) 1988
(Kaplan) 1989
(DeFronzo) 1991
(Matsuzawa) 1987
インスリン抵抗性
耐糖能異常
高インスリン血症
内臓脂肪蓄積
高インスリン血症
(高インスリン血症)
NIDDM
インスリン抵抗性
耐糖能異常
高TG血症
高TG血症
耐糖能異常
高VLDL-TG血症
上半身肥満
高コレステロール血症
高脂血症
高HDL-C血症
高血圧症
低HDL-C血症
高血圧症
高血圧症
高血圧症
冠動脈硬化
肥満
参考文献(25):伊藤 裕,中尾一和:PPARγ(peroxisome proliferator -activated receptor γ)の動脈硬化における意義,日本臨床,
59(増刊号2),602-613,2001.加筆作表
- 35 -
表5
対象者の臨床的背景
2007年から2008年 人間ドック受診 75gOGTT施行者
対象者
141名
(男性 105・女性 36)
生化学データ
平均 ± SD
平均 ± SD
総コレステロール
( mg/dl )
197 ± 32
( mg/dl )
109 ± 67
年齢 ( 歳 )
49 ± 8
中性脂肪
BMI ( kg/m2 )
24 ± 6
HDLコレステロール ( mg/dl )
62 ± 14
男 性
最高37、最低17
LDLコレステロール ( mg/dl )
127 ± 28
女 性
最高35、最低14
アポE
( mg/dl ) 4.4 ± 1.2
ウエスト周囲長・臍位( cm )
85 ± 9
空腹時血糖
( mg/dl )
男 性
85 ± 9 (最高112、最低69) HbA1c(JDS)
女 性
84 ± 9 (最高106、最低66) IRI
95 ± 9
( % ) 5.0 ± 0.4
(μU/ml ) 6.4 ± 4.3
収縮期血圧 ( mmHg )
120 ± 15
ALT
( IU/l )
25 ± 17
拡張期血圧 ( mmHg )
76 ± 9
AST
( IU/l )
24 ± 13
表6
動脈硬化リスクファクターとしての検討項目
対
総コレステロール
象
(TCHO)
LDLコレステロール (LDL-C)
HDLコレステロール (HDL-C)
中性脂肪
(TG)
アポE
(APOE)
血清アミロイド蛋白A (SAA)
アディポネクチン
HOMA-R
- 36 -
(Adipo)
表7
動脈硬化リスクファクターの関係
偏相関
アポ E
p値
TCHO
0.306
p<0.01
HDL
-0.05
n.p.
LDL
0.329
p<0.05
TG
0.632
p<0.01
ノンパラメトリック:Spearmanの順位和相関
アポ E
p値
TCHO
0.58
p<0.0001
HDL
0.003
0.974
LDL
0.466
p<0.0001
重回帰分析(ステップワイズ法)
SAA
-0.11
n.p.
Adipo
-0.04
n.p.
HOMA-R
0.154
n.p.
組合せの確認→3項目選択
TG
0.509
p<0.0001
SAA
0.173
0.041
Adipo
-0.25
0.003
アポEに対し、7独立変数を調べる
推定値
標準誤差
t値
p値
TG
0.01083
0.001108
7.61
<0.0001
TCHO
0.01540
0.002015
3.68
0.0003
順位和の再確認
HDL
0.01524
0.005113
1.27
0.2053
1項目選択
LDL
0.01439
0.002320
-1.13
0.2607
HOMA-R
0.058
0.072
0.56
0.5785
Adipo
0.009
0.03
0.35
0.7243
SAA
0.009
0.011
0.65
0.5155
- 37 -
HOMA-R
0.216
0.01
表8
アポE rich リポ蛋白群(上層群)における
各群の比較
全対象群
上層群
アポE rich リポ蛋白群
(N=64)
A1
C
D
Total
(N=141)
(N=19)
(N=28)
(N=17)
(N=64)
(mg/dl)
109±66
68±25
アポE (mg/dl)
4.4±1.2
4.3±0.2
Gluc (mg/dl)
95±9
95±8
97±21
98±31
97±9
HOMA-R
1.5±1.1
1.4±1.0
1.3±0.8
2.4±1.5 *
1.6±1.2
HDL-C (mg/dl)
62±14
71±16
69±20
Adipo (μg/ml )
3.4±2.6
4.8±2.2
4.3±3.1
1.1±0.6 ***
3.5±3.0
SAA (μg/ml)
6.2±6.5
4±4.8
5.4±5.4
7.6±5.2 *
6±5.5
24±4
23±4
収縮期血圧 (mmHg)
120±9
114±15
126±14 *
121±11
121±14
拡張期血圧 (mmHg)
75±15
72±10
79±10 *
78±7 *
77±10
*** p<0.0001
** p<0.01
* p<0.05
vs A1
Item
TG
BMI
(kg/m2)
88±37 *** 226±103 ***
125±79
5.1±0.9 *** 6.1±1.6 ***
5.4±0.9
23±6 *
- 38 -
50±17 ***
27±8 ***
64±16
24±4
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- 43 -
謝辞
こ の 論 文 を 作 成 す る に あ た り 、 昭 和大 学 藤 が 丘 病 院 内 分 泌 代 謝 内 科 兼
任講師 前畑英介先生の手厚い御指導を仰ぎました。先生が三井記念病
院 中 央 検 査 部 臨 床 検 査 技 師 長 時 代 か ら 20 数 年 間 に 渡 り 、 sientist と し て
の 理 念 を 教 授 し て く だ さ い ま し た 。 改め て 深 謝 し 、 心 よ り 御 礼 を 申 し 上
げ ま す 。 ま た 、 研 究 対 象 と な る デ ー タは 佐 世 保 中 央 病 院 の 倫 理 委 員 会 を
経て御許可をいただきました。統計の解析には長崎大学 生産科学研究
科 の 石 井 紀 子 様 の 御 協 力 を い た だ き まし た 。 こ の 他 、 生 物 ・ 試 料 分 析 に
基 に な る 論 文 を 投 稿 す る に も 多 く の 方々 の 御 協 力 と 御 支 援 あ っ て の こ と
で し た 。 2011 年 34(2)151-158 に 掲 載 さ れ ま し た こ と を 御 報 告 す る と と
も に 、 関 わっ て く ださ っ た 皆様 に 献辞 致 し ます 。
本 論 文 は 、 女 子 栄 養 大 学 香 川 靖 雄 副 学 長 ( 医 化 学 研 究 室 )、 山 田 和
彦 教 授 ( 生 化 学 研 究 室 )、 堀 江 修 一 教 授 ( 臨 床 生 化 学 研 究 室 )、 そ し
て大変残念ながらご逝去された故 髙橋信二 教授(微生物研究室)に審
査 か ら 完 成 に 至 る ま で ご 指 導 を い た だい た こ と に 対 し て 、 謝 辞 の 念 を 申
し上げます。また、武藤志真子 教授(健康情報科学研究室)並びに株
式 会 社 ア イス タ ッ ト 菅 民 郞様 に も大 変 お 世話 に なり ま し た。
最 終 的 に は 田 中 明 教 授 ( 臨 床 栄 養医 学 研 究 室 ) の 御 指 導 と 御 鞭 撻 の
賜 で あ る とこ こ に 深く 感 謝 の辞 を 申し 上 げ ます 。
これまで、終始励ましてくださった奥脇義行 名誉教授のお声、さら
に大学入学当時からの香川芳子 学長のお優しきお導きが私にはかけが
え の な い 太 い 支 え と な り ま し た こ と も、 衷 心 よ り 感 謝 の 念 を 述 べ さ せ て
い た だ き たい と 存 じま す 。
最 後 に 、 最 愛 な る 母 、 娘 、 夫 、 そ して 見 守 っ て い て く れ た 大 切 な 人 へ
そ の 無 償 の愛 に 対 し、 一 生 報う よ う努 め ま す。
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