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農村の未婚晩婚化と親子2世代 夫婦別居の現状

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農村の未婚晩婚化と親子2世代 夫婦別居の現状
農林水産政策研究所 レビュー No.7
研究会(共催)報告要旨(2002 年 10 月 25 日)
や農業への専念度(=就農経過に反映)であ
る。
4.農山村における後継者の結婚難は農家
家族の居住規則を変化させつつある。若い嫁
への配慮から,親子2世代夫婦が同居すると
いう形態から近くに別居という形態へと切り
替わりつつある。
以上のように,農家後継者の結婚難は,都
市と共通の,独身の自由を謳歌して結婚にこ
だわらなくなった若い世代の行動パターンの
変化によると同時に,男性からみて未婚女性
が少なくて出会う機会が減ってしまったとい
う農村に特有の事情によりひき起こされてい
る。その結果,農山村において未婚の農家後
継者が大量に存在するようになった。それを
インパクトとして,嫁への気配りから親子2
世代夫婦が近住別居する形態がここ十数年増
加しつつある。
5.農家後継者の結婚難を緩和する手立て
の一つは,地元に女性の雇用の場を創出する
ことである。農水省がこれまで進めてきたグ
リーンツーリズムや食品加工などにおける女
性起業はそうした意味でも評価されて良い。
ただ,女性の雇用の場として最有力な事業は,
その市場規模が隔絶して大きく,かつ安定的,
そして資本が少なくて済む介護サービス事業
である。だが,JA が取り組む以外は,農業関
係機関はほとんど介護サービス事業に無関心
なのが現状である。民間資本が営利性から農
村部へ入り込みにくい現段階において,地域
住民の福祉向上と女性の雇用の創出という二
つの機能を充足するコミュニティビジネスと
して介護サービス事業を育成することが,後
継者の結婚難対策としても必要である。なお,
農がもつ多面的な機能の一つとして,心を癒
すセラピー機能を挙げうる。その事例紹介は
農と福祉の親近性を実感させる,良い例示と
なるだろう。
6.農家後継者の結婚難を緩和するもう一
つの手立ては,都会女性のもつ農業・農村へ
の関心を高め,就農や移住を促進することで
ある。現在農政が進めている新規就農支援制
テーマ「女性が農村に住みつく条件」
農村の未婚晩婚化と親子2世代
夫婦別居の現状
相川 良彦
1.若い世代の行動パターン,とくに女性
の就業行動に変化が起きている。以前は,結
婚する前までは自家にとどまった女性が,就
職や就学のために自家から転出することが多
くなった。他方で,農村に立地した工場(第
二次産業)が長引く経済不況と空洞化(工場
の海外移転)により,減っている。農村にお
いて雇用の場が次第に失われつつある。
2.少子化により,農家子弟に長男・長女
が多くなった。長男はいまだイエの後継ぎと
いう規範意識が残っているのに対して,女性
はイエ規範の拘束が少なくて,自由に就職を
選択する傾向がある。結果として,雇用の狭
小・劣悪な地元に,長男はあえてとどまり,
女性は良い就職条件を求めて転出する。この
社会移動の男女差が,農山村において適齢期
の男性に比べて女性の人数を少なくさせてい
る。男性が結婚相手を数歳年下に求める傾向
が,年々の少子化と相俟って,未婚女性の不
足にいっそう拍車をかけている。
3.その結果,農村での男性の未婚率が
年々増加して,2000 年国勢調査によれば,30
歳代後半の男性は4人に1人が未婚であり,
それは同世代の女性のほぼ倍の多さである。
そのような状況の中での農業後継者の結婚へ
のプロセスは,一旦は都会へ就職・出稼ぎ,
旅行先で知り合うとか,結婚相談所の紹介,
都会からの農業体験にきた女性との出会い等
多様なチャネルであり,過半は都会との交流
を介して行っている。ただ,高収入の農業専
業地帯では,後継者自身が都会へ行かなくと
も,都会からの農業体験にきた女性と結婚す
る等の例が増える。そのような高収益農業地
帯で後継者が結婚できる主体的条件は,学歴
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農林水産政策研究所 レビュー No.7
度はその一端であるが,男性或いは夫婦を前
提にしているところがある。若い世代のライ
フスタイル(組織に捉われぬ個別志向で,経
済より生活重視など)に適合した農業・農村
研修機関のあり方とそれによる就農・農村移
住の先進事例を紹介する。そこでは,施設と
その運営をめぐり,官と民とがどのような連
携をするのが機能的かという研修システムの
あり方も検討されるべき問題である。
いものという前提をおいた研究が多い。2010
年の消費を予測したが,個人消費量の推定で
は,他の研究に依存するところも多く,コー
ホート表の各セルを推定し埋めていく作業を
併せて行った。
今後の研究の展開方向について言えば,コ
ーホート分析により年齢要因を除去したうえ
で,体系分析へと進むことが考えられるし,
米国のダイクが試みているような食料消費に
年齢効果が及ぼす影響に類似したものとして,
都市化が食料消費に及ぼす影響を分析する研
究も始められている。
(文責 會田陽久)
研究会(共催)報告要旨(2002 年 10 月 31 日)
高齢化の下における食料消費の中長期予測
――コーホート的接近――
特別研究会報告要旨(2002 年 11 月 7 日)
(専修大学)森 宏
危機管理プロジェクト特別研究会
コーホート分析は,農業就業者数の予測等
に使われているが,数年前から食料消費分析
への適用を考えて,需要分析や計量分析の専
門家の考えも参考にしながら研究を進めてき
た。需要分析は,体系推定による接近方法が
大勢となっており,自分たちはあえて分析の
体系性,整合性に拘らずに年齢の影響といっ
たものを需要分析に取り込むことを試みてい
るが,学会ではなかなか理解が得られていな
い。今まで,肉類,魚介類等さまざまな食品
を対象として分析を進めたが,本日は,果実
消費の分析を事例としてわれわれの展開した
方法の説明を中心に報告する。
今までのコーホート分析は,ある年齢階層
が年を経て別の年齢階層へとずれ込むことの
観察に終始していたが,家計の消費量を計測
している家計調査を用いて,①個人消費量の
推計,②消費を年齢・時代・世代効果に分類
する,③それらを使って将来予測をする,と
いった手順でコーホート分析を行った。消費
量を三つの効果の合成としてとらえるところ
に特徴がある。既存の研究では時代効果はな
(帯広畜産大学) 澤田 学
(酪農学園大学) 佐藤 和夫
(農業工学研究所)合崎 英男
(慶應義塾大学) 吉川 肇子
本研究会では,食品安全性の需要分析およ
びリスクコミュニケーションについて,4人
の講師が報告を行った。
初めに,帯広畜産大学澤田学教授より食品
安全性について包括的な論点が提示されると
ともに,食品安全性に関する需要分析方法に
関する説明があった。
食品安全性の需要分析への接近方法として
は,使用するデータによって2種類の方法が
ある。第1の方法は,既存の市場データに基
づく需要関数分析である。これは,家計調査
や POS,ホームスキャンデータに基づき,食
品安全性リスクが食料需要に与える影響の評
価を行うものである。家計調査を利用した需
要分析においては,
「消費者の主観的健康リス
ク認識を形成する各種の外部情報・体験」を
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