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第3章 導入に際して検討すべき課題

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第3章 導入に際して検討すべき課題
第3章
導入に際して検討すべき課題
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第3章 導入に際して検討すべき課題
第1節 現状のシステムの状況
1 現在運用中の財務会計トータルシステムの概要
北海道における電子計算機による財務会計事務処理は、昭和44年の導入以後、順次
新たな業務の開発と改善が図られ、現行の財務会計トータルシステムについては、平
成3年5月から開発に着手し、平成6年4月に一部の運用を開始、平成7年4月から
は全サブシステムが稼働している。
(1) 財務会計トータルシステムの基本的な仕様等
①
処理方法等
財務会計事務の簡素化、迅速化に加え正確性を期すため、本庁及び支庁など
の部局に端末機を設置して、北海道高度情報通信基盤(赤れんがギガネットワ
ーク)等の通信回線でネットワークを結び、財務会計情報が発生した部所で入
力する発生源入力方式及びオンライン・リアルタイム方式を採用しており、各
部所等で発生する個々の財務会計情報をデータベースシステムにより一元的に
管理している。
また、オンライン処理、バッチ処理、端末機ローカル処理等、それぞれの業務
に最適な処理方式を採用し、効率的なシステムの運用を図っており、端末機を容
易に操作することができるよう、入力表示画面、入力時のチェック機能等の充実
を図り、操作性に優れたシステムとしている。
②
システムの対象範囲
一般会計及び特別会計(企業会計を除く。)を対象とし、対象組織(執行機
関)は、本庁各部等、各種委員会事務局、議会事務局のほか、各支庁などの部
局としている。
なお、資金前渡の方法により維持運営経費の支払を行うこととしている道立
学校、警察署等の地方部局における財務事務は、システムの対象外としている。
③
セキュリティ対策
情報の漏洩、データの破損・改ざん等を防止するため、ICカード、パスワ
ードの入力による操作資格のチェックなどのセキュリティ対策を講じている。
(2) 財務会計トータルシステムの機器構成等
システムの中枢であるセンタのホストコンピュータは、その本体装置のほか、
入出力管理装置であるオペレータステーション、帳票出力装置であるページプリ
ンタ、大容量補助記憶装置であるディスクアレイ装置や磁気テープ装置等、さら
- 40 -
には通信系装置などで構成されている。
また、執行機関で使用する財務会計専用の端末機器は、デスクトップ型パソコ
ン(一部はノート型パソコン)、ページプリンタ、ICカードリーダなどで構成
され、さらに出納機関用にはバーコードリーダが附属されている。
(3) 財務会計トータルシステムの維持経費
平成17年度における1年間の維持運営経費は、約5億2千万円となっており、
その内訳は次のとおりとなっている。
ⅰ
ホストコンピュータの維持運営に係る設備使用料のほか、オペレータの
人件費やシステム保守管理費等の業務処理経費:約3億6千万円
ⅱ
本庁又は各支庁の各課や部局などの各執行機関に配置した端末機
器の賃貸借料及び保守料等:約8千万円
ⅲ
センタ(ホストコンピュータ)と各執行機関(端末機)との間の
回線使用料や消耗品代、事務的経費など:約8千万円
なお、平成18年度における維持運営経費については、委託業務の見直しや通
信回線の変更などにより、前年度に対し、約5千万円程度の削減が見込まれてい
る。
(4) 財務会計トータルシステムの今後の更新予定
平成16年9月に「次期財務会計トータルシステム構築方針」が策定され、支庁
再編、制度の見直しなどに柔軟に対応でき、拡張性もあるウェブ方式に移行(セ
ンタのホストコンピュータに代えて、サーバ群等を設置)することなった。これ
を受けて、平成19年度に新システムに係るプログラム作成及び運転試験を行い、
平成20年度から運用を開始するため、現在、ウェブ方式への移行に係る基本的な
事項の検討が行われている。
2 財務会計の事務手続
(1) 財務会計トータルシステムの対象事務及び主な内容
現在稼働している各サブシステムの対象事務及び主な内容は次表のとおりであ
る。
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システム名
対
象
事
務
主
な
内
容
予算執行管理
サブシステム
年間事業執行計
画の作成及び予
算配当、配分
・年間事業執行計画の作成
・予算配当申請書の作成及び予算配当
・事業別経理により、予算執行状況等の情報を
提供
歳入管理
サブシステム
調定から収納消
込みまで
歳出管理
サブシステム
支出負担行為か
ら支払まで
資金運用管理
サブシステム
収支予定報告
・調定書、納入通知書等の作成
・領収済通知書のOCR化により、指定金融
機関総括店が電子ファイル化した収納情報で
自動消込み
・収納状況の管理
・支出負担行為情報の登録及び支出命令書の作
成
・金融機関への支払情報の磁気テープ化
・支出予定報告の作成
・収入予定報告の作成
財産管理
サブシステム
財産の取得、処
分報告から公有
財産台帳の作成
まで
月次、年次決算
資料及び決算統
計の作成
決算管理
サブシステム
予算編成支援
サブシステム
旅費支給
サブシステム
・財産の取得、処分報告書の作成
・公有財産台帳の作成
・各種資料の作成
・各サブシステムのほか、他システムの執行情
報を基に、収入及び支出に係る計算書や決算
書などの各種決算関係資料を作成
・支出負担行為整理簿の作成
予算要求書作成
から予算議案書
等の作成まで
・予算要求書の作成(積算内訳書の自動計算)
旅行命令簿の作
成及び旅費計算
・旅行命令登録に基づき、旅行命令(依頼)
簿及び支出命令書の作成
・各種調査資料及び査定等トータル表の作成
・予算議案及び予算分析等資料の作成
・旅費の自動計算
・旅費請求早見表の作成
物品管理
サブシステム
物品の受入れか
ら処分まで
・備品登録票の作成
・備品一覧表、指定物品現在高報告書等各種管
理資料の作成
・遊休物品の情報を提供
(2) 意思決定とシステム登録の関係
① 歳入事務
・歳入を徴収しようとするときは、当該歳入に係る法令及び契約書その他の関
係書類により、その内容を調査し、調定する。
・当該調定の決裁後、直ちに、納入通知書又は納税通知書(以下「納入通知書
等」という。)を作成して納入義務者に送付する。
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※この場合の事務は、財務会計トータルシステム(歳入管理サブシステム)に
おいて、調定登録を行い、調定書及び納入通知書等を作成することとしてお
り、当該調定書に決定権者の押印を得て、決裁後、納入通知書等を送付する
こととなる。
・納入義務者に送付した納入通知書等に基づき、歳入の納付があったときは、
当該歳入金は指定金融機関において取りまとめられ、その収納情報の入った
磁気テープが日々北海道に引き渡されるので、財務会計トータルシステムに
より収納に係る消込み(当該調定に対応する収納情報を磁気テープからデー
タベースに登録することをいう。以下同じ。)が行われる。
・なお、当該調定に係る納入義務者、納付すべき金額、所属年度、会計区分、
歳入科目、納入期限、収納状況等は、財務会計トータルシステムで管理して
いる。
② 歳出事務
・支出をしようとするときは、支出の原因となるべき契約その他の行為である
支出負担行為の決定を行い、当該契約等の履行確認を経て、債権者からの請
求等に基づき、支出命令を行う。
※この場合の事務は、「委託料」、「工事請負費」、「公有財産購入費」、「負
担金、補助及び交付金」、「貸付金」、「投資及び出資金」、「寄附金」及
び「繰出金」(以下「指定8節」という。)に係る経費は、財務会計トータ
ルシステム(歳出管理サブシステム)において、支出負担行為の決定のとき
に、あらかじめ支出負担行為の登録を行う(指定8節以外の経費については、
支出命令のときに併せて行うことができる。)。
また、支出命令にあたっては、支出命令登録を行い、支出命令書を作成する
こととしており、当該支出命令書に決定権者の押印を得て、決裁後、出納機
関に回付する。
・支出命令書の回付を受けた出納機関では、当該支出命令の審査を行い財務会
計トータルシステムにおいて支出命令の確認登録を行う。確認登録の終わっ
た支払情報は、財務会計トータルシステムにより支払日ごとに集計を行い、
当該支払情報の入った磁気テープ及び支払指示書が作成されるので、指定金
融機関に当該磁気テープを引き渡し、支払指示を行うことにより、指定金融
機関から債権者に対して支払が行われる。
③ 公有財産の管理
・敷地や庁舎等の公有財産を購入又は新築等により取得したときは、歳出管理
サブシステムによる支出の手続等を行うとともに、取得した土地や建物等の
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内容を財産管理サブシステムに登録し、公有財産台帳として管理することと
している。
④ 物品の管理
・物品のうち、備品(北海道財務規則(昭和45年北海道規則第30号)別表第
5(物品種別類別表)に定める備品。ただし、2万円未満のものを除く。以
下同じ。)を購入等により取得したときは、歳出管理サブシステムによる支
出の登録等を行うほか、取得した備品の内容を物品管理サブシステムに登録
し、備品記録票に代えて、管理することとしている。
(3) システムにおける取扱件数等
主なサブシステムにおける取扱件数は次のとおりである。
<歳入管理サブシステム>
・収入に係る債務者登録数:約6万7千件
・年間の調定件数:約12万9千件
<歳出管理サブシステム>
・支出に係る債権者登録数:約28万3千件
・年間の支出命令件数:約141万7千件
<財産管理サブシステム>
・公有財産の登録件数:約13万3千件
<物品管理サブシステム>
・備品の登録件数:約25万1千件
・備品のうち指定物品(100万円(自動車類にあっては60万円)
以上のもの。)の登録件数:約1万1千件
なお、現在、財務会計トータルシステムを利用している執行機関(ICカード
の発行を受けている課等)は、約500機関あるが、それらの執行機関の端末機
からセンタのホストコンピュータへの1ヶ月当たりのアクセス数(データ送信件
数)は、平均で約44万1千件となっており、比較的事務量の多い年度末には約
51万8千件、さらに年度初めには約61万2千件にも上る(いずれも平成17
年度実績)。
(4) 誤謬訂正の手続
①
歳入の更正
歳入に係る更正業務は、次のとおりである。
・収納済みの調定に係る所属年度、会計区分又は歳入予算科目に誤りがある場
合に、それらを更正する業務
・収納情報が誤って他の執行機関の収入として消し込まれた場合に、収納額を
更正する業務
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・収納された収入の消込先がなく消込不能となったものについては、消込不能
情報として「消込不能一覧表」が作成されるので、調定情報及び領収済通知
書等を確認の上、該当執行機関の端末機で消込不能となった項目の修正をし
て、収納消込(消込不能訂正)を行う業務
これらの業務を行った場合にあっては、それぞれ収入更正決定書等が作成され
るので、当該収入更正決定書等に決定権者の押印を得て、決裁後、出納機関に回
付する。
なお、所属年度又は会計区分を更正する場合は、出納機関における収入更正確
認の入力を行わなければ更正が行われない。
②
歳出の更正
歳出に係る更正業務としては、支払済みの支出命令に係る所属年度、会計区分、
歳出予算科目等に誤りがある場合において、それらを更正する業務がある。
これらの業務を行った場合にあっては、それぞれ支出更正命令書等が作成され
るので、当該支出更正命令書等に決定権者の押印を得て、決裁後、出納機関に回
付する。
なお、支出の更正に伴う歳出予算及び支払予算の予算差引は、出納機関におけ
る支出更正確認の入力後に行われる。
3 個別システムの概要
北海道においては、個々の事務を効率的に行うため、当該事務に特化した個別のシ
ステムをそれぞれ所管の部において開発し、運用を行っている。それら個別システム
に係る予算執行を行うためには、必要な情報を財務会計トータルシステムに登録する
必要があるが、その場合における事務の取扱方法については要領等に定め、データの
受渡しを行っている。
①
個別システムで作成した磁気テープ又はフロッピィディスクによりセンタで
集合してデータ登録を行うもの
・人事給与システム(総務部人事局人事課)
・教育庁人事給与システム(教育庁企画総務部教職員局給与課)
・警察給与システム(警察本部警務部警務課)
・道税総合情報処理システム(総務部財政局税務課)
・母子福祉資金等貸付償還システム(保健福祉部こども未来推進局)
・心身障害者扶養共済保険運営管理システム(保健福祉部福祉局障害者保健福祉課)
②
個別システムで作成したフロッピィディスクにより執行機関の端末機からデ
ータ登録を行う事務
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・市町村振興基金貸付金利子収入管理事務(企画振興部地域振興・計画局市町村課)
・医療事務電算事務(小児総合保健センター)
・農業農村整備事業分担金等徴収事務(農政部農村振興局農業施設管理課)
・工事管理事務(建設部建設局建設情報課)
・下水道料金徴収事務(札幌土木現業所)
③
執行機関の端末機からデータを集合して登録を行う事務
・退職手当支給事務(退職手当計算システム)
・児童手当支給事務(児童手当支給システム)
・道税収入管理事務(道税総合情報処理システム)
・道税交付金支出事務(道税総合情報処理システム)
・児童扶養手当支給事務(児童扶養手当支給管理システム)
・衛生学院授業料等徴収事務
・道立高等看護学院授業料等徴収事務
・技術専門学院授業料等徴収事務
・農業大学校授業料等徴収事務
・漁業研修所研修受講料等徴収事務
・道路占用料徴収事務(道路占用システム)
・河川利用料徴収事務(河川利用システム)
・海岸占用料徴収事務(海岸占用システム)
・道立高等学校授業料等徴収事務(道立高等学校授業料等徴収管理システム)
・札幌医科大学付属病院診療報酬請求事務(診療報酬請求システム)
・札幌医科大学授業料等徴収事務
・放置違反金徴収事務(放置駐車違反管理システム)
第2節 新たに必要なシステムの概要
1 仕訳処理システム
現行の北海道の財務会計トータルシステムは、一般会計及び特別会計(企業会計を
除く。)を対象に、単式簿記・現金主義会計に基づき、予算の編成から執行、さらに
は決算までを処理しているが、複式簿記による会計処理機能を有していないことから、
自動的に複式簿記による財務諸表を作成することはできない。
また、現行法令上、単式簿記・現金主義会計から複式簿記・発生主義会計に切り替
えるということはできないため、複式簿記による財務諸表を作成するための勘定科目
の仕訳は、現在の財務会計トータルシステムの機能を保持しつつ、新たに複式簿記に
よる仕訳機能を追加することが必要になる。
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これから仕訳機能を追加する手法としては、
①
現行の財務会計トータルシステムの決算データを一括変換するプログラムを
開発し、決算統計や補足資料を基に貸借対照表や行政コスト計算書等を作成す
るための勘定科目の仕訳データを作成する手法
②
現行の財務会計トータルシステムに複式簿記への変換プログラムを組み込み、
又は新たに仕訳機能を有するプログラムを開発し、現行会計における日々の歳
入歳出データの入力時に、併せて勘定科目の仕訳データを作成する複式簿記・
発生主義会計の考え方に沿って処理をする手法
の二通りの手法が考えられるが、当研究会としては後者②の手法の方が、
○個々の取引を仕訳処理するため、より適切な情報把握が可能であること
○月次や四半期など、年度途中においても、適期に必要な財務諸表を作成するこ
とが可能となること
○財務会計トータルシステムの入力時に、職員一人一人が勘定科目への仕訳を認
識できること
など、前者①の手法に比べ導入後の効果が大きいと判断した。
また、非現金取引の認識においても、後者②の手法によれば、個々の取引の仕訳と
いう統一的な手続により処理できるため優れていると判断した。
2 東京都財務会計システムの応用
東京都においては、新たな財務会計システムに、単式簿記から複式簿記への変換の
機能を付加したプログラムを開発しており、北海道の財務会計トータルシステムにお
いても、これらの機能を歳入・歳出の各サブシステムに組み込み、又は、新たに複式
処理を行うシステムを開発することなどにより、東京都方式を応用することが合理的
であると考える。
なお、勘定科目への仕訳機能の追加にあたっては、財務会計トータルシステム全体
を新たに開発することが必要となることも想定されるため、詳細についてはさらなる
検証が必要である。
【応用することが適当な機能】
ⅰ
歳入、歳出ともに現行会計の予算科目をシステムに入力すると、ほぼ自動的
に複式簿記によるキャッシュ・フロー計算書の勘定科目に変換するシステムと
しており、このキャッシュ・フロー計算書の勘定科目を特定することにより、
行政コスト計算書及び貸借対照表の勘定科目への変換も自動的に行われるよう
にしている。
注)東京都においては、経営分析に活用することを可能とするため、歳出にお
けるキャッシュ・フロー計算書の勘定科目には、経費をその経済的機能に着
目した都予算性質別科目(給与関係費、物件費、投資的経費等)を設定し、
歳入におけるキャッシュ・フロー計算書の勘定科目は、原則として、歳入の
予算科目における「項」を採用している。
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ⅱ
東京都においては、歳出目別の財務諸表を作成することとしており、歳入科
目の変換時に、当該収入が充当される歳出目についても、ほぼ自動的に特定で
きるようなシステム上の工夫を施している。
具体的には、従来の入力画面に、歳出業務であれば「歳出仕訳区分」を、歳
入業務であれば「歳入仕訳区分」と「歳出略科目」を、複式情報として追加し
ている。
ⅲ
歳入・歳出予算科目を勘定科目に変換するため、あらかじめ「歳入仕訳区分
コード」及び「歳出仕訳区分コード」を設定し、調定登録時等あるいは予算推
定差引(北海道の財務会計トータルシステムにおける支出負担行為登録に相当)
時、支出命令時等に、それぞれ節科目等をもとに、コードブックより選択して
入力することとしている。
ⅳ
事業別財務諸表を作成するため、歳入・歳出ともに「管理事業」コードを集
計単位として入力することとしている。
なお、財務諸表作成の作成単位を、東京都のように、歳出目別や管理事業別
にまで細分化すべきかどうかについては、北海道における利活用の方向性を踏
まえて、今後判断する必要があると思われる。
3 個別システム情報の仕訳処理
東京都においては、財務会計システムとは別に、業務所管局で独自に開発し、特定
の債権管理や支出情報の管理を行う関連システムと呼ばれるものがあり、財務会計シ
ステムと定期的に歳入歳出予算の執行履歴情報等を授受しているものがある。
これらの関連システムは、財務諸表を作成するための複式情報を保持していないた
め、財務会計システム側で複式情報を付加し仕訳情報を蓄積する方法を採用している。
北海道においても、個別システムと呼ばれる事業所管部で開発し、特定の債権管理
や支出情報の管理を行うシステムがあるが、複数の多種多様な個別システムにおいて
複式情報を付与するような仕様変更は、影響範囲が大きいと考えられることから、こ
れらの複式情報に関しては、東京都と同様に、個別システムから情報を引き受ける際
に、財務会計トータルシステム側で複式情報を付加する方法を基本とすることが、事
業所管部における負担が少なく、合理的であるといえる。
4 資産の管理システム
複式簿記による財務諸表の作成にあたっては、日々の歳入歳出の情報だけではなく、
資産の状況を的確に把握し、それらの情報を集計する機能が必要となる。
(1) 物品の管理
現行の財務会計トータルシステムでは、備品記録票に代えて、物品管理サブシ
ステムに備品の内容を登録し、取得時の価格をもって管理している。複式簿記の
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考え方により財務諸表を作成するためには、これら物品に係る資産の増減(異動
情報)や減価償却費等についても管理することが必要となるが、現在の物品管理
サブシステムにはそれらの機能はないことから、減価償却費等を計算する機能の
追加や、新たに必要となる複式処理を行うシステムへ情報を引き渡す機能などを
整備する必要がある。
(2) 公有財産の管理
敷地や庁舎等の公有財産については、財産管理サブシステムにその内容を登録
し、公有財産台帳として管理することとしているが、現行は取得価格で管理(5
年ごとに価格改定するものあり。)している。
これを勘定科目に従って整理し、財務諸表を作成するためには、財産管理サブ
システムを改修し、減価償却費等を計算する機能の追加や、新たに必要となる複
式処理を行うシステムへ情報を引き渡す機能などを整備する必要がある。
(3) インフラ資産等の管理
北海道が管理する資産には、物品や公有財産として管理するもののほか、道路
や橋梁、港湾などの社会資本(インフラ資産)があるが、これらは、現在、公有
財産とは別に管理されており、資産評価も行われていない。
複式簿記の考え方を導入することにより、これらの社会資本を評価し、資産と
して計上することが適当であるが、そのためには、新たに「インフラ資産」を管
理するためのシステムを構築するとともに、それらの情報を蓄積し、新たに必要
となる複式処理を行うシステムへ情報を引き渡す機能などを整備する必要がある。
また、当研究会では、北海道に所有権はないが資産形成のために支出を行った
ものについても、「インフラ投資」として財務諸表に反映させることを提起して
いるが、その情報をどのように管理していくかは課題であり、該当する事業の情
報を蓄積する機能や、その計数を集計し、管理するシステムの開発についても、
検討する必要がある。
5 財務会計トータルシステムと連携していない情報の仕訳等
北海道においては、財務会計トータルシステムに歳入・歳出の情報を引き渡すこと
としている個別システムのほか、独立したシステムにより管理を行っている事務又は
会計があるが、それらを含めた複式簿記による財務諸表を作成するためには、必要な
情報を取り込む工夫が必要となる。
(1) 公債管理等の情報
公債の起債や償還に関しては、現在パソコンにより集計、管理されているが、
財務会計トータルシステムをはじめとする他のシステムとの接続や連携はないこ
とから、この情報を財務諸表に反映できるよう、充当する事業の特定や勘定科目
に仕訳する機能を持った新たなシステムの構築が必要となる。
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また、基金の積み立てや取り崩しの情報などについても、管理できる機能を充
実させる必要がある。
(2) 公営企業会計の情報
企業局における公営企業特別会計や道立病院における病院事業特別会計につい
ては、一般会計などの普通会計とは会計方式が異なるため、それぞれ独立した会
計システムを構築し、経理処理している。これらの企業会計では、もともと複式
簿記による経理処理を行っているが、一般会計などの普通会計に新たに導入しよ
うとする複式簿記・発生主義会計に基づく事務処理とは、勘定科目が異なること
や、システムの構成が異なることなどから、そのデータの取込方法及び集計方法
について検討が必要となる。
6 勘定科目への仕訳等
(1) 仕訳の時期
歳入歳出に係る勘定科目データは、財務会計トータルシステムにおける調定登
録時や支出命令登録時に、日々の入力画面から仕訳することとすると、複式処理
を行うシステムのデータベースに日々蓄積することができるため、キャッシュ・
フローに係る勘定科目についてはリアルタイムで集計することが可能となる。
一方、個別システムで集計される歳入歳出情報や、資産及び負債に関する情報
については、定期的に情報の引渡しを行わなければ、その集計した結果は得られ
ない。
個別システムの歳入歳出情報については、財務会計トータルシステムに情報を
引き渡した後において、勘定科目への変換を行うことを基本とすれば、これら個
別システムによる調定や支出命令等は、月又は週に1度など、一定のサイクルに
より定期的に情報の引渡しを行っていることから、引渡しの都度、勘定科目に変
換し、当該データを蓄積することができるものと考えられる。
また、資産や負債の情報については、それぞれのシステムにより減価償却費等
の計算を行った後において、複式処理を行うシステムに情報を引き渡すのであれ
ば、年に1度、決算の集計時に勘定科目への仕訳を行うとともに、資産残高と勘
定残高の照合を行うことが適当であると考える。
(2) 仕訳に係る意思決定
勘定科目の仕訳にあたっては、それぞれの執行機関において、意思決定を行う
ことが適当であるが、歳入歳出情報にあっては、財務会計トータルシステムにお
ける調定又は支出命令の登録時に併せて仕訳を行うこととすれば、調定書又は支
出命令書の決裁時に併せて行うことが可能となる。
また、現金の支出を伴わない資産の減価償却等に係る取引や、引当金に関する
取引などについても、定性的な意思決定を行う手法について模索すべきと考える
- 50 -
が、例えば、資産の減価償却にあっては、耐用年数等を定めることにより毎年の
減価償却額があらかじめ定まることから、台帳登録することを決定する際に併せ
て行うことも可能と考える。
7 財務諸表の作成
現行会計における決算帳票は、出納整理期間の終了後において、議会の決算審査に
必要な歳入歳出決算書のほか、決算附属調書を含み、財務会計トータルシステムによ
り作成されるが、複式簿記・発生主義会計に基づく財務諸表については、決算におけ
る補足的参考資料とするのであれば、年次帳票として同時期に作成することが適当で
ある。
そのためには、現金収支以外の取引情報を追加整理する必要があるため、現金の支
出を伴わない取引(引当金など)の仕訳や日々の会計処理における仕訳の訂正のほか、
会計間取引の相殺、共通経費の按分処理、他システムの管理している資産、負債の異
動情報の財務会計トータルシステムへの取り込みなどが必要となる。
なお、財務諸表の作成にあたっては、全庁分の集計に加えて、会計別や部別に集計
できるシステムにすることにより、その活用の範囲が広がるものと考えられる。
また、日々の仕訳処理のデータに、事業別の識別を付して入力することにより、勘
定残高を事業別に蓄積し管理することが可能となり、その蓄積した事業別の複式情報
を変換し、市販の表計算ソフトのデータで配信することにより、当該事業の所管部署
等において、市販の表計算ソフトのマクロ機能を使って随時に事業別財務諸表を作成
することが可能となる。ただし、人件費などの共通経費の按分や、個々のシステムで
管理している資産や負債など現金収支以外の情報について何らかの方法により取り込
み、事業単位に振り分ける作業が必要となる。
8 連結機能
北海道の関与団体等で一定の基準に合致する団体の決算を連結するにあたっては、
当該団体の勘定科目や作成されるデータの内容などが、それぞれ異なることから、財
務会計トータルシステムにおいて集計することが可能となる共通的な環境を整備する
ことや、情報の引渡方法などを検討することが必要となる。なお、連結情報の提供頻
度を考えた場合、随時連結を行うことを可能にするシステムの構築は将来の課題とし
て保留するとしても、パソコンなどを利用した手作業による当面の決算情報の提供に
大きな障害はなく、対応は可能である。
9 地方部局における経理及び資産の把握
財務会計トータルシステムの対象外である道立学校、警察署等の地方部局にあって
は、資金前渡の方法により維持運営経費の支払を行うこととしており、手書きによる
伝票及び帳簿等により支払事務や物品管理などを行っている。つまり、これらの組織
において、複式簿記・発生主義会計に基づく仕訳処理を行うこととした場合、現状の
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ままでは手作業により帳簿等を整理することとなり、事務量が増大することとなる。
そのため、これら地方部局においても、本庁各部等や支庁などの部局と同様な処理
が可能となるように、財務会計トータルシステムによる処理を自ら行うことが可能な
環境を整える必要があると考えるが、それが困難である場合にあっては、あらかじめ
前渡資金を交付する際に勘定科目に仕訳する工夫や、物品などの資産の集計が容易と
なる手法等を検討することが必要となる。
10 ハードウェア構成
財務会計トータルシステムのプログラムを改修し、又は複式処理を行うシステムを
新たに開発した場合においても、当該事務処理に必要な機器等は、基本的には、現在
の端末機器等によることが可能と考えられるが、今後、職員一人一人が財務処理に際
し、複式処理を意識して入力事務を行うとともに、必要なときに必要な財務諸表を電
子ファイルで作成して閲覧又はプリントするという、機動性のあるシステム環境とす
るためには、行政情報コミュニケーションシステムと連動できる環境の整備が望まれ
る。
なお、行政情報コミュニケーションシステムと連動させた場合、パソコン本体やプ
リンタなどの周辺機器が共用となることが想定されることから、現在のICカードに
よる認証方法をパスワードやUSBキー等に変更するなど、新たなセキュリティ対策
が必要となるとともに、財務関係帳票と一般文書等の出力情報が混在することとなる
ため、プリンタ出力の仕方や帳票様式の検討が必要になると思われる。
また、道立学校や警察署のように資金前渡により支払事務を行っている地方部局に
おいても、本庁各部等や支庁などの部局と同様に複式処理が可能となるようにするた
めには、少なくとも1組織に1台のパソコンを配置し、ネットワーク等で結び、財務
会計トータルシステムによる処理を自ら行うことが可能な環境を整えることが望まし
い。
第3節 会計規則・基準の制定
北海道としてこれまでに経験したことのない新たな概念である複式簿記・発生主義
会計に基づく制度の導入を計画する場合、事前に周到な規則などの整備が必要である
ことは明らかである。特に、発生主義の原則による取引の認識は、これまでの歳入歳
出を基礎とした取引の認識とはまったく次元の異なるものであり、発生主義会計とい
える内容の情報を提供するためには、取引の種類ごとにその認識基準を具体的に示す
ことが必要不可欠になる。
今回の研究報告では、詳細な取引の認識基準についての解説を織り込んだ会計処理
要領(案)の提案までを企画したが、時間の制約により詳細な部分についての検討に
は至らなかった。
- 52 -
以下、北海道として複式簿記・発生主義会計を導入し、その効果を高めるために必
要と考えられる基礎的な指針等について説明を行う。
1 会計指針などの意義について
複式簿記・発生主義会計が定着している民間の企業会計については、企業会計原則
が定められており、商法において準用規定となる一般に公正妥当な会計慣行として広
く認知されているが、現在の公会計においてはこれに匹敵するような会計原則は制定
されておらず、今後、公会計において複式簿記・発生主義会計を導入するならば、こ
のような会計原則の制定が必要不可欠と考える。
当研究会は、北海道が具体的に複式簿記・発生主義会計の導入を検討するための礎
として、すなわち複式簿記・発生主義会計の原則を的確に財務諸表に反映すること、
及び、その効果を最大にするために必要と考えられる具体的なガイドラインとして、
会計指針、会計処理基準、連結財務書類基準及び開始貸借対照表作成要領について、
その素案を取りまとめ、参考資料として本報告書の巻末に付しているが、これらの意
義について以下説明する。
(1) 北海道会計指針(案)
北海道として複式簿記・発生主義による会計を導入し、その結果、民間事業者
並みの財務情報を提供するために必要な基本的な事項についての考え方をまとめ
たものであり、具体的には下記の事項を含む。
○作成すべき財務書類とその目的:外部説明目的及び内部管理目的等を勘案し最
も合理的な情報提供となる財務諸表について解説
○財務書類の作成対象範囲:地方公共団体が有する様々な会計について整理し財
務書類が有効となるための範囲について解説
○作成の基準日:基準日の説明と出納整理期間の関係の解説
○準拠すべき会計原則:発生主義の適用についての解説
○財務書類に関わる管理責任:作成の責任者、会計指針などに関する改訂手続な
どの解説
○財務書類に含まれる情報の定義:新たに採用する勘定科目を含めた資産、負債、
収入、費用及び純資産に関して概括的な解説
○連結の定義と範囲:連結財務諸表として求められる情報と連結の対象となる団
体についての解説
(2) 北海道会計処理基準(案)
実際の取引の認識、記録、集計、証拠保存等の会計事務手続きについて定め、
会計事務における基本的なマニュアルの根底を成すものであり、具体的には下記
の事項を含む。
○取引の認識基準:現金取引及び非現金取引について会計処理をおこなう基準に
- 53 -
ついて解説
○勘定科目の定義と仕訳処理:個々の勘定科目の説明と代表的な仕訳の解説
○処理手続と証拠書類の整備:仕訳処理に際して求められる取引の証拠について
の説明とそれら証拠書類の保存に関する解説
○残高の確認手続:残高の検証手続と定期的な監査手続きについて解説
(3) 北海道連結財務書類基準(案)
連結財務書類の基礎となる連結の範囲及び遵守すべき会計基準について定める
ものであり、具体的には下記の事項を含む。
○連結財務書類の範囲に関する解説
○連結の範囲に関する解説
○連結手続における留意点の解説
(4) 北海道開始貸借対照表作成要領(案)
これまでにない概念である複式記録の開始となる貸借対照表科目の残高につい
て、これまでの歳入歳出制度によりもたらされる記録からどのように求めるかを
定めている。
○資産については実在性、回収可能性、資産効果、評価基準などを勘案し科目ご
との性格により、その集計手続について詳細な解説
○負債については網羅性、実在性などを勘案し科目ごとの性格により、その集計
手続について詳細な解説
2 北海道財務規則等との関わり
現行法に基づく公会計による決算は、知事が議会に提出することとされていること
から、出納長は毎会計年度の出納閉鎖後において、速やかに決算を調整し、歳入歳出
決算書並びに歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調
書を、知事に提出すべきことを、北海道財務規則に規定している。
現在検討している複式簿記・発生主義に基づき作成する財務諸表は、北海道の自主
的な財務情報であり、新たに策定する会計基準に基づき作成されることとなるが、従
来の公会計における決算資料に対して、補足的財務情報として位置付けられ、提供さ
れる信頼性の高い情報であることから、議会に提出する参考資料として役立つことが
期待される。
このため、それらについても決算調製において作成する資料として、北海道財務規
則においてその作成及び利用について規定することにより、その根拠をより明確にす
ることができる。
3 監査との関わり
複式簿記・発生主義会計に基づき作成された財務諸表は、現行制度上は必ずしも監
- 54 -
査が強制されるものではない。しかしながら、行政が適切な情報開示を行って住民へ
の説明責任を果たすという観点からは、作成された財務諸表に信頼性を付与するため
にも財務監査が行われ、すなわち監査済み財務諸表として開示されることが望ましい
ことは言うまでもない。また、財務諸表作成のための各種の会計原則の具体的な適用
にあっては、判断を要する場面も想定されるが、監査を前提とするならば、監査の指
導的機能を利用し、監査人の指導を得ながら会計処理の参考とすることも可能である。
このような監査の実施のためには、外部監査人の強化が一つの方法ではあるが、現
行制度上は外部監査人の複数化や監査法人との契約は不可能であり、将来的な課題と
しなければならない。一方、監査委員については、地方自治法の改正に伴い、2007
年度より監査委員の増員も可能となっており、監査委員事務局の強化も含めて、かか
る部分に会計専門職の積極的な導入を図って監査体制を強化することは実質的には可
能である。複式簿記・発生主義会計の導入とともに、考慮しなければならない一つの
重要な検討課題と考える。
第4節 職員への教育
1 教育・啓発の必要性
複式簿記・発生主義会計の考え方による新たな公会計制度の全面的な導入が図られ
たとしても、導入の結果として作り出される貸借対照表や行政コスト計算書などの財
務諸表自体は行政運営を行う上でのツールに過ぎないため、道民に対する説明責任の
充実とともに庁内の経営管理体制の強化・経営効率の向上といった目標を達成するた
めには、これを北海道という組織の中でどのように活かすか、いかに使いこなすかが
問われ、求められる。
これらの財務情報を使いこなすのは職員である以上、複式簿記・発生主義に基づく
財務諸表がこれら目標達成のツールとして有効に機能するためには、職員一人一人が
減価償却費や金利負担等も含めた正確なコストを認識し、コスト意識や経営感覚を持
って行政運営を展開する必要があり、そのためにも複式簿記・発生主義会計に関する
正しい知識の習得がなにより重要となる。特に、管理職員は、経営の責任者として多
様な財務管理情報を理解し、現状分析と問題解決のツールとして活用できるような能
力が要求される。
そのため、北海道において複式簿記・発生主義会計を導入する際には、事務マニュ
アルの作成に加え、きめ細かい実務指導など実務者に対する研修はもとより、管理監
督者に対する教育・啓発を通じて、複式簿記・発生主義に基づく財務諸表を真に役立
つツールとして活用し、常に職場や事務事業の改善に努めるよう、働きかけ浸透させ
る必要がある。
2 教育研修
複式簿記・発生主義会計を採用した新たな公会計制度は「全職員が活用する制度」
- 55 -
であることを前提に、公会計制度との関わりに応じた研修計画を立てる必要があり、
自己啓発を促し、意識改革を進める研修内容とすることが肝要である。
特に、実務を行う職員に対しては、研修期間内だけではなく、職員が自己研修をい
つでも行えるような環境を整えることも必要と考える。
以下に、新たな公会計制度の導入にあたって必要となる研修を整理したものを示す。
研修項目
【事務研修】
対
象
内
容
新公会計制度説明会
管理職員向け ・複式簿記・発生主義会計に関する一般的な説明、
経営責任者としての管理情報の有効活用、説明
義務責任
新公会計制度説明会
一般職員向け ・複式簿記・発生主義会計に関する基礎的知識、
複式簿記に基づく会計処理の説明
【操作研修】
・新財務会計システムについて研修テキストを基
に実際の画面による端末操作の実施
新財務会計システム
操作研修
【専門研修】
一般職員
財政運営研修
・地方財政をめぐる動向と課題、行政評価と予算
管理職員、
編成、公会計制度改革、経営管理等
財務担当職員
財務会計事務研修
予算・経理担 ・財務会計事務に関する関係法令、公金管理と資
当職員
金運用、バランスシート活用による財務分析、
財務監査等
監査事務研修
監査・検査担 ・監査事務に関する制度と実務、政策評価、財政
当職員
分析、企業会計原則等
システム開発研修
システム管理 ・プログラミング、システム運用開発、セキュリ
担当職員
ティシステム等
【自己研修等】
eラーニング
・庁内ネットワーク上に新公会計制度に関する各
種情報の公開
サポートセンター・
ヘルプデスク
・専門スタッフによる新財務会計システムの実務
指導、新公会計制度導入に向けての準備作業の
周知、問い合わせ対応
研修スケジュール
研
修
項
目
発展・確立段階
職務遂行能力の充実
本格導入段階
制度の周知・指導
① 事務研修
② 操作研修
試 行 段 階
③ 実務指導
- 56 -
① 専門研修
② 自己研修等
第5節 連結財務情報
1 連結の対象となる団体の定義と条件
(1) 現状
北海道では平成12年度決算からバランスシートを作成しており、平成13年
度から平成15年度決算までは普通会計(一般会計及び貸付事業会計等)及び公
営企業会計(道立病院事業、電気事業、工業用水道事業)を連結したバランスシ
ートを作成している。
また、平成16年度決算からは総務省の強い指導があり、札幌医科大学付属病
院特別会計等、これまで連結していなかった特別会計についてもすべて連結させ
たほか、道が1/2以上出資するなど、道議会に報告している下記23団体も連
結したバランスシートを作成・公表している。
【連結団体一覧】
名
称
基本金
出資割合
主な業務の内容
(百万円)
北海道土地開発公社
100
北海道住宅供給公社
30
(財)北海道農業開発公社
2,748
(財)北海道体育文化協会
2
(財)北海道水産加工振興基金協会
112
(社)北海道産炭地域振興センター
8,468
(財)北海道私立高等学校奨学会
4
議会報告
の有無
100.0 公有地の先行取得
有
80.0 分譲資産処分等
有
−
農用地等の買入、売渡し等
100.0 スポーツの普及振興
有
有
89.3 新製品の開発
有
94.1 産炭地域の立地企業への助成
有
50.0 奨学金の貸付
有
(社)北海道軽種馬振興公社
10
50.0 地方競馬に関する業務
有
(財)北海道地域活動振興協会
10
100.0 地域活動に係る人材育成
有
100.0 中小企業に対する貸付
有
100.0 発掘調査、整理保存
有
(財)北海道中小企業総合支援センター
5
(財)北海道埋蔵文化財センター
10
(財)北海道開拓の村
14
71.4 北海道開拓の村の管理運営
有
(財)北海道高齢者問題研究協会
11
91.0 調査研究、資料収集
有
(財)北海道森林整備公社
50
100.0 分収林事業の普及・指導
有
(財)北海道住宅管理公社
10
100.0 公営住宅の管理業務
有
(財)北海道長寿社会振興財団
10
100.0 高齢者の社会活動の促進
有
(財)道民活動振興センター
30
100.0 道民活動センターの管理運営
有
(財)北海道暴力追放センター
1,502
68.0 広報啓発、被害者救済等
有
(財)北海道建設技術センター
138
79.7 建設事業に係る調査研究
有
(財)北海道公営企業振興協会
30
100.0 公営企業に係る調査研究等
有
(財)新千歳空港周辺環境整備財団
30
90.0 空港周辺地域の振興
有
(財)北海道環境財団
32
93.8 普及啓発、情報提供等
有
90.0 文化振興、広報・普及啓発
有
(財)アイヌ文化振興・研究推進機構
100
- 57 -
(2) 連結対象に関わる基準
北海道では、地方自治法第243条の3に基づき、地方自治法施行令第152条
に該当する法人を連結対象団体としているが、一方で、単純な出資比率や議決権行
使比率などで機械的に連結範囲を定めることは、必ずしも地方公共団体全体の事業
を実質的に反映したものとはならないという意見があることも事実である。
連結の対象となる団体の範囲をどのように定めるかは非常に難しい課題であるが、
事業の内容や北海道からの資金提供の有無、現行法令の趣旨や総務省の指導内容、
他の都府県の状況など様々な要素を総合的に判断していくべきと考える。
ただし、法的な議決権行使可能な出資の場合、議決権の50%超を出資している
団体については、民間の支配力基準の考え方からすると最低限の連結範囲と考える。
第6節 導入に向けた検討スケジュール等
1 検討スケジュール
総務省は平成18年8月、
「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指
針」を策定し、地方公会計改革の取組みを促している。この中で、公会計の整備とし
て、都道府県に対し、今後3年後までに「新地方公会計制度研究会報告書」に示す「基
準モデル」又は「改訂モデル」を活用して貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支
計算書、純資産変動計算書の4表の整備を求めている。
また、
「 新 地 方 公 会 計 制 度 実 務 研 究 会 」を 設 置 し 、同 報 告 書 で 示 さ れ た モ デ ル の 実
証的検証と資産評価方法等の諸課題について検討を行い、財務書類の作成や資産評
価に関する実務的な指針を別途通知するとしている。具体的には、平成19年1月
末を目途に研究会としての報告書を取りまとめ、この報告書に基づき必要となるソ
フトウェア等を、遅くとも平成19年秋までには準備するとしている。
北海道が、
「 基 準 モ デ ル 」に 沿 う 方 向 で 複 式 簿 記・発 生 主 義 会 計 を 導 入 し よ う と す
る 場 合 、こ の よ う な 国 の 動 き を 見 極 め な が ら 検 討 を 進 め て い く 必 要 が あ る が 、一 方 、
複式簿記・発生主義会計の先進自治体である東京都の導入スケジュールは、次表の
とおりとなっており、会計制度の検討から始めて全体で約3年半を要していること
を考えると、総務省が求める「3年後」を見据え、早急に導入に向けた検討組織を
立ち上げる必要がある。
- 58 -
【 複 式 簿 記 ・ 発 生 主 義 会 計 導 入 の ス ケ ジ ュ ー ル 】( 東 京 都 資 料 )
14年度
2
四半期
会
計
制
度
の
整
備
財
務
会
計
シ
ス
テ
ム
再
構
築
3
15年度
4
1
2
16年度
3
4
1
2
17年度
3
4
1
2
3
4
「東京都の会計制度に関する検討委員会」
9月 設置
8月
「東京都会計基
準」の策定・公
表
5月
「会計制度改革
の基本的考え方
と今後の方向
性」の報告
業務調査・
仕様書作成→
システムの基本的考
え方の整理→
財務会計システム
基本設計→
3月 稼働開始
詳細設計→
プログラム製造→
試験→
東京都による受入試験→
複式簿記説明会
職
員
へ
の
周
知
★
各局訪問説明→
端末操作研修→
「複式簿記の手引き」公開
★
具体的な導入スケジュールは、財政規模、組織規模とも北海道を大きく上回る東
京 都 の 導 入 ス ケ ジ ュ ー ル が 具 体 的 な 参 考 と な る が 、「 新 地 方 公 会 計 制 度 実 務 研 究 会 」
での検討結果や先進事例、加えて、本報告書における検討事項を参考とすることに
より、本格導入までの時間を相当程度短縮できるものと考える。
2 検討体制の整備
複式簿記・発生主義会計を導入するにあたり、会計制度の整備、会計システムの再
構築、職員への研修の3つを並行して進めていく必要があり、これについても、東京
都の先行事例を参考に、それぞれの検討時期に応じ、適正な人員配置を行うべきであ
る。
なお、会計制度の整備にあたっては、公会計制度や複式簿記・発生主義会計に精通
した大学等の研究者や公認会計士等の実務者を委員とする検討委員会等を設け、北海
道の実情に適しその効果が最大となる会計制度のあり方について継続的に検討を進め
ていく必要がある。
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