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土砂災害警戒情報(補完情報)の確実な伝達に関して

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土砂災害警戒情報(補完情報)の確実な伝達に関して
土砂災害警戒情報(補完情報)の確実な伝達に関して
笹尾
郁子
新潟県土木部砂防課(〒950-8570 住所:新潟市中央区新光町 4-1)
平成 17 年より発表が始まった「土砂災害警戒情報」は、市町村が避難勧告を発令する基準となるものであ
り、住民の自主避難の判断目安となる重要な気象情報である。新潟県では土砂災害警戒情報を運用すると同
時に、より詳細に土砂災害危険度の高い地域に関する情報の提供、および危険度情報をメールで発信してい
るが、情報の持つ意味合いが重要なことから、危険度情報を素早く、また作成におけるヒューマンエラーを
防ぐことを目的に、自動的にメール情報を作成するシステムを開発し活用している。このことについて報告
するとともに、当県における情報伝達に関する概要について報告する。
キーワード
土砂災害警戒情報、情報伝達、迅速化
1 はじめに
例年の梅雨前線、台風等による豪雨や、近年の気候
変動の影響等により、全国的に土砂災害が増加、激甚
化している傾向にある。
このような状況の下、気象庁は注意報や警報がより防
災活動に有効活用できるよう、平成 20 年 5 月に注意報・
警報の発表基準を見直した。また、地方気象台と都道
府県が共同で発表する新たな防災気象情報として、平
成 17 年 9 月より土砂災害警戒情報(図-1)の運用が全
国で順次開始された。(新潟県では平成 19 年 6 月に運
図-1 土砂災害警戒情報
用を開始。)この情報は、大雨警報発表中に土砂災害
発生の危険度がさらに高まった際に発表される情報で、
市町村長が避難勧告等を発令する際の判断や、住民
新潟県
(砂防課)
の自主避難の目安となる情報である。発表時には報道
機関等を通じて広報されるとともに、防災活動を行う防
災関係機関へ情報が伝達される。(図-2)
インターネット
関係機関
土 砂 災 害
警 戒 情 報
共同作成・発表
新潟県
(防災局)
市
町
村
住
避難勧告等
民
これらの土砂災害警戒に関わる防災気象情報は
発表単位が市町村となっている。そのため、防災担当
者が面積の広い各市町村の中で危険な地域を特定す
新潟地方
気 象 台
テレビ・ラジオ
インターネット
ることは難しく、その特定までの作業や情報伝達に時間
土砂災害警戒情報の伝達
を要するという問題点があった。
土砂災害危険度情報の伝達
図-2 土砂災害警戒情報と危険度情報の
伝達・提供イメージ
そこで新潟県は、これらの問題を解決するため、より
詳細な地域での土砂災害危険度を判定し、「土砂災害
危険度情報」として防災関係機関へ提供、配信するシ
ステムを構築した。
2 構築システム紹介
図-4 新潟県メッシュ図
(1)システム概要
本システムは新潟地方気象台から受信した気象デー
土砂災害危険度の判定は、レーダ雨量情報(3 時間
タをもとに土砂災害危険度を判定し、その判定結果を
先までの 60 分間積算雨量)のデータと土壌雨量指数の
「土砂災害危険度情報」としてインターネットで防災担当
データ値が判定図の基準(図-5)を超過しているかどう
者や住民に情報提供している。加えて、土砂災害警戒
かで行う。(ただし、判定には予測雨量の精度や土砂災
に関わる大雨警報や土砂災害警戒情報が発表された
害発生までのリードタイムを考慮し、2 時間先までの予
際は、確実な情報周知を行うため、それを補完する情
測雨量データを利用する。)判定は 5km メッシュ毎に 10
報としてこの「土砂災害危険度情報」を防災関係機関へ
分更新で行い、危険度のレベルを次の3段階で設定し
メールで配信する。システムの構成を図-3 に示す。
ている。
図-5 判定図イメージ
図-3 システム構成図
① 前ぶれ注意レベル
(2)土砂災害危険度の判定
土砂災害危険度は、新潟県全体を 5km 四方のメッシ
ュに分割(計 487 メッシュ(図-4))し、次の情報をもとに
判定している。
大雨による重大な土砂災害が発生するおそれのある
レベル。危険地域内で災害時要援護者の避難を開始
する目安。
[現在値または 1 時間後予測値または 2 時間後予測
値が判定エリア A へ]
① レーダ雨量情報(解析雨量、降水短時間予報およ
び降水ナウキャストの 60 分間積算雨量)
② 警戒レベル
今後 2 時間以内に危険レベルとなる可能性があるレ
②土壌雨量指数データ(予測含む)
ベル。土砂災害警戒情報の発表が検討される。危険地
③5km メッシュ単位の大雨警報基準情報およびCL(クリ
域内の住民が避難を開始する目安。
ティカルライン)基準情報
[1 時間後予測値または 2 時間後予測値が判定エリア
Bへ]
(4)土砂災害危険度情報の配信
③ 危険レベル
インターネットでの情報公開だけでは、防災担当者が
大雨による土砂災害が集中的に発生するおそれのあ
常時画面を参照していなければ危険度レベルが高くな
るレベル。危険地域内の住民が早期に避難を完了する
ったとしてもそのことを認識できない。非常時には様々
目安。
な情報が集中する市町村等の防災関係機関において、
[現在値が判定エリアBへ]
担当者が常時画面を確認し続けることは現実的ではな
く、このような状況下では土砂災害のおそれが高まった
(3)土砂災害危険度情報の公開
際に迅速な対応を取ることは困難である。
前項の判定結果より得られた 5km メッシュ毎の危険度
そこで新潟県では、新潟地方気象台から土砂災害警
のレベルは、インターネットで一般公開している。(図
戒に関わる大雨警報や土砂災害警戒情報が発表され
-6)
た際に、確実な情報周知を行うため、土砂災害危険度
これにより、防災担当者が危険度の高い地域の防災
情報を防災関係機関にメールで配信できるようシステム
活動を適時適切に行えるよう支援する。また、住民が自
を構築している。この通知は防災関係機関への注意喚
主避難するための判断材料として活用することもでき
起と避難行動を促す情報で、土砂災害危険度情報の
る。
要点(5km メッシュ番号やその所在地等)を記載してい
る。なお、メールを受信する市町村側には受信を知らせ
る回転灯が設置されており、通知を見落とすことが無い
よう配慮されている。実際の業務フローを図-7 に示す。
このシステムでは、自動配信端末により対象市町村
毎の通知資料(Excel ファイル)と、これを添付した定型
文のメールを自動作成し、事前に登録している複数の
防災関係機関のメールアドレスの中から該当する配信
先を自動で抽出する。(図-8)
この通知には以下の 2 種類がある。(図-9)
図-6 インターネット公開画面の例
図-8 自動配信端末の画面
図-7 業務フロー図
①土砂災害前ぶれ注意情報
通知内容
(メッシュ番号、所在地、災害時要援護者施設等)
大雨警報発表中にこれを補完する。
(=前ぶれ注意レベル)
対象市町村に応じて
配信先を自動抽出
②土砂災害警戒情報(補完情報)
土砂災害警戒情報発表後にこれを補完する。
(=警戒レベル)
今年度より、土砂災害発生の危険があると判定された
メッシュ番号に加え、そのメッシュに該当する危険箇所
に所在する災害時要援護者施設の名称を記載するよう
様式を変更した。これにより、危険度情報を見れば危険
な地域(メッシュ)と施設を一目で把握することができるこ
とから、迅速な防災対応の実施が期待できる。
3 システム構築の効果
図-8 自動配信端末の画面
土砂災害の発生は人命にかかわる事態を引き起こす
危険性が高いため、当然、防災関係機関への情報伝達
【訓練】土砂災害前ぶれ注意情報
至急
2010/05/13
宛先
10:57:00
長岡市 市長 様
が発表されました
該当する地域に土石流又はがけ崩れの発生する恐れがあります。
必要に応じ、避難準備の検討を行ってください。
はできるだけ早く、確実に行われなければならない。こ
土砂災害前ぶれ注意情報
下記 の状 況欄に記載の あるメッ シュで 確認 され た雨 量が 「土 石流 又は がけ崩れが発生する恐れ のあ る」
レベ ルと なりました
【訓練】土砂災害警戒情報(補完情報)
土砂災害警戒情報システムの土砂災害危険度判定図画面は、該当するメッシュをクリックすると確認
できます。
至急
2010/05/13
アドレス「http://doboku-bousai.pref.niigata.jp/sabou/」
宛先
11:12:00
作成およびメール配信先の自動抽出が行われるため、
配信対象市町村が複数にわたる場合でも、砂防課の担
妙高市 市長 様
←市町村名をクリックするとホームページが開きます
長岡市
土砂災害警戒情報
が発表されました
メッシュ番号
旧市町村名
災害時要援護者関連施設
備考
土石流又はがけ崩れが多発する危険があります。
高齢者冬期共同住宅ひだまり
チ-29
小国町
必要に応じ、避難を行ってください
高柳保育園
2010/04/22 20:10:00
2010/04/22 20:10:00
テ-24
三島町認さ れた 雨量 が「 土石 流又 はが け崩れが多数
下記の状況 欄に 記載
のあるメッシ ュで確
発生する恐 れが 更に 高まった」レ ベルと なり まし た
テ-24
2010/04/22 20:10:00
長岡市
土砂災害警戒情報システムの土砂災害危険度判定図画面は、該当するメッシュをクリックすると確認
避難情報などの発令に関しては、別途配布の「メッシュ別土砂災害危険箇所整理表」
できます。
の自動配信システムの構築によって、通知資料の自動
当者は通知内容を確認して送信ボタンを押すだけで良
い。これによって、送信間違いなどの人為的ミスも防ぐこ
とができ、作業時間の大幅な短縮を行うことができる。ま
アドレス「http://doboku-bousai.pref.niigata.jp/sabou/」
を参考に対象範囲を検討願います
妙高市
メッシュ番号
←市町村名をクリックするとホームページが開きます
旧市町村名
災害時要援護者関連施設
備考
コ-36
妙高村
新 潟かなやの里更生園分場りんどうの里
県危機対策課
ク-35
妙高村
発信
TEL:025-282-1638(直 通 )
サ-35
妙高村
2010/4/22 20:10
た、情報を受け取る側の防災関係機関も、土砂災害危
険度情報を適時確認することができるようになった。
FAX:025-282-1640(災
2010/4/22 20:10害 専 用 )
新妙高市高齢者生活福祉センター妙高の里
潟県砂防課
2010/4/22 20:10
妙高の里デイサービスセンター
TEL:025-280-5424
FAX:025-285-9724
避難情報などの発令に関しては、別途配布の「メッシュ別土砂災害危険箇所整理表」
を参考に対象範囲を検討願います
発信者
所属・氏名
砂防課・○○ ○○
4 おわりに
新
受潟
信県
者危
確機
認対 策 課
所属・氏名
発信
TEL:025-282-1638(直 通 )
受信確認時間
FAX:025-282-1640(災 害 専 用 )
新潟県砂防課
TEL:025-280-5424
発信者
所属・氏名
受信者確認
所属・氏名
FAX:025-285-9724
平成 21 年 7 月中国・九州北部豪雨による土砂災害に
砂防課・○○ ○○
よって、山口県、福岡県を中心に多くの方々が犠牲とな
受信確認時間
った。土砂災害は水害に比べ、発生の予測が難しくそ
の前兆も認識しにくい。新潟県では、今後も引き続き
図-9 実際の通知内容
「土砂災害による死者ゼロ」の実現を目指して周知・啓
発活動を行っていくとともに、関係機関と協力し、本シス
テムの利便性の向上に努めたいと考えている。
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