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災害医療(放射線障害を含む)

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災害医療(放射線障害を含む)
藤田学園第 22 回市民公開講座テキスト
*講座名*
「くらしと健康」“災害医療(放射線障害を含む)”
*講 師*
『藤田保健衛生大学病院 医療援助活動について』
■小森 義之
(藤田保健衛生大学医学部地域救急医療学教授)
『災害医療活動(日本DMAT)の現状』
■加納 秀記
(藤田保健衛生大学医学部救命救急医学講師)
『避難所における問題
■山崎 富善
災害支援ナースの活動から』
(藤田保健衛生大学病院 SHCU 看護長)
『避難所における要介護者など生活支援 災害支援ナースの活動から』
■西村 和子
(藤田保健衛生大学病院摂食・嚥下支援認定看護師)
『放射線・放射能の基礎知識「シーベルト・ベクレルってなに?」』
■小林 謙一
(藤田保健衛生大学病院放射線部)
*日 時*
平成 23 年 10 月8日(土) 13:25~16:30
*場 所*
藤田保健衛生大学フジタホール 2000
学校法人藤田学園・藤田学園医学会
プ ロ グ ラ ム
第 22 回藤田学園市民公開講座
テーマ
くらしと健康“災害医療”
(放射線障害を含む)
本会の案内(13:25-13:30)
堤
寬(医学部教授/実行委員長)
開会の挨拶
黒澤 良和(藤田保健衛生大学学長)
セクション 1(13:30-14:30) 座
演題-1
長:柘植
郁哉(医学部小児科学教授)
災害医療活動(日本DMAT)の現状
藤田保健衛生大学救命救急医学講座講師
加納
秀記
(13:30-14:00)
演題-2
藤田保健衛生大学病院
医療援助活動について
藤田保健衛生大学地域救急医療学教授
小森
義之
(14:00-14:30)
休憩(14:30-14:40)
セクション2(14:40-15:40) 座
演題-3
避難所における問題
長:庄田 基(医学部脳神経外科学教授)
災害支援ナースの活動から
藤田保健衛生大学病院 SHCU 看護長 山崎 富善
(14:40-15:10)
演題-4
避難所における要介護者など生活支援
災害支援ナースの活動から
西村 和子
藤田保健衛生大学病院摂食・嚥下支援認定看護師
(15:10-15:25)
演題-5
放射線・放射能の基礎知識「シーベルト・ベクレルってなに?」
小林 謙一
藤田保健衛生大学病院放射線部
(15:25-15:40)
休憩(15:40-15:50)
総合討論(15:50-16:30)
座 長:柘植 郁哉(医学部小児科学教授)
庄田
基(医学部脳神経外科学教授)
次回の案内と閉会の挨拶
丸田 一皓(医療科学部教授/副実行委員長)
災害医療活動(日本 DMAT)の現状
藤田保健衛生大学 救命救急医学講座
講師
加納 秀記
1995 年阪神淡路大震災で 6000 人を超える犠牲者のうち、500 人は緊急医療体制が整ってい
たら助かった可能性があるという反省から災害拠点病院の指定、DMAT(Disaster Medical
Assistance Team)の整備が進みました。
東日本大震災で、いち早く駆けつけた医療チームが DMAT でした。国立病院機構災害医療セ
ンター(東京都立川市)に事務局を置き、全国の医療機関に所属する約 900 隊、約 4500 人の医
師・看護師・病院事務・薬剤師などが登録されています。
3 月 11 日午後 2 時 46 分。その 4 分後には DMAT 本部を立ち上げ、同 3 時 05 分には災害調
査ヘリを確保依頼。同 3 時 10 分には全国 DMAT 隊員に待機要請を発信。乗用車(病院緊急車
両)を利用して被災地に入り、医療活動を始めました。岩手県・宮城県・福島県・茨城県において
約 340 チーム 約 1500 人が 3 月 22 日までの 12 日間活動を行いました。
3 月 12 日には自衛隊の航空機を利用して 82 チーム約 400 人が被災地に入りました。また、全国
27 機のドクターヘリの内、16 機が被災地に入り、DMAT と協力して患者搬送を行いました。
今回の東日本大震災では、津波に流された人のほとんどが死亡し、救命治療が必要な外傷患
者は少数でした。広域搬送して緊急処置を被災地外に搬送するケースはわずかでした。しかし、
機能不能となった医療機関に入院中の患者様をドクターヘリと協力して搬送を行いました。
現在の、日本における災害に対する災害医療の現状と問題についてお話ししたいと思います。
プロフィール
1990 年 藤田保健衛生大学医学部 卒業
藤田保健衛生大学 胸部外科入局
1997 年 藤田保健衛生大学大学院にて医学博士取得
2001 年 藤田保健衛生大学 救急部へ出向 現在救命救急医学講座へ移籍
日本救急学会専門医
2007 年 DMAT 隊員
2008 年統括 DMAT 認定
2013/3/22
阪神淡路大震災
1995.1.17
災害医療活動
(日本DMAT )の現状
初期医療体制、国の危機管理対応の遅れ
阪神淡路大震災の人的被害
阪神淡路大震災1995.1.17
1995年1月17日 AM5時45分マグネチュード7.3
の大震災は兵庫県南部を襲った。
•
•
人 的 被 害
•
死者:
•
行方不明者:
•
重症者:
10,683人
•
軽症者:
33,109人
•
全壊家屋:
6,433名
3名
閣議まで4時間
• 病院は患者で混乱
• ライフライン途絶
• スタッフ、医療資材の不足
• 瓦礫からの救助には人員不足
• クラッシュ症候群 多数発生
104,906棟
災害拠点病院とは?
阪神淡路大震災における災害医療体制の
不備、特に災害時医療を提供する医療施
設側の対応・準備が不十分であったこと
への反省から、厚生労働省の指導のもと
1996年から開始された体制。
平成19年から基幹・中核・地域と分類さ
れるようになった。
災害拠点病院の条件
24時間緊急対応し、災害発生時に被災地内の傷病者
の受け入れ及び搬出を行うことが可能な体制がある
こと。病棟、診療棟等の救急診療に必要な部門を設
けるとともに、災害時における患者の多数発生時に
対応可能なスペース及び簡易ベッド等の備蓄スペー
スがあること、原則、病院敷地内にヘリコプターの
離着陸場があること等の条件を満たし、厚生労働省
から指定されています。
1
2013/3/22
愛知県災害拠点病院
当院は拠点病院中の
基幹病院である
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)
災害派遣医療チーム
藤田保健衛生大学病院
愛知県立尾張病院
小牧市民病院
名古屋第一赤十字病院
愛知県厚生連海南病院
名古屋掖済会病院
国立病院機構名古屋医療センター
名古屋第二赤十字病院
愛知医科大学附属病院
社会保険中京病院
半田市立半田病院
愛知県厚生連加茂病院
安城更正病院
岡崎市民病院
新城市民病院
豊橋市民病院
現在は33病院が指定を受けている
地震や大事故が起きた時、訓練を受けた医師や看護師らがいち
早く現場へ赴き、命を救う機動医療チーム「日本DMAT」
主な内容は
▽メンバー資格は国が認証
▽チームは、災害発生直後から最大48時間、現場で活動で
きるよう食料も含めた装備を整える。
10年までに全国で800以上のチームが認定を受けている
DMATの意義
現場医療活動・医療機関
DMAT
派遣
救出
災害現場
トリアージ
災害拠点病院
医療救護班派遣
医療品供給
患者受け入れ
広域搬送
災害拠点病院
24時間
48時間
72時間
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)
災害派遣医療チーム
平成23年東北地方沖地震
• 2011年3月11日 14時46分
自動待機
震度6弱以上の地震
首都圏で震度5強以上の地震
大津波警報が発令したとき
厚生労働省からDMAT隊員の個人携帯に待機要請メール
・各病院の自己判断で出動
・厚生労働省からの出動要請(県単位)
• 北緯38度6分12秒
• 東経142度51分36秒
• 震源の深さ 24Km
• 規模 マグネチュード9.0
• 最大振動 振動7 宮城県栗原市
2
2013/3/22
全国の震度
•
震度 7
•
震度6強 宮城県仙台市他、福島県、茨城
県日立市、栃木県
宮城県栗原市
•
震度6弱 岩手県大船渡市、宮城県気仙
沼市、福島県、茨城県水戸市、栃木県那須
塩原市、群馬県、埼玉県、千葉県成田市
•
震度5強 青森県八戸市、岩手県盛岡市、
秋田県秋田市、栃木県日光市、埼玉県さい
たま市、千葉県浦安市、東京都板橋区、神
奈川県横浜市、山梨県
•
震度5弱 新潟県南魚沼市、長野県佐久市、
静岡県御殿場市
•
震度4 愛知県
交通規制 高速道路通行止め
• 北陸・新潟方面はチェーン規制の
可能性あり
• 首都高は完全通行止め
• 通行止め高速道路をDMATの車両
は通行可能と情報
• 通行止めの高速道路を救急車・デ
リカで走行
• 3/11
DMAT待機
• 14:46 東北地方で震度6強を確認。DMAT隊員は
自動待機で出動準備を始める
• 15:13 DMAT待機要請がかかる
• 18:35 準備完了(愛知医科大学・第2日赤の出発
を確認、掖済会病院出動準備)
• 大津波警報発令中のために中央道で東進
• 雪道対応が不十分のため、東京から参集病院の
筑波メディカルセンターを選択する
筑波メディカルセンターに到着
• 平成23年3月12日 午前3時頃到着
• 信号を含め筑波市内は半分程度停電
• ガソリンスタンドは限られた店のみ30分程度
並んでガソリン補給(ガソリンスタンドの情報
などは本部から電話連絡)
• 外環道を走行して筑波へ
水戸協同病院 患者搬送
軽症患者様を水戸医療センター
へ搬送
• 筑波から水戸への出動を依頼される
• 旧棟の水道管などが壊れ 透析・入院・診療を
続けられない
• 200名近い入院・外来透析患者を分配搬送
3
2013/3/22
重症患者を水戸から取手へ搬送
• 水戸協同病院から透析・心
不全の患者搬送の依頼
• 72kmの移動
全国 340チームが活動
活動内容
病院支援・域内搬送・広域医
療搬送・病院入院患者避難搬
送(福島原発対応)
空路移動
伊丹→花巻 49チーム
福岡→霧目 4チーム
千歳→花巻 5チーム
Drヘリ
16機/27機が活動
4
藤田学園市民公開講座
くらしと健康“災害医療”
今回の震災における藤田保健衛生大学の対応
特に医療援助活動について
藤田保健衛生大学医学部地域救急医療学
小森
教授
義之
平成 23 年3月 11 日に発生した、東日本大震災において藤田保健衛生大学病院で
は、震災直後に災害医療チーム(DMAT)の派遣、その後に医療支援チーム
の派遣、看護師の派遣、被災地からの患者受け入れ、義援金の募集などを行っ
てきました。私も震災5日後に医療支援チームの一員として、宮城県気仙沼市
に入り医療支援を行ってまいりました。現地では津波の影響が残る中、瓦礫の
中を通って避難所を回り、被災者の方々の診察をしてきました。
今回の講演では、災害医療の現状および我々の経験した医療支援チームの報
告とともに、現場で感じた今回の震災での問題点、今後起こりうる東海、東南
海地震に備えての注意点などをお話したいと思います。
略歴
1984 年 3 月
1997 年 4 月
名古屋(現;藤田)保健衛生大学卒業、消化器外科入局
藤田保健衛生大学医学部 消化器外科 講師
2002 年 10 月
2007 年 4 月
2010 年 4 月
藤田保健衛生大学医学部 消化器外科
大学病院に ER 設立し運営管理
現職
助教授
≪避難所での問題 ~災害支援ナースの活動から~≫
藤田保健衛生大学病院看護部
SHCU 病棟看護長 山崎 富善
2011 年 3 月 11 日、東北から関東にかけての東日本一帯は国内観測史上最大のマ
グニチュードを記録した巨大地震に見舞われ、甚大な被害を受けました。
9 月 10 日現在で死者・行方不明者は 1 万 9867 人。避難生活者は 47 都道府県で
約 8 万 2000 人。学校や公民館などの避難所には依然、約 6800 人が生活を続けてい
ます。
災害支援ナースとして、震災から一か月が経過した、4 月 11 日~15 日の 4 日間、
宮城県石巻市中学校体育館の避難所にて、看護活動を行ってきました。避難所では、
200 人程度が避難生活をしていまいた。
避難所での生活が一か月経過する中、余震、食事、水、お風呂、寝る場所、トイレ、
持病、新たな病気の出現、プライバシーの問題など、避難している住民の皆さんは、
様々な問題を抱えていました。断水時には水詮トイレが使用できないにも関わらず、使
用したことによりトイレはつまり、不衛生の悪化をまねいていました。慣れない避難所で
の夜間の排尿のため歩行し転倒し骨折してしまうお年寄の方や、この先どうなるのか
不安を訴える方などと接し、災害支援ナースとして、様々な問題に関わりました。
今回の市民公開座では、地域の皆さんと避難所での問題を一緒に共有し、災害時
の対応を一緒に考えていきたいと思います。
プロフィール
1995 年 3 月 藤田保健衛生大学衛生学部衛生看護学科(現 医療科学部看護学科)
卒業、同年 4 月より藤田保健衛生大学病院勤務、1999 年 12 月同病院退社。2000 年
4 月より、国際協力機構青年海外協力隊看護師隊員としてパナマ共和国に赴任、
2002 年 4 月帰国。2002 年 12 月国際協力機構国際緊急援助隊医療チーム登録。2003
年 1 月より東海大学八王子病院勤務。2003 年 5 月より藤田保健衛生大学病院勤務。
2004 年 4 月看護副主任に昇任、2004 年 11 月看護主任に昇任、2006 年 11 月看護
長に昇任。現在同病院 SHCU 病棟の看護長として勤務。
2013/3/22
東日本大震災
避難所での問題
~災害支援ナースの活動から~
2011年3月11日
東北から関東にかけての東日本一帯は国内観測史上
最大のマグニチュードを記録した巨大地震に見舞わ
れ、甚大な被害を受けました。
9月10日現在
死者・行方不明者は1万9867人。避難生活者は47都道
府県で約8万2000人。
学校や公民館などの避難所には依然約6800人が生活
を続けています。
藤田保健衛生大学病院看護部
SHCU病棟 看護長 山崎 富善
活動の概要
1.活動場所
宮城県石巻市
住吉中学校
体育館避難所
2.活動期間
平成23年04月11日
~14日 (4日間)
3.活動内容
・診察介助
・巡回診療
・避難所生活者の健康管理:
清潔ケア、褥瘡処置、環境調整、
乳児沐浴、夜間対応、血圧チェック
手洗い・うがいの啓蒙活動など
・避難者ミーティングへの参加
・心のケア:傾聴 など
1
2013/3/22
避難所での問題
・食事:栄養不足
・睡眠:熟睡困難
・衣類
・持病の悪化、
新たな病気の発症
・トイレ:断水時の使用
方法の不徹底
・風呂:震災以来入浴で
きていない
・断水、停電
・感染症の発生
プライバシーの確保が不可能
・飼い猫・犬
・認知症のある避難者との
生活
・寝たきり・足の不自由な
避難者との生活
・プライバシーが確保できない
・いつまで避難所生活が続く
のか
・支援物資の配布方法(食事・
衣類など)
・ゴミ問題
断水時のトイレ
⇓
ストレス
の蓄積
ゴミの山
毎日ゴミが
出ることに
よりすぐに
ゴミの山と
なってしま
う。
⇓
不衛生・
感染症
避難所のうち約4割
で、トイレの汚物処
理が十分にできず、
衛生状態が悪化し
ている。
⇓
感染症増加
避難所の運営
体育館を4つのブロックに分け、
さらにひとつのブロックをいくつかの班
に分けていた。
班からリーダーを選出し、リーダー
会議を毎日夕方開催。
避難所の運営
看護師や、ボランティアも参加し、意見を前向
きに取り入れていた。
ささいな問題から、感染症などの問題をなんで
も話し合い、避難所での生活ストレスが少なく
なるように自分たちで試みていた。
避難所の運営・コミュニティの確立
2
避難所における要介護者への生活支援~災害支援の活動から~
藤田保健衛生大学病院 公衆衛生看護科
摂食・嚥下障害看護認定看護師 西村 和子
3 月 11 日に未曾有の大震災が発生しました。震災発生から約 3 週間が経過した 3
月 28 日に日本看護協会から災害支援ナースとして被災地へ向かいました。
岩手県山田町は人口約 2 万人の町で、海沿いに面していることから津波の被害を
大きく受け、大部分の建物が倒壊している状況でした。3 泊 4 日の日程で 2 か所の避
難所で活動を行いました。
支援で訪れた避難所では、入れ歯を持たずに避難された方が、乾パンや缶詰、お
にぎりや菓子パンばかりの食事が食べられず食欲を落とし、体調を崩してしまうケース
や、介護が必要な高齢者を持つ世帯では、おむつや歯ブラシ、車椅子や歩行器など
介護用品が手に入らないなどの問題も生じ、避難所での生活が難しい状況が見られ
ました。また、避難所での生活は、プライバシーを守りながらも、周りの人々との協力が
不可欠となっていきます。個人のニードに合わない状況も多い中で、どのように地域の
方々と協力しあえるか、「ご近所付き合い」としてのコミュニティーを作っていくことが必
要だと感じました。
災害支援を通じて、震災に対してどのような備えが必要なのか身近な問題として私
自身捉えることができました。今後の事を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
<プロフィール>
1994 年宮崎県私立鵬翔高等学校衛生看護科卒業。その後藤田保健衛生大学病院
看護専門学校に入学。1997 年看護師免許を取得する。神経内科病棟で勤務し、
2008 年愛知県看護協会「摂食・嚥下障害看護」認定看護師教育課程へ入学。翌年
「摂食・嚥下障害看護」認定看護師資格を取得。日本摂食・嚥下学会認定士取得。現
在看護主任として公衆衛生看護科において勤務。
災害支援
避難所における要介護者への生活支援
~災害支援ナースの活動から~
3月11日東日本大震災発生後
日本看護協会災害支援ナースとして
3月28日~3月30日災害支援に参加
藤田保健衛生大学病院 公衆衛生看護科
摂食・嚥下障害看護認定看護師
西村 和子
活動場所
岩手県山田町
人口約2万人
死者:603名
行方不明者:215名
(9月16日現在)
被災地の状況
支援拠点
岩手県立山田病院
海から約1Kmの位置にあり、津波
で1階部分は流せれている状況
支援内容
山田病院を拠点に活動
避難所
山田南小学校での医療支援
福祉避難所
平安荘での介助を要する避難者の
日常生活支援
1
避難所の状況
体育館での避難生活、教室では医療チーム
が入り診療所を開設
インフルエンザやノロウィルスなどが徐々
に発生
食欲が低下し、避難所で動くことが出来な
くなり寝たきり状態になるケースも見られ
てきていた
福祉避難所では、介護用品が不足し十分な
ケアが行えない状況であった
避難所での食事
おにぎり
パン
缶詰
炊き出しでは、麺類などもあり
義歯を持たずに避難した方も多く、食べにく
さから食欲を落とす場面も見られた
水道の復旧の遅れ
介護を要する高齢者への備え
水道水が出ないことから歯磨きが十分に
行えずに誤嚥性肺炎を併発する
嚥下障害があり食事に工夫が必要な高齢
者に対しての食事の確保
寝たきりなどの状況でおむつが必要な高
齢者でのおむつなどの物品の確保
経口摂取ができず、経管栄養を必要とす
る高齢者の栄養剤の確保
お薬手帳の常備
普段からの備え
災害はいつ起こるか分からない・・・
介護に必要な物品の蓄え
(おむつ・口腔ケア用品など)
普段からの口腔機能の維持
食事・栄養剤・水分の備え
災害時のコミュニティーの想定
(自治体での対応の検討)
2
≪放射線・放射能の基礎知識「シーベルト・ベクレルってなに?」≫
藤田保健衛生大学病院
放射線部
小林 謙一
東日本大震災で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
2011 年 3 月 11 日(金)14 時 46 分、宮城県三陸沖を震源とするマグニチュード 9.0
の東北地方太平洋沖地震が発生し、その地震に連動した大津波は東日本沿岸部に
甚大な被害を与えました。加えて東京電力福島第一原子力発電所の事故によって原
子炉から放射性物質が放出され、まさに未曾有の大災害にみまわれました。かつて経
験したことのないこの大規模な原子力災害によって、国民の放射線に対する不安や関
心が高まっています。
国や各自治体では、環境中の放射線量の結果を公表したり、農作物、食肉、水など
の汚染検査をして出荷停止などを行っていますが、その単位、数値、意味を理解する
ことはなかなか難しいことです。
放射線は見たり感じたりすることができません。人は未知のものに対しては言い知れ
ない不安を覚えます。もともと放射線は常にわれわれの身の回りに存在し、さまざまな
分野で広く利用されてきているものですが、一般には理解が広まってはいません。
放射線や放射能を正しく恐れるためには、正しい知識を持つことが必要です。
今回の講演では、放射線を理解していただくために基礎的な内容を多く取り扱いま
す。市民の皆様に少しでも放射線について知っていただき、今後の適切な対応への
一助となれば幸いです。
略歴(プロフィール)
1991 年 3 月 藤田保健衛生大学衛生学部診療放射線技術学科卒業。同年、藤田保
健衛生大学病院放射線部入職。医療被ばくの解析・防護の研究に携わる。公益社団
法人日本放射線技術学会中部部会理事。社団法人日本放射線技師会 放射線管理
士、放射線機器管理士。
2013/3/22
第22回 藤田学園市民公開講座
2011.10.8
放射線の基礎
「シーベルト・ベクレルってなに?」
藤田保健衛生大学病院
放射線部 診療放射線技師
小林 謙一
放射線と放射能の違い
日本放射線技師会
福島県から
避難所などでの住民を対象とした
被ばく検査への協力要請を受け、
放射線サーベイヤーチームを結成、
福島県に派遣。
当院においても、
敷地内にて汚染検査が行われた。
日本放射線技術学会
公的機関からの情報を整理し、
放射線に対する不安や技術的対応に
ついての統一した情報提供を行う。
市民公開講座を各地で開催
平成23年6月 4日(土) 東京
7月10日(日) 福島
http://www.fukui-rt.jp/
放射線の種類
ほたる(放射性物質)
ほたるの光る能力(放射能)
ほたるの光(放射線)
「放射線が漏れる」
「放射能が漏れる」
診療放射線技師の活動
ほたるの光がカゴから漏れる
ほたるがカゴから逃げる
アルファ線
(α)
原子核から放出される粒子
線。正体はヘリウムの原子
核。
ベータ線
(β)
原子核から放出される粒子
線。正体は電子。
ガンマ線
(γ)
原子核から放出される高い
エネルギーの電磁波。
エックス線
(X)
原子核外から放出される高
いエネルギーの電磁波。
中性子線
核反応の際に原子核から放
出される粒子線。正体は中
性子。
http://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/より改変
放射線の性質
放射線の性質
「新学習指導要領」中学生用副読本より
放射線の性質(作用)には一般的に次の4つがあります
①物質を透過する(透過作用)
②物質を透過する際、
原子や分子をイオン化(電離)することができる(電離作用)
③フィルムを感光させる(感光作用)
④一部の物質にあてると蛍光を発する(蛍光作用)
アルファ(α)線
ベータ(β)線
ガンマ(γ)線
エックス(X)線
中性子線
1
2013/3/22
放射性物質から放出される放射線の特徴
放射能の性質
半減期:放射能が半分の量になる時間
放射線は ON/OFFが可能
機械から放出
される放射線
(
放
射
能
の
量
)
放射性物質の種類
最初の量
半減期
ヨウ素131
8日
セシウム137
30年
1/2
放射線は 出続ける
1/4
1/8
放射性物質から放出
される放射線
1/16
半減期
「内部被ばく」と「外部被ばく」
半減期
半減期
(時間)
半減期
「内部被ばく」の測定
内部被ばく
外部被ばく
空気
食物
身体の中にある
放射性物質から
放射線を受ける場合
防護不可能
体の外から
放射線を受ける場合
被ばく
「外部被ばく」の測定
線量測定器の外観
GMサーベイメータ
(汚染検査計)
ホールボディカウンタ
防護可能
(浜岡原子力発電所)
放射線・放射能を表す単位
放射能の量
放射線の量
身体への影響
ベクレル
(Bq)
グレイ
(Gy)
シーベルト
(Sv)
1秒間に放射線を
出す能力
物質に吸収された
エネルギー
(吸収線量)
人体への影響を
考慮した線量
(実効線量)
お家にあるお金
もらったお金
反応
シンチレーションサーベイメータ 電離箱式サーベイメータ
(空間線量計)
(空間線量計)
比較的安価な放射線測定器
独立行政法人国民生活センター(平成23年9月8日)
消費者へのアドバイス
(1)食品・飲料水等が暫定基準値以下であるかの
測定はできない。
(2)機器の示す値を直ちに信頼することは避ける。
うれしい
かなしい
影響を考慮して数値化
2
2013/3/22
放射線はもともと自然の中にある
自然放射線の量
一人あたりの年間線量(世界平均)
2400 マイクロシーベルト
原発事故などがなくても、私たちはもともと自然の中から
放射線を浴びています。
これを「自然放射線」といいます。
体内
建物
宇宙線
大地
国連科学委員会(UNSCEAR)2000年報告書より
日本の自然放射線
世界の自然放射線
地域
日本平均(年間)
990マイクロシーベルト
990以下
1000~1090以下
1100以上
最も高い場所
最も低い場所
岐阜県
神奈川県
1190
810
約1.5倍
単位:マイクロシーベルト/年
岐阜県
神奈川県
(国連科学委員会1993年報告書より)
平均値
最高値
日本との比較(倍)
ラムサール(イラン)
10200
260000
24
ガラパリ(ブラジル)
5500
35000
13
ケララ(インド)
3800
35000
9
陽江(中国)
3500
5400
8
香港
670
1000
1.6
フランス
600
2200
1.4
イタリア
500
4380
1.2
世界平均
500
ドイツ
480
3800
1.1
日本
430
1260
-
アメリカ
400
880
0.93
オーストラリア
370
1340
0.86
デンマーク
330
450
0.77
(単位:マイクロシーベルト/年)
資源エネルギー庁「原子力2010」
食物に含まれる放射能
放射線の人体への影響
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2013/3/22
放射線の人体への影響
放射線の人体への影響
1000
これまでの研究の結果、
およそ100,000マイクロシーベルトまでの線
量では、放射線とがんとの因果関係が明確
でなく、放射線によりがん死亡が増加すると
いう証拠がありません。
万
900万
800万
700万
局
所
被
ば
く
全
身
被
ば
く
600万
500万
400万
300万
このことにより、
100,000マイクロシーベルトが、国際的に安
全の目安となっています。
200万
100万
50万
10万
マイクロ
シーベルト
(μSv)
ICRP Publication 60 他より
暫定基準値算定の根拠
食品中の暫定基準値
国際放射線防護委員会(ICRP)
食品衛生法の規定に基づく食品中の放射性物質に関する暫定規制値
2007年勧告
緊急時においては、
20~100 ミリシーベルト
(20000~100000マイクロシーベルト)
の範囲で一般の人々を
防護するよう勧告している。
ICRPの声明文
ICRP ref: 4847-5603-4313
Fukushima Nuclear Power Plant Accident
March 21, 2011
国は、下限値
20000マイクロシーベルト
を採用して、防護対策に
あたっている。
環境放射線量(愛知県ホームページより作成)
放射性
ヨウ素
放射性セ
シウム
暫定規制値(Bq/kg)
水
300
米
成人の
1日摂取量
200
2.5ℓ
500
450g
放射性
ヨウ素
放射性
セシウム
被ばく線量(μSv)
16.5
6.5
2.93
牛乳・乳製品
300
200
90g
5
0.23
野菜
2000
500
300g
13.2
1.95
魚
2000
500
80g
3.52
0.52
肉
2000
500
100g
4.4
0.52
小計
38.21
12.65
合計すると、1日に50.86 μSv
一年では、18560μSv≒おおよそ20000μSv
年間20000マイクロシーベルトを基本に作られている。
まとめ
名古屋市北区 地上34m
1時間あたりの線量(マイクロシーベルト/時)
放射線は、有史以前から地上に存在しているも
ので、私たちはもともと放射線を浴びながら生活し
てきました。東海地方においては、福島第一原子
力発電所の状況が大きく変化しない限り、日常生
活を送る上で以前と変わることはありません。
発表される数値や単位に気を付け、冷静に行動
することが必要です。
正確な情報を入手するのに役立つホームページ
平成23年度
首相官邸災害対策ページ http://www.kantei.go.jp/saigai/
放射線医学総合研究所 http://www.nirs.go.jp/index.shtml
日本放射線保健物理学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jhps/
日本放射線技術学会防護分科会 http://www.jsrtrps.umin.jp
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