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高速度鋼の製鋼の経験 - 日本機械工具工業会
2013 （ H25） 10 No.111 高速度鋼の製鋼の経験 理 事 永 尾 卓 己 高周波精密の永尾です。工具工業会には 1 年前から め取鍋添加では溶解できないからです。さあどうする、 の参加ですが挨拶が遅れました。あらためてよろしく と迷いに迷って既に5時間を経過しており、ここまで お願い申し上げます。 に投入した原材料費は既に数千万円を超え、また炉の 私は入社以来昨年度まで特殊鋼製造所に勤務して素 耐火物は、これ以上は持たなくなっています。 材製造に係って参りました。切削工具との接点が殆ん ここまでを総合計して少なく見積もっても炉内に どなく、知識・経験も乏しいためこのページに相応し W は 18％以上ある筈、全の湯を出し切れば取鍋で確 い話も出来ませんが、唯一関連があったのが高速度鋼 認出来る。これ以上は炉内で打つ手はない、ここは出 の製鋼の経験ということで、昔の失敗談を一つ思い出 鋼すべしと決断し、現場に指示しました。きれいに出 しましたのでご紹介します。 鋼して炉内には残り湯もありません、必ず W は出て 来る筈だと確信しておりましたが、実にこれが大脱線 高速度鋼はCrやMo、W、V、Co等のレアメタルを だったのです。規格下限の17％を1％以上も下回って、 多量に含有する、冶金的にも難しくかつ非常に高価 所謂“オシャカ”でした。 な鋼です。新入社員の頃ですが、18％W の鋼種 SKH2 を18 トンのアーク式電気炉で溶製することになりま 半月ほど後の炉修の時です。炉内・炉底の煉瓦同士 した。SKH51 屑と Fe-W（フェロタングステン）を W のあらゆる目地に地金が差し込んでいる、これが数 が 18％になるように配合して溶製開始しました。と mm と厚くて重いし、ハンマーでパリンと割れる、ど ころが、配合した通りの成分が出て来ません。炉内 うも普通の鋼じゃなさそうだ、との現場の話です。そ 溶湯サンプルの分析で W が10％程度なのです。さら うです、これがほぼ 100％近い W だったのです。これ に Fe-W を追加投入しても W は少ししか上がらない、 らは全て徹底的に回収したことは言うまでもありませ その繰り返しです。とうとう工場に在庫する全ての ん。 Fe-W を投入したのに、それでも出て来ません。 W は高融点、高比重なので溶けないで炉の底に沈 攪拌が製鋼の命であることを若い製鋼マンに教えて んでいるかも知れないと、柄杓を深く入れて炉の底の くれた失敗事例ですが、それにしても高い授業料でし 方から汲み取ったサンプルでは少し高く出て来ました。 た。その後高速度鋼の溶製は強力な攪拌を有する誘導 溶け残りはなさそうだから、W の高い重い液体が炉 炉に変更して以降こんな心配はなくなりましたが、苦 底に偏析しているのです。しかし攪拌装置を持たない くも懐かしい記憶です。このページの挨拶に際して、 電気炉では全体を均一化する手段がありません。出湯 素材の溶製にもこんな苦労があったことを思い出しま すれば取鍋で強攪拌できて正しい成分が確認できます したのでご紹介致しました。 が、その後の処置は不可能です。Fe-W は高融点のた （高周波精密㈱ 代表取締役社長） Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 1 EMO Hannover2013 出展を終えて 理事 岩 田 昌 尚 イワタツールの EMO 出展は、今回のドイツで開催 ての認識はまだ少ないように感じます。 された2013Hannover（9/16 ～ 9/21）で4回目になり 欧州市場で売れるものは、弊社の製品群の中で非常 ます。6 年前に、田野井製作所様と共同出展という形 に限られたものになります。逆に、欧州市場にまだな で始めました。実際は、7 年前から欧州の市場を開拓 いものであれば、受け入れられるというものもありま すべく営業活動を始めてはいましたが、4、5 年の間 す。 はほとんど実績も残せず経費を浪費している心配があ ところが、アジア市場では実績のあるものしかなか りました。現在では、欧州市場に対してスイスの北西 なか売れません。実績の少ない新しいコンセプトの製 部にあるNeuchatelという町に連絡所を開設し、田野 品は、まず理解していただくことすら流通、ユーザー 井製作所様と共同で現地の担当者による営業活動を 共に困難なのです。 行っています。実際このような形でなければ、弊社の 欧州市場は、日本の切削工具メーカーにとって、遠 規模ではこの地域での営業活動を行うのは困難であっ くて開拓が困難な市場かも知れません。しかし、情報 たと思います。 収集の目的も含めて出展をし、是非日本の切削工具の 日本のメーカーにとって、アジアの市場はある意味 存在を広めていければと思います。 ところで、海外出張の楽しみはやはり食事にありま 販売しやすいと言えます。アジア市場では日本製は高 品質であるというブランドがしっかり根付いているう す。あまりビールを飲んではいけない私にとって、ド え、日系のユーザーが多く、日本人担当者とのリレー イツは健康上問題のある国です。したがって自分が運 転手となることにより、誘惑を振り切るようにしてい ションで販売が可能であるのが大きいです。しかし欧 ます。特に、会場内にあるビアホールは、誘惑が多く 州では、高性能高品質のものであれば欧州にすべてそ ろっているという意識があるでしょうし、安価なもの 非常に危険です。 ドイツ料理は3日もたつと飽きてきますが、ハノー であれば、東欧に多くのメーカーがあり、アジアなら バーにはイタリア、フランス、トルコ、ギリシャ等の ば、高価な日本の製品よりも韓国、中国、台湾などの 製品の方が良いということになります。実際、EMO おいしい料理店が多くあります。但し、有名な店は数 日前でも予約でいっぱいになってしまうため、顧客と の会場では、年々これらの国々のメーカーの出展が の日程調整が重要です。 飛躍的に増えてきていますし、実績が増えるとともに EMO期間中は、普段なかなか会えない代理店の方々 ブースの構え方も大きくなっています。 や、知人たちと会場閉館後の食事などでコミュニケー EMO は、米国 IMTS や、JIMTOF と違い、今すぐ ションをとることも重要です。出展者の中には、会場 売れるものだけではなく、開発中の製品や、コンセプ トモデルのような出品が多いのも非常に楽しいところ 閉館後に自社のブースで簡単なパーティーを開くこと もあります。この場合、30 分ほど気軽に寄らせてい です。また、弊社のような小規模なメーカーも多く出 ただくなど、時間の調整も付けやすく、出展者の費用 展し、毎回新しい発見が多いです。実際、弊社がひそ 負担も少なくて済むので、是非 JIMTOF でも開催さ かに温めてきたアイディアが、聞いたこともないメー せていただければと思います。EMO会場でパーティー カーから出品されていて、泣く泣く製品化をあきらめ を開催する出展者は、若干の会場延長使用料金を主催 るということもあります。 イワタツールがヨーロッパ市場にチャレンジする理 者へ支払っているようです。 最後に、弊社はフジテレビのバラエティ番組「ほこ 由の一つに、切削工具の先進市場から、新しい要求や ×たて」 （ 9/22放映）に出演し、日本タングステン様の 日本と違った考え方を吸収できるということがありま す。実際に、アジア市場において、ある特定分野の市 「絶対穴の開かない金属」に穴を貫通させることが出 場からいくつかの引き合いが弊社にきます。しかし、 来ました。過去に対決された工具を参考に改良し、い くつかのアイディアを投入することによって成功した 彼らの加工における技術的背景や、製品の精度要求な どが把握できず工具開発に苦労することもしばしばで のだと思っています。また、この対決の際は、国内各 社に非常に多くの協力をしていただくことにより、弊 す。ところが、その数段進歩した欧州の顧客からの引 社だけでは、このような短期間ではとても不可能だっ き合いがあり、彼らからの情報により、アジアの顧客 た開発、試作を進めることが出来ました。 に対して抱えていた多くの問題点が解決したといった このように、最高の技術を持っている企業が、これ ことがありました。 だけ国内に集積している国はめったにありません。弊 また、工具に対する要求も欧州とアジアでは方向性 社のように総合力のないメーカーは、今後もこのよう が違うことが多いです。欧州では加工速度を重要視す な協力関係によって事業を進めていきたいと思ってお る要求が強いため、弊社もそれに合わせた高速加工用 ります。 の超硬小径ドリルを開発しました。しかし日本の市場 （㈱イワタツール 代表取締役社長） では、驚かれはするものの、その工具の必要性につい Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 2 工場自慢ツール風土記 大和精密工具株式会社 〒 181-0004 東京都三鷹市新川 3-18-10 TEL：0422-46-3333 FAX：0422-49-9010 http://www.yamatoseimitsu.co.jp/ 当社は、熱処理以外は全工程を社内で生産し、2 ～ 3 週間の短納期にも迅速に対応できる体制ができてお ります。又、社員の平均年齢も世代交代が上手くいき、 30歳代をキープしております。 又“技能”の特性として、各個人の能力に左右され る面が大きいのですが、出来るだけ多能工化を図り、 会社紹介と工場 PR 融通の利く生産体制を心掛けております。特に2番取 下加工におけるバイトを手作業で研ぐ技能は、アング ランド製品において発揮され、当社の自慢の一つです。 昨今の経済情勢の中、規模の拡大は望めませんが、 最適生産規模の形と“技能”にこだわる会社として生 き残っていきたいと考えております。 ご当地紹介 本社工場 当社は、昭和14 年、写真の如く三鷹の田園風景の 中に溶け込むような形で（現在は、全く面影がありま せんが）切削工具の製造を目的として設立され、当初 はサイドカッター、メタルソー、エンドミル等の一般 工具を含め、内・外丸カッター、インボリュートカッ ター等のフライスカッターを中心に製造していました が、 次第に2番取り工具に特化して、現在のホブ、フォー ムドカッター、スパイラルベベルカッター等を中心と する歯切工具メーカーになっております。 当社は、発足以来、少ロットの特殊品を得意とし、 “職 人の技能”をモノ作りの原点として品質の向上に努め ておりますが、特殊品、少ロット生産の宿命として 生産性の低さは否めず、儲からない企業の立場を堅持 （？）しております。ただ、会社の敷地は 1300 坪あり、 500 坪を賃貸で貸しており、その収入で本業のマイナ ス分をカバーしているのが現実です。 井の頭恩賜公園 三鷹市は、旧石器時代の遺跡もあり、湧水に恵まれ た（当社の周辺も、昔は湿地帯でした）自然環境の豊 かなまちです。江戸時代は、幕府直轄地で鷹場があり ました（三鷹の地名の由来です）関東大震災後、住宅 化と工場化が進み、中島飛行機（現在の富士重工）を 中心とする軍需産業が進出し、住工のバランスのとれ たまちとして発展してきましたが、戦後は、住宅化と 工場の移転が進み、現在は、生活都市となっております。 又、国立天文台、井の頭恩賜公園、ジブリ美術館、 玉川上水等、散策路に付随した観光施設も多く、高環 境、高福祉のまちづくりが進められています（昭和48 年に日本初の下水道普及率100％を達成）。又、太宰治、 山本有三、武者小路実篤、三木露風など、多くの文学 者が愛し、住まい、作品を生み出したまちでもあります。 当社の隣の仙川公園には、長崎の平和記念像のレプ リカもあり、仙川沿いの桜並木は見事です。どこかへ 設立当時 花見に行く必要がないのが当社の自慢です。 Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 3 OSG Royco, S.A. de C.V. （MEXICO）より マリアッチ、陽気なラテン気質、人なつっこさと深い 友情に代表されるメキシコは、戦後急成長をとげた日 本人を快く受け入れてくれます。その一方で、言語の 吉 崎 壽 高 OSGは1994年に現地の工具メーカー、HERMECOR 社を買収する形でメキシコへ進出いたしました。同 社はデトロイト近郊に所在した ROYCO TAP AND TOOL 社が技術供与を行い、1964 年から ROYCO ブランドとしてメキシコでタップとねじゲージの生産 を開始しておりました。ROYCO というブランド名は メキシコ市場に深く浸透しておりましたので、社名は OSG ROYCOといたしました。 買収直後、メキシコはテキーラショックと呼ばれる 通貨危機に見舞われ、しばらくは厳しい時期を過ごし ましたが、その後はNAFTAをベースにした自由貿易 政策とともに、事業は順調に拡大してきました。元々、 メキシコシティーにあった工場は場所も小さく、生 産拡大の余地もなかったことから、同市の南西80km の TOLUCA 市に新工場を建設し、1998 年に稼働開 始 い た し ま し た。 TOLUCA 市 は メ キシコ州の州都で あり、標高2,667m でメキシコでも標 高の一番高い都市 で す。 近 く に は GM、CHRYSLER 問題はもとより、メキシコの生活風土、カソリック社 会、ビジネス文化は日本やアメリカのそれとは大きく 異なり、労務管理、教育システムもそれに合わせてア レンジする必要がありました。それが功を奏して、当 初問題となった、定着率、欠勤、遅刻なども徐々に改 善が進み、品質、生産性、納期管理の面におきまして も、毎年大きな前進をみております。現在、340名の 従業員にて、リーマンショック以降は3直週7日稼働 を継続しており、コンスタントな設備投資により現在 はタップの月間 20 万本体制に て、米国、カナダへも供給し ております。これ以外にゲー ジ類、各種工具の再研サービス を行っております。また、今 年はコーティング炉を 2 基設置 し、OSG 独自の各種コーティ ングを自社内でスタートしま した。また、ブラジル工場と の一体化政策も進めており、更に品質、コスト、生産 性の向上を目指しております。 営業面では各地にセールスエンジニアを配置し、お 客様へのサービス向上に努めております。2008 年か らはツールマネージメントサービスも開始し、お客様 の工場内でタイムリーな工具の提供、プリセット、原 価低減に貢献してきております。今後は、超硬工具、 の工場もあります。 ダイヤモンド工具の現地での生産も開始する計画です。 NAFTA 締結を皮切りに、EU との FTA、日本との 近くには NEVADO DE TOLUCA という標高4,680m EPA、メルコスル（南米南部共同市場）、など 44 ヶ国 の山があり、雪を頂いております。また、近年、同市の 空港も旅客サービスに利用されるようになり、メキシコ 国内の主要都市やアメリカへの乗り入れ便もあります。 と自由貿易を進めるメキシコは、昨年には TPP 交渉 にも参加しており自国の優位性を生かしつつ、製造業 立国を目指していくものと思われます。また直近では、 多くの自動車関連の日系メーカーが進出をしてきてお ります。航空機産業においても、多くのメーカーが製 造拠点を設けております。これら自由貿易路線の推進 により、メキシコ経済のポテンシャルが更に引き出さ れることが期待されます。 OSGはこのメキシコを製造、販売の重要拠点と位置 新工場では日本の技術、日本式の品質システムをメ キシコ風にアレンジした教育システムを導入しまし た。1974 年から操業しているブラジル工場から多く のブラジル人指導員も招きました。テキーラ、タコス、 Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 4 付け、更なる人財投資、設備投資を計画しており、こ れら新規のお客様へもきめ細かな技術サービスを提供 できるよう準備をすすめております。 （OSG Royco, S.A. de C.V. President） リレー随想 『遥かな尾瀬～、遠い空』 前総務企画委員長 向 野 下 繁 関西で育ったせいか「上高地」 「尾瀬」という地名に は格別のあこがれの響きを感じる。高校時代、神戸の 繁華街三宮に上高地という名の喫茶店があって、店構 えから大人っぽい雰囲気なのだが、試験休みか何かの 折に思い切って友人と入ってみた。店内に、まさに河 童橋の大きな風景写真が貼ってあり、日本にもこんな 景色の場所があるのだなぁ、と感じ入った記憶がある。 尾瀬は尾瀬で、行ったこともないのになぜか知らぬ間 にふと口ずさんでしまう ♪♪夏がくれば思い出す～ ♪♪ あのメロディ、歌詞も相まって、心の原風景の ような引き付ける魅力がある。 社会人になって首都圏暮らしが長く、上高地も尾瀬 も手軽に行きにくいことがさらに有難味を増している ことがわかった。上高地は 10 数年前に、家内と信州 2 泊3日のバス旅行で初めて訪れた。お天気に恵まれ、 まさに喫茶店で見たあの風景が眼前に広がっていた。 小泉元総理ではないが、素直に感動した。確か、河童 橋が新しいものに架け替えられて間もない頃であった と思う。 ところで、尾瀬である。行きにくさという点では上 高地より数段上であろう。 この10年程、何とか一度行ってみたいと思い続けて きたが叶わなかった。最大の問題は同行者である。ひ とり旅の趣味はないので家内が頼りなのだが、旅行好 きで温泉好きで街歩きも厭わない家内が全く誘いに 乗ってこない。山歩きがおっくうなのと、トップシー ズンの週末の混雑ぶりが面倒なようである。今回、トッ プシーズンを避けて、お盆休みに鬼怒川温泉とセット で1泊2日という提案をして、何とか了解を取り付けた。 いざ行くと決まって、雑誌やネットで情報を集めて準 備にとりかかった。行程は早朝に自宅を出発して電車、 レンタカー、バスを乗り継いで尾瀬の玄関口鳩待峠へ 向かう。鳩待峠を出発・帰着点として散策し、レンタ カーで鬼怒川温泉へ行く。ポピュラーな行程ではない が、移動の疲労、尾瀬滞在時間等を総合的に考慮して まずまず納得のスケジュールを立てた。次は服装の準 備、ネットの情報によれば、尾瀬といえども山、最低 限の山歩き用服装は必須だそうだ。最低限とは、ト レッキングシューズ、動きやすいズボン（ジーンズは ダメ） 、 雨具、 帽子とのこと。先ずはトレッキングシュー ズであるがこれが結構お高い。7 月にたまたま新聞の 折り込み広告を見ていたら近所のスポーツ用品店がト レッキングシューズのバーゲンをやっており富士山も 可能なタイプが 6 千 5 百円とのこと。実はいずれ近い 内に富士山も登ってみたいと思っていたのでバッチリ、 早速購入した。ズボン、服装、雨具、帽子などはとり あえずゴルフ用で間に合わせることで身の回りの準備 は完了。で、いよいよ決行当日 8 月 13 日。事前調査に よるとお盆休み中の尾瀬は案外穴場で人は少ないとの こと。天気も絶好。5 時半に自宅を出て予定通り東武 日光からレンタカーで戸倉駐車場へ向かう。途中、い ろは坂、中禅寺湖畔、戦場ケ原と観光地を通るが意 外と車は少なく順調に快適ドライブ、予定より 20分 程早い 10 時 10 分戸倉駐車場に到着。マイカーで乗入 れ出来るのはここまで。駐車場で超早目の昼食（持参 のおにぎり）を済ませると、丁度タイミングよく10時 20分発のバスがあり乗車、鳩待峠まで30分弱。6時ま でには鬼怒川温泉に着きたいので鳩待峠出発は3時が リミット。滞在時間が約4時間しかないので早速行動 開始。約 40 分の下りで最初の休憩場所である山の鼻 広場へ到着。山小屋あり、キャンプのテントありで結 構賑わっている。帰りは逆に上りで時間がかかるので、 初めの計画では山の鼻で U ターンであったが、順調に 進行しているし、折角なので頑張って尾瀬ヶ原の方ま で足を延ばすことにした。これが大正解で、尾瀬ヶ原 に足を踏み入れて広々とした湿原の中に延々と続く木 道を進むとやがて前方に燧ケ岳が見えて来た。これこ そ写真やテレビで見た尾瀬の景色であった（これでも ほんの一部だろうが）。感激、感激、あぁ、来てよかった。 尾瀬ヶ原の景色を時間ぎりぎりまで堪能して、帰りの 上り坂を急ぎ足で戻った。この日、鬼怒川温泉で風呂 上がりに飲んだビールは最高に美味かったなぁ。来年 は違うルートで来て、別の景色を見るぞ！！ （三菱マテリアル㈱加工事業カンパニー企画管理部担当部長） Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 5 コバルトの特定化学物質指定に伴う措置について 日本工具工業会事務局 平成25 年1 月1 日に施行・適用された労働安全衛生 することを防止するための措置を講じる必要があり 規則（以下 安衛則と略記）、労働安全衛生法施行令（以 ます。 下 安衛令と略記） 、特定化学物質障害予防規則（以下 （平成 26 年 1 月 1 日より義務化。ただし、それ以前 特化則と略記）により、我々の業界で製造している工 に製造・取扱い設備を新設・移設する場合には、そ 具材料に添加されているコバルトが規制の対象となり、 の時点から必要） 健康障害防止措置が義務づけられました。その概要に ③作業主任者（特化則第27、28条） ついては、合同部会等で環境委員会から何度か説明が 対象物の製造・取扱い作業では、作業主任者を選 ありましたが、改めて会員の皆様に理解を深めて頂く ため、改正内容について掲載致しました。 改正内容 コバルト及びその無機化合物が、労働安全衛生法 （以下 安衛法と略記する）による表示対象物、特定化 任し、決められた事項を行わせることが必要です。 （試験研究のため取り扱う作業を除く。平成 27年1 月1日より義務化） ④作業環境測定（特化則第36から第36条の4） 対象物を製造・取り扱う屋内作業では、作業環境 学物質の管理第2類物質・特別管理物質になりました。 測定とその評価、結果に応じた適切な改善を行う事 そのため、下記のような規制を受けることになります。 が必要です。記録は 30 年間保存（平成 26 年 1 月1日 ○表示・通知対象物としての規制 から義務化） ①容器・包装への表示（ラベル） ⑤健康診断（特化則第39から第42条、別表第3から第5） （安衛法第57条、安衛令13条等） 対象物の製造・取り扱い業務に常時従事する労働 コバルト及びその無機化合物を重量の 0.1％以上 含有する製剤その他の物を容器・包装に入れて譲渡、 者に対して、健康診断を行うことが必要です。記録 は30年間保存（平成25年1月1日より義務化） 提供する場合は、容器・包装に決められた事項の表 ⑥特別管理物質としての措置（特化則第38条の3、4） 示が必要です。但し、切削工具は、対象から除外さ 1 . 作業場に取扱い上の注意事項等の掲示 れましたので、表示の必要はありません。 （平成25年1月1日から義務化） ②文書（SDS）による通知 2 . 作業記録を1 ヶ月以内でとり30年間保存する。 （安衛法第57条の2、安衛令18条の2、別表第9等）、 （平成25年1月1日から義務化） 譲渡・提供の際に文書の交付などによる対象物に ⑦対象物を扱う場合の特別措置（特化則第38条の12） ついての通知が必要となります。 （お客様に対して ・作業場の床等を水洗いによって容易に掃除できる 我々から積極的に通知する必要があります。 ） ものとし、一日に1回清掃する ○特定化学物質としての規制 （平成26年1月1日から） ①規制対象の範囲 ⑧そ の 他 の 措 置（特 化 則 第12の2、21、22、22の コバルト及びその無機化合物を重量の1％を超え て含有する製剤その他の物（以下「対象物」と言う） 2、24、25第1項～第4項、37、38、38の2、43、44、 45、53条） を製造し、または取り扱う作業全般が規制の対象と ・休憩所及び洗浄装置の設置、作業場内での喫煙飲 なります。但し、コバルトを含有する合金を素材と 食の禁止またその表示、不浸透性床の設置。 する工具を通常の使用方法により用いて、他の金属 （平成 25 年 1 月 1 日より義務化。ただし不浸透性 等の加工を行う作業は規制の対象となりません。即 の床の設置については平成26年1月1日から） ち、お客様が我々の工具を使用して加工する場合、 上記の措置に対応するには、非常にコストがかかる 被削材が対象物でなければ、規制の対象外です。但 項目も多く、現在関係省庁に軽減措置をお願いしてい し、再研削、追加工等で工具を定常的に加工される ますが、早急に結論が出そうにありません。そのため、 部門については規制の対象となります。 会員相互で情報を共有しながら粘り強く訴えて参りた ②発散抑制装置（特化則第第5、7、8、9、29、30、32、 33、34の2、35条、安衛則第86、88条、別表第7） 対象物の製造・取扱い作業全般について、対象物 から発散する粉じん、ヒューム等に労働者がばく露 Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 6 いと思います。引き続き、環境委員会で活動を進め ていきますので、環境委員を出されていない会員様は、 ぜひこの機会に環境委員会への参加をお願いします。 技術者向け講習会の実施 今年の夏は、各地で連日猛暑日が続き、大変だった と思いますが、名古屋の今年の最高気温（38.4℃）だっ た 8 月 22 日、翌 23 日、技術者向けの講習会を実施し ました。日本機械鋸・刃物工業会が毎年（今年で 3 回 中村副学長の講義 （切削工学概論） 目）実施してきた講習会の内容が当工業会にとっても 関連深い内容だったので、合同で開催させて頂きまし た。講習会の概要は下記の通りです。 1 ．日時：平成25年8月22日（木）～ 23日（金） 2 ．場所：愛知県産業労働センター「ウインクあいち」 3 ．講習内容： （講師は、名古屋工業大学の先生方） 第1日目 9時～ 12時 品質工学 仁科教授 13時～ 16時 切削工学 中村教授（副学長） 講義の様子② 第2日目 9時～ 12時 熱処理理論（基礎） 渡邊教授 13時～ 16時 工具鋼熱処理 佐藤准教授 4 ．受講料 ￥25,000（昼食、懇親会費用含む） 第 1日目は、品質管理の基礎と切削工学概論、第2 日目は、工具鋼の熱処理と盛り沢山の内容で、講師陣 は名古屋工業大学の先生方でした。久し振りの丸 2 日 間の座学は少々厳しいものが有りました。しかし、昔 学校の講義や会社での講習等で出てきた言葉が懐かし 受講者は、全部で 45 名、内当工業会は 10 名参加し く感じられ、再認識することが多い講習でした。また、 て頂きました。日頃の業務の忙しい中、このような研 午後からの講義は、昼食後で睡魔との闘いでした。 修へ参加頂くことは、経営者にとっても受講者にとっ 第1日目の講義が終了した後、講師の先生方も出席 ても負担となりますが、特に特殊鋼の熱処理は我々特 頂き、懇親会を開催しました。講師の先生方と直接話 殊鋼工具の製造に携わっている者にとっては非常に重 が出来たり、受講者同士が親しく話したりと楽しい時 要な知識だと思います。今後の業務に少しでも役立て 間を過ごしました。また、アトラクションとしてじゃ ればと思いました。 んけん大会があり、当工業会の会員さんが優勝し、賞 講習は、9 時開始のため、愛知県近郊にお住まいの 金を獲得（優勝者だけ）したことを申し添えておきま 方以外は前泊だったので、受講者は、意欲的にかなり す。2日目も1日目と同様、朝からしっかり講習が実 早くから会場に着かれ、会場の準備が済むまで少々お 施され、終了後、アンケートを記入し、16時過ぎに 待ち頂くことになりました。 解散となりました。 会場の愛知県産業労働センター「ウインクあいち」 「企業は人なり」と言われますが、このような教育 は、JR 名古屋駅から徒歩5分と絶好の立地にあり、建 で基礎知識を習得し、応用に繋げていける人材の育成 物も最近建てられたもので、非常に設備も整った場所 が益々必要になると思います。今後も出来る限り、こ でした。 （使用料も比較的リーズナブルで、名古屋で のような講習会を企画していきたいと思っています。 の会議・会合には使えそうと思いました。） 会員様からはどのような講習を希望されるのかご意見 を頂ければと思います。 最後に今回の講習で、色々と段取り・お世話を頂き ました日本機械鋸・刃物工業会の長谷川専務理事に感 謝申し上げます。 なお、当工業会から受講頂いた会員は下記の通りで す。受講者の皆様、お疲れ様でした。 高周波精密㈱ 2名、㈱東鋼 2名、日本エリコンバル ザース㈱ 1名、㈱野村工具製作所 2名、㈱不二越 1 講義の様子① 名、理研製鋼㈱ 2名 以上6社10名 Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 7 特殊鋼工具 平成２3 ～２4年生産額実績及び２5年上期実績 平成 23 年生産実績 品 目 平成 24 年生産実績 年間合計 前年比 ル 18,570 119.0 9,128 101.4 7,685 ミーリングカッタ 9,891 124.9 4,683 9 6.9 ギ ヤ カ ッ タ 10,474 107.4 5,581 ブ チ 11,863 119.8 タ ッ プ・ダ イ ス 31,172 リ ー マ・バ イ ト ド リ ロ ー 合 計 （単位：百万円、％） １～６月合計 前年同比 ７～ 12月合計 前年同比 平成 25 年生産実績 年間合計 前年比 １～６月合計 前年同比 80.3 16,813 9 0.5 7,9 01 86.6 4,665 92.2 9,348 94.5 4,209 89.9 108.3 5,021 94.3 10,602 101.2 4,614 82.7 6,029 102.9 6,249 104.1 12,278 103.5 6,450 107.0 122.6 16,534 108.6 15,697 98.4 32,231 103.4 13,429 81.2 3,517 108.1 1,887 108.9 1,832 102.6 3,719 105.7 1,735 91.9 85,487 118.9 43,842 104.9 41,149 94.2 84,991 99.4 38,338 87.4 （出典：経済産業省 機械統計） ソリッド切削工具（ハイス＋超硬） 平成２3 ～２4年生産額実績及び２5年上期実績 平成 23 年生産実績 品 目 平成 24 年生産実績 年間合計 前年比 ル 25,616 120.1 12,579 10 0.8 10,975 ミーリングカッタ 23,147 99.0 10,680 86.1 ギ ヤ カ ッ タ 9,955 107.6 5,294 チ 10,503 121.9 タ ッ プ・ダ イ ス 34,047 ド ブ リ ロ ー １～６月合計 前年同比 ７～ 12月合計 前年同比 （単位：百万円、％） 平成 25 年生産実績 年間合計 前年比 １～６月合計 前年同比 83.5 23,554 92.0 10,712 85.2 10,587 98.6 21,267 91.9 10,845 101.5 108.1 4,801 94.9 10,095 101.4 4,334 81.9 5,373 104.1 5,646 105.7 11,019 104.9 5,765 107.3 117.0 18,313 112.5 17,097 9 6.2 35,410 104.0 14,556 79.5 リ ー マ 29 0 104.9 146 99.9 122 85.3 268 92.7 233 159.4 バ イ ト 2,333 103.2 1,243 109.7 1,187 99.0 2,430 104.2 1,121 9 0.2 その 他 切 削 工 具 539 79.0 179 60.6 169 69.5 348 64.6 170 94.6 10 6,430 112.2 53,808 101.9 50,584 94.3 104,392 98.1 47,736 88.7 合 計 （出典：日本工具工業会 会員統計） 環太平洋経済連携協定（TPP）について 新聞紙上あるいはテレビのニュース等で、TPP交渉が話題となっ ています。現在は、21の交渉分野ごとに作業部会を開いて年内の 妥結を目指して交渉を進めているようです。我々の業界では、輸 入品の関税撤廃に関心がありますが、TPP交渉に参加する12カ国 の切削工具の関税率は表のようになっています。日本は、輸入品 の関税は0ですが、米国など、まだ多くの国で関税がかけられてい るようです。 また、TPP参加国以外では、インド、タイが10％、中国、韓国 が8％、ブラジル18％など、日本からの主要輸出国が高関税率となっ ているのが気掛かりです。この様な不平等な市場環境で頑張ってお られる当工業会会員企業各位には敬意を表したいと思います。農 産物などの関係で、全ての関税撤廃は難しいのかも知れませんが、 少しでも競争力が高くなる環境になって欲しいと願っております。 9月22日（日）フジテレビ系の「ほこ×たて」で「金属vsドリル」の 第7弾の放映が有りました。今回は、当工業会のイワタツールと連 合企業のドリルが日本タングステンの金属に挑戦し、見事勝利を収 めました。待ちに待った勝利でしたが、岩田社長の満面の笑みが印 象的でした。 各国の関税率 （出典：WorldTariff） TPP12 カ国 切削工具 2.9 ～ 8.4％ 4.6％ カナダ 1 点（9％） Free メキシコ 1 点（5％） Free Free Free ペルー チリ 6％ オーストラリア 5％ ニュージーランド 5％ マレーシア 5％ 6％ 5％ Free 5％ ベトナム Free Free シンガポール Free Free ブルネイ Free Free 日本 Free Free 当工業会のオーエスジー、不二越、そしてイワタツールの3社が 挑戦し、ようやく勝利に結びつきました。結果的には、イワタツー ルと連合企業が手を組んで勝利ということになりましたが、それま でのオーエスジー、不二越の挑戦も随分参考になったのではないか 思います。3社のチャレンジ精神に拍手!!! 東京都港区芝公園3−5−8 機械振興会館 203 Tel. 03 （3433） 6891 Fax. 03 （3432） 6947 Myツール 2013 （H25） 10 No.111- 8 インサート（Cermets） 米国 URL http://www.kouguko.com E-mail [email protected] 発行日：2013年（H25年）10月21日 印刷・製本： （株）アサヒ・エンタープライズ