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Vol.59 - PVTEC 太陽光発電技術研究組合

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Vol.59 - PVTEC 太陽光発電技術研究組合
編 集 後 記
● 東日本大震災から早くも半年以上が経過しました。復旧もなかなか進まず、
被害にあわ
れた方々が大変ご苦労されていることが報道され、心が痛む思いです。震災で明らかに
なった日本のエネルギー問題は、太陽光発電に関わる技術者、研究者にとって大変重い
課題となっています。
第21回技術交流会は、総会での緊急パネル討論(「太陽光発電業界は日本の直面し
ているエネルギー問題にどのように立ち向かうのか」)
を踏まえて、RITEの山地所長をお
招きしエネルギー問題の基調講演をいただくとともに、
これからのPVの大量普及に向けた
電力システム、
スマートコミュニティなどの社会システムについてパネル討論などで議論さ
れました。
当日の交流会の要旨を紹介します。
● 第59号の巻頭には、
METI新エネルギー対策課 村上課長から、
太陽光発電の普及
について8月に法案成立した新しい「再生可能エネルギーの固定買取制度」
とその意味、
それを活用するための課題等についてご執筆いただきました。
この固定買取制度は日本
の太陽光発電の復興の起爆剤になると期待されています。
● また、
昨年度からPVTECがNEDOから受託して進めている薄膜シリコン太陽電池コン
ソーシアム研究について高塚専務理事から研究の推進にあたるまでの経過、
決意を述べ
ていただきました。
この他、
デュポン㈱の仲庭氏には今秋のEUPVSECでの報告(信頼性研究やこれから
の認証試験の動きを中心に)、
コラムでは、長州産業㈱岡本社長と名城大学山中教授に
ご執筆いただき、
さらに、
大規模なPVシステムの導入の事例として宮古島のシステムやつ
くばにあるLIXIL 岩井工場の紹介記事と、
かなりにぎやかな会誌となりました。
● PVTECは、現在、組合員が増加し続けています。数年前のモジュールの研究開発を
中心にした技術研究組合から、太陽光発電技術全般に対し、広いネットワークを持つ組
合に成長してきています。相変わらず続く円高、
世界的な生産過剰によるモジュール価格
の急落等、
日本の太陽光発電産業は、厳しい競争にさらされています。
この組合のコミュ
ニティを十分に活用し、
力をあわせ、
日本の苦境から脱出しましょう。
(Y.Y記)
2011
Vol.59
11月号
目 次
羅針盤 太陽光発電の普及に向けて 経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課 課長 村上 敬亮
2
特集 薄膜シリコン太陽電池コンソーシアムによせて
太陽光発電技術研究組合 専務理事 高塚 汎
4
交流会報告
<第21回技術交流会報告> 太陽光発電技術研究組合
6
出張報告
<第26 回PVSEC 出張報告>
仲庭晴彦
(デュポン㈱)
12
見学会報告
<宮古島PV 諸施設見学記>
太陽光発電技術研究組合
15
<Lixilつくば Solar Power 見学記>
太陽光発電技術研究組合
18
コラム 産官学
変換効率世界最高水準の太陽電池
長州産業株式会社 代表取締役社長 岡本 要
太陽電池に夢を託して
名城大学理工学部電気電子工学科教授 山中三四郎
ニュース
2011 Vol.59 11月号
古紙配合率100%再生紙を使用しています
21
委員会・分科会活動報告
事務局
22
編集後記
事務局
24
平成23年11月15日 発行所:太陽光発電技術研究組合
発行人:善里順信
〒102-0074 東京都千代田区九段南4丁目7番13号 大島ビル5階
Tel 03-3222-5551
印刷所:(株)
サンワ
20
Fax 03-3222-5552
PVTEC 太陽光発電技術研究組合
Photovoltaic Power Generation Technology Research Association
羅針盤
太陽光発電の普及に向けて
経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課 課長 村上 敬亮
日本の一次エネルギー供給は、その 8 割超が化石燃料であり、ご存じのとおり、その
ほとんどは海外から輸入しております。このような中で、CO2 の排出量が少なく、輸入
に依存しない再生可能エネルギーには、新たなエネルギー源として期待されており、平
成 22 年(2010 年)6 月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、2020 年までに一次
エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの比率を 10% にするという高い目標が掲
げられました。
また、日本は、太陽光発電をはじめ風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エ
ネルギーに係る産業技術の分野で国際競争力を有していることから、エネルギー政策や
環境政策としての重要性に加え、新たな産業や市場を創出し、そしてこれらによる雇用
創出が期待されるなど、産業政策としてもその重要性が注目されるところとなっていま
す。
特に、本年 3 月の東日本大震災以降では、原子力の安全性に対する懸念、あるいは電
力需給が逼迫するとの懸念の中で、再生可能エネルギーに対する期待は更に大きくなっ
てきています。
政府部内でも、震災以後の環境変化を踏まえて、中長期的なエネルギーの方向性につ
いて見直しの議論が進められているところでありますが、再生可能エネルギーには引き
続き大きな役割が期待されております。
最近、大変注目されております「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、経済
産業省としても一年以上も前から取り組んできたものであります。2009 年 11 月に経済
産業省に「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」が設置され、
関係者からのヒアリングやコスト試算、また海外の調査等も含めて検討が行われ、2010
年 7 月に制度の大枠が公表されております。この大枠に沿って、同年 9 月から総合資源
エネルギー調査会の買取制度小委員会で制度の詳細について検討が行われ、ちょっと不
幸なタイミングですが、本年 3 月 11 日の午前に閣議決定されております。その後、本
年の通常国会で法案が提出され、国会審議の中で一部法案の修正が行われた後、8 月に
2
法案成立となりました。
新制度では、新たに太陽光発電をはじめ風力、中小水力、地熱、バイオマスといった
再生可能エネルギーによる発電を行う場合に、その発電された電気を固定価格で買い取
ることにより、投資判断の際の不確実性を低減し、発電設備への投資を促そうとするも
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のです。なお、新制度においても、住宅用太陽光発電については、余剰電力買取が維持
されることとなっております。
新制度の買取価格と買取期間については、再生可能エネルギーの種類や、設置形態、
規模に応じて、毎年、関係大臣(農水大臣、国交大臣、環境大臣、消費者担当大臣)に
協議した上で、中立的な第三者委員会(委員は国会の同意を得た上で任命)の意見に基
づき制度の見直すこととなっておりますが、集中的な再生可能エネルギーの利用拡大を
図るため、法律の施行後の 3 年間は、買取価格を定めるに当たり、再生可能エネルギー
電気の供給者の利潤に特に配慮されることとなっております。
買取りに要した費用は、電気料金の徴収時にサーチャージとして同時に回収するス
キームとなっており、地域間でサーチャージ単価が異なるのを避けるため、地域間調整
を行い全国一律になります。
このようにして、普及を図る再生可能エネルギーの最大の課題はその発電コストが高
いことです。例えば太陽光発電の場合、1kWh あたりの発電コストは、従量電灯料金に
比べて約 2 倍という試算です。これを解決するため、量産効果による太陽光発電設備の
価格低下や、生産方法の改善、施工方法の見直し、太陽電池の光電変換効率の向上等に
よって太陽光発電の発電コストを下げることが考えられております。
太陽光発電設備の価格低下については、導入補助金や発電した電力をコストに見合う
価格で買取る制度を取り入れるといった施策によって導入しやすい環境をつくり、導入
が促進されることによって市場規模が拡大して太陽光発電設備の生産量も増加する。生
産量の増加によって、量産効果による価格低下するといった相乗効果が期待できるわけ
であります。これを狙って上記のような買取制度の策定や住宅用太陽光発電の導入補助
金制度を行ってきております。
また、発電効率の向上や、標準化による品質向上等については、経済産業省から直接
あるいは NEDO を通じて、様々なタイプの太陽電池の研究開発や品質評価方法の研究
開発、実証研究等の事業を推進しております。品質評価手法の標準化研究は、短期的な
コスト低減のみならず、製品や施工の質の向上、安定化等により、長期的な視点からの
発電コストの低減に資するものであると考えております。
欧州市場の沈静化等の中で、日本の太陽光発電は、現在、技術開発、導入市場の両面
とも、世界から注目されております。日本の成功が世界の太陽光発電の導入促進に大い
に貢献するといっても過言ではないと思います。経済産業省としても、8 月に成立した
再生可能エネルギー全量買取法を「動く道具にする」よう努力してまいりますので、産
業界の皆様には、例えば、住宅用太陽光発電をエネルギー管理システム、蓄電池ととも
に新しい「三種の神器」として、家電のような普及拡大が実現されることを目指すとい
うような目標、戦略をたてて普及拡大に励んでいただきたいと思います。
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特 集
薄膜シリコン太陽電池
コンソーシアムによせて
太陽光発電技術研究組合 専務理事 高 塚 汎
1.はじめに
平成 22 年 7 月から太陽光発電研究組合(PVTEC)を受け皿として産学官によるコンソー
シアムが形成された。本コンソーシアムの目的は、最近の急速な日本の太陽電池産業の世界
シェアの低下が著しい状況に鑑み、国際競争力を保持し、早急にシェア拡大を目指すことに
ある。特に、薄膜シリコン太陽電池は、世界に先駆け日本が世界をリードしていた状態から
は憂慮すべき現況である。打開策として、NEDO、産総研殿のご支援を戴き、オールジャパ
ンの研究体制、即ち、集中研方式を取り、産総研殿に加え、日本国内の全ての薄膜シリコン
太陽電池製造企業 5 社(三洋電機㈱、シャープ㈱、㈱カネカ、三菱重工業㈱、富士電機㈱)
および、装置メーカである東京エレクトロン㈱が一堂に結集した研究組織を構成し、産総研
つくば中央地区に PVTEC 研究所を設立し、その使命を果たしていく事になる。また、6 大
学(東北大、東京工大、大阪大、九州大、岐阜大、金沢工大)にも参加戴き、新しい視点か
ら薄膜シリコン太陽電池を抜本的に見直し、現在市場を席巻している CdTe 型、中国製結晶
シリコン太陽電池に対して競争力のある革新的なデバイスおよびプロセス、ひいてはシステ
ムを開発し、その暁には商用電源として可能な低コストかつ高効率な太陽光発電システムを
構築する。今後は、機会があるごとに本コンソーシアムの成果報告を紹介する事で広く有識
者のご意見を承っていく事としたい。
2.PVTEC 研究体制について
産総研つくば中央地区内に設立した PVTEC 研究所は PVTEC 職員の担当部長、研究員、
産総研研究員、各社からの PVTEC 出向者および派遣研究員総勢数十名の研究体制で取り組
んでいる。
(写真1,
2)この様な体制を構築する事で、各社間の共通課題を少ない投資で効
率的かつ迅速に解決すると共に各社が保有する優れた個別的な要素技術を融合する事でより
高いレベルの統合化技術を創生し、単独企業では対応困難な共通課題の解決を目指して行く。
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写真1 2-6 棟外観 大面積製膜技術開発拠点
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写真2 2-13 棟外観 高効率化技術開発拠点
3.大面積・高速製膜技術について
今回は、早期に研究の成果を挙げるべく、国、各社の期待に応えるため関係者が会社の枠
を越え一丸となり、切磋琢磨し取り組んでいる一例を紹介したい。
薄膜シリコン太陽電池の製造技術の中核を担う装置は、プラズマ CVD 技術であることは
周知のことである。幸いな事に、今、世界で製造されている薄膜シリコン太陽電池のモジュー
ルサイズは略 1 ~ 1.1m × 1.3 ~ 1.4m に集約されており、このサイズをカバー出来、更に将
来の生産性向上(スループット向上)を狙ったスケールアップをも念頭に置いた研究設備が、
平成 18 ~ 21 年度までの NEDO 殿の「高速・大面積製膜技術開発」で供用されていたので、
この開発を担当していた会社の協力を得て PVTEC つくば研に移設し、現在は、試験開始に
向け調整運転中である。
本研究設備は、世界の製造メーカが開発を目指している超高周波(60MHz)をプラズマ
電源に使用し、高品質のシリコン膜を高速で
製膜できる能力があり、且つ、大面積基板
(1.5m2)に適用出来る調整機能を有している。
写真 3 は、PVTEC つくば研で運転中の外観
写真を示している。
この設備を各社が交互に使用して、高効率
の多接合薄膜シリコン膜を形成出来、各社の
開発目標を一日でも早く達成できることを目
論んでいる。大いに活用し、各社の目指す事
業発展に早く貢献できる様、切に念願する次
写真3 G5 サイズ CVD チャンバー
第である。
4.まとめ
これまでの国プロの開発体制では、各社が個別に取り組み、研究者間の活発な意見交換を
行い難い環境であったことは否めない。今後は、同じ研究設備を使い、研究成果についても
具体性、共通性のあるデータを持ち寄り、実のある議論が可能となる。
再度、いち早く、日本が世界のリーダとして薄膜シリコン太陽電池事業の環境を整えられ
るよう、NEDO、産総研殿の強力なご支援を戴き、また、各大学の先生方のサポートを受け
ながら、
関係各社一同とともに努力を重ね、必ずや初期目的を達成するという強い信念を持っ
て取り組んで行きたい。
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交流会報告
第 21 回技術交流会報告
太陽光発電技術研究組合
2011 年 8 月 17 日
(水)大阪市心斎橋のホテル日航大阪にて、第 21 回 PVTEC 技術交流会
が開催された。交流会の企画時点では、夏時の首都圏の電力事情が苦しい見通しであったた
め、前回(第 20 回交流会)と同じ関西での開催となった。また、交流会の全体の企画も、3.11
の東日本大震災と原発事故を踏まえ「日本のエネルギー問題と太陽光発電」、「太陽光発電の
大量導入に対するエネルギーネットワークの在り方」をテーマとした。これは、5 月 20 日
(金)
東京 ホテルメトロポリタンエドモントで開催した緊急パネル討論会「太陽光発電業界は、
日本の直面しているエネルギー問題にどのように立ち向かうのか」
(戦略企画部会、技術交
流部会の共同主催)で議論された課題で、これを引き継ぐ内容になった。
前回に引き続きホテル日航大
阪での開催となった。
交流会 会場風景(参加者は約 110 名)
冒頭に、技術交流会部会長の挨拶、戦略企画部会長による本年度の企画部会活動方針、お
よび、PVTEC が 4 月から開始したアジア基準認証支援事業に関する報告を行った。
6
基調講演・特別講演
基調講演には、関西に拠点のある地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長 山
地憲治氏から「フクシマ事故後のエネルギー展望」と題して、福島原子力事故と今後の日本
のエネルギー政策について当面の対応から長期的なエネルギー対策の再構築まで広範なお話
をいただいた。また、
低炭素化社会に向けた政策、各種エネルギーを統合して制御するスマー
トコミュニティのコンセプト、電力における地産地消の考え方、電力システムと自動車の結
合による新しい社会システムの可能性などの考えが示され、その中で、太陽光発電は、他の
再生可能エネルギー技術に比べ、スマートグリッドなどへの活用などグリーンイノベーショ
ン成長戦略と結びつけやすく、付加価値が高いと考えられ、その検証が急がれる、さらに、
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第21 回 PVTEC 技術交流会 予稿集目次・プログラム
1. 挨拶
技術交流部会長 山谷 宗義
戦略企画部会の今後の取り組み 戦略企画部会長 岡本 昌也
International PV module QA Forum 報告
PVTEC 山中 崇己
2. 基調講演
13:00 ~ 14:10
フクシマ事故後のエネルギー展望
地球環境財団法人地球環境産業技術研究機構理事・研究所長 山地 憲治
3. 特別講演
14:10 ~ 17:00
宮古島メガソーラー実証研究のとりくみ
沖縄電力㈱ 研究開発部技術開発グループ 渡久地政快
4. 特別講演
14:35 ~ 14:35
スマートグリッドから PV システムに向けて
独) 新エネルギー・産業技術開発機構 スマートコミュニティ部 主任研究員
5. パネル討論
諸住 哲
15:30 ~ 17:00
「2020 年の PV28GW 導入の実現を目指したエネルギーネットワークは
どうあるべきか」
司会 : 京セラ㈱ 山谷 宗義
パネリスト :
地球環境財団法人地球環境産業技術研究機構理事・研究所長
山地 憲治
独) 新エネルギー・産業技術開発機構 スマートコミュニティ部 主任研究員
諸住 哲
(話題提供 各 10 分)
三洋電機株式会社
エナジーデバイスカンパニー大型蓄電事業部副事業部長
花房 寛
京都府政策企画副部長
重松 千昭
株式会社東芝 社会インフラシステム社
電力流通システム事業部スマートグリッド統括推進部長
高木喜久雄
関西電力株式会社 企画室 次世代電力系統戦略プロジェクトチーム 部長
6. 講評 藤井 裕三
17:00 ~ 17:20
太陽光発電技術研究組合 理事長 桑野 幸徳
長期的な取り組みとしては、
エネルギーと地球温暖化政策を一体とした政策の構築が必要で、
そのためには今の温暖化対策目標の改正をはじめに決めなければならないとした。取り組み
の順序としては、既存原子炉の運転、省エネを先行させ、次に新再生可能エネルギーの最大
導入、強靭なエネルギーシステムの構築などを進める必要があることなどが述べられた。
特別講演は 2 件用意された。沖縄電力の渡久地氏は、宮古島メガソーラー実証研究の状況
を紹介した。新たに構築しているグリッドは 4MW の太陽光発電パネル、4MW の風力発電、
4MW の NAS 電池と既存のディーゼル発電機、ガスタービン発電で実証研究設備が構成さ
れている。実証データの蓄積は開始された段階であるが、短周期の出力変動、周波数変動の
抑制効果の実証データが蓄積されつつあることが示された。
離島ではディーゼル発電に頼ることが多く、コストが高く、CO2 削減に難がある。本マイ
クロシステムの研究は、大規模太陽光発電所、スマートグリッドの基本的形態となっており、
各方面から関心が持たれている。
NEDO スマートコミュニティ部の諸住氏からは、NEDO のこれまでの集中連携型太陽光
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発電システム実証研究の活動経過から、現在、社会システムのニーズ等を組み込んだスマー
トコミュニティの実証、さらに、PV が関係する国際実証実験についての紹介がなされた。
NEDO の実証研究では群馬県太田市での集中連係型の研究で単独運転検出の標準化など
で世界的に先行していたが、世界は今やメガソーラーからギガソーラーに移り始めている。
太陽光発電システムも、CdTe 薄膜の大型プラントから、地中海ソーラープラン、デザーテッ
ク計画など直流送電、太陽熱発電との競争など大きく展開している。NEDO は系統連系関
連技術の国際的標準化をめざし、米国ニューメキシコ、フランスリヨン、米国ハワイ、中国
共青城などでそれぞれの地域に適したスマートコミュニティの実証研究を進めている。
パネル討論
パネル討論では京セラの山谷氏の司会のもとで、パネリストに花房氏(三洋電機㈱)、重
松氏(京都府)
、
高木氏(㈱東芝)、藤井氏(関西電力㈱)と講演者の山地氏と諸住氏に加わっ
ていただき、それぞれの機関がパネル討論のテーマである「2020 年の PV28GW 導入」を目
指して取り組んでいるネットワーク研究や、それに向けた課題について議論された。
花房氏からは 1MW のメガソーラーと 1.5MWh のリチウムバッテリーシステムを高度に
統合したエネルギーマネージメントシステム(三洋加西グリーンエナジーパーク)で創エネ、
畜エネ、省エネを推進する研究開発の状況が紹介された。特に、小型の円筒型リチウムをモ
ジュール化した蓄電用標準電池モジュール、その充放電を制御するバッテリーマネージング
システムで太陽光発電と高度の統合したシステムを構築できる。
京都府の重松氏からはけいはんな地区で、自治体・住民・企業が共同で実施している「次
世代エネルギー・社会システム」実証プロジェクトの紹介がなされた。経産省が全国 4 か所
で進めているスマートコミュニティ実証研究モデルの一つである。平成 22 年度にシステム
設計が終わり、本年度から設置、現地実証が進められている。プロジェクトのコンセプトは
電気、ガスだけでなく交通系・生活系まで含め、街全体のエネルギー消費を対象に一体とし
て CO2 排出をマネージするものである。地区内の住宅や工場等には多くの太陽光発電が導
入されるが、定置用の蓄電池、電気自動車、パワーコンディショナーの最適エネルギー管理
システム、それらのデマンドレスポンス、各ポイントでのインセンティブの付与の仕組み等
の考え方が示された。
パネル討論には、基調講演の山地氏(右)にアドバイザーとして参加いただいた
左は司会の山谷氏(京セラ㈱ 技術交流部会長)
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パネル討論 右から 藤井氏(関西電力㈱)、高木氏(㈱東芝)、重松氏(京都府)
花房氏(三洋電機㈱)、諸住氏(NEDO)の各氏
東芝の高木氏からはこれからの社会はどうあるべきかから掘り起こし、日本に適したエネ
ルギーのベストミックスを構築することが 2030 年に向けた目標になる、これにはエネルギー
セキュリティ、産業の国際競争力、コスト負担の在り方、地球温暖化などを考慮して検討す
べきであるとの考えが示された。
また、必要な技術は、エネルギー供給力、日本はメガソーラより住宅が中心であるが、蓄
電池とそれ自体の組み合わせ等のベストミックス、EVの蓄電の扱い、日本の東西の系統の
連携に必要な 50Hz/60Hz の変換と送電などの技術課題が提起された。
さらに、有効電力の需要(消費)と供給(発電)のバランスをリアルタイムで制御し、電
力の安定供給を図るマイクロ EMS など東芝が進めているスマートコミュニティの研究の紹
介があった。
関西電力の藤井氏からは同社の太陽光発電の大量導入に向けた取り組みが紹介された。
課題としては、需要の少ない時の供給過剰、日照変化に伴う出力変動による周波数変動、
逆潮流による電圧上昇などである。対応として現在設置されての太陽光発電所の出力データ
の蓄積解析からはじめており、この中でならし効果 ( 多数地点の電力を合成することで、出
直変動率を軽減する効果 ) を確認している。出力抑制では PCS にカレンダー機能を具備さ
せることや、さらにその情報をリモートで制御する方向、ニッケル水素蓄電池を使った需給
制御法などを検討している。又、家庭用 PV の大量導入に向けて配電線レベルでの局所的な
変動に対しても影響の評価をすすめている。これには通信ネットワークを使った高度な配電
系電圧制御技術が求められる。
2020 年に 28GW の導入目標であるが、系統等に対するこれらの本格的な障害が発生する
のは 10GW を超えた時からと考えられており、その目安である 2015 年ころまでに課題解決
に向けた研究開発に取り組んでいることが紹介された。
討議・議論から
会場からの質疑では、電力会社の保有している揚水発電の活用、太陽光発電導入への可能
性、さらにはスマートグリッドでのエネルギー供給の安全性、特に情報ネットワークの信頼
性の問題について質疑応答と議論があった。インターネットの活用から専用回線の利用で信
頼性はあがるが、
最終的には需要サイドに安全性を持たせることが必要との意見がだされた。
システムに使う蓄電池の役割、種類、寿命、使い方やコストについても議論がなされた。
系統につかうための規格、仕様はまだこれからの問題である。
逆潮流における需要家側のパワコンのカット(抑制)についても議論があった。システム
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の普及には重要であるが、当面は、500kW 以上が対象となる模様。国が対策コストを負担
する制度があり、系統側の制御でも対応の余地があるとされた。
この他、パネリストから出された課題は以下のとおりである。
・ システムに電池の役割は重要だがまだコストが高い。普及のために国の助成制度などの
仕組みがいるのでは(花房氏)。
・ スマートコミュニティでは情報の扱い方、責任、広域で管理する行政基幹がどこまで踏
み込むか今後、議論したい(重松氏)。
・ 技術的にはかなり実現可能な段階に来たが社会的仕組みやコストの追い込みが課題であ
る。補助がなくなっても役立つ仕組みがいる。蓄電池については関心が高いが、EV の
電池と定置化し全体に電力系統に使う電池、それらを区別して論じ、補助金なしで進め
ることが重要である。
(高木氏)
・ 日本の電力系統は震災の影響で一挙に脆弱と思われるようになったが、決してそうでな
い面がある。今回の事態を踏まえ、震災で発生したいくつかの個別の問題について再評
価することも必要である。(藤井氏)
・ エンジニアはもっと文系の知識、政治を知るべき。欧州各国のエネルギー政策は必ずし
も各国の技術で決まっているわけでない、政策決定には、歴史的なバックを含め理解す
ることも大事である。
(諸住氏)
パネル討論の最後に山地氏から下記のコメントをいただいた。
パネル討論でバッテリーの使い方の議論が多く参考になった。問題を整理し、ビジネスモ
デルをたてて考えるべき。移動体に使うものを定置用に使う、一方、常時使いながら非常時
にも使えるようにしなければならないなど、新しいコンセプトの使い方である。
ベストミックスについて、あるところで財務諸表から電源別のコストを出して比較する議
論もあるが、単なるコストで決めるものでない。各々の電源には特徴がある。その特徴を利
用して電力の需給を時事刻々調整するもので、それをシステムとしてどのように組み合わせ
て使うかの中でコストを出していき、最小化するのがベストミックスである。必ず解がある。
当然、社会科学的な考えもあわせ議論されねばならない。
司会の山谷氏から、この討議は、PVTEC としての戦略企画部会などで継続して議論して
いくことが述べられた。 10
理事長報告
交流会の最後に桑野理事長から交流会全体の総括がなされ、また、
「東日本大地震後の太
陽光発電の果たす役割」について講演をいただいた。
大震災と原発事故から、我々はエネルギー供給体制を大規模集中型型から柔軟性の高い分
散型供給体制へ、地産地消することの必要性を学んだ。また、再生可能エネルギーをより強
力に推進することが求められている。その中から、太陽電池への期待が大きくなってきた。
我々は太陽光発電の実力を再確認しなければならない。現在、電池の性能も上がり、個人
住宅でも 1 戸あたり 4kW を導入している。この個人住宅の 80% に太陽電池を設置すれば、
864 億 kWh で国内総電力需要の 10% になる。これに集合住宅、事業所、公共施設、産業施
設の屋根を使い、集中発電用のメガソーラーを加えれば、2400 億 kWh になり、国内総需要
電力量の約 30% を賄うことができる。十分、国内の基幹エネルギーに成りえる。更に、ピー
ク電力時に多くの電力を得る有効性もある。大量の導入にも出力制御機能の付加、スマート
グリッドへの取り組みなどで実現できる見通しを得ている。我々太陽光発電事業の関係者は
このことをよく理解して頑張ろう。
メディアの一部には、原子力発電 1 基分の電力量を得るのに、発電パネルを東京都の山手
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線の内側の面積に敷き詰めなければならないなどと報道されているが、我々は、土地でなく
山手線の内側の建物の屋根を使うことを主張しているのである。このような間違った印象を
与えるミスリードを許してはならない。
なお、当日、桑野理事長の最新の著作「太陽電池はどのように発明され、成長したのか」
-太陽電池開発の歴史-オーム社が会場内部で販売された。本著作は、桑野理事長が日本太
陽エネルギー学会誌に 2 年にわたって連載した同名の論文を元に執筆されたものである。購
入者には自筆のサインが入れられた。当日販売予定の 40 部は完売し、販売金はすべて原発
事故被害の義捐金として送付される。
当日、桑野理事長執筆の「太陽電池はどのように発明され、成長したのか」
が、執筆者のサイン入りで販売。売り上げは原発被災地区に送られる。 11
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出 張 報 告
第 26 回 PVSEC 出張報告
仲庭晴彦(デュポン㈱) NEDO 委託調査研究 高信頼 PV モジュール分科会
写真引用:PVTEC HP
平 成 23 年 9 月 5 日(月)か ら 9 日
(金)の 日 程 で( 展 示 会 は 8 日 ま で )
、26th European
Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition(26th EU PVSEC)がドイツのハン
ブルクで開催された。
(ドイツ語読みではハンブルグとは発音しない)
ハンブルクはドイツの北西部に位置し、中世よりハンザ同盟の中心的役割を果たした都市
の一つでエルベ川沿いの港湾商業都市として発展し、現在もドイツ第一の港湾規模で、ドイ
ツ最大の物流拠点となっている。そのためか、交通やホテルなどは充実しており、今回の展
示会の会場となった Hamburg Messe の展示会場総面積は 10.7 万 m2 もあり、国際的な展示
場としては十分な広さと利便性があった。ちなみに幕張メッセの展示面積は 7.2 万 m2 であり、
ハンブルクメッセは幕張の約 1.5 倍ある。
出展社は、37 カ国から 999 社(昨年は 963 社)あり、ドイツが 45%、次に中国の 14%、
USA の 7% と続き、
日本は 14 位の 1% であった。来場者総数は 103 カ国から 4 万 1 千人(昨
年は 3 万 8 千人)
で、
1 位はやはりドイツの 45%、USA、フランスと続き日本は 6 位の 3% であっ
た。
今回の訪問目的は、IEC(International Electrotechnical Commission)TC82 WG2 の分科
会である PV Back sheet/Front Sheet の会議に参加することであったが、その会議日・場
所が 9 月 9 日のハンブルクであったため、この展示会を視察できることとなった。
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2 年前にもこのハンブルクにて PVSEC が開催されたが、時勢を反映してか前回は 4 万 4
千人の来場者に対し、今回は 4 万 1 千人で、しかし会場も広くなったので、人口密度的には
余裕があり、ゆったりとまわる事ができた。また展示者側にとっては 1 人 1 人にきちっと説
明できる時間が持てたと思われる。
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展示内容はもちろんモジュールやシステムを見せるメーカーがそこかしことあったが、端
子箱・シート類のようなモジュール用部材や、効率を改善するカバーガラスや光反射防止コー
ティングなどの展示も盛んであった。一方、製造や搬送などの装置メーカーのブースでは装
置の展示は少なく、多くの会社は説明・写真パネルでの展示で、商談スペースを確保・充実
させていた。彼らにとっては潜在顧客に知ってもらうというより、この展示会・学会に世界
中から来ていただいた顧客と商談をする機会として活用しているようである。
モジュールメーカーの展示では昨年同様やはり中国メーカーの進出が目立った。特にトッ
プ企業グループである Suntech, Yingli, Trina は展示スペースも広く、各自のモジュールを
効果的に展示していた。一例として Suntech ブースでは、高効率の結晶系モジュールのブ
ランド展開を強調しており(Pluto Cell Technology)
、なぜ高効率なのか、なぜ取り付けや
すいのかなどを訴求し、25 年出力保証だけでなく、内容は正確につかめなかったが 10 年
Workmanship Warranty と名付けた保証を強調しているのが目立っていた。
一方ドイツの Scheuten というモジュールメーカーでは製品保証(Product Warranty)と
して 12 年、出力保証(Linear Power Output)として 30 年を打ち出しており、今までの
Watt あたりのコストという観点から kWh あたりのコストを考慮しアピールする時代となっ
て来ている印象を受けた。
この流れはモジュールメーカーだけでなく、部材メーカーにも見られた。例えばバックシー
トを世界的に供給しているオーストリアの Isovoltaic 社も 25 年保証モジュールに貢献する
バックシートということを前面に打ち出した展示をしていた。Isovoltaic 社はバックシート
供給メーカーとして会社自身も 25 年以上の実績があり、それまでに採用してきた素材のノ
ウハウがあり、それらを生かす処方を持っているようである。
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これらの長期信頼性の流れに関して、各評価ラボ会社や研究所のブースに立ち寄り、話
を 聞 い て み た。Fraunhofer で は Performance と Long-Term Stability and Durability と
Electrical Safety の 3 つの切り口で評価を行うと言ったので、特に Long-Term Durability
はどのようなことをするのか、と質問したところ、Temperature Cycle、Humidity freeze,
Damp Heat, Mechanical stress, Hail, UV といった従来からのテスト方法を列挙しただけで
あったが、それらのテスト方法を組み合わせた複合試験やシーケンス試験は考えているとの
ことであった。
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一方 TUV では PV Magazine などを発刊している SOLARPRAXIS 社と組み、
“PV+Test”
と称した PV モジュールの抜打ち評価を始めたことを紹介していた。たとえば表示出力に対
しての実力出力測定や、IEC61215/61730 に基づいた初期不良評価である Thermal Cycle や
Damp Heat Test, Mechanical Load などでエージングさせ、その後の出力変化を見るような
従来のモジュール性能評価だけでなく、仕上げの完成度を評価するための EL 画像撮影や、
取り付け時に作業員がフレームの端部で怪我をしないかどうかを評価するためのシャープ
エッジテストなどを行い総合のレーティングを行っていることが紹介されていた。しかしな
がらこちらも従来のテスト方法の延長であり、本当の長期信頼性までは評価できないのでさ
らに工夫する必要があると考えられる。TUV では今年 1 月にシーケンステスト方法を発表
したが、この発展形について、今回はブースでは聞くことは出来なかったが、今後チェック
し続ける必要はあるように感じた。
今年の PVSEC 展示会全体的には、モジュール展示は結晶系中心で、薄膜系は元気がなく、
各社差別化を狙った訴求をしており、ブランド戦略を確立させようとした動きがあった。ま
た認証関係・部材メーカーも含め長寿命を十分に意識した動きとなっており、Watt あたり
のコスト削減はそろそろ限界で、kWh あたりのコストを下げるための戦略に移りつつある
ことが感じられた。
これらのグローバルの潮流がある中で日本はいまだに国内 10 年保証での販売で甘んじて
いる現実があり、それをベースにした設計のモジュールを海外展開しているに過ぎないよう
に感じる。日本メーカーはもっと将来に焦点を当てた開発を行い、国際競争力のある、トッ
プクラスの高信頼性モジュールを日本から発信すべきと改めて考えさせられた。
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見学会報告
宮古島 PV 諸施設見学記
太陽光発電技術研究組合
1. 沖縄電力 宮古島メガソーラー実証研究設備
宮古空港から車で約 30 分の宮古島の南東部、宮古島市城辺(ぐすくべ)の海岸沿いに、
沖縄電力のメガソーラー実証研究設備がある。
本実証研究は、経済産業省資源エネルギー庁が公募した「平成 21 年度離島独立型系統新
エネルギー導入実証事業」に採用されたもので、4MW 規模の太陽電池パネルと、出力調
整用に 4MW の NAS 電池を設置し、既存の 4MW 規模の風力発電と共に、島内(系統規模
50MW、既設発電設備 74MW)への自然エネルギー導入の際の不具合や、蓄電池を利用し
た出力平滑化などの実験を行うものである。
表 1. 宮古島メガソーラー実証研究設備の概要
実証研究場所
用地面積
PV 面積
系統規模
新設太陽光発電設備
新設蓄電装置
既設内燃力設備
(ディーゼル発電機)
既設新エネ設備
写真 1. 沖 縄電力宮古島メガソーラー実証
起工
研究設備入口
竣工
宮古島
98,089 ㎡
28,771 ㎡
約 50,000kW
4,000kW
(系統に対する PV 導入比率 8%)
※シャープ製結晶 Si 3,000kW、
京 セ ラ 製 結 晶 Si 500kW、 カ
ネカ製薄膜 Si 500kW
4,000kW(NAS 電池)
100kW(Li-ion 電池)
74,000kW
風力発電 4,200kW
2010 年 4 月 6 日
2010 年 10 月 15 日
この場所では 1994 年より、沖縄電力により「宮古太陽光発電実証研究設備」(490kW)
が設置され、NAS 電池実証運転研究(210kW)も行なっていたが、これをリプレース、敷
地を隣接の市有地に広げ、約半年間という短期間で完成させたものである。
実証研究は以下の 4 つ。平成 25 年度までで実施予定。
a. 出力変動抑制効果の検証(PV+ 蓄電池)
b. 周波数変動抑制効果の検証(PV, 既設風力 + 蓄電池)
c. PV のスケジュール運転の検証(PV+ 蓄電池)
d. 模擬の配電線路における最適制御階層の検証
d. は、
本設備内に一般家庭 100 件 + 大口需要家(学校などを想定)4 件分の模擬負荷設備(1
グループあたり家庭 25 件 + 大口 1 件。これが 4 グループある)と、4kW の家庭用を想定し
た Li-Ion 電池が 25 個あり、これらの負荷や充電池を自在に組み合わせることで、適切な配
電経路の設定実証実験を行うものである。
現在は a. および b. の予備的な実験を行なっており、本実証設備に設置された端末より、
自在に設定ができ、その結果 NAS 電池による平滑化効果が出ているチャートを見せていた
だいた。
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写真 2. 制 御パネルの表示例。PV 出力だけ
でなく、NAS 電池や系統の火力発電
所の出力もリアルタイムで表示
その後サイトを見学した。限られた敷地に効率よく PV を敷き詰めるためもあり、設置角
度は 5°と、ほぼ平面に近いものとなっている。また、海岸沿いということで、モジュール
は塩害対策グレードであるということであった。NAS 電池棟は、そのままでは棟内が稼働
熱で高温となるため、冷却が必要であり、本来なら自然風冷却でもいいのだが、設置環境上、
塩害対策のため、閉鎖型にせざるを得ず、エアコンにて冷却を行なっている。実用化の際は
内陸部の塩害が軽減できる場所に、電池を置くことも考えられよう。
写真 3. メガソーラー外観。海岸に非常に
近い場所であることがわかる。奥
までパネルが続く。
写真 4. 巨大な NAS 電池棟
本試験は離島という条件的にマイクログリッドを組まざるを得ない場所で、自然エネル
ギーを導入する最適手法の検証ができる、貴重な試験として、今後の成果に注目したい。
2. 財団法人日本ウエザリングテストセンター 宮古島試験場・宮古島海岸暴露場
次に、島南部やや内陸、宮古島市上野にある、
(財)日本ウエザリングテストセンター 16
写真 5. 日本ウエザリングテストセンター 宮古島試験場外観
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宮古島試験場を訪問した。本センターは様々な試験片、試験品の暴露試験を請け負っており、
暴露サイトは宮古島以外に、銚子、旭川にある。
宮古島にはこの試験場の他、海岸暴露場があり、同地の条件としては亜熱帯気候、かつ高
温多湿で、海塩粒子の影響など、自然の劣化因子が豊かな、暴露試験としては厳しい条件で
ある。島内 2 ヶ所それぞれで、電気安全環境研究所(JET)が PV パネル暴露試験を行なっ
ている。もとは日本品質保証機構(JQA)が NEDO 委託事業として行なっていたものであ
るが、JET が設備を引き継ぎ現在に至っている。
パネルの大半は 2 年前に新調しており、一部旧来のパネルも継続している。なお、現在は
現地での計測は行なっておらず、配線は短絡している。
現況を見せていただいたが、パネル固定の治具等も腐食していたり、また、JQA の試験
開始時に設置された概要案内図も腐食の影響で文字が見づらくなっており、現地の環境の厳
しさを感じさせる。また、この地方特有の、台風の直撃が年に何度かあるが、その際はパネ
ルを一旦退避させるということで、現地職員の方のご苦労が偲ばれる。
写真 6. 暴 露モジュールの例。配線は短絡して
ある
写真 7. JQA 時代の試験概要パネル。
PVTEC のロゴも見える
海岸暴露場は、上記試験場を南に下った海岸沿い(海岸からの距離 8m)にあり、まさに
絶海という風情で、直接波飛沫がかかる非常に厳しい条件の暴露場である。
写真 8. 海岸暴露試験場入口
写真 9. 海岸暴露試験場外観。目の前は海
いずれにしても、塩害の影響など非常に厳しい環境の中で長期暴露が継続されていること
は、PVTEC が進める高信頼性・長寿命 PV モジュールの実現に対し、非常に有益な情報を
得ることができると思われる。
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見学会報告
Lixil つくば Solar Power 見学記
太陽光発電技術研究組合
9 月 26 日(月)茨城県坂東市に建設された Lixil つくば Solar Park を訪問した。
Lixil(2011 年 4 月トステムから社名変更)は、経済産業省の平成 21 年度地域新エネルギー
等導入促進対策事業の採択を受け、メガソーラー建築事業を実施。今年 1 月に熊本県の有明
工場と、茨城県の岩井工場にそれぞれ発電能力 3.75MW のメガソーラーを完成させ、運転
開始した。
ソーラーパークの目的は、工場での使用電力の自給自足と、再生可能エネルギーの啓発・
普及にある。工場での年間電力使用量の 3 割をソーラーパークからの電力で賄うことができ
るという。また、啓発、普及活動のためには、いずれの工場とも、展望台を作るなど環境を
整え、設備の見学を受け入れている。
今回見学した Lixil つくば Solar Power は、Lixil 岩井工場の敷地の一部を使って建設
されたものである。工場の敷地総面積は、239,000 ㎡、ソーラーパークは、およそ半分の
131,000 ㎡を占めている。
ソーラーパーク入口に、発電量をリアルタイムで表示するパネルが設置されている。
最大発電能力が 3,750kW という国内最大級のメガソーラーであるが、あいにく、3 時過
ぎの訪問であったこと、時折小雨もぱらつく曇天であったため、発電量は、最大であった到
着時でも 400kW 弱であった。ただし、常駐している説明担当者の話では、夏の晴天時には
4,000(kW) を超える数字が表示されているのを確認したそうだ。
訪問者は、到着すると、まず会議室で Lixil の会社紹介及びメガソーラーの紹介を聞き、
その後、ソーラーパークでの見学となる。
ソーラーパーク入口には、高さ 2m ほどの展望台が設置されており、全体を見渡すことが
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写真1 入口に設置された表示板
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写真2 展望台からの風景
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できる。その後、希望者はパーク内に入り見学することもできる。
パーク内には、縦 4、横 18 枚の太陽電池モジュールで構成された 290 のアレイが設置さ
れている。ここで使っている太陽電池モジュールは、子会社の Lixil ソーラーを通じて調達
したもので、シャープ製の単結晶シリコンモジュールである。
架台は、同社開発のアルミ製。非住宅用の架台ではじめてアルミニウムを採用した製品で
あり、従来品に比べ 65%の軽量化が達成された。
このソーラーパークでの設置角度は、15 度。架台には、角度を示す円盤が取り付けられ
ており、正確に任意の角度の設定、取り付けができる。
ソーラーパーク内には容量 500kW のパワーコンディショナ 8 台が、4 か所に分散して配
置されているが、蓄電池は設置していない。ここで、6600 ボルトまで昇圧し、交流に変換
したのち隣接する工場に送電している。直流を交流に変換する際は東京電力から供給を受け
た電力を使っているため、計画停電時に、電力供給することはできなかった。
写真3 メガソーラー内
写真4 架台サンプルも展示してある
総敷地面積の半分がソーラーパークというのは、敷地の有効活用がされている事例のひと
つだと思う。
計画停電時に電力が使えなかったという話は、やや残念な印象をもった。停電時に、近隣
の住宅に電力を供給できるような機能・設備があれば、より地域貢献に役立つものと思われ
る。
訪問中に、
事前予約なしに訪れた近隣の夫婦がいた。太陽光発電システムの普及に一役買っ
ていることが確認できた。
施設概要
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敷地面積
モジュール設置面積
モジュール枚数
設置角度
最大発電能力
131,000 ㎡ 東京ドーム 1.5 個
69,000 ㎡
20,880 枚
15 度
3,75MW
太陽電池モジュール
パワーコンディショナ―
架台
設置・維持・管理
工事期間
シャープ製単結晶シリコンモジュール
日立製作所製
Lixil
NTT ファシリティーズ㈱
2010 年 8 月 24 日―2011 年 1 月 25 日
見学者
約 1,000 人(半年)
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変換効率世界最高
水準の太陽電池
長州産業株式会社
代表取締役社長
岡本 要
長州産業は、昨年、創立 30 周年を迎えることができました。企業は環境の変化に対
応して生きる生き物であり、常に社会の要望に応え、陽の当たる産業への参入を目指し
て参りました。設立当初より、
最先端技術を習得し「技術維新」を目指していた当社は、
設立 5 年目にして大手半導体製造装置メーカーと業務提携し、半導体装置関連事業へ
の参入を果たしました。その後も最先端の真空・メカトロ技術の蓄積を図り、高いレベ
ルの特殊技術を持つ研究開発型企業へと成長しました。
当社は、これまでに培ってきた真空技術を基に、有機 EL 製造装置や半導体製造装置、
太陽電池の製造を可能にし、ハイテク機器分野とエネルギー機器分野の 2 つの事業を
柱としています。
ハイテク機器分野では、超高真空技術をベースに、システム制御の頭脳となるソフト
ウエア技術の研究を重ね、
オリジナルのメカトロ機器の開発に力を注いでいます。また、
次世代のディスプレイや照明で有力候補とされる有機 EL 蒸着技術が認められて、国家
プロジェクトである「次世代大型有機ディスプレイ基盤技術の開発」事業や「次世代高
効率・高品質照明の基盤技術開発」事業に大手電機メーカーに伍して参画しています。
エネルギー機器分野では創業時から製造販売している住宅関連機器開発のノウハウと
ハイテク分野の技術を融合し、
「よりクリーンな生活環境の実現」をテーマに家庭用・
公共産業用太陽光発電システムの提供を行うほか、家庭用の新しい蓄電システムやエネ
ルギー源の研究を行っています。
太陽光発電市場には、1998 年より参入し、今年で 14 年目となりました。当初は
OEM 製品の販売が主体でありましたが、2009 年には太陽電池モジュールの生産を開
始し、シリコンウエハー生産のための 9 インチ単結晶シリコンインゴットの引き上げ
から、ウエハのスライス、セル製造、モジュール組立から販売、据付までを一貫して行
う体制を構築している国内では数少ないメーカーの一つであります。
現在進めている 156 ㎜角基板太陽電池セルの研究開発では、今年 9 月の太陽電池
業界最大級の国際学会 EU-PVSEC(欧州太陽光発電国際会議)に於いて、独自の高効
率化技術により、単結晶フルスクエアセルでセル変換効率 19.4% を達成したことを発
表しました。このクラスにおける公式測定機関による世界記録であり、業界に大きな反
響を与えることができました。
再生可能エネルギー特別措置法の成立により、太陽光発電の導入、設置が飛躍的に増
えると期待されていますが、国内太陽光発電メーカーの一員として、海外勢の低価格攻
勢に負けないように知恵と工夫で、太陽光発電業界の発展に貢献していく所存でありま
20
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す。
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太陽電池に
夢を託して
名城大学
理工学部電気電子工学科
教授 山中三四郎
エネルギー源としての太陽電池の将来性に夢を託し、
研究を始めて早や 15 年になる。
研究当初は住宅用太陽光発電システムの実用化が始まったばかりであった。当時、太陽
電池の生産、設置容量ともにダントツで日本がトップであった。しかしこの 15 年の間
に世界の様子は一変した。ドイツは太陽電池の設備容量を急拡大し、今や世界一の設備
容量を持つに至っている。また、生産量は中国がトップである。太陽電池の世界におい
ても日本が大苦戦を強いられている。一方、3 月 11 日に起こった東日本大震災はこれ
まで電源開発の中心的な役割を占めてきた原子力の危うさを世界に見せつけた。その結
果、自然エネルギーの活用、特に日本では太陽光発電への期待が大きくなった。
このようにめまぐるしく状況が変わる太陽電池の世界で筆者はこの 15 年間、太陽電
池の劣化機構の解明及び診断技術の開発に従事している。現在は主に下記の 2 項目が
研究の中心になっている。
① PV アレイの出力低下診断法の開発
太陽電池の出力は日射や気温の影響を受け絶えず変化しているので、出力を見ただけ
では健全性を評価できない。住宅用太陽光発電システムの健全性を評価することは簡単
ではなく、正確な診断を下す方法について研究を行っている。
②ホットスポットが出力低下に及ぼす影響の解明
太陽電池を長期間使用すると出力が徐々に低下する。一方、太陽電池の一部に影がか
かったとき、セルにホットスポットができることもよく知られている。しかし、これまで
太陽電池にできるホットスポットと出力の低下についての研究は少ない。筆者らのグルー
プは太陽電池にできるホットスポットと出力低下の関係について、評価を試みている。
筆者は最近、ひょんなことから PVTEC のお手伝いをするようになった。
NEDO では技術開発の一環として PV システムの高信頼・長寿命化を模索している。
PVTEC では NEDO の委託を受け、PV システムの高信頼・長寿命化を目指し、平成
22 年 11 月に高信頼・長寿命 PV システム総合調査委員会を発足させた。この委員会
には 3 つの分科会があり、そのひとつに高信頼 PC/BOS 分科会がある。この分科会
は主に PCS や BOS の高信頼・長寿命化についての調査研究を担当している。私はこ
の分科会の責任者として活動することになった。この分科会での議論で PV システムの
長寿命化のためのボトルネックは PCS であり、これの長寿命化が急務であるとの見解
に達した。現在、PCS の長寿命化を図るための検討を行っているところである。また、
3 月 11 日の東日本大震災を受け PV システムの災害時における非常電源としての役割
が期待されるようになった。そこで、分科会では PV システムの災害時における安全性
の確保並びに活用について検討を始めることになった。
筆者が太陽電池の研究を始めてから 15 年、この間、太陽電池を取り巻く環境は大き
く変化した。これから 15 年後にはどのような世界が待っているのか、それに僅かばか
りでも参加できることを無上の喜びとして研究活動を続けていきたいと思っている。
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委員会・分科会
活動報告
第 12 回薄膜 Si-PV コンソ
運営幹事会
運営委員会
特別講演会
平成 23 年 5 月 27 日(金)
平成 23年 10月 19日(水)
第 33 回運営幹事会
9:30-12:00 (独)産
14:00-17:00 アル
平成 23 年 10 月 28 日(金)
業技術総合研究所関西
カディア市ヶ谷 私学
市ヶ谷 大島ビル 5 階会議室
センター第 3会議室
会館
■議題
第 13 回薄膜 Si-PV コンソ
2.太陽光発電システム次世
1. 平成 23 年度上期進捗報告
運営委員会
2. その他
平成 23 年 6 月 30 日(木)
代高性能技術の開発・信
8:30-10:20 岐阜 頼性及び寿命評価技術の
じゅうろくプラザ 第 1
開発
技術交流部会
研修室
第 14 回薄膜 Si-PV コンソ
分科会
平成 23 年度 第 1 回 技術
運営委員会
平成 23 年度第 1 回高信頼
交流部会
平成 23 年 8 月 10 日(水)
PC/BOS 分科会
平成 23 年 8 月 17 日(水)
13:00-16:00 新大
平成 23 年 7 月 5 日(火)
ホテル日航大阪 フォンタナ
阪 丸ビル会議室
■議題
第 15 回薄膜 Si-PV コンソ
14:00-16:30
市ヶ谷 大島ビル 5 階
会議室
1.報告事項
運営委員会
2.第 22 回技術交流会プロ
平成 23 年 10 月 5 日(水)
平成 23 年度第 2 回高信頼
10:00-13:00 市ヶ
PC/BOS 分科会
谷 大島ビル 5 階 会
平成 23 年 8 月 26 日(金)
グラム
議室
NEDO 委託
関連委員会
14:00-17:00
市ヶ谷スター貸会議室
薄膜Si PVコンソ技術委員会
第 3 回薄膜 Si PV コンソ技
平成 23 年度第 1 回高信頼
術委員会
PV モジュール分科会
ン太陽電池の産学官協力
23 年 5 月 27 日(金)
平成 23 年 7 月 12 日(火)
体制による研究開発
13:00-18:00 (独)
15:00-17:00 産業技術総合研究所関
市ヶ谷 大島ビル 5 階
西センター第 9 会議室
会議室
1.次世代多接合薄膜シリコ
薄膜Si PVコンソ運営委員会
第 11 回薄膜 Si-PV コンソ
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薄膜Si PVコンソ特別講演会
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第 4回薄膜 Si PV コンソ技
平成 23 年度第 2 回高信頼
運営委員会
術委員会
PV モジュール分科会
平成 23 年 4 月 13 日(水)
平成 23 年 10 月 26 日
(水)
平成 23 年 9 月 14 日(水)
9:30-12:00 ホテル
10:00-17:00 市ヶ谷
14:00-17:00 日航大阪 藤の間
大島ビル 5 階 会議室
アビタス大阪貸会議室
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17:05:57
平成 23 年度第 1 回社会シ
コンソシアム運営委員会
ステム構築分科会
第 3 回 PV 認証・信頼性コ
平成 23 年 9 月 30 日(金)
ンソシアム運営委員会
14:00-17:00 市ヶ谷
平成 23 年 8 月 25 日(木)
大島ビル 5 階 会議室
13:30-17:00 市ヶ谷
大島ビル 5 階 会議室
研究会
太陽光発電システム次世代
国内検討会
高性能技術の開発 第 1 回
第 1 回 QA フォーラム国内
研究会
検討委員会
平成 23 年 9 月 16 日(金)
平成 23 年 9 月 16 日(金)
14:00-17:00
13:00-17:00 アルカ
市ヶ谷 大島ビル 5F ディア市ヶ谷私学会館
会議室
第 2 回 QA フォーラム国内
検討委員会
経済産業省
補助事業
アジア基準認証推進事業
平成 23 年 10 月 7 日(金)
13:00-17:00 市ヶ谷
大島ビル 5 階 会議室
国際フォーラム
第 1 回太陽電池モジュール
実施者会議
信頼性国際基準認証フ
第 3 回経済産業省 PV 基
ォーラム(International
準認証実施者会議
PVModuleQAForum)
平成 23 年 8 月 9 日(火)
平成 23 年 7 月 15 日(金)
13:00-17:00 (独)
-16 日(土) サンフラ
産業技術総合研究所 ンシスコ モスコーニ
九州センター
センター
第 4 回経済産業省 PV 基
準認証実施者会議
平成 23 年 10 月 5 日(水)
13:30-17:00 SEMI
大島ビル会議室
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2011/11/07
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編 集 後 記
● 東日本大震災から早くも半年以上が経過しました。復旧もなかなか進まず、
被害にあわ
れた方々が大変ご苦労されていることが報道され、心が痛む思いです。震災で明らかに
なった日本のエネルギー問題は、太陽光発電に関わる技術者、研究者にとって大変重い
課題となっています。
第21回技術交流会は、総会での緊急パネル討論(「太陽光発電業界は日本の直面し
ているエネルギー問題にどのように立ち向かうのか」)
を踏まえて、RITEの山地所長をお
招きしエネルギー問題の基調講演をいただくとともに、
これからのPVの大量普及に向けた
電力システム、
スマートコミュニティなどの社会システムについてパネル討論などで議論さ
れました。
当日の交流会の要旨を紹介します。
● 第59号の巻頭には、
METI新エネルギー対策課 村上課長から、
太陽光発電の普及
について8月に法案成立した新しい「再生可能エネルギーの固定買取制度」
とその意味、
それを活用するための課題等についてご執筆いただきました。
この固定買取制度は日本
の太陽光発電の復興の起爆剤になると期待されています。
● また、
昨年度からPVTECがNEDOから受託して進めている薄膜シリコン太陽電池コン
ソーシアム研究について高塚専務理事から研究の推進にあたるまでの経過、
決意を述べ
ていただきました。
この他、
デュポン㈱の仲庭氏には今秋のEUPVSECでの報告(信頼性研究やこれから
の認証試験の動きを中心に)、
コラムでは、長州産業㈱岡本社長と名城大学山中教授に
ご執筆いただき、
さらに、
大規模なPVシステムの導入の事例として宮古島のシステムやつ
くばにあるLIXIL 岩井工場の紹介記事と、
かなりにぎやかな会誌となりました。
● PVTECは、現在、組合員が増加し続けています。数年前のモジュールの研究開発を
中心にした技術研究組合から、太陽光発電技術全般に対し、広いネットワークを持つ組
合に成長してきています。相変わらず続く円高、
世界的な生産過剰によるモジュール価格
の急落等、
日本の太陽光発電産業は、厳しい競争にさらされています。
この組合のコミュ
ニティを十分に活用し、
力をあわせ、
日本の苦境から脱出しましょう。
(Y.Y記)
2011
Vol.59
11月号
目 次
羅針盤 太陽光発電の普及に向けて 経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー対策課 課長 村上 敬亮
2
特集 薄膜シリコン太陽電池コンソーシアムによせて
太陽光発電技術研究組合 専務理事 高塚 汎
4
交流会報告
<第21回技術交流会報告> 太陽光発電技術研究組合
6
出張報告
<第26 回PVSEC 出張報告>
仲庭晴彦
(デュポン㈱)
12
見学会報告
<宮古島PV 諸施設見学記>
太陽光発電技術研究組合
15
<Lixilつくば Solar Power 見学記>
太陽光発電技術研究組合
18
コラム 産官学
変換効率世界最高水準の太陽電池
長州産業株式会社 代表取締役社長 岡本 要
太陽電池に夢を託して
名城大学理工学部電気電子工学科教授 山中三四郎
ニュース
2011 Vol.59 11月号
古紙配合率100%再生紙を使用しています
21
委員会・分科会活動報告
事務局
22
編集後記
事務局
24
平成23年11月15日 発行所:太陽光発電技術研究組合
発行人:善里順信
〒102-0074 東京都千代田区九段南4丁目7番13号 大島ビル5階
Tel 03-3222-5551
印刷所:(株)
サンワ
20
Fax 03-3222-5552
PVTEC 太陽光発電技術研究組合
Photovoltaic Power Generation Technology Research Association
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