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Clinical Case Study Hypocalcemia following Treatment for

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Clinical Case Study Hypocalcemia following Treatment for
Clinical Case Study
Hypocalcemia following Treatment for Hyperthyroidism
Claire L. Meek1,*, Felicity Kaplan2, R. Scott Pereira3 and Adie Viljoen1
1
Departments of Chemical Pathology,
Endocrinology, and
3
Immunology, Lister Hospital, Stevenage, UK.
2
*
Address correspondence to this author at:Department of Chemical Pathology, Lister Hospital, Corey's Mill Lane,
Stevenage SG1 4AB, UK. E-mail [email protected].
臨床症例研究
甲状腺亢進症の治療後に生じる低カルシウム血症
症例
甲状腺亢進症を示唆する血液検査の結果とともに、17 歳の女性が内分泌科の病院に紹介されてきた。彼女は
断続的な動悸および震えを伴う、月経障害などの甲状腺亢進症の軽い症状があった。検査では、患者は正常血
圧、頻脈(100 拍/分)を示し、体型は歯の悪い痩せ型であった。彼女は胸骨後の拡張、あるいは雑音のない
小さな広汎性甲状腺腫を患っていた。結膜充血が見られたが、眼瞼遅滞または突出の所見は得られなかった。
下胸部の聴診の結果、混合大動脈弁疾患と思われる心収縮および心拡張の雑音が得られた。
患者は、血のつながっていないものの健康な親の唯一の子供で、以前は健康であった。彼女の病歴には、穏や
かな学習困難、二尖大動脈弁、頻発する尿路感染症、および後に取り除かれはしたものの人工肛門形成を必要
とした、子どもとしては深刻な便秘などがあった。浸透圧性緩下剤以外に、彼女は日常的な薬物治療を受けて
いなかった。最近の心エコー図では、よいフローおよび小さな逆流を伴う二尖大動脈弁が明らかになった。
生化学的には、患者の甲状腺刺激ホルモン(TSH)4 の血清濃度は検出できず(<0.03 mIU/L; 基準範囲、0.3-5.6
mIU/L)、またフリー甲状腺ホルモン(fT4)濃度は上昇していた[43 pmol/L(3.3ng/dL);基準範囲、7.5-21.1
pmol/L]。総カルシウム[2.27 mmol/L(9.08mg/dL)]およびリン酸塩[1.26 mmol/L(3.9mg/dL)]の血清濃度は、両
方とも基準範囲(それぞれ 2.20-2.60 mmol/L および 0.75-1.36 mmol/L)内であった。血清アルブミン濃度は
41g/L(基準範囲(35-50 g/L))で、マグネシウム濃度は 0.71 mmol/L(基準範囲(0.74-1.00 mmol/L))であっ
1
た。他の生化学のテストの結果に目立った異常はなかった。免疫学的分析により、甲状腺ペルオキシダーゼ抗
体の増加(582 の IU/L; 基準範囲、0-60 IU/L)、および TSH 受容体抗体の増加(6.9 の U/L; 基準範囲、0-1.5 U/L)
が明らかとなり、グレーヴス病が確認された。甲状腺イメージングによって拡大した甲状腺が見られたが、超
音波や MRI で明白に見られるような甲状腺傍の組織は伴っていなかった。
疑問点
1.
甲状腺亢進症は、血清カルシウムに対してどのような効果があるのか?
2.
血清カルシウムに影響を与える内分泌疾患には、他にどのようなものがあるか?
3.
血清カルシウムに影響を与える遺伝病は、どのようなものがあるか?
30mg のカルビマゾールおよび 25mg のアテノロールの日常投与後、患者の FT4 濃度は予想通りに減少した
(fT4、19.2 pmol/L; TSH、0.03 mIU/L)。それに付随して患者は、無症候性の低カルシウム血症になった[カルシ
ウム、1.72 mmol/L(6.88mg/dL)]。総 25-ヒドロキシビタミン D 濃度は 38 nmol/L(基準範囲(15-100 nmol/L))
で、血清マグネシウム濃度は 0.87 mmol/L(基準範囲(0.74-1.00 mmol/L))であった。両方ともにそれぞれの
基準範囲内であった。血清リン酸塩濃度は 1.28 mmol/L(基準範囲(0.9-1.35 mmol/L))で、アルブミン濃度
は 48g/L(基準範囲(35-50 g/L))であった。低カルシウム血症の程度を考慮すると不適当であるものの、副
甲状腺ホルモン(PTH)濃度もまた基準範囲内であり[4.8 pmol/L(4.8ng/L);基準範囲、1.6-9.3 pmol/L]正常であ
った。副甲状腺機能低下症の診断が下され、患者には毎日 0.5μg のアルファカルシドルが投与された。その
結果、カルシウム濃度は簡単に正常値に戻った(表1)。
表 1. 各治療段階における総カルシウムと、fT4 の血清濃度の時系列変化 a
2
a
甲状腺亢進症下では、カルビマゾールによる治療は有意なカルシウムの減少と共に、fT4 の改善を引き起こ
した。アルファカルシドルの同時投与によって、カルシウム濃度は正常に戻った。12 ヶ月後以降に患者がき
ちんと服薬しなかったために甲状腺亢進症が再発したが、甲状腺機能およびカルシウム濃度を正常に戻すた
めに再度治療された。直近の結果は甲状腺亢進症の再発を示しているが、これもまた服薬不履行に関係して
いるのかも知れない。太字で示した値は基準範囲外の値である。NA、 data not available.
この改善の後、患者はカルビマゾールおよびアルファカルシドルの治療計画に従うのを止めてしまい、甲状腺
機能検査の結果が治療前の濃度付近にまで戻った [fT4、58.4 pmol/L(4.5ng/dL);TSH、<0.03 mIU/L;カルシウ
ム(2.34 mmol/L(9.36ng/dL));表 1]。患者が治療計画に従ってもう一度服用し始めたため、fT4 の結果は改
善し、甲状腺機能は正常に戻った。結局カルシウム濃度も正常な状態になった[fT4、13.5 pmol/L(1.0ng/dL);
カルシウム、2.35 mmol/L(9.4mg/dL)]。直近では再び fT4 濃度の上昇が見られることから、きちんと服薬し
ていないのではないかと懸念されている(表 1)。
医学文献への症例報告として提出する目的で、彼女の臨床情報および検査結果を使用することに、患者の書面
による同意をしていた。彼女には非常に穏やかな学習困難の症状があるが、与えられた情報を理解し、処理し、
受け入れることは可能だった。
考察
ラボでの検査が更に何人かの患者に試みられた後、副甲状腺機能低下症の根本的な原因が解明された。蛍光イ
ン・サイチュウ・ハイブリダイゼーション分析により、22q11 での染色体欠失がディジョージ症候群の原因で
あるらしいことが明らかになった。心エコー検査により二尖大動脈弁が明らかになったが、他の心臓異常は認
められなかった。リンパ球細胞分析は正常な結果を示した。
この報告はニ重の病気が、診断を不明瞭にするかもしれないことを示している。前もって診断されることのな
かったディジョージ症候群がニ重に存在したこの症例では、抑制されない甲状腺亢進症によるカルシウム過剰
血の影響により、副甲状腺機能低下症の根本的な診断が覆い隠されてしまった。甲状腺機能亢進症の治療によ
り、根本的な副甲状腺機能低下症が同定され、ディジョージ症候群の検査につながった。この症例においては、
複数の診断を解明する際に生化学試験が基本となった。
カルシウム代謝は PTH の統合作用と、活性化されたビタミン D による厳密なホメオスタティック・コントロ
ールの下にある。副甲状腺機能低下症は、不適切な PTH の分泌が特徴である珍しい状態で、それは低カルシ
ウム血症に結びつく。患者が著しく低いカルシウム濃度においてさえ、症状をほとんど示さないかもしれない
という事実は、診断を妨げる可能性がある。まれにしか見られない副甲状腺機能低下症と、甲状腺機能亢進症
のコンビネーションであるこの症例では、低カルシウム血症は甲状腺機能亢進症の治療でのみ明白になった。
興味深いのは、この患者は幼年期にわずかに低い、もしくは正常範囲ではあるものの、若干低いカルシウム血
3
であったことだ。これらの発見は彼女の瘻孔に起因しており、経口のカルシウム投与の後に正常に戻るように
見えた。
甲状腺機能亢進症は、高カルシウム血症症候群を引き起こすことが長年知られている(1)。甲状腺機能亢進
症において、高カルシウム血症が生じる機構はまだ解明されていないが、1 つの可能性として増加した骨吸収
が考えられるが、それはカルシウムの循環系への放出や、排泄尿中のカルシウム、リン酸塩、ヒドロキシプロ
リンの上昇を引き起こす(2)。長期に渡る甲状腺亢進症と骨粗鬆症の間の関連性を考えると、これが潜在的
な機構である可能性が高い。また別の可能性として、甲状腺機能亢進症が副甲状腺に対して、直接的もしくは
間接的な効果を持つかも知れないということである。甲状腺機能亢進症の高カルシウム血症が、甲状腺傍と無
関係に生じるという証拠があるが(3)、適切な治療で正常化する PTH 濃度の上昇が、甲状腺機能亢進症を持
った患者において見られるという記述がある(4)。
甲状腺機能亢進症患者の高カルシウム血症の程度は、非常に多様である。大多数の患者は、カルシウムおよび
リン酸塩濃度の小さな変動を伴うだけであるが、中には著しい症状をきたす患者もいる。稀にではあるが、高
カルシウム血症が甲状腺機能亢進症を示す特徴になりえる。最近の例では、2 人の患者が高カルシウム血症
(5)の検査後に、甲状腺機能亢進症を持つと判明した。副甲状腺機能減退症を伴う今回の患者においては、
甲状腺亢進症によるカルシウム過剰血の影響により、基準範囲内の血清カルシウム濃度が認められた。
特発性副甲状腺機能低下と甲状腺亢進症のニ重の病気については、1962 年に始まる一連の文献において述べ
られている。最初の 3 つのケース(6-8)は、生化学検査および病態検査において低カルシウム血症と、それ
に付随する甲状腺機能亢進症が認められる特発性副甲状腺機能低下の女性患者であった。その内 1 つのケース
では、患者は妊娠していた。残りの 2 つのケースでは、副甲状腺機能減退症は甲状腺機能亢進症よりも,以前
に生じていたようである。これらの患者はいずれも染色体 22q11 の欠失に関する検査はなされていなかった。
より最近の報告では、22q11.2 の欠失が原因で、言語障害、徴候的な副甲状腺機能減退症、甲状腺亢進症、お
よび生まれて間もなく先天性心疾患を示した 4 人の子どもの一連の症例について記述している(9)。またそ
れに続く報告として、低カルシウム血症と甲状腺機能亢進症の症状を 18 歳の時に示した、22q11 欠失を伴う
ディジョージ症候群の患者について記述された(10)。副甲状腺および胸腺の異常が他の症例ほど深刻ではな
かったので、著者はこの症例を「部分的な」ディジョージ症候群と記載した。
今回の症例は、症状を伴う甲状腺機能亢進症および無症状の副甲状腺機能減退症を示し、一方で基準範囲内の
血清カルシウム濃度を示した、22q11 欠失を持った患者についての最初の報告である。甲状腺亢進症の治療に
より、根本にあった副甲状腺機能減退症が確認され、ディジョージ症候群のための検査が促された。
ディジョージ症候群は約 4,000 人に一人の頻度で生じる、22 番染色体の欠失によって引き起こされる病気であ
る。欠失は通常偶発的な突然変異により起きるが、常染色体優性遺伝による場合も記述されている。この病気
には非常に多くの表現型が存在する。ディジョージ症候群、それに関連する心臓・顔症候群および顔面奇形症
候群は、「CATCH-22」の特徴と一致する。すなわち 22 番染色体の欠失により引き起こされる心臓欠陥、異常
顔面、胸腺機能不全、口蓋裂、および低カルシウム血症などである。胸腺機能不全は T 細胞の異常成熟を引き
起こし、感染に弱い体にさせる。病気にかかった子どもの多くが、先天的な心臓病か、重症の伝染病により周
4
産期に死亡する一方で、わずかの症状を示したまま思春期まで生き延びる患者も存在する。今回の症例は、デ
ィジョージ症候群のなかでも非典型的で、より穏やかな特徴を示す患者のものである。臨床所見でも明らかな
ように、診断には細胞遺伝学の試験が必要である。
ディジョージ症候群における甲状腺機能亢進症の発症メカニズムは不明であるが、いくつかの報告により甲状
腺抗体の存在が示されたことから、自己免疫が病因である可能性が指摘されている。 (9、10)。逆に、減衰し
た免疫機能を持つこれらの患者が、それゆえこのよう自己免疫を介した甲状腺機能亢進症になるようにも見え
る。胸腺の不足によるレギュラトリーT 細胞機能不全は、自己抗体産生機序と共に自己免疫の現象を生じさせ
るのかも知れない。この条件において通常甲状腺が目標とする内分泌器官である理由は、発生において胸腺お
よび 4 つの副甲状腺のすべての源である 3 番目と 4 番目の咽頭嚢が、甲状器官の発生にも部分的に関与してい
るからかも知れない。
覚えておくべきポイント
•
甲状腺機能亢進症は、高カルシウム血症を引き起こす場合がある。しかしこのメカニズムは完全には
解明されていない。
•
多発的異常を持った患者、あるいは通常ではあり得ない症状を持つ患者においては、遺伝的な低カル
シウム血症の原因を考慮しなければならない。
•
ディジョージ症候群(22q11.2 欠失)は、蛍光イン・サイチュウ・ハイブリダイゼーションによって確
認される。
•
ディジョージ症候群は「CATCH-22」で示される症状が特徴である:
•
すなわち 22 番染色体の欠失による、心臓の異常、異常顔面、胸腺機能不全、口蓋裂および低カルシウ
ム血症である。まれではあるが甲状腺機能亢進症もそれに付随する特徴である。
結論
我々は、副甲状腺機能減退症と甲状腺機能亢進症を伴う、ディジョージ症候群(22q11 欠失)の 10 番目の症
例について記述した。通常とは異なり、この症例ではニ重の内分泌腺の病気が、矛盾しているようであるが、
基準範囲内のカルシウム濃度と共に明らかになった。甲状腺機能亢進症の治療により、根本にあった副甲状腺
機能減退症が見出され、ディジョージ症候群の確認に至る詳細な検査に結びついた。ニ重の病気は、患者が治
療を拒絶している期間に数回実証された。
謝辞
5
We are very grateful to Janine Burbridge and Mamta Purbhoosing from North West Thames Genetics Service for their
analysis and interpretation of the fluorescence in situ hybridization results.
脚注
This case was presented in abstract form as a poster at the AACC conference, 2009.
4
Nonstandard abbreviations:TSH, thyroid-stimulating hormone; fT4, free thyroxine; PTH, parathyroid hormone.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the
Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: None declared.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: C.L. Meek, Pfizer.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication May 25, 2010. Accepted for publication September 2, 2010.
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論説
Donald Zimmerman*
Children's Memorial Hospital, Chicago, IL.
* Address correspondence to the author at:Children's Memorial Hospital, Box 54, 2300 Children's Plaza, Chicago, IL
60614-3393. E-mail [email protected].
この症例は、ディジョージ症候群(またはディジョージ・シークエンスとして知られている)において生じる
ことが知られていた微弱な T 細胞不全と共に、カルシウムおよび骨において増加した甲状腺ホルモン濃度の重
要な代謝効果について述べている。ディジョージ・シーケンスは 22q11.2 での染色体欠失によって引き起こさ
れるが、それは常染色体優性遺伝形式によって伝達される。ちなみに症例の 90%は、新規の突然変異により起
こる。
カルシウム代謝は、副甲状腺ホルモンおよびビタミン D によって制御される。甲状腺ホルモンは、生理的濃
度においてはカルシウムホメオスタシスに影響しないが、高濃度になるとしばしば重篤な異常を引き起こす。
7
1891 年には、ホンレックリングハウゼンが甲状腺機能亢進症における骨異常について記述した。1920 年代に
は、マサチューセッツ総合病院の研究者たちが、甲状腺機能亢進症におけるカルシウム排泄の増加を観察した
が、それは副甲状腺ホルモンとは無関係に生じた。
1930 年代および 1940 年代には、高カルシウム血症は甲状腺中毒性の患者において観察された。甲状腺機能亢
進症患者の 27 パーセントが総カルシウム濃度の上昇を示し、47%はイオン化カルシウムの上昇を示している
(1)。副甲状腺ホルモンはこれらの患者においては抑制されている。
私たちは、副甲状腺機能減退症、心臓の異常および発育遅延を示す患者が、ディジョージ・シーケンスである
ことを示唆していることを述べたが、この患者はグレーヴス疾病による高カルシウム血症になった(2)。
ディジョージ・シークエンスには、先天的な心臓の欠陥、口蓋異常、胸腺異常、T 細胞免疫欠如、副甲状腺機
能減退症、および学習と精神的な問題が含まれる。 ミークらの報告に述べられている二尖大動脈弁は、これ
らの症状に該当する患者は一人だけ記述されている。
ディジョージ・シークエンスにおいて、稀にではあるが、T 細胞不全が深刻であることがある。通常はそれほ
ど深刻ではない免疫不全を生じるのが一般的で、患者の 30%において生じる自己免疫疾患なども含まれる
(3)。ディジョージ・シークエンスに生じる自己免疫性甲状腺疾患は、多くの場合グレーヴス病を伴う。
脚注
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication December 12, 2010. Accepted for publication January 10, 2011.
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Burman KD, Monchik JM, Earll JM, Wartofsky L. Ionized and total serum calcium and parathyroid hormone in
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22q11.2 deletion syndrome. Arch Dis Child 2002;86:422–5.
論説
David B. Endres*
Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA.
* Address correspondence to the author at:Keck School of Medicine, University of Southern California, 1200 N. State St.,
LAC+USC Medical Center, Clinic Tower, A7E113, Los Angeles, CA 90033. Fax323-843-9376; e-mail [email protected].
22 番染色体欠失症候群は、ベロ心臓・顔症候群、ディジョージ症候群または CATCH-22 といった他の名前でも
知られている疾患だが、もっとも一般的な多発性異常症候群の 1 つである。罹患率はしばしば 4000 分の 1 と
言われているが、おそらく過小評価されているだろう。Shprintzen は本当の罹患率が、600 分の 1 であると推
計している。最も頻繁に観察される染色体欠失は、約 40 の遺伝子の喪失を伴う 3.0Mb の欠失である。表現型
は相当多岐に渡り、180 以上もの臨床所見が記載されている。遺伝形式は常染色体の優勢遺伝だが、新しく診
断される症例のほとんどが、新たに生じた突然変異によるものである。
22q11.2 欠失の多くは、幼時または幼年期に同定される。心臓障害、低カルシウム血症および口蓋裂を持った
任意の新生児においては、22q11.2 欠失の可能性が考慮されるべきであり、また特有の顔の特徴、発育遅延、
口蓋異常、開鼻音および精神的問題を持った年長の子どもあるいは大人に対しても、考慮されるべきである。
22q11.2 欠失は、自己免疫性甲状腺疾患を含む自己免疫疾患に関係している。今回の症例では、患者が甲状腺
機能亢進症と診断され治療を受けるまで、根本に存在した副甲状腺機能減退症は同定されなかった。興味深い
のは、患者は幼年期において低いまたは正常ではあるものの、若干低いカルシウム血であったことである。
甲状腺機能亢進症または甲状腺中毒症に次いで生じる高カルシウム血症は一般的であるものの、通常は穏やか
なものである。甲状腺ホルモンは骨吸収を刺激し、C-テロペプチド、N-テロペプチドおよびデオキシピリジノ
リンなどの骨吸収のマーカーを増加させる。副甲状腺ホルモン(PTH)は、非甲状腺傍の高カルシウム血症で
減少する。PTH の上昇に関する初期の報告は、不活性な PTH の断片を測定するという、初期の PTH 法の限界
によったかもしれない。
22q11.2 欠失を持った多くの新生児において、一般に観察される低カルシウム血症は、副甲状腺の肥大ととも
に誕生後 1 年以内に改善される。この患者では副甲状腺の補償能力が、甲状腺中毒症を媒介とした血清カルシ
ウムの増加のために、一時的に減少していたのかもしれない。
副甲状腺が急激には低カルシウム血症を補うことができなかったために、甲状腺機能亢進症の治療は低カルシ
ウム血症を引き起こしたが、このことが診断に結びついたのである。
9
(訳者:平井
孝明)
脚注
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication February 28, 2011. Accepted for publication March 8, 2011.
10
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